(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20241113BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20241113BHJP
G02F 2/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H04L7/00 750
H04L27/00 C
H04L27/00 Z
G02F2/00
(21)【出願番号】P 2020203478
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正満
(72)【発明者】
【氏名】飯山 法子
(72)【発明者】
【氏名】可児 淳一
(72)【発明者】
【氏名】永妻 忠夫
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-077979(JP,A)
【文献】特開2000-275107(JP,A)
【文献】特開2016-005142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0185141(US,A1)
【文献】特開2006-029821(JP,A)
【文献】特開2007-328044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04L 27/00
G02F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連続光の第1周波数と第2連続光の第2周波数との差の要求値が第3周波数の自然数倍である場合に、前記第3周波数に基づく周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、前記第1連続光を用いて生成する
第1サイドバンド発生器と、
前記第2周波数に近い周波数の光キャリアとして前記第1光サイドバンドから選択された光キャリアと前記第2連続光とを
直接又は間接に用いて、検波処理を実行する検波器と、
前記検波処理の結果に基づいて、前記要求値に対する前記差の正負のずれ量を導出するずれ導出部と
を備える検出装置。
【請求項2】
前記
第1サイドバンド発生器は、前記第3周波数に等しい周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、前記第1連続光を用いて生成し、
前記検波器は、前記検波処理として光イントラダイン検波処理を実行する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
第1連続光の第1周波数と第2連続光の第2周波数との差の要求値が第3周波数の自然数倍である場合に、前記第3周波数からずれた周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、前記第1連続光を用いて生成
する第1サイドバンド発生器と、
前記第2周波数に近い周波数の光キャリアとして前記第1光サイドバンドから選択された光キャリアと前記第2連続光とを直接又は間接に用いて、検波処理として光ヘテロダイン検波処理を実行する
検波器と、
前記検波処理の結果に基づいて、前記要求値に対する前記差の正負のずれ量を導出するずれ導出部と
を備える検出装置。
【請求項4】
前記選択された光キャリアを前記第1光サイドバンドから切り出す
第1バンドパスフィルタを備え、
前記検波器は、前記第1光サイドバンドから切り出された光キャリアと前記第2連続光とを用いて、前記検波処理を実行する、
請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記複数の光キャリアを有する第2光サイドバンドを、更に前記第2連続光を用いて生成
する第2サイドバンド発生器と、
前記第1周波数及び前記第2周波数の間の第4周波数に近い周波数の光キャリアとして第1光キャリアを前記第1光サイドバンドから切り出し、前記第4周波数に近い周波数の光キャリアとして第2光キャリアを前記第2光サイドバンドから切り出
す第2バンドパスフィルタとを更に備え、
前記検波器は、切り出された前記第1光キャリアと切り出された前記第2光キャリアとを用いて、前記検波処理を実行する、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記ずれ導出部は、デジタル信号処理又はアナログ信号によって、前記差の正負のずれ量を導出する、
請求項1から請求項
5のいずれ
か一項に記載の検出装置。
【請求項7】
検出装置が実行する検出方法であって、
第1連続光の第1周波数と第2連続光の第2周波数との差の要求値が第3周波数の自然数倍である場合に、前記第3周波数に基づく周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、前記第1連続光を用いて生成する光サイドバンド発生ステップと、
前記第2周波数に近い周波数の光キャリアとして前記第1光サイドバンドから選択された光キャリアと前記第2連続光とを用いて、検波処理を実行する検波ステップと、
前記検波処理の結果に基づいて、前記要求値に対する前記差の正負のずれ量を導出するずれ導出ステップと
を含む検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の伝送速度は増加の一途を辿っており、近い将来において要求帯域が数10Gb/sから100Gb/s程度になることが予想されている。周波数が100GHzを超える電波は、テラヘルツ(THz)波と呼ばれている。テラヘルツ波帯は、現在のスマートフォン等の携帯端末が利用する1GHz近辺の電波と比較して、100倍以上の広帯域を有する。近年、爆発的な帯域の増加要求に応えるため、テラヘルツ波帯を用いる高速な無線通信に注目が集まっている。
【0003】
現在、テラヘルツ波帯のうち、約200GHzから約400GHzまでの間の約200GHz幅の帯域を有する周波数領域について、最も重点的に研究開発が行われている。この帯域のうちの100GHz幅の帯域を送受信デバイスが利用して、簡易な強度変調方式で送受信デバイスが通信した場合でも、100Gb/s程度の通信速度は十分に実現可能である。
【0004】
図10は、無線送信器100aの構成の第1例を示す図である。無線送信器100aは、光ファイバ通信で用いられる1.5μm帯の光キャリアを間接的に用いて、テラヘルツ波帯の無線信号を生成する(非特許文献1参照)。無線送信器100aは、レーザ110と、サイドバンド発生器120と、発振器130とを、光周波数コム発生器として備える。更に、無線送信器100aは、波長分波器140と、変調器150と、波長合波器160と、光電気変換器170と、アンテナ180とを備える。
【0005】
光周波数コム発生器は、一定の周波数間隔(コム間隔)で周波数軸上に並ぶ多数の光キャリアである多波長光キャリア(複数のモードを有する光周波数コム)を、モニタ光として生成する。
図10では、1.5μm帯のレーザ110(光源)は、レーザ110から出力された単一波長「f
0」の連続光(出力光)を、サイドバンド発生器120に出力する。発振器130は、発振器130から出力された周波数「Δf」の正弦波信号を用いて、サイドバンド発生器120を駆動する。ここで、周波数「Δf」が逓倍された周波数がテラヘルツ波の周波数となるように、正弦波信号の周波数「Δf」の値は設定される。光周波数コム発生器は、レーザ110から出力された連続光の周波数「f
0」を中心として、正弦波信号の周波数「Δf」が逓倍(i倍)された周波数「f
0+iΔf」の多数の光キャリア(光サイドバンド)を生成する。この「i」は、0以外の整数(自然数)である。
【0006】
サイドバンド発生器120は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)強度変調器又はニオブ酸リチウム位相変調器等の光変調器を有する。サイドバンド発生器120は、レーザ110から出力された連続光を変調することによって、周波数「f0」の光キャリアに対して光サイドバンドを生成する。周波数「f0」の光キャリアと光サイドバンドとを含む多波長光キャリアは、光周波数コム発生器の出力として、波長分波器140に入力される。
【0007】
