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特許7587153空気調和装置の据え付け支援システム、据え付け支援方法、および据え付け支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】空気調和装置の据え付け支援システム、据え付け支援方法、および据え付け支援装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/36 20180101AFI20241113BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
F24F11/36
F25B49/02 520Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021075296
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169325
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 淳哉
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143800(JP,A)
【文献】特開2018-91550(JP,A)
【文献】特開2016-173224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/36
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、前記第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、前記第1室(R1)と前記第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得し、
前記開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定する第1処理と、
前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、前記第1処理で決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する第2処理とを実行する制御部(130,C8)を備えている
空気調和装置(10)の据え付け支援システム 。
【請求項2】
前記制御部(130,C8)は、前記第1室(R1)の床面(F)から前記空気調和装置(10)までの高さに基づいて前記第1容積V1および前記第2容積V2に関する情報を取得する
請求項1に記載の空気調和装置の据え付け支援システム。
【請求項3】
前記制御部(130,C8)は、前記第1処理において、所定高さ位置よりも低い位置にある開口(O)に基づいて前記有効容積Vaを決定する
請求項1または2に記載の据え付け支援システム。
【請求項4】
前記制御部(130,C8)は、前記第1処理において、床面(F)に沿って形成される開口(O)に基づいて前記有効容積Vaを決定する
請求項1~3のいずれか1つに記載の空気調和装置の据え付け支援システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1処理において、前記開口の有効面積が所定値未満である場合に、前記第1容積V1を前記有効容積とし、前記開口の有効面積が前記所定値以上である場合に、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を前記有効容積とする
請求項1~4のいずれか1つ記載の空気調和装置の据え付け支援システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1処理において、前記開口が人の導線上にない場合、該開口の有効面積が小さくなるように補正する、または前記所定値が大きくなるように補正する
請求項5に記載の空気調和装置の据え付け支援システム。
【請求項7】
前記制御部(130,C8)は、建物のレイアウト情報に基づき前記開口(O)に関する情報を取得する
請求項1~6のいずれか1つに記載の空気調和装置の据え付け支援システム。
【請求項8】
人が前記開口(O)に関する情報を入力する入力部(110)を備える
請求項1~7のいずれか1つに記載の空気調和装置の据え付け支援システム。
【請求項9】
空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、前記第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、前記第1室(R1)と前記第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得し、
前記開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定し、
前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する
空気調和装置の据え付け支援方法。
【請求項10】
空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、前記第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、前記第1室(R1)と前記第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得し、
前記開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定する第1処理と、
前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、前記第1処理で決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する第2処理とを実行する制御部(130,C8)を備えている
空気調和装置の据え付け支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和装置の据え付け支援システム、据え付け支援方法、および据え付け支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、安全装置としての遮断弁を備えた空気調和装置を開示している。遮断弁は、空気調和装置の冷媒配管に設けられる。対象空間において冷媒が漏洩すると、遮断弁が閉じる。このような安全装置により、対象空間の冷媒の漏洩を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-9267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象空間に対応する安全装置を設けるか否かは、空気調和装置の使用冷媒量M、および対象空間の容積に基づいて判断できる。対象空間に漏洩した冷媒の濃度が高くなるほど、安全装置の必要性が高くなるからである。しかし、漏洩した冷媒は、対象空間だけでなく、対象空間に隣接する他の空間に拡散することがある。このような状況下では、冷媒が漏洩しうる実際の空間の容積を特定する必要があり、安全装置が必要か否かの判断が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点の空気調和装置の据え付け支援システムは、制御部(130,C8)を備える。制御部(130,C8)は、空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、前記第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、前記第1室(R1)と前記第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得する。制御部(130,C8)は、前記開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定する第1処理を実行する。制御部(130,C8)は、前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、前記第1処理で決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する第2処理を実行する。
【0006】
第1の観点によれば、開口(O)に関する情報に基づき、対象空間(S)である第1室(R1)の第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、第1室(R1)の第1容積V1と、第2室(R2)の第2容積V2との合計を有効容積Vaとするかを決定できる。したがって、冷媒が漏洩しうる空間の容積を特定でき、安全装置(5)が必要か否かの判断が容易となる。
【0007】
第2の観点の据え付け支援システムは、第1の観点において、前記制御部(130,C8)が、前記第1室(R1)の床面(F)から前記空気調和装置(10)までの高さに基づいて前記第1容積V1および前記第2容積V2に関する情報を取得する。
【0008】
第2の観点によれば、空気調和装置(10)から床面(F)までの範囲を冷媒が漏洩する高さとみなせるので、制御部(130,C8)は、この高さに基づいて第1容積V1および第2容積V2の情報を取得する。
【0009】
