(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】パレット姿勢変更装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20241112BHJP
B65G 7/08 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
B23Q7/00 D
B23Q7/00 G
B65G7/08 C
(21)【出願番号】P 2024046293
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/249404(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1405694(EP,A2)
【文献】特開平1-127246(JP,A)
【文献】特開平4-201163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00 - 7/18
B65G 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク及び治具を組付ける上面と、下面と、前記上面及び前記下面に接する2つの係合側面と、2つの前記係合側面の間に位置する当接側面と、を有するパレットを、前記パレットの前記上面を水平面側へ移動した水平状態と、前記パレットの前記上面を鉛直面側へ移動した直立状態との間を含んで姿勢変更するためのパレット姿勢変更装置であって、
ベースと、
前記ベースに取り付けられ、該姿勢変更するために前記パレットを回転中心軸周りに回動可能に構成された駆動部と、
前記駆動部に回動可能に取り付けられ、前記係合側面と対向したときに、該係合側面と平行となるように延在し、前記パレットを保持する一対のアームと、
前記アームにおける前記ベースの側に配置され、前記当接側面と対向する第1のパレット受け面を有する受け部と、
前記アームにスライド可能に配置され、パレット係合解除位置からパレット係合位置へ移動して前記パレットと係合するフィンガと、
を備えるパレット姿勢変更装置。
【請求項2】
2つの前記係合側面は、該係合側面から前記パレットの外側へ延伸し、前記フィンガが係合する少なくとも1つのピンをそれぞれ有する、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項3】
前記フィンガは、前記係合側面と対向する中央部と、前記中央部の上方側に形成された上面側規制部と、前記中央部の下方側に形成された下面側規制部とを有し、
前記中央部、前記上面側規制部及び前記下面側規制部によって前記パレットへ向けた凹形状の溝部が形成され、
前記溝部の深さ方向は、前記ピンの延伸方向と一致する、請求項2に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項4】
前記フィンガは、前記アームの長手方向に沿って、前記パレット係合位置と前記パレット係合解除位置との間を移動する、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項5】
前記フィンガの前記パレット係合位置は、前記アームの長手方向において、前記パレット係合解除位置よりも、前記アームの前記ベースに取り付けられるアーム基端部側にある、請求項4に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項6】
前記フィンガは、前記アームと前記パレットとが対向する方向に沿って、前記パレット係合位置と前記パレット係合解除位置との間を移動する、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記アームを、前記水平状態における係合位置と前記直立状態における直立位置との間の待機位置で位置決め可能に構成されている、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項8】
前記受け部は、前記パレットの前記下面と当接可能に形成された第2のパレット受け面を有する、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項9】
前記パレットは、前記係合側面から前記パレットの内側へ凹むように形成されたパレット溝を有し、前記アームは、前記パレット溝の内部へ差し込み可能なアーム凸部を有する、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項10】
前記駆動部は、前記アームを、前記直立状態における直立位置から前記水平状態における係合位置を越えた退避位置まで回動させ、位置決め可能に構成されている、請求項1に記載のパレット姿勢変更装置。
【請求項11】
工具を装着する主軸と、
前記ワークが組付けられた前記パレットを前記直立状態で取付け可能なテーブルと、
請求項1から請求項10の何れか1項に記載のパレット姿勢変更装置と、
前記パレット姿勢変更装置の側及び前記主軸の側において、前記直立状態の第1のパレットを受渡しするための第1のパレット保持部と、前記直立状態の第2のパレットを受渡しするための第2のパレット保持部とを両端部に有する旋回アームと、前記旋回アームを鉛直方向に平行な旋回軸周りに旋回させる旋回駆動部とを有するパレット交換装置と、
を備える、工作機械。
【請求項12】
前記パレット姿勢変更装置によって、前記パレットが前記水平状態へ位置付けられたときに、前記パレットの前記下面と連結可能に構成され、前記パレット、並びに、前記パレットに組付けられたワーク及び/又は治具の何れかに、油、エア、切削液を含む媒体を供給する媒体供給部を備える、請求項11に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット姿勢変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、パレットを直立状態でテーブルに取り付けようとすると、パレットの姿勢変更のための装置を配置する必要がある。この点に関連して、特許文献1及び特許文献2には、C軸テーブルにおけるパレットチェンジャ装置が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されているパレット姿勢変更装置(段取りスタンド)では、パレットの下面をクランプする構成になっており、クランプするための機構が加工によって生じた切りくずをかみ込みやすくなる。さらに、パレットを段取りする場合において、パレットの下面がクランプされているため、油、エア、切削液といった媒体を供給するための機器を配置することも困難になる。
【0003】
また、特許文献2に開示されているパレット姿勢変更装置では、パレットの下面ではなく、クランプする機構が側面を係合することによって姿勢変更するように構成されている。しかしながら、特許文献2に開示されているパレット姿勢変更装置では、クランプするための機構はパレットの3つの側面と係合するため、機構の構造上、クランプするためのアームは回転軸と直動軸の両方を必要とする。この結果、パレット姿勢変更装置は、コンパクトに構成することが困難となり、高さ方向及び奥行き方向の両方向においてパレット姿勢変更装置を配置するためのスペースを確保する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-237927号公報
【文献】特開2006-082164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、簡素な構造を用いてパレットを保持しながら姿勢変更することによって、安定したパレット搬送を可能にするパレット姿勢変更装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、ワーク及び治具を組付ける上面と、下面と、上面及び下面に接する2つの係合側面と、2つの係合側面の間に位置する当接側面と、を有するパレットを、パレットの上面を水平面側へ移動した水平状態と、パレットの上面を鉛直面側へ移動した直立状態との間を含んで姿勢変更するためのパレット姿勢変更装置であって、ベースと、ベースに取り付けられ、姿勢変更するためにパレットを回転中心軸周りに回動可能に構成された駆動部と、駆動部に回動可能に取り付けられ、係合側面と対向したときに、係合側面と平行となるように延在し、パレットを保持する一対のアームと、アームにおけるベースの側に配置され、当接側面と対向する第1のパレット受け面を有する受け部と、アームにスライド可能に配置され、パレット係合解除位置からパレット係合位置へ移動してパレットと係合するフィンガと、を備えるパレット姿勢変更装置が提供される。
