(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】フィラメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/05 20190101AFI20241113BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241113BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241113BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20241113BHJP
【FI】
B29C48/05
B33Y10/00
B33Y70/00
B29C64/118
(21)【出願番号】P 2020215793
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】埜村 卓志
(72)【発明者】
【氏名】上田 直樹
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-539281(JP,A)
【文献】特開2016-060048(JP,A)
【文献】特開2016-193601(JP,A)
【文献】特開平09-066550(JP,A)
【文献】特開2016-037571(JP,A)
【文献】特開平07-001556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/118
B33Y 10/00
B33Y 70/00
B29C 48/05
B29C 48/28
B29C 48/88
B29B 7/42
B29B 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントの製造方法であって、
押出工程と、冷却及び巻き取り工程を備え、
前記押出工程では、溶融混練した原料樹脂組成物を押出機から口金を介して連続的に押出してフィラメントを形成し、
前記冷却及び巻き取り工程では、前記フィラメントを水槽内の水中を通過させることによって冷却固化させて巻き取り、
前記水槽内の水の温度は、前記水槽の入口から離れるにつれて低下
し、
前記水槽内で前記フィラメントが水中を通過する長さをLとし、前記水槽内で前記フィラメントが最初に接する水の温度と、前記フィラメントが前記水槽を出る直前に接する水の温度の差をΔTとすると、
ΔT/Lは、3℃/m以上、かつ、10℃/m以下である、方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の方法であって、
前記水槽は、前記水槽の入口側から順に第1~第4ゾーンを備え、
前記フィラメントは、第1~第4ゾーンをこの順で通過し、
第1~第4ゾーン内の水の温度をそれぞれT1~T4とすると、
T1≧T2≧T3≧T4である、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記フィラメントが前記水槽を出る直前に接する水の温度が35℃以上、かつ、45℃以下であり、
前記水槽内で前記フィラメントが最初に接する水の温度が50℃以上、かつ、80℃以下であり、
前記水槽は、仕切り板によって複数のゾーンに分割されており、
前記仕切り板は、前記フィラメントが通過可能であり、且つ前記ゾーン間の前記水の移動を抑制するように構成されており、
前記水槽は、前記水槽の入口側から順に第1~第4ゾーンを備え、
前記フィラメントは、第1~第4ゾーンをこの順で通過し、
第1~第4ゾーン内の水の温度をそれぞれT1~T4とすると、
T1≧T2≧T3≧T4であり、
前記水槽内で前記フィラメントが水中を通過する速度は、5m/分以上、かつ、15m/分以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融積層方式の3Dプリンタにおいて利用可能なフィラメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィラメントをヘッドから押し出して積層堆積させる熱溶融積層方式の3Dプリンタが開示されている。
【0003】
このような方式の3Dプリンタで用いるフィラメントは、線径が一定であり、線形が真円に近いことが重要である。特許文献2では、溶融混練した樹脂材料を押出機から口金を介して連続的に押出し、押出されたフィラメントを冷却固化させて巻き取ることによって、フィラメントを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-500194号公報
【文献】特開2016-193601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィラメントの製造に用いる樹脂材料には、通常、空気や水分が残留しており、このような空気や水分に起因する気泡がフィラメントに形成されてしまう。フィラメントに気泡が含まれていると、3Dプリンタのヘッドから押し出される線状の溶融樹脂にも気泡が含まれてしまい、3Dプリントによって得られる造形物の品質低下に繋がる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、真円度が高く且つ気泡が少ないフィラメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、フィラメントの製造方法であって、押出工程と、冷却及び巻き取り工程を備え、前記押出工程では、溶融混練した原料樹脂組成物を押出機から口金を介して連続的に押出してフィラメントを形成し、前記冷却及び巻き取り工程では、前記フィラメントを水槽内の水中を通過させることによって冷却固化させて巻き取り、前記水槽内の水の温度は、前記水槽の入口から離れるにつれて低下する、方法が提供される。
