IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツミ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電子棚札システム 図1
  • 特許-電子棚札システム 図2
  • 特許-電子棚札システム 図3
  • 特許-電子棚札システム 図4
  • 特許-電子棚札システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電子棚札システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20230101AFI20241113BHJP
   G07G 1/01 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G06Q30/06
G07G1/01 301D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020196771
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085205
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐也
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0159191(US,A1)
【文献】特開2010-231615(JP,A)
【文献】国際公開第2020/049371(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/021051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G07G 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の商品棚に陳列される複数の商品に関する情報を表示可能なディスプレイを備える複数の電子棚札デバイスによって構築されたクラスター型ネットワークと、
前記クラスター型ネットワークに通信可能に接続されたアプリケーションデバイスと、を含み、
前記クラスター型ネットワークは、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品用の棚札として機能する複数の電子棚札デバイスから構成される棚札階層と、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記アプリケーションデバイスから前記棚札階層の前記複数の電子棚札デバイスのいずれかを対象として送信される信号を中継する複数の電子棚札デバイスから構成される中継階層と、を含み、
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、前記複数の商品棚が設置された店舗内において買い物客によって用いられる買い物カゴまたは買い物カートに設けられた通信デバイスから信号を受信し、さらに、前記クラスター型ネットワークを介して、該通信デバイスから受信した前記信号の強度を送信可能に構成されていることを特徴とする電子棚札システム。
【請求項2】
前記複数の商品棚のそれぞれは、前記複数の商品を陳列するための複数の段を備えており、
前記クラスター型ネットワークの前記中継階層は、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、並設された前記複数の商品棚から構成される棚列に関連付けられた電子棚札デバイスから構成される第1の階層と、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品棚にそれぞれ関連付けられ、自身が関連付けられた前記商品棚が属する前記棚列に関連付けられた前記第1の階層の前記電子棚札デバイスにそれぞれペアリング接続された複数の電子棚札デバイスから構成される第2の階層と、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品棚のそれぞれの前記複数の段にそれぞれ関連付けられ、自身が関連付けられた前記段が属する前記商品棚に関連付けられた前記第2の階層の前記電子棚札デバイスにそれぞれペアリング接続された複数の電子棚札デバイスから構成される第3の階層と、を含み、
前記棚札階層は、前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品棚に陳列される前記複数の商品のそれぞれに関連付けられ、前記複数の商品用の棚札として機能する前記複数の電子棚札デバイスから構成される商品階層を含み、
前記商品階層の前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、自身に関連付けられた前記商品が陳列される前記段に関連付けられた前記中継階層の前記第3の階層の前記電子棚札デバイスにそれぞれペアリング接続されている請求項1に記載の電子棚札システム。
【請求項3】
前記アプリケーションデバイスは、前記電子棚札デバイスが前記通信デバイスから受信した前記信号の前記強度に基づいて、前記買い物客の行動を判別するよう構成されている請求項に記載の電子棚札システム。
【請求項4】
前記棚札階層の前記複数の電子棚札デバイスは、前記通信デバイスから受信した前記信号の前記強度を処理することにより得られたデータを前記中継階層の前記複数の電子棚札デバイスに送信し、
前記中継階層の前記複数の電子棚札デバイスは、前記棚札階層の前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれから受信した前記データを処理することにより得られたデータを前記アプリケーションデバイスに送信し、
前記アプリケーションデバイスは、前記中継階層の前記複数の電子棚札デバイスから受信した前記データに基づいて、前記買い物客の前記行動を判別するよう構成されている請求項に記載の電子棚札システム。
【請求項5】
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、センサーをさらに備え、
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、前記センサーのセンシングデータを、前記クラスター型ネットワークを介して送信可能に構成されている請求項1ないしのいずれかに記載の電子棚札システム。
【請求項6】
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、発光手段をさらに備えており、
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、前記クラスター型ネットワークを介して、前記アプリケーションデバイスから送信される命令に従って、前記発光手段を駆動するよう構成されている請求項1ないしのいずれに記載の電子棚札システム。
【請求項7】
前記ペアリング接続は、BLE(ブルートゥース・ロー・エナジー)規格に従ったペアリング接続である請求項2に記載の電子棚札システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、商品棚に取り付けられる複数の電子棚札デバイスと、該複数の電子棚札デバイスに通信可能に接続されたアプリケーションデバイスと、を含む電子棚札システムに関し、より具体的には、複数の電子棚札デバイスにより構築されたクラスター型ネットワークと、該クラスター型ネットワークに通信可能に接続されたアプリケーションデバイスと、を含む電子棚札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品名や商品価格の変更のための棚札の付け替えの労力を軽減すること等を目的として、商品名や商品価格等の商品情報を表示するためのディスプレイを備えた電子棚札デバイスがスーパーマーケット等の小売店で利用されている。例えば、特許文献1は、商品を種類別に陳列するための商品棚に取り付けられた複数の電子棚札デバイスを無線通信により制御するための電子棚札システムを開示している。
【0003】
特許文献1が開示する電子棚札システムでは、ディスプレイを備える複数の電子棚札デバイスは、商品棚に種類別に陳列される商品のそれぞれに関連付けられており、関連付けられた商品の近傍に位置するよう、商品棚にそれぞれ取り付けられる。商品棚に取り付けられた複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、サーバーから、専用ゲートウェイおよび無線通信中継器(ルーターやトランシーバー等)を介して、自身に関連付けられた商品に関する情報(例えば、商品価格、商品名)を受信し、自身に関連付けられた商品に関する情報をディスプレイに表示させることができる。このような電子棚札システムを利用することにより、商品名や商品価格の変更のための棚札の付け替えの労力を軽減するができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示するような従来の電子棚札システムでは、サーバーから電子棚札デバイスのそれぞれに対する信号の送信は、無線中継器を介した、ブロードキャスト通信である。ブロードキャスト通信では、サーバーから、無線中継器を介して、電子棚札デバイスのそれぞれに対して信号が無線送信されるが、電子棚札デバイスのそれぞれからサーバーに対して信号が送信されない。すなわち、ブロードキャスト通信は、サーバーから電子棚札デバイスのそれぞれに対する一方向通信である。そのため、ブロードキャスト通信では、電子棚札デバイスのそれぞれからサーバーに対してコマンドを受信した旨を送信することができず、サーバーが、電子棚札デバイスのそれぞれが信号を受信したか否かを確認することができない。そのため、従来の電子棚札システムにおけるサーバーと電子棚札デバイスのそれぞれとの間の通信の信頼性が低いという問題があった。また、専用ゲートウェイおよび無線通信中継器を介したブロードキャスト通信は、通信速度が遅いという問題もあった。
