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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】鉄鉱石の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/00 20060101AFI20241113BHJP
   B65G 3/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C22B1/00 101
B65G3/02 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020048004
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147656
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成木 紳也
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-088418(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151524(WO,A1)
【文献】特開2009-280849(JP,A)
【文献】特開2018-058017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
B65G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む鉄鉱石に、重量平均分子量が50万~1000万であるポリアクリル酸系高分子が水に分散した、ポリメタクリル酸系高分子を含まない、O/W型エマルジョンであるポリアクリル酸系増粘剤を付与し、前記鉄鉱石中の鉄鉱石粒子を凝集させる鉄鉱石の処理方法。
【請求項2】
前記鉄鉱石を船舶に積み込む前に、前記鉄鉱石に前記ポリアクリル酸系増粘剤を付与する請求項1に記載の鉄鉱石の処理方法。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸系増粘剤の付与量は、前記ポリアクリル酸系高分子が前記鉄鉱石100質量部に対し、0.002~0.02質量部となる量である請求項1又は請求項2に記載の鉄鉱石の処理方法。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸系増粘剤において、前記水と前記ポリアクリル酸系高分子との質量比(水/ポリアクリル酸系高分子)が5以上20未満である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の鉄鉱石の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石は、鉱山で採掘された後、搬送手段(貨物船、貨物列車、トラック等)によって搬送される。
鉄鉱石の内、保水力が低い鉄鉱石は、例えば、船から荷揚げ時に、含まれる水によりスラリー化し、ベルトコンベアに付着して搬送が困難になったり、ヤードの積山が降雨で崩れたりする問題が起こっている。
【0003】
上記問題を解決する方法として、薬剤を鉄鉱石に付与し、鉄鉱石粒子を凝集させる方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、W/O型エマルジョン状のアクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーを添加し、混合することを特徴とする、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの造粒方法。」が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、「鉱石や石炭の如き含水バラ物を貨物船から橋形クレーンやアンローダのグラブバケットを使って荷揚げするに当たり、荷揚げ作業時に、湧水中に粉体が懸濁した状態の懸濁湧水が生成した場合に、その懸濁湧水発生位置に対し高分子凝集剤を添加して粒子の凝結、凝集を起こさせると共に、この部位の近傍あるいはその他の部位にあるバラ物を混ぜて、荷揚げを行なうことを特徴とする含水バラ物の荷揚げ方法。」が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、「水分を含む鉱石や石炭等の含水バラ物を、ベルトコンベアで船舶に積み込むに際し、前記ベルトコンベア上および/または前記ベルトコンベアのジャンクション部で、前記含水バラ物に、質量比(水/凝集剤)で20~200に希釈した凝集剤を添加し、該含水バラ物に凝集剤を付着させる含水バラ物処理方法。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5927807号号
【文献】特許第5910810号号
【文献】特許第6505668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3では、薬剤として、ポリアクリルアミド系凝集剤として(ポリアクリルアミド系のW/O型エマルジョン)を用いることが示されている。
ポリアクリルアミド系凝集剤は、薬剤の高分子成分が静電気力又は水素結合により粒子表面に吸着し、高分子同士が絡まり合い粒子を凝集させる。薬剤は、ベルトコンベア又はそのジャンクション部などで付与されるが、付与量が微量(鉱石に対し、0.05~0.5質量%程度)であるため、均一に混合するためには、薬剤を希釈して粘度を下げておくことが有効と考えられる。