【0008】
本発明者は、水槽の入口から離れるにつれて水槽内の水の温度が低下するように、水槽内の水の温度設定を行うことによって、真円度が高く且つ気泡が少ないフィラメントが得られることを見出し、本発明の完成に到った。
【0009】
好ましくは、前記記載の方法であって、前記水槽内で前記フィラメントが水中を通過する長さをLとし、前記水槽内で前記フィラメントが最初に接する水の温度と、前記フィラメントが前記水槽を出る直前に接する水の温度の差をΔTとすると、ΔT/Lは、3℃/m以上である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記水槽は、前記水槽の入口側から順に第1~第4ゾーンを備え、前記フィラメントは、第1~第4ゾーンをこの順で通過し、第1~第4ゾーン内の水の温度をそれぞれT1~T4とすると、T1≧T2≧T3≧T4である、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のフィラメント10の製造ライン30の構成を示す。
【
図3】
図1の水槽37及びその近傍の構成についての、フィラメント10の中央を通る水平面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0012】
1.フィラメント10の製造ライン30
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態のフィラメント10の製造方法の実施に利用可能な、フィラメント10の製造ライン30について説明する。
【0013】
図1に示すように、フィラメント10の製造ライン30は、押出機31、口金32、サイジング装置33、水槽37、固定ローラ41、外径寸法測定装置42及び巻き取り装置43を含む。
【0014】
押出機31は、原料樹脂組成物を溶融混練し、これを連続的に口金32へと供給するもので、例えばスクリューが内蔵されるシリンダ、原料投入用のホッパ31a、射出ノズル等を備えて構成されている。押出機31のスクリューは、特に限定されないが、好ましくは、単軸スクリューである。押出機31は、シリンダ内のスクリューを回転させることによって原料樹脂組成物を溶融混練して射出ノズルから口金32に押し出す。原料は、ペレットの形態で投入することができる。
【0015】
口金32は、押出機31からの溶融樹脂を水平方向に押し出すものであり、ここから押し出された溶融樹脂が冷却されてフィラメント10となる。
【0016】
水槽37は、フィラメント10の搬送方向に沿って長い箱状に形成される。フィラメント10は、水槽37の一端の壁から水槽37内に導入され、水槽37の他端の壁から導出される。水槽37には、フィラメント10を浸漬させ、フィラメント10を冷却する水37aが貯留される。
【0017】
サイジング装置33は、水槽37の一端の壁の内側に配置されている。サイジング装置33は、フィラメント10の真円度を高め、かつ、フィラメント10の外径寸法を所定の寸法に均一化させる機能を有する。
【0018】
サイジング装置33では、真空吸引によってフィラメント10を整形する。これによって、真円度が高められる。サイジング装置33は不要な場合には省略可能である。
【0019】
図2に示すように、サイジング装置33は、上下一対の下部材33D及び上部材33Uを備え、下部材33D及び下部材33Dのそれぞれの合わせ面には、フィラメント10の連続体の搬送方向に沿って形成され、フィラメント10を通す半円筒面状の第1の溝33aと、この第1の溝33aに対して直交するように交差する複数(この例では、互いに平行に並ぶ7本)の真空吸引用の第2の溝33bとが設けられる。真空吸引用の第2の溝33bの数は任意であり、サイジング装置33を通過後のフィラメント10の整形精度が十分良好なものとなるように適宜設定すればよい。また、真空吸引用の第2の溝33bは、水平方向ばかりでなく、垂直方向、斜め方向等、任意の方向に設けることも可能であり、やはり整形精度が十分良好なものとなるように適宜設定すればよい。
【0020】
サイジング装置33において、真空吸引を行うことで、フィラメント10に対して真空吸引力が働く。その結果、フィラメント10の外周面が下部材33D及び上部材33Uに設けられた溝33aの断面円形の空間に臨む壁面に引き付けられ、溝33aにより形成される空間の形状、直径に整形される。これにより、サイジング装置33を通過したフィラメント10は、断面が概ね真円形状となり、その径は設定値(空間の直径)と概ね一致して一定となる。
【0021】
固定ローラ41は、サイジング装置33を経て水槽37内においてフィラメント10の姿勢を安定させ、かつ、巻き取り装置43側に向けてフィラメント10を搬送する。
【0022】
図3に示すように、水槽37は、仕切り板37bによって複数のゾーンZ1~Z4に分割されている。ゾーンZ1~Z4は、水槽37の入口37c側からこの順で配置されている。フィラメント10は、ゾーンZ1~Z4をこの順で通過し、通過しながら冷却固化される。各ゾーンZ1~Z4には、不図示のヒーターと温度センサーが設けられており、水温を独立して制御可能になっている。仕切り板37bは、フィラメント10が通過可能であり、且つゾーン間の水の移動を抑制するように構成されている。ゾーンの数は、2以上であり、例えば2~10であり、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0023】
外径寸法測定装置42は、水槽37で冷却されたフィラメント10の外径寸法を測定する。巻き取り装置43は、外径寸法測定装置42を経たフィラメント10を挟んで下流側に搬送する上下一対の巻き取りローラ43aと、巻き取りローラ43aの下流側に配置され、フィラメント10を巻き取る巻き取り軸43cを有するボビン巻き取り機43bとを備える。
