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特許7587092温度の指標である電気信号を生成する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】温度の指標である電気信号を生成する装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/01 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
G01K7/01 C
G01K7/01 S
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022513285
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 GB2020052056
(87)【国際公開番号】W WO2021038230
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】1912526.9
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】595042184
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スポレア、ラドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ベステリンク、エヴァ
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-204773(JP,A)
【文献】特開平8-78494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0077864(US,A1)
【文献】特開平5-45233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00-7/01
G05F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のソース、第1のゲート、および第1のドレインを備える第1の薄膜トランジスタTFTであって、前記第1のドレインは基準電流を受け取るように構成される、第1のTFTと、
第2のソース、第2のゲート、および第2のドレインを備える第2のTFTと、を備え、前記第1のゲートおよび前記第2のゲートは両者とも同じゲート電圧を受け取るように構成される、装置であって、
前記第1のTFTおよび前記第2のTFTは、前記第1のTFTの温度依存性が前記第2のTFTの温度依存性と異なるように構成され、したがって、前記第2のTFTおよび前記第2のドレインにおける出力電流は温度に依存する、
装置。
【請求項2】
孤立して前記第1のTFTおよび前記第2のTFTは両者とも正の温度依存性を有するか、または両者とも負の温度依存性を有し、前記第1のTFTは前記第2のTFTよりも強く温度依存し、その結果、前記出力電流の全体の温度依存性が負であり、したがって、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの温度が増大するにつれて前記出力電流の大きさは減少する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
孤立して前記第1のTFTおよび前記第2のTFTは両者とも負の温度依存性を有し、前記第2のTFTは前記第1のTFTよりも強く温度依存し、その結果、前記出力電流の全体の温度依存性が負であり、したがって、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの温度が増大するにつれて前記出力電流の大きさは減少する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のTFTおよび前記第2のTFTはソースゲート型トランジスタである、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のソースと前記第1のゲートとの間の重なりの面積Sは、前記第2のソースと前記第2のゲートの間の重なりの面積Sと異なり、したがって、前記第1のTFTの温度依存性は前記第2のTFTの温度依存性と異なる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの各々において、閾値ソース長が存在し、その閾値ソース長を超えてソース長を増大させると、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの各々を通って流れる電流の前記温度依存性への影響が無視可能となり、SおよびSの一方が前記閾値ソース長にあるかそれより上であり、SおよびSの他の一方が前記閾値ソース長より下である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のTFTの前記温度依存性が前記第2のTFTの前記温度依存性と異なるように、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTが異なる組成を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のゲートおよび前記第2のゲートは、単一ゲートのそれぞれの部分を含み、したがって、前記単一ゲートは前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの共通ゲートとして動作する、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、上方温度閾値と下方温度閾値の間の温度範囲で動作するように構成され、前記上方温度閾値および前記下方温度閾値は、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTのそれぞれの温度電流曲線の線形の部分内の温度である、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
基準電流として前記第1のドレインに一定の電流を供給するように構成される一定の電流源を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
負荷を通って流れる電流が前記第2のドレインにおける前記出力電流に依存するように前記第2のTFTに接続される負荷を備える、
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記第2のドレインにおける前記出力電流の大きさが前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの温度の指標となる温度センサとして動作するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記出力電流の前記大きさを測定するように構成された電流測定ユニットと、前記電流測定ユニットによって測定された電流に依存して前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの温度を決定するように構成された温度決定ユニットとを備える、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記温度決定ユニットは、決定された前記温度を出力するように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの温度を上げるかまたは下げるように構成される温度コントローラを備え、前記第2のTFTは、前記温度コントローラによって生成される加熱効果または冷却効果の大きさが出力電流の大きさに依存するように、前記温度コントローラに前記出力電流を供給するように構成され、