波長分波器140は、所定の第1周波数の光キャリアである第1光キャリアと、所定の第2周波数の光キャリアである第2光キャリアとを、多波長光キャリアから切り出す。ここで、波長分波器140は、第1光キャリアの周波数と第2光キャリアの周波数との間の差(周波数差)と、生成されるテラヘルツ波の周波数とが等しくなるように、多波長光キャリアから切り出される第1光キャリア及び第2光キャリアを選択する。「i=m」の2波長の光キャリア(2本のサイドバンド)が選択された場合、周波数「fT=|2m|Δf」のテラヘルツ波を発生させることができる。
【0008】
変調器150は、データ発生器(不図示)から送信されたデータ信号(デジタル信号)を用いて第1光キャリアを変調することによって、変調光キャリアを生成する。波長合波器160は、この変調光キャリアと、変調されていない第2光キャリアである無変調光キャリアとを合波する。波長合波器160は、光キャリアの合波結果を、光電気変換器170(フォトミキサ)に出力する。
【0009】
光電気変換器170は、例えば、テラヘルツ波帯においても光電気変換帯域を有する単一走行キャリアフォトダイオード(Uni-Travelling-Carrier Photodiode : UTC-PD)である。光電気変換器170は、光キャリアの合波結果に対する光電気変換によって、周波数差(ビート周波数)に応じたテラヘルツ波帯の電気信号を生成する。アンテナ180は、光電気変換器170によって変換された電気信号に応じた無線信号を無線区間に向けて送信する。
【0010】
無線送信器100aによって生成されたテラヘルツ波の周波数の精度は、発振器130が有する周波数の精度に近似しており、非常に高精度である。すなわち、波長合波器160の出力において、周波数「fT=|2m|Δf」は非常に安定している。しかしながら、サイドバンド発生器120から出力された各光キャリアの光強度は、光サイドバンドの生成による多波長化によって、サイドバンド発生器120に入力された各光キャリアの光強度と比較して低下する。このため、各光キャリアの光強度の低下に応じて光信号対雑音比(Optical Signal-to-Noise Ratio)が劣化するので、アンテナ180から送信されるテラヘルツ波帯の無線信号の送信SNRが劣化するという問題がある。
【0011】
図11は、無線送信器100bの構成の第2例を示す図である。無線送信器100bは、アンテナ180から送信されるテラヘルツ波帯の無線信号の送信SNRの劣化を防ぐことができる。無線送信器100bは、光周波数コムを用いずに、周波数が互いに異なる連続光を用いる。無線送信器100bは、レーザ110-1とレーザ110-2とを、個別光源として備える。更に、無線送信器100bは、変調器150と、波長合波器160と、光電気変換器170と、アンテナ180とを備える。
【0012】
レーザ110-1は、所定の第1周波数「f1」の連続光を、波長合波器160に出力する。レーザ110-2は、第1周波数とは異なる第2周波数「f2」の連続光を、変調器150に出力する。光電気変換器170は、光電気変換によるビート周波数としての周波数|f1-f2|のテラヘルツ波の電気信号を生成する。
【0013】
無線送信器100bでは、光サイドバンドが生成されないので、レーザ110から出力された連続光の多波長化による光強度の低下がない。このため、光信号対雑音比は劣化しないので、無線送信器100bのアンテナ180から送信されるテラヘルツ波の無線信号の送信SNRは、
図10に示された無線送信器100aの無線信号の送信SNRよりも高い。しかしながら、無線送信器100bの各レーザ110から出力された連続光における周波数の安定度は、
図10に示された無線送信器100aの発振器130の正弦波信号における周波数の安定度よりも遥かに低い。この理由は、無線送信器100bにおいて生成されるテラヘルツ波の周波数が、無線送信器100bの各レーザ110から出力された連続光における周波数の安定度に依存するためである。
【0014】
このように、無線送信器100bでは、各レーザ110から出力された連続光の周波数揺らぎに応じて、生成されるテラヘルツ波の周波数が大きく変化するという問題がある。すなわち、複数の光源から出力された各連続光の波長揺らぎに応じて、連続光の間の周波数差「2mΔf」が揺らぐという問題がある。この「m」は、0以外の整数(自然数)である。
【0015】
しかしながら、レーザ110から出力された連続光の間の周波数差を一定に保つことができるのであれば、無線送信器100bの構成は有力な構成となり得る。2台のレーザから出力された連続光の周波数差を一定に保つ技術は、光ヘテロダイン受信を利用する光伝送システムにおいて用いられている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】“Real-time 100-Gbit/s QPSK Transmission Using Photonics-based 300-GHz-band wireless Link”, IEEE International Topical Meeting on Microwave Photonics (MWP), TuM1.1, 2016.
【文献】“622Mbit/s-16ch FDMコヒーレント光伝送装置”, テレビジョン学会技術報告,1993年 17巻 18号 pp.25-30.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図12は、光ヘテロダイン受信を利用する光伝送システムの構成例を示す図である。この光伝送システムは、レーザ110-3と、レーザ110-4と、変調器190と、結合器191と、光電気変換器192と、周波数弁別器193とを備える。
図12では、光伝送システムは、結合器191と、光電気変換器192とを、ヘテロダイン検波器として備える。送信器のレーザ110-4から出力された連続光は、送信器の変調器190によって、データ信号(デジタル信号)を用いて変調される。ヘテロダイン受信器のレーザ110-3から出力された連続光は、ヘテロダイン受信器において局発光として使用される。
【0018】
レーザ110-3から出力された連続光の周波数と、レーザ110-4から出力された連続光の周波数との差(周波数差)の要求値は、ヘテロダイン検波器において規定された中間周波数「f
IF(=|f
3-f
4|)」である。結合器191と光電気変換器192とを有するヘテロダイン検波器の出力は、周波数弁別器193によって弁別される。これによって、周波数弁別器193は、規定値「f
IF」からの正負のずれ量「Δx」に比例した値(
図12に示された「aΔx」)を、振幅情報として検出する。この振幅情報の検出結果のフィードバック制御によって、各レーザ110の周波数を安定化させることができる。しかしながら、テラヘルツ波帯で動作可能な周波数弁別器は存在しなので、
図12に示された送信器を周波数の安定化のために用いることができない。
【0019】
このように、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合には、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することができない場合がある。
【0020】
上記事情に鑑み、本発明は、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である検出装置及び検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様は、第1連続光の第1周波数と第2連続光の第2周波数との差の要求値が第3周波数の自然数倍である場合に、前記第3周波数に基づく周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、前記第1連続光を用いて生成するサイドバンド発生器と、前記第2周波数に近い周波数の光キャリアとして前記第1光サイドバンドから選択された光キャリアと前記第2連続光とを用いて、検波処理を実行する検波器と、前記検波処理の結果に基づいて、前記要求値に対する前記差の正負のずれ量を導出するずれ導出部とを備える検出装置である。
【0022】
