(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/60 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01S13/60 200
(21)【出願番号】P 2024052120
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023132696
(32)【優先日】2023-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518238850
【氏名又は名称】マグナ エレクトロニクス スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 恵輔
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー カイザー
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0209402(US,A1)
【文献】特開2019-007926(JP,A)
【文献】特表2015-506474(JP,A)
【文献】特開2016-118406(JP,A)
【文献】特開2011-064624(JP,A)
【文献】特開2016-109675(JP,A)
【文献】特表2009-510652(JP,A)
【文献】特開2017-047395(JP,A)
【文献】国際公開第2021/239326(WO,A1)
【文献】特開2007-003395(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037173(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/136494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたドップラレーダより、複数の物標のドップラ速度、及び、前記移動体を基準とした前記物標の方位角を取得し、
前記移動体の速度、加速度、及び、ヨーレートが所定の条件を満たす場合、
前記物標が静的物標とみなせるか否かの判定を含むフィルタリング処理を行い、
観測可能な方位角の範囲を複数の区間に分割し、
前記フィルタリング処理を通過した物標が何れの区間に含まれるか判定し、
同一区間に所定数以上の物標が含まれる場合、所定数の物標を処理対象として残し、
ドップラ速度と方位角との関係を示す回帰曲線を、
処理対象として残した物標のドップラ速度及び方位角から回帰曲線までの直交距離に基づき生成し、
生成した回帰曲線に基づき前記移動体の速度を特定する
処理をコンピュータが行う情報処理方法。
【請求項2】
前記速度、及び、前記物標の前記ドップラ速度に基づき、前記物標の前記方位角を算出する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
周期処理により前記方位角を繰り返し出力する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記フィルタリング処理を通過した物標について、方位角が所定範囲に含まれる物標の数が閾値以上である場合に、回帰曲線を生成し、
生成した回帰曲線に基づき前記移動体の速度を特定する処理を行なう
請求項
1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記フィルタリング処理は、
前記物標の方位角が所定範囲に含まれる場合、前記物標を通過させる第1のフィルタリング処理と、
前記物標が地面に対して動いていることが明らかな観測点を除去し、静止している可能性がある静的物標を全て通過させる第3のフィルタリング処理と、
前記移動体の車速の誤差の影響を考慮して静的物標である可能性が低い観測点を除去し、静的物標である可能性が高い観測点を通過させる第4のフィルタリング処理と
を含む請求項
1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記回帰曲線を、BBSアルゴリズムを用いて求める
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
移動体に搭載されたドップラレーダより、複数の物標のドップラ速度、及び、前記移動体を基準とした前記物標の方位角を取得する取得部と、
前記移動体の速度、加速度、及び、ヨーレートが所定の条件を満たす場合、
前記物標が静的物標とみなせるか否かの判定を含むフィルタリング処理を行う第1処理部と、
観測可能な方位角の範囲を複数の区間に分割する分割部と、
前記フィルタリング処理を通過した物標が何れの区間に含まれるか判定する判定部と、
同一区間に所定数以上の物標が含まれる場合、所定数の物標を処理対象として残す第2処理部と、
ドップラ速度と方位角との関係を示す回帰曲線を、
処理対象として残した物標のドップラ速度及び方位角から回帰曲線までの直交距離に基づき生成する生成部と、
生成した回帰曲線に基づき前記移動体の速度を特定する特定部と
を備える情報処理装置。
【請求項8】
移動体に搭載されたドップラレーダより、複数の物標のドップラ速度、及び、前記移動体を基準とした前記物標の方位角を取得し、