第3の観点の据え付け支援システムは、第1または第2の観点において、前記制御部(130,C8)が、前記第1処理において、所定高さ位置よりも低い位置にある開口(O)に基づいて前記有効容積Vaを決定する。
【0010】
第3の観点によれば、制御部(130,C8)は比較的低い位置の開口(O)に基づいて有効容積Vaを決定するので、安全装置(5)の必要性の判断結果の精度を向上できる。冷媒は空気より重く床面(F)付近まで流れ落ちるため、低い位置の開口(O)を流れる可能性が高い。この開口(O)を考慮することで、開口(O)を通じて冷媒が漏洩しうる空間の容積をより精度よく特定できるからである。
【0011】
第4の観点の据え付けシステムは、第1~第3のいずれか1つの観点において、前記制御部(130,C8)は、前記第1処理において、床面(F)に沿って形成される開口(O)に基づいて前記有効容積Vaを決定する。
【0012】
第4の観点によれば、床面(F)に沿って形成される開口(O)に基づいて前記有効容積Vaを決定するので、安全装置(5)の必要性の判断結果の精度を向上できる。冷媒は空気より重く床面(F)付近まで流れ落ちるため、床面(F)に沿って形成される開口(O)を流れる可能性が高い。この開口(O)を考慮することで、開口(O)を通じて冷媒が漏洩しうる空間の容積をより精度よく特定できるからである。
【0013】
第5の観点の据え付けシステムは、第1~4のいずれか1つの観点において、前記制御部(130,C8)は、前記第1処理において、前記開口(O)の有効面積Aが所定値未満である場合に、前記第1容積V1を前記有効容積Vaとし、前記開口(O)の有効面積Aが前記所定値以上である場合に、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を前記有効容積Vaとする。
【0014】
第5の観点によれば、制御部(130,C8)は開口(O)の有効面積Aに基づいて有効容積Vaを決定する。有効面積Aが比較的大きい場合、第1室(R1)の冷媒が第2室(R2)へ流れる可能性が低い。そこで、制御部(130,C8)は有効面積Aが所定値未満である場合、第1容積V1のみを有効容積Vaとする。有効面積Aが比較的小さい場合、第1室(R1)の冷媒が第2室(R2)へ流れる可能性が高い。そこで、制御部(130,C8)は有効面積Aが所定値以上である場合、第1容積V1と第2容積V2の合計を有効容積Vaとする。
【0015】
第6の観点の据え付けシステムは、第5の観点において、前記制御部(130,C8)は、前記第1処理において、前記開口(O)が人の導線上にない場合、該開口の有効面積が小さくなるように補正する、または前記所定値が大きくなるように補正する。
【0016】
第6の観点によれば、開口(O)が人の導線上にない場合、有効容積Vaが第1容積V1のみになり易くなるように、所定値または有効面積Aを補正する。開口(O)が導線上にない場合、この開口(O)が設置物などによって塞がれる可能性が高くなる。この場合、第1室(R1)の冷媒が開口(O)を通じて第2室(R2)に流れる可能性が低くなるからである。
【0017】
第7の観点の据え付けシステムは、第1~第6のいずれか1つの観点において、前記制御部(130,C8)は、建物のレイアウト情報に基づき前記開口(O)に関する情報を取得する。
【0018】
第7の観点によれば、開口(O)に関する情報を容易に取得できる。
【0019】
第8の観点の据え付けシステムは、第1~第7のいずれか1つの観点において、人が前記開口(O)に関する情報を入力する入力部(110)を備える。
【0020】
第8の観点によれば、制御部(130,C8)は、人が入力した開口(O)に関する情報を取得する。
【0021】
第9の観点の空気調和装置(10)の据え付け支援方法は、以下のステップを含む。空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、前記第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、前記第1室(R1)と前記第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得するステップ。前記開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定するステップ。前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定するステップ。
【0022】
第10の観点の空気調和装置の据え付け支援装置は、制御部(130,C8)を備える。制御部(130,C8)は、空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、前記第1室(R1)に隣り合う前記第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、前記第1室(R1)と前記第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得する。制御部(130,C8)は、前記開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定する第1処理を実行する。制御部(130,C8)は、前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、前記第1処理で決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する第2処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態としての据え付け支援システムが用いられる、空気調和装置の概略の配管系統図である。
図2図2は、空気調和装置および安全装置の概略の構成図である。
図3図3は、空気調和システムの概略の構成図である。
図4図4は、安全装置の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、据え付け支援システムの概略の構成図である。
図6図6は、入力部に入力されるデータ、および情報取得部が取得するデータの一例である。
図7図7は、据え付け支援システムが用いられる対象空間を模式的に表した斜視図である。
図8図8は、開口の正面図であり、開口に関する指標を表している。
図9図9は、据え付け支援システムの動作、あるいは据え付け支援方法を示すフローチャートである。
図10図10は、変形例の据え付け支援システムの概略の構成図である。
図11図11は、変形例の据え付け支援システムが用いられる対象空間を模式的に表した斜視図である。
図12図12は、変形例の据え付け支援装置の概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《実施形態》
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解の容易のために必要に応じて寸法、比、または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。
【0025】
(1)据え付け支援システムの概要
本開示の据え付け支援システム(70)は、空気調和装置(10)に安全装置(5)を設けるか否かの判定を支援するシステムである。安全装置(5)は、冷媒漏洩に伴う危険のリスクが高い対象空間(S)に対応して設けられる。安全装置(5)は、冷媒の漏洩を検出するための冷媒センサ(45)と、冷媒センサ(45)の検出信号に基づき、冷媒の漏洩の対策を講じる対策装置とを含む。対策装置は、遮断装置(50)、換気装置(55)、および警報装置(60)の少なくとも1つを含む。
【0026】
(2)空気調和装置の全体構成
据え付け支援システム(70)による判定の対象となる空気調和装置(10)について説明する。以下に説明する空気調和装置(10)には、詳細は後述する据え付け支援システム(70)の判定結果に基づき、安全装置(5)が設けられている。図1は、空気調和装置(10)の配管系統図である。図2は、空気調和装置(10)の基本要素を示す概略の構成図である。図2では、第2利用ユニット(30B)の図示は省略している。
【0027】
空気調和装置(10)は、空調の対象空間(S)の空気の温度を調節する。本例の対象空間(S)は、ビルなどの室内空間である。空気調和装置(10)は、対象空間(S)の冷房や暖房を行う。空気調和装置(10)は、複数の利用ユニット(30)を有するマルチ式である。空気調和装置(10)は、熱源ユニット(20)、複数の利用ユニット(30)、連絡配管(12)、および空調制御部(AC)を有する。複数の利用ユニット(30)と熱源ユニット(20)とは、連絡配管(12)を介して互いに接続される。この接続により、閉回路である冷媒回路(11)が構成される。
【0028】
(2-1)冷媒回路
冷媒回路(11)は、熱源ユニット(20)に設けられる熱源回路(20a)と、各利用ユニット(30)にそれぞれ設けられる利用回路(30a)とを含む。
【0029】
冷媒回路(11)には、微燃性の冷媒が充填される。本例の微燃性の冷媒は、R32(ジフルオロメタン)である。R32はGWP(Global Warming Potential,地球温暖化係数)が比較的低いが、微燃性を有する。このため、冷媒が対象空間(S)に漏洩し、対象空間(S)の冷媒濃度が高くなると冷媒が燃焼してしまう可能性がある。冷媒の密度は空気の密度よりも大きい。したがって、冷媒が対象空間(S)に漏れると、冷媒は対象空間(S)の下部へ流れる。
【0030】
(2-2)連絡配管
連絡配管(12)は、第1連絡配管(13)と第2連絡配管(14)とを含む。