本発明の一態様は、検出装置が実行する検出方法であって、第1連続光の第1周波数と第2連続光の第2周波数との差の要求値が第3周波数の自然数倍である場合に、前記第3周波数に基づく周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、前記第1連続光を用いて生成する光サイドバンド発生ステップと、前記第2周波数に近い周波数の光キャリアとして前記第1光サイドバンドから選択された光キャリアと前記第2連続光とを用いて、検波処理を実行する検波ステップと、前記検波処理の結果に基づいて、前記要求値に対する前記差の正負のずれ量を導出するずれ導出ステップとを含む検出方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態における、検出装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態における、検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態の第1変形例における、光受信器の構成例を示す図である。
【
図4】第2実施形態における、検出装置の構成例を示す図である。
【
図5】第2実施形態における、検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の第2変形例における、検出装置の構成例を示す図である。
【
図7】第3実施形態における、検出装置の構成例を示す図である。
【
図8】第4実施形態における、検出装置の構成例を示す図である。
【
図9】各実施形態における、検出装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図10】従来における、無線送信器の構成の第1例を示す図である。
【
図11】従来における、無線送信器の構成の第2例を示す図である。
【
図12】従来における、光ヘテロダイン受信を利用する光伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における、検出装置1aの構成例を示す図である。検出装置1aは、周波数又は周波数差(ビート周波数)のずれ量を検出する装置(検出器)である。検出装置1aは、例えば、
図10に示された無線送信器100aに備えられる。検出装置1aは、レーザ10-1と、レーザ10-2と、分岐器11-1と、分岐器11-2と、発振器12aと、サイドバンド発生器13と、バンドパスフィルタ14(BPF)と、イントラダイン検波器15と、アナログデジタル変換器16-1と、アナログデジタル変換器16-2と、デジタル信号処理器17と、フィードバック部18とを備える。
【0026】
レーザ10-1(第1レーザ)は、例えば半導体レーザである。レーザ10-1は、周波数「f1」の連続光(レーザ光)を、分岐器11-1に出力する。レーザ10-2(第2レーザ)は、例えば半導体レーザである。レーザ10-2は、周波数「f1」とは異なる周波数「f2」の連続光(レーザ光)を、分岐器11-2に出力する。
【0027】
分岐器11-1は、周波数「f
1」の連続光を分岐する。分岐器11-1は、分岐器11-1によって分岐された連続光のうちの一方の連続光を、サイドバンド発生器13に出力する。分岐器11-1は、分岐器11-1によって分岐された連続光のうちの他方の連続光を、波長合波器(例えば、
図10又は
図11に示された波長合波器160)に出力する。
【0028】
分岐器11-2は、周波数「f
2」の連続光を分岐する。分岐器11-2は、分岐器11-2によって分岐された連続光のうちの一方の連続光を、イントラダイン検波器15に出力する。すなわち、分岐器11-2は、周波数「f
2」の光キャリア31を、イントラダイン検波器15に出力する。分岐器11-2は、分岐器11-2によって分岐された連続光のうちの他方の連続光を、変調器(例えば、
図10又は
図11に示された変調器150)に出力する。
【0029】
変調器150に出力された周波数「f
1」の連続光と、波長合波器160に出力された周波数「f
2」の連続光とは、例えば
図10又は
図11に示された無線送信器において、テラヘルツ波の無線信号の生成に用いられる。
【0030】
発振器12aは、周波数「Δf(=0+Δf)」の正弦波信号を、サイドバンド発生器13に出力する。ここで、周波数「Δf」は、レーザ10-1から出力された連続光の周波数「f1」と、レーザ10-2から出力された連続光の周波数「f2」との差の要求値の「1/n(nは、0以外の整数(自然数))」である。したがって、レーザ10-1から出力された連続光の周波数「f1」と、レーザ10-2から出力された連続光の周波数「f2」との差(周波数間隔)の要求値は、「|n|Δf」と表される。なお、周波数の差の要求値は、例えば、無線送信器を有する通信システムの要求値として予め定められる。
【0031】
サイドバンド発生器13には、分岐器11-1によって分岐された連続光のうちの一方の連続光が入力される。サイドバンド発生器13は、発振器12aから出力された正弦波信号を用いて、周波数「f1」に対して光サイドバンドを生成する。ここで、サイドバンド発生器13は、周波数「f1」に対して周波数「Δf」が逓倍(i倍)された異なる周波数「f1+iΔf」の複数の光キャリアを有する多波長光キャリアを生成する。すなわち、サイドバンド発生器13は、周波数「f1」に対して、コム幅「Δf」の複数のモードを有する光周波数コムを生成する。サイドバンド発生器13は、サイドバンド発生器13によって生成された多波長光キャリア(光周波数コム)を、バンドパスフィルタ14に出力する。
【0032】
バンドパスフィルタ14は、周波数「f1+nΔf」の光キャリア30を、周波数「f1+iΔf」の光サイドバンドから切り出す。バンドパスフィルタ14は、周波数「f1+nΔf」の光キャリア30を、イントラダイン検波器15に出力する。
【0033】
イントラダイン検波器15には、バンドパスフィルタ14によって多波長光キャリアのうちから切り出された光キャリア30(選択された光キャリア)が、バンドパスフィルタ14から入力される。イントラダイン検波器15には、分岐器11-2によって分岐された連続光のうちの一方の連続光が、分岐器11-2から入力される。イントラダイン検波器15に分岐器11-2から入力された光キャリア31(連続光)の周波数は、「f2」である。
【0034】
イントラダイン検波器15は、光デジタルコーレント伝送において使用される光90度ハイブリッド受信器を備える。イントラダイン検波器15は、周波数「f1+nΔf」の光キャリア30と、分岐器11-2から入力された周波数「f2」の光キャリア31とを用いて、光イントラダイン検波を実行する。イントラダイン検波器15は、Qチャネルのアナログ信号を、光イントラダイン検波のQチャネルの出力として、アナログデジタル変換器16-1に出力する。イントラダイン検波器15は、Iチャネルのアナログ信号を、光イントラダイン検波のIチャネルの出力として、アナログデジタル変換器16-2に出力する。
【0035】
アナログデジタル変換器16-1は、一定のサンプリング周波数で、Qチャネルのアナログ信号を量子化する。アナログデジタル変換器16-1は、Qチャネルのデジタル信号を、デジタル信号処理器17に出力する。アナログデジタル変換器16-2は、一定のサンプリング周波数で、Iチャネルのアナログ信号を量子化する。アナログデジタル変換器16-2は、Iチャネルのデジタル信号を、デジタル信号処理器17に出力する。
【0036】
デジタル信号処理器17(ずれ導出部)は、Qチャネルのデジタル信号とIチャネルのデジタル信号とを用いて、周波数「f1」と周波数「f2」との間の周波数差(ビート周波数)の要求値に対する、周波数「f1」と周波数「f2」との間の周波数差のずれ量「Δx」を導出する処理(デジタル信号処理)を実行する。デジタル信号処理器17は、周波数差の要求値に対して、周波数「f2」の光キャリア31(連続光)と、切り出された周波数「f1+nΔf」の光キャリア30との間の周波数差のずれ量を導出する。なお、周波数差のずれが無い場合には、ずれ量「Δx」は0である。
【0037】
導出されたずれ量「Δx」を用いて各レーザ10の連続光(出力光)の周波数を安定化させるためには、ずれ量の絶対値が導出されるだけでなく、ずれ量の正負(ずれ方向)が検出される必要がある。イントラダイン検波器15は、光イントラダイン検波(例えば、参考文献1:“Frequency estimation in intradyne reception”, IEEE Photon. Technol. Lett., Vol. 19, No. 6, pp.366-368, 2007.)を用いて、ずれ量の正負を検出する。
【0038】
光イントラダイン検波の結果である電気信号(アナログ信号)「Vp(k)」は、「Vp(k)」の絶対値が1に規格化された場合、複素表現を用いて式(1)のように表される。
【0039】
【0040】