前記移動体の速度、加速度、及び、ヨーレートが所定の条件を満たす場合、
前記物標が静的物標とみなせるか否かの判定を含むフィルタリング処理を行い、
観測可能な方位角の範囲を複数の区間に分割し、
前記フィルタリング処理を通過した物標が何れの区間に含まれるか判定し、
ドップラ速度と方位角との関係を示す回帰曲線を、
処理対象として残した物標のドップラ速度及び方位角から回帰曲線までの直交距離に基づき生成し、
生成した回帰曲線に基づき前記移動体の速度を特定する
処理をコンピュータに行わせる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の速度を特定する情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車やトラック等の自動運転や運転支援を行う車両において、レーダ等のセンサは、その搭載角度の自己診断や計測角度の自己校正を行っており、これらの処理には精密な自車速の計測が不可欠である。また、周囲の車両や歩行者の位置を継続的に識別する追跡処理においても、精密な自車速は追跡精度を上げるために不可欠である。
【0003】
このように、精密な車速は車両を制御する上で重要で計測データである。しかしながら、これまで使用されている車速センサは車両の構造に起因する誤差があることが知られている。車速センサは概ね以下の手順で車速を求めている。タイヤの回転をロータリエンコーダで計測し、ロータリエンコーダが出力する時間あたりのパルス数から、車軸の回転速度を求める。車軸の回転速度とタイヤ外周長とから、車速を計算する。そのため、タイヤの空気圧不足や摩耗により、タイヤ外周長が変化すると、実際の車速と計算した車速との誤差が生じることになる。
【0004】
このような状況に対して、車両に取り付けたドップラレーダを用いて、車速を検出することが行われている。ドップラレーダは、マイクロ波帯やミリ波帯の電波を放射する。放射する電波を送信波という。送信波は、車両周辺の物体に反射して戻ってくる。戻ってくる電波を反射波という。送信波を反射し、ドップラレーダに検知された物体を物標という。物標とドップラレーダの間に速度差がある場合、反射波はドップラ効果により周波数が変位している。この変位をドップラシフトという。ドップラシフトの量と、反射波が戻ってきた方向を示す角度(「方位角」という)とに基づき、計算により、物標との相対速度を求めることが可能である。物標が道路上の静止物、信号機、道路標識、道路照明灯、又は、街路樹等であれば、求めた相対速度は車速と等しくなる。
【0005】
しかし、ドップラレーダが送信波を放射してから、反射波を計測するまでの間、車両は走行しているため、物標が静止物であっても、方位角に測定誤差が発生し、車速の誤差となる。特許文献1には、方位角の値が小さいほど、誤差が小さくなることから、方位角が所定の閾値より小さい反射波のみを利用して、算出する車速の精度を上げる検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、方位角が所定の閾値より小さい反射波を返す物標のみを利用するので、車速を安定して検出することが困難な場合があり得る。本発明はこのような状況に鑑みてなされたものである。その目的は、車速を精度よく安定的に特定可能な情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の一態様に係る情報処理方法は、移動体に搭載されたドップラレーダより、複数の物標のドップラ速度、及び、前記移動体を基準とした前記物標の方位角を取得し、前記移動体の速度、加速度、及び、ヨーレートが所定の条件を満たす場合、前記物標が静的物標とみなせるか否かの判定を含むフィルタリング処理を行い、観測可能な方位角の範囲を複数の区間に分割し、前記フィルタリング処理を通過した物標が何れの区間に含まれるか判定し、同一区間に所定数以上の物標が含まれる場合、所定数の物標を処理対象として残し、ドップラ速度と方位角との関係を示す回帰曲線を、処理対象として残した物標のドップラ速度及び方位角から回帰曲線までの直交距離に基づき生成し、生成した回帰曲線に基づき前記移動体の速度を特定する処理をコンピュータが行う。
【発明の効果】
【0009】
本願の一態様にあっては、車速を精度よく安定的に特定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ECU及びドップラレーダの構成例を示すブロック図である。
【
図3】ドップラレーダの計測原理を示す説明図である。
【
図4】ドップラレーダの計測結果及びフィッティング曲線の例を示すグラフである。
【
図7】計測処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図9】計測処理の他の手順例を示すフローチャートである。
【
図10】フィルタリング処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図11】フィルタリング処理の他の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は情報システムの構成例を示す説明図である。情報システムはECU(Electronic Control Unit)1、ドップラレーダ2及び車両3を含む。
