(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))と1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)とを含む組成物、並びにHFO-1132(E)とHFC-143aとを含む組成物から、HFO-1132(E)及びHFC-143aを分離する方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C09K5/04 C
(21)【出願番号】P 2021031866
(22)【出願日】2021-03-01
(62)【分割の表示】P 2020019637の分割
【原出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019020994
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一博
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(72)【発明者】
【氏名】茶木 勇博
(72)【発明者】
【氏名】臼井 隆
(72)【発明者】
【氏名】串田 恵
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0253927(US,A1)
【文献】特開2015-229768(JP,A)
【文献】特開2016-011423(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157765(WO,A1)
【文献】特表2012-508306(JP,A)
【文献】特開2016-130236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00- 5/20
C07C 21/18
C07C 17/383
F25B 1/00
F25B 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含む
、R410Aの代替冷媒として用いられる冷凍機用作動流体であって、
前記冷媒が、共沸又は共沸様であり、かつトランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、並びに水を含み、
前記冷媒における、HFO-1132(E)及びHFC-143aの、HFO-1132(E)とHFC-143aとの合計量に対する含有割合が、それぞれ80質量%以上及び20質量%以下であり、
HFO-1132(E)及びHFC-143aの合計を、冷媒全体に対して99質量%以上含み、かつ
前記冷媒全体に対する含水割合が、0.1質量%以下である、
冷凍機用作動流体。
【請求項2】
前記冷媒が、さらに追加的冷媒を含み、
前記追加的冷媒が、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1,1-ジフルオロメタン、フルオロエタン(HFC-152a)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、2-クロロ1,1,1-トリフルオロエタン(CFC-133a)、1-クロロ-1,1,2トリフルオロエタン(HCFC-133b)、2,2-ジクロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-123)、及び1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)からなる群より選択される少なくとも一種の冷媒である、請求項1に記載の
冷凍機用作動流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、HFO-1132(E)とHFC-143aとを含む組成物、並びにHFO-1132(E)とHFC-143aとを含む組成物から、HFO-1132(E)及びHFC-143aを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランス(E)型及びシス(Z)型の1,2-ジフルオロエチレンを含む冷媒は、R-410AやHFC-32、HFC-134aなどがこれまで用いられてきた空気調和機で用いられる冷媒等の熱作動媒体の代替物質として非常に有望である(特許文献1)。
【0003】
この方法で得られたE-1,2-ジフルオロエチレンはHFC-143aを副生成物として含む。
【0004】
0℃、626kPaにおいて、11wt%のHFO-1132(E)と89wt%のHFC-143aとが共沸組成物を形成することが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2012/157765号公報
【文献】米国特許公開第2011/0253927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、HFO-1132(E)とHFC-143aとを含む共沸又は共沸様の組成物、並びにHFO-1132(E)とHFC-143aとを含む組成物から、HFO-1132(E)及びHFC-143aを分離する方法を提供する
ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、共沸又は共沸様であり、かつトランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)を含み、かつ
前記冷媒における、HFO-1132(E)及びHFC-143aの、HFO-1132(E)とHFC-143aとの合計量に対する含有割合が、それぞれ80質量%以上及び20質量%以下である、組成物。
【0008】
項2.
前記冷媒が、さらに追加的冷媒を含み、
前記追加的冷媒が、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1,1-ジフルオロメタン、フルオロエタン(HFC-152a)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、2-クロロ1,1,1-トリフルオロエタン(CFC-133a)、1-クロロ-1,1,2トリフルオロエタン(HCFC-133b)、2,2-ジクロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-123)、及び1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)からなる群より選択される少なくとも一種の冷媒である、項1に記載の組成物。
【0009】
項3.
前記冷媒における、HFO-1132(E)と、HFC-143aと、前記追加的冷媒の合計量との合計量
に対する、前記追加的冷媒の合計量の含有割合が、0質量%を超え、1質量%以下である、
項1又は2に記載の組成物。
【0010】
項4.