【0031】
第1連絡配管(13)は、液連絡配管である。第1連絡配管(13)は、第1主管(13a)と、第1主管(13a)から分岐する複数の第1分岐管(13b)とを含む。第1主管(13a)の一端は、液閉鎖弁である第1閉鎖弁(15)を介して熱源回路(20a)に接続する。複数の第1分岐管(13b)のそれぞれの一端は、第1主管(13a)と接続する。複数の第1分岐管(13b)のそれぞれの他端は、対応する利用回路(30a)に接続する。
【0032】
第2連絡配管(14)は、ガス連絡配管である。第2連絡配管(14)は、第2主管(14a)と、第2主管(14a)から分岐する複数の第2分岐管(14b)とを含む。第2主管(14a)の一端は、ガス閉鎖弁である第2閉鎖弁(16)を介して熱源ユニット(20)に接続する。複数の第2分岐管(14b)のそれぞれの一端は、第2主管(14a)と接続する。複数の第2分岐管(14b)のそれぞれの他端は、対応する利用ユニット(30)に接続する。
【0033】
(2-3)熱源ユニット
熱源ユニット(20)は、室外に配置される室外ユニットである。熱源ユニット(20)は、例えばビルなどの屋上や地上に配置される。
【0034】
熱源ユニット(20)は、圧縮機(21)、熱源熱交換器(22)、および熱源ファン(23)を有する。熱源ユニット(20)は、冷媒の流路を切り換える切換機構(24)と、熱源膨張弁(25)とを有する。
【0035】
圧縮機(21)は、吸入した冷媒を圧縮する。圧縮機(21)は、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(21)は、スクロール式、揺動ピストン式、ローリングピストン式、スクリュー式などの回転式圧縮機である。圧縮機(21)は、インバータ装置により運転周波数(回転数)が可変に構成される。
【0036】
熱源熱交換器(22)は、室外熱交換器である。熱源熱交換器(22)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。熱源熱交換器(22)は、その内部を流れる冷媒と室外空気とを熱交換させる。
【0037】
熱源ファン(23)は、室外において熱源熱交換器(22)の近傍に配置される。本例の熱源ファン(23)は、プロペラファンである。熱源ファン(23)は、熱源熱交換器(22)を通過する空気を搬送する。
【0038】
切換機構(24)は、冷房サイクルである第1冷凍サイクルと、暖房サイクルである第2冷凍サイクルとを切り換えるように、冷媒回路(11)の流路を変更する。切換機構(24)は、四方切換弁である。切換機構(24)は、第1ポート、第2ポート、第3ポート、および第4ポートを有する。切換機構(24)の第1ポートは、圧縮機(21)の吐出部と繋がる。切換機構(24)の第2ポートは、圧縮機(21)の吸入部と繋がる。切換機構(24)の第3ポートは、第2閉鎖弁(16)を介して第2連絡配管(14)と繋がる。切換機構(24)の第4ポートは、熱源熱交換器(22)のガス端と繋がる。
【0039】
切換機構(24)は、第1状態と第2状態とに切り換わる。第1状態(図1の実線で示す状態)の切換機構(24)は、第1ポートと第4ポートとを連通し且つ第2ポートと第3ポートとを連通する。第2状態(図1の破線で示す状態)の切換機構(24)は、第1ポートと第3ポートとを連通し、第2ポートと第4ポートとを連通する。
【0040】
熱源膨張弁(25)は、冷媒を減圧する。熱源膨張弁(25)は、室外膨張弁である。熱源膨張弁(25)は、熱源回路(20a)において、第1閉鎖弁(15)と熱源熱交換器(22)の間に配置される。熱源膨張弁(25)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。
【0041】
熱源ユニット(20)は、空調制御部(AC)に含まれる第1制御装置(C1)を有する。
【0042】
(2-4)利用ユニット
本例の複数の利用ユニット(30)は、第1利用ユニット(30A)と、第2利用ユニット(30B)とを含む。利用ユニット(30)の数は、3つ以上であってもよい。第1利用ユニット(30A)および第2利用ユニット(30B)の構成は、基本的に同じある。以下では、便宜上、第1利用ユニット(30A)および第2利用ユニット(30B)を単に利用ユニット(30)と述べる場合がある。
【0043】
利用ユニット(30)は、ビルなどの室内に設置される室内ユニットである。ここでいう「室内」は、天井パネルの裏側の空間を含む意味である。本例の利用ユニット(30)は、天井設置式である。ここでいう「天井設置式」は、利用ユニット(30)が吊り下げられる天井吊り下げ式、および利用ユニット(30)が天井面の開放部に配置される天井埋め込み式を含む意味である。
【0044】
利用ユニット(30)は、利用膨張弁(31)、利用熱交換器(32)、および利用ファン(33)を有する。
【0045】
利用膨張弁(31)は、冷媒を減圧する。利用膨張弁(31)は、室内膨張弁である。利用膨張弁(31)は、利用回路(30a)における利用熱交換器(32)の液側の流路に配置される。利用膨張弁(31)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。
【0046】
利用熱交換器(32)は、室内熱交換器である。利用熱交換器(32)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。利用熱交換器(32)は、その内部を流れる冷媒と室内空気とを熱交換させる。
【0047】
利用ファン(33)は、室内において利用熱交換器(32)の近傍に配置される。本例の利用ファン(33)は、遠心ファンである。利用ファン(33)は、利用熱交換器(32)を通過する空気を搬送する。
【0048】
利用ユニット(30)は、空調制御部(AC)に含まれる第2制御装置(C2)を有する。各利用ユニット(30)の第2制御装置(C2)と、第1制御装置(C1)とは、第1通信線(W1)を介して互いに接続される。第1通信線(W1)は、有線または無線である。
【0049】
(2-5)リモートコントローラ
空気調和装置(10)は、リモートコントローラ(40)を有する。本例のリモートコントローラ(40)は、対応する利用ユニット(30)のそれぞれに1つずつ設けられる。リモートコントローラ(40)は、空気調和装置(10)を操作するための機器である。図2に示すように、リモートコントローラ(40)は、機能部としての第1操作部(41)および第1表示部(42)を有する。なお、ここでいう、あるいは以下で述べる「機能部」という用語は、ハードウェアのみによって実現される機能部、ソフトウェアのみによって実現される機能部、およびハードウェアとソフトウェアとが協調して実現される機能部を含む。
【0050】
第1操作部(41)は、人が空気調和装置(10)に対する各種の指示を入力するための機能部である。第1操作部(41)は、スイッチ、ボタン、またはタッチパネルを含む。
【0051】
第1表示部(42)は、空気調和装置(10)に対する設定内容や、空気調和装置(10)の状態を表示する機能部である。第1表示部(42)は、ディスプレイを含む。
【0052】
リモートコントローラ(40)は、空調制御部(AC)に含まれる第3制御装置(C3)を有する。第3制御装置(C3)と第2制御装置(C2)とは、第2通信線(W2)を介して互いに接続される。第2通信線(W2)は有線または無線である。
【0053】
(2-6)冷媒センサ
図1に示す例の空気調和装置(10)は、冷媒センサ(45)を有する。冷媒センサ(45)は、安全装置(5)が必要と判断された対象空間(S)に対応して設けられる。本例では、詳細は後述するように、第1対象空間(S1)に対応する安全装置(5)が必要と判断されたとする。この場合、冷媒センサ(45)は、第1対象空間(S1)に配置される。
【0054】
冷媒センサ(45)は、半導体方式のセンサである。冷媒センサ(45)は、漏洩した冷媒の濃度が高くなるほど、強度(例えば電流値)の大きな検出信号を出力する。冷媒センサ(45)は、半導体方式に限られず、例えば赤外線方式などの他の方式であってもよい。
【0055】
冷媒センサ(45)と、第1利用ユニット(30A)の第2制御装置(C2)とは、第3通信線(W3)によって互いに接続される。第3通信線(W3)は、有線または無線である。冷媒センサ(45)から出力された検出信号は第3通信線(W3)を介して第2制御装置(C2)に入力される。
【0056】
(2-7)遮断装置
空気調和装置(10)は、対策装置としての遮断装置(50)を有する。遮断装置(50)は、安全装置(5)が必要と判断された対象空間(S)に対応して設けられる。本例では、第1対象空間(S1)、あるいは第1利用ユニット(30A)に対応して遮断装置(50)が設けられる。遮断装置(50)は、第1遮断弁(51)および第2遮断弁(52)を有する。
【0057】
第1遮断弁(51)は、液側遮断弁である。本例の第1遮断弁(51)は、第1利用ユニット(30A)に接続する第1分岐管(13b)に設けられる。第1遮断弁(51)は、例えば電磁弁や電動弁などの開閉弁である。
【0058】
第2遮断弁(52)は、ガス側遮断弁である。本例の第2遮断弁(52)は、第1利用ユニット(30A)に接続する第2分岐管(14b)に設けられる。第2遮断弁(52)は、例えば電磁弁や電動弁などの開閉弁である。
【0059】
遮断装置(50)は、空調制御部(AC)に含まれる第4制御装置(C4)を有する。第4制御装置(C4)と、第1利用ユニット(30A)の第2制御装置(C2)とは、第4通信線(W4)を介して互いに接続される。第4通信線(W4)は、有線または無線である。