【0024】
2.フィラメントの製造方法
次に、本発明の一実施形態のフィラメント10の製造方法について説明する。以下、製造ライン30を参照して説明を進めるが、本実施形態の方法は、製造ライン30以外の装置を用いて実施してもよい。
【0025】
本実施形態の方法は、押出工程、サイジング工程、冷却及び巻き取り工程を備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0026】
(1)押出工程
押出工程では、溶融混練した原料樹脂組成物を押出機31から口金32を介して連続的に押出してフィラメント10を形成する。
【0027】
原料樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含み、添加剤を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテルなどの非晶性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの結晶性樹脂、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ウレタン系の熱可塑性エラストマー、及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0028】
添加剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、ガラス繊維、タルク、マイカ、ナノクレイ、マグネシウムなどの無機系の添加剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤などが挙げられる。
【0029】
フィラメント10は、単層構成であっても、多層構成であってもよい。多層構成である場合、一例では、フィラメント10は、コアと、これを被覆する被覆層を備える。コアと、被覆層は、それぞれ、上述の原料樹脂組成物を用いて形成可能である。多層構成のフィラメント10は、複数の押出機のそれぞれにおいて溶融混練されて押し出された原料樹脂組成物を口金32において合流させて共押出することによって形成することができる。
【0030】
口金32から押し出されるフィラメント10の直径をD1とすると、D1は、例えば1.5~4mmであり、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
(2)サイジング工程
サイジング工程では、口金32から押出されたフィラメント10を真空吸引しながらサイジング装置33を通過させる。これによって、フィラメント10の真円度が高められ、且つフィラメント10の外径寸法を所定の寸法に均一化される。サイジング工程は不要な場合には省略可能である。
【0032】
サイジング装置33を通過した直後のフィラメント10の直径をD2とすると、(D1-D2)の値は、例えば0~1mmであり、0.1~1mmが好ましく、具体的には例えば、0、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
(3)冷却及び巻き取り工程
冷却及び巻き取り工程では、フィラメント10を水槽37内の水中を通過させることによって冷却固化させて巻き取り軸43cで巻き取る。
【0034】
水槽37での冷却によってフィラメント10が縮径される。水槽37での冷却直後のフィラメント10の直径をD3とすると、(D3-D1)の値は、例えば0.01~0.5mmであり、具体的には例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、具体的には例えば、0.1、0.2、0.2、0.3、0.3、0.4、0.4、0.5、0.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
D3は、例えば1.3~3.8mmであり、2.0~3.8mmが好ましく、具体的には例えば、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
D3が2.0mm未満である場合は、フィラメント10に気泡が比較的発生しにくく、発生したとしても3Dプリントの際にヘッドから気泡が排出されにくい。一方、D3が2.0mm以上である場合は、フィラメント10に気泡が発生しやすく、発生した気泡が3Dプリントの際にヘッドから気泡が排出されやすい。このため、D3が2.0mm以上である場合に、本発明によって気泡の発生を抑制する技術的意義が顕著である。
【0037】
本実施形態では、水槽37内の水の温度は、水槽37の入口37cから離れるにつれて低下するように設定されている。このように水温を設定すると、フィラメント10に気泡が発生することを抑制し且つフィラメント10の真円度が低下することが抑制される。フィラメント10の気泡はフィラメント10の表面が急冷されて固化された後にフィラメント10の内部が収縮して減圧状態になることによって発生する。水槽37内の水の温度を上記のように設定した場合、フィラメント10の表面が固化されるタイミングが遅くなるので、フィラメント10の内部が減圧状態になりにくく、気泡の発生が抑制される。
【0038】
水槽37内でフィラメント10が水中を通過する長さをLとし、水槽37内でフィラメント10が最初に接する水の温度(本実施形態では第1ゾーンZ1内の水の温度T1)と、フィラメント10が水槽37を出る直前に接する水の温度(本実施形態では第4ゾーンZ4内の水の温度T4)の差をΔT(=T1-T4)とすると、ΔT/Lは、3℃/m以上であることが好ましい。この値が小さすぎるとフィラメント10の真円度が低下しやすくなるか又はフィラメント10に気泡が発生しやすくなる。ΔT/Lは、例えば3~15℃/mであり、具体的には例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15℃/mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。ΔTは、例えば10~50℃であり、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Lは、例えば、1~10mであり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