HFO-1132(E)及びHFC-143aを含む組成物から、HFO-1132(E)及びHFC-143aを分離する方法であって、
前記組成物を共沸蒸留することにより、HFO-1132(E)及びHFC-143aを含む共沸又は共沸
様の組成物を分離する工程
を含む方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、HFO-1132(E)とHFC-143aとを含む共沸又は共沸様の組成物が提供される
。また、本開示により、HFO-1132(E)とHFC-143aとを含む組成物から、HFO-1132(E)及びHFC-143aを分離する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】HFO-1132(E)及びHFC-143を分離するためのプロセスの一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さ
らに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフル
オロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン
(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
【0014】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0015】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0016】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に
含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0017】
本明細書において用語「冷凍機」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0018】
本明細書において用語「共沸様の組成物(共沸様組成物)」とは、共沸組成物と実質的に同様に取り扱うことができる組成物のことを意味し、具体的には、実質的に単一物質として振る舞う2つ以上の物質の定沸点の、または実質的に定沸点の組成物のことを意味する。
【0019】
より具体的には、用語「共沸様の組成物(共沸様組成物)」は、その液体を蒸発又は蒸留させることによって発生した蒸気の組成が、液体の組成と実質的に変化しない組成物を指す。すなわち、共沸様組成物は、実質的な組成変化なしに沸騰、蒸留及び還流することができる。
【0020】
本明細書において、組成物が共沸様であるか否かの判定は、ある特定の温度での組成物のバブルポイント蒸気圧と組成物の露点蒸気圧とが実質的に同じか否かに基づいて行う。より具体的には、露点圧力とバブルポイント圧力との差が3パーセント以下(バブルポイント圧力を基準として)である場合に、その組成物は共沸様組成物であると判定する。
【0021】
1.冷媒
1.1 冷媒成分
本開示の冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))と1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)を含む混合冷媒である。
【0022】
本開示の冷媒は、共沸又は共沸様の組成物である。
【0023】
本開示の冷媒における、HFO-1132(E)及びHFC-143aの、HFO-1132(E)とHFC-143aとの合計量に対する含有割合は、それぞれ80質量%以上100質量%未満及び0質量%を超え20質量%以下である。本開示の冷媒は、かかる組成範囲において、対R410A比COPが97%以上となり、対R410A比冷凍能力が94%以上となり、かつAR5(IPCC第5次報告書)におけるGWPが1500以下となる。
【0024】
本開示の冷媒における、HFO-1132(E)及びHFC-143aの、HFO-1132(E)とHFC-143aとの合計量に対する含有割合は、それぞれ90質量%以上100質量%未満及び0質量%を超え10質量%以下であることがより好ましい。本開示の冷媒は、かかる組成範囲において、COPがR-410A比で98%以上と、R-410Aと遜色のない性能を発揮し、かつAR5(IPCC第5次報告書)にお
けるGWPが750以下となる。
【0025】
本開示の冷媒は、さらに追加的冷媒を含んでいてもよい。追加的冷媒としては、特に制限されず、幅広く選択できる。追加的冷媒の例として、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1,1-ジフルオロメタン、フルオロエタン(HFC-152a)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、2-クロロ1,1,1-トリフルオロエタン(CFC-133a)、1-クロロ-1,1,2ト
リフルオロエタン(HCFC-133b)、2,2-ジクロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-123)
、及び1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)からなる群より選択される少なくとも一種の冷
媒等が挙げられる。
【0026】
本開示の冷媒における、HFO-1132(E)と、HFC-143aと、前記追加的冷媒の合計量との合
計量に対する、前記追加的冷媒の合計量の含有割合が、0質量%を超え、1質量%以下であれば好ましく、0質量%を超え、0.5質量%以下であればより好ましく、0質量%を超え、0.1質量%以下であればさらに好ましい。本開示の冷媒は、かかる組成範囲において、共沸又は共沸様となりやすい。
【0027】
1.2 用途
本開示の冷媒は、冷凍機における作動流体として好ましく使用することができる。
【0028】
本開示の冷媒は、R410Aの代替冷媒としての使用に適している。
【0029】
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
【0030】
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0~1質量%
であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
【0031】
2.1 水
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むこ
とにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0032】
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0033】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0034】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0035】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロ
ロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0036】
上記トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4)
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3)
HFC-41(フルオロメタン、CH3Cl)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2)
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2)
HFC-143a(1,1,1-トリフルオロエタン、CF3CH3)
HFC-143(1,1,2-トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152a(1,1-ジフルオロエタン、CHF2CH3)
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)HFC-236ea(1,1,1,2,3,
3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2)HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)HFE-134a(トリ
フルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3)