【0007】
本発明の一の態様によれば、工具を装着する主軸と、ワークが組付けられたパレットを直立状態で取付け可能なテーブルと、本発明に係るパレット姿勢変更装置と、パレット姿勢変更装置の側及び主軸の側において、直立状態の第1のパレットを受渡しするための第1のパレット保持部と、直立状態の第2のパレットを受渡しするための第2のパレット保持部とを両端部に有する旋回アームと、旋回アームを鉛直方向に平行な旋回軸周りに旋回させる旋回駆動部とを有するパレット交換装置と、を備える、工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一の態様に係るパレット姿勢変更装置は、駆動部に回動可能に取り付けられ、係合側面と対向したときに、係合側面と平行となるように延在し、パレットを保持する一対のアームと、アームにスライド可能に配置され、パレット係合解除位置からパレット係合位置へ移動してパレットと係合するフィンガとを備える。このため、パレット姿勢変更装置は、パレットを保持するアームを駆動部によって回動させ、水平状態と直立状態との間を含んでパレットの姿勢を変更することができる。また、一対のアームは、パレットの2つの側面、すなわち係合側面とフィンガを介して係合することによってパレットを安定して保持することができる。このようなアームによって、アームの挙動の実効性を確保しつつ装置の構造を簡素にすることができる。さらに、パレット姿勢変更装置は、アームにおけるベースの側に配置され、2つの係合側面の間に位置する当接側面と対向する第1のパレット受け面を有する受け部を備える。このため、アームの回動によって姿勢変更し、上面が水平面に対して傾斜することによって、パレットがアームの回転中心軸側、すなわちベースの側に自重をかける場合に、パレットの当接側面を受け部に当接させることができ、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するパレットを安定して保持することができる。以上のことから、パレット姿勢変更装置は、簡素な構造を用いてパレットを保持しながら姿勢変更することができ、安定したパレット搬送を可能にする。
【0009】
本発明の一の態様に係る工作機械によると、工作機械は、駆動部に回動可能に取り付けられ、係合側面と対向したときに、係合側面と平行となるように延在し、パレットを保持する一対のアームと、アームにスライド可能に配置され、パレット係合解除位置からパレット係合位置へ移動してパレットと係合するフィンガとを有するパレット姿勢変更装置を備える。このため、パレット姿勢変更装置は、パレットを保持するアームを駆動部によって回動させ、水平状態と直立状態との間を含んでパレットの姿勢を変更することができる。また、一対のアームは、パレットの2つの側面、すなわち係合側面とフィンガを介して係合することによってパレットを安定して保持することができる。このようなアームによって、アームの挙動の実効性を確保しつつ装置の構造を簡素にすることができる。また、パレット姿勢変更装置は、アームにおけるベースの側に配置され、2つの係合側面の間に位置する当接側面と対向する第1のパレット受け面を有する受け部を備える。このため、アームの回動によって姿勢変更し、上面が水平面に対して傾斜することによって、パレットがアームの回転中心軸側、すなわちベースの側に自重をかける場合に、パレットの当接側面を受け部に当接させることができ、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するパレットを安定して保持することができる。さらに、工作機械は、直立状態の第1のパレットを受渡しするための第1のパレット保持部及び直立状態の第2のパレットを受渡しするための第2のパレット保持部を両端部に有する旋回アームを有するパレット交換装置を備える。このため、パレット姿勢変更装置によって姿勢変更したパレットを主軸側まで安定して搬送することができる。これによって、パレット姿勢変更装置及びパレット交換装置を備える工作機械は、簡素な構造を用いてパレットを保持しながら姿勢変更することができ、安定したパレット搬送を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置を備える工作機械の平面図を示す。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、パレット係合位置においてピンに係合したフィンガをアームの長手方向から見た図を示す。
【
図4】
図4は、工作機械の外側から搬入したパレットの側面図を示す。
【
図5】
図5は、係合位置まで回動してパレットに対して位置決めしたアームの側面図を示す。
【
図6】
図6は、パレット係合位置へと作動したフィンガをピンに係合させたパレットの側面図を示す。
【
図7】
図7は、直立状態へ姿勢変更したパレットの側面図を示す。
【
図8】
図8は、APCアームに保持されたパレットの側面図を示す。
【
図9】
図9は、直立状態においてフィンガがパレット係合解除位置へと作動したパレットの側面図を示す。
【
図10】
図10は、待機位置まで回動したアームの側面図を示す。
【
図11】
図11は、APCアームによって入れ替えた第2のパレットの側面図を示す。
【
図12】
図12は、直立状態にある第2のパレットに対してフィンガを係合するための位置決めを行うアームの側面図を示す。
【
図13】
図13は、パレット係合位置へと作動したフィンガをピンに係合させた第2のパレットの側面図を示す。
【
図14】
図14は、APCアームを下降して第2のパレット保持部による保持を解除した第2のパレットの側面図を示す。
【
図15】
図15は、水平状態へ移動した第2のパレットの側面図を示す。
【
図16】
図16は、フィンガをパレット係合解除位置へと作動し、ピンとの係合を解除した第2のパレットの側面図を示す。
【
図17】
図17は、退避位置へ移動したアームの側面図を示す。
【
図18】
図18は、工作機械の外側へ搬出される第2のパレットの側面図を示す。
【
図19】
図19は、第2のパレットと連結した媒体供給部の側面図を示す。
【
図20C】
図20Cは、パレットとの連結を解除して下降した媒体供給部の側面図を示す。
【
図21】
図21は、変形例に係るパレット姿勢変更装置の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るパレット姿勢変更装置を備えた工作機械について説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0012】
図1に、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42を備える工作機械10の概略的な平面図を示す。工作機械10は、加工によって生じる切りくずの飛散等を防止するためのスプラッシュガード16に覆われている。また、スプラッシュガード16内部は、鉛直方向に平行な旋回軸R1周り(
図4参照)に回転可能(旋回可能)に配置された旋回扉46によって、加工室12と段取り室14とに仕切られている。さらに、スプラッシュガード16には、作業者(図示省略)が外部から加工室12及び段取り室14内部へアクセスできるように、オペレータ扉12a及び段取り室扉14aがそれぞれ取り付けられている。
【0013】
加工室12内には、被加工物としてのワークW1、W2(
図4及び