ここで、「tk」は、k番目のサンプル点における時刻を表す。「φk」は、光位相差を表す。すなわち、「φk」は、レーザ10-1から出力された連続光の位相と、レーザ10-2から出力された連続光の位相との差を表す。式(1)の実部は、Iチャネルの出力を表す。式(1)の虚部は、Qチャネルの出力を表す。
【0041】
k番目のサンプル点における電気信号「Vp(k)」と、k番目に対してサンプル点が1個分ずれている「k-1」番目のサンプル点における電気信号「Vp(k-1)」の複素共役「Vp*(k-1)」との積は、式(2)のように表される。
【0042】
【0043】
各レーザ10から出力された連続光のコヒーレンス時間よりもサンプリング周期「T(=tk-tk-1)」が十分短い場合には、「φk=φk-1」と見做すことができる。これを用いて、式(2)は、式(3)のように近似できる。
【0044】
【0045】
ここで、複素平面(IQ平面)上の位相回転角「2πΔxT」が「-π<2πΔxT<πの範囲にある場合、周波数差のずれ量「Δx」は、式(4)に示された範囲内で一意に導出することができる。
【0046】
【0047】
また、1個分ではなくp個分だけサンプル点がずらされた場合では、周波数差のずれ量「Δx」は、式(5)の範囲で一意に導出される。
【0048】
【0049】
デジタル信号処理器17は、周波数差のずれ量「Δx」を示す信号(以下「エラー信号」という。)を、フィードバック部18に出力する。フィードバック部18は、周波数「f1」と周波数「f2」との間の周波数差の要求値が満たされるように、エラー信号(デジタル信号)に基づいてレーザ10-1の駆動電流を調整する。フィードバック部18は、エラー信号に基づいてレーザ10-2の駆動電流を調整してもよい。
【0050】
上記の参考文献1では、データが重畳された光信号の周波数と局発光の周波数とのずれ量を検出するために、複素共役演算におけるサンプルのずれ量が、データ信号のシンボル長に限定されている。これに対して検出装置1aでは、レーザ10-1から出力された連続光と、レーザ10-2から出力された連続光との間の周波数差のずれ量が検出されるので、サンプルのずれ量は、1サンプル単位で任意に設定可能である。
【0051】
また、多波長光キャリアから切り出された光キャリア30を用いて光イントラダイン検波が実行されたことによって、光イントラダイン検波には不要である光キャリアを用いて周波数差の成分が生成されないので、ずれ量「Δx」の検出範囲は、理論的には無限大となる。ただし実際には、イントラダイン検波器15の帯域とアナログデジタル変換器16の帯域とがそれぞれ有限であることから、ずれ量「Δx」の検出範囲は、これらのデバイスの制限を受ける。
【0052】
検出装置1aが導出可能なずれ量「Δx」の範囲(検出範囲)は、周波数「f2」の連続光と周波数「f1+(n±1)Δf」との間の周波数差の成分と、導出されるべき周波数差の成分とが混同されない範囲である。すなわち、検出装置1aが導出可能なずれ量「Δx」の範囲(検出範囲)は、「-Δf/2<Δx<Δf/2」の範囲である。
【0053】
次に、検出装置1aの動作例を説明する。
図2は、検出装置1aの動作例を示すフローチャートである。サイドバンド発生器13は、周波数「Δf」が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する光サイドバンド「f
1+iΔf」(多波長光キャリア)を、レーザ10-1から出力された連続光を用いて生成する(ステップS101)。イントラダイン検波器15は、周波数「f
2」に近い周波数の光キャリアとして光サイドバンド「f
1+iΔf」から選択された光キャリア30と、周波数「f
2」の光キャリア31(連続光)とを用いて、光イントラダイン検波処理を実行する(ステップS102)。デジタル信号処理器17は、検波処理の結果に基づいて、周波数差の要求値に対する、周波数差の正負のずれ量「Δx」を導出する(ステップS103)。
【0054】
以上のように、サイドバンド発生器13は、第1連続光の第1周波数「f1」と第2連続光の第2周波数「f2」との差の要求値が第3周波数「Δf」の自然数倍である場合に、第3周波数「Δf」に基づく周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンド(第1の多波長光キャリア)を、レーザ10-1から出力された第1連続光を用いて生成する。第1実施形態における、第3周波数「Δf」に基づく周波数とは、第3周波数に等しい周波数である。バンドパスフィルタ14は、第2周波数「f2」に近い周波数の光キャリアとして選択された光キャリア30を、第1光サイドバンドから切り出す。イントラダイン検波器15は、第2周波数「f2」に近い周波数の光キャリアとして第1光サイドバンドから選択された光キャリア30(切り出された光キャリア)と、光キャリア31(第2連続光)とを用いて、光イントラダイン検波処理を実行する。デジタル信号処理器17(ずれ導出部)は、検波処理の結果に基づいて、周波数差の要求値に対する、周波数差の正負のずれ量「Δx」を導出する。
【0055】
これによって、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【0056】
従来では、複数のレーザから出力された連続光の間における大きな周波数差が、光電変換を用いて生成された周波数差の成分に基づいて直接検出される場合、広帯域な電気デバイス(例えば、周波数弁別器)が検出装置に必要である。テラヘルツ波は非常に高周波であるため、そのような高周波で動作し得る電気デバイスの実現は困難である。これに対して、検出装置1aは、周波数が互いに異なる2本の連続光のうちの一方の連続光に対して、光サイドバンドを生成する。また、検出装置1aは、これら2本の連続光のうちの他方の連続光の周波数と、生成された光サイドバンドの周波数とを接近させる。検出装置1aは、光サイドバンドから切り出された光キャリアと2本の連続光のうちの他方の連続光とに対して光電変換を実行することによって、周波数差の成分を導出する。このため、検出装置1aは、広帯域な電気デバイスを必要としないという顕著な効果を奏する。
【0057】
(第1実施形態の第1変形例)
従来の光デジタルコヒーレント伝送では、光受信器に伝送された光信号の偏波がランダムであることから、光受信器のイントラダイン検波器の光90度ハイブリッド検波器において偏波ダイバーシティが併用されている。これに対して第1実施形態では、検出装置1aが送信器(例えば、無線送信器又は光送信器)に備えられているので、レーザ10からイントラダイン検波器15までの間において連続光の偏波は保持される。このため、イントラダイン検波器15の光90度ハイブリッド検波器において、偏波ダイバーシティは併用されていない。
【0058】
第1実施形態では、このような理由で、光受信器のイントラダイン検波器の光90度ハイブリッド検波器の出力であるQチャネルのアナログ信号が、アナログデジタル変換器16-1にイントラダイン検波器15から出力されている。また、光受信器のイントラダイン検波器の光90度ハイブリッド検波器の出力であるIチャネルのアナログ信号が、アナログデジタル変換器16-2にイントラダイン検波器15から出力されている。
【0059】
これに対して第1実施形態の変形例では、レーザ10からイントラダイン検波器15までの間において連続光の偏波が保持されない場合について、イントラダイン検波器15の構成例を説明する。
【0060】
図3は、第1実施形態の変形例における、光受信器200の構成例を示す図である。光受信器200は、イントラダイン検波器15に備えられる。光受信器200の光90度ハイブリッド検波器204は、偏波ダイバーシティの構成を備える。このため、光受信器200は、直交偏波に対して、Iチャネルのアナログ信号とQチャネルのアナログ信号とを、4個のアナログデジタル変換器205に入力する。各アナログデジタル変換器205は、入力されたアナログ信号に対してサンプリング処理を実行することによってアナログ信号を量子化する。各デジタル信号処理部207は、量子化の結果に対してデジタル信号処理を実行することによって、ずれ量「Δx」を導出する。
【0061】
光受信器200は、一般的な光イントラダイン検波によるデジタルコヒーレント受信器の構成を備える。光受信器200は、偏光ビームスプリッタ201(Polarization Beam Splitter : PBS)、局部発振光源202、偏光ビームスプリッタ203、光90度ハイブリッド検波器204-1~204-2、アナログデジタル変換器205-1~205-2(A/D変換器)、アナログデジタル変換器206-1~206-2及びデジタル信号処理部207を備える。
