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特許7587091バチルス・シアメンシス菌の株及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】バチルス・シアメンシス菌の株及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241113BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241113BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241113BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20241113BHJP
   A01N 63/22 20200101ALI20241113BHJP
   C05G 5/20 20200101ALI20241113BHJP
   C05F 11/08 20060101ALI20241113BHJP
   A01C 1/06 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A01P3/00
A01N25/04 102
A01N25/00 102
A01N63/22
C05G5/20
C05F11/08
A01C1/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023113514
(22)【出願日】2023-07-11
【審査請求日】2023-07-23
(31)【優先権主張番号】202310556490.2
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC M 2023289
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523263234
【氏名又は名称】湖南省野菜研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】523263245
【氏名又は名称】山東中新農業発展有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】高 建国
(72)【発明者】
【氏名】陶 禹
(72)【発明者】
【氏名】王 恒濤
(72)【発明者】
【氏名】陳 傑
(72)【発明者】
【氏名】段 広強
(72)【発明者】
【氏名】譚 放軍
(72)【発明者】
【氏名】周 池
(72)【発明者】
【氏名】王 梓屹
(72)【発明者】
【氏名】鄒 学校
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534245(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112940991(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114940958(CN,A)
【文献】国際公開第2016/163534(WO,A1)
【文献】特表2017-522045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
A01P 3/00
A01N 25/00
A01N 63/00
C05G 5/20
C05F 11/08
A01C 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の株であって、前記バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の受託番号は、CCTCC NO: M 2023289であり、受託日は、2023年3月10日であり、寄託機関は、中国典型培養物保蔵センターであり、寄託機関の住所は、中華人民共和国・武漢市・武漢大学である
ことを特徴とするバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の株。
【請求項2】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50を含有する
懸濁液。
【請求項3】
前記懸濁液の調製方法は、
(1)菌株の活性化:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50をLB固体培地に接種し、28℃で1~2日間培養する工程と、
(2)発酵種培養:上記の活性化された菌株を液体培地に接種し、33~39℃で振盪機内で170~200r/minで24時間振盪培養して、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌液を調製する工程と、
(3)発酵:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌液を発酵培地に接種し、33~39℃で振盪機内で170~200r/minで24~48時間振盪培養して、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液を調製する工程と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の懸濁液。
【請求項4】
前記工程(2)における液体培地が、大豆粕2%、酵母粉末1%、及び硫酸マグネシウム7水和物1%である
ことを特徴とする請求項3に記載の懸濁液。
【請求項5】
前記工程(3)における発酵培地が、大豆粕2%、酵母粉末1%、及び硫酸マグネシウム7水和物1%である
ことを特徴とする請求項3に記載の懸濁液。
【請求項6】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項2~5の何れか一項に記載の懸濁液からなる
植物病原菌増殖抑制剤。
【請求項7】
前記植物病原菌は、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)のうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項6に記載の植物病原菌増殖抑制剤。