図11参照)を加工するための主軸26、C軸ロータリテーブル36などの機器が配置されている。工作機械10を設置する工場等の床面に配置されるベッド18の上面には、左右方向、すなわちX軸方向に沿って延在する一対のX軸直動ガイド30が備えられ、X軸直動ガイド30上には、これに沿って往復動可能なコラム22が立設配置されている。また、工作機械10は、コラム22の前面に、鉛直方向(Y軸方向、
図1の紙面に対して垂直方向)に沿って延在する一対のY軸直動ガイド(図示省略)を備え、Y軸直動ガイドには、これに沿って往復動可能なサドル24が配置されている。サドル24の前方側には、水平方向に沿った中心軸周りに回転可能に構成された主軸26が配置されている。さらに、主軸26の前方側(段取り室14側)には、ワークW1、W2を加工するための工具28が脱着可能に取り付けられている。工作機械10は、主軸26と電気的に接続され、加工を制御するためのNC装置(図示省略)を備えており、工具28を用いたワークW1、W2の加工を制御可能に構成されている。
【0014】
工作機械10の主軸26の前方側には、ベッド18の上面に前後方向、すなわちZ軸方向に沿って延在する一対のZ軸直動ガイド38を備え、Z軸直動ガイド38上には、これに沿って往復動可能なZ軸テーブル32が配置されている。また、Z軸テーブル32上には、鉛直方向に平行な回転軸周り(B軸周り)に回転可能に構成されたB軸ロータリテーブル34が配置されている。さらに、B軸ロータリテーブル34上には、取り付けられるパレット76(第1のパレット)の上面76a(
図2参照)が鉛直面側にある直立状態となるように構成されたテーブルとしてのC軸ロータリテーブル36が配置されている。C軸ロータリテーブル36は、また、取り付けたワークW1、W2及びパレット76を水平方向に沿った中心軸周り(C軸周り)に回転可能に構成されている。このように、Z軸テーブル32、B軸ロータリテーブル34及びC軸ロータリテーブル36によって、ワークW1、W2と工具28との位置合わせをすることができる。さらに、工作機械10は、コラム22をX軸直動ガイド30に沿って駆動させるためのX軸送り装置、サドル24をY軸直動ガイドに沿って駆動させるためのY軸送り装置、及び、Z軸テーブル32をZ軸直動ガイド38に沿って駆動させるためのZ軸送り装置(いずれも図示省略)を備える。
【0015】
段取り室14内には、加工前のワークW1をパレット76に取付け(組付け)、加工後のワークW2を取り外すといった段取りを行うための段取りステーション40が配置されている。段取りステーション40は、パレット76に取付けられたワークW1、W2の姿勢を変更するためのパレット姿勢変更装置42を備える。また、段取りステーション40は、パレット76並びにパレット76に取付けられたワークW1、W2及び/又は治具の何れかに、油、エア、切削液を含む媒体を供給する媒体供給部80を備える。媒体供給部80は、パレット76の下面76b(
図2参照)に取り付けられたカプラ100(
図20A参照)を介して媒体を供給するように構成されている。
【0016】
加工室12と段取り室14とを仕切る旋回扉46は、スプラッシュガード16の側壁間を鉛直方向に沿って延在し、スプラッシュガード16の側壁の下方側に配置された旋回扉保持部48に載置されている。具体的には、旋回扉46及び旋回扉保持部48の双方に形成された嵌め合い部分(図示省略)が嵌め合わされた状態で載置されている。また、旋回扉46は、機械正面から見て左右方向、すなわち、X軸方向を幅方向とする。旋回扉46の下方側には、旋回扉46とは別個に、又は、旋回扉46と連動して、鉛直方向(Y軸方向)に平行な旋回軸R1周りに旋回可能に構成されたパレット交換装置44が配置されている。パレット交換装置44は、段取り室14と加工室12との間で加工前のワークW1及び加工後のワークW2を受渡しするために、鉛直方向(Y軸方向)に平行な旋回軸RA2周りに旋回可能(回転可能)に配置された旋回アームとしてのAPCアーム50と、APCアーム50を旋回させるための旋回駆動部としてのAPCアーム駆動機構56とを備える。また、APCアーム50は、APCアーム駆動機構56によって、鉛直方向(
図2のY1方向)に沿って上下動可能に構成されている。APCアーム駆動機構56は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータ(図示省略)を有しており、アクチュエータによってAPCアーム50を旋回させ、上下動させる。また、アクチュエータは、工作機械10に配置された制御装置(図示省略)によって制御可能に構成されている。なお、「APC」とは、「Automatic Pallet Change」の略称である。なお、旋回扉保持部48は、スプラッシュガード16の側壁の下方側に配置されているとして説明したが、これに限らず、旋回扉保持部は、ベッド、又は、床面に直接設置されてもよい。また、旋回扉保持部は、APCアームが下降し、旋回扉と係合していないときに、APCアームに代えて旋回扉の回転方向及び重力方向の動きを規制できればよいため、嵌め合い部分以外の態様によって旋回扉を保持してもよい。
【0017】
APCアーム50は、ワークW1、W2の受け渡しをしないときは、格納位置として、その長手方向を旋回扉46の幅方向、すなわち、X軸方向に沿うように位置付けられて格納される。また、旋回扉46の下方側には、その下方側(鉛直方向下側)へ向かうにつれて、段取りステーション40及び加工室12の側(Z軸方向前方側及び後方側)へ向けて延在する傾斜面を有する切りくずカバー52が形成されている。切りくずカバー52は、旋回扉46と係合したAPCアーム50を上方側から覆うように形成されており、加工室12における加工によって生じた切りくず等がAPCアーム50に付着することを防止又は抑制することができる。
【0018】
図2に示すように、APCアーム50は、その長手方向の両端部に、パレット76を保持するための第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84を備える。第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84は、APCアーム50の幅方向両端部に柱状部材を有し、APCアーム50の長手方向から見て凹形状である。パレット76のAPCアーム50と対向する側面となる当接側面76dには、保持部材76fが取り付けられており、保持部材76fは、第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の凹形状部分に嵌め込むことができる寸法の板状に形成されている。このため、パレット76が直立状態にあるときには、保持部材76fが第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の凹形状部分に嵌め込まれると共に、第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の両端部の柱状部材の上面がパレット76の当接側面76dと当接する。これによって、APCアーム50は、パレット76を支持し、直立状態のパレット76及びこれに組付けられた治具96及びワークW1、W2(
図4及び
図11参照)を保持することができる。
【0019】
なお、ここでは、APCアーム50の第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84は、保持部材76fを凹形状部分に嵌め込み、両端部の柱状部材の上面がパレット76の当接側面76dと当接することによってパレット76を支持するものとして説明するが、これに限らない。例えば、APCアームの保持部は、パレットの上面及び下面を挟み込むような機構で構成されてもよい。
【0020】
また、