図1は道路を走行している車両3を上方から見た図となっている。ECU1及びドップラレーダ2は車両3に搭載されている。例えば、ECU1は車室内に設置されている。ドップラレーダ2はバンパーやエンブレム等の内部に外からは見えないように設置されている。ECU1は情報処理装置の一例である。車両3は移動体の一例である。また、一部の情報処理をドップラレーダ内で実施して、残りの情報処理をECU1で実施してもよい。ECU1をドップラレーダ2の内部に設ける構成としてもよい。
【0012】
物標4は道路又は道路の周辺に存在している物体である。物標とは、自動車や人などの交通参加者のように動いている物体、障害物、壁、又は、電信柱などのように地面上で静止している物体など含む。また、物標には、路肩や歩道の段差などの構造物も含む。一時的に停止しているものも含む、動いている物標を動的物標といい、静止している物標を静的物標という。
【0013】
図2はECU及びドップラレーダの構成例を示すブロック図である。ECU1は制御部11、記憶部12、通信部13及びインタフェイス14を含む。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してある。制御部11は、記憶部12に予め記憶された制御プログラム1P及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。制御部11は、記憶部12に記憶されている制御プログラム1P(プログラム製品)を実行することによって、取得部、生成部、特定部として機能する。
【0014】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)又は、ROM(Read Only Memory)となる、DRAM(Dynamic RAM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等のメモリ素子により構成してある。記憶部12は制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記憶してある。記憶部12に記憶された制御プログラムは、EUC1が読み取り可能な記録媒体1aから読み出された制御プログラム1Pを記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラム1Pをダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0015】
通信部13は、CAN(Control Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)又はEthernet(登録商標)等の通信プロトコルを用いた通信インタフェイスである。通信部13は、車内ネットワークに接続されている車載機器と相互に通信する。
【0016】
インタフェイス14は、シリアル通信又はパラレル通信を行うインタフェイスである。インタフェイス14とドップラレーダ2とはケーブル等によって接続される。制御部11とドップラレーダ2とのデータの入出力を行うためのインタフェイスである。
【0017】
ドップラレーダ2は、送信部21、送信アンテナ22、受信部23及び受信アンテナ24を含む。送信部21は、ECU1とインタフェイス14を介して接続されている。送信部21はECU1の制御部11からの信号に基づき、電波(送信波)を送信する。送信波は、例えば、30GHzから300GHzのミリ波帯、又は、300MHzから300GHzのマイクロ波帯の電波である。
【0018】
送信アンテナ22は、方向によって送信する電波の強度が異なる指向性アンテナである。送信アンテナ22は、送信部21と接続されており、当該送信部21から出力によって電波(送信波)を送信する。
【0019】
受信アンテナ24は、方向によって受信感度が異なる指向性アンテナである。受信アンテナ24は、受信部23と接続されており、送信アンテナ22と略同方向に向くように配置されている。受信アンテナ24は、物標によって反射された反射波を受信し、受信部23に出力する。ドップラレーダ2が物標を検出する範囲は、送信アンテナ22の指向性と受信アンテナ24の指向性とで定まる。
【0020】
受信部23は、ECU1とインタフェイス14を介して接続されている。受信部23は、物標4によって反射された反射波を、受信アンテナ24を介して取得する。受信部23は、取得した反射波を例えば、A/D変換して制御部11に出力する。
【0021】
図3はドップラレーダの計測原理を示す説明図である。ドップラレーダ2の送信部21により送信アンテナ22を介して送信波が放射される。送信波は、車両の周辺にある物標により反射される。反射波は受信アンテナ24を介して、受信部23にて観測される。送信波と反射波との周波数の差は、物標とドップラレーダ2の相対速度に応じた周波数となる。当該周波数をドップラ周波数という。ドップラ周波数より、車両3に取り付けられたドップラレーダ2を基準とする物標の相対速度(ドップラ速度)が算出可能である。
【0022】
また、ドップラレーダ2の受信アンテナ24は、指向性を有する複数の小アンテナから構成され、各小アンテナが受信した反射波の位相差から反射波の方位角を求める。物標とドップラレーダ2との方位角度は、走行している車両3の前進時の進行方向(車両前方方向)を基準に導出するものとしている。したがって、車両3の車速をHost V、物標の方位角をθとすると、物標の相対速度(ドップラ速度)Vdは、以下の式(1)で表される。