前記第1のTFTおよび前記第2のTFTおよび前記温度コントローラは、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTが実質的に一定の温度にある環境を維持するように構成される温度調整回路として前記装置が動作するように、フィードバックループを形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記温度コントローラは、発振回路の発振周波数が、前記第2のTFTによって提供される前記出力電流の前記大きさに依存するように構成される、発振回路を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記発振回路を通って流れる電流に起因する、前記第1のTFTおよび前記第2のTFTにおけるジュール熱効果は、前記第2のTFTによって提供される前記出力電流の前記大きさに依存する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
タイミング信号として前記発振回路の出力を受信し、前記タイミング信号の前記発振周波数に依存して加熱効果または冷却効果を生成するように構成され、したがって、温度制御回路によって生成された前記加熱効果または冷却効果が前記第1のTFTおよび前記第2のTFTの温度に依存する、温度制御回路を備える、
請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記発振回路は電流欠乏リング発振回路であり、前記第2のTFTは前記電流欠乏リング発振回路に含まれる複数の第2のTFTのうちの1つであり、前記複数の第2のTFTのうちの各1つは、前記第1のゲートと同じ前記ゲート電圧を受け取るように構成されたそれぞれの第2のゲートを備える、請求項16から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
請求項15から19のいずれか一項に記載の装置を備えるウェアラブル電子デバイスであって、前記装置は、前記ウェアラブル電子デバイスの少なくとも一部の温度を調整するように構成される、ウェアラブル電子デバイス。
【請求項21】
請求項1に記載の装置を設計する方法であって、
前記第2のTFTにおける前記出力電流のターゲット温度依存性を決定する段階と、
出力電流に前記ターゲット温度依存性を提供するために必要な前記第1のTFTの温度依存性および前記第2のTFTの温度依存性を決定する段階と、
前記第1のTFTの温度依存性を決定する前記段階を提供するために必要な前記第1のTFTの特性を決定する段階と、
前記第2のTFTの温度依存性を決定する前記段階を提供するために必要な前記第2のTFTの特性を決定する段階と、を備える、
方法。
【請求項22】
設計された前記装置を製造する段階を更に備える、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度の指標である電気信号を生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度の変化を検出し得る電気回路およびデバイスが知られている。例えば、酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の閾値電圧は、温度の変化を検出するために使用され得、サーミスタは、温度を増大させる出力電流を生成するように使用され得る。両者の場合において、得られる信号は温度調整のために、例えば過熱保護回路において使用されてよいだろうが、しかしながら、追加の回路が、検出された電流の増大に応答して出力電流を抑制するために必要とされるかもしれない。また、出力信号の温度依存性を変えるそのような回路においては、設計自由度が限定されるかもしれない。よって、当技術分野において、温度依存性が変わりながら出力信号を生成するように適合され得る回路設計の必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、第1のソース、第1のゲートおよび第1のドレインを含む第1の薄膜トランジスタTFTであって、第1のドレインは基準電流を受け取るように構成される、第1のTFTと、第2のソース、第2のゲートおよび第2のドレインを含む第2のTFTとを備える、装置が提供され、第1および第2のゲートは両者とも同じゲート電圧を受け取るように構成され、第1および第2のTFTは、第1のTFTの温度依存性が第2のTFTの温度依存性と異なるように構成され、したがって、第2のTFTおよび第2のドレインにおける出力電流は温度に依存する。
【0004】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、孤立して第1および第2のTFTは両者とも正の温度依存性を有し、第1のTFTは第2のTFTより強く温度依存し、その結果、出力電流の全体の温度依存性が負であり、したがって、第1および第2のTFTの温度が増大するにつれて出力電流の大きさは減少する。
【0005】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、孤立して第1および第2のTFTは両者とも負の温度依存性を有し、第2のTFTは第1のTFTより強く温度依存し、その結果、出力電流の全体の温度依存性が負であり、したがって、第1および第2のTFTの温度が増大するにつれて出力電流の大きさは減少する。
【0006】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、第1および第2のTFTはソースゲート型トランジスタである。
【0007】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、第1のソースと第1のゲートの間の重なりの面積Sは、第2のソースと第2のゲートの間の重なりの面積Sと異なり、したがって、第1のTFTの温度依存性は第2のTFTの温度依存性と異なる。
【0008】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、第1および第2のTFTの各々において、閾値ソース長が存在し、その閾値ソース長を超えてソース長を増大させると、TFTを通って流れる電流の温度依存性への影響が無視可能となり、SおよびSの一方が閾値ソース長にあるかそれより上であり、SおよびSの他の一方が閾値ソース長より下である。
【0009】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、第1のTFTの温度依存性が第2のTFTの温度依存性と異なるように、第1のTFTおよび第2のTFTは異なる組成を有する。