水槽37内でフィラメント10が水中を通過する速度は、例えば5~15m/分である。この速度は、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15m/分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
水槽37内でフィラメント10が最初に接する水の温度は、例えば50~80℃である。この温度が低すぎるとフィラメント10に気泡が発生しやすく、この温度が高すぎるとフィラメント10の真円度が低下しやすい。この温度は、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。フィラメント10が水槽37を出る直前に接する水の温度は、例えば15~45℃である。この温度が低すぎるとフィラメント10に気泡が発生しやすく、この温度が高すぎるとフィラメント10の真円度が低下しやすい。この温度は、具体的には例えば、15、20、25、30、35、40、45℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0041】
第1~第4ゾーンZ1~Z4内の水の温度をそれぞれT1~T4とすると、T1≧T2≧T3≧T4であることが好ましい。「≧」は、「=」又は「>」であることを意味する。
【0042】
水槽37で冷却されたフィラメント10は、そのまま巻き取り軸43cで巻き取ってもよく、外径寸法測定装置42で外径の寸法を測定した後に巻き取り軸43cで巻き取ってもよい。後者の場合、得られた外径寸法が規格幅の範囲外である場合、外径が規格幅の範囲内になるように、各製造条件を見直すことができる。所定長さのフィラメント10が巻き取り軸43cに巻き取られたら、新しい巻き取り軸43cにフィラメント10を巻き取るようにする。
【0043】
以上の工程によって、巻き取り軸43cに巻かれたフィラメント10を製造することができる。
【0044】
フィラメント10は、好ましくは、気泡発生率が0~5%である。本実施形態のようにフィラメント10を徐冷することによって気泡発生率を低減させることができる。気泡発生率は、具体的には例えば、0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
気泡発生率は、フィラメント10を1cm幅で切断して100個以上のサンプルを作成し、このサンプルの切断面を目視で観察し、直径が0.3mm以上の気泡が見つかったサンプルの個数を数え、以下の式に基づいて算出した。
気泡発生率(%)=100×(気泡が見つかったサンプルの個数)/(観察したサンプルの個数)
【0046】
フィラメント10は、好ましくは、真円度が1.00~1.07である。真円の真円度は1であり、フィラメント10の断面が真円に近いほど、フィラメント10の真円度が1に近づく(真円度が1に近いことを、「真円度が高い」と表現する。)。本実施形態のようにフィラメント10を徐冷することによって真円度を1に近づけることができる。フィラメント10の真円度は、具体的には例えば、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
フィラメント10の真円度は、以下の方法で測定することができる。
・まず、フィラメント10の3点以上の測定点(隣接する測定点間の距離は10cm)のそれぞれの断面において、フィラメント10の中心を通る最大長さと最小長さを計測し、各測定点での真円度(=最大長さ/最小長さ)を算出する。フィラメント10は、略楕円形であり、最大長さと最小長さは、楕円の長軸長と短軸長に相当する。
・全ての測定点での真円度の平均値をフィラメント10の真円度とする。
【実施例】
【0048】
製造ライン30を用いて、ABS樹脂で構成されたフィラメント10を製造した。口金32及びサイジング装置は、D1~D3が、それぞれ、3.00mm、2.90mm、2.85mmとなるように設定した。ゾーンZ1~Z4の長さは、それぞれ、0.75mとした。ゾーンZ1~Z4内の水の温度は、表1に示すように設定した。水槽37内でのフィラメント10の通過速度は、7.2m/分とした。各実施例・比較例で得られたフィラメント10について、気泡発生率及び真円度を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1に示すように、全ての実施例のフィラメント10は、真円度が高く且つ気泡発生率が小さかった。一方、全ての比較例のフィラメント10は、気泡発生率が高いか、真円度が低かった。この結果は、水槽37の入口37cから離れるにつれて水槽37内の水の温度が低下するように、水槽37内の水の温度設定を行うことによって、真円度が高く且つ気泡が少ないフィラメント10が得られることを示している。
【符号の説明】
【0051】
10 :フィラメント
30 :製造ライン
31 :押出機
31a :ホッパ
32 :口金
33 :サイジング装置
33D :下部材
33U :上部材
33a :第1の溝
33b :第2の溝
37 :水槽
37a :水
37b :仕切り板
37c :入口
41 :固定ローラ
42 :外径寸法測定装置
43 :巻き取り装置
43a :巻き取りローラ
43b :ボビン巻き取り機
43c :巻き取り軸
Z1 :第1ゾーン
Z2 :第2ゾーン
Z3 :第3ゾーン
Z4 :第4ゾーン