【0023】
Vd= -1 * Host V * cosθ … (1)
【0024】
θが0のとき、cosθ=1となり、Vd = -1 * Host Vとなる。すなわち、ドップラ速度Vdの極値(絶対値の最大値)が車速Host Vと等しい。ドップラ速度Vdと車速Host Vとが精度良く計測することができれば、Host Vを精度良く求めることが可能である。
【0025】
しかし、ドップラレーダ2による計測には、以下の誤差要因がある。ドップラレーダ2の送信アンテナ22及び受信アンテナ24を車両3に取り付けする際の取り付け誤差である。僅かな取り付け誤差は、方位角θの誤差要因となる。また、車両3の外観デザインを損ねないために、送信アンテナ22及び受信アンテナ24は筐体に格納し、レドーム(radome)と呼ばれるカバーで覆った上で、車両3に取り付けられるのが通常である。反射波がレドームを通過する際に、僅かな屈折が生じ、方位角θの誤差要因となる。
【0026】
ドップラ速度Vdと車速Host Vとをより精度良く得るために、誤差の補正を行う。上述したように、方位角θを説明変数とし、目的変数をドップラ速度Vdとする関数は三角関数である。また、車両3の周囲に複数の物標があり、1回の計測で複数の物標からの反射波を観測したとき、車速Host Vは一定であるみなすことができる。したがって、ドップラレーダ2による複数の観測データを、方位角θを説明変数とし、目的変数をドップラ速度Vdとする三角関数(コサイン関数)にフィッティングすることにより、誤差が補正された関数を得ることが可能となる。
【0027】
図4はドップラレーダの計測結果及びフィッティング曲線の例を示すグラフである。横軸は方位角θであり、単位は例えばラジアンである。縦軸はドップラ速度であり、単位は例えばメートル毎秒(m/s)やキロメートル毎時(km/h)である。車速の値を正とした場合、ドップラ速度は負の値となるが、
図4では絶対値で示している。
図4に示す点は、ドップラレーダ2による複数の物標の観測結果を示している。観測結果を示す点を以降、観測点という。曲線は観測結果をフィッティングしたフィッティング曲線(回帰曲線)である。
【0028】
図5はフィッティング手法に関する説明図である。
図5Aは最小二乗法によるフィッティングの説明図である。
図5Bは直交距離回帰によるフィッティングの説明図である。まず、
図5Aについて検討する。
図5Aに示すように、最小二乗法では観測点とフィッティング曲線との差分を縦軸方向で評価する。そのため、
図5Aの左図のように、フィッティング曲線の傾きが緩やかとなる箇所においては、観測点の横軸方向における位置の相違は、縦軸方向の差分として、相応に反映される。しかし、
図5Aの右図のように、フィッティング曲線の傾きが急となる箇所においては、観測点の横軸方向における位置の相違は、縦軸方向の差分として、過大に反映されてしまう。
【0029】
次に、
図5Bについて検討する。
図5Bに示すように、直交距離回帰では観測点とフィッティング曲線との差分をフィッティング曲線に対して直行する方向で評価する。そのため、
図5Bの左図のように、フィッティング曲線の傾きが緩やかとなる箇所においても、
図5Bの右図のように、フィッティング曲線の傾きが急となる箇所においても、観測点の横軸方向における位置の相違は、縦軸方向の差分として、相応に反映されることがわかる。以上のことから、観測点を曲線にフィッティング手法においては、最小二乗法に比べて、直交距離回帰の方が、精度高いことが明らかである。そこで、本実施の形態においては、直交距離回帰を用いて、曲線フィッティングを行う。
【0030】
続いて、フィッティングを行う際に用いるデータについて説明する。
図6は物標リストの一例を示す説明図である。物標リスト121はID列、方位角列、仰角列、距離列、及びドップラ速度列を含む。ID列は各物標を識別するためのIDを記憶する。IDは単なる順番号でもよい。方位角列は観測して得た物標の方位角を記憶する。仰角列は観測して得た物標の仰角を記憶する。距離列は観測して得た物標までの距離を記憶する。ドップラ速度列は観測して得たドップラ速度を記憶する。物標リスト121は観測の1周期ごとに作成、更新される。なお、ドップラレーダ2の観測結果は、以下に説明する計測処理以外の車両3に関する処理にも利用される。
図6に示したデータ項目は、以下の計測処理に特に必要な項目であり、それ以外のデータ項目を、物標リスト121は含む場合がある。
【0031】
次に、ECU1が行う処理について説明する。
図7は計測処理の手順例を示すフローチャートである。計測処理は車両3が一定速度で直進前進走行中、ECU1で繰り返し実行される処理である。例えば、一定速度とは、車速が15~120km/hであって、加速度(重力加速度を除いた成分)は1.0m/s
2以内である。例えば、直進とは、ヨーレートが1.0deg/s以内である。ECU1の制御部11は物標リスト121を取得する(ステップS1)。制御部11は車両3の走行状態を判定する(ステップS2)。走行状態は、当該計測処理とは別途、EUC1が行う処理によって取得されている。走行状態によって、フィッティングに適した計測データが得られない場合があるため、当該判定が必要となる。制御部11は処理を継続するか否かを判定する(ステップS3)。
