(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20241113BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20241113BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20241113BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
B60N3/00 Z
A47C27/00 F
(21)【出願番号】P 2023076256
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021008151の分割
【原出願日】2015-04-06
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】芳田 元
(72)【発明者】
【氏名】菊池 芳治
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035671(JP,A)
【文献】特開2014-148235(JP,A)
【文献】特開2006-298085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/74
A47C 27/00
B60N 2/56
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格となるクッションフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆されて構成され、前記クッション材と前記表皮材の間にシートヒータを備えた車両用シートであって、
前記クッション材は、シート幅方向の中央部分にあるクッション本体部と、該クッション本体部の左右外側にあるクッションサイド部と、を有し、
該クッションサイド部の上面には、
前記シートヒータを収納させるための収納凹部が形成され、
前記クッションサイド部を通常位置と、該通常位置よりも前記表皮材側に突出させた突出位置との間で移動させることが可能なサイドサポート装置を備え、
前記シートヒータは、上下方向において前記サイドサポート装置よりも前記表皮材側に配置され
、
前記収納凹部は、シート幅方向において前記収納凹部の両端部分から中心部分に向かうに従って深くなるように形成され、かつ、前記中心部分が最も深くなるように形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、
前記クッションサイド部は、前記クッション本体部よりもシート幅方向の外側に向かうに従って上方側に突出するように形成され、
前記収納凹部のシート幅方向の内側端部は、前記表皮材のうち、前記クッション本体部を被覆する部分よりも上方位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、
前記収納凹部のシート幅方向の内側端部は、シート幅方向において前記サイドフレーム部のシート幅方向の内側端部よりも外側位置に配置されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、
前記収納凹部のシート幅方向の外側端部は、シート幅方向において前記クッション材が前記サイドフレーム部と当接している範囲内に配置され、かつ、前記範囲の外側の端部分よりも内側に位置するように配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、
前記収納凹部は、前記サイドフレーム部のうち、前記収納凹部側に最も突出している部分をシート幅方向において跨ぐように配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記サイドサポート装置は、エアセル駆動式のユニットからなり、前記サイドフレーム部と前記クッションサイド部の間に取り付けられ、
前記シートヒータは、前記サイドサポート装置の動作に伴って、前記クッションサイド部を介して上方位置に移動することを特徴とする請求項
2乃至5のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記収納凹部は、前記表皮材を吊り込むための吊り込み溝よりもシート幅方向において外側に位置するように配置され、
前記吊り込み溝は、前記サイドフレーム部のうち、前記収納凹部側に最も突出している部分よりも前記クッション材の裏面に向かって深く形成されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記シートヒータは、シート状のシート基材と、該シート基材に取り付けられるヒータ線と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記車両用シートは、シートバックと、シートクッションと、ヘッドレストと、を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に、シートヒータを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート本体にシート状のシートヒータを取り付けることで、着座者の快適性を向上させた車両用シートが知られている。