【0060】
(2-8)換気装置
空気調和装置(10)は、対策装置としての換気装置(55)を有する。換気装置(55)は、安全装置(5)が必要と判断された対象空間(S)に対応して設けられる。本例では、第1対象空間(S1)、あるいは第1利用ユニット(30A)に対応して換気装置(55)が設けられる。遮断装置(50)は、換気ファン(56)を有する。換気ファン(56)は、対象空間(S)の空気を、排気路(図示省略)を介して室外に排出する。
【0061】
換気装置(55)は、空調制御部(AC)に含まれる第5制御装置(C5)を有する。第5制御装置(C5)と、第1利用ユニット(30A)の第2制御装置(C2)とは、第5通信線(W5)を介して互いに接続される。第5通信線(W5)は、有線または無線である。
【0062】
(2-9)警報装置
空気調和装置(10)は、対策装置としての警報装置(60)を有する。警報装置(60)は、安全装置(5)が必要と判断された対象空間(S)に対応して設けられる。本例では、第1対象空間(S1)、あるいは第1利用ユニット(30A)に対応して警報装置(60)が設けられる。警報装置(60)は、警報器あるいは報知部としての、発光部(61)および音発生部(62)を有する。発光部(61)は、冷媒漏洩を光によって人に知らせる。発光部(61)は、例えばLEDである。音発生部(62)は、冷媒漏洩を音によって人に知らせる。音発生部(62)は、例えばスピーカである。
【0063】
警報装置(60)は、空調制御部(AC)に含まれる第6制御装置(C6)を有する。第6制御装置(C6)と、第1利用ユニット(30A)の第2制御装置(C2)とは、第6通信線(W6)を介して互いに接続される。第6通信線(W6)は、有線または無線である。
【0064】
(2-10)空調制御部
空調制御部(AC)は、空気調和装置(10)の動作を制御する。空調制御部(AC)は、第1制御装置(C1)、第2制御装置(C2)、第3制御装置(C3)、第4制御装置(C4)、第5制御装置(C5)、第6制御装置(C6)、第1通信線(W1)、第2通信線(W2)、第3通信線(W3)、第4通信線(W4)、第5通信線(W5)、および第6通信線(W6)を含む。第1制御装置(C1)、第2制御装置(C2)、第3制御装置(C3)、第4制御装置(C4)、第5制御装置(C5)、および第6制御装置(C6)のそれぞれは、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0065】
第1制御装置(C1)は、熱源制御部である。第1制御装置(C1)は、圧縮機(21)、熱源膨張弁(25)、熱源ファン(23)を制御する。
【0066】
第2制御装置(C2)は、利用制御部である。第2制御装置(C2)は、利用膨張弁(31)および利用ファン(33)を制御する。第2制御装置(C2)は、冷媒センサ(45)の検出信号を入力する。第2制御装置(C2)は、冷媒センサ(45)の検出信号に基づき、冷媒が漏洩していることを示す第1条件が成立するか否かを判定する。第2制御装置(C2)は、第1条件が成立すると、対策装置を作動させるための信号を出力する。
【0067】
第3制御装置(C3)は、第1操作部(41)の入力に基づく指示を第2制御装置(C2)に出力する。第3制御装置(C3)は、第1操作部(41)の入力に応じて第1表示部(42)に所定の情報を表示させる。
【0068】
第4制御装置(C4)は、第1遮断弁(51)および第2遮断弁(52)の開閉状態を制御する。第2制御装置(C2)から出力された信号が第4制御装置(C4)に入力されると、第4制御装置(C4)は第1遮断弁(51)および第2遮断弁(52)を閉じる。
【0069】
第5制御装置(C5)は、換気ファン(56)を制御する。第2制御装置(C2)から出力された信号が第5制御装置(C5)に入力されると、第5制御装置(C5)は換気ファン(56)を運転させる。
【0070】
第6制御装置(C6)は、報知部を制御する。第2制御装置(C2)から出力された信号が第6制御装置(C6)に入力されると、第6制御装置(C6)は、発光部(61)および音発生部(62)を作動させる。
【0071】
(3)空気調和システム
図3に示すように、上述した空気調和装置(10)は、1つの冷媒回路(11)を有する1系統の装置である。ビルなどにおいては、複数の系統の空気調和装置(10)を含む空気調和システム(1)が構成される。空気調和システム(1)は、複数の空気調和装置(10)と、集中監視装置(65)とを有する。
【0072】
集中監視装置(65)は、機能部としての第2操作部(66)および第2表示部(67)を有する。
【0073】
第2操作部(66)は、人(管理者など)が各空気調和装置(10)に対する各種の指示を入力するための機能部である。第2操作部(66)は、スイッチ、ボタン、またはタッチパネルを含む。
【0074】
第2表示部(67)は、各空気調和装置(10)に対する設定内容や、各空気調和装置(10)の状態を表示する機能部である。第2表示部(67)は、ディスプレイを含む。
【0075】
集中監視装置(65)は、第7制御装置(C7)を有する。第7制御装置(C7)と、各空気調和装置(10)の空調制御部(AC)とは、第7通信線(W7)を介して互いに接続される。第7通信線(W7)は有線または無線である。
【0076】
第7制御装置(C7)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0077】
(4)運転動作
空気調和装置(10)の運転動作について図1を参照しながら説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。なお、図1では、冷房運転時の冷媒の流れを実線矢印で示し、暖房運転時の冷媒の流れを破線矢印で示している。
【0078】
(4-1)冷房運転
冷房運転では、第1制御装置(C1)が圧縮機(21)および熱源ファン(23)を運転させ、切換機構(24)を第1状態とし、熱源膨張弁(25)を全開とする。第2制御装置(C2)が利用ファン(33)を運転させ、利用膨張弁(31)を所定開度に調節する。通常の冷房運転時において、第1遮断弁(51)および第2遮断弁(52)は開状態となる。
【0079】
冷房運転時の冷媒回路(11)は、第1冷凍サイクルを行う。第1冷凍サイクルでは、熱源熱交換器(22)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、利用熱交換器(32)が蒸発器として機能する。
【0080】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、熱源熱交換器(22)を流れる。熱源熱交換器(22)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。熱源熱交換器(22)で凝縮した冷媒は、第1連絡配管(13)を流れ、各利用回路(30a)に分流する。各利用回路(30a)では、冷媒が利用膨張弁(31)で減圧された後、利用熱交換器(32)を流れる。利用熱交換器(32)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。各利用熱交換器(32)で蒸発した冷媒は、第2連絡配管(14)で合流した後、圧縮機(21)に吸入される。
【0081】
(4-2)暖房運転
暖房運転では、第1制御装置(C1)が圧縮機(21)および熱源ファン(23)を運転させ、切換機構(24)を第2状態とし、熱源膨張弁(25)を所定開度に調節する。第2制御装置(C2)が利用ファン(33)を運転させ、利用膨張弁(31)を所定開度に調節する。通常の暖房運転時において、第1遮断弁(51)および第2遮断弁(52)は開状態となる。
【0082】
暖房運転時の冷媒回路(11)は、第2冷凍サイクルを行う。第2冷凍サイクルでは、利用熱交換器(32)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、熱源熱交換器(22)が蒸発器として機能する。
【0083】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、第2連絡配管(14)を流れ、各利用回路(30a)に分流する。各利用回路(30a)では、冷媒が利用熱交換器(32)を流れる。利用熱交換器(32)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。各利用熱交換器(32)で凝縮した冷媒は、各利用膨張弁(31)で減圧されたのち、第1連絡配管(13)で合流する。第1連絡配管(13)の冷媒は、熱源膨張弁(25)で減圧された後、熱源熱交換器(22)を流れる。熱源熱交換器(22)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。熱源熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。
【0084】
(5)冷媒漏洩時の動作
冷媒漏洩時の空気調和装置(10)の動作について図4を参照しながら説明する。
【0085】
第1利用ユニット(30A)から冷媒が漏洩すると、漏洩した冷媒は第1対象空間(S1)に流れる。具体的には、冷媒の密度は空気の密度より大きいため、冷媒は第1対象空間(S1)の下方へ流れる。その結果、第1対象空間(S1)の冷媒の濃度が徐々に高くなる。
【0086】
ステップS11において、冷媒センサ(45)は冷媒の漏洩を検出する。冷媒センサ(45)の検出値は、第3通信線(W3)を介して、第1利用ユニット(30A)の第2制御装置(C2)に入力される。
【0087】
