(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】チップ剥離装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
H01L21/68 E
(21)【出願番号】P 2021032366
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 善明
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-243137(JP,A)
【文献】特開2010-192648(JP,A)
【文献】特開平08-078505(JP,A)
【文献】特開2007-115934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0255673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに貼着されたチップを当該シートから剥離するチップ剥離装置であって、
前記シート及び前記シートの上面に貼着された前記チップが載置されるベースと、
平面視において第1方向に沿った凸条である第1突上げ部が、第1方向と直交する第2方向に所定の間隔を空けて前記シートの下側に複数設けられており、複数の前記第1突上げ部が上方に移動して前記シート越しに前記チップの下面を突き上げる第1突上げ機構と、
隣接する前記第1突上げ部の間に設けられ、先細の柱状をなしている第2突上げ部と、
前記第1突上げ部の間に設けられ、前記第1突上げ部が前記シートの下面に当接した状態で前記シートを下方へ吸引する吸着部と、を備え、
前記第1突上げ部の厚みが、隣接する前記第1突上げ部の間隔より小さ
く、
前記第1突上げ部が前記チップを突き上げた後に、前記第2突上げ部が上方に移動して前記シート越しに前記チップの下面を突き上げるチップ剥離装置。
【請求項2】
前記チップは平面視矩形状であり、
前記第1方向が前記チップの周縁に平行に設けられ、
前記第2方向の両端に配置された前記第1突上げ部は、平面視における前記チップの周縁までの距離が、前記第2方向に隣接する前記第1突上げ部の間隔より小さい請求項1に記載のチップ剥離装置。
【請求項3】
平面視において前記第1突上げ部は、前記チップの内側に収まっている請求項1又は2に記載のチップ剥離装置。
【請求項4】
前記ベースに設けられた上方に開口する凹部と、前記凹部の内部を減圧する減圧装置と、を備え、前記凹部の内部に前記第1突上げ機構及び前記吸着部が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【請求項5】
前記第2突上げ部は先端が丸くなっており、前記第2突上げ部の先端の曲率半径が、前記第1突上げ部の厚みの1/2より大きい請求項
1~4のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【請求項6】
複数の前記第1突上げ部が上方に移動して前記シート越しに前記チップの下面を突き上げた後、複数の前記第1突上げ部の位置を保持した状態で、前記第2突上げ部が上方に移動して前記シート越しに前記チップの下面を突き上げる請求項
1~5のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【請求項7】
前記チップの上面を吸着するコレットを備え、
前記コレットが前記チップの上面を吸着しながら複数の前記第1突上げ部が前記シート越しに前記チップの下面を突き上げる請求項1~
6のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【請求項8】
前記第1突上げ部の厚みが、0.1mm以上1.0mm以下である請求項1~
7のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【請求項9】
前記第2突上げ部材は、前記第2方向に隣接する前記第1突上げ部材のいずれか一方に近接させて配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【請求項10】
前記第2突上げ部材は、前記第1方向に間隔をあけて並べて設けられている、請求項1~9のいずれか1項に記載のチップ剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに貼着されたチップを当該シートから剥離するチップ剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造において、ダイシング工程によって分割後のチップをチップ剥離装置によってシートから剥離する必要がある。
【0003】
チップ剥離装置としては、シートを保持するステージと、このステージに対して進退する突き上げ台と、この突き上げ台によって突き上げられるニードルとを備え、突き上げ台によって突き上げられたニードルによりステージのシートを裏面側から突いて、チップをシートから離脱させるものが知られている。
【0004】