【0062】
偏光ビームスプリッタ201は、偏波スプリッタである。偏光ビームスプリッタ201には、バンドパスフィルタ14から出力された光キャリアが、光信号として入力される。また、偏光ビームスプリッタ201には、分岐器11-2から出力された連続光が、光信号として入力される。偏光ビームスプリッタ201は、入力された光信号を、水平偏波の光信号及び垂直偏波の光信号に分離する。偏光ビームスプリッタ201は、水平偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-1に出力し、垂直偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-2に出力する。
【0063】
局部発振光源202は、局発光を出力する。偏光ビームスプリッタ203は、偏波スプリッタである。偏光ビームスプリッタ203は、局部発振光源202から出力された局発光を入力する。偏光ビームスプリッタ203は、入力した局発光を、水平偏波の光信号及び垂直偏波の光信号に分離する。偏光ビームスプリッタ203は、水平偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-1に出力し、垂直偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-2に出力する。
【0064】
光90度ハイブリッド検波器204-1は、水平偏波の光信号を入力して処理する。光90度ハイブリッド検波器204-1は、スプリッタ208-1~208-2、π/2遅延器209、カプラ210-1~210-2及びバランスド受信器211-1~211-2を備える。
【0065】
スプリッタ208-1は、偏光ビームスプリッタ201から出力される水平偏波の光信号を入力する。スプリッタ208-1は、入力した水平偏波の光信号を分岐してカプラ210-1及び210-2に出力する。スプリッタ208-2は、偏光ビームスプリッタ203から出力される水平偏波の光信号を入力する。スプリッタ208-2は、入力した水平偏波の光信号を分岐してカプラ210-1と、π/2遅延器209に出力する。
【0066】
π/2遅延器209は、スプリッタ208-2が出力した水平偏波の光信号をπ/2分遅延させてカプラ210-2に出力する。カプラ210-1は、スプリッタ208-1が出力した水平偏波の光信号と、スプリッタ208-2が出力した水平偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ210-1は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器211-1に出力する。
【0067】
カプラ210-2は、スプリッタ208-1が出力した水平偏波の光信号と、π/2遅延器209が出力したπ/2分遅延した水平偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ210-2は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器211-2に出力する。
【0068】
バランスド受信器211-1は、カプラ210-1が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器211-1は、変換した電気信号の差分を同相成分、すなわちI成分として検出してアナログデジタル変換器205-1に出力する。バランスド受信器211-2は、カプラ210-2が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器211-2は、変換した電気信号の差分を直交成分、すなわちQ成分として検出してアナログデジタル変換器205-2に出力する。
【0069】
アナログデジタル変換器205-1は、I成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。アナログデジタル変換器205-2は、Q成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。
【0070】
光90度ハイブリッド検波器204-2は、垂直偏波の光信号を入力して処理する。光90度ハイブリッド検波器204-2は、スプリッタ212-1~212-2、π/2遅延器213、カプラ214-1~214-2及びバランスド受信器215-1~215-2を備える。
【0071】
スプリッタ212-1は、偏光ビームスプリッタ201から出力される垂直偏波の光信号を入力する。スプリッタ212-1は、入力した垂直偏波の光信号を分岐してカプラ214-1及び214-2に出力する。スプリッタ212-2は、偏光ビームスプリッタ203から出力される垂直偏波の光信号を入力する。スプリッタ212-2は、入力した垂直偏波の光信号を分岐してカプラ214-1と、π/2遅延器213に出力する。π/2遅延器213は、スプリッタ212-2が出力した垂直偏波の光信号をπ/2分遅延させてカプラ214-2に出力する。
【0072】
カプラ214-1は、スプリッタ212-1が出力した垂直偏波の光信号と、スプリッタ212-2が出力した垂直偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ214-1は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器215-1に出力する。
【0073】
カプラ214-2は、スプリッタ212-1が出力した垂直偏波の光信号と、π/2遅延器213が出力したπ/2分遅延した垂直偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ214-2は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器215-2に出力する。
【0074】
バランスド受信器215-1は、カプラ214-1が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器215-1は、変換した電気信号の差分を同相成分、すなわちI成分として検出してアナログデジタル変換器206-1に出力する。バランスド受信器215-2は、カプラ214-2が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器215-2は、変換した電気信号の差分を直交成分、すなわちQ成分として検出してアナログデジタル変換器206-2に出力する。
【0075】
アナログデジタル変換器206-1は、I成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。アナログデジタル変換器206-2は、Q成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。
【0076】
デジタル信号処理部207は、アナログデジタル変換器205-1~205-4それぞれから出力されたデジタルのサンプリング信号を入力する。デジタル信号処理部207は、入力したサンプリング信号を復調する。光受信器200が行う処理は、デジタルコヒーレント伝送で用いられる一般的なイントラダイン受信器と同様である。
【0077】
これによって、レーザ10からイントラダイン検波器15までの間において連続光の偏波が保持されない場合でも、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【0078】
(第1実施形態の第2変形例)
検出装置1aがバンドパスフィルタ14を備えていない場合について説明する。サイドバンド発生器13は、サイドバンド発生器13によって生成された多波長光キャリアを、イントラダイン検波器15に出力する。イントラダイン検波器15は、サイドバンド発生器13から出力された周波数「f1+iΔf」の光サイドバンドを含む多波長光キャリアと、分岐器11-2から入力された連続光とを用いて、光イントラダイン検波を実行する。
【0079】
デジタル信号処理器17は、サイドバンド発生器13によって生成された光サイドバンド(複数の光キャリア)の周波数「f1+iΔf」のうちで、周波数「f2」に最も近い周波数「f1+nΔf(i=n)」(選択された光キャリアの周波数)に対する周波数「f2」のずれ量「Δx」を導出する。すなわち、デジタル信号処理器17は、周波数「f1」と周波数「f2」との差(周波数差)の要求値「fT=|n|Δf」からのずれ量「Δx」を導出する。