【0010】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、第1のゲートおよび第2のゲートは、単一ゲートのそれぞれの部分を含み、したがって、単一ゲートは第1および第2のTFTの共通ゲートとして動作する。
【0011】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、上方温度閾値と下方温度閾値との間の温度範囲で動作するように構成され、上方および下方温度閾値は、第1および第2のTFTのそれぞれの温度電流曲線の線形の部分内の温度である。実際には、温度と電流の間の関係は正確に線形でなくてもよいので、この文脈における「線形」とは、およそ、または実質的な線形を意味すると解釈されるべきであることが、理解されるであろう。
【0012】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、基準電流として第1のドレインに一定の電流を供給するように構成される一定の電流源を備える。
【0013】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、負荷を通って流れる電流が第2のドレインにおける出力電流に依存するように第2のTFTに接続される負荷を備える。
【0014】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、第2のドレインにおける出力電流の大きさが第1および第2のTFTの温度の指標となる温度センサとして動作するように構成される。
【0015】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、出力電流の大きさを測定するように構成される電流測定ユニットと、電流測定ユニットによって測定された電流に依存して第1および第2のTFTの温度を決定するように構成される温度決定ユニットとを備える。温度決定ユニットは、例えば決定された温度の可聴的または可視的な指標として、決定された温度を出力するように構成されてよい。
【0016】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、第1および第2のTFTの温度を上げるかまたは下げるように構成される温度コントローラを備え、第2のTFTは、温度コントローラによって生成される加熱効果または冷却効果の大きさが出力電流の大きさに依存するように、温度コントローラに出力電流を供給するように構成され、第1および第2のTFTおよび温度コントローラは、第1および第2のTFTが実質的に一定の温度にある環境を維持するように構成される温度調整回路として装置が動作するように、フィードバックループを形成する。
【0017】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、温度コントローラは、発振回路の発振周波数が、第2のTFTによって提供される出力電流の大きさに依存するように構成される、発振回路を備える。
【0018】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、発振回路を通って流れる電流に起因する、第1および第2のTFTにおけるジュール熱効果は、第2のTFTによって提供される出力電流の大きさに依存する。
【0019】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、装置は、タイミング信号として発振回路の出力を受信し、タイミング信号の発振周波数に依存して加熱効果または冷却効果を生成するように構成され、したがって、温度制御回路によって生成された加熱効果または冷却効果が第1および第2のTFTの温度に依存する、温度制御回路を備える。
【0020】
第1の態様によるいくつかの実施形態において、発振回路は電流欠乏リング発振回路であり、第2のTFTは、電流欠乏リング発振回路に含まれる複数の第2のTFTのうちの1つであり、複数の第2のTFTのうちの各1つは、第1のゲートと同じゲート電圧を受け取るように構成されたそれぞれの第2のゲートを備える。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による装置を備えるウェアラブル電子デバイスが提供され、装置は、ウェアラブル電子デバイスの少なくとも一部の温度を調整するように構成される。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による装置を設計する方法が提供され、方法は、第2のTFTにおける出力電流のターゲット温度依存性を決定する段階と、出力電流にターゲット温度依存性を提供するために必要な第1のTFTの温度依存性および第2のTFTの温度依存性を決定する段階と、第1のTFTの温度依存性を決定する段階を提供するために必要な第1のTFTの特性を決定する段階と、第2のTFTの温度依存性を決定する段階を提供するために必要な第2のTFTの特性を決定する段階と、を備える。
【0023】
第3の態様によるいくつかの実施形態において、方法は更に、設計された装置を製造する段階を備える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
例示のみの目的で、以下の添付の図面を参照して、本発明の実施形態がこれより記載される。
図1】本発明の一実施形態による、正または負のいずれかの温度依存性を有する電気信号を生成する装置を示す。
図2】本発明の一実施形態による、ポリSiショットキーバリアSGTの平面図を示す。
図3】本発明の一実施形態による、ポリSiショットキーバリアSGTを通る断面図を示す。
図4】本発明の一実施形態による、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)SGTを通る断面図を示す。
図5】本発明の複数の実施形態による、測定されたポリSi SGTの伝達特性を示すグラフである。
図6】本発明の複数の実施形態による、測定されたポリSi SGTの出力特性を示すグラフである。
図7】本発明の複数の実施形態による、測定されたIGZO SGTの伝達特性を示すグラフである。
図8】本発明の一実施形態による、測定されたIGZO SGTの出力特性を示すグラフである。
図9】本発明の複数の実施形態による、シミュレートされたポリSi SGTの伝達特性を示すグラフである。
図10】本発明の複数の実施形態による、シミュレートされたポリSi SGTの出力特性を示すグラフである。
図11】本発明の一実施形態による、第1および第2のトランジスタが同じソース長Sおよび同じソースドレインギャップdを有する、SGTを使用する電流ミラー(CM)型回路の平面図を示す。
図12】本発明の一実施形態による、第1および第2のトランジスタが同じソース長Sおよび同じソースドレインギャップdを有する、SGTを用いるCM型回路の平面図を示す。
図13】本発明の一実施形態による、第1のトランジスタが第2のトランジスタよりも大きいソース長Sおよびソースドレインギャップdを有する、SGTを用いるCM型回路の平面図を示す。
図14】本発明の一実施形態による、第1のトランジスタが第2のトランジスタよりも小さいソース長Sおよびソースドレインギャップdを有する、SGTを用いるCM型回路の平面図を示す。