このような剥離装置では、チップを保持している箇所がピンの接触している点のみとなり1点に応力が集中する。そのため、ピンの当接箇所に過大な負荷が集中し、チップ割れが発生するおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献1には、チップ剥離装置として、突上面部を有する第1突上手段と、複数のピン部材を有する第2突上手段とを備え、突上面部がシートを介して下方からチップを突き上げてチップの周縁部を剥離させる初期剥離を行った後、ピン部材の先端を突上面部よりも上位に位置させてチップの剥離を促進させるものが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、初期剥離時に突上面部がシートに接している箇所は、シートがチップに押し付けられチップから剥離しないため、初期剥離後にピン部材の先端でチップを突き上げると、極薄チップを剥離させる場合等にチップ割れが発生するおそれがある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、シートからチップを剥離する際にチップの割れを防止することができるチップ剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる剥離装置は、シートに貼着されたチップを当該シートから剥離するチップ剥離装置であって、前記シート及び前記シートの上面に貼着された前記チップが載置されるベースと、平面視において第1方向に沿った凸条である第1突上げ部が、第1方向と直交する第2方向に所定の間隔を空けて前記シートの下側に複数設けられており、複数の前記第1突上げ部が上方に移動して前記シート越しに前記チップの下面を突き上げる第1突上げ機構と、隣接する前記第1突上げ部の間に設けられ、先細の柱状をなしている第2突上げ部と、前記第1突上げ部の間に設けられ、前記第1突上げ部が前記シートの下面に当接した状態で前記シートを下方へ吸引する吸着部と、を備え、前記第1突上げ部の厚みが、隣接する前記第1突上げ部の間隔より小さいチップ剥離装置であって、前記第1突上げ部が前記チップを突き上げた後に、前記第2突上げ部が上方に移動して前記シート越しに前記チップの下面を突き上げるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、割れを抑えつつシートに貼着されたチップをシートから剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるチップ剥離装置の構成を模式的に示す断面図
【
図5】(a)~(e)は、チップ剥離装置の動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態のチップ剥離装置1は、
図1に示すように、平面視矩形状のチップCが上面に貼着されたシート2を水平方向に移動させるベース10と、シート2越しにチップCを下方から突き上げる突上げ装置20と、チップCの上面を吸着するコレット40と、制御部50とを備える。チップ剥離装置1は、制御部50がベース10、突上げ装置20及びコレット40を制御することで、突上げ装置20によって下方から突き上げたチップCをコレット40で吸着してシート2から剥離する。
【0014】
ベース10は、シート2の周縁部に取り付けられたウエハーリング11を保持するエキスパンドリング12と、ウエハーリング11に保持されたシート2を水平に位置決めする支持リング13とを有する。ベース10には、チップCがシート2の上面に位置するようにウエハーリング11が載置される。
【0015】
突上げ装置20は、
図2~
図4に示すように、上面に開口する凹部19が形成されたケース21と、凹部19の上面を覆うようにケース21の上面に設けられたステージ22とを備える。突上げ装置20は、支持リング13の内側にシート2の下面と対向するように支持リング13の内側に設けられている。
【0016】
ケース21は真空ポンプ等の減圧装置14に接続され凹部19内が減圧されるようになっている(
図1参照)。ステージ22は、中央部にチップCの平面形状より若干大きい貫通孔28が設けられ、その周囲に貫通孔28と連通する溝29が設けられている。
【0017】
ステージ22の上面をシート2の下面に接触させると、溝29がケース21の凹部19とともに減圧装置14によって減圧され、ステージ22に設けられた貫通孔28及び溝29においてシート2の下面が吸着されステージ22の上面に密着する。
【0018】
ケース21の凹部19には、シート2越しにチップCの下面を突き上げる第1突上げ機構23及び第2突上げ機構24と、シート2を下方へ吸引する吸着部25とが設けられている。
【0019】
第1突上げ機構23は、複数の第1突上げ部材26と、複数の第1突上げ部材26を上下動させる第1駆動部27とを備える。
【0020】
複数の第1突上げ部材26は、
図2に示すような平板状の部材であって、板面に沿った所定方向(以下、この方向を、第1方向ということもある)Xの中央部にシート2を介してチップCの下面に当接する第1突上げ部26aが設けられ、第1突上げ部26aの第1方向Xの両側に連結部26bが第1突上げ部26aと一体に設けられている。