図1に示すように、APCアーム50と旋回扉46とは係合機構54によって係合することができる。係合機構54は、APCアーム50側の係合部としての係合ピン54a及び旋回扉46側の被係合部としてのガイド穴46aを含んで構成されている。係合ピン54aは、APCアーム50の上面側に、上方側へ向けて延在して形成されている。このため、係合ピン54aは、APCアーム50の上下動に伴って上下動するように構成されている。また、ガイド穴46aは、旋回扉46の底部において、挿し込まれた係合ピン54aと係合可能に形成されている。ここでは、係合ピン54aはAPCアーム50の旋回軸RA2を中心とし180°等配で2つ配置され、ガイド穴46aは係合ピン54aと対応するようにAPCアーム50の旋回軸RA2を中心として90°等配に4箇所形成されている。なお、係合ピン54a及びガイド穴46aは最低1対を配置すればよい。係合機構54は、係合ピン54aとガイド穴46aとが係合、又は、係合解除できるように構成されており、これによって、APCアーム50と旋回扉46とを係合することができる。このため、APCアーム50と旋回扉46とが係合している場合には、APCアーム50と旋回扉46とを一体で旋回させることができる。また、APCアーム50と旋回扉46との係合が解除されている場合には、APCアーム50にパレット76、94の受け渡しをさせるため、あるいは、受け渡しをしていないAPCアーム50を格納位置に格納するために、APCアーム50を単独で旋回させることができる。なお、ここでは、APCアーム50が、係合ピン54aを有し、旋回扉46の底部にはガイド穴46aが形成されているものとして説明するが、これに限らず、例えば、旋回扉は、底部から延在する係合ピンを有してもよく、APCアームにガイド穴が形成されてもよい。また、係合ピン54aとガイド穴46aとの組み合わせだけでなく、APCアーム及び旋回扉の双方に配置された爪部等を互いに係合/係合解除するように構成されてもよい。さらに、係合ピンは、棒状又は柱状のものに限らず、例えば、係合機構に配置された駆動機構を用いて上下動可能に構成されてもよい。
【0021】
パレット交換装置44は、具体的には、以下のように作動する。工作機械10において、パレット76の受け渡しを開始すると、APCアーム駆動機構56は、格納位置にあるAPCアーム50を下降させる。このとき、旋回扉46は、係合機構54の係合ピン54aとガイド穴46aとの係合が解除されることによってAPCアーム50との係合が解除され、旋回扉保持部48に嵌め合わされ、載置される。APCアーム50が下降すると、APCアーム駆動機構56は、APCアーム50を90度(又は270度)旋回させる。このため、APCアーム50の第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84は、回転軌跡TR1(
図1参照)に沿ってC軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42の側へ移動し、APCアーム50の長手方向がZ軸方向に沿った状態となる。
【0022】
第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84がC軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42の側へ移動すると、APCアーム駆動機構56はAPCアーム50を上昇させる。APCアーム50が上昇することによって、係合機構54の係合ピン54aはガイド穴46aに挿入され、係合する。これによって、旋回扉46とAPCアーム50とが係合し、旋回扉46は、旋回扉保持部48に代えてAPCアーム50に積載される。
【0023】
APCアーム50が旋回扉46を積載すると、APCアーム駆動機構56は、旋回扉46及びAPCアーム50を上昇させる。これによって、第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の凹形状部分にパレット76の保持部材76fを嵌め込み、パレット76の当接側面76dに両端部の柱状部材を当接させることによって、パレット76を保持することができる。ここで、C軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42からAPCアーム50へとパレット76が受け渡される。C軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42はAPCアーム50にパレット76を受け渡したら、旋回するAPCアーム50や旋回扉46と干渉しない待機位置に退避する。これに続いて、APCアーム50は、これらを一体で180度旋回させる。これによって、APCアーム50が保持するパレット76を加工室12側と段取り室14側とで入れ替えることができる。パレット76が入れ替えられると、C軸ロータリテーブル36及び/又はパレット姿勢変更装置42のアーム64は、待機位置からパレット受渡位置へと移動し、入れ替えられたパレット76、94を保持する。さらに、APCアーム駆動機構56は、旋回扉46とパレット76を保持した状態のAPCアーム50とを下降し、APCアーム50だけに積載されていた旋回扉46は、旋回扉保持部48に嵌め合わされた状態で載置される。また、係合機構54の係合ピン54aは、ガイド穴46aから引き抜かれ、係合が解除される。APCアーム駆動機構56は、APCアーム50を下降させた上で90度旋回して第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84を旋回扉46の下方側へ移動する。第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84が旋回扉46の下方側へ移動すると、APCアーム駆動機構56は、APCアーム50を上昇させ、旋回扉46は旋回扉保持部48に代えてAPCアーム50に積載される。さらに、係合機構54の係合ピン54aはガイド穴46aに挿入され、これらは係合する。これによって、APCアーム50は旋回扉46の下方側の格納位置に格納される。
【0024】
図2に示すように、段取りステーション40には、段取りした加工前のワークW1及び加工後のワークW2(
図4及び
図11参照)が組付けられたパレット76をAPCアーム50との間で受渡しするためのパレット姿勢変更装置42が配置されている。パレット76は、ワークW1、W2及び治具96(
図4参照)を組付ける上面76aと、下面76bとを有する板状に形成されている。また、パレット76は、上面76a及び下面76bに接し、パレット76のX軸方向外側に位置する2つの係合側面76eと、2つの係合側面76eの間に位置し、パレット76のZ軸方向後方側に位置し、APCアーム50と対向する当接側面76dと、パレット76のZ軸方向前方側に位置し、段取り室扉14aと対向する前方側面76cを有する。さらに、2つの係合側面76eは、パレット76と一体で形成され、その外側、すなわち、X軸方向外側へ向けて延伸するピン78を有する。ここでは、各係合側面76eには、係合側面76eの面方向に沿って延伸する円柱状のピン78が2つずつ形成されている。2つのピン78は、間隔をあけて、係合側面76eの長手方向(Z軸方向)の両端側に1つずつ形成されている。なお、ピンは、各係合側面に1つずつ形成されてもよく、また、角柱形状や三角柱形状等、円柱形状以外の形状に形成されてもよい。
【0025】
段取り室14の段取りステーション40にパレット76を配置し、これにワークW1及び治具96を組み付ける作業者は、パレット76の上面76aを水平面側へ向けた水平状態で、パレット76を媒体供給部80の上に配置する。段取りステーション40とパレット76が直立状態で取り付けられるC軸ロータリテーブル36との間でパレット76を受け渡しするために、パレット姿勢変更装置42は、パレット76を保持し、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するように構成されている。具体的には、パレット姿勢変更装置42は、旋回扉46及びAPCアーム50のZ軸方向前方側にX軸方向に沿って配置されたベース60と、ベース60に取り付けられ、X軸方向(水平方向)に沿って延在する回転軸を回転中心軸RA1周り(R1方向)に回動可能に構成された駆動部62と、駆動部62に回転可能に取り付けられ、2つの係合側面76eに対向したときに、これらと平行になるように延在し、パレット76を保持することのできる一対のアーム64とを備える。