【請求項8】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項25の何れか一項に記載の懸濁液からなる、柑橘のペニシリウム・ディジタータム菌による病害、柑橘のゲオトリクム・カンジダム菌による病害、柑橘のペニシリウム・イタリクム菌による病害、タバコの斑点病、トマトの葉斑病、ナスのフザリウム・ベルチシリオイデスLA-1菌による病害、ナスのフザリウム・プロリフェラタムLQ-1菌による病害、ナスのフザリウム・フジクロイ菌による病害、キュウリの斑点病、りんごの褐斑病、アブラナの菌核病、ヒッコリーの乾腐病、小麦のテイクオール病、ジャガイモの疫病、ヤクヨウニンジンのさび病、ヤシの灰斑病、テッピセッコクの炭疽病、トウモロコシの茎腐病を防除する
薬剤。
【請求項9】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項2~5の何れか一項に記載の懸濁液を含む
ことを特徴とする生物防除種子コーティング剤。
【請求項10】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項25の何れか一項に記載の懸濁液からなる
生物防除種子コーティング剤。
【請求項11】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項25の何れか一項に記載の懸濁液からなる
唐辛子鮮度保持剤。
【請求項12】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項2~5の何れか一項に記載の懸濁液からなる
生物農薬懸濁製剤。
【請求項13】
請求項1に記載のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又は請求項2~5の何れか一項に記載の懸濁液からなる
水溶性生物有機肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害の防除の技術分野に係り、具体的には、バチルス・シアメンシス菌の株及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物的防除とは、微生物の作用により、寄生、溶菌、抵抗力の活性化などの様々な方法によって、病原体の活性を抑制する病害防除方法を指す。従来、化学農薬の大規模乱用は、植物病害の問題を根本から解決できなかっただけでなく、環境汚染の深刻化や病原菌の薬剤耐性の拡大など多くの悪影響をもたらし、人々の生活に深刻な影響を及ぼした。微生物的防除には、豊かな資源、低投入、無汚染などの様々な利点がある。したがって、微生物農薬の開発はますます注目を集めており、広い将来性がある。
【0003】
バチルス・シアメンシス菌Bacillus siamensisは、2010年に刊行物『International Journal of Systematic and Eevolutionary Microbiology』によって有効な種名として記載され、バチルス科のバチルス属に属す。研究によると、バチルス属は極限条件でも生存することができ、植物病害の防除、原油の分解、土壌中化合物の分解などに利用でき、その応用に広い将来性がある。バチルス・シアメンシス菌は、通常な病害真菌に対して強い拮抗力を持っており、特にアルテルナリア・テヌイッシマ菌(Alternaria tenuissima)に対する相対拮抗効率は85.3%と高く、フザリウム属のフザリウム・グラミネアラム菌(Fusarium graminearum)、フザリウム・ソラニー菌(F. solani)、及びフザリウム・オキシスポラム菌(F. oxysporum)に対して約80%の拮抗作用を持っており、シュードモナス・ソラナセラム菌(Pseudomonas solanacearum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ボトリチス・シネレア菌(Botrytis cinerea)などに対して強い拮抗性を示しており、ピタヤ炭疽病菌(Colletotrichum gloeosporioides)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani)、白絹病菌(Sclerotium rolfsii)、黒斑病菌(Alternaria kikuchiana)、トウガラシの疫病菌(Phytophthora capsici)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani)、イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)、及びペロノフィトラ・ライチ(Peronophythora litchii)に対しても良好な拮抗活性を示している。化学農薬の使用を減らすために、微生物防除におけるバチルス・シアメンシス菌の新しい方向性を見出すことが特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学農薬の使用を減らし、微生物防除におけるバチルス・シアメンシス菌の新しい方向性を見出すために、本発明は以下の技術的解決手段を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の株であって、前記バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の受託番号は、CCTCC NO: M 2023289であり、受託日は、2023年3月10日であり、寄託機関は、中国典型培養物保蔵センター(China Center for Type Culture Collection)であり、寄託機関の住所は、中華人民共和国・武漢市・武漢大学である。
【0006】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50を含有する懸濁液であって、前記バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液内のバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の含有量は35億個/mlである。
【0007】
好ましくは、前記懸濁液の調製方法は、
(1) 菌株の活性化:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50をLB固体培地に接種し、28℃で1~2日間培養する工程と、
(2)発酵種培養:上記の活性化された菌株を液体培地に接種し、33~39℃で振盪機内で170~200r/minで24時間振盪培養して、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌液を調製する工程と、
(3)発酵:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌液を発酵培地に接種し、33~39℃で振盪機内で170~200r/minで24~48時間振盪培養して、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液を調製する工程と、を含む。