【0021】
複数の第1突上げ部材26は、第1突上げ部26aの一端縁26a1を上方に向けた状態で、ステージ22に設けられた貫通孔28の下方に配置されている。これにより、第1突上げ部26aの一端縁26a1が、平面視において第1方向Xに沿った凸条としてチップCの下面と貫通孔28を通して上下に対向している。
【0022】
複数の第1突上げ部材26は、第1方向Xと直交する第1突上げ部材26の厚み方向(以下、この方向を第2方向ということもある)Yに間隔をあけて配置されている。第2方向Yに隣り合う第1突上げ部26aの間隔Dは、第1突上げ部26aの厚みTよりも大きく設定されている(
図3参照)。
【0023】
なお、第1突上げ部26aは、第1突上げ部26aの延びる方向である第1方向XがチップCの周縁に平行に設けられることが好ましく、第2方向Yに等間隔に設けられていることが好ましい。また、第2方向Yの両端に配置された第1突上げ部26aからチップCの周縁までの平面視における距離Eが、第2方向Yに隣接する第1突上げ部26aの間隔Dより小さく設定されることが好ましい。また、第1突上げ部26aは、チップCの内側に収まるように第1方向Xの長さがチップCより短く設定されていることが好ましい。
【0024】
このように配置された複数の第1突上げ部材26は、連結部26bにおいてスペーサ31を介して互いに連結されるとともに第1駆動部27に連結されている。第1駆動部27は、第1突上げ部26aの一端縁26a1が、シート2の下面に接するようにステージ22の上面と同一高さとなる位置(
図4参照)、または、シート2より若干下方に離れた位置(以下、この位置を、第1待避位置ということもある)と、ステージ22の上面より上方へ突出する第1突上げ位置との間を移動するように、複数の第1突上げ部材26を上下動させる。
【0025】
第2突上げ機構24は、複数の第2突上げ部材30と、複数の第2突上げ部材30を上下動させる第2駆動部32とを備える。
【0026】
複数の第2突上げ部材30は、
図2~
図4に示すような上方へ延びる円柱状の部材であって、先端部(上端部)にシート2を介してチップCの下面に当接する第2突上げ部30aが設けられている。第2突上げ部30aの先端は、先細状に丸くなっていることが好ましく、第1突上げ部26aの厚みTの1/2より大きい曲率半径Rを有する凸曲面形状をなしていること、つまり、第1突上げ部26aの厚みTより第2突上げ部30aの先端部の直径が大きいことがより好ましい。また、第2突上げ部30aの先端が平坦な場合、第2突上げ部30aの先端の直径が第1突上げ部26aの厚みTより大きいことが好ましい。
【0027】
複数の第2突上げ部材30は、第2方向Yの両端に配置された第1突上げ部26aより第2方向Yの内側に配置され、第2方向Yに隣接する第1突上げ部材26の間に挟まれるように設けられている。第2突上げ部30aは、第2方向Yに隣接する2つの第1突上げ部材26のいずれか一方に近接させ、第1方向Xに間隔をあけて並べて設けることが好ましく、一方の第1突上げ部26aと第2突上げ部30aの間隔dが、第2突上げ部30aの先端部の直径(第2突上げ部30aの先端の曲率半径Rの2倍)より小さいことが好ましい。
【0028】
図4に示すように、複数の第2突上げ部材30は下端部がブロック状の支持体33によって支持され、支持体33が第2駆動部32に連結されている。第2駆動部32は、第2突上げ部30aの先端が、
図4に示すようなシート2より下方に離れた位置(以下、この位置を第2待避位置ということもある)と、上記した第1突上げ位置より上方に位置する第2突上げ位置との間を移動するように、複数の第2突上げ部材30を上下動させる。なお、第2待避位置は、第1待避位置に配置された第1突上げ部26aの一端縁26a1より下方に設定することが好ましい。
【0029】
吸着部25は、第2方向Yに隣り合う第1突上げ部26aの間に区画された空間である。吸着部25は、第1突上げ部材26の一端縁26a1がシート2の下面に接触した時に、ケース21の凹部19とともに減圧装置14によって減圧され、第1突上げ部26aの間においてシート2を吸着する。
【0030】
突上げ装置20の各種寸法は、チップCの大きさ、厚み、材質などによって適宜設定することができるが、一例を挙げると、第1突上げ部26aの厚みTは、0.1mm~1.0mmとすることができる。好ましくは0.1mm~0.5mm、より好ましくは0.1mm~0.2mmである。第2突上げ部30aの曲率半径Rは、0.1mm~0.35mmとすることができる。第2突上げ部30aの曲率半径Rの最大値0.35mmは第2突上げ部材の直径が例えば0.7mmの場合の曲率半径であり、第2突上げ部材の直径を変更した場合はこの限りではない。第2方向Yに隣り合う第1突上げ部26aの間隔Dは、1mm~5mmとすることができる。
【0031】
制御部50は、メモリと中央処理装置(CPU)とを備え、中央処理装置がメモリに格納されたプログラムを実行することで、ベース10、突上げ装置20及びコレット40を制御してチップCをコレット40で真空吸着してシート2から剥離する。
【0032】