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3)
【0037】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)~約1000ppm含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm~約500ppm、より好ましくは約50ppm~約300ppm含んでいてもよい。
【0038】
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0039】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0040】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0041】
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0042】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0043】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0044】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合
物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0045】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0046】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0047】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0048】
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%とす
ることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましい。
【0049】
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0050】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0051】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノ
ンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0052】
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%
とすることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましい。
【0053】
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10~50質量%含まれる。
【0054】
3.1 冷凍機油
本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0055】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び
前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0056】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエ
ステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0057】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0058】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5~400 cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
【0059】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0060】
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0061】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0062】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0063】
4.冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0064】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0065】
5.分離方法
本開示の分離方法は、HFO-1132(E)及びHFC-143aを含む組成物から、HFO-1132(E)及びHFC-143aを分離する方法であって、前記組成物を共沸蒸留することにより、HFO-1132(E)及
びHFC-143aを含む共沸又は共沸様の組成物を分離する工程を含む方法である。
【0066】
HFC-143aは沸点-53℃でありHFO-1132(E)と沸点が近いだけでなく、HFO-1132(E)と共沸
組成物乃至共沸様組成物を形成することが明らかになった。よって、通常の蒸留ではHFO-1132(E)との分離が困難である。本開示の分離方法では、HFO-1132(E)及びHFC-143aを含む組成物を共沸蒸留することにより、効果的にHFC-143aをHFO-1132(E)から分離できるとい
う効果が奏される。
【0067】
共沸蒸留とは、蒸留塔により分離される組成物が、1つ以上の共沸組成物または共沸様組成物であり、これを分離しうる条件下に蒸留塔が運転される方法である。共沸蒸留は、共沸組成物又は共沸様組成物の性質を利用することにより可能となる方法である。
【0068】
共沸蒸留は、出発組成物が、共沸又は共沸様組成物を形成する二以上の成分のみからなる場合だけでなく、又は出発組成物が、共沸又は共沸様組成物を形成する二以上の成分に加えて追加的成分を含む場合にも起る可能性がある。後者においては、出発組成物の成分の1つ以上と共沸又は共沸様組成物を形成する成分を出発組成物に添加してから共沸蒸留を行ってもよい。このように共沸蒸留を利用することによって、目的物の分離が容易になる。
【0069】
本開示においては、温度によって共沸または共沸様となる組成領域が変化することを利用して共沸蒸留を行うことにより目的物を分離する。
【0070】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、
形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0071】
以下にHFO-1132(E)及びHFC-143aのみからなる組成物の分離方法、及びそれを使用する
冷凍サイクルについて実施例を用いて説明する。
【0072】
実施例1
表1に、HFO-1132(E)及びHFC-143aのみからなる組成物の気液平衡の計算結果を示す。
【0073】
【0074】
実施例2
HFO-1132(E)及びHFC-143aのみからなる組成物について、冷凍サイクル計算を行った結
果を表2に示す。計算条件は以下の通りである。
【0075】
蒸発温度:5℃、凝縮温度;45℃、過熱温度:5℃、過冷却温度:5℃、圧縮機効率:0.7
【0076】
【0077】
実施例3
図1に、HFO-1132(E)及びHFC-143を分離するためのプロセスの一例を示す。本プロセスは、HFO-1132(E)及びHFC-143aを含む共沸組成物の性質を利用した蒸留分離プロセスの一
例である。
【0078】
S11よりHFO-1132(E)及びHFC-143aを含む出発組成物を蒸留塔C1にフィードする。S12よ
りHFO-1132(E)及びHFC-143aを含む共沸組成物が流出し、S13からは出発組成物よりもHFC-143aの濃度が低下したHFO-1132(E) が得られる。蒸留分離の結果を表3に示す。
【0079】
【0080】
なお、運転圧力は0.2MPa、トップ温度は-38℃である。蒸留塔の段数は50段、フィード段は35段である。トップより共沸組成のHFC-143a/HFO-1132(E)組成物が流出し、ボトムよりHFC-143a濃度の低減したHFO-1132(E)が流出する。
【0081】
このプロセスによりロスを最低限にしたHFO-1132(E)の精製プロセスを構築できる。