【0005】
さらに、特許文献1が開示するような従来の電子棚札システムでは、専用ゲートウェイや専用サーバーの導入が必要なため、電子棚札システムの導入や管理が困難である。特に専用ゲートウェイや専用サーバーを設置するためには、店舗の天井等に設置場所を確保する必要があり、電子棚札システムの導入を困難なものとしている。さらに、専用ゲートウェイや専用サーバーのような専用機器の使用は、電子棚札システムの導入コストおよび管理コストを増加させる要因となっている。また、特許文献1が開示するような従来の電子棚札システムに、様々な機能の追加や、用途の変更を可能とする拡張性を持たせることが困難であった。従来の電子棚札システムは拡張性に乏しいため、商品の情報を表示するという棚札機能しか提供することができず、電子棚札システムの導入コストに見合ったメリットを見出すことができず、電子棚札システムの導入が広まっていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-161478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、導入および管理が容易であり、さらに、高い拡張性を備えた電子棚札システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、以下の(1)~()の本発明により達成される。
(1)複数の商品棚に陳列される複数の商品に関する情報を表示可能なディスプレイを備える複数の電子棚札デバイスによって構築されたクラスター型ネットワークと、
前記クラスター型ネットワークに通信可能に接続されたアプリケーションデバイスと、を含み、
前記クラスター型ネットワークは、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品用の棚札として機能する複数の電子棚札デバイスから構成される棚札階層と、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記アプリケーションデバイスから前記棚札階層の前記複数の電子棚札デバイスのいずれかを対象として送信される信号を中継する複数の電子棚札デバイスから構成される中継階層と、を含み、
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、前記複数の商品棚が設置された店舗内において買い物客によって用いられる買い物カゴまたは買い物カートに設けられた通信デバイスから信号を受信し、さらに、前記クラスター型ネットワークを介して、該通信デバイスから受信した前記信号の強度を送信可能に構成されていることを特徴とする電子棚札システム。
【0009】
(2) 前記複数の商品棚のそれぞれは、前記複数の商品を陳列するための複数の段を備えており、
前記クラスター型ネットワークの前記中継階層は、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、並設された前記複数の商品棚から構成される棚列に関連付けられた電子棚札デバイスから構成される第1の階層と、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品棚にそれぞれ関連付けられ、自身が関連付けられた前記商品棚が属する前記棚列に関連付けられた前記第1の階層の前記電子棚札デバイスにそれぞれペアリング接続された複数の電子棚札デバイスから構成される第2の階層と、
前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品棚のそれぞれの前記複数の段にそれぞれ関連付けられ、自身が関連付けられた前記段が属する前記商品棚に関連付けられた前記第2の階層の前記電子棚札デバイスにそれぞれペアリング接続された複数の電子棚札デバイスから構成される第3の階層と、を含み、
前記棚札階層は、前記複数の電子棚札デバイスのうち、前記複数の商品棚に陳列される前記複数の商品のそれぞれに関連付けられ、前記複数の商品用の棚札として機能する前記複数の電子棚札デバイスから構成される商品階層を含み、
前記商品階層の前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、自身に関連付けられた前記商品が陳列される前記段に関連付けられた前記中継階層の前記第3の階層の前記電子棚札デバイスにそれぞれペアリング接続されている上記(1)に記載の電子棚札システム。
【0011】
)前記アプリケーションデバイスは、前記電子棚札デバイスが前記通信デバイスから受信した前記信号の前記強度に基づいて、前記買い物客の行動を判別するよう構成されている上記()に記載の電子棚札システム。
【0012】
)前記棚札階層の前記複数の電子棚札デバイスは、前記通信デバイスから受信した前記信号の前記強度を処理することにより得られたデータを前記中継階層の前記複数の電子棚札デバイスに送信し、
前記中継階層の前記複数の電子棚札デバイスは、前記棚札階層の前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれから受信した前記データを処理することにより得られたデータを前記アプリケーションデバイスに送信し、
前記アプリケーションデバイスは、前記中継階層の前記複数の電子棚札デバイスから受信した前記データに基づいて、前記買い物客の前記行動を判別するよう構成されている上記()に記載の電子棚札システム。
【0013】
)前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、センサーをさらに備え、
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、前記センサーのセンシングデータを、前記クラスター型ネットワークを介して送信可能に構成されている上記(1)ないし()のいずれかに記載の電子棚札システム。
【0014】
)前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、発光手段をさらに備えており、
前記複数の電子棚札デバイスのそれぞれは、前記クラスター型ネットワークを介して、前記アプリケーションデバイスから送信される命令に従って、前記発光手段を駆動するよう構成されている上記(1)ないし()のいずれに記載の電子棚札システム。
【0015】
)前記ペアリング接続は、BLE(ブルートゥース・ロー・エナジー)規格に従ったペアリング接続である上記(2)に記載の電子棚札システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子棚札システムにおいては、複数の電子棚札デバイスが互いにBLE規格に従ったペアリング接続によって接続されることによりクラスター型ネットワークが構築されており、該クラスター型ネットワークに複数の電子棚札デバイスを制御および利用するアプリケーションデバイスが通信可能に接続されている。ペアリング接続は双方向通信を可能とするため、アプリケーションデバイスから自身を対象とする信号を受信した電子棚札デバイスは、クラスター型ネットワークを介して、信号を受信したことを報告する応答信号を、アプリケーションデバイスに送信することができる。本発明の電子棚札システムにおいては、アプリケーションデバイスと複数の電子棚札デバイスのそれぞれとの間の通信の信頼性が高い。
【0017】
さらに、本発明の電子棚札システムにおいては、同一種類の電子棚札デバイスが互いにBLE規格に従ったペアリング接続によって接続され、クラスター型ネットワークを構築し、該クラスター型ネットワークを介して複数の電子棚札デバイスが制御される。そのため、複数の電子棚札デバイスを制御するために、専用ゲートウェイや専用サーバーのような複数種類の専用機器を用いた専用のネットワークを導入する必要がない。したがって、本発明の電子棚札システムの導入コストを大幅に低減することができる。また、同一種類の電子棚札デバイスのみでクラスター型ネットワークが構築されるため、複数種類の専用機器を用いて専用ネットワークを構築する場合と比較して、電子棚札システムの管理が容易となる。
【0018】
さらに、本発明の電子棚札システムにおいては、クラスター型ネットワークを介して、複数の電子棚札デバイスのそれぞれからアプリケーションデバイスに対して信号を送信可能である。そのため、アプリケーションデバイスは、複数の電子棚札デバイスのそれぞれが備える機能によって得られたデータ(例えば、信号のRSSI強度やセンサーのセンシングデータ)を取得することができ、該データを様々な用途に活用することができる。そのため、本発明の電子棚札システムは、従来のような棚札機能だけでなく、複数の電子棚札デバイスのそれぞれが備える機能によって得られたデータを活用した様々な機能を提供することができる。このように、本発明の電子棚札システムは、高い拡張性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電子棚札システムを概略的に示す図である。