次に、本実施形態のチップ剥離装置1の動作について
図5を参照して説明する。
【0033】
まず、ベース10にチップCを貼着したシート2が載置されると、制御部50は、
図5(a)に示すように、これから剥離するチップCの下方にステージ22の貫通孔28が位置するようにベース10を移動させるとともに、減圧装置14によってケース21の凹部19及び溝29を減圧してシート2の下面をステージ22の上面に吸着する。また、制御部50は、コレット40をこれから剥離するチップCの上方位置に配置し、突上げ装置20の第1突上げ部26a及び第2突上げ部30aをそれぞれ第1待避位置及び第2待避位置に配置する。なお、この時、第1突上げ部26aの一端縁26a1がシート2の下面に接するように第1突上げ部26aを配置することが好ましい。このように第1突上げ部26aの一端縁26a1を配置することで、凹部19内の減圧によってシート2及びチップCが貫通孔28へ吸い込まれることを防ぐことができる。
【0034】
そして、制御部50は、
図5(b)に示すように、コレット40を下降させてチップCの上面を真空吸着する。
【0035】
そして、制御部50は、
図5(c)に示すように、第1駆動部27を動作させて第1突上げ部26aを第1待避位置から第1突上げ位置まで上方へ移動させて、チップCをシート2とともに上方へ突き上げる。また、制御部50は、第1突上げ部26aの上方移動と同期させてコレット40を上方へ移動させる。この時、シート2がステージ22に真空吸着されているため、チップCの周縁部がシート2から剥離したり、シート2とチップCとの接着力が低下したりする。また、第1突上げ部26aの間に区画された吸着部25においてシート2が真空吸着され、シート2がチップCから剥離したり、チップCとの接着力が低下したりする。
【0036】
そして、制御部50は、
図5(d)に示すように、第1突上げ部26aを第1突上げ位置に配置したまま、第2駆動部32を動作させて第2突上げ部30aを第2待避位置から第2突上げ位置まで上方へ移動させて、チップCをシート2とともに上方へ突き上げる。また、制御部50は、第2突上げ部30aの上方移動と同期させてコレット40を上方へ移動させる。これにより、第2突上げ部30aが当接していない箇所においてシート2が真空吸着されチップCから剥離したり、シート2とチップCとの接着力が低下したりする。
【0037】
そして、制御部50は、
図5(e)に示すように、第2突上げ部30aを第2突上げ位置に配置したまま、コレット40を更に上方へ移動させてチップCをシート2から剥離し、チップCを搬出する。
【0038】
そして、シート2からチップCを剥離すると、制御部50は、ステージ22の貫通孔28が次に剥離するチップCの下方に位置するようにベース10を移動させる。また、制御部50は、シート2から剥離したチップCを搬出した後、コレット40を次に剥離するチップCの上方へ移動させる。その後、上記した手順を繰り返してシート2からチップCを順次剥離する。
【0039】
上記したような本実施形態のチップ剥離装置1では、シート2からチップCを完全に剥離する前に、第1方向Xに沿って延びる凸条である第1突上げ部26aによってチップCをシート2とともに上方へ突き上げるため、チップCにかかる負荷を分散させることができ、チップCの割れを抑えることができる。
【0040】
しかも、本実施形態では、第1突上げ部26aの厚みTが、隣接する第1突上げ部26aの間隔Dより小さいため、複数の第1突上げ部26aの間に区画された吸着部25をチップC下面の広い範囲に設けることができる。これにより、第1突上げ部26aによってチップCをシート2とともに上方へ突き上げたときに、吸着部25によって真空吸着され部分においてシート2をチップCから剥離させたり、チップCとの接着力を低下させることができる。その結果、コレット40によってチップCをシート2から剥離する際に、チップCに過大な負荷が一度に作用するのを防ぐことができ、割れを抑えつつチップCをシート2から剥離することができる。
【0041】
また、第2方向Yの両端に配置された第1突上げ部26aが、平面視におけるチップCの周縁までの距離Eが、第2方向Yに隣接する第1突上げ部26aの間隔Dより小さい場合であると、チップCの周縁部の破損を抑えつつチップCの周縁部を剥離することができる。
【0042】
また、第1突上げ部26aがチップCの内側に収まるように第1方向Xの長さがチップCより短く設定されている場合であると、第1突上げ部26aによってチップCを上方へ突き上げたときに、チップCの第1方向Xの両端が第1突上げ部26aによってシート2とともに突き上げられることがない。そのため、第1突上げ部26aによってチップCを上方へ突き上げたときに、チップCの第1方向Xの両端部をシート2から剥離することができる。
【0043】
また、本実施形態のように、第1突上げ部26aがチップCを突き上げた後に、第2突上げ部30aが第1突上げ部26aと異なる位置においてチップCの下面を突き上げる場合、チップCにかかる負荷を分散させつつ段階的に剥離することができる。しかも、第2突上げ部30aの先端の曲率半径Rが、第1突上げ部26aの厚みTの1/2より大きい場合であると、第2突上げ部30aの先端がチップCを突き上げる際にチップCに負荷が集中しにくくなり、チップCの割れを防ぐことができる。