【0009】
しかし、実際には、ポリアクリルアミド系凝集剤は、ポリアクリルアミド系高分子が油に分散したW/O型エマルジョンであり、水を添加するとゲル化し、混合することが困難になる。そのため、凝集剤に水を加えて粘度を下げるためには質量比で50倍以上に希釈する必要がある。この場合、希釈に使用した水が加わることにより、鉱石に対する水の含有量が増えて、薬剤の付与効果が低下する問題がある。
【0010】
また、ポリアクリルアミド系凝集剤は、鉄鉱石に含まれる水分に接触した瞬間にゲル化して内部に浸透し難いため、このことも均一混合が困難な一因となる。
【0011】
そのため、ポリアクリルアミド系凝集剤による鉄鉱石のスラリー化抑制効果は、十分でないのが現状である。
【0012】
そこで、本発明の課題は、鉄鉱石のスラリー化抑制効果が高い鉄鉱石の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題を解決するための手段は、次の態様を含む。
<1>
水分を含む鉄鉱石に、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子が水に分散したO/W型エマルジョンであるポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を付与し、前記鉄鉱石中の鉄鉱石粒子を凝集させる鉄鉱石の処理方法。
<2>
前記鉄鉱石を船舶に積み込む前に、前記鉄鉱石に前記ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を付与する<1>に記載の鉄鉱石の処理方法。
<3>
前記ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与量は、前記ポリ(メタ)アクリル酸系高分子が前記鉄鉱石100質量部に対し、0.002~0.02質量部となる量である<1>又は<2>に記載の鉄鉱石の処理方法。
<4>
前記ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤において、前記水と前記ポリ(メタ)アクリル酸系高分子との質量比(水/ポリ(メタ)アクリル酸系高分子)が5以上20未満である<1>~<3>のいずれか1項に記載の鉄鉱石の処理方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉄鉱石のスラリー化抑制効果が高い鉄鉱石の処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に指定しない限り、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。よって、例えば、0.65~1.50%は0.65%以上1.50%以下の範囲を意味する。
成分組成における「%」は、特に断らない限り、質量%を意味するものとする。
【0016】
本実施形態に係る鉄鉱石の処理方法は、水分を含む鉄鉱石に、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子が水に分散したO/W型エマルジョンであるポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を付与し、前記鉄鉱石中の鉄鉱石粒子を凝集させる鉄鉱石の処理方法である。
【0017】
本実施形態に係る鉄鉱石の処理方法は、鉄鉱石のスラリー化抑制効果が高い鉄鉱石の処理方法である。その理由は、次の通りである。
【0018】
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を鉄鉱石に付与すると、ポリアクリル酸系高分子が鉄鉱石粒子表面に吸着又は含水中に遊離し、中性~アルカリ性でポリアクリル酸系高分子が会合することにより、鉄鉱石粒子を凝集させる。つまり、鉄鉱石に含まれる水のpHは中性~弱アルカリであるため、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を鉄鉱石に付与しただけで、鉄鉱石粒子が凝集する。そして、鉄鉱石粒子が凝集することで、鉄鉱石が増粘し、スラリー化が抑制される。
【0019】
しかも、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、O/W型エマルジョンであるため、鉄鉱石に含有する水と接触してもゲル化し難い。粘度を下げるために、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を水で希釈してもゲル化し難い。そのため、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を鉄鉱石に均一に付与され易い
【0020】
以上から、本実施形態に係る鉄鉱石の処理方法は、鉄鉱石のスラリー化抑制効果が高くなる。
そして、鉄鉱石のスラリー化が抑制されることで、例えば、鉄鉱石がヤードで積上げられた後、降雨があっても崩れることが抑制される。また、ベルトコンベアの搬送が困難になることも抑制される。
【0021】
また、ポリアクリルアミド系凝集剤は、ライフタイムが短く(1~6ヶ月程度でゲル化)、窒素を含むため、鉄鉱石の焼結時にNOxを発生するのに対して、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、ライフタイムも長く(2年程度)、窒素を含まないため鉄鉱石の焼結時にNOx発生もない。