図2図1に示す電子棚札デバイスのロールを説明するための図である。
図3図1に示す電子棚札デバイスのブロック図である。
図4図1に示すクラスター型ネットワークを構築するための方法を示すフローチャートである。
図5図1に示す電子棚札システムによる買い物客の行動を判別するための処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図5を参照して、本発明の実施形態に係る電子棚札システムを詳述する。図1は、本発明の実施形態に係る電子棚札システムを概略的に示す図である。図2は、図1に示す電子棚札デバイスのロールを説明するための図である。図3は、図1に示す電子棚札デバイスのブロック図である。図4は、図1に示すクラスター型ネットワークを構築するための方法を示すフローチャートである。図5は、図1に示す電子棚札システムによる買い物客の行動を判別するための処理を説明するための図である。
【0021】
図1に示す本発明の電子棚札システム1は、データベース2と、アプリケーションデバイス3と、複数の電子棚札デバイス4から構成される1つ以上のクラスター型ネットワークCNと、店舗内において買い物客によって用いられる買い物カゴまたは買い物カートに設けられ、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれとBLE(ブルートゥース(登録商標)・ロー・エナジー)規格に従った無線通信を実行するよう構成されたBLE通信デバイス5と、を含んでいる。電子棚札システム1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売店において、アプリケーションデバイス3を用いて、複数の電子棚札デバイス4を制御および利用するために用いられる。
【0022】
データベース2は、アプリケーションデバイス3に直接、または、インターネット等の任意のネットワークを介して通信可能に接続されている。データベース2は、複数の電子棚札デバイス4を管理し、さらに、複数の電子棚札デバイス4を利用した様々な機能を提供するためにアプリケーションデバイス3によって用いられるデータを保存している。例えば、データベース2は、POS(Point of Sale System)用のデータ、ERP(Enterprise Resource Plannning)用のデータ、WMS(Warehouse Management System)用のデータ、MES(Manufacturing Execution System)用のデータ等を保存しており、アプリケーションデバイス3は、必要に応じて、データベース2内に保存されているデータの読み出しおよび書き込みを実行することができる。
【0023】
アプリケーションデバイス3は、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、ノートパソコン、ワークステーション、タブレット型コンピューター、携帯電話、スマートフォン、PDA等の任意の情報端末である。アプリケーションデバイス3は、複数の電子棚札デバイス4を管理するために用いられる。アプリケーションデバイス3は、有線通信または無線通信を介して、データベース2と通信可能に接続されている。さらに、アプリケーションデバイス3は、BLE規格に基づいたペアリング接続を介して、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれと無線通信可能に構成されている。アプリケーションデバイス3は、複数の電子棚札デバイス4から構成される1つ以上のクラスター型ネットワークCNに通信可能に接続されている。より具体的には、図1に示されているように、アプリケーションデバイス3は、1つ以上のクラスター型ネットワークCNの最上位階層に属する電子棚札デバイス4に、ペアリング接続されている。
【0024】
複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、タブレット型コンピューター、スマートフォン、PDA等のBLE規格に基づいた無線通信を実行可能な任意の情報端末である。本発明の電子棚札システム1において、複数の電子棚札デバイス4は、互いにBLE規格に基づくペアリング接続によって無線接続されることにより、クラスター型ネットワークCNを構築している。なお、本明細書において、用語「クラスター型ネットワーク」は、図1に示されているように、最上位の階層(1次階層)に属する1つの電子棚札デバイス4に、1つ下の階層(2次階層)に属する複数の電子棚札デバイス4がぶら下がるように接続されて、さらに、2次階層に属する複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに、さらに1つ下の階層(3次階層)に属する複数の電子棚札デバイス4がぶら下がるように接続され、このような接続が繰り返されることにより構成された多階層構造を有するネットワークトポロジーを指す。さらに、クラスター型ネットワークにおいては、同じ階層に属する複数の電子棚札デバイス4同士は、直接接続されていない。
【0025】
このようなクラスター型ネットワークCNは、典型的には、クラスター型ネットワークCNの最下位の階層に属する複数の電子棚札デバイス4を1つのアプリケーションデバイス3で統括的に制御するために用いられる。例えば、アプリケーションデバイス3が、クラスター型ネットワークCNの最上位階層に属する電子棚札デバイス4に対して、クラスター型ネットワークCNの最下位の階層に属する複数の電子棚札デバイス4のいずれか1つを対象とする信号を送信すると、クラスター型ネットワークCNの各階層に属する電子棚札デバイス4は、アプリケーションデバイス3から送信された信号を、自身より下位の階層に属する適切な電子棚札デバイス4に中継し、これにより、クラスター型ネットワークCNの最下位の階層に属する電子棚札デバイス4は、自身を対象とする信号を受信することができる。
【0026】
本発明の電子棚札システム1のクラスター型ネットワークCNにおいて、複数の電子棚札デバイス4同士の接続は、BLE規格に従ったペアリング接続である。ペアリング接続は、ペアリング接続された一対のデバイス間の無線通信を用いた双方向通信を可能とする。ペアリング接続では、2つのデバイスが互いにアドバタイズ信号(アドバタイズパケット)を送信し合い、互いのペアリング情報を登録した後に、2つのデバイス間の接続(ペアリング接続)が確立される。このようにペアリング接続によって互いに接続された一対のデバイスは、互いに通信を行うことができる。
【0027】
図2は、店舗内に設置された複数の商品棚6への複数の電子棚札デバイス4の取り付けの例が示されている。複数の商品棚6のそれぞれは、複数の段61を備えている。複数の段61の上に、複数の商品が種類別に陳列される。また、図2中の「店舗内商品棚レイアウト例」に示されているように、店舗内において、複数の商品棚6は、棚列7(「ゴンドラ」とも称される)を構築するよう、横並びや背中合わせに並べて設置される。複数の棚列7が、店舗内において任意のレイアウトで複数配置され、買い物客のための通行スペースが確保される。
【0028】
図1は、本発明の電子棚札システム1のクラスター型ネットワークCNの1つの例を示している。図1に示されているクラスター型ネットワークCNの例は、店舗内のフロアに設置された複数の棚列7のいずれか1つに対応している。したがって、店舗内に設置された複数の棚列7の数に対応する数だけ、図1に示すクラスター型ネットワークCNが存在し得る。図1に示す態様では、アプリケーションデバイス3が、1つのクラスター型ネットワークCNに通信可能に接続されているが本発明はこれに限られない。例えば、アプリケーションデバイス3が、それぞれ異なる棚列7に対応する2つ以上のクラスター型ネットワークCNに通信可能に接続されているような態様も、本発明の範囲内である。したがって、例えば、1つの店舗内のフロア内に非常に多くの棚列7が存在しており、棚列7の数に対応する数のクラスター型ネットワークCNがアプリケーションデバイス3に接続されているような態様も、本発明の範囲内である。
【0029】
複数の電子棚札デバイス4は、クラスター型ネットワークCNにおいて、店舗内に設置された複数の棚列7のいずれか1つに関連付けられたマスターレポーターユニットMR、各棚列7の複数の商品棚6のいずれか1つに関連付けられたレポーターユニットR、各商品棚6の複数の段61のいずれか1つに関連付けられたマスターエンドユニットME、および各商品棚6の各段61に陳列される複数の商品のいずれか1つに関連付けられたエンドユニットEを含む4つのロール(役割)のいずれか1つとして機能する。
【0030】
マスターレポーターユニットMRは、店舗内に設置された複数の棚列7のいずれか1つに関連付けられており、アプリケーションデバイス3にペアリング接続されている。クラスター型ネットワークCNにおいて、マスターレポーターユニットMRは、クラスター型ネットワークCNの最上位階層である棚列階層(第1の階層)を構成している。マスターレポーターユニットMRは、アプリケーションデバイス3から受信した、自身より下位の階層に属する電子棚札デバイス4を対象とした信号を、自身より下位の階層に属する適切な電子棚札デバイス4に中継する。また、図2に示されているように、マスターレポーターユニットMRは、典型的には、自身が関連付けられた棚列7を構成する商品棚6のいずれかの任意の箇所に取り付けられる。