このような車両用シートの一例として、骨格となるフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆して構成されるシート本体を備え、クッション材と表皮材の間にシートヒータが取り付けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のシートヒータ付き車両用シートでは、シートヒータが、シート基材と、シート基材上に取り付けられ、電線と接続されているヒータ線と、ヒータ線の温度を調整するサーモスタットと、から主に構成されている。シートヒータは、シートバック及びシートクッションにそれぞれ取り付けられている。
また、ヒータ線は、互いに並列状態で配置される第1ヒータ線及び第2ヒータ線を有し、例えば、第1ヒータ線は、シートバックの本体部分に配置され、第2ヒータ線は、シートバックの両サイドにあるボルスター部分に配置されている。
【0004】
上記構成により、サーモスタットが作動しているときには、第1ヒータ線のみを通電させ、サーモスタットが停止しているときには第1ヒータ及び第2ヒータ線を通電させることができる。
また、左右のボルスター部分にある第2ヒータ線が、外部からの衝撃等によって変形してしまった場合にも、シートバックの本体部分にある第1ヒータ線はヒータ機能を有するため、シートバック全体のヒータ機能が失われることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のようなシートヒータ付き車両用シートでは、シートヒータがクッション材と表皮材の間に取り付けられるため、シートバックやシートクッションの着座面に凹凸が発生してしまい、着座者に違和感を与える虞があった。
一般に、シートバックやシートクッションのシート幅方向の中央部分については、着座者の着座感を良好にすべく、表皮材の裏面に綿状のワディング材が取り付けられているが、サイドボルスター部分については、比較的薄いワディング材が取り付けられているか、そもそもワディング材が取り付けられていない場合が多い。
そのため、特にサイドボルスター部分については、シートヒータの設置の影響によって着座者に違和感を与える虞があった。
【0007】
また、特許文献1のようなシートヒータ付き車両用シートでは、シート基材上において複数の電線、複数のヒータ線、サーモスタットが少なくとも取り付けられているため、外部からの衝撃によって電線部分や、電線とヒータ線の接続部分が変形してしまった場合には、ヒータ機能を十分に維持できない虞があった。
さらに、サーモスタットが外部からの衝撃によってその機能を失ってしまうと、シートヒータの温度調整ができなくなる虞があった。
【0008】
本発明の目的は、サイドボルスター部分について、着座者に違和感を与えることのないシートヒータ付きの車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、骨格となるクッションフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆されて構成され、前記クッション材と前記表皮材の間にシートヒータを備えた車両用シートであって、前記クッション材は、シート幅方向の中央部分にあるクッション本体部と、該クッション本体部の左右外側にあるクッションサイド部と、を有し、該クッションサイド部の上面には、前記シートヒータを収納させるための収納凹部が形成され、前記クッションサイド部を通常位置と、該通常位置よりも前記表皮材側に突出させた突出位置との間で移動させることが可能なサイドサポート装置を備え、前記シートヒータは、上下方向において前記サイドサポート装置よりも前記表皮材側に配置され、前記収納凹部は、シート幅方向において前記収納凹部の両端部分から中心部分に向かうに従って深くなるように形成され、かつ、前記中心部分が最も深くなるように形成されていること、により解決される。
【0010】
このとき、前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、前記クッションサイド部は、前記クッション本体部よりもシート幅方向の外側に向かうに従って上方側に突出するように形成され、前記収納凹部のシート幅方向の内側端部は、前記表皮材のうち、前記クッション本体部を被覆する部分よりも上方位置に配置されると良い。
また、前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、前記収納凹部のシート幅方向の内側端部は、シート幅方向において前記サイドフレーム部のシート幅方向の内側端部よりも外側位置に配置されると良い。
また、前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、前記収納凹部のシート幅方向の外側端部は、シート幅方向において前記クッション材が前記サイドフレーム部と当接している範囲内に配置され、かつ、前記範囲の外側の端部分よりも内側に位置するように配置されると良い。
また、前記クッションフレームは、シート幅方向の側方に配置されるサイドフレーム部を有し、前記収納凹部は、前記サイドフレーム部のうち、前記収納凹部側に最も突出している部分をシート幅方向において跨ぐように配置されると良い。
また、前記サイドサポート装置は、エアセル駆動式のユニットからなり、前記サイドフレーム部と前記クッションサイド部の間に取り付けられ、前記シートヒータは、前記サイドサポート装置の動作に伴って、前記クッションサイド部を介して上方位置に移動すると良い。