【0032】
判定の指針は例えば以下のとおりである。車両3が直進している場合は、処理を継続すると、制御部11は判定する。車両3が直進ではなく、カーブを走行している場合、又は、交差点等を右左折している場合、又は車両3が一定の範囲(例えば、±1.0m/s2)を超えて加減速を行っている場合、車両3の走行方向が変化するため、当該計測処理には不適当な状態である。そのため、制御部11は、処理を継続しないと判定する。車両3が直進しているか否かについては、車両に搭載されるジャイロセンサなどの角速度センサから車両の旋回量やヨーレートを取得することにより判定可能である。制御部11は、車速が所定範囲内ではない場合、車両3は当該計測処理には不適当な状態である。車速が所定の第1閾値を下回っている場合、ドップラ速度が極めて小さくなり、計測や精度の良いフィッティングが困難になるからである。また、車速が所定の第2閾値を上回っている場合、方位角の角速度が大きくなることから方位角の計測精度が低下し、精度の良いフィッティングが困難となるからである。制御部11は、車両3の加速度の絶対値が所定の第3の閾値より小さい場合は、当該計測処理を継続すると判定する。加速度の絶対値が十分に小さくない場合、反射波を受信している時間区間の中でドップラ速度が変化し、ドップラ速度を精度良く計測できないことなどから、誤差の適切な補正が困難となるからである。
【0033】
制御部11は処理を継続しないと判定した場合(ステップS3でNO)、今回の周期での処理を終了する。制御部11は処理を継続すると判定した場合(ステップS3でYES)、フィッティングに用いる物標のフィルタリングを行う(ステップS4)。
【0034】
フィルタリングは、四種の処理がある。第1のフィルタリング処理では、方位角(Azimuth)が所定の範囲内であり、仰角(elevation)が所定の範囲内である観測点のみを処理対象とし、それ以外の観測点は処理対象外とする。当該処理では、正常な視野角に入っていない観測点は処理対象から除外する。
【0035】
第2のフィルタリング処理では、1周期前に計測した方位角と今回計測した方位角との変化量が、所定値未満である観測点を処理対象とし、所定値以上である観測点を処理対象外とする。当該処理では、大きく位置が変化している観測点を処理対象から除外する。なお、第2のフィルタリング処理は行わなくともよい。
【0036】
第3のフィルタリング処理では、観測点の方位角の推定される真値に対する誤差A、観測点の自車速の真値に対する誤差Vとし、誤差Aと誤差Vの最大値及び最小値から、ドップラ速度の誤差の最大値及び最小値を求める。誤差を加味したドップラ速度の取るべき値の範囲を求める。観測点のドップラ速度が、当該範囲に入っていれば、処理対象として残し、当該範囲に入っていなければ、処理対象から除外する。当該処理では、観測したドップラ速度が、物標を静的物標と仮定したときに想定されるドップラ速度と大きく異なる観測点を除外する。
【0037】
第4のフィルタリング処理では、各観測点におけるドップラ速度を求める。各観測点におけるドップラ速度の理想値(=-1 * Host V * cos(θ)で表される誤差を含まない理想的な値)との差分を集計し差分の中央値(又は平均値)を求める。各観測点の差分と、中央値との差分とが、所定値未満であれば、処理対象として残し、所定値以上であれば、処理対象から除外する。当該処理では、静的物標である可能性が高い観測点のみを処理対象として残す。
【0038】
フィルタリングでは、全ての観測点について、第1から第4のフィルタリング処理を行い、全てのフィルタで処理対象と判定された観測点を残す。または、全ての観測点に対して、第1のフィルタリング処理を行い、処理対象として残った観測点に対して、第2のフィルタリング処理を行うというように、順次、ふるい分けをおこなってもよい。
【0039】
制御部11はフィルタリングで残った観測点の数が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。制御部11は残った観測点の数が閾値未満であると判定した場合(ステップS5でNO)、今回の周期での処理を終了する。制御部11は残った観測点の数が閾値以上であると判定した場合(ステップS5でYES)、フィッティング行う(ステップS6)。
【0040】
フィッティングでは、車両3の走行速度をHost V、物標の方位角をθ、ドップラ速度Vdとしたとき、式(2)で示すフィッティング曲線を設定する。
【0041】
Vd= -1 * (Host V + α) * cos(θ + β) … (2)
【0042】