【0031】
レポーターユニットRは、棚列7を構成する複数の商品棚6のいずれか1つに関連付けられており、自身が関連付けられた商品棚6が属する棚列7に関連付けられたマスターレポーターユニットMRにぶら下がるようにペアリング接続されている。クラスター型ネットワークCNにおいて、複数のレポーターユニットRは、棚列階層(第1の階層)の1つ下の棚階層(第2の階層)を構成している。レポーターユニットRは、マスターレポーターユニットMRを介してアプリケーションデバイス3から受信した、自身より下位の階層に属する電子棚札デバイス4を対象とした信号を、下位の階層に属する適切な電子棚札デバイス4に中継する。また、レポーターユニットRは、図2に示されているように、自身が関連付けられた商品棚6の任意の箇所に取り付けられる。
【0032】
マスターエンドユニットMEは、商品棚6の複数の段61のいずれか1つに関連付けられており、自身が関連付けられた段61が属する商品棚6に関連付けられたレポーターユニットRにぶら下がるようにペアリング接続されている。クラスター型ネットワークCNにおいて、複数のマスターエンドユニットMEは、棚階層(第2の階層)の1つ下の段階層(第3の階層)を構成している。マスターエンドユニットMEは、マスターレポーターユニットMRおよびレポーターユニットRを介してアプリケーションデバイス3から受信した、自身より下位の階層に属する電子棚札デバイス4を対象とした信号を、下位の階層に属する適切な電子棚札デバイス4に中継する。また、図2に示されているように、マスターエンドユニットMEは、自身が関連付けられた段61の前面の左端部または右端部に取り付けられる。なお、マスターエンドユニットMEは、自身が関連付けられた商品棚6の段61に陳列される複数の商品にさらに関連付けられていてもよい。この場合、マスターエンドユニットMEは、自身が関連付けられた複数の商品の1つ以上に関する商品情報482(図3参照)を自身のディスプレイ44(図3参照)に表示することにより、自身に関連付けられた複数の商品の1つ以上のための棚札として機能することができる。
【0033】
エンドユニットEは、商品棚6の段61に種類別に陳列された複数の商品のいずれか1つに関連付けられており、自身が関連付けられた商品が陳列される段61に関連付けられたマスターエンドユニットMEにぶら下がるようにペアリング接続されている。クラスター型ネットワークCNにおいて、複数のエンドユニットEは、段階層(第3の階層)の1つ下の商品階層(第4の階層)を構成している。また、エンドユニットEは、図2に示されているように、自身が関連付けられた商品の近傍に位置するように、自身が関連付けられた商品が陳列される段61の前面に取り付けられる。エンドユニットEは、自身に関連付けられた商品に関する商品情報482(図3参照)を自身のディスプレイ44(図3参照)に表示することにより、自身に関連付けられた商品用の棚札として機能する。
【0034】
前述のように、エンドユニットEは、商品用の棚札として機能するので、複数のエンドユニットEから構成される商品階層(第4の階層)は、複数の商品用の棚札として機能する複数の電子棚札デバイス4から構成される棚札階層と見なすことができる。さらに、マスターレポーターユニットMR、レポーターユニットR、およびマスターエンドユニットMEは、自身より下位の階層に属する電子棚札デバイス4を対象とする信号を受信した場合、下位の階層に属する適切な電子棚札デバイス4に信号を中継する無線中継器として機能するので、棚列階層(第1の階層)、棚階層(第2の階層)、および段階層(第3の階層)は、アプリケーションデバイス3から商品階層(第4の階層)に属するエンドユニットEのいずれかを対象として送信される信号を中継する中継階層と見なすことができる。したがって、クラスター型ネットワークCNは、大別すれば、複数の商品用の棚札として機能する複数の電子棚札デバイス4から構成される棚札階層と、アプリケーションデバイス3から棚札階層の複数の電子棚札デバイス4(エンドユニットE)のいずれかを対象として送信された信号を中継する複数の電子棚札デバイス4から構成される中継階層と、を含んでいる。図示の実施例においては、棚札階層は、商品用の棚札として機能する複数のエンドユニットEから構成される商品階層(第4の階層)を含んでおり、中継階層は、マスターレポーターユニットMRから構成される棚列階層(第1の階層)と、複数のレポーターユニットRから構成される棚階層(第2の階層)と、複数のマスターエンドユニットMEから構成される段階層(第3の階層)と、を含んでいる。なお、マスターエンドユニットMEが、自身が関連付けられた商品棚6の段61に陳列される複数の商品にさらに関連付けられている場合、マスターエンドユニットMEは、自身に関連付けられた複数の商品の1つ以上の棚札として機能することができる。この場合、複数のマスターエンドユニットMEから構成される段階層(第3の階層)は、前述の中継階層として機能すると共に、棚札階層としても機能する。
【0035】
本発明の電子棚札システム1において、アプリケーションデバイス3が、クラスター型ネットワークCNを構成する複数の電子棚札デバイス4のいずれか1つを対象とする信号を、マスターレポーターユニットMRに対して送信すると、複数の電子棚札デバイス4間のペアリング接続を介して、対象とされた電子棚札デバイス4までアプリケーションデバイス3からの信号が中継される。自身を対象とした信号を受信した電子棚札デバイス4は、アプリケーションデバイス3からの信号に従った処理を実行する。このように、アプリケーションデバイス3は、複数の電子棚札デバイス4に対して、1つ以上のペアリング接続を介して信号を送信することにより、複数の電子棚札デバイス4を統括的に制御することができる。
【0036】
さらに、上述したように、ペアリング接続は、ペアリング接続された一対のデバイス間の無線通信を用いた双方向通信を可能とするため、クラスター型ネットワークCNにおいて、上位の階層に属する電子棚札デバイス4から下位の階層に属する電子棚札デバイス4への信号の送信だけでなく、下位の階層に属する電子棚札デバイス4から上位の階層に属する電子棚札デバイス4への信号の送信も可能である。そのため、各電子棚札デバイス4のそれぞれが備える機能によって得られたデータ(例えば、後述するようなBLE通信デバイス5との間の通信の信号の強度データやセンサーのセンシングデータ)をより上位の階層に属する電子棚札デバイス4に送信することができる。電子棚札デバイス4によって得られたデータは、最終的に、アプリケーションデバイス3に送信され、アプリケーションデバイス3は、該データを様々な用途に活用することができる。そのため、本発明の電子棚札システム1は、従来のような棚札機能だけでなく、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれが備える機能によって得られたデータを活用した様々な機能を提供することができる。このように、本発明の電子棚札システム1は、高い拡張性を有している。
【0037】
また、ペアリング接続によって双方向通信が可能であるため、アプリケーションデバイス3から自身を対象とする信号を受信した電子棚札デバイス4は、クラスター型ネットワークCNを介して、信号を受信したことを報告する応答信号を、アプリケーションデバイス3に送信することができる。そのため、本発明の電子棚札システム1においては、アプリケーションデバイス3と複数の電子棚札デバイス4のそれぞれとの間の通信の信頼性が高い。
【0038】
また、本発明の電子棚札システム1においては、同一種類の電子棚札デバイス4を互いにBLE規格に従ったペアリング接続によって接続することによりクラスター型ネットワークCNが構築されており、該クラスター型ネットワークCNを介して複数の電子棚札デバイス4が制御される。そのため、複数の電子棚札デバイス4を制御するために、専用ゲートウェイや専用サーバーのような複数種類の専用機器を用いて専用のネットワークを構築する必要がない。したがって、本発明の電子棚札システム1の導入コストを大幅に低減することができる。また、同一種類の電子棚札デバイス4のみでクラスター型ネットワークCNが構築されるため、複数種類の専用機器を用いてネットワークを構築する場合と比較して、電子棚札システム1の管理が容易となる。
【0039】
なお、図1および図2に示された態様においては、クラスター型ネットワークCNの中継階層の最上位階層は、棚列階層(第1の階層)であるが本発明はこれに限られない。クラスター型ネットワークCNの中継階層が、複数のマスターレポーターユニットMRのそれぞれとペアリング接続され、複数の棚列7が設置された店舗に関連付けられたユニットから構成される店舗階層等の、棚列階層(第1の階層)より上位の1つ以上の任意の階層をさらに含み、クラスター型ネットワークCNの中継階層の最上位階層に属するユニットの1つ以上にアプリケーションデバイス3が接続されているような態様も本発明の範囲内である。すなわち、本発明の電子棚札システム1においては、クラスター型ネットワークCNは、商品用の棚札として機能する複数の電子棚札デバイス4(エンドユニットE)から構成される棚札階層と、アプリケーションデバイス3から棚列階層の複数の電子棚札デバイス4(エンドユニットE)を対象として送信された信号を中継する複数の電子棚札デバイス4から構成される中継階層を含んでいればよく、中継階層内の階層の数や中間層内の各階層に属する電子棚札デバイス4が関連付けられている対象の種類は、電子棚札システム1のシステム規模等の必要に応じて、適宜変更することができる。