図15】本発明の複数の実施形態による、SGTを含むCM型回路における、温度への、測定された出力電流の依存性を示すグラフである。
図16】本発明の複数の実施形態による、異なる組み合わせのSGTを用いるCM型回路における、温度への、シミュレートされた出力電流の依存性を示すグラフである。
図17】本発明の一実施形態による、SGTを用いるCM型回路における、様々な温度における、出力電流対基準電流のグラフである。
図18】本発明の一実施形態による、n型SGTおよび一定の電流源を使用するCM型回路を示す。
図19】本発明の一実施形態による、図18に示されたものに似たインバータ段によって駆動されるリング発振回路を備える装置を示す。
図20】本発明の一実施形態による、図19のリング発振回路における、温度へのインバータ段遅延依存性を示すグラフである。
図21】本発明の一実施形態による、図19のリング発振回路における、温度の変化に対するインバータ段の出力電流を示すグラフである。
図22】本発明の一実施形態による、図19のリング発振回路の、温度の変化に対するインバータ段のゲート電圧を示すグラフである。
図23】本発明の一実施形態による、図19のリング発振回路における、温度の変化に対するインバータ段のスイッチング遅延を示すグラフである。
図24】本発明の一実施形態による温度感知装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明では、本発明の特定の例示的な実施形態のみを単に例示の目的で図示および記載している。当業者であれば、記載されている実施形態がどれも本発明の範囲から逸脱することなく様々な異なる方法で修正され得ることに気付くであろう。従って、これらの図面および説明は本質的に例示的なものであり、限定的なものではないと見なされるべきである。本明細書を通じて、同様の参照番号は同様の要素を指定している。
【0026】
これより図1を参照して、本発明の一実施形態による、温度の指標である電気信号を生成する装置が示される。装置100は、同様の方式で電流ミラー回路に接続された第1のトランジスタ110および第2のトランジスタ120を備える。第1および第2のトランジスタ110、120はそれぞれ、ソース111、121、ゲート112、122、およびドレイン113、123を備える。第1および第2のトランジスタ110、120は、第1のトランジスタ110のソース111とゲート112の間の電位差が、第2のトランジスタ120のソース121とゲート122の間の電位差と同じになるように配置される。本実施形態においてこれは、トランジスタ110、120の両者のソース111、121を共通の基準電圧、この場合はアースに接続し、同じゲート電圧Vをトランジスタ110、120の両者のゲート112、122に供給することによって達成される。
【0027】
図1に示されたものなどの回路は、本明細書では「CM型」回路と呼ばれる。用語「CM型」は、回路が、電流ミラーに同様の方式で接続された2つのトランジスタを備えるが、回路が電流ミラーと全く同じやり方で挙動を示すことを暗に含まない、という意味として理解されるべきである。下で説明されるように、固定された割合の基準電流が全ての温度における出力へとコピーされる従来の電流ミラーとは対照的に、本発明の実施形態は、温度に依存する出力電流を生成するように、第1および第2のトランジスタ110、120の相違点を利用する。
【0028】
また、本実施形態において、装置100は、一定の基準電流Irefを供給するように構成された一定の電流源130を備える。一定の電流源130の出力は、第1のトランジスタ110のドレイン113に接続され、また、第1のトランジスタ110のゲート112および第2のトランジスタ120のゲート122に接続される。換言すれば、第1のトランジスタ110のゲート112および第2のトランジスタ120のゲート122は両者とも、第1のトランジスタ110のドレイン113に接続される。このやり方で、第1のトランジスタ110のゲート112および第2のトランジスタ120のゲート122には、それぞれ同じゲート電圧Vが供給され、本実施形態におけるそれは、一定の電流源130の出力における電圧である。他の実施形態において、一定の電流源130の代わりに、様々な電流源が使用されてよい。そのような実施形態において、第1のトランジスタ110のゲート112および第2のトランジスタ120のゲート122には、例えば図1に示された実施形態におけるものと共通のノードにゲート112、122の両者を接続することによって、同じゲート電圧Vが更に供給されてよい。
【0029】
別の実施形態において、第1および第2のトランジスタ110、120のソース111、121は、図1に示されるように互いに直接接続されなくともよく、代わりに、ソース111、121の両者に同じ電圧を供給するように構成された個別の入力に接続されてよい。同様に、別の実施形態において、第1および第2のトランジスタ110、120のゲート112、122は、図1に示されるように互いに直接接続されなくともよく、代わりに、ゲート112、122の両者に同じ電圧を供給するように構成された個別の入力に接続されてよい。
【0030】
従来の電流ミラーにおいて、第1および第2のトランジスタは両者とも同じ温度依存電流および電圧特性を有する。電流ミラーの機能は、第2のトランジスタの出力における、基準電流または固定された割合の基準電流を複製することであるので、同じトランジスタの使用は、基準電流が正確にコピーされることを確実にする。しかしながら、発明者は、異なる温度依存性を示すトランジスタ110、120を使用することによって、第2のトランジスタ120のドレイン122において得られる出力電流が温度によって変わり、従って、第1および第2のトランジスタ110、120の温度の指標となることを認識した。従って、本発明の実施形態において、第1および第2のトランジスタ110、120は、第1のトランジスタ110の温度依存性が第2のトランジスタ120の温度依存性と異なるように構成される。結果として、第2のトランジスタ120のドレイン123に接続されたロードR140を通って流れる出力電流Iは、従来の電流ミラー回路とは異なり、温度に依存する。さらに、出力電流Iの温度依存性は、第1および第2のトランジスタ110、120の相対的な温度依存性を適切に選択することによって、制御することができる。
【0031】