制御部11は、直交距離回帰により、処理対象として残っている観測点を用いて、最適なα、βを求める。α、βを求める方法は、例えば、BBSアルゴリズム(algorithm of Boggs, Byrd and Schnabel)を用いる。BBSアルゴリズムは、Paul T. Boggs、Richard H. Byrd、Robert B. Schnabelにより提唱されたアルゴリズムである。公知のアルゴリズムであるので説明は省略するが、アルゴリズムの詳細は以下の論文等に開示されている。Paul T. Boggs, Richard H. Byrd, Robert B. Schnabel,” A Stable and Efficient Algorithm for Nonlinear Orthogonal Distance Regression”, SIAM Journal on Scientific and Statistical Computing(米),Society for Industrial and Applied Mathematics,1987年5月,Vol. 8, No. 61
【0043】
制御部11は、フィッティングした結果と観測したドップラ速度とに基づき、自車速及びセンサの搭載角度の方位角を求める(ステップS7)。自車速はフィッティング曲線における極値である。センサの搭載角度の方位角は極値を示す方位角である。制御部11は求めた自車速と、各物標の方位角とを記憶し(ステップS8)、処理を終了する。上述したように、
図7に示した計測処理は、周期的に繰り返し実行される周期処理である。
【0044】
図8は推定結果の例を示すグラフである。横軸は時間で、単位は秒である。縦軸は車速で、単位はメートル毎秒である。
図8に示されているように、従来技術のグラフと比較して、本実施の形態のグラフは値の大きな揺らぎが少なくなり精度が向上していることが分かる。
【0045】
本実施の形態は以下の効果を奏する。フィッティング手法として、従来から広く使われている最小二乗法ではなく、直交距離回帰を採用しているため、精度のよい結果を得ることが可能となる。その結果、車速を精度良く推定することが可能となる。
【0046】
車速を精度良く推定可能であるので、車速を用いた方位角計測誤差の推定、及び補正が可能になる。すなわち、上記の式(1)を使用し、θ= acos(Vd / (-1*HostV))より、方位角計測誤差の推定が可能となる。また、ドップラレーダ2の搭載角度のズレ、例えば、本来車両前方から反時計回りに60度の方向を向いて搭載すべきところを、組立誤差等により62度の方向を向いて搭載されている場合の+2度の誤差を、車速と同時に検出可能である。
【0047】
上述の説明においては、車両3が備える制御装置はEUC1のみとしているが、それに限らない。複数のECUを備えてもよい。複数のECUを設ける場合、車両全体の制御を受け持つメインECUと、メインECUの管理の下、車両各部の制御を受け持つ複数のサブECUとを設けることが一般的である。このとき、サブECUの一つが上述のECU1となり、例えばレーダECUと名付けられる。
【0048】
また、上述の説明において、EUC1とドップラレーダ2とを別体としているが、それに限らない。特に、メインECUとレーダECUとを含むサブECUを設ける場合においては、レーダECUとドップラレーダとを一体化した装置としてもよい。
【0049】
上述の情報システムを、CCU(Central Computing Unit)を用いた形態とする場合、前述のECU(Electronic Control Unit)1、記憶媒体1aはCCUに設ける。ドップラレーダ2は外部にサテライトレーダとして設けてもよい。また、前述の参照するデータは、ECU1やCCU自身が過去に生成したデータを用いてもよい。
【0050】
上述において、送信アンテナ22及び受信アンテナ24は、それぞれ指向性アンテナとしたが、それに限らない。ドップラレーダ2の送受信アンテナとして求められる機能を果たせるのであれば、無指向性アンテナや全方向性アンテナなどを、送信アンテナ22及び受信アンテナ24として採用してもよい。
【0051】
次に、ECU1が行う処理について、他の形態を説明する。
図9は計測処理の他の手順例を示すフローチャートである。計測処理は車両3が一定速度で直進前進走行中、ECU1で繰り返し実行される処理である。例えば、一定速度とは、車速が15~120km/hであって、加速度(重力加速度を除いた成分)は1.0m/s
2以内である。例えば、直進とは、ヨーレートが1.0deg/s以内である。ECU1の制御部11は物標リスト121を取得する(ステップS11)。制御部11は車両3の走行状態判定を行なう(ステップS12)。走行状態は、当該計測処理とは別途、EUC1が行う処理によって取得されている。走行状態によって、フィッティングに適した計測データが得られない場合があるため、制御部11で走行状態判定を実施する。制御部11はその走行状態判定の結果から処理継続要否を判定する(ステップS13)。
【0052】
処理継続要否の判定指針は例えば以下のとおりである。車両3が直進している場合は、処理を継続すると、制御部11は判定する。車両3が直進ではなく、カーブを走行している場合、又は、交差点等を右左折している場合、又は車両3が一定の範囲(例えば、±1.0m/s2)を超えて加減速を行っている場合、車両3の走行方向が変化、またはドップラ速度のサンプリング中の車速変化量が大きくなるため、当該計測処理には不適当な状態である。そのため、制御部11は、処理を継続しないと判定する。車両3が直進しているか否かについては、車両に搭載されるジャイロセンサなどの角速度センサから車両の旋回量やヨーレートを取得することにより判定可能である。制御部11は、車速が所定範囲内ではない場合、車両3は当該計測処理には不適当な状態である。車速が所定の第1閾値(例えば15km/h)を下回っている場合、ドップラ速度が極めて小さくなり、計測や精度の良いフィッティングが困難になるからである。また、車速が所定の第2閾値(例えば120km/h)を上回っている場合、方位角の角速度が大きくなることから方位角の計測精度が低下し、精度の良いフィッティングが困難となるからである。制御部11は、車両3の加速度の絶対値が所定の第3の閾値(例えば±1.0m/s2)より小さい場合は、当該計測処理を継続すると判定する。加速度の絶対値が十分に小さくない場合、反射波を受信している時間区間の中でドップラ速度が変化し、ドップラ速度を精度良く計測できないことなどから、誤差の適切な補正が困難となるからである。