【0040】
図3に示されているように、本発明の電子棚札システム1において用いられる複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、電子棚札デバイス4の制御を実行するための1つ以上のプロセッサー41と、電子棚札デバイス4への入力および電子棚札デバイス4からの出力を実行するためのI/O(インプット/アウトプット)インターフェース42と、BLE規格に従う無線通信を実行するためのBLE通信ユニット43と、商品情報482を表示可能なディスプレイ44と、センサー45と、発光手段46と、電子棚札システム1の処理を実行するために用いられるデータ48およびモジュール49を保存している1つ以上のメモリー47と、を備えている。
【0041】
1つ以上のプロセッサー41は、1つ以上のマイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、メモリーコントロールユニット(MCU)、画像処理用演算処理装置(GPU)、状態機械、論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの組み合わせ等のコンピューター可読命令に基づいて信号操作等の演算処理を実行する演算ユニットである。特に、プロセッサー41は、メモリー47内に保存されているコンピューター可読命令(例えば、データ、プログラム、モジュール等)をフェッチし、演算、信号操作および制御を実行するよう構成されている。
【0042】
I/Oインターフェース42は、ウェブインターフェース、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等の様々なソフトウェアインターフェースおよびハードウェアインターフェースを含む。例えば、I/Oインターフェース42は、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ、外部メモリー、プリンター、ディスプレイのような周辺デバイスのためのインターフェースである。I/Oインターフェース42は、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイのような入力デバイスを用いた電子棚札デバイス4への入力およびディスプレイ、プリンター、外部メモリーへの電子棚札デバイス4からの出力を可能とする。また、I/Oインターフェース42は、電子棚札デバイス4が、インターネット等のネットワークを介して、外部に設けられたウェブサーバーやデータサーバーのような任意の外部デバイスと通信を行うことを可能としてもよい。
【0043】
BLE通信ユニット43は、BLE規格に従う無線通信を実行するために用いられるユニットである。BLE通信ユニット43は、アンテナ、送受信回路、変復調回路等のBLE規格に従う無線通信を実行するために必要なコンポーネントを備えており、プロセッサー41からの制御に応じて、アプリケーションデバイス3、他の電子棚札デバイス4、およびBLE通信デバイス5とのBLE規格に従う無線通信を実行する。電子棚札デバイス4は、BLE通信ユニット43を用いることにより、アプリケーションデバイス3、他の電子棚札デバイス4、およびBLE通信デバイス5との間で、アドバタイズ信号を送受信することができる。アドバタイズ信号には、コマンドや任意のデータ、情報を入れ込むことができる。そのため、電子棚札デバイス4は、アドバタイズ信号に含まれるコマンド、データ、情報等を適宜変更することにより、独自信号を用いずとも、アドバタイズ信号をやり取りすることにより、アプリケーションデバイス3、他の電子棚札デバイス4、およびBLE通信デバイス5との間で必要とされる通信を実行することができる。
【0044】
特に、電子棚札デバイス4は、BLE通信ユニット43を用いて、店舗内において買い物客によって用いられる買い物カゴまたは買い物カートに設けられたBLE通信デバイス5と、BLE規格に基づいた無線通信を実行し、BLE通信デバイス5からアドバタイズ信号を受信する。電子棚札デバイス4のBLE通信ユニット43とBLE通信デバイス5との間の無線通信は、BLE規格に従っていることから、BLE通信デバイス5から発せられるアドバタイズ信号の強度は、BLE規格で規定されている。一方、BLE通信デバイス5から発せられ、電子棚札デバイス4のBLE通信ユニット43によって受信されるアドバタイズ信号の強度は、電子棚札デバイス4とBLE通信デバイス5の離間距離に反比例する。そのため、BLE通信デバイス5からアドバタイズ信号を受信した電子棚札デバイス4は、アドバタイズ信号の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を参照することにより、電子棚札デバイス4とBLE通信デバイス5との間の離間距離を算出することができる。各電子棚札デバイス4によって取得されるアドバタイズ信号の受信信号強度は、後述するように、店舗内における買い物客の行動を判別するために利用可能である。
【0045】
ディスプレイ44は、プロセッサー41からの制御に応じて任意の情報を表示するための表示手段である。ディスプレイ44としては、液晶ディスプレイまたは電子ペーパーを用いることができる。電子棚札デバイス4がマスターレポーターユニットMR、レポーターユニットR、またはマスターエンドユニットMEとして機能する場合、ディスプレイ44は、電子棚札デバイス4に関連付けられた棚列7、商品棚6、または段61を特定するための情報(例えば、「棚列A」、棚列Aに属する1番目の商品棚を意味する「商品棚A-1」、棚列Aに属する1番目の商品棚の1段目を意味する「段A-1-1」等の情報)を表示してもよい。電子棚札デバイス4がエンドユニットEとして機能する場合、ディスプレイ44は、電子棚札デバイス4に関連付けられた商品に関する商品情報482(例えば、商品名、商品価格、消費期限、賞味期限、産地、商品バーコード、セール情報)を表示する。
【0046】
センサー45は、電子棚札デバイス4の周辺環境や電子棚札デバイス4の前方を通過する買い物客に関するセンシングデータを取得するために用いられる。センサー45は、画像センサー、音声センサー、温度センサー、湿度センサー、照度センサー、人感センサー、近接センサー、加速度センサー、およびタッチセンサーの少なくとも1つ含む。センサー45によって取得されたセンシングデータは、後述するように、店舗内における買い物客の行動判別するための機能や様々な用途に利用可能である。
【0047】
発光手段46は、プロセッサー41からの制御に応じて光を発する機能を有しており、LED等を発光手段46として用いることができる。電子棚札デバイス4が、クラスター型ネットワークCNを介して、アプリケーションデバイス3から、自身を対象とし、発光手段46を駆動するよう命令する信号を受信すると、電子棚札デバイス4のプロセッサー41は、アプリケーションデバイス3からの信号に応じて、発光手段46を駆動する。このような発光手段46は、例えば、次のような用途で用いられる。アプリケーションデバイス3のユーザー(店員)が、店舗内に配置されている複数の電子棚札デバイス4のいずれか1つの位置を特定したい際、ユーザーは、アプリケーションデバイス3を用いて、クラスター型ネットワークCNに対して、位置を特定したい電子棚札デバイス4を対象として、発光手段46を駆動させるための信号を送信する。自身を対象とする信号を受信した電子棚札デバイス4は、発光手段46を駆動する。これにより、ユーザーは、光を発している電子棚札デバイス4が、位置を特定したい電子棚札デバイス4であると認識することができる。また、店舗内において、アプリケーションデバイス3のユーザーが買い物客から商品の陳列場所を質問された際、ユーザーは、アプリケーションデバイス3を用いて、クラスター型ネットワークCNに対して、買い物客が欲する商品に関連付けられた電子棚札デバイス4を対象として、発光手段46を駆動させるための信号を送信する。自身を対象とする信号を受信した電子棚札デバイス4は、発光手段46を駆動する。これにより、買い物客は、光を発している電子棚札デバイス4を探すことにより、欲する商品を見つけることができる。
【0048】
メモリー47は、揮発性記憶媒体(例えば、RAM、SRAM、DRAM)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリー、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク)、またはこれらの組み合わせを含むコンピューター可読媒体である。
【0049】
メモリー47は、プロセッサー41と通信可能に接続され、電子棚札デバイス4が処理を実行するために必要なデータ48と、プロセッサー41により実行可能な複数のモジュール49と、を保存している。また、メモリー47は、複数のモジュール49の1つ以上によって受信、処理、生成されたデータや、複数のモジュール49による処理を実行するために必要なデータを一時保存する機能を備えている。