【0080】
デジタル信号処理器17は、周波数「f2」の連続光と周波数「f1+nΔf」の光キャリアとの間だけでなく、サイドバンド発生器13から出力された周波数「f1+iΔf」の光サイドバンドと、周波数「f2」の連続光との間の各周波数差のずれ量を、一括で導出する。
【0081】
これによって、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、検出装置1aがバンドパスフィルタ14を備えることなく、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態では、光イントラダイン検波が実行される代わりに、光ヘテロダイン検波が実行される点が、第1実施形態との差分である。第2実施形態では、第1実施形態との差分を中心に説明する。
【0083】
図4は、第2実施形態における、検出装置1bの構成例を示す図である。検出装置1bは、レーザ10-1と、レーザ10-2と、分岐器11-1と、分岐器11-2と、発振器12と、サイドバンド発生器13と、バンドパスフィルタ14(BPF)と、アナログデジタル変換器16と、デジタル信号処理器17と、フィードバック部18と、ヘテロダイン検波器19とを備える。
【0084】
第2実施形態では、検出装置1bがヘテロダイン検波器19を備えているので、検出装置1bは、光90度ハイブリッド検波器を備えていない。このため、ヘテロダイン検波器19の出力は1系統となるので、検出装置1bは、1台のアナログデジタル変換器16を備えていればよい。
【0085】
発振器12bは、周波数「Δf’」の正弦波信号を、サイドバンド発生器13に出力する。ここで、周波数「Δf’」は、第1実施形態における周波数「Δf」とは異なる周波数である。サイドバンド発生器13に発振器12bから出力される正弦波信号の周波数「Δf’」が周波数「Δf」に対してずれているので、周波数差の成分は、中間周波数に零周波数から移行する。これによって、光ヘテロダイン検波が可能となる。
【0086】
サイドバンド発生器13から出力された周波数「f1+iΔf’」の光サイドバンドと、周波数「f2」の光キャリア31(連続光)との間の各周波数差のアナログ信号は、一括で生成される。バンドパスフィルタ14は、周波数「f1+nΔf’」の光キャリア32を、光キャリア31の周波数に近い周波数の光キャリアとして、周波数「f1+iΔf’」の光サイドバンドから切り出す。
【0087】
ヘテロダイン検波器19には、バンドパスフィルタ14によって多波長光キャリアのうちから切り出された光キャリア32(選択された光キャリア)が、バンドパスフィルタ14から入力される。なお、第1実施形態の第2変形例と同様に、ヘテロダイン検波器19には、多波長光キャリアがサイドバンド発生器13から入力されてもよい。
【0088】
ヘテロダイン検波器19には、分岐器11-2によって分岐された連続光のうちの一方の連続光が、分岐器11-2から入力される。ヘテロダイン検波器19は、生成された多波長光キャリアのうちから切り出された光キャリアと、分岐器11-2から入力された連続光とを用いて、光ヘテロダイン検波を実行する。すなわち、ヘテロダイン検波器19は、切り出された周波数「f1+nΔf’」の光キャリア32と周波数「f2」の光キャリア31(連続光)との間の周波数差を検出する。
【0089】
デジタル信号処理器17によって導出されるずれ量「Δx」の検出範囲は、周波数「f2」の連続光と周波数「f1+(n±1)Δf’」との間の周波数差の成分と、導出されるべき周波数差の成分とが混同されない範囲である。
【0090】
ヘテロダイン検波器19は、光結合器と、光電気変換器とを備える。ヘテロダイン検波器19は、周波数「f2」の連続光と周波数「f1+nΔf’(i=n)」の光キャリアとの間の周波数差のアナログ信号を、光電変換を用いて生成する。アナログデジタル変換器16は、周波数差のアナログ信号を、周波数差のデジタル信号に変換する。
【0091】
デジタル信号処理器17は、周波数差のデジタル信号に基づいて、周波数差の成分を導出する。デジタル信号処理器17は、レーザ10-1から出力された連続光の周波数「f1」と、レーザ10-2から出力された連続光の周波数「f2」との差(周波数差)の要求値「fT=|n|Δf」からのずれ量「Δx」を導出する。
【0092】
図4には、ヘテロダイン検波器19の出力における、周波数差のアナログ信号の電気スペクトルが示されている。「Δf’<Δf」が成り立つ場合、導出されるずれ量「Δx」は、中間周波数「f
T-nΔf’」に対する正負のずれ量である。「Δf’>Δf」が成り立つ場合、導出されるずれ量「Δx」は、中間周波数「nΔf’-f
T」に対する正負のずれ量である。
【0093】
各レーザ10から出力された各連続光の周波数が所定基準値に対して正方向にずれる確率と、各連続光の周波数が負方向にずれる確率とは等しい。したがって、導出可能なずれ量が正方向と負方向とで均等である場合に、デジタル信号処理器17が周波数差のずれ量「Δx」を最も効率的に導出することが可能である。
【0094】
周波数「f1+nΔf’」の光キャリア32をバンドパスフィルタ14が多波長光キャリアの光サイドバンドから切り出すことによって、|Δf-Δf’|の値が大きくなる。これに応じて、使用される中間周波数「fIF」が高くなるので、導出可能なずれ量「Δx」の範囲が広がる。
【0095】
「Δf’<Δf」が成り立つ場合、使用される中間周波数は、「fT-nΔf’」である。この場合、理論的には「-(fT-nΔf’)<Δx<∞」の範囲で、周波数差のずれ量「Δx」の導出が可能である。
【0096】
「Δf’>Δf」が成り立つ場合、使用される中間周波数は、「nΔf’-fT」である。この場合、理論的には「-∞<Δx<nΔf’-fT」の範囲で、周波数差のずれ量「Δx」の導出が可能である。
【0097】
次に、検出装置1bの動作例を説明する。
図5は、検出装置1aの動作例を示すフローチャートである。サイドバンド発生器13は、周波数「Δf」からずれた周波数「Δf’」が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する光サイドバンド「f
1+iΔf」(多波長光キャリア)を、レーザ10-1から出力された連続光を用いて生成する(ステップS201)。ヘテロダイン検波器19は、周波数「f
2」に近い周波数の光キャリアとして光サイドバンド「f
1+iΔf」から選択された光キャリア32と、周波数「f
2」の光キャリア31(連続光)とを用いて、光ヘテロダイン検波処理を実行する(ステップS202)。デジタル信号処理器17は、検波処理の結果に基づいて、周波数差の要求値に対する、周波数差の正負のずれ量「Δx」を導出する(ステップS203)。
【0098】
以上のように、サイドバンド発生器13は、第1連続光の第1周波数「f1」と第2連続光の第2周波数「f2」との差の要求値が第3周波数「Δf」の自然数倍である場合に、第3周波数「Δf」に基づく周波数が逓倍された異なる周波数の複数の光キャリアを有する第1光サイドバンド(第1の多波長光キャリア)を、レーザ10-1から出力された第1連続光を用いて生成する。第2実施形態における、第3周波数「Δf」に基づく周波数とは、第3周波数「Δf」からずれた周波数「Δf’」である。バンドパスフィルタ14は、第2周波数「f2」に近い周波数の光キャリアとして選択された光キャリア32を、第1光サイドバンドから切り出す。イントラダイン検波器15は、第2周波数「f2」に近い周波数の光キャリアとして第1光サイドバンドから選択された光キャリア32(切り出された光キャリア)と、光キャリア31(第2連続光)とを用いて、光ヘテロダイン検波処理を実行する。デジタル信号処理器17(ずれ導出部)は、検波処理の結果に基づいて、周波数差の要求値に対する、周波数差の正負のずれ量「Δx」を導出する。
【0099】
これによって、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。また、第1実施形態において使用された光イントラダイン検波の代わりに、発振器12bから出力される正弦波信号の周波数が「Δf’」に「Δf」からずらされた上で光ヘテロダイン検波が実行されることによって、アナログデジタル変換器16等の電気デバイスの個数を削減することが可能である。
【0100】
(第2実施形態の第1変形例)