【0008】
好ましくは、前記工程(2)における液体培地が、大豆粕2%、酵母粉末1%、及び硫酸マグネシウム7水和物1%である。
【0009】
好ましくは、前記工程(3)における発酵培地が、大豆粕2%、酵母粉末1%、及び硫酸マグネシウム7水和物1%である。
【0010】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50を含有する懸濁液の用途であって、病原菌の増殖抑制に用いられる用途。
【0011】
好ましくは、前記病原菌は、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)のうちの少なくとも1つである。
【0012】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50を含有する懸濁液からなる病原菌増殖抑制剤。
【0013】
好ましくは、前記病原菌は、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)のうちの少なくとも1つである。
【0014】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50を含有する懸濁液からなる、柑橘のペニシリウム・ディジタータム菌による病害、柑橘のゲオトリクム・カンジダム菌による病害、柑橘のペニシリウム・イタリクム菌による病害、タバコの斑点病、トマトの葉斑病、ナスのフザリウム・ベルチシリオイデスLA-1菌による病害、ナスのフザリウム・プロリフェラタムLQ-1菌による病害、ナスのフザリウム・フジクロイ菌による病害、キュウリの斑点病、りんごの褐斑病、アブラナの菌核病、ヒッコリーの乾腐病、小麦のテイクオール病、ジャガイモの疫病、ヤクヨウニンジンのさび病、ヤシの灰斑病、テッピセッコクの炭疽病、トウモロコシの茎腐病を防除する薬剤。
【0015】
生物防除種子コーティング剤であって、前記生物防除種子コーティング剤は、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液を含む。
【0016】
好ましくは、前記生物防除種子コーティング剤は、2.0%の増稠剤、4.0%の不凍剤、0.16%の防腐剤、0.2%の消泡剤、0.5%の紫外線防御剤、1.0%の警告染料、3.0~5.0%の被膜形成剤をさらに含む。
【0017】
好ましくは、前記増稠剤がキサンタンガムであり、前記不凍剤がエチレングリコールであり、前記防腐剤がケーソン(イソチアゾリノン)であり、前記消泡剤がジメチルシリコーンオイルであり、前記紫外線防御剤が脱脂粉乳であり、前記警告染料が赤ビート色素であり、前記被膜形成剤はポリビニルピロリドンである。バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液からなる生物防除種子コーティング剤。
【0018】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液からなる鮮度保持剤。
【0019】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液からなる生物農薬懸濁製剤。
【0020】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50、又はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液からなる水溶性生物有機肥料。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果:
本発明は、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の株を開示し、その受託番号は、CCTCC NO: M 2023289であり、受託日は、2023年3月10日であり、寄託機関は、中国典型培養物保蔵センターであり、寄託機関の住所は、中華人民共和国・武漢市・武漢大学である。実験によると、特にマルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)に対する防除効果は80%以上に達することができ、それぞれ80.39%、100%、80.59%であり、微生物防除の技術分野に使用できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の進化系統樹解析図である。
図2】バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50のコロニー図である。
図3】バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の植物病原菌に対する拮抗結果を示す図である。
図4】バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の植物病原菌に対する拮抗結果を示す図である。
図5】バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の植物病原菌に対する拮抗結果を示す図である。
図6】バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の植物病原菌に対する拮抗結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、以下では、本発明の実施例に関連して、本発明の実施例における技術案を明確且つ完全に説明する。説明される実施例は本発明の全ての実施例ではなく、一部の実施例であることは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提に得られる全ての他の実施例は、本発明の保護の範囲に属す。
【0024】
本発明にかかるバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50は、2023年3月10日に中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託機関の住所は、中華人民共和国・武漢市・武漢大学であり、受託番号は、CCTCC NO: M 2023289である。
【0025】
以下の実施例で使用される菌株の培地は以下の通りである。
【0026】
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌と発酵培地:大豆粕2%、酵母粉末1%、及び硫酸マグネシウム7水和物1%、最後に1000mLに定容し、pH値が7.3±0.2であり、オートクレーブ滅菌(121℃、30min)する。