【0050】
メモリー47内に保存されているデータ48は、電子棚札デバイス4を棚列7、商品棚6、段61、または商品に関連付けるロール設定481と、電子棚札デバイス4が商品に関連付けられたエンドユニットEとして機能する場合に、自身に関連付けられた商品の商品情報482と、電子棚札デバイス4の処理を実行するために必要な任意の数のその他データ483と、を含んでいる。
【0051】
ロール設定481は、アプリケーションデバイス3からの信号に基づいて書き換え可能にメモリー47に保存されている。ロール設定481は、電子棚札デバイス4を店舗内の商品棚6に取り付ける際に、アプリケーションデバイス3からの信号に基づいて設定される。電子棚札デバイス4を店舗内の商品棚6に取り付ける際、アプリケーションデバイス3は、棚列7、商品棚6、段61、または商品を特定するための情報を含む信号を、無線通信を介して電子棚札デバイス4に送信し、電子棚札デバイス4は、受信した信号に含まれる情報をロール設定481としてメモリー47内に保存される。電子棚札デバイス4を店舗内の商品棚6に取り付ける際にアプリケーションデバイス3から電子棚札デバイス4に送信される信号に含まれる情報は、典型的には、棚列Aに属する商品棚1の1段目に、左(または右)から1番目に陳列された商品を表す「商品A-1-1-1」のような棚列7、商品棚6、段61、または商品を特定するためのドメインアドレスである。このような情報がロール設定481としてメモリー47内に保存されると、電子棚札デバイス4が、該情報によって特定される棚列7、商品棚6、段61、または商品に関連付けられる。
【0052】
電子棚札デバイス4が棚列7に関連付けられた場合には、電子棚札デバイス4が、マスターレポーターユニットMRとして機能し、電子棚札デバイス4が商品棚6に関連付けられた場合には、電子棚札デバイス4が、レポーターユニットRとして機能し、電子棚札デバイス4が段61に関連付けられた場合には、電子棚札デバイス4が、マスターエンドユニットMEとして機能し、電子棚札デバイス4が商品に関連付けられた場合には、電子棚札デバイス4が、エンドユニットEとして機能する。アプリケーションデバイス3によって、電子棚札デバイス4が棚列7、商品棚6、段61、または商品に関連付けられた後、アプリケーションデバイス3のユーザーは、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれを、ロール設定481に応じた箇所に取り付ける。これにより、店舗内に電子棚札デバイス4が配置される。また、前述のように、アプリケーションデバイス3は、クラスター型ネットワークCNを介して、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに信号を送信することができるので、アプリケーションデバイス3のユーザーは、任意のタイミングで、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに信号を送信し、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれのロール設定481を書き換えることも可能である。
【0053】
商品情報482は、電子棚札デバイス4がエンドユニットEとして機能する場合に、自身に関連付けられた商品に関する情報である。例えば、商品情報482は、商品名、商品価格、商品の管理コード、賞味期限、消費期限、産地を含む。商品情報482は、アプリケーションデバイス3からの信号に基づいて、メモリー47内に書き込まれる。典型的には、電子棚札デバイス4を店舗内の商品棚6に取り付ける際に、アプリケーションデバイス3から電子棚札デバイス4に商品に関する情報を送信することにより、商品情報482が電子棚札デバイス4のメモリー47内に書き込まれる。また、前述のように、アプリケーションデバイス3は、クラスター型ネットワークCNを介して、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに信号を送信することができるので、アプリケーションデバイス3のユーザーは、任意のタイミングで、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに信号を送信し、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれの商品情報482を書き換えることも可能である。なお、マスターエンドユニットMEが、自身が関連付けられた商品棚6の段61に陳列される複数の商品にさらに関連付けられている場合、マスターエンドユニットMEとして機能する電子棚札デバイス4のメモリー47内に、関連付けられた複数の商品のそれぞれに対応する商品情報482が書き込まれる。マスターエンドユニットMEとして機能する電子棚札デバイス4のメモリー47内に書き込まれた商品情報482も、アプリケーションデバイス3のユーザーによって任意のタイミングで書き換え可能である。
【0054】
その他データ483は、クラスター型ネットワークCNに関するネットワーク情報、例えば、通信ルーティングテーブル、ネットワークキー、アドレス等のクラスター型ネットワークCNにおける通信を行うために必要な様々なデータを含んでいる。なお、その他データ483は、電子棚札デバイス4の処理を実行するために必要とされる任意のデータをさらに含んでいる。
【0055】
電子棚札デバイス4がエンドユニットEとして機能する場合、電子棚札デバイス4は、商品情報482のうちの任意の1つ以上(例えば、商品名、商品価格、消費期限等)を、ディスプレイ44に表示する。電子棚札デバイス4がエンドユニットEとして機能する場合、電子棚札デバイス4は、自身に関連付けられた商品の近傍に位置するよう商品棚6の段61の前面に取り付けられるので、買い物客は、電子棚札デバイス4のディスプレイ44に表示された商品情報482を参照することにより、商品に関する情報を取得することができる。
【0056】
さらに、アプリケーションデバイス3のユーザーは、任意のタイミングで、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに信号を送信し、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれの商品情報482を書き換えることができるので、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれの商品情報482を書き換えることにより、商品価格を下げてタイムセールを実行する等の販促キャンペーンを、任意のタイミングで、容易に実行することができる。また、商品棚6に陳列された商品を入れ替える際には、アプリケーションデバイス3のユーザーは、対象となる電子棚札デバイス4に信号を送信し、電子棚札デバイス4の商品情報482を書き換える。これにより、電子棚札デバイス4のディスプレイ44に表示される商品情報482が変更されるので、商品入れ替えの際の棚札変更の手間が発生しない。
【0057】
メモリー47内に保存されているモジュール49は、ルーティーン、アプリケーション、プログラム、アルゴリズム、ライブラリー、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、またはこれらの組み合わせ等のプロセッサー41により実行可能なコンピューター可読命令である。
【0058】
モジュール49は、自身のロール設定481を含むアドバタイズ信号を送信するための情報送信モジュール491と、クラスター型ネットワークCNを構築するためのペアリング接続を確立するためのネットワーク構築モジュール492と、各電子棚札デバイス4が買い物カゴまたは買い物カートに設けられたBLE通信デバイス5から受信した信号の強度(RSSI)および/または各電子棚札デバイス4のセンサー45が取得したセンシングデータに基づいて、買い物客の行動を判別するための行動判別モジュール493と、電子棚札デバイス4が提供する機能を補うための任意の数のその他モジュール494と、を含んでいる。
【0059】
情報送信モジュール491は、他の電子棚札デバイス4またはアプリケーションデバイス3に対して自身のメモリー47内に保存されているロール設定481を含むアドバタイズ信号を送信するために用いられる。電子棚札デバイス4は、アプリケーションデバイス3からクラスター型ネットワークCNを構築するための信号を受信すると、他の電子棚札デバイス4と、自身のメモリー47内に保存されているロール設定481を含むアドバタイズ信号を送信し合い、他の電子棚札デバイス4のロール設定481を取得する。取得された他の電子棚札デバイス4のロール設定481は、メモリー47内に一時保存される。
【0060】