検出装置1bがバンドパスフィルタ14を備えていない場合について説明する。サイドバンド発生器13は、サイドバンド発生器13によって生成された多波長光キャリアを、ヘテロダイン検波器19に出力する。ヘテロダイン検波器19は、生成された多波長光キャリアと、分岐器11-2から入力された連続光とを用いて、光ヘテロダイン検波を実行する。
【0101】
ヘテロダイン検波器19は、サイドバンド発生器13から出力された周波数「f1+iΔf」の光サイドバンドを含む多波長光キャリアと、分岐器11-2から入力された連続光とを用いて、光ヘテロダイン検波を実行する。
【0102】
デジタル信号処理器17は、周波数「f2」の連続光と周波数「f1+nΔf」の光キャリアとの間だけでなく、サイドバンド発生器13から出力された周波数「f1+iΔf」の光サイドバンドと、周波数「f2」の連続光との間の各周波数差のずれ量を、一括で導出する。
【0103】
「Δf’<Δf」が成り立ち、かつ、「Δf’=3nΔf/(3n+1)」が成り立ちつ場合、使用される中間周波数「fIF」は、「nΔf/(3n+1)」である。この場合、「-nΔf/(3n+1)<Δx<nΔf/(3n+1)」の範囲で、周波数差のずれ量「Δx」の導出が可能である。
【0104】
「Δf’<Δf」が成り立ち、かつ、「Δf’=3nΔf/(3n-1)」が成り立ちつ場合、使用される中間周波数「fIF」は、「nΔf/(3n-1)」である。この場合、「-nΔf/(3n-1)<Δx<nΔf/(3n-1)」の範囲で、周波数差のずれ量「Δx」の導出が可能である。
【0105】
これによって、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、検出装置1bがバンドパスフィルタ14を備えることなく、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【0106】
(第2実施形態の第2変形例)
図6は、第2実施形態の変形例における、検出装置1cの構成例を示す図である。検出装置1cは、レーザ10-1と、レーザ10-2と、分岐器11-1と、分岐器11-2と、発振器12と、サイドバンド発生器13と、バンドパスフィルタ14(BPF)と、フィードバック部18と、ヘテロダイン検波器19と、周波数弁別器20とを備える。このように第2実施形態の第2変形例では、検出装置1cは、周波数弁別器20を備える。周波数弁別器20は、デジタル信号処理ではなくアナログ信号処理によって、周波数差のずれ量「Δx」を導出する。
【0107】
周波数弁別器20は、エラー信号(アナログ信号)をフィードバック部18に出力する。フィードバック部18は、周波数「f1」と周波数「f2」との間の周波数差の要求値が満たされるように、エラー信号に基づいてレーザ10-1の駆動電流を調整する。フィードバック部18は、エラー信号に基づいてレーザ10-2の駆動電流を調整してもよい。
【0108】
(第2実施形態の第3変形例)
第1実施形態の第2変形例と同様に、検出装置1cはバンドパスフィルタ14を備えなくてもよい。したがって、ヘテロダイン検波器19には、多波長光キャリアがサイドバンド発生器13から入力されてもよい。
【0109】
(第3実施形態)
第3実施形態では、周波数「f1」の連続光だけでなく周波数「f2」の連続光に対しても光サイドバンドが生成される点が、第1実施形態及び第2実施形態との差分である。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との差分を中心に説明する。
【0110】
図7は、第3実施形態における、検出装置1dの構成例を示す図である。検出装置1dは、レーザ10-1と、レーザ10-2と、分岐器11-1と、分岐器11-2と、発振器12aと、サイドバンド発生器13-1と、サイドバンド発生器13-2と、バンドパスフィルタ14-1と、バンドパスフィルタ14-2と、イントラダイン検波器15と、アナログデジタル変換器16-1と、アナログデジタル変換器16-2と、デジタル信号処理器17と、フィードバック部18とを備える。
【0111】
サイドバンド発生器13-1には、分岐器11-1によって分岐された連続光のうちの一方の連続光が入力される。サイドバンド発生器13-1は、発振器12dから出力された正弦波信号を用いて、周波数「f1」に対して光サイドバンドを生成する。サイドバンド発生器13-1は、サイドバンド発生器13-1によって生成された多波長光キャリア(光周波数コム)を、バンドパスフィルタ14-1に出力する。バンドパスフィルタ14-1は、サイドバンド発生器13-1によって生成された多波長光キャリアから切り出された周波数「f1+mΔf」の光キャリアを、イントラダイン検波器15に出力する。ここで、「m(=n/2)」は、0以外の整数(自然数)である。
【0112】
サイドバンド発生器13-2には、分岐器11-2によって分岐された連続光のうちの一方の連続光が入力される。サイドバンド発生器13-2は、発振器12dから出力された正弦波信号を用いて、周波数「f2」に対して光サイドバンドを生成する。サイドバンド発生器13-2は、サイドバンド発生器13-2によって生成された多波長光キャリア(光周波数コム)を、バンドパスフィルタ14-2に出力する。バンドパスフィルタ14-2は、サイドバンド発生器13-2によって生成された多波長光キャリアから切り出された周波数「f2-mΔf」の光キャリアを、イントラダイン検波器15に出力する。
【0113】
イントラダイン検波器15は、分岐器11-1によって分岐された連続光に基づく光キャリア35と、分岐器11-2によって分岐された連続光に基づく光キャリア36とを用いて、光イントラダイン検波を実行する。すなわち、イントラダイン検波器15は、分岐器11-1によって分岐された連続光に基づく多波長光キャリアにおいて周波数「f0」に最も近い周波数の光キャリア35と、分岐器11-2によって分岐された連続光に基づく多波長光キャリアにおいて周波数「f0」に最も近い周波数の光キャリア36との間の周波数差のずれを検出する。
【0114】
以上のように、サイドバンド発生器13-1は、複数の光キャリアを有する第1光サイドバンドを、レーザ10-1から出力された第1連続光を用いて生成する。サイドバンド発生器13-2は、複数の光キャリアを有する第2光サイドバンドを、レーザ10-2から出力された第2連続光を用いて生成する。バンドパスフィルタ14-1は、第1周波数「f1」及び第2周波数「f2」の間の第4周波数「f0」(例えば、第1周波数「f1」及び第2周波数「f2」の間を等分する周波数)に近い周波数の光キャリアとして光キャリア33(第1光キャリア)を、第1光サイドバンドから切り出す。バンドパスフィルタ14-2は、第4周波数「f0」に近い周波数の光キャリアとして光キャリア34(第2光キャリア)を、第2光サイドバンドから切り出す。イントラダイン検波器15は、切り出された光キャリア33と切り出された光キャリア34とを用いて、イントラダイン検波処理を実行する。
【0115】
これによって、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、発振器又12d及びサイドバンド発生器13における負担を低減させた上で、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【0116】
上述の第1実施形態では、切り出された光キャリアの周波数「f1+nΔf」を周波数「f2」に近づけるために、発振器12aから出力される正弦波信号の周波数「Δf」を大きくする必要がある。又は、第1実施形態では、切り出された光キャリアの周波数「f1+nΔf」を周波数「f2」に近づけるために、サイドバンド発生器13の光変調器を高電圧で駆動して変調指数を極端に大きくする必要がある。
【0117】
これに対し第3実施形態では、分岐器11-1によって分岐された周波数「f1」の連続光の光サイドバンドが生成されるだけでなく、分岐器11-2によって分岐された周波数「f2」の連続光の光サイドバンドが生成されるので、発振器又12d及びサイドバンド発生器13における負担を低減させることが可能である。
【0118】
(第4実施形態)
第4実施形態では、分岐器11-1によって分岐された周波数「f1」の連続光と分岐器11-2によって分岐された周波数「f2」の連続光とが結合される点が、第1実施形態から第3実施形態までとの差分である。第4実施形態では、第1実施形態から第3実施形態までとの差分を中心に説明する。
【0119】