ステップS12において、第2制御装置(C2)は、冷媒センサ(45)の検出信号に基づき、冷媒が漏洩していることを示す第1条件が成立するか否かを判定する。第1条件は、冷媒センサ(45)の検出値(例えば電流値)が所定値以上であるかである。第2制御装置(C2)は、第1条件が成立すると、対策装置を作動させる信号を出力する。
【0088】
第2制御装置(C2)から出力された信号が対策装置に入力されると、ステップS13において、対策装置が作動する。具体的には、ステップS13において、第2制御装置(C2)から出力された信号が第4制御装置(C4)に入力されると、第4制御装置(C4)は、遮断装置(50)の第1遮断弁(51)および第2遮断弁(52)を閉じる。ステップS13において、第2制御装置(C2)から出力された信号が第5制御装置(C5)に入力されると、第5制御装置(C5)は、換気ファン(56)を運転させる。ステップS13において、第2制御装置(C2)から出力された信号が第6制御装置(C6)に入力されると、第6制御装置(C6)は、報知部を作動させる。より詳細には、第6制御装置(C6)は、発光部(61)から光を発生させる。加えて、第6制御装置(C6)は、音発生部(62)から警告音などの音を発生させる。
【0089】
以上の動作により、1つの系統の空気調和装置(10)の冷媒回路(11)の冷媒が、第1対象空間(S1)に漏れることを抑制できる。
【0090】
(6)据え付け支援システムの概要
据え付け支援システム(100)は、空気調和装置(10)の据え付けの設計時に用いられる。据え付け支援システム(100)は、空気調和装置(10)の実際の据え付け時に用いられてもよい。設計業者、施工業者、管理者などのユーザが据え付け支援システム(100)を利用する。ユーザは据え付け支援システム(100)の判定結果に基づき、対象空間(S)に対応する安全装置(5)を取り付けるか否かを判断する。
【0091】
据え付け支援システム(100)は、空気調和装置(10)の使用冷媒量Mと、対象空間(S)の有効容積Vaに基づいて安全装置(5)を設けるか否かを判定する。据え付け支援システム(100)は、使用冷媒量M(kg)と有効容積Va(m)との比率M/Va(kg/m)が所定値より高い場合に、安全装置(5)を設ける必要があると判断する。比率M/Vaは、空間における冷媒濃度を意味する。したがって、比率M/Vaが高いと、冷媒の発火のリスクが高くなる。
【0092】
対象空間(S)が開口(O)を通じて隣接する空間と繋がっている場合、この空間の容積を有効容積Vaに含むか否かの判断が必要となる。そこで、本実施形態の据え付け支援システム(100)は、開口(O)に関する情報に基づき、対象空間(S)のみの容積を有効容積とするか、対象空間(S)の容積と該対象空間(S)に隣接する空間の容積の合計を有効容積Vaとするかを決定する。
【0093】
図5に示すように、据え付け支援システム(100)は、端末装置(110)とサーバ装置(120)とを有する。端末装置(110)とサーバ装置(120)とはインターネットなどの通信回線(101)を介して互いに接続される。サーバ装置(120)は、サーバ制御部(130)を有する。
【0094】
(6-1)端末装置
端末装置(110)は、本開示の入力部に対応する。端末装置(110)は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末などのユーザが使用する端末である。端末装置(110)は、機能部としての第3操作部(111)および第3表示部(112)を有する。
【0095】
第3操作部(111)は、ユーザが必要な情報を入力するための機能部である。第3操作部(111)は、キーボード、タッチパッド、マウス、またはタッチパネルを含む。
【0096】
第3表示部(112)は、据え付け支援用のアプリケーションを表示する機能部である。第3表示部は、ディスプレイを含む。
【0097】
端末装置(110)は、第8制御装置(C8)を含む。第8制御装置(C8)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0098】
(6-2)入力データ
図6に示すように、本実施形態では、ユーザが端末装置(110)に以下のデータを入力可能である。このデータは、サーバ制御部(130)に取得されるデータにも対応する。入力されるデータは、空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報、第1室(R1)の第1容積V1に関する情報、第2室(R2)の第2容積V2に関する情報、開口(O)に関する情報を含む。
【0099】
図7に模式的に示すように、第1室(R1)は、安全装置(5)が設けられる否かを判定する対象空間(S)である。第1室(R1)には、対象空間(S)を空調する利用ユニット(30)が設けられる。第2室(R2)は、壁(W)を隔てて第1室(R1)と隣接する空間である。第1室(R1)と第2室(R2)とは壁(W)に形成される開口(O)を通じて繋がる。
【0100】
開口(O)は、第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ扉の通路、第1室(R1)と第2室(R2)を仕切るパーティションと床面(F)との間の隙間、第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ通気口などを含む。
【0101】
空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報は、対象空間(S)に対応する空気調和装置(10)の冷媒回路(11)に充填される全体の冷媒量(kg)である。言い換えると、冷媒量は、冷媒回路(11)の冷媒が対象空間(S)に全て漏洩した場合に、対象空間(S)に漏洩した冷媒量である。
【0102】
第1室(R1)の第1容積V1に関する情報は、第1室(R1)の床面積F1と有効高さHaとを含む。第2室(R2)の第2容積V2に関する情報は、第2室(R2)の床面積F2と有効高さHaとを含む。
【0103】
本例の有効高さHaは、第1室(R1)の床面(F)から空気調和装置(10)の利用ユニット(30)までの鉛直方向の距離である。したがって、図7に模式的に示すように、利用ユニット(30)が天井埋め込み式である場合、有効高さHaは実質的には天井面(Cp)の高さに相当する。よって、この場合、入力データは、有効高さHaとしての天井面(Cp)の高さであってもよい。
【0104】
開口(O)に関する情報は、開口(O)の寸法、開口(O)の高さ位置、開口(O)の種別を含む。
【0105】
開口(O)の寸法は、開口(O)の幅Wo、および開口(O)の高さHoを含む。開口(O)の寸法は、開口(O)の通過方向の奥行き長さを含まない。
【0106】
開口(O)の高さ位置は、開口(O)の上端(上辺)の高さ位置h1、および開口(O)の下端(下辺)の位置h2を含む。高さ位置h1は、床面(F)から開口(O)の上端までの鉛直方向の距離である。高さ位置h2は、床面(F)から開口(O)の下端までの鉛直方向の距離である。開口(O)が床面(F)まで延びている場合、高さ位置h2はゼロになる。
【0107】
開口(O)の種別は、開口(O)が人の導線上にあるか否かの情報を含む。例えば扉の開口(O)は人が通るが、パーティションの下側の隙間や通気口は人が通らない。したがって、開口(O)が扉の開口である場合、開口(O)の種別は「人の導線上にある」となる。開口(O)がパーティションの隙間や通気口である場合、開口(O)の種別は「人の導線上にない」となる。
【0108】
第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)が2つ以上ある場合、ユーザは、複数の開口(O)毎における上述した情報をデータとしてそれぞれ入力する。
【0109】
ユーザが入力した以上のデータは、通信回線(101)を介してサーバ装置(120)へ送信される。
【0110】
(6-3)サーバ制御部の全体構成
サーバ制御部(130)は、本開示の制御部に対応する。サーバ制御部(130)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。メモリには、空気調和装置(10)の据え付け支援用のプログラムが記憶される。
【0111】
図5に示すように、サーバ制御部(130)は、機能部として、プログラム送信部(131)と、情報取得部(140)と、決定部(150)と、安全対策判定部(160)と、判定結果出力部(170)とを有する。
【0112】
プログラム送信部(131)は、端末装置(110)からサーバ装置(120)のアクセスに対応して、端末装置(110)に入力プログラムを送信する。端末装置(110)は、受信したプログラムに応じて、据え付け支援用のアプリケーションを実行する。ユーザは、アプリケーション上において、上述した入力データを、第3操作部(111)を用いて手動で入力する。
【0113】
(6-4)情報取得部
情報取得部(140)は、対象空間(S)に対応する安全装置(5)を据え付けるか否かを判定するための情報を取得する。本例の情報取得部(140)は、端末装置(110)から出力されたデータ(図6に示す入力データに相当)を受信し、これらの情報を取得する。
【0114】
情報取得部(140)は、機能部として、冷媒情報取得部(141)、容積情報取得部(142)、および開口情報取得部(143)とを有する。
【0115】
冷媒情報取得部(141)は、使用冷媒量Mに関する情報を取得する。具体的には、冷媒情報取得部(141)は、対象空間(S)に対応する空気調和装置(10)の冷媒回路(11)に充填される全体の冷媒量(kg)を取得する。