【0053】
制御部11は処理を継続しないと判定した場合(ステップS13でNO)、今回の周期での処理を終了する。制御部11は処理を継続すると判定した場合(ステップS13でYES)、フィッティングに用いる物標のフィルタリングを行う(ステップS14)。例えば、本実施の形態では5種のフィルタリング処理を実行する。
【0054】
図10はフィルタリング処理の手順例を示すフローチャートである。制御部11は第1のフィルタリング処理を行なう(ステップS31)。第1のフィルタリング処理では、方位角(Azimuth)が所定の範囲内であり、仰角(elevation)が所定の範囲内である観測点のみを処理対象とする。例えば、方位角の所定の範囲はドップラレーダの正面から+/-75degの範囲、且つ、仰角の所定の範囲は+/-20degを満たすか否かを判定する。
【0055】
制御部11はふるい分けを行なう(ステップS32)。制御部11は方位角及び仰角が条件を満たす観測点を処理対象として残し、そうでないものは処理対象から除外する。第1のフィルタリング処理により、制御部11は、正常な視野角に入っていない観測点を処理対象から除外する。
【0056】
制御部11は第2のフィルタリング処理を行なう(ステップS33)。第2のフィルタリング処理では、1周期前に計測した方位角と今回計測した方位角との変化量が、所定値未満である観測点を処理対象とする。例えば、1周期前に計測した観測点の方位角と今回計測した方位角の変化量が+/-20deg以下を満たす否かを判定する。
【0057】
制御部11はふるい分けを行なう(ステップS34)。制御部11方位角の変化量が条件を満たす観測点を処理対象として残し、そうでないものは処理対象から除外する。第2のフィルタリング処理では、観測点のトラッキング処理により、制御部11は、位置が大きく変化している観測点を処理対象から除外する。
【0058】
制御部11は第3のフィルタリング処理を行なう(ステップS35)。第3のフィルタリング処理では、観測における誤差の範囲を考慮し、地面に対して動いていることが明らかな観測点を除去し、静止している可能性があるものすべてを処理対象とする。例えば、観測点の方位角に対する誤差は+/-10deg、自車速の真値に対する誤差は+/-15%の範囲を用いて求められるドップラの最大値と最小値の範囲(所定値範囲)以内に、観測点が観測されているか否かを判定する。
【0059】
制御部11はふるい分けを行なう(ステップS36)。制御部11は所定の範囲で観測された観測点を処理対象として残し、そうでないものは処理対象から除外する。
【0060】
第4のフィルタリング処理(ステップS37)では、制御部11は、自車速の誤差の影響を考慮して静的物標である可能性が高い観測点を処理対象とする。例えば、各観測点について、自車速と方位角が正確であると仮定してドップラ速度の理想値を計算(車速*cos(方位角))し、ドップラ速度の観測値と理想値を比較し、自車速の誤差(自車即誤差=(ドップラ速度の観測値/ドップラ速度の理想値)-1)を求める。求められた自車速の誤差から中央値(あるいは平均値)を選び出し、その値を暫定の自車速の誤差とする。この暫定の自車速の誤差を使用し、各観測点に対し、想定されるドップラ速度を再度計算((1+車速誤差)*自車速*cos(方位角))し、観測されたドップラ速度が一定範囲内にあれば第4のフィルタリング処理を終了とする。制御部11は処理を呼び出し元へ戻す。
【0061】
制御部11はふるい分けを行なう(ステップS38)。各観測点において、観測されたドップラ速度が一定範囲内にある観測点のみを残し、そうでないものは処理対象から除外する。
【0062】
制御部11は、フィッティングの精度を向上するために観測点を間引く処理、第5のフィルタリングを行う(ステップS39)。例えば、制御部11は方位角の観測範囲を1degごとの複数の区間に区切り、各区間(同一区間)から閾値として最大1つ(所定数)の観測点を処理対象として残し、2つ目以降の観測点を処理対象から除外する。
【0063】
制御部11はふるい分けを行なう(ステップS40)。各観測点について、第5のフィルタリングで残った観測点のみを処理へとして次の処理へ渡し、そうでないものは次の処理には渡さない。
【0064】
図10に示したフィルタリング処理では、全ての観測点に対して、第1のフィルタリング処理を行い、処理対象として残った観測点に対して、第2のフィルタリング処理を行うというように、順次、ふるい分けをおこなっている。
【0065】