上に記載されるように、装置100は、温度の指標である電気信号を生成するように使用され得る。本実施形態において、温度の指標である信号は、第1および第2のトランジスタ110、120の温度に依存する大きさを有する電流Iを備える。そのような装置100は、例えば、温度センサとして、または、温度調整回路におけるフィードバックループの一部として、様々な用途における使用を見出し得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1のトランジスタ110および/または第2のトランジスタ120は、ソースゲート型トランジスタ(SGT)であってよい。図2は、本発明の一実施形態による、ポリSiショットキーバリアSGT210の平面図を示す。図2に示されたSGT210は、ソース211、ゲート212、ドレイン213、およびフィールドプレート214を備える。SGTにおいて、ドレイン電流の温度依存性はソースゲートオーバーラップSに依存し、それはまた「ソース長」とも呼ばれることがある。SGTの代わりに薄膜トランジスタ(TFT)が使用される実施形態において、SGTにおけるソース長Sと同等のパラメータは、チャネル長さLであろう。従って、トランジスタ110、120両者の出力電流の相対的な温度依存性は、SGTが使用されるときは、単に適切なソースゲートオーバーラップSを選択することによって制御されることができる。他のタイプのトランジスタが使用されるときは、第1および第2のトランジスタは、温度依存性に影響する別の特性において異なってもよい。例えば、いくつかの他のタイプの薄膜トランジスタ(TFT)は、チャネル長さLによって変わる温度依存性を有してよく、CM型回路における所望のPTDまたはNTD出力電流は、適切なチャネル長さLを選択することによって取得され得る。いくつかの実施形態において、異なるタイプのトランジスタの組み合わせが使用されてよい。例えば、1つの実施形態において、第1および第2のトランジスタ110、120のうちの一方が非SGT TFTであってよく、第1および第2のトランジスタ110、120のうちの他の一方がSGT TFTであってよい。
【0033】
さらに、本発明の実施形態において、第2のトランジスタ120のドレイン123における電流Iの温度依存性(TD)は、正(PTD)か負(NTD)のいずれかであり得る。図2に示されたものなどのSGT210において、ソース211のドレイン側エッジから注入される電流は高いPTDを有する一方、ソース211のバルクからの電荷注入が優越し始めるので、Sが増加するにつれてPTDは減少する。異なる温度挙動は、それ以外は同じであるデバイスにおいてSを変えることによって取得され得る。よって、第1および第2のトランジスタ110、120の各々の出力電流温度依存の適切な選択によって、本発明の実施形態は、出力電流IのTDが高程度に設定可能であり、構成要素が比較的少ない回路を提供し得る。第1および第2のトランジスタの相対的な幅が同じでない場合、CM型回路の出力電流は、トランジスタの幅比によって増幅されるか、または抑制されるであろう。しかしながら、出力電流の温度への依存性は、2つのトランジスタの間のSの比によって更に制御されるであろう。
【0034】
図1に示される100などの回路は、第1および第2のトランジスタ110、120の相対的なTDに依存するPTDまたはNTDを有する電流を生成することができるが、例えば、ウェアラブル電子またはセンサシステムなどのコンパクトなデバイスにおける過熱からの保護のための温度感知回路および自己制御回路といった、広い範囲の用途において役立つことが判明し得る。そのような回路は、プリントされたフレキシブルな大面積電子回路などの用途に特に適しており、したがって、少ない数の構成要素の使用で所望のPTDまたはNTD特性を有する電流の生成を可能にすることによって、本発明の実施形態は、信頼性の増大および製造歩留りの向上に役立ち得る。
【0035】
ポリSiショットキーバリアSGT210が図2に示されているが、本発明の他の実施形態においては、異なるタイプのトランジスタが、第1および第2のトランジスタ110、120として使用されてよい。図3は、本発明の別の実施形態による低温ポリSi(LTPS)ショットキーバリアSGTの断面図を示し、図4は、本発明の更なる実施形態によるトンネルコンタクトSGTを通る断面図を示す。図4の実施形態において、トンネルコンタクトSGTはインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)から形成されるが、他の実施形態において、任意の他の好適な材料が使用されてよい。図3のLTPS SGT310は、ソース311、ゲート312、およびドレイン313を備える。図4のIGZO SGT410はまた、ソース411、ゲート412、およびドレイン413を備え、半導体活性層415とソース411とドレイン413の間に配置された絶縁層414を更に備える。図3は、バルクからの、LTPSトランジスタ310のソースのドレイン側エッジにおける異なる電荷注入経路を示し、同様の経路はまた、IGZOトランジスタ410にも当てはまる。
【0036】
さらに、特定のTFT構造が図2から4に示されるが、本発明の他の実施形態において、図2から4に示されるものとは異なるタイプの、例えば異なる材料および/または異なる構造を使用したトランジスタが使用されてよい。例えば本実施形態において、絶縁層414がソースドレインギャップを覆って、ならびにソースおよびドレイン電極411、413を覆って配置されるが、他の実施形態において、絶縁層414はソース電極411を覆うのみで、ソースドレインギャップおよびドレイン電極413からは省略されて配置されてもよい。
【0037】
下にある表1は、図3のLTPS SGT310および図4のIGZO SGT410のデバイスパラメータを、技術コンピュータ支援設計(TCAD)シミュレーションにおいて使用されるシミュレーションパラメータと共に要約する。下に列挙された寸法および材料は、発明の理解を補助するための単なる例示的な例として提供されたにすぎず、限定として解釈されるべきではないことが、理解されるべきである。他の実施形態において、第1および第2のトランジスタ110、120は、表1に列挙されたものとは異なる材料および/または異なる寸法を使用してよく、または、異なる温度依存性を有する異なるタイプのTFT(例えば、1つのトランジスタはSGT TFTであってよく、他方は別のタイプのTFTであってよい)を備えてよい。
【表1】
表I
【0038】
図5および6は、図3のSGT310に似たポリSi SGTに関する、測定された電気的データをを表すグラフを示す。温度T=300KおよびT=330K、5Vの一定のドレイン電圧Vにおける、様々な組み合わせのSおよびdに関する伝達特性が図5にプロットされる。図6は、T=300KおよびT=330K、12Vの一定のゲート電圧Vにおける、図5と同じ組み合わせのSおよびdに関する出力特性をプロットする。本実施形態において、SGTはバルクドーピングに起因して空乏で動作し、典型的な低電圧飽和およびdにおけるドレイン電流の独立性を示す。さらに、図6に示されるように、飽和されたドレイン電流は、実際にはドレイン電圧に依存しない。このことは、望ましい特性であり得る。なぜなら、結果として、出力電流は回路R上の負荷の抵抗のばらつきに(または同等に、電源電圧のばらつきに)無反応であるからである。SGTにおける2-D電荷注入プロセスに起因して、ドレイン電流の温度依存性は、より短いソースを有するデバイスに関してわずかに高くなる。本発明の実施形態において、この動作は、NTDおよびPTD電流を生成するように図1に示されたものと似た回路において、利用可能である。
【0039】
図7および8は、図4のSGT410と似たIGZO SGTに関する、測定された電気的データを表すグラフを示す。温度T=300KおよびT=330K、5Vの一定のドレイン電圧Vにおける、S=45μmおよびS=9μm、両者ともd=50μmのデバイスに関する伝達特性が、図7にプロットされる。図7は、より長いソースを有するデバイスに関して、ドレイン電流PTDがより大きくなることを示す。図8は、様々な値のゲート電圧Vに関する、T=300KでS=45μmのデバイスに関する出力特性をプロットし、デバイスがSGT挙動を証明することを示す。低電圧挙動は超線形(supra-linear)であるが、トランジスタが飽和して動作する図1に示されたものなどのCM型回路における機能性を妨害しない。