【0027】
LB固体培地(g/L):トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、及び寒天粉末15g/Lに水を加えて溶解させ、最後に1000mLに定容し、pH値が7.0±0.2であり、オートクレーブ滅菌(121℃、30min)する。
【0028】
PDA固体培地(g/L):ジャガイモ浸出液粉末6g、グルコース20g、寒天20gに水を加えてに溶解させ、最後に1000mLに定容し、pH値が5.6±0.2であり、オートクレーブ滅菌(121℃、30min)する。
【実施例1】
【0029】
実施例1:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50菌株の同定及び懸濁液の調製
【0030】
(1)同定
本発明におけるバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50に対して、16SrRNA遺伝子増幅を行い、PCR産物に対してシークエンシングを行って得られた遺伝子配列(16SrRNA遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:1に示す通りであり:cctcaccgacttcgggtgttacaaactctcgtggtgtgacgggcggtgtgtacaaggcccgggaacgtattcaccgcggcatgctgatccgcgattactagcgattccagcttcacgcagtcgagttgcagactgcgatccgaactgagaacagatttgtgggattggcttaacctcgcggtttcgctgccctttgttctgtccattgtagcacgtgtgtagcccaggtcataaggggcatgatgatttgacgtcatccccaccttcctccggtttgtcaccggcagtcaccttagagtgcccaactgaatgctggcaactaagatcaagggttgcgctcgttgcgggacttaacccaacatctcacgacacgagctgacgacaaccatgcaccacctgtcactctgcccccgaaggggacgtcctatctctaggattgtcagaggatgtcaagacctggtaaggttcttcgcgttgcttcgaattaaaccacatgctccaccgcttgtgcgggcccccgtcaattcctttgagtttcagtcttgcgaccgtactccccaggcggagtgcttaatgcgttagctgcagcactaaggggcggaaaccccctaacacttagcactcatcgtttacggcgtggactaccagggtatctaatcctgttcgctccccacgctttcgctcctcagcgtcagttacagaccagagagtcgccttcgccactggtgttcctccacatctctacgcatttcaccgctacacgtggaattccactctcctcttctgcactcaagttccccagtttccaatgaccctccccggttgagccgggggctttcacatcagacttaagaaaccgcctgcgagccctttacgcccaataattccggacaacgcttgccacctacgtattaccgcggctgctggcacgtagttagccgtggctttctggttaggtaccgtcaaggtgccgccctatttgaacggcacttgttcttccctaacaacagagctttacgatccgaaaaccttcatcactcacgcggcgttgctccgtcagactttcgtccattgcggaagattccctactgctgcctcccgtaggagtctgggccgtgtctcagtcccagtgtggccgatcaccctctcaggtcggctacgcatcgtcgccttggtgagccgttacctcaccaactagctaatgcgccgcgggtccatctgtaagtggtagccgaagccaccttttatgtctgaaccatgcggttcagacaaccatccggtattagccccggtttcccggagttatcccagtcttacaggcaggttacccacgtgttactcacccgtccgccgctaacatcagggagcaagctcccat)は、NCBIにおいて比較して分析して、当該菌株の分類学的位置を明らかにする。そのシークエンシング結果について、NCBIのウェブサイトにおいてBLAST比較を行い、MEGA6.0 を使用してバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の系統樹を構築する。
【0031】
系統樹の結果は図1に示され、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50のコロニー図は図2に示されている。
【0032】
(2) 懸濁液の調製
バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液の調製方法は、
(1) 菌株の活性化:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50をLB固体培地に接種し、28℃で1~2日間培養する工程と、
(2)発酵種培養:上記の活性化された菌株を液体培地に接種し、33~39℃で振盪機内で170~200r/minで24時間振盪培養して、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌液を調製する工程と、
(3)発酵:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の種菌液を0.5~1%の接種量で発酵培地に接種し、33~39℃で振盪機内で170~200r/minで24~48時間振盪培養して、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液を調製する工程であって、懸濁液に含まれるバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の菌数は35億個/mlである工程と、を含む。
【実施例2】
【0033】
実施例2:バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の18種類の植物病原菌に対する拮抗実験
【0034】