さらに、ポリアクリルアミド系凝集剤がW/O型エマルジョンであるのに対して、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、O/W型エマルジョンであり、溶媒が水である。
そのため、本実施形態に係る鉄鉱石の処理方法は、環境にも優しい処理方法となる。
【0022】
また、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、O/W型エマルジョンであるため、W/O型エマルジョンに比べ、粘性が低い。具体的には、例えば、通常、W/Oエマルジョンが500~2000mPa・sに対し、O/W型エマルジョンは500mPa・s以下である。加えて、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、チクソトロピックな粘性を示すため、水による希釈時に粘度が低下しやすく、水と均一混合しやすい。
そのため、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤中のポリ(メタ)アクリル酸系高分子が少量でも、スラリー化抑制効果が高く、コスト面で有利である。
【0023】
以下、本実施形態に係る鉄鉱石の処理方法の詳細について説明する。
【0024】
(鉄鉱石)
増粘剤を付与する鉄鉱石は、水分を含む鉄鉱石である。鉄鉱石としては、PFFT(ブラジル産微粉鉱石)、ミナスリオ、AMMC(カナダ産微粉鉱石)、サンマルコ、メタロインベスト、ノースランド等の微粉鉱石;カラジャスなどの鉱石が挙げられる。
これら鉄鉱石は、比表面積が小さいため、保水力が低く、含浸した水によるスラリー化が生じやすい。
【0025】
ここで、水分を含む鉄鉱石は、例えば、鉄鉱石に対して、10~20質量%の水分を含む鉄鉱石である。なお、(メタ)アクリル酸系増粘剤を、水の含有量が20質量%を超える鉄鉱石に適用した場合には、鉄鉱石の凝集が不充分で、充分な効果が得られない場合がある。そのため、増粘剤は、水の含有量が12~18質量%の鉄鉱石に適用することがより好ましい。
【0026】
(ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤)
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子が水に分散したO/W型エマルジョンである。
【0027】
ポリ(メタ)アクリル酸系高分子は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルのモノマーに由来する構造単位を含む共重合体である。ここで、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/またはメタクリル酸を指す。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~24の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
具体的には、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸オクタデセニル、(メタ)アクリル酸シクロぺンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸べンジル等が挙げられる。
これらの中でも、鉄鉱石のスラリー化抑制の観点から、(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等)が好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。
【0028】
ポリ(メタ)アクリル酸系高分子の構成単位は、(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸エステルのモノマー由来の構成単位以外に、カルボン酸ビニル系モノマー、スチレン系モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、シアノ基含有モノマーなどの共重合可能なモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
ただし、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子は、(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸エステルのモノマー由来の構成単位を70質量%(80質量%以上、又は90質量%以上)を有することがよい。
【0029】
ポリ(メタ)アクリル酸系高分子の重量平均分子量は、鉄鉱石のスラリー化抑制の観点から、50万~1000万が好ましく、100万~500がより好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。
【0030】
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の粘度は、鉄鉱石のスラリー化抑制の観点から、1~500mPa・sが好ましく、1~100mPa・sがより好ましい。
なお、粘度は、25℃で測定される値である。
【0031】
(ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与場所)
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与場所は、特に限定されないが、例えば、鉄鉱石の原料ヤード、貯蔵保管場(積地等)、船やトラック等の運送時、船からの荷揚げ時、ベルトコンベアの搬送時などが挙げられる。
特に、鉄鉱石のスラリー化抑制効果をより引き出すためには、国内の荷揚げ時に増粘剤を付与するよりも、あらかじめ海外の積地で、例えば、鉱山、港でのベルトコンベア輸送時や積み付け時、払い出し時など、船舶に積込む前に、増粘剤を付与しておく方が有効である。つまり、鉄鉱石を船舶に積み込む前に、鉄鉱石に前記ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を付与することが好ましい。その理由は、次の通りである。
【0032】
水分を含有する鉄鉱石は、海上輸送中に水分が船底の方向に移動して溜まりスラリー化する。荷揚げ時、スラリーとなっている部分の鉄鉱石を採取するためには、水を汲み上げる作業が必要となり、作業効率が悪くなる(つまり荷揚げ障害)。スラリー化した鉄鉱石は、搬送中、ベルトコンベアからも落下しやすい。そのため、あらかじめ積地で、増粘剤を付与して鉄鉱石のスラリー化を抑制する方が有利である。また、船内でスラリー化した鉄鉱石は流動しやすく、船倉の片側により易くなって、船のバランスが崩れ、最悪船が転覆することもある。積地で、鉄鉱石に増粘剤を付与して鉄鉱石のスラリー化を抑制しておくことにより、このような事態も回避することができる。
【0033】
(ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与方法)
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与方法は、特に限定されないが、積地での積込み時又は揚地での荷揚げ時に、ベルトコンベア上又はベルトコンベアのジャンクション部で、シャワー状に散布する方式、又は蛇口からストレート棒状に流す方式等が挙げられる。
可能ならば、保管・貯蔵等の際に機械的に鉄鉱石を攪拌しつつ、増粘剤を鉄鉱石と混合することが望ましい。
【0034】
(ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与量)
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の付与量は、鉄鉱石のスラリー化抑制の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子が鉄鉱石100質量部に対し、0.0005~0.04質量部となる量が好ましく、0.002~0.02質量部となる量がより好ましい。
【0035】
ここで、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、固形分濃度(つまり、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子濃度)が20~40質量%の原液のまま使用することも可能である。
しかし、鉄鉱石に増粘剤を均一に付与する観点から、水で希釈して、水とポリ(メタ)アクリル酸系高分子との質量比(水/ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤)を5以上20未満(好ましくは5以上10以下)とすることがよい。なお、質量比が20以上の場合には、鉄鉱石に含有される水分が多くなりすぎ、鉄鉱石のスラリー化抑制効果が小さくなる場合がある。
【実施例
【0036】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0037】
(実施例1)
凝集性の評価をコンクリート等の流動性を評価するスランプフロー試験を模擬した方法(以下、崩れやすさ確認試験と呼ぶ)により行った。
鉄鉱石として、微粉鉱石であるPFFTを用い、薬剤として、水中にポリアクリル酸系高分子が分散したO/W型エマルジョン型増粘剤((株)日本触媒製アクリセット)を用いた。薬剤の固形分濃度(ポリアクリル酸系高分子濃度)は30質量%であった(水/ポリアクリル酸系高分子(固形分)の質量比が2.33)。
【0038】
最初に、乾燥したPFFTに、水分含有量が15質量%になるように水を加えて混合した。水分調整後の鉄鉱石200gを250ccのポリ瓶に入れた。鉄鉱石100質量部に対し、増粘剤を固形分濃度(ポリアクリル酸系高分子濃度)として0.008質量%添加後、蓋をし、ポリ瓶ごと上下に5回転転倒撹拌して混合した。内径25mm、高さ50mmのアクリル製の管をステンレス製の平板に立て、混合後の試料をすりきりまで充填した後、管を引き抜いた。1分間放置した後、試料の高さを測定した。管を引き抜いた後の高さが高いものほど、凝集性が高く、元の形状を保持する能力が高い優れた薬剤であると評価される。本試験の結果、アクリル管を引き抜いても形状の崩れは僅かで、高さは49mmであり、良好な結果であった。
【0039】
(比較例1)
薬剤として、炭化水素系溶媒中にポリアクリルアミド系高分子が分散したW/Oエマルジョン型凝集剤(ハイモ(株)製ロックマスター)を用いて、実施例1と同じ方法で崩れやすさ確認試験を行った。凝集剤の固形分濃度(ポリアクリルアミド系高分子濃度)は40質量%であった、そして、凝集剤を、鉄鉱石100質量部に対し、固形分濃度(ポリアクリルアミド系高分子濃度)として0.008質量%付与した。管を引き抜いた後、形状は崩れ、高さが低下して35mmとなって、凝集性は弱かった。