【0040】
図9および10は、本発明の一実施形態による、Silvaco Atlas v.5.24.1.Rを使用したポリSi拡張モードデバイスにおけるTCAD熱的および電気的共シミュレーション(thermal and electrical co-simulation)の結果を示す。シミュレーションに使用されるデバイスパラメータは、表1に与えられる。温度T=300KおよびT=340K、5Vの一定のドレイン電圧Vにおける、S=1μm、S=5μ、およびS=25μmのポリSi SGTデバイスに関するシミュレートされた伝達特性が、図9にプロットされる。図10は、T=300KおよびT=340K、8Vの一定のゲート電圧Vにおける、図9と同じデバイスに関する出力特性をプロットする。
【0041】
図9および10に示されるように、シミュレートされたポリSi SGTは、図6および7における、製品のポリSi SGTと同様の特性を示す。S=1μmでシミュレートされたデバイスは、小さいソース面積に起因して、ドレイン電流を抑制した。また、このデバイスにおけるドレイン電流は、ソース端からの注入が優越するので、大きいPTDを有する。S=5μmおよびS=25μmでシミュレートされたデバイスは非常に似た挙動を示し、それらのデバイスの両者においても、ソースのバルクからの注入が優越するだけでなく、5μmと同じくらい早くSを増加させながら飽和することを示す。換言すれば、1から5μmにソース長を増大させると、ドレイン電流の温度依存性に比較的大きい効果を与えるが、5μmを超えてソース長の増大を継続すると、出力電流の大きさおよびその温度依存性の大きさの両者に、与える影響は比較的小さい。
【0042】
よって、任意の所与のデバイスジオメトリおよび材料の組み合わせに関して、温度依存性の飽和が生じる閾値ソース長STsatが存在し、したがってこの閾値STsatを超えるソース長の増大は、ドレイン電流に与える影響がごくわずかである。本発明の実施形態において、第1および第2のトランジスタ110、120の間のTDにおけるより大きいコントラスト、および、その結果としての、より強いPTDおよびNTD出力電流は、トランジスタ110、120のうち一方に関して、閾値ソース長STsatであるかそれを上回るソース長Sを選択することによって、および、他方のトランジスタに関して、閾値ソース長STsatを下回るソース長Sを選択することによって、取得され得る。高いPTDまたは高いNTDののいずれにおいても、温度へのより強い依存性を有する出力電流は、他方のトランジスタに関して、閾値ソース長STsatをはるかに下回るソース長Sを選択することによって、取得され得る。
【0043】
これより、図11から14を参照して、本発明の実施形態による、SGTを使用する図1に示されたものと似たCM型回路の平面図が示される。図1の実施形態と同様に、図11から14に示される各回路は、第1のソース111、第1のゲート112、および第1のドレイン113を備える第1のトランジスタと、第2のソース121、第2のゲート122および第2のドレイン123を備える第2のトランジスタとを含む。図11から14の実施形態において、第1のゲート112および第2のゲート122は、単一ゲート端子のそれぞれの部分を含み、したがって、単一ゲート端子は第1および第2のトランジスタの共通ゲートとして動作する。
【0044】
図11は、第1および第2のトランジスタが同じソース長Sおよび同じソースドレインギャップdを有する一実施形態を示す。図12もまた、第1および第2のトランジスタが同じソース長Sおよび同じソースドレインギャップdを有する一実施形態を示すが、Sおよびdは図11の実施形態より小さな値をとる。第1および第2のトランジスタは、両者の場合において同じ寸法を有するので、同じ材料が第1および第2のトランジスタに使用されるならば、次に、回路は理想的な電流ミラーとしての挙動を示すであろう。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態において、第1および第2のトランジスタにおいて異なる材料および/またはドーパントレベルを使用することによって、第1および第2のトランジスタのTDの間に差が引き起される。そのような実施形態において、第1および第2のトランジスタは、互いに同じ寸法を有してもよく、異なる寸法を有してもよい。
【0045】
図13および14は、第1のトランジスタが、第2のトランジスタと異なる値のSおよび/または異なる値のdを有する実施形態を示し、第1および第2のトランジスタが異なるTDを有する結果となる。図13において、第1のトランジスタは第2のトランジスタよりも大きいソース長Sおよび大きいソースドレインギャップdを有する。図14において、第1のトランジスタは第2のトランジスタよりも小さいソース長Sおよび小さいソースドレインギャップdを有する。第1および第2のトランジスタが図13および14において異なるソース長Sを有するので、両者の実施形態において、第1および第2のトランジスタは、同じ材料で形成されてよく、更に異なるTDを示すであろう。しかしながら、いくつかの実施形態において、図13および14に示される例などの異なるソース長Sを有するトランジスタもまた、互いに異なる材料から形成されてよい。
【0046】
これより、図15および16を参照して、本発明の実施形態による、異なるソース長Sを有するSGTを含むCM型回路における、測定された、およびシミュレートされたデータが示される。図15は、ポリSi SGTを含むCM型回路における、温度に対する出力電流の測定された依存性を示すグラフである。具体的に、SM1=2μmである第1のトランジスタ(M1)およびSM2=8μmである第2のトランジスタ(M2)を備える回路、SM1=2μmである第1のトランジスタ(M1)およびSM2=2μmである第2のトランジスタ(M2)を備える回路、およびSM1=8μmである第1のトランジスタ(M1)およびSM2=2μmである第2のトランジスタ(M2)を備える回路に関するデータが、図15にプロットされる。
【0047】
図15に示されるように、第1のトランジスタが第2のトランジスタより小さいソース長Sを有する(SM1<SM2)実施形態において、出力電流の全体のTDは負であり、第1および第2のトランジスタの温度が増大するにつれて出力電流の大きさは減少することを意味する。このことは、第1のトランジスタのドレイン電流のPTDが第2のトランジスタのそれより高いために生じ、これは、シリコンにおけるショットキーコンタクトSGTの場合には、例えば図14の実施形態に示されるような、より短いソース長Sを第1のトランジスタにおいて使用することによって取得され得る。そのような実施形態において、第1のトランジスタが一定の電流Irefで駆動されるとき、回路の全体の温度の増大は、第1および第2のトランジスタの両者におけるゲート電圧の減少という結果をもたらす。しかしながら、第2のトランジスタは第1のトランジスタより低いPTDを有するので、第2のトランジスタのより長いソース長Sに起因して、第2のトランジスタのドレイン電流(すなわち、回路の出力電流)は温度を抑制させる。図15にプロットされたデータにおいて、-0.53%/Kの平均温度感度出力電流(TSOC)が、SM1=2μmおよびSM2=8μmの実施形態において確認される。