【0116】
容積情報取得部(142)は、第1室(R1)の第1容積V1に関する情報を取得する。具体的には、容積情報取得部(142)は、第1室(R1)の床面積F1、および有効高さHaを取得する。本例の容積情報取得部(142)は、第1室(R1)の床面積F1と有効高さHaを乗算し、第1容積V1(m)を取得する。本例の第1容積V1は、第1室(R1)の実際の容積ではない。
【0117】
なお、ユーザが第1容積V1を入力データとして端末装置(110)に入力し、容積情報取得部(142)が第1容積V1を直接的に取得してもよい。
【0118】
容積情報取得部(143)は、第2室(R2)の第2容積V2に関する情報を取得する。具体的には、容積情報取得部(143)は、第2室(R2)の床面積F2、および有効高さHaを取得する。容積情報取得部(143)は、第2室(R2)の床面積F2と有効高さHaを乗算し、第2容積V2([m3])を取得する。本例の第2容積V2は、第2室(R2)の実際の容積ではない。
【0119】
なお、ユーザが第2容積V2を入力データとして端末装置(110)に入力し、容積情報取得部(142)が第1容積V1を直接的に取得してもよい。
【0120】
開口情報取得部(143)は、開口(O)に関する情報を取得する。具体的には、開口情報取得部(143)は、開口(O)の寸法、開口(O)の高さ位置、開口(O)の種別を取得する。開口(O)の寸法は、開口(O)の幅Wo、および開口(O)の高さHoを含む。開口(O)の高さ位置は、開口(O)の上端の高さ位置h1、および開口(O)の下端の高さ位置h2を含む。開口(O)の種別は、開口(O)が人の導線上にあるか否かの情報を含む。
【0121】
(6-5)決定部の概要
決定部(150)は、開口(O)に関する情報に基づき、第1室(R1)の第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、第1室(R1)の第1容積V1と第2室(R2)の第2容積V2のとの合計を有効容積Vaとするかを決定する。具体的には、決定部(150)は、開口(O)の有効面積Aが所定値未満である場合に、第1容積V1を有効容積Aとし、開口(O)の有効面積Aが所定値以上である場合に、第1容積V1と第2容積V2の合計を有効容積Vaとする。
【0122】
開口(O)の有効面積Aが小さければ、第1室(R1)に漏洩した冷媒が開口(O)を通じて第2容積V2に流れる可能性が低くなる。このため、第1容積V1と第2容積V2の合算値を有効容積Vaとすると、冷媒漏洩に対する十分な対策ができないからである。
【0123】
決定部(150)は、機能部として、有効面積決定部(151)と、比較判定部(152)と、補正部(153)とを有する。
【0124】
(6-6)有効面積決定部
有効面積決定部(151)は、開口(O)の有効面積Aを決定する。本例の有効面積Aは開口(O)の実際の面積ではない。有効面積決定部(151)は、以下の条件に基づき、開口(O)の有効面積を決定する。この点について図8を参照しながら説明する。
【0125】
条件a)有効面積決定部(151)は、第1高さ位置hs1と同じ、または低い位置にある開口(O)に基づいて有効面積Aを決定する。第1高さ位置h1は、例えば床面(F)を基準として30cmの高さ位置である。有効面積決定部(151)は、第1高さ位置hs1より高い位置の開口(O)を有効面積Aの算出対象から除外する。
【0126】
例えば開口(O)の全体が第1高さ位置hs1より低い位置にある場合、有効面積決定部(151)は、開口(O)の全部の面積を有効面積Aとする。開口(O)の一部が第1高さhs1より低い位置にある場合、有効面積決定部(151)は、この一部の面積を有効面積Aとする。
【0127】
開口(O)の全体が第1高さ位置hs1より高い位置にある場合、有効面積決定部(151)は、開口(O)の全部の面積を有効面積Aの算出対象から除外する。開口(O)の一部が第1高さhs1より高い位置にある場合、有効面積決定部(151)は、この一部の面積を有効面積Aの算出対象から除外する。開口(O)が第1高さhs1より高い位置にある場合、冷媒がこの開口(O)を流れる可能性が低いためである。
【0128】
条件b)図8に示すように、第1高さ位置hs1と同じ、または低い位置の開口(O)の面積(図8のハッチングを付した領域の面積)をA1とする。この領域の開口(O)において、第2高さ位置hs2と同じ、または低い部分の面積(図8の破線で囲んだ領域の面積)をA2とする。第2高さ位置hs2は第1高さ位置hs1よりも低い。第2高さ位置hs2は、例えば床面(F)を基準として20cmの高さ位置である。
【0129】
A2がA1の所定比率(例えば50%)以上でない場合、有効面積決定部(151)は、この開口(O)自体を有効面積Aの算出対象から除外する。A1に対するA2の割合が小さい場合、漏洩した冷媒がこの開口(O)を流れる可能性が低くなるからである。
【0130】
条件c)有効面積決定部(151)は、床面(F)に沿って形成される開口(O)に基づいて有効面積Aを決定する。有効面積決定部(151)は、開口(O)の下端の高さ位置h2が第3高さ位置h3と同じ、または低い位置にある場合、この開口(O)に基づいて有効面積Aを算出する。第3高さ位置hs3は第2高さ位置hs2よりも低い。第3高さ位置hs3は、例えば床面(F)を基準として10cmの高さ位置である。
【0131】
言い換えると、有効面積決定部(151)は、開口(O)の下端の高さ位置h2が第3高さh3より高い位置にある場合、この開口(O)自体を有効面積Aの算出対象から除外する。開口(O)の下端の高さ位置h2が比較的高い位置にある場合、漏洩した冷媒がこの開口(O)を流れる可能性が低くなるからである。
【0132】
有効面積決定部(151)は、以上の条件に即して開口(O)の有効面積Aを算出する。有効面積決定部(151)は、a)~c)の条件により算出対象から除外されない開口(O)について、その幅(Wo)と高さとを乗算し、有効面積Aを算出する。
【0133】
第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)が複数ある場合、有効面積決定部(151)は、各開口(O)について、a)~c)の条件に即して算出対象か否かを判定する。算出対象である開口(O)が複数ある場合、有効面積決定部(151)は、各開口(O)の面積をそれぞれ算出し、これらの合計を有効面積とする。
【0134】
(6-7)比較判定部
比較判定部(152)は、有効面積決定部(151)で決定した有効面積Aと、所定の第1基準値B1とを比較する。比較判定部(152)は、有効面積Aが第1基準値B1未満である場合に、第1室(R1)の第1容積V1のみを有効容積Vaとする。比較判定部(152)は、有効面積Aが第1基準値B1以上である場合に、第1室(R1)の第1容積V1と第2室(R2)の第2容積V2との合計を有効容積Vaとする。
【0135】
(6-8)補正部
補正部(153)は、開口(O)の種別に関するデータに基づき第1基準値B1を補正する。第1基準値B1の補正は、比較判定部(152)の判定の前に行われる。
【0136】
具体的には、開口(O)の種別が「人の導線上にない開口」である場合、補正部(153)は第1基準値B1を大きく補正する。開口(O)が人の導線上にない場合、この開口(O)が床面(F)の設置物により塞がれる可能性がある。この場合、冷媒が開口(O)を流れる可能性が低くなる。補正部(153)により第1基準値B1を大きく補正することで、有効容積Vaが第1容積V1のみになり易くなる。
【0137】
開口(O)の種別が「人の導線上にない開口」である場合、補正部(153)は、有効面積決定部(151)で決定した有効面積Aを小さく補正してもよい。
【0138】
(6-9)安全対策判定部
安全対策判定部(160)は、情報取得部(140)が取得した使用冷媒量Mと、決定部(150)で決定した有効容積Vaとに基づいて、対象空間(S)に対応する安全装置(5)が必要か否かを判定する。具体的には、安全対策判定部(160)は、使用冷媒量Mを有効容積Vaで除し、比率M/Vaを求める。安全対策判定部(160)は、比率M/Vaが所定の第2基準値B2以上である場合、安全装置(5)が必要と判断する。安全対策判定部(160)は、比率M/Vaが所定の第2基準値B2未満である場合、安全装置(5)が不要と判断する。
【0139】
(6-10)判定結果出力部
判定結果出力部(170)は、安全対策判定部(160)で得られた判定結果に関するデータを、通信回線(101)を介して端末装置(110)へ出力する。端末装置(110)がこのデータを受信すると、第3表示部(112)において判定結果が表示される。サーバ装置(120)において安全装置(5)が必要と判断された場合、端末装置(110)の第3表示部(112)には、安全装置(5)が必要であることを示す情報が表示される。サーバ装置(120)において安全装置(5)が不要と判断された場合、端末装置(110)の第3表示部(112)には、安全対策(5)が不要であることを示す情報が表示される。これらの情報は、文字、記号、アイコン、図形などを含む。
【0140】
(7)据え付け支援方法
据え付け支援システム(100)による据え付け支援方法について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0141】