図4に示すように、ベース60は、APCアーム50の旋回中心位置に配置されたAPCアーム駆動機構56の外周部からZ軸方向前方側(段取り室扉14a側)へ向けて延在する。このため、ベース60を平面視でAPCアーム50の回転軌跡TR1の内側に配置することができ、ワークW1、W2が組付けられたパレット76を端部に保持してAPCアーム50が旋回する際に、切りくずがベース60に直接落下することを抑制することができる。
【0026】
駆動部62は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータ(図示省略)を有しており、アクチュエータによって回転軸を回転させる。また、アクチュエータは、工作機械10に配置された制御装置(図示省略)によって制御可能に構成されている。さらに、パレット姿勢変更装置42は、後述するように、直立状態と水平状態との間だけではなく、直立状態における直立位置から水平状態における係合位置を越えた退避位置までアーム64を回動させ、位置決め可能(静止可能)に構成されている。また、パレット姿勢変更装置42は、直立位置と係合位置との間の待機位置といった中間位置においても位置決め可能(静止可能)に構成されている。
【0027】
なお、以下の説明では、パレット76は平面視で正方形状に形成されており、互いに平行な2つの係合側面76eが、互いに平行な一対のアーム64によって保持されるものとして説明するが、これに限らない。例えば、パレットは、角部が面取りされている場合やパレットが平面視で八角形状あるいは丸形状といった正方形状以外の形状も含みうる。さらに、パレットが正方形状以外の形状であるために2つの係合側面が互いに平行でない場合であっても、一対のアームは、例えば、2つの係合側面と平行になるように平面視でV字状に延在するといった互いに平行ではない場合も含みうる。パレットが丸形状の場合、アーム形状を湾曲させ、パレットの外形に沿うように設計してもよい。
【0028】
図2に示すように、アーム64は、駆動部62の回転軸に連結されるアーム基端部66と、係合側面76eに対向できるように、アーム基端部66のX軸方向外側部分から直線状に延在するアーム係合部68とを有する。アーム64のベース60側となるアーム基端部66のX軸方向内側には、アーム64によってパレット76を保持したときに、当接側面76dと対向する位置に受け部74が形成されている。受け部74は、水平状態で工作機械10の側方(X軸方向外側)から見たときに、L字状又は逆L字状に形成されており、アーム64に対して垂直方向に延在する平面状の第1のパレット受け面74aと、アーム64の長手方向に沿って延在する平面状の第2のパレット受け面74bとを有し、第1のパレット受け面74aに当接側面76dを、第2のパレット受け面74bに下面76bを当接できるように寸法決めされている。なお、第1のパレット受け面及び第2のパレット受け面は、厳密に寸法決めされる必要はなく、パレットに当接してパレットの自重を確実に受け止める程度に形成されていればよい。このため、第1のパレット受け面及び第2のパレット受け面は平面に限らず、例えば、曲面形状や多角錐形状に形成されてもよく、これによって、パレットを点接触又は線接触の状態で支持してもよい。
【0029】
各アーム64は、アーム係合部68の長手方向の両端部、すなわち、Z軸方向の両端部に、アーム係合部68の長手方向に沿ってスライド可能に構成された2つのスライド部70を備える。また、2つのスライド部70には、パレット76と係合するためのフィンガ72がそれぞれ取り付けられている。2つのフィンガ72の間隔は、2つのピン78の間隔に対応するように構成されている。2つのスライド部70にはアーム係合部68内に配置されたロッドが一体で接続され、ロッドは油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータに接続される(何れも図示省略)。このため、アクチュエータによるロッドの作動に応じて、スライド部70及びフィンガ72をパレット係合位置とパレット係合解除位置との間で同一方向に連動させることができる。ここでは、パレット係合位置がパレット係合解除位置よりもアーム基端部66側となるように構成されている。また、スライド部70及びフィンガ72を作動するアクチュエータは、工作機械10に配置された制御装置(図示省略)によって制御可能に構成されている。
図3に示すように、フィンガ72は、パレット76を保持するためにアーム係合部68をパレット76の側方へ移動したときに係合側面76eと対向する中央部72cと、中央部72cの上方側(上面76a側)に形成された上面側規制部72aと、中央部72cの下方側(下面76b側)に形成された下面側規制部72bとを有する。このため、中央部72c、上面側規制部72a及び下面側規制部72bによって溝部72dが形成されている。溝部72dは、フィンガ72をアーム64の長手方向から見たときに、パレット76側へ向けた凹状に形成されている。溝部72dは、その深さ方向が、ピン78の延伸方向と一致するように形成されている。このため、アーム係合部68をパレット76の係合側面76eの側方へ移動し、フィンガ72とピン78とがX軸方向に沿って対向していない位置(パレット係合解除位置)からフィンガ72とピン78とがX軸方向に沿って対向する位置(パレット係合位置)へ移動する(XF1方向に沿ってスライドする)ことによって、パレット76にフィンガ72を係合させることができる。これによって、アーム64は、パレット76を安定して保持することができる。また、凹形状の溝部72dは、フィンガ72の外側に対して開放された形状であるため、フィンガ72とピン78との間に加工により生じる切りくずを挟み込むことを防止又は抑制することができる。
【0030】
なお、ここでは、フィンガ72は、アーム64の長手方向から見たときにパレット76側へ向けた凹状に形成されているとして説明するが、これに限らず、ピンに係合できる形状であればよく、例えば、フィンガは、アームの長手方向から見たときにピンの側へ向けた開放したV字状等の他の形状で形成されてもよい。
【0031】
さらに、アーム係合部68の係合側面76eと対向する幅方向内側、すなわち、X軸方向内側には、係合側面76e側へ向けて延在するアーム凸部86(
図4参照)が形成されている。また、係合側面76eには、パレット76の内側へ凹むように形成されたパレット溝88が形成されており、アーム凸部86を挿し込むことができるように構成されている。これによって、アーム64は、フィンガ72とアーム凸部86の両方を用いてパレット76を保持することができるため、パレット76を安定して保持することができる。なお、別の実施例として、パレットの係合側面にパレット凸部を、アームにアーム溝を形成して、凹凸を逆の関係にしても同様の効果が得ることができる。
【0032】
なお、ここでは、アーム係合部68のフィンガ72は、アーム係合部68の長手方向、すなわち、Z軸方向(
図3中のXF1方向)に沿ってパレット係合解除位置とパレット係合位置との間をスライド可能に構成されているとして説明するが、これに限らず、フィンガをX軸方向、すなわち、パレットと対向する方向(
図3中のXF2方向)にスライドして、パレットを保持するように構成されてもよい。このように構成した場合は、フィンガはアームの長手方向には変位しないため、長手方向についてはアームを省スペースにすることができ、アームをコンパクトに構成することができる。
【0033】
図4から
図20に示すパレット76の段取りの説明を通じて、本実施形態に係る工作機械10のパレット姿勢変更装置42の作用効果を以下に説明する。なお、
図4から
図20に示すパレット姿勢変更装置42等の側面図は、これらの装置の作用効果を説明するための概略的な図であり、図面の見易さの観点から、実際の側面視ではアーム64によって隠れるために直接見えない部分(フィンガ72、受け部74、アーム凸部86等)も実線で描画している点に注意されたい。
【0034】
図4には、治具96及び加工前のワークW1が組付けられたパレット76が工作機械10の外側から搬入された状態を示す。ここでは、パレット姿勢変更装置42の直下においてベッド18の上面に配置されたレール90に下面76bを載せたパレット76(