図8は、第4実施形態における、検出装置1eの構成例を示す図である。検出装置1eは、レーザ10-1と、レーザ10-2と、分岐器11-1と、分岐器11-2と、発振器12と、サイドバンド発生器13と、バンドパスフィルタ14(BPF)と、アナログデジタル変換器16と、デジタル信号処理器17と、フィードバック部18と、結合器21と、光電気変換器22とを備える。
【0120】
結合器21は、分岐器11-1によって分岐された周波数「f1」の連続光と、分岐器11-2によって分岐された周波数「f2」の連続光とを結合する。結合器21は、周波数「f1」の連続光と周波数「f2」の連続光との結合結果を、サイドバンド発生器13に出力する。
【0121】
サイドバンド発生器13は、周波数「f1」に対して周波数「Δf’」が逓倍(i倍)された異なる周波数「f1+iΔf’」の複数の光キャリアを有する多波長光キャリアを、多波長光キャリアのいずれかの光キャリアの周波数が周波数「f0」に近くなるように生成する。すなわち、サイドバンド発生器13は、周波数「f1」に対して、コム幅「Δf’」の複数のモードを有する光周波数コムを、光周波数コムのいずれかのモードの周波数が周波数「f0」に近くなるように生成する。
【0122】
サイドバンド発生器13は、周波数「f2」に対して周波数「Δf’」が逓倍(i倍)された異なる周波数「f2+iΔf’」の複数の光キャリアを有する多波長光キャリアを、多波長光キャリアのいずれかの光キャリアの周波数が周波数「f0」に近くなるように生成する。すなわち、サイドバンド発生器13は、周波数「f2」に対して、コム幅「Δf’」の複数のモードを有する光周波数コムを、光周波数コムのいずれかのモードの周波数が周波数「f0」に近くなるように生成する。
【0123】
サイドバンド発生器13は、サイドバンド発生器13によって生成された各多波長光キャリア(各光周波数コム)を、バンドパスフィルタ14に出力する。バンドパスフィルタ14は、周波数「f0=f1-mΔf’」の光キャリア35を、異なる周波数「f1+iΔf’」の複数の光キャリアを有する多波長光キャリアから切り出す。バンドパスフィルタ14は、周波数「f0=f2+mΔf’」の光キャリア36を、異なる周波数「f2+iΔf’」の複数の光キャリアを有する多波長光キャリアから切り出す。ここで、「m(=n/2)」は、0以外の整数(自然数)である。
【0124】
光電気変換器22は、分岐器11-1によって分岐された連続光に基づく光キャリア35と、分岐器11-2によって分岐された連続光に基づく光キャリア36とを用いて、光ヘテロダイン検波を実行する。すなわち、光電気変換器22は、分岐器11-1によって分岐された連続光に基づく多波長光キャリアにおいて周波数「f0」に最も近い周波数の光キャリア35と、分岐器11-2によって分岐された連続光に基づく多波長光キャリアにおいて周波数「f0」に最も近い周波数の光キャリア36との間の周波数差のずれを検出する。
【0125】
以上のように、結合器21は、分岐器11-1によって分岐された周波数「f1」の第1連続光(第1の分岐光)と、分岐器11-2によって分岐された周波数「f2」の第2連続光(第2の分岐光)とを結合する。サイドバンド発生器13は、結合された第1連続光及び第2連続光を用いて、光キャリア35を含む第1光サイドバンドを生成する。サイドバンド発生器13は、結合された第1連続光及び第2連続光を用いて、光キャリア36を含む第2光サイドバンドを生成する。
【0126】
これによって、第1レーザの連続光の周波数と第2レーザの連続光の周波数との差である周波数差が所定値以上に大きい場合でも、発振器又12e及びサイドバンド発生器13における負担を低減させた上で、周波数差の要求値に対する実際の周波数差のずれ量を検出することが可能である。
【0127】
上述の第2実施形態では、切り出された光キャリアの周波数「f2+nΔf」を周波数「f1」に近づけるために、発振器12bから出力される正弦波信号の周波数「Δf」を大きくする必要がある。又は、第2実施形態では、切り出された光キャリアの周波数「f2+nΔf」を周波数「f1」に近づけるために、サイドバンド発生器13の光変調器を高電圧で駆動して変調指数を極端に大きくする必要がある。
【0128】
これに対し、第3実施形態では、分岐器11-2によって分岐された周波数「f2」の連続光の光サイドバンドが生成されるだけでなく、分岐器11-1によって分岐された周波数「f1」の連続光の光サイドバンドが生成されるので、発振器12e及びサイドバンド発生器13における負担を低減させることが可能である。
【0129】
(第4実施形態の第1変形例)
図6に示された検出装置1cと同様に、検出装置1eは、周波数弁別器を備えてもよい。周波数差のずれ量「Δx」は、デジタル信号処理を用いて導出される代わりに、周波数弁別器によるアナログ信号処理を用いて導出されてもよい。
【0130】
(第4実施形態の第2変形例)
検出装置1eは、光電気変換器22の代わりに、イントラダイン検波器15を備えてもよい。検出装置1eは、複数のアナログデジタル変換器16を備えてもよい。発振器12eは、周波数「Δf(=0+Δf)」の正弦波信号を、サイドバンド発生器13に出力してもよい。光電気変換器22は、周波数「f1」の連続光と周波数「f2」の連続光との結合結果における光キャリア35と光キャリア36とを用いて、光イントラダイン検波を実行してもよい。
【0131】
(各実施形態における、検出装置のハードウェア構成例)
図9は、各実施形態における、検出装置1のハードウェア構成例を示す図である。検出装置1の各機能部のうちの一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ300が、不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)を有する記憶部400に記憶されたプログラムを実行することにより、ソフトウェアとして実現される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記録媒体である。通信部500は、検出装置1による処理結果を外部装置(不図示)に送信する。通信部500は、通信回線を経由してプログラムを受信してもよい。
【0132】
検出装置1の各機能部のうちの一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integrated circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit又はcircuitry)を含むハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0133】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0134】
例えば、分岐器11-1は、レーザ10-1から出力された連続光に関して、データ変調された連続光を分岐してもよい。又は、分岐器11-2は、レーザ10-2から出力された連続光に関して、データ変調された連続光を分岐してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、通信システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1,1a,1b,1c,1d,1e…検出装置、10…レーザ、11…分岐器、12a,12b,12c,12d,12e…発振器、13…サイドバンド発生器、14…バンドパスフィルタ、15…イントラダイン検波器、16…アナログデジタル変換器、17…デジタル信号処理器、18…フィードバック部、19…ヘテロダイン検波器、20…周波数弁別器、21…結合器、22…光電気変換器、30,31,32,33,34,35,36…光キャリア、100a,100b…無線送信器、110…レーザ、120…サイドバンド発生器、130…発振器、140…波長分波器、150…変調器、160…波長合波器、170…光電気変換器、180…アンテナ、190…変調器、191…結合器、192…光電気変換器、193…周波数弁別器、200…光受信器、201…偏光ビームスプリッタ、202…局部発振光源、203…偏光ビームスプリッタ、204…光90度ハイブリッド検波器、205…アナログデジタル変換器、206…アナログデジタル変換器、207…デジタル信号処理部、208…スプリッタ、209…π/2遅延器、210…カプラ、211…バランスド受信器、212…スプリッタ、213…π/2遅延器、214…カプラ、215…バランスド受信器、300…プロセッサ、400…記憶部、500…通信部