ユーザは、端末装置(110)にデータを入力する。ステップS21において、情報取得部(140)は、端末装置(110)から出力された入力データを取得する。具体的には、情報取得部(140)は、第1容積V1、第2容積V2、開口(O)に関する情報を取得する。本例では、ステップS22において、情報取得部(140)は、空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報を取得する。
【0142】
ステップS23において、補正部(153)は開口(O)の種別に基づき、第1基準値B1を補正するか否かを判定する。具体的には、補正部(153)は、開口(O)が導線上にない場合(ステップS23のYES)、開口(O)を大きく補正する(ステップS24)。
【0143】
有効面積決定部(151)は、上述した条件に即して開口(O)の有効面積Aを決定する。ステップS25において、比較判定部(152)は、有効面積Aが第1基準値B1以上であるか否かを判定する。有効面積Aが第1基準値B1以上である場合(ステップS25のYES)、ステップS26において、比較判定部(152)は、第1室(R1)の第1容積V1と第2室(R2)の第2容積V2との合計を有効容積Vaとする。有効面積Aが第1基準値B1未満である場合(ステップS25のNO)、ステップS27において、比較判定部(152)は、第1室(R1)の第1容積V1のみを有効容積Vaとする。
【0144】
ステップS28において、安全対策判定部(160)は、M/Vaが第2基準値B2以上であるか否かを判定する。M/Vaが第2基準値M2以上である場合(ステップS28のYES)、ステップS29において、安全対策判定部(160)は、対象空間(S)に対応する安全装置(5)が必要と判定する。M/Vaが第2基準値M2未満である場合(ステップS28のNO)、安全対策判定部(160)は、対象空間(S)に対応する安全装置(5)が不要と判定する(ステップS30)。
【0145】
ステップS31において、判定結果出力部(170)は、安全対策判定部(160)で得られた判定結果を端末装置(110)に出力する。端末装置(110)の第3表示部(112)は、この判定結果を表示する。ユーザは、この判定結果に基づき対象空間(S)に対応する安全装置(5)が必要か否かを知ることができる。安全装置(5)が必要と判断された場合、ユーザは、対象空間(S)に対応する安全装置(5)を据え付ける。
【0146】
(8)空気調和装置の据え付け支援のためのプログラム
サーバ制御部(130)に記憶されるプログラムは、以下のステップをコンピュータに実行させる。
【0147】
空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得する。開口(O)に関する情報に基づき、前記第1容積V1のみを有効容積Vaとするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定する。前記空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、決定した前記有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する。
【0148】
サーバ制御部(130)に記憶されるプログラムは、図9に示す据え付け支援方法のステップ(S21~S31)の処理をコンピュータに実行させる。
【0149】
(9)特徴
(9-1)
空気調和装置(10)の据え付け支援システム(100)は、サーバ制御部(130)を有する。サーバ制御部(130)は、空調の対象空間(S)を形成する第1室(R1)に対応する第1容積V1に関する情報と、第1室(R1)に隣り合う第2室(R2)に対応する第2容積V2に関する情報と、第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)に関する情報とを取得する(図9のステップS21)。サーバ制御部(130)は、開口(O)に関する情報に基づき、第1容積V1のみを有効容積とするか、前記第1容積V1と前記第2容積V2の合計を有効容積Vaとするかを決定する第1処理を実行する(図9のステップS23~S27)。サーバ制御部(130)は、空気調和装置(10)の使用冷媒量Mに関する情報と、第1処理で決定した有効容積Vaとに基づいて、冷媒の漏洩対策のための安全装置(5)を設けるか否かを判定する第2処理を実行する(図9のステップS28~S30)。
【0150】
これにより、第1室(R1)と第2室(R2)とが開口(O)により繋がっている状況下において、冷媒が漏洩しうる空間の容積(本例の有効容積Va)を自動的に特定できる。したがって、ユーザは対象空間(S)に対応する安全装置(5)が必要か否かを簡単に判断できる。
【0151】
据え付け支援システムの判定結果を用いることで、第1室(R1)の冷媒が開口(O)を通じて第2室(R2)に流れ易く冷媒が漏洩しうる空間が比較的大きいにも拘わらず、安全装置(5)を据え付けてしまうことを抑制できる。第1室(R1)の冷媒が開口(O)を通じて第2室(R2)に流れにくく冷媒が漏洩しうる空間が比較的小さいにも拘わらず、安全装置(5)が不要と誤判定することを抑制できる。
【0152】
(9-2)
サーバ制御部(130)は、第1室(R1)の床面(F)から空気調和装置(10)までの有効高さHaに基づいて第1容積V1および第2容積V2に関する情報を取得する。
【0153】
空気調和装置(10)から冷媒が漏洩する場合、冷媒が存在しうる高さの範囲は、床面(F)から空気調和装置(10)までの高さになる。この高さと床面積により第1容積V1や第2容積V2を求めることで、冷媒が漏洩しうる空間の容積を精度よく求めることができる。
【0154】
(9-3)
サーバ制御部(130)は、第1処理において、図8に示す第1高さ位置hs1よりも低い位置にある開口(O)に基づいて有効容積Vaを決定する。サーバ制御部(130)は、第1高さ位置hs1より高い位置にある開口(O)に基づいて有効容積Vaを決定しない。
【0155】
第1高さhs1より低い開口(O)は、冷媒が流れる可能性が高い。一方、第1高さhs1より高い開口(O)は、冷媒が流れる可能性が低い。このため、第1高さhs1より低い開口(O)に基づいて有効容積Vaを決定することで、冷媒が漏洩する空間の容積を精度よく求めることができる。
【0156】
(9-4)
サーバ制御部(130)は、第1処理において、床面(F)に沿って形成される開口(O)に基づいて前記有効容積Vaを決定する。具体的には、開口(O)の下端の高さ位置h2が、床面付近の第3高さhs3より高い位置にある場合、サーバ制御部(130)は、この開口(O)自体を有効容積Vaを求めるための開口(O)から除外する。
【0157】
床面(F)付近にある開口(O)は、冷媒が流れる可能性が高い。一方、床面(F)付近にない開口(O)は冷媒が流れる可能性が低い。このため、床面(F)に沿って形成される開口(O)に基づいて有効容積Vaを決定することで、冷媒が漏洩する空間の容積を精度よく求めることができる。
【0158】
(9-5)
サーバ制御部(130)は、第1処理において、開口(O)の有効面積Aが第1基準値B1未満である場合に、第1容積V1を前記有効容積Vaとし、前記開口(O)の有効面積Aが第1基準値B1以上である場合に、第1容積V1と第2容積V2の合計を有効容積Vaとする(図9のステップS25~S27)。
【0159】
有効面積Aが比較的大きい場合、第1室(R1)の冷媒が第2室(R2)へ流れる可能性が低い。そこで、サーバ制御部(130)は有効面積Aが所定値未満である場合、第1容積V1のみを有効容積Vaとする。有効面積Aが比較的小さい場合、第1室(R1)の冷媒が第2室(R2)へ流れる可能性が高い。そこで、サーバ制御部(130)は有効面積Aが所定値以上である場合、第1容積V1と第2容積V2の合計を有効容積Vaとする。このように開口(O)の有効面積Aを用いることで、冷媒が漏洩する空間の容積を精度よく求めることができる。
【0160】
(9-6)
開口(O)が導線上にない場合、この開口(O)が設置物などによって塞がれる可能性が高くなる。この場合、第1室(R1)の冷媒が開口(O)を通じて第2室(R2)に流れる可能性が低くなる。このような場合に、第1容積V1と第2容積V2とを合算してしまうと、実際には安全装置(5)が必要な状況であるにも拘わらず、安全装置(5)が不要と判定されてしまう可能性がある。
【0161】
本実施形態のサーバ制御部(130)は、第1処理において、開口(O)が人の導線上にない場合、開口(O)の第1基準値B1を大きく補正する(ステップS23、S24)。これにより、開口(O)が人の導線上にない場合、第1容積V1および第2容積V2の合計が有効容積Vaになりにくくなる。したがって、開口(O)が設置物に塞がれてしまうことに起因して、対象空間(S)の安全対策が不十分になることを抑制できる。
【0162】
(9-7)
据え付け支援システム(100)は、人が開口(O)に関する情報を入力する入力部(端末装置(110))を備える。
【0163】
人が端末装置(110)に開口(O)に関する情報を入力することで、サーバ制御部(130)は開口(O)に関する情報を容易に取得できる。
【0164】
(10)変形例
上記実施形態は、以下の変形例としてもよい。以下では、実施形態と異なる点について説明する。
【0165】
(10-1)変形例1
図10に示す変形例1に係る据え付け支援システム(100)は、データ提供装置(180)を有する。データ提供装置(180)は、例えば建物の設計業者が所有する。データ提供装置(180)は、通信回線(101)を介してサーバ装置(120)と接続される。
【0166】
データ提供装置(180)は、記憶部(181)と第9制御装置(C9)とを有する。
【0167】