図4の点線部分)が、工作機械10の外側から段取り室扉14aを通じて段取りステーション40側、すなわち、パレット姿勢変更装置42側へと水平状態で搬入される。なお、パレット76の搬入方法は、レール90に限らず、工作機械の上部に設置された搬送装置で水平状態パレットが鉛直方向に沿って搬入されてもよく、フォークを有する搬送車のフォークを用いて搬入されてもよい。搬入されたパレット76は、レール90の端部に形成されたストッパ92に当たることで、スライドを停止し、水平状態の段取り位置に位置決めされる。このとき、アーム64は、水平状態における係合位置よりも下方側となる退避位置へ位置付けされており(旋回されており)、フィンガ72はパレット係合解除位置に位置付けされている。パレット姿勢変更装置42は、退避位置において、アーム64及びアーム64の構成要素であるフィンガ72、受け部74、アーム凸部86が、パレット76の搬入に干渉しないよう構成されている。一方、図示しない加工室12側のC軸ロータリテーブル36(
図2参照)には、加工が完了した(加工後の)ワークW2及び治具96が組付けられたパレットとしての第2のパレット94が保持されている。
【0035】
図5には、駆動部62によってアーム64とパレット76の係合側面76eとが対向する係合位置までアーム64を回動し、パレット76に対して位置決めする状態を示す。この状態において、アーム凸部86及び受け部74の第2のパレット受け面74bは、パレット76に接触しないように構成されてもよく、パレット76に接触するように構成されてもよい。パレット76に接触しない場合は、パレット76はレール90上に保持されている。パレット76に接触する場合は、アーム凸部86はパレット溝88の内壁の上面側と接触し、第2のパレット受け面74bはパレット76の下面76bと接触する。このため、パレット76はレール90から離れ、アーム64によって保持されることとなる。この場合、アーム凸部86はパレット溝88に挿入されているため、パレット76に不測の外力が作用した場合であっても、パレット76が工作機械10の外側へ不意に移動することを規制することができる。
【0036】
図6には、フィンガ72をパレット係合解除位置からパレット係合位置へ作動して(図中矢印)、フィンガ72とピン78とを係合させた状態を示す。ここでは、フィンガ72及びピン78は、ピン78が抜け落ちない程度においてフィンガ72とピン78との間に隙間(遊び)が生じるように寸法決めされている。
【0037】
図7には、駆動部62が、アーム64を直立位置まで回動し、パレット76を直立状態へ姿勢変更した状態を示す。姿勢変更中は、フィンガ72とピン78とが係合するため、パレット76単体での回転方向(R1方向)への移動を規制することができる。さらに、第2のパレット受け面74bがパレット76の下面76bと当接し、かつ、第1のパレット受け面74aがパレット76の当接側面76dと当接するため、パレット76の自重を支え、重力方向に移動することを規制することができる。これによって、アーム64は、パレット76を安定して保持しつつ、水平状態から直立状態へと姿勢変更することができる。
【0038】
図8は、パレット交換装置44のAPCアーム50を上昇させ、第1のパレット保持部82によってパレット76を保持した状態を示す。具体的には、APCアーム50を上昇させることによって、保持部材76fが第1のパレット保持部82の凹形状部分に嵌め込まれると共に、第1のパレット保持部82の両端部の柱状部材の上面がパレット76の当接側面76dと当接する。これによって、APCアーム50は、パレット76を保持することができる。このとき、フィンガ72は、ピン78のパレット76単体での回転方向(R1方向)への移動を規制しているに過ぎないため、APCアーム50は、アーム64に干渉することなくパレット76を持ち上げることができる。
【0039】
図9は、APCアーム50がパレット76を保持した上で、フィンガ72をパレット係合位置からパレット係合解除位置へと作動した状態を示す。図中に矢印で示すように、フィンガ72をパレット係合位置からパレット係合解除位置へと作動させることによって、APCアーム50だけがパレット76を保持する。このとき、図示しない加工室12側の第2のパレット94もC軸ロータリテーブル36から取り外される。これによって、段取り室14側のパレット76及び加工室12側の第2のパレット94(
図11参照)の両方がAPCアーム50だけで保持されている。
【0040】
図10は、フィンガ72をパレット係合解除位置へと作動したアーム64を駆動部62によって待機位置まで回動した状態を示す。パレット姿勢変更装置42は、アーム64を直立位置(直立状態)と係合位置(水平状態)との間の待機位置へと位置決めする(回動する)ことができる。これによって、段取り室14側のパレット76と加工室12側の第2のパレット94とを入れ替えるために、APCアーム50及び旋回扉46を旋回したときに、APCアーム50及び旋回扉46と、パレット姿勢変更装置42や工作機械10内の他の部材との干渉が発生することを防止することができる。また、アーム64を係合位置まで戻すことなく、待機位置に位置決めできるため、アーム64を回動する時間を最低限に短縮することができ、ひいては、パレット76の姿勢変更及び交換に必要な時間を短縮することができる。
【0041】
図11は、APCアーム50の旋回によって、段取り室14側のパレット76(
図10参照)と加工室12側の第2のパレット94とを入れ替えた(交換した)状態を示す。パレット76及び第2のパレット94を保持したAPCアーム50を180度旋回することによって、加工前のワークW1が組付けられたパレット76を加工室12側へと移動してC軸ロータリテーブル36に受渡し、加工後のワークW2が組付けられた第2のパレット94を段取り室14側へ移動することができる。
【0042】
図12は、駆動部62によってアーム64を直立位置まで回動し、直立状態にある第2のパレット94に対してフィンガ72を係合するための位置決めを行う状態を示す。また、
図13は、フィンガ72をパレット係合解除位置からパレット係合位置へと作動し(図中矢印)、ピン78と係合した状態を示す。これによって、段取り室14側へ移動した第2のパレット94をアーム64によって保持することができる。このとき、パレット係合解除位置がパレット係合位置よりもアーム基端部66側となるように構成されており、なおかつアーム凸部86とパレット溝88の構成が存在しない場合、フィンガ72は重力に逆らうようにパレット係合解除位置からパレット係合位置に動作するため、万が一切りくずなどの影響でフィンガ72とピン78が干渉すると、パレットを持ち上げてしまい、パレットを脱落させるリスクがある。本実施例では、パレット係合位置がパレット係合解除位置よりもアーム基端部66側となるように構成されている。すなわち、フィンガ72は重力に沿ってパレット係合解除位置からパレット係合位置に作動するため、もしもフィンガ72とピン78が干渉したとしても、少なくともパレット76を脱落させるおそれは無いため、安全にピン78(パレット94)と係合することができる。
【0043】
図14は、APCアーム50の第2のパレット保持部84による第2のパレット94の保持を解除するために、APCアーム50を下降させている状態を示す。図中に矢印で示すように、APCアーム50を下降させることによって、第2のパレット保持部84は、第2のパレット94から離れる。このため、第2のパレット94は、第2のパレット保持部84に保持されなくなり、受け部74の第1のパレット受け面74aが第2のパレット94の当接側面94dと当接し、第2のパレット94を支持する。このように、パレット姿勢変更装置42に受け渡された第2のパレット94は、フィンガ72及び受け部74によって支持される。一方、図示しない加工室12側のC軸ロータリテーブル36(
図2参照)には、加工前のワークW1及び治具96が組付けられたパレット76が保持される。
【0044】
図15は、駆動部62がアーム64を係合位置へ回動することによって、第2のパレット94を水平状態(段取り位置)へと移動した状態を示す。また、