ネットワーク構築モジュール492は、メモリー47内に保存されている自身のロール設定481および他の電子棚札デバイス4のロール設定481を参照して、適切な他の電子棚札デバイス4との間のペアリング接続を確立するために用いられる。具体的には、ネットワーク構築モジュール492は、メモリー47内に保存されている自身のロール設定481および他の電子棚札デバイス4のロール設定481を参照し、自身がぶら下がるようにペアリング接続されるべき他の電子棚札デバイス4を特定する。その後、ネットワーク構築モジュール492は、特定された他の電子棚札デバイス4との間のペアリング接続を確立する。例えば、メモリー47内に保存されている自身のロール設定481が、棚列Aに属する商品棚1の1段目に、左(または右)から1番目に陳列された商品を表す「商品A-1-1-1」である場合、ネットワーク構築モジュール492は、メモリー47内に保存されている自身のロール設定481を参照し、自身が「商品棚1の1段目」に関連付けられた他の電子棚札デバイス4にぶら下がるようにペアリング接続されるべきであることを特定し、さらに、メモリー47内に保存されている他の電子棚札デバイス4のロール設定481を参照し、「商品棚1の1段目」に関連付けられた他の電子棚札デバイス4を特定し、その後、「商品棚1の1段目」に関連付けられた他の電子棚札デバイス4との間のペアリング接続を確立する。
【0061】
図4は、このような情報送信モジュール491およびネットワーク構築モジュール492を用いてクラスター型ネットワークを構築するための方法S100を示している。工程S110において、アプリケーションデバイス3のユーザーは、アプリケーションデバイス3を用いて、クラスター型ネットワークCNを構築するために用いられるべき複数の電子棚札デバイス4のそれぞれにペアリング接続し、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれのロール設定481を設定し、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれを棚列7、商品棚6、段61、または商品に関連付ける。さらに、この際、アプリケーションデバイス3のユーザーは、商品に関連付けられた電子棚札デバイス4、すなわち、エンドユニットEの商品情報482を設定する。ロール設定481が設定された複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、自身のディスプレイ44上に設定されたロール設定481を表示する。なお、工程S110の時点においては、複数の電子棚札デバイス4は互いにペアリング接続されていない。
【0062】
工程S120において、アプリケーションデバイス3のユーザーは、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれのディスプレイ44に表示されたロール設定481を参照して、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれが取り付けられるべき箇所(例えば、商品棚6、段61、または段61の前面の特定の位置)を特定し、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれを特定された箇所に取り付ける。
【0063】
工程S130において、アプリケーションデバイス3のユーザーは、アプリケーションデバイス3を用いて、各箇所に取り付けられた複数の電子棚札デバイス4のいずれか1つにペアリング接続し、クラスター型ネットワークCNの構築を開始するための信号を送信する。この際、アプリケーションデバイス3からクラスター型ネットワークCNの構築を開始するための信号を受信した電子棚札デバイス4が、アクティブ化される。工程S140において、アクティブ化された電子棚札デバイス4は、他の電子棚札デバイス4のそれぞれに対して、ウェイクアップ用のアドバタイズ信号を無線送信する。これにより、他の電子棚札デバイス4のそれぞれがアクティブ化される。
【0064】
工程S150において、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、情報送信モジュール491を用いて、自身のメモリー47内に保存されているロール設定481を含むアドバタイズ信号を生成し、互いに送信し合う。複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、他の電子棚札デバイス4からアドバタイズ信号を受信すると、他の電子棚札デバイス4のロール設定481を自身のメモリー47内に一時保存する。工程S160において、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、ネットワーク構築モジュール492を用いて、メモリー47内に保存されている自身のロール設定481および他の電子棚札デバイス4のロール設定481を参照して、適切な他の電子棚札デバイス4との間のペアリング接続を確立する。これにより、クラスター型ネットワークCNが構築される。その後、工程S170において、クラスター型ネットワークCLの最上位階層に属する電子棚札デバイス4であるマスターレポーターユニットMRとアプリケーションデバイス3との間のペアリング接続が確立され、アプリケーションデバイス3がクラスター型ネットワークCNに接続され、方法S100が終了する。このように、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、アプリケーションデバイス3によって設定された自身のロール設定481に基づいて、自動的に適切な他の電子棚札デバイス4との間のペアリング接続を確立し、クラスター型ネットワークCNを構築する。
【0065】
図3に戻り、行動判別モジュール493は、下位の階層に属する電子棚札デバイス4のそれぞれが取得したBLE通信デバイス5からの信号の強度(RSSI)やセンシングデータに基づいて、買い物客の行動を判別するよう構成されている。上述したように、双方向通信を可能とするペアリング接続によってクラスター型ネットワークCNが構築されているため、下位の階層に属する電子棚札デバイス4から上位の階層に属する電子棚札デバイス4への信号の送信が可能である。そのため、上位の階層に属する電子棚札デバイス4は、下位の階層に属する電子棚札デバイス4のそれぞれが取得したBLE通信デバイス5からの信号の強度(RSSIデータ)やセンシングデータを収集することができる。
【0066】
各電子棚札デバイス4が取得したBLE通信デバイス5からの信号の強度(RSSIデータ)は、各電子棚札デバイス4からBLE通信デバイス5までの距離に対応している。そのため、複数の電子棚札デバイス4が取得したBLE通信デバイス5からの信号の強度(RSSI)を参照することにより、三角測量の原理に基づいて、BLE通信デバイス5の位置、すなわち、BLE通信デバイス5が設けられた買い物カゴや買い物カートを用いる買い物客の位置を特定することができる。リアルタイムで買い物客の位置を特定することにより、店舗内における買い物客の動線を判別することができる。
【0067】
また、下位の階層に属する電子棚札デバイス4のそれぞれが取得したセンシングデータから、買い物客の動作を判別することができる。例えば、センサー45が画像センサーである場合、行動判別モジュール493は、センシングデータとして得られる画像データから、買い物客の姿勢の変化、商品に対する接近等の動作を検出することができる。このように、行動判別モジュール493は、下位の階層に属する複数の電子棚札デバイス4のそれぞれが取得したBLE通信デバイス5からの信号の強度(RSSIデータ)やセンシングデータに基づいて、買い物客の動線や動作を含む買い物客の行動を判別することができる。
【0068】
図5は、クラスター型ネットワークCNを構築する複数の電子棚札デバイス4によって実行される買い物客の行動判別処理の概要を示している。図5に示されている態様では、アプリケーションデバイス3は、店舗内に位置する複数の棚列7にそれぞれ対応する複数のクラスター型ネットワークCNのマスターレポーターユニットMRにペアリング接続されている。
【0069】
買い物客は、BLE通信デバイス5が設けられた買い物カゴまたは買い物カートとともに店舗内を移動する。この際、BLE通信デバイス5は、店舗内に設置された複数の商品棚6に取り付けられた複数のエンドユニットEのそれぞれに対してアドバタイズ信号を送信する。BLE通信デバイス5から送信されるアドバタイズ信号は、BLE通信デバイス5を特定するための情報(ID情報等)を含んでおり、複数のエンドユニットEのそれぞれは、アドバタイズ信号を送信したBLE通信デバイス5を特定することができる。
【0070】
アドバタイズ信号を受信した複数のエンドユニットEのそれぞれは、BLE通信デバイス5から受信したアドバタイズ信号の強度(RSSIデータ)を算出する。この際、複数のエンドユニットEのそれぞれは、センサー45を用いて、買い物客に関するセンシングデータ(買い物客の画像データ等)を取得する。その後、複数のエンドユニットEのそれぞれは、自身が取得したRSSIデータおよびセンシングデータから、第1のレポートデータを作成する。第1のレポートデータは、BLE通信デバイス5を特定するための情報、RSSIデータおよびセンシングデータを取得した時刻(データ取得時刻)、ロール設定481から導出されるエンドユニットEの設置場所(データ取得場所)、およびRSSIデータから算出されたエンドユニットEからの買い物客の離間距離、センシングデータから導出された買い物客の動作(姿勢等)を含む。その後、複数のエンドユニットEのそれぞれは、自身にペアリング接続されているマスターエンドユニットMEに、第1のレポートデータを送信する。
【0071】