プレート対峙(plate confrontation)培養法を用いて、PDAプレートの中央に、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)を接種し、次に培地中央から2cm離れた位置にバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の菌株を十字状にタップして接種し、対照群には、病原菌を接種した後に、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の菌株を接種せずに、28℃で恒温培養し、対照群の病原菌がプレート覆いつくすように増殖した後に、阻止帯の幅を測定し、各群について6回繰り返して処理した。阻止率 (%)=(対照群の菌コロニーの直径-処理された菌コロニーの直径)/対照群の菌コロニー直径*100%であり、その結果を図3~6及び表1に示す。
【0035】
表1 バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の18種類の植物病原菌に対する阻止効果
【0036】
図3~6及び表1の実験結果によると、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50は、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)の発育を効果的に阻止でき、特にマルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)に対する防除効果は80%以上に達することができ、それぞれ80.39%、100%、80.59%であり、微生物防除の技術分野に使用できることが分かった。
【0037】
実施例2 生物防除種子コーティング剤の調製
実施例1で調製したバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液に、その質量の2%の増稠剤であるキサンタンガムと、その質量の4%の不凍剤であるエチレングリコールと、その質量の0.16%の防腐剤であるケーソンと、その質量の0.5%の紫外線防御剤である脱脂粉乳と、その質量の1.0%の警告染料である赤ビート色素とを加えて十分に攪拌混合し、最後に、その質量の3~5%の被膜形成剤であるポリビニルピロリドンを加えて再度撹拌混合することにより、生物防除種子コーティング剤を得た。
【実施例3】
【0038】
プレート対峙(plate confrontation)培養法を用いて、PDAプレートの中央に、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)を接種し、次に培地中央から2cm離れた位置にバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の菌株を十字状にタップして接種し、対照群には、病原菌を接種した後に、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の菌株を接種せずに、28℃で恒温培養し、対照群の病原菌がプレートを覆いつくすように増殖した後に、抑制帯の幅を測定し、各群について6回繰り返して処理した。抑制率(%)=(対照群の菌コロニーの直径-処理された菌コロニーの直径)/対照群の菌コロニー直径*100%であり、その結果を図3~6及び表1に示す。
【0039】
表1 バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の18種類の植物病原菌に対する抑制効果
【0040】
図3~6及び表1の実験結果によると、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50は、ペニシリウム・ディジタータム菌(Penicillium digitatum)、ゲオトリクム・カンジダム菌(Geotrichum candidum)、ペニシリウム・イタリクム菌(Penicillium italicum)、リゾクトニア・ソラニ菌(Rhizoctonia solani Kola)、ステンフィリウム・ソラニ菌(Stemphylium solani Weber)、フザリウム・ベルチシリオイデス菌(Fusarium verticillioide)、フザリウム・プロリフェラタム菌(Fusarium proliferatum(matsush.)Nirenberg)、フザリウム・フジクロイ菌(Fusarium fujikuroi)、コリネスポラ・カッシイコラ菌(Corynespora cassiicola)、マルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ボトリオスフェリア・ドチデア菌(Botryosphaeria dothidea)、ゴイマノミセス・グラミニス菌(Gaeumannomyces graminsis)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シリンドロカルポン菌(Cylindrocarpon)、ネオペスタロチオプシス・フォルミカルム菌(Neopestalotiopsis formicarum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス菌(Colletotrichum gloeosporioides)、及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)の増殖を効果的に抑制でき、特にマルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)に対する防除効果は80%以上に達することができ、それぞれ80.39%、100%、80.59%であり、微生物防除の技術分野に使用できることが分かった。
【0041】
発病率(%)=(発病したアブラナの株数/総株数)×100。
【0042】
防除効果(%)=(対照サンプルの発病率-処理サンプルの発病率)/対照サンプルの発病率×100。
【0043】
表2 アブラナ菌核病に対する生物防除種子コーティング剤の防除効果
【0044】
表2の実施データの結果によると、本発明の生物防除種子コーティング剤は、アブラナ菌核病に対して91.33%の防除効果を有し、アブラナ菌核病の発生を著しく抑制し、発病率を減少させることができる。
【実施例4】
【0045】
実施例4 トウモロコシ茎腐病に対する生物防除種子コーティング剤の防除効果
実験には、3つの処理サンプルと1つの対照サンプルとを設ける。
【0046】
CKはコーティングされていないトウモロコシの裸種子であり、