【0048】
逆に、他の実施形態において、図13に示された実施形態の場合のように、PTD出力電流は第1のトランジスタよりも短いソース長Sを有する第2のトランジスタを使用して取得され得る。図15にプロットされたデータにおいて、+0.64%/KのTSOCが、SM1=8μmおよびSM2=2μmの実施形態において確認される。SM1=SM2=2μmである同じトランジスタによる実施形態において、TSOCは+0.06%/Kと事実上ごくわずかであり、デバイスが理想的な電流ミラーに近い挙動となることを示す。
【0049】
図16は、本発明の実施形態による、Sおよびdの異なる組み合わせによるポリSi SGTを使用するCM型回路における温度へのシミュレートされた出力電流の依存性を示すグラフである。図16における出力電流温度依存は、直流(DC)条件のもとでシミュレートされた。図15にプロットされた測定データと比較すると、図16にプロットされたTCADシミュレーションは、同様の挙動を示すが、デバイスの間のソース長Sの差がより大きいことに起因して、TSOCがより大きくなっている。SM1=1μmおよびSM2=25μmであるデバイスのシミュレーションにおいて、-1.83%/KのTSOCが確認され、SM1=25μmおよびSM2=1μmであるデバイスのシミュレーションにおいて、+3.15%/KのTSOCが確認される。第1および第2のトランジスタが同じソース長(SM1=SM2=1,5,25μm)である実施形態において、+0.002%/KのごくわずかなTSOCが確認される。
【0050】
図10を参照して上に記載されるように、閾値ソース長STsatが存在し、その閾値ソース長を超えて更にソース長を増大させると、ドレイン電流にほとんどまたは全く影響を与えない。図16にプロットされたTDACシミュレーションにおいて使用されるデバイスジオメトリおよび材料に関して、この閾値STsatはS=5μm近くで生じる。例えば、本実施形態において、閾値STsatは約10μmであってよい。また、上で記載されるように、第1および第2のトランジスタ110、120の間のTDにおける、より大きいコントラストと、結果としての、より強いPTDまたはNTD出力電流は、トランジスタ110、120の一方におけるソース長Sを閾値ソース長STsatまたはそれより上に選択し、他方のトランジスタにおけるソース長Sを閾値ソース長STsatの下に選択することによって、取得可能である。
【0051】
この影響は図16で参照可能であり、SM1=1μm、SM2=5μmおよびSM1=1μm、SM2=25μmのデバイスは両者とも、強いNTDである出力電流を生成するが、SM1=5μm、SM2=25μmのデバイスは非常に弱いNTDのみの出力電流を生成する。同様に、SM1=25μm、SM2=1μmおよびSM1=5μm、SM2=1μmのデバイスは両者とも、強いPTDである出力電流を生成するが、SM1=25μm、SM2=5μmのデバイスは非常に弱いPTDのみの出力電流を生成する。よって、トランジスタ110、120の一方におけるソース長Sを閾値ソース長STsatまたはそれより上に選択し、他方のトランジスタにおけるソース長Sを閾値ソース長STsatの下に選択することによって、温度の変化への感度がより大きいCM型回路が取得可能である。
【0052】
また、図16に示されるように、デバイスの温度電流曲線は、約305Kと325Kの間でほぼ線形の部分を示し、この温度範囲の外側では非線形挙動を示す。いくつかの実施形態において、装置100は、上方温度閾値および下方温度閾値の間の温度範囲で動作するように構成され、上方および下方温度閾値は、第1および第2のトランジスタのそれぞれの温度電流曲線の線形部分内の温度である。このやり方で、装置100の出力電流は、設計された動作範囲を通じて温度に比例してほぼ線形のままであり、出力電流の大きさを温度の測定値に変換することを容易にする。いくつかの用途において、非線形の方式で温度を変化させる出力電流を有すること、例えば、ある範囲内の温度で、出力電流を温度変化により敏感にすること、が好ましいことがある。
【0053】
これより図17を参照して、本発明の一実施形態に係るる、IGZO SGTを用いる電流ミラー回路における、様々な温度における出力電流対基準電流のグラフを示す。図17にプロットされるデータは、IGZO回路が、上で記載されるポリSiベースの回路と同じ全体の影響に到達することを示す。本実施形態において、第1のトランジスタは第2のトランジスタよりも高いPTDを有するドレイン電流を有し、-1.17%/KのTSOCが取得される。
【0054】
これより図18および19を参照して、本発明の一実施形態による、リング発振回路1902を備える装置を示す。図18は、図1に示されたものと似たCM型配置で接続される、第1および第2のトランジスタ1810、1820を備える回路を示す。加えて、図18の回路は、第2のトランジスタ1820のドレインに接続されたソースを有する第3のトランジスタ1841を備える。第3のトランジスタ1841のソースの電圧Voutは、キャパシタ1842の一方の端子に提供され、その他方の端子がアースに接続される。
【0055】
図19は、図18に示されたものに基づき、図1に示されたものに似たCM型回路において接続された第1および第2のトランジスタ1901を備え、第3のトランジスタ1830のアレイによって駆動される発信器コア1902を備え、それらの各々は第2のトランジスタ1820からコピーされた電流を受け取る、装置1900を示す。リングオシレータの各段は、信号反転特性を有する信号増幅段を含み、本実施形態においてはインバータ論理ゲートを備える。各段は、図18の第2および第3のトランジスタ1820、1841に似た装置を備える。全ての段における第3のトランジスタ1841は、入力として共に接続されるゲートおよび、出力として共に接続されるドレインを有してよく、各段の出力は、次の段における入力の役割を果たす。いくつかの実施形態において、第2のトランジスタ1820が、図19におけるトランジスタのより低い行に示されるように、各段の底部において複製されることを条件に、第3のトランジスタ1841はインバータとして使用されてよい。
【0056】
発振回路1902は、第1および第2のトランジスタ1901の近くに配置され、したがって、第1および第2のトランジスタ1901の温度は、発振回路1902の温度によって影響される。発振回路に起因する第1および第2のトランジスタ上の加熱効果は、発振回路を通って流れる電流の大きさに依存し、また、外部温度に依存する。このやり方で、発振回路はジュール加熱によって、発振回路を通って流れる電流を増大させることにより、第1および第2のトランジスタの温度を増大させる。
【0057】