【0044】
また、本実施形態のように、第2方向Yに隣接する第1突上げ部材26のいずれか一方に近接させて第2突上げ部材30を配置することで、第1突上げ部26aによるチップCの突上げ時にシート2が剥離しやすい吸着部25の第2方向Yの中央部付近を、第2突上げ部30aによって突き上げることがない。そのため、第2突上げ部30aによってチップCを突き上げたときに、第1突上げ部26aの突上げによってチップCから剥離した箇所を起点としてシート2からチップCをスムーズに剥離することができる。
【0045】
また、本実施形態のように、第1突上げ部26aがシート2越しにチップCの下面を突き上げた状態で、第2突上げ部30aが第2突上げ位置へ移動してシート2越しにチップCの下面を突き上げる場合であると、シート2の一部をチップCから剥離した状態から第2突上げ部30aによってチップCを突き上げることができ、チップCをスムーズに剥離することができる。
【0046】
また、本実施形態のように、コレット40がチップCの上面を吸着しながら第1突上げ部26aがシート2越しにチップCの下面を突き上げることで、第1突上げ部26aがチップを突き上げる際にチップCにかかる負荷を分散させることができ、チップCの割れを抑えることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下に変更例を列挙する。
【0048】
(変更例1)
次に上記した実施形態の変更例1について説明する。上記した実施形態では、第1突上げ部26a及び第2突上げ部30aがチップCを順に突き上げた後、コレット40によってチップCを吸着してシート2から剥離する場合について説明したが、第1突上げ部26aがチップCを突き上げた後、第2突上げ部30aがチップCを突き上げることなくコレット40によってチップCを吸着してシート2から剥離してもよい。
【0049】
(変更例2)
次に上記した実施形態の変更例2について説明する。上記した実施形態では、1つのケース21に第1突上げ機構23及び第2突上げ機構24を設ける場合について説明したが、第1突上げ機構23及び第2突上げ機構24をそれぞれ別個のケースの凹部に収納してもよい。
【0050】
具体的には、第1突上げ機構23をチップCの下方に配置し、第1突上げ機構23の第1突上げ部26aを第1待避位置から第1突上げ位置へ移動させてチップCを突き上げた後、第1突上げ部26aを第1待避位置へ戻す。そして、第1突上げ機構23を当該チップCの下方から別のチップCの下方へ移動させた後、第2突上げ機構24を当該チップCの下方に配置して第2突上げ部30aを第2待避位置から第2突上げ位置へ移動させてチップCを突き上げた状態で、コレット40によってチップCを吸着してシート2から剥離して、チップCを取り出す。
【0051】
(変更例3)
次に上記した実施形態の変更例3について説明する。上記した実施形態では、第1突上げ部26aが平面視において第1方向Xに沿った一続きの凸条に設けられている場合について説明したが、第1突上げ部26aが途中で分断された第1方向Xに沿った凸条であってもよい。
【0052】
また、本実施形態では、第1突上げ部26aが、略一定厚みの平板状の部材の場合について説明したが、第1突上げ部26aはその上端部が上方に行くほど厚みが薄くなるブレー状の部材であってもよい。第1突上げ部26aがブレード状をなしている場合、第1突上げ部26aの先端は、第2突上げ部30aの先端の曲率半径より小さい曲率半径を有する凸曲面形状をなしていることがより好ましい。
【0053】
また、上記した実施形態では、第2突上げ部30aが先細の円柱状に設けられている場合について説明したが、第2突上げ部30aは、第1方向Xに延びる凸条や第2方向Yに延びる凸条など任意の形状に設定してもよい。
【0054】
(変更例4)
次に上記した実施形態の変更例3について説明する。上記した実施形態では、コレット40によってチップCの上面を真空吸着した後、第1突上げ部26aや第2突上げ部30aによってチップCを突き上げる場合について説明したが、第1突上げ部26aがチップCを突き上げた後にコレット40によってチップCの上面を真空吸着したり、第1突上げ部26a及び第2突上げ部30aがチップCを突き上げた後にコレット40によってチップCの上面を真空吸着したりしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…剥離装置、2…シート、10…ベース、11…ウエハーリング、12…エキスパンドリング、13…支持リング、14…減圧装置、19…凹部、20…突上げ装置、21…ケース、22…ステージ、23…第1突上げ機構、24…第2突上げ機構、25…吸着部、26…第1突上げ部材、26a…第1突上げ部、26a1…一端縁、26b…連結部、27…第1駆動部、28…貫通孔、29…溝、30…第2突上げ部材、30a…第2突上げ部、31…スペーサ、32…第2駆動部、33…支持体、40…コレット、50…制御部、C…チップ、X…第1方向、Y…第2方向