【0040】
(実施例2~12、比較例2~10)
鉄鉱石としてPFFT、薬剤として、実施例1で使用したO/W型エマルジョン型増粘剤(日本触媒(株)製アクリセット、固形分濃度(ポリアクリル酸系高分子濃度)30質量%)又は比較例1で使用したW/Oエマルジョン型凝集剤(ハイモ(株)製ロックマスター、固形分濃度(ポリアクリルアミド系高分子濃度)40質量%)を用いた。
そして、鉄鉱石中に含有される水分量、薬剤の固形分濃度を変えて、実施例1及び比較例1と同じ方法で崩れやすさ確認試験を行い、高さを測定した。
結果を表1の実施例2~12および比較例2~10に示す。
表中の薬剤の種類には、O/W型エマルジョン型増粘剤((株)日本触媒製アクリセット)を「増粘剤」、W/Oエマルジョン型凝集剤(ハイモ(株)製ロックマスター)を「凝集剤」と記入した。
評価は高さが47mm以上を〇(優)、高さが47mm未満、42mm以上を△(可)、42mm未満を×(不可)とした。ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤を用いた実施例2~12では、比較的少量の付与でも△または〇の評価結果が得られたのに対し、薬剤を付与しなった、又はポリアクリルアミド系凝集剤を用いた比較例2、3、5~10では、鉄鉱石粒子の凝集が弱く、形状が崩れて、×の評価となった。また、ポリアクリルアミド系凝集剤を用いて良好な結果を得るには、比較例4に例示したように薬剤付与量をかなり増やす必要があり、コストが高くなるとともに、有機溶剤の量が増えるという環境上の問題も生じる。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例13~15、比較例16~19)
鉄鉱石として、カラジャス鉄鉱石を用い、篩分けにより粒径を5mm以下とした後、水を加えて含水率14%に調整し、崩れやすさ確認試験を行った。
薬剤は、実施例1で使用したO/W型エマルジョン型増粘剤((株)日本触媒製アクリセット、固形分濃度(ポリアクリル酸系高分子濃度)30質量%)又は比較例1で使用したW/Oエマルジョン型凝集剤(ハイモ(株)製ロックマスター、固形分濃度(ポリアクリルアミド系高分子濃度)40質量%)を用いた。
【0043】
水分調整済みの鉄鉱石500gを500ccのポリ瓶に入れた。薬剤を所定量付与後、蓋をし、ポリ瓶ごと上下に5回転転倒撹拌して混合した。内径60mm、高さ100mmのアクリル製の管をステンレス製の平板に立て、混合後の試料をすりきりまで充填した後、管を引き抜いた。1分間放置した後、試料の高さを測定した。管を引き抜いた後の高さが低いものほど、凝集性が高く、元の形状を保持する能力が高い優れた薬剤であると評価される。
結果を表2の実施例13~15および比較例16~19に示す。
表中の薬剤の種類には、O/W型エマルジョン型増粘剤((株)日本触媒製アクリセット)を「増粘剤」、W/Oエマルジョン型凝集剤(ハイモ(株)製ロックマスター)を「凝集剤」と記入した。
評価は高さが90mm以上を〇(優)、高さが90mm未満、80mm以上を△(可)、80mm未満を×(不可)とした。ポリアクリル酸系増粘剤を用いた実施例13~15では、比較的少量の付与でも△または〇の評価結果が得られたのに対し、薬剤を付与しなかった、又は、ポリアクリルアミド系凝集剤を用いた比較例16~19では、薬剤が均一に混合されず、粒子の凝集が弱くなり、形状が崩れて、×の評価となった。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例16~20、比較例20~25)
鉄鉱石として粒径5mm以下に篩分けし、水分含有量を14質量%に調整したカラジャス鉱石を用い、実施例14と同様の崩れやすさ確認試験を行った。
薬剤は、実施例1で使用したO/W型エマルジョン型増粘剤((株)日本触媒製アクリセット、固形分濃度(ポリアクリル酸系高分子濃度)30質量%)を用い、増粘剤の拡散性をより向上させるため、水とポリアクリル酸系高分子との質量比(水/ポリアクリル酸系高分子=固形分質量比(水/固形分))が所定の比率となるように、水で増粘剤を希釈してから鉄鉱石に加えた。
その結果を表3の実施例16~20に示す。評価は高さが90mm以上を〇(優)、高さが90mm未満、80mm以上を△(可)、80mm未満を×(不可)とした。増粘剤を希釈することにより、増粘剤をより均一に混合することができ、形状の崩れがより小さくすることができたが、希釈倍率が高くなり過ぎると、鉄鉱石に含有される水分量が多くなり、若干形状の崩れが大きくなり、高さが低くなった。
比較のため、比較例1で使用したW/Oエマルジョン型凝集剤(ハイモ(株)製ロックマスター、固形分濃度(ポリアクリルアミド系高分子濃度)40質量%)を用い、水とポリアクリルアミド系高分子との質量比(水/ポリアクリルアミド系高分子=固形分質量比(水/固形分))が所定の比率となるように、水で凝集剤を希釈してから鉄鉱石に加えた。
その結果を表3の比較例20~25に示す。比較例20~24では、凝集剤に水を加えると凝集剤がゲル化し、均一に混合することができず、凝集性が悪化した。比較例25では、薬剤が流動するようにはなったが、粘性は高く、混合状態の不均一性が改善されなかったとともに、鉄鉱石に含有される水分量が多くなり、形状の崩れが大きく、高さ低くなり、不適であった。
【0046】
【表3】