図16は、フィンガ72をパレット係合位置からパレット係合解除位置へと作動させ(図中矢印)、フィンガ72とピン78との係合を解除した状態を示す。この状態における、アーム凸部86及び受け部74の第2のパレット受け面74bは、第2のパレット94に接触しないように構成されてもよく、第2のパレット94に接触するように構成されてもよい。第2のパレット94に接触しない場合は、第2のパレット94はレール90上に保持されている。第2のパレット94に接触する場合は、アーム凸部86はパレット溝88の内壁の上面側と接触し、第2のパレット受け面74bは第2のパレット94の下面94bと接触する。このため、第2のパレット94はレール90から離れ、アーム64によって保持される。
【0045】
図17は、駆動部62がアーム64を回動し、退避位置へ位置決めした状態を示す。これによって、第2のパレット94は、アーム64からレール90へと引き渡され、工作機械10の外側へ向けて搬出可能な状態となる。また、
図18は、第2のパレット94が、工作機械10の外側へ搬出される状態を示す。このように、加工前ワークW1が組付けられたパレット76と加工後のワークW2が組付けられた第2のパレット94とを水平状態と直立状態との間で姿勢変更した上で交換することができる。
【0046】
図19には、水平状態(段取り位置)にある第2のパレット94と連結した媒体供給部80の側面図を示す。本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42は、アーム64がパレット76(
図2参照)及び第2のパレット94の係合側面76e、94e側を保持するように構成されており、アーム64は、パレット76及び第2のパレット94の下面76b、94b側に干渉しない。このため、段取り位置の下方側に空間を確保することができ、媒体供給部80を配置することができる。これによって、媒体供給部80は、段取り位置まで搬入されたパレット76及び第2のパレット94を保持すると共に、これらに連結することができる。媒体供給部80は、クランプ機構(図示省略)を備えており、これによってパレット76及び第2のパレット94をクランプする。さらに、パレット76及び第2のパレット94の下面76b、94b側に配置された、カプラ100(
図20A参照)と連結し、連結した流路から油空圧などの媒体を供給することができる。これによって、ワークW1、W2を治具96に保持するためのクランパを作動するための油圧などを、パレット76及び第2のパレット94へ供給することができる。媒体の供給が終了すると、媒体供給部80は、パレット76及び第2のパレット94のクランプ・連結を解除するように構成されており、さらに、パレット姿勢変更装置42は、アーム64が係合位置まで回動し、フィンガ72がパレット係合位置へ作動して、パレット76及び第2のパレット94を保持するように構成されている。このとき、パレット76及び第2のパレット94上の治具96は、アキュムレータ等の圧力保持部(図示省略)を備え、パレット76及び第2のパレット94と媒体供給部80との係合が解除されても治具96内に圧力を保持できるように構成されている。
【0047】
さらに、段取り室14内に配置された媒体供給部80は、上下動可能に構成されている。このため、アーム64によってパレット76及び第2のパレット94を姿勢変更するときに、これらの下面76b、94bと媒体供給部80の上面とに配置された、クランプ機構(図示省略)やカプラ機構(カプラ100及びカプラ取付部102)が干渉することを防止することができる。具体的な態様の一例を
図20Aから
図20Dを用いて説明する。
図20Aに示すように、レール90に第2のパレット94が保持されているときには、レール90の下方側に十分な距離をとって媒体供給部80を配置することができる。これによって、カプラ100と媒体供給部80との干渉を防止することができる。つぎに、
図20Bに示すように、保持されている媒体供給部80が上昇し(図中矢印)、第2のパレット94をクランプすると共に、媒体供給部80側のカプラ取付部102と第2のパレット94側のカプラ100とを連結する。これによって、媒体供給部80から油、エア、切削液を含む媒体を供給することができる。媒体の供給が完了すると、
図20Cに示すように、媒体供給部80は、第2のパレット94のクランプ及びカプラ機構の連結を解除し、下降する(図中矢印)。媒体供給部80の下降が完了すると、
図20Dに示すように、アーム64が係合位置へと回動し、第2のパレット94を保持する。このように、媒体供給部80は、パレット76及び第2のパレット94との干渉を防止した上で効率的に媒体供給を行うことができる。
【0048】
本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42は、駆動部62に回動可能に取り付けられ、係合側面76e、94eと対向したときに、係合側面76e、94eと平行となるように延在し、パレット76、94を保持する一対のアーム64と、アーム64にスライド可能に配置され、パレット係合解除位置からパレット係合位置へ移動してパレット76、94と係合するフィンガ72とを備える。このため、パレット姿勢変更装置42は、パレット76、94を保持するアーム64を駆動部62によって回動させ、水平状態と直立状態との間を含んでパレット76、94の姿勢を変更することができる。また、一対のアーム64は、パレット76、94の2つの側面、すなわち係合側面76e、94eとフィンガ72を介して係合することによってパレット76、94を安定して保持することができる。このようなアーム64によって、アーム64の挙動の実効性を確保しつつパレット姿勢変更装置42の構造を簡素にすることができる。さらに、パレット姿勢変更装置42は、アーム64におけるベース60側に配置され、2つの係合側面76e、94eの間に位置する当接側面76d、94dと対向する第1のパレット受け面74aを有する受け部74を備える。このため、アーム64の回動によって姿勢変更し、上面76a、94aが水平面に対して傾斜することによって、パレット76、94がアーム64の回転中心軸RA1側、すなわちベース60側に自重をかける場合に、パレット76、94の当接側面76d、94dを第1のパレット受け面74aに当接させることができ、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するパレット76、94を安定して保持することができる。以上のことから、パレット姿勢変更装置42は、簡素な構造を用いてパレット76、94を保持しながら姿勢変更することができ、安定したパレット搬送を可能にする。
【0049】
また、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、パレット76、94の2つの係合側面76e、94eには、アーム64の側、すなわち、X軸方向外側へ向けて延在する円柱形状のピン78が形成されている。このため、アーム64は、フィンガ72をピン78に係合させることによって、パレット76を安定して保持することができる。また、ピン78は、フィンガ72の溝部72dに対して、その表面が線当たりするだけのため、加工により生じた切りくずの挟み込みを抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、フィンガ72の溝部72dの深さ方向は、ピン78の延伸方向と一致し、かつ、ピン78が抜け落ちない程度においてフィンガ72とピン78との間に隙間(遊び)が生じるように寸法決めされている。このため、アーム64を直立位置まで回動し、パレット76を直立状態へ姿勢変更する際に、フィンガ72とピン78とが係合するため、パレット76単体での回転方向(R1方向)への移動を規制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、アーム係合部68のスライド部70及びフィンガ72は、アーム64の長手方向に沿って、パレット係合位置とパレット係合解除位置との間を作動するように構成されている。