処理サンプル1は、市販の生物防除種子コーティング剤(中華人民共和国農薬登録証番号:PD20190152)でコーティングされたトウモロコシの種子であり、
処理サンプル2は、本発明の生物防除種子コーティング剤(その生物防除種子コーティング剤はバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50が含まれない)でコーティングされたトウモロコシの種子であり、
処理サンプル3は、本発明の生物防除種子コーティング剤でコーティングされたトウモロコシの種子であり、それぞれの生物防除種子コーティング剤と種子との質量比は1:45である。
【0047】
処理群とCKについてそれぞれ3つの並行群を設けて、トウモロコシの茎腐病の病原菌(ピシウム・アファニデルマータム菌)を土壌に加えてよく混ぜ、それぞれの面積が20m2で、合計240m2の12個の区画に分け、ランダムに区画に配置する。7月5日に播種し、9月20日に各区画の全ての株を調査し、被害株数を記録し、被害株率と防除効果を算出する。
【0048】
発病率(%)=(発病したトウモロコシの株数/総株数)×100。
【0049】
防除効果(%)=(対照サンプルの発病率-処理サンプルの発病率)/対照サンプルの発病率×100。
【0050】
表3 トウモロコシ茎腐病に対する生物防除種子コーティングの防除効果
【0051】
表3の実施データの結果によると、本発明の生物防除種子コーティング剤は、トウモロコシ茎腐病に対して80.22%の防除効果を有し、トウモロコシ茎腐病の発生を著しく抑制し、発病率を減少させることができる。
【0052】
実施例4 バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50からなる鮮度保持剤
【0053】
鮮度保持剤の調製:実施例1で調製したバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液を300倍に希釈して液状の鮮度保持剤を調製した。実験は3つの処理群T1、T2、T3と対照群CKに分け、処理群と対照群について3回繰り返した。T1処理:唐辛子の開花着果期及び結実期に鮮度保持剤を散布する。T2処理:唐辛子の開花着果期に鮮度保持剤を散布する。T3処理:唐辛子の結実期に鮮度保持剤を散布する。対照群CK:鮮度保持剤を散布しない。全ての実験区画はランダムに配置され、耕耘、施肥、病虫害防除の処理は同じとする。均一な成熟度と大きさを持ち、健康で機械的損傷のない唐辛子を選んで、透明なプラスチック箱に分けて包装し、軽く置き、各箱には20個の唐辛子が入っており、各群に3つの反復を設ける。常温(25~32℃)で室内に保存し、10日後に唐辛子の腐敗状況を観察・記録し、唐辛子の質量減少率と腐敗率を測定し、結果を表4に示す。
【0054】
測定方法:(1)重量損失率(質量減少率)の測定:測定対象の果実の初期質量(M1)と保存中のn回目のサンプリングによる質量(M2)をそれぞれ測定する。重量損失率(%)=[(M1~M 2)/M1]×100%、(2)腐敗率:腐敗率(%)=腐敗果実数/被検査総果実数×100。
【0055】
表4 各処理による唐辛子の質量減少率と腐敗率の結果
【0056】
表4から、唐辛子の開花着果期と結実期に鮮度保持剤を散布することで、唐辛子の質量減少率と腐敗率とを大幅に低減できることがわかった。
【実施例5】
【0057】
実施例5 バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50からなる水溶性生物有機肥料
【0058】
水溶性生物有機肥料の調製:実施例1で調製したバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液を200倍に希釈し、窒素肥料、カリ肥料、リン肥料と混合する。バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液、窒素肥料、カリ肥料及びリン酸肥料は、質量部で、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の懸濁液20~35部、窒素肥料4~11部、カリ肥料2~9部、リン酸肥料5~9部である。カリ肥料は、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウムのうちの1つ又は複数の混合物であり、窒素肥料は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素のうちの1つ又は複数の混合物であり、リン酸肥料は、過リン酸カルシウム、重過リン酸カルシウム、溶融リン酸マグネシウム(fmp)肥料のうちの1つ又は複数の混合物である。
【0059】
実験は処理群T1と対照群CKとに分け、処理群と対照群について3回繰り返した。試験対象は:ステムレタスであり、6つの実験区画を設計し、各区画面積は6m2、30株のステムレタスであり、ステムレタス出芽後、水溶性生物有機肥料を300倍に希釈し、1株あたり30mlを根部への潅水により施用し、その後、収穫まで、20日おきに同じ体積の肥料を根部への潅水により施用する。対照群は、同じ体積の浄水を根部へ潅水することにより処理される。85日後、ステムレタスの平均草丈、1株当たりの重さ、菌核症の発病率を統計し、結果を表5に示す。
【0060】
表5 異なる処理によるステムレタスの平均草丈、1株当たりの重さ、菌核症の発病率の結果
【0061】
表5の結果によると、バチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50を含有する水溶性生物有機肥料により、ステムレタスの平均草丈と1株当たりの重さを著しく向上させ、菌核症の発病率を著しく低減できることがわかる。
【要約】      (修正有)
【課題】微生物防除におけるバチルス・シアメンシス菌の株及びその用途を提供する。
【解決手段】特にバチルス・シアメンシス菌(Bacillus siamensis)KD50の株を開示する。バチルス・シアメンシス菌KD50を含有する懸濁液を提供し、該懸濁液は、病原菌の発育阻止に用いられる。特にマルソニア・マリ菌(Marssonina mali)、スクレロチニア・スクレロチオルム菌(Sclerotinia sclerotiorum)及びピシウム・アファニデルマータム菌(Pythium aphanidermatum)に対する防除効果は80%以上に達し、それぞれ80.39%、100%、80.59%である。前記バチルス・シアメンシス菌KD50を含有する懸濁液を含む、生物防除種子コーティング剤、前記懸濁液からなる、水溶性生物有機肥料も提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6