本実施形態において、発振回路1902は電流欠乏リング発振回路であり、第2のトランジスタは、電流欠乏リング発振回路の複数の第2のトランジスタの1つである。発振回路1902は、第2のトランジスタの一方を各々が含む複数の段を備え、各第2のトランジスタは、第1のゲートと同じゲート電圧を受け取るように構成されるそれぞれの第2のゲート電極を備える。このやり方で、出力電流Iは発振回路1902の各段にコピーされ、したがって、トランジスタM2における出力電流の変化は、発振回路1902の各段階を通って流れる電流における対応する変化をもたらす。第2のトランジスタM2のドレインにおける出力電流は負の温度依存性を有し、電流欠乏リングオシレータ1902は、負のフィードバック機構を介して装置1900の温度に従ってその動作周波数を適合させる。追加的に、CM型回路1901がNTD出力電流を生成するように構成されるとき、電流欠乏リングオシレータ1902は、発振回路1902によって駆動される任意の他の回路の動作速度および電力散逸を自己制御するであろう。いくつかの実施形態において、温度に依存しない安定したクロック信号を生成するように構成された回路によって、正確なクロックが個別に生成されてよい。
【0058】
第1および第2のトランジスタ1901および発振回路1902は共に、第2のトランジスタM2のドレインにおける出力電流の負の温度依存性に起因して、装置が温度調整回路として動作するようにフィードバックループを形成する。追加的に、発振回路1902は装置1900を取り囲む環境の温度に影響を与えるために十分強力であってよく、および/または、個別の加熱または冷却デバイスを駆動するように構成されてよい。このやり方で、温度調整回路は実質的に一定の温度で装置1900を取り囲む環境を維持するように使用されることができる。例えば、装置1900はウェアラブル電子デバイスを含んでよく、ウェアラブル電子デバイスの少なくとも一部における温度を調整するように使用されてよい。いくつかの実施形態において、衣服を着用するヒトの温度を調整するために役立つように、回路は衣服に集積されてよい。
【0059】
例えば、いくつかの実施形態において、図19に示されるものなどの発振回路1902の出力が、追加の回路へのタイミング信号として使用されてよく、したがって、追加の回路に提供されるタイミング信号の周波数が、温度に従って変化する。追加の回路は、動作している回路1902によって提供されるタイミング信号の周波数に依存して加熱効果または冷却効果を引き起こすように構成され得、したがって温度制御回路と呼ばれることがある。例えば、温度制御回路は、発振回路1902からのタイミング信号によって制御されるような動作周波数に比例して熱を放散するように構成されてよい。このやり方で、第1および第2のトランジスタ1901の温度の増大が、発振回路1902によって生成されるタイミング信号の周波数を抑制し、それにより、温度制御回路における熱放散を抑制させ、結果として第1および第2のトランジスタ1901の温度を抑制する。この装置は、例えば、温度制御回路がそれぞれの温度の安全動作限度に保たれることを確実にし得、または、温度制御回路によって放散される熱が、システムのユーザまたは他のコンポーネントにとって有害であり得るレベルに温度を上昇させないことを確実にし得る。
【0060】
他の実施形態において、図19に示されたものと似た回路が提供され、第1および第2のトランジスタ1901が、温度に正の依存性を有する第2のトランジスタM2のドレインにおいて出力電流を生成するように構成される。この場合、発振回路周波数は温度と共に増大し、敏感な温度センサとして使用され得る。例えば、カウンタは発振回路の周波数を決定し、それを温度の測定値に変換するように使用され得る。
【0061】
発振回路1902は、より一般的には温度コントローラと呼ばれてよく、したがって、発振回路1902の機能は第1および第2のトランジスタ1901の温度および取り囲む環境を制御するためのものである。本実施形態において、温度コントローラは発振回路であるが、他の実施形態においては、異なるタイプの温度コントローラが異なるように実装されてよい。例えば、いくつかの実施形態において、図1に示されるものなどのCM型回路は、ペルチェ素子の形態で温度コントローラに接続されてもよく、第1および第2のトランジスタは、ペルチェ素子の高温側または低温側のいずれかに配置される。このやり方で、ペルチェ素子は第1および第2のトランジスタ、ならびに取り囲む環境を、第2のトランジスタのドレインによって提供される出力電流に依存している加熱効果または冷却効果の大きさで、熱するか冷却するかのいずれかが可能である。
【0062】
これより図20を参照して、本発明の一実施形態による、図19の回路に含まれる図18の回路における温度に依存するインバータ段遅延を示すグラフが示される。
【0063】
図18に示されたものと似た装置が、図16に対して上に記載されたAtlas混合モード能力を使用して図19に示される回路の一部としてシミュレートされ、SPICE回路が、SPICE(すなわち、キャパシタ)およびアトラス(物理的にモデリングされた)デバイスの両者を使用して、記載され、シミュレートされる。図18に示される共通ソース増幅器は、アクティブな負荷としてCM型回路を使用し、方形波によって駆動される。過渡シミュレーションが回路の時間応答を研究するために使用されてきたが、シミュレーション結果が図20から23にプロットされる。
【0064】
図20に示されるように、装置1800の温度が上昇するにつれてCM型回路の出力電流Ioutは減少し、したがって、本実施形態において、第1および第2のトランジスタ1810、1820がNTD出力電流Ioutを生成するように構成される。結果として、負荷キャパシタ1842(CL=10pF)が放電するために取られる時間が増大し、図19の発振回路1902の動作速度、および従って熱放散は、減少する。これはネガティブフィードバックループを構成し、したがって、装置1900の温度の増大は、発振回路1902によって生成されている熱をより少なくすることをもたらす。図21は、発振回路1902におけるインバータ段1800の出力電流の温度の変化を示すグラフであり、発振回路1902の温度が増大するにつれて出力電流が減少することを示す。図22は、発振回路1902におけるインバータ段1800のゲート電圧の温度の変化を示すグラフであり、発振回路1902の温度が増大するにつれてゲート電圧が減少することを示す。図23は、発振回路1902におけるインバータ段1800のスイッチング遅延の温度の変化を示すグラフであり、温度が増大するにつれてスイッチング遅延が増大し、発振回路1902の動作速度を抑制させることを示す。
【0065】
これより図24を参照して、本発明の一実施形態による温度感知装置を示す。この実施形態において、装置2400は、第2のドレインにおける出力電流の大きさが第1および第2のトランジスタの温度の指標となる温度センサとして動作するように構成される。装置2400は、出力電流の大きさを測定するように構成された電流測定ユニット2402と、測定された電流を第1および第2のトランジスタの温度の測定値に変換するように構成された変換ユニット2403とを備える。本実施形態において、装置2400は温度測定値を出力デバイス2404に送信するように構成される。出力デバイス2404は、温度測定値を人間のユーザに理解できる形態、例えば聴覚的または視覚的フォーマットで出力してよい。
【0066】
本明細書では図面を参照しながら本発明の特定の実施形態について記載してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形例および修正例が考えられることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24