このため、アーム64の幅方向を省スペースにすることができ、アーム64をコンパクトに構成することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、スライド部70及びフィンガ72をパレット係合位置とパレット係合解除位置との間で同一方向に連動させることができ、パレット係合位置がパレット係合解除位置よりもアーム基端部66側となるように構成されている。このため、安全にフィンガ72とピン78とを係合することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、アーム64を直立位置(直立状態)と係合位置(水平状態)との間の待機位置へと位置決めすることができる。これによって、段取り室14側のパレット76と加工室12側の第2のパレット94とを入れ替えるために、APCアーム50及び旋回扉46を旋回したときに、パレット姿勢変更装置42と工作機械10内の他の部材との干渉が発生することを防止することができる。また、アーム64を係合位置まで戻すことなく、待機位置に位置決めできるため、アーム64を回動する時間を最低限に短縮することができ、ひいては、パレット76、94の姿勢変更及び交換に必要な時間を短縮することができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、受け部74は、アーム64の長手方向に対して垂直方向に延在する平面状の第1のパレット受け面74aに加えて、アーム64の長手方向に沿って延在する平面状の第2のパレット受け面74bを有する。このため、アーム64を直立位置まで回動し、パレット76、94を直立状態へ姿勢変更する際に、第2のパレット受け面74bをパレット76の下面76bに当接してパレット76、94の自重を支え、重力方向に移動することを規制することができる。これによって、アーム64は、パレット76、94を安定して保持しつつ、水平状態から直立状態へと姿勢変更することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、アーム係合部68の係合側面76eと対向する幅方向内側には、係合側面76e側へ向けて延在するアーム凸部86が形成されている。また、係合側面76eには、パレット76の内側へ凹むように形成されたパレット溝88が形成されており、アーム凸部86を挿し込むことができるように構成されている。このため、アーム64によるパレット76、94の保持を安定させることができる。さらに、アーム64を水平位置に位置決めしたときに、パレット76に不測の外力が作用した場合であっても、パレット76が工作機械10の外側へ不意に移動することを規制することができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係るパレット姿勢変更装置42によれば、アーム64は、直立状態と水平状態との間だけではなく、直立状態における直立位置から水平状態における係合位置を越えた退避位置まで回動させ、位置決め可能(静止可能)に構成されている。このため、アーム64及びアーム64の構成要素であるフィンガ72、受け部74、アーム凸部86を、搬入するパレット76に干渉しないようすることができ、パレット76の搬入を容易にすることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る工作機械10によると、工作機械10は、上述したパレット姿勢変更装置42に加えて、直立状態のパレット76を受渡しするための第1のパレット保持部82及び直立状態の第2のパレット94を受渡しするための第2のパレット保持部84を両端部に有するAPCアーム50を有するパレット交換装置44を備える。このため、パレット姿勢変更装置42によって姿勢変更したパレット76、94を主軸26側まで安定して搬送することができる。これによって、パレット姿勢変更装置42及びパレット交換装置44を備える工作機械は、簡素な構造を用いてパレット76、94を保持しながら姿勢変更することができ、安定したパレット搬送を可能にする。
【0058】
さらに、本実施形態に係る工作機械10によると、パレット76、94が水平状態に位置付けられたとき(段取り位置にあるとき)に、パレット76、94の下方側に配置されると共に、パレット76、94の下面76b、94bと連結可能に構成された媒体供給部80を配置することができる。アーム64は、パレット76、94の係合側面76e、94eを保持するように構成されているため、パレット76、94の下方側に干渉しない。このため、ここに媒体供給部80を配置し、油、エア、切削液を含む媒体をパレット76、94に供給することができる。これによって、省スペース化を図り、工作機械10をコンパクトに構成することができる。
【0059】
以上の説明のとおり、本実施形態に係る工作機械10のパレット姿勢変更装置42によれば、簡素な構造を用いてパレット76、94を保持しながら姿勢変更することによって、安定したパレット搬送を可能にすることができる。
【0060】
(変形例)
なお、ここでは、アーム64は、アーム係合部68の長手方向の両端部に2つのスライド部70及びフィンガ72を備え、受け部74は、アーム64に対して垂直方向に延在する平面状の第1のパレット受け面74aとアーム64の長手方向に沿って延在する平面状の第2のパレット受け面74bとを有するとして説明したが、これに限らない。
図21に示すように、用途に応じて、アーム係合部68の長手方向の先端部に1つのフィンガ72を備え、受け部74に第1のパレット受け面74aだけを備える構成であってもよい。このような構成であっても、アーム64を姿勢変更する際に、パレット76、94を安定して保持することができる。さらに、部品点数を減らすことができるため、工作機械10製造時の作業工数及びコスト低減を図ることができる。
【0061】
以上、工作機械10のパレット姿勢変更装置42の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。上記のほか、当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0062】
10 工作機械
26 主軸
28 工具
36 C軸ロータリテーブル(テーブル)
42 パレット姿勢変更装置
44 パレット交換装置
46 旋回扉
48 旋回扉保持部
50 APCアーム(旋回アーム)
52 切りくずカバー
56 APCアーム駆動機構(旋回駆動部)
60 ベース
62 駆動部
64 アーム
66 アーム基端部
72 フィンガ
72a 上面側規制部
72b 下面側規制部
72c 中央部
72d 溝部
74 受け部
74a 第1のパレット受け面
74b 第2のパレット受け面
76 パレット(第1のパレット)
76a 上面
76b 下面
76d 当接側面
76e 係合側面
78 ピン
80 媒体供給部
82 第1のパレット保持部
84 第2のパレット保持部
86 アーム凸部
88 パレット溝
94 第2のパレット(パレット)
94b 下面
94d 当接側面
94e 係合側面
96 治具
B B軸回転方向
C C軸回転方向
RA1 駆動部の回転中心軸
R1 駆動部の回転方向
RA2 APCアーム駆動機構の旋回中心軸
R2 APCアーム駆動機構の旋回方向
W1 ワーク
W2 ワーク
W3 ワーク
【要約】
【課題】簡素な構造を用いてパレットを保持しながら姿勢変更することによって、安定したパレット搬送を可能にするパレット姿勢変更装置を提供する。
【解決手段】上面76aと、2つの係合側面76eと、これらの間に位置する当接側面76dとを有するパレット76を、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するためのパレット姿勢変更装置42は、ベース60と、ベース60に取り付けられ、パレット76を回動可能に構成された駆動部62と、駆動部62に回動可能に取り付けられ、係合側面76eと対向したときに、これと平行となるように延在し、パレット76を保持する一対のアーム64と、アーム64におけるベース60側に配置され、当接側面76dと対向する第1のパレット受け面74aを有する受け部74と、アーム64にスライド可能に配置され、パレット76と係合するフィンガ72とを備える。
【選択図】
図2