図11はフィルタリング処理の他の手順例を示すフローチャートである。制御部11は全ての観測点について、第1のフィルタリング処理を行なう(ステップS51)。処理内容は上述したとおりである。制御部11は各観測点が第1のフィルタリング処理で処理対象と判定された否かを記憶する(ステップS52)。
【0066】
制御部11は全ての観測点について、第2のフィルタリング処理を行なう(ステップS53)。処理内容は上述したとおりである。制御部11は各観測点が第2のフィルタリング処理で処理対象と判定された否かを記憶する(ステップS54)。
【0067】
制御部11は全ての観測点について、第3のフィルタリング処理を行なう(ステップS55)。処理内容は上述したとおりである。制御部11は各観測点が第3のフィルタリング処理で処理対象と判定された否かを記憶する(ステップS56)。
【0068】
制御部11は全ての観測点について、第4のフィルタリング処理を行なう(ステップS57)。処理内容は上述したとおりである。制御部11は各観測点が第4のフィルタリング処理で処理対象と判定された否かを記憶する(ステップS58)。
【0069】
制御部11は全ての観測点について、第5のフィルタリング処理を行なう(ステップS59)。処理内容は上述したとおりである。制御部11は各観測点が第5のフィルタリング処理で処理対象と判定された否かを記憶する(ステップS60)。
【0070】
制御部11は絞り込みを行なう(ステップS61)。制御部11は、全ての観測点の中から、全てのフィルタリング処理で処理対象と判定された観測点を残す。制御部11は処理を呼び出し元へ戻す。
【0071】
制御部11は、第1のフィルタリング処理から第5のフィルタリング処理(ステップS51、S53、S55、S57、S59)、及び、その後の記憶処理(ステップS52、S54、S56、S58、S60)を、並列処理により行ってもよい。この場合、制御部11は、全てのフィルタリング処理及び記憶処理の完了後に、ステップS61を実行する。
【0072】
前述の第1から第5までの5つのフィルタリング処理の実行順や選択するフィルタリング処理の数には制限はない。必ずしもこれら5つのフィルタリング処理をすべて実行する必要はなく、適宜必要なフィルタリング処理を実装してもよい。また、例示しているフィルタリング処理以外のフィルタリング処理を追加してもよい。例えば、第1のフィルタリング処理、第3のフィルタリング処理、第4のフィルタリング処理、第5のフィルタリング処理を実装して、この並びの順で実行してもよい。また、第4のフィルタリング処理は、第3の処理、前述の追跡処理、または前述の選出処理で大半、あるいは全ての観測点が地面に対して静止している可能性があることを確認できる場合、省略することができる。
【0073】
制御部11は、フィルタリング処理で残った観測点が、ドップラレーダの方位角の観測範囲内の、所定の範囲内に観測されているかを判定する(ステップS15)。例えば、制御部11は、残った観測点の方位角の最大値と最小値が、ドップラレーダの方位角の観測範囲(視野角)の50%以上の範囲に存在する場合、所定の範囲内に観測されていると判定する。50%以上の範囲に存在するとは、ドップラレーダが方位角に対して±θ、すなわち、2θの観測範囲を持つ場合、残った観測点の方位角の最大値と最小値との差分がθ以上となることである。制御部11は所定の範囲内に観測されていないと判定した場合(ステップS15でNO)、今回の周期での処理を終了する。
【0074】
制御部11は所定の範囲内に観測されていると判定した場合(ステップS15でYES)、以上の処理で、処理対象として残った観測点を用いて、制御部11はフィッティングを行なう(ステップS16)。フィッティングは上述したステップS4の内容と同様であるので説明を省略する。
【0075】
制御部11はフィッティングした結果と観測したドップラ速度とに基づき、自車速及びセンサの搭載角度の方位角を算出する(ステップS17)。ステップS17の内容は上述したステップS7と同様であるから説明を省略する。制御部11は求めた自車速と、各物標の方位角とを記憶し(ステップS18)、処理を終了する。
【0076】
本実施の形態における推定結果のグラフは、上記で参照した
図8と同様に、従来技術のグラフと比較して、精度が向上しているものとなる。
【0077】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 :ECU
11 :制御部
12 :記憶部
121 :物標リスト
13 :通信部
14 :インタフェイス
1P :制御プログラム
1a :記録媒体
2 :ドップラレーダ
21 :送信部
22 :送信アンテナ
23 :受信部
24 :受信アンテナ
3 :車両
4 :物標
【要約】
【課題】車速を精度よく安定的に特定可能な情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラムを提供すること。
【解決手段】情報処理方法は、移動体に搭載されたドップラレーダより、複数の物標のドップラ速度、及び、前記移動体を基準とした前記物標の方位角を取得し、前記移動体の速度、加速度、及び、ヨーレートが所定の条件を満たす場合、ドップラ速度と方位角との関係を示す回帰曲線を、取得したドップラ速度及び方位角から回帰曲線までの直交距離に基づき生成し、生成した回帰曲線に基づき前記移動体の速度を特定する処理をコンピュータが行う。
【選択図】
図7