記憶部(181)は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などを含む。記憶部(181)は、据え付け支援システム(100)が用いられる建物のレイアウト情報を記憶する。厳密には、記憶部(181)は、建物の3次元データを記憶する。3次元データのレイアウト情報は、図6に示すように、第1室(R1)の第1容積V1に関する情報、第2室(R2)の第2容積V2に関する情報、開口(O)に関する情報が含まれる。レイアウト情報は、どの部屋とどの部屋とが隣り合っているか、隣り合う部屋の間に開口があるか否かに関する情報を含む。レイアウト情報は、第1室(R1)の床面積F1、第2室の床面積F2、有効高さHo、開口の幅Wo、開口(O)の高さHo、開口(O)の高さ位置h1,h2を含む。
【0168】
第9制御装置(C9)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。メモリには、空気調和装置(10)の据え付け支援用のプログラムが記憶される。
【0169】
変形例1では、データ提供装置(180)のレイアウト情報が通信回線(101)を介してサーバ制御部(130)に送信される。情報取得部(140)は、データ提供装置(180)から送られた第1室(R1)の第1容積V1に関する情報、第2室(R2)の第2容積V2に関する情報、および開口(O)に関する情報を取得する。情報取得部(140)は、上述した実施形態と同様、ユーザの端末装置(110)から送られた使用冷媒量Mに関する情報を取得する。
【0170】
変形例1では、ユーザが空間に関する情報を手動で入力することなく、情報取得部(140)が必要な情報を得ることができる。したがって、安全装置(5)が必要か否かを判定するための作業が容易になる。
【0171】
データ提供装置(180)は、端末装置(110)に兼用されていてもよい。言い換えると、端末装置(110)の記憶部が建物のレイアウト情報が記憶してもよい。この場合、上述した実施形態と同様、端末装置(110)からサーバ装置(120)に必要な情報が送信される。
【0172】
(10-2)変形例2
変形例2に係る据え付け支援システム(100)は、対象空間(S)に2つ以上の空間が隣接する場合に対応している。図11に示すように、対象空間(S)である第1室(R1)は、第2室(R2)と第3室(R3)とに隣接する。第1室(R1)と第2室(R2)とは、第1開口(O1)を介して繋がる。第2室(R2)と第3室(R3)とは、第2開口(O2)を介して繋がる。
【0173】
変形例2の情報取得部(140)は、第1室(R1)の第1容積V1に関する情報と、第2室(R2)の第2容積V2に関する情報と、第3室(R3)の第3容積V3に関する情報とを取得する。加えて、情報取得部(140)は、第1開口(O1)に関する情報と、第2開口(O2)に関する情報とを取得する。
【0174】
決定部(150)は、実施形態と同様、第1開口(O1)の有効面積A1に基づき、第1容積V1に対して第2容積V2を合算するか否かを判定する。加えて、決定部(150)は、第2開口(O2)の有効面積A2に基づき、第1容積V1に対して第3容積V3を合算するか否かを判定する。
【0175】
例えば有効面積A1が第1基準値B1未満であり、且つ有効面積A2が第1基準値B1未満である場合、有効容積VaはV1となる。有効面積A1が第1基準値B1以上であり、且つ有効面積A2が第1基準値B1未満である場合、有効容積VaはV1+V2になる。有効面積A1が第1基準値B1以上であり、且つ有効面積A2が第1基準値B1以上である場合、有効容積VaはV1+V2+V3になる。
【0176】
据え付け支援システム(100)は、第1室(R1)に3つ以上の空間が隣接する場合も、同様の判定方法により有効容積Vaを決定する。
【0177】
(10-3)変形例3
図12に示す変形例3は、実施形態のサーバ制御部(130)の基本的な要素が、端末装置(110)の第8制御装置(C8)に設けられる。ただし、第8制御装置(C8)は、実施形態のプログラム送信部(131)および判定結果出力部(170)は有さない。変形例3の端末装置(110)は、空気調和装置(10)の据え付け支援装置に対応する。第8制御装置(C8)は、本開示の制御部に対応する。
【0178】
端末装置(110)では、ユーザがアプリケーション上において、第3操作部(111)を用いて図6に示すデータを入力する。端末装置(110)の第8制御装置(C8)の情報取得部(140)は、入力されたデータを取得する。決定部(150)は、開口(O)に関する情報に基づき有効容積Vaを決定する。安全対策判定部(160)は、冷媒使用量Mと有効容積Vaとに基づき、安全装置(5)が必要か否かを判定する。端末装置(110)の第3表示部(112)は、安全装置(5)が必要か否かの判定結果を表示する。
【0179】
変形例3では、ユーザの端末装置(110)のみで安全装置(5)が必要か否かを容易に判断できる。
【0180】
(10-4)変形例4
実施形態では、床面(F)から空気調和装置(10)までの高さを有効高さHaとしている。しかし、有効高さHaは以下の高さであってもよい。
【0181】
空気調和装置(10)よりも低い位置に連絡配管の継手部がある場合、有効高さHaは、床面(F)から継手部までの高さであってもよい。特に、継手部が機械継手である場合、有効高さHaは、床面(F)から継手部分までの高さとするのが好ましい。機械継手は、ロウ付けなどの火を使う継手と比較して冷媒が漏洩する可能性が高いからである。
【0182】
また、空気調和装置(10)が床置き式であり、空気調和装置(10)の上部に吹出口がある場合、有効高さは、床面(F)から吹出口までの高さであってもよい。床置き式の空気調和装置(10)では、吹出口から冷媒が漏洩する可能性が高いからである。
【0183】
(10-5)変形例5
実施形態の決定部(150)は、開口(O)の有効面積Aに基づき、第1容積V1に対して第2容積V2を合算するか否かを判定する。しかし、決定部(150)は、開口(O)の有無に関する情報に基づいて第1容積V1に対して第2容積V2を合算するか否かを判定してもよい。
【0184】
具体的には、第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)がある場合、決定部(150)は第1容積V1と第2容積V2との合計を有効容積Vaとする。第1室(R1)と第2室(R2)とを繋ぐ開口(O)がない場合、決定部(150)は第1容積V1のみを有効容積Vaとする。
【0185】
また、実施形態の開口(O)の有効面積Aは、開口(O)の実際の面積であってもよい。
【0186】
《その他の実施形態》
上述した実施形態、およびその変形例においては、以下の構成としてもよい。
【0187】
1)空気調和装置(10)は、マルチ式でなくてもよく、1つの利用ユニット(30)と1つの熱源ユニット(20)とを有するペア式であってもよい。空気調和装置(10)は、複数の熱源ユニット(20)を有してもよい。
【0188】
2)冷媒回路(11)に充填される冷媒は、R32以外の冷媒であってもよい。冷媒は、米国のASHRAE34 Designation and safety classification of refrigerantの規格、またはISO817 Refrigerants- Designation and safety classificationの 規格において、 Class3(強燃性)、 Class2(弱燃性)、 Subclass2L(微燃性)に該当する冷媒を含む。
【0189】
例えば冷媒は、R1234yf、R1234ze(E)、R516A、R445A、 R444A、R454C、R444B、R454A、R455A、R457A、R459B、 R452B、R454B、R447B、R32、R447A、R446A、およびR459からなる単一冷媒である。
【0190】
あるいは、冷媒は、R1234yf、R1234ze(E)、R516A、R445A、 R444A、R454C、R444B、R454A、R455A、R457A、R459B、 R452B、R454B、R447B、R32、R447A、R446A、およびR459から選択される2つ以上の冷媒からなる混合冷媒である。
【0191】
3)切換機構(24)は、四方切換弁でなくてもよい。切換機構(24)は、4つの流路とこれらを開閉する開閉弁を組み合わせた構成であってもよいし、2つの三方弁を組み合わせた構成であってもよい。
【0192】
4)熱源膨張弁(25)や利用膨張弁(31)は、電子膨張弁でなくてもよく、感温式の膨張弁や、回転式の膨張機構であってもよい。
【0193】
5)利用ユニット(30)は、天井設置式でなくてもよく、壁掛け式や床置式であってもよい。
【0194】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0195】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0196】
以上に説明したように、本開示は、空気調和装置の据え付け支援システム、据え付け支援方法、および据え付け支援装置について有用である。
【符号の説明】
【0197】
O 開口
R1 第1室(対象空間)
R2 第2室
5 安全装置
10 空気調和装置
110 端末装置(入力部)
130 サーバ制御部(制御部)
C8 第8制御装置(制御部)
図1
図2
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図5
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図12