複数のマスターエンドユニットMEのそれぞれは、行動判別モジュール493を用いて、自身にペアリング接続されている複数のエンドユニットEから取得した第1のレポートデータを処理し、第2のレポートデータを生成する。第2のレポートデータは、各段61の前方における買い物客の行動である。具体的には、第2のレポートデータは、BLE通信デバイス5を特定するための情報、データ取得時刻、データ取得場所、商品棚6の各段61の前方における買い物客の移動方向および移動速度、買い物客の動作(姿勢等)を含む。複数のマスターエンドユニットMEのそれぞれは、生成した第2のレポートデータを、自身にペアリング接続されているレポーターユニットRに送信する。
【0072】
複数のレポーターユニットRのそれぞれは、行動判別モジュール493を用いて、自身にペアリング接続されている複数のマスターエンドユニットMEから取得した第2のレポートデータを処理し、第3のレポートデータを生成する。第3のレポートデータは、各商品棚6の前方における買い物客の行動である。具体的には、第3のレポートデータは、BLE通信デバイス5を特定するための情報、データ取得時刻、データ取得場所、商品棚6の前方における買い物客の移動方向および移動速度、買い物客の動作(蛇行、停止、姿勢の変更等)を含む。複数のレポーターユニットRのそれぞれは、生成した第3のレポートデータを、自身にペアリング接続されているマスターレポーターユニットMRに送信する。
【0073】
複数のマスターレポーターユニットMRのそれぞれは、行動判別モジュール493を用いて、自身にペアリング接続されている複数のレポーターユニットRから取得した第3のレポートデータを処理し、第4のレポートデータを生成する。第4のレポートデータは、各棚列7の周辺における買い物客の行動である。具体的には、第4のレポートデータは、BLE通信デバイス5を特定するための情報、データ取得時刻、データ取得場所、棚列7の周辺における買い物客の移動方向および移動速度、買い物客の動作(蛇行、停止、姿勢の変更等)を含む。複数のマスターレポーターユニットMRのそれぞれは、生成した第4のレポートデータを、自身にペアリング接続されているアプリケーションデバイス3に送信する。
【0074】
アプリケーションデバイス3は、自身にペアリング接続されている複数のマスターレポーターユニットMRから取得した第4のレポートデータを処理することにより、店舗内における買い物客の行動を判別する。アプリケーションデバイス3によって判別された店舗内における買い物客の行動は、データベース2に送信され、店舗内の買い物客の行動傾向データとしてデータベース化される。例えば、アプリケーションデバイス3によって判別された店舗内における買い物客の行動に関するデータから、店舗内の買い物客の動線データベースや各商品に関する買い物客の接近頻度データベースを構築することができる。このようなデータベースは、店舗内のレイアウトや商品ラインナップを決定するために活用することができる。
【0075】
このように、各エンドユニットEが取得したRSSIデータおよびセンシングデータがより上位の階層に属する電子棚札デバイス4に次々に送信されるため、電子棚札システム1は、電子棚札機能だけでなく、上述したような買い物客の行動判別機能や、センシングデータを利用した様々な機能を提供することができる。例えば、センサー45がタッチセンサー(ディスプレイ44と共に設けられたタッチパネルやディスプレイ44とは別個に設けられたタッチボタン)を含む場合、買い物客が電子棚札デバイス4をタッチすることにより、店員を呼び出したり、商品に関するより詳細な情報をディスプレイ44に表示させたりする等の様々な機能を、本発明の電子棚札システム1は、提供することができる。買い物客の行動判別機能やセンシングデータを利用した様々な機能は、小売店での業務作業の効率化等に活用することができる。
【0076】
また、クラスター型ネットワークCNにおいては、上述のように各階層に属する電子棚札デバイス4は、自身が取得したデータ、または、下位の階層に属する電子棚札デバイス4から受信したデータを処理し、レポートデータを生成している。そのため、本発明の電子棚札システム1において、クラスター型ネットワークCNは、分散ネットワークコンピューティング環境となっている。そのため、単に下位の階層に属する電子棚札デバイス4から上位の階層に属する電子棚札デバイス4にデータを送信し、最終的にアプリケーションデバイス3でデータを処理する場合と比較して、アプリケーションデバイス3のデータ処理量、各電子棚札デバイス4間の通信トラフィック量を大幅に低減することができる。また、アプリケーションデバイス3および各電子棚札デバイス4による処理によって、データベース2にアップデートされるデータ量も大幅に低減される。
【0077】
また、分散ネットワークコンピューティング環境によって、各電子棚札デバイス4の処理負荷の偏りも生じないので、アプリケーションデバイス3および各電子棚札デバイス4の要求演算能力(CPUスペック)の増加を抑制することができる。これにより、ロースペックのアプリケーションデバイス3および各電子棚札デバイス4を用いて電子棚札システム1を構成することが可能となるので、電子棚札システム1の導入コストを大幅に低減することができる。
【0078】
図1に戻り、BLE通信デバイス5は、店舗内において買い物客によって用いられる買い物カゴや買い物カートに取り付けられ、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれとBEL規格に従った無線通信を実行可能な任意の種類の通信デバイスである。BLE通信デバイス5は、任意の頻度(例えば1分に1回、30秒に1回)で、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれに対してアドバタイズ信号を送信する。これにより、複数の電子棚札デバイス4のそれぞれは、BLE通信デバイス5から受信したアドバタイズ信号の強度(RSSI)を取得し、前述したように、買い物客の行動を判別するために利用することができる。
【0079】
以上、本発明の電子棚札システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の各コンポーネントの構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0080】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の方法および通信システムの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する方法および通信システムもまた、本発明の範囲内である。
【0081】
例えば、図1図3に示された通信システムの電子棚札システムの数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意のコンポーネントが追加若しくは組み合わされ、または任意のコンポーネントが削除された態様も、本発明の範囲内である。また、電子棚札システムの各コンポーネントは、ハードウェア的に実現されていてもよいし、ソフトウェア的に実現されていてもよいし、これらの組み合わせによって実現されていてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態においては、クラスター型ネットワークCNを構成する全ての電子棚札デバイス4がセンサー45を備えているが、本発明はこれに限られない。クラスター型ネットワークCNにおいてエンドユニットEとして機能する電子棚札デバイス4のみがセンサー45を備えており、クラスター型ネットワークCNにおいてマスターレポーターユニットMR、レポーターユニットR、またはマスターエンドユニットMEとして機能する電子棚札デバイス4がセンサー45を備えていない態様もまた、本発明の範囲内である。この場合、エンドユニットEとして機能する電子棚札デバイス4がセンシングデータの取得を行い、マスターレポーターユニットMR、レポーターユニットR、またはマスターエンドユニットMEとして機能する電子棚札デバイス4が、下位の階層に属する電子棚札デバイス4から送信されたデータを処理する。このような構成によっても、買い物客の行動判別機能やセンシングデータを利用した様々な機能を提供することができる。
【0083】
また、上述の説明では、各電子棚札デバイス4のセンサー45によって取得されるセンシングデータを用いて買い物客の行動を判別したが、本発明はこれに限られない。買い物客の行動以外の様々な事項が、各電子棚札デバイス4のセンサー45によって取得されるセンシングデータを用いて判別されるような態様も本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0084】
1…電子棚札システム 2…データベース 3…アプリケーションデバイス 4…電子棚札デバイス 41…プロセッサー 42…I/Oインターフェース 43…BLE通信ユニット 44…ディスプレイ 45…センサー 46…発光手段 47…メモリー 48…データ 481…ロール設定 482…商品情報 483…その他データ 49…モジュール 491…情報送信モジュール 492…ネットワーク構築モジュール 493…行動判別モジュール 494…その他モジュール 5…BLE通信デバイス 6…商品棚 61…段 7…棚列 CN…クラスター型ネットワーク E…エンドユニット ME…マスターエンドユニット MR…マスターレポーターユニット R…レポーターユニット S100…方法 S110、S120、S130、S140、S150、S160、S170…工程
図1
図2
図3
図4
図5