また、前記収納凹部は、前記表皮材を吊り込むための吊り込み溝よりもシート幅方向において外側に位置するように配置され、前記吊り込み溝は、前記サイドフレーム部のうち、前記収納凹部側に最も突出している部分よりも前記クッション材の裏面に向かって深く形成されていると良い。
また、前記シートヒータは、シート状のシート基材と、該シート基材に取り付けられるヒータ線と、を備えていると良い。
また、前記車両用シートは、シートバックと、シートクッションと、ヘッドレストと、を有すると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、サイドボルスター部分について、着座者に違和感を与えることがないシートヒータ付きの車両用シートを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るシートヒータ付き車両用シートの斜視図である。
【
図3】シートクッションの平面図であって、クッション材に収納凹部が形成されていることを説明する図である。
【
図6】車両用シートの第2実施例であって、サイドサポート装置を説明する図である。
【
図7】車両用シートの第3実施例であって、シートクッションの平面図である。
【
図8】第3実施例においてシートヒータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、
図1~
図8を参照しながら説明する。
本実施形態は、クッション材と表皮材の間にシートヒータを備えた車両用シートであって、クッション材の左右外側にあるクッションサイド部には、シートヒータを収納させるための収納凹部が形成されており、この収納凹部が、シート幅方向においてクッション材がフレームと当接している範囲内に配置され、かつ、シート幅方向において当該範囲の外側の端部分よりも内側に位置するように配置されていることを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0025】
本実施形態の車両用シートSは、
図1に示すように、シートバック1と、シートクッション2と、ヘッドレスト3と、シートバック1及びシートクッション2が連結されるシート連結部分4とを備えるシート本体と、シート本体の内部に取り付けられるシート状のシートヒータ40と、から主に構成されている。
なお、シートヒータ40は、ハーネスを介して電源及び制御装置と接続されている。
【0026】
シートバック1は、着座者の背中を後方から支持する背もたれ部であって、
図1に示すように、骨格となる不図示のバックフレームにクッション材1bを載置して表皮材1cで被覆されて構成されている。
なお、バックフレームは、骨格となる矩形状の枠体からなり、上下方向に所定の間隔を空けてシート幅方向に沿って延びる上部フレーム及び下部フレームと、上部フレームのシート幅方向の両端部からそれぞれ下方へ延出し、下部フレームの両端部と連結される左右のサイドフレームと、左右のサイドフレームを連結する複数の弾性バネと、から主に構成されている。
【0027】
シートクッション2は、乗員を下方から支持する着座部であって、
図1、
図2に示すように、骨格となるクッションフレーム2aにクッション材2bを載置して表皮材2cで被覆されて構成されている。
クッションフレーム2aは、骨格となる矩形状の枠体からなり、左右側方に配置されるサイドフレーム部2aaと、各サイドフレーム部2aaの前方部分を連結するプレート状のパンフレームと、各サイドフレーム部2aaの後方部分を連結する後方連結フレームと、パンフレーム及び後方連結フレームに掛け止めされる複数の弾性バネと、から主に構成されている。
【0028】
クッション材2bは、発泡ウレタン等からなるパッド部材であって、
図2、
図3に示すように、そのシート幅方向の中央部分にあるクッション本体部20と、クッション本体部20のシート幅方向の外側にある左右のクッションサイド部21,22と、から主に構成されている。
クッションサイド部21,22は、いわゆるサイドボルスター部分であって、クッション本体部20よりも上方側に突出して設けられ、詳しく言うと、シート幅方向の外側に向かうに従って上方側(表皮材2c側)に一層突出するように形成され、着座者を左右外側から包み込むように配置されるものである。
クッション本体部20とクッションサイド部21,22の間の部分の上面には、表皮材2cを吊り込むための吊り込み溝23が形成されている。
また、クッションサイド部21,22の上面には、シートヒータ40のサイドヒータ部40b,40cを収納させるための収納凹部24が形成されている。詳細は後述する。
【0029】
表皮材2cは、伸縮性を有するナイロン材料等からなり、クッション材2bを上方側から被覆することが可能な形状に形成されている。
具体的には、表皮材2cは、クッション本体部20及びクッションサイド部21,22に対応する位置において分割されたものであって、分割された表皮材2c同士が、吊り込み溝23内部で縫製されて連結されている。
表皮材2c裏面においてクッション本体部20に対応する位置には、略全面にわたって綿状のワディング材2caが縫製されて取り付けられている。
【0030】
ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、
図1に示すように、不図示の芯材にクッション材3bを載置して表皮材3cで被覆されて構成されており、不図示のバックフレームに設けられたヘッドレストピラーによって支持されている。
【0031】
シートヒータ40は、シート本体を暖める面状発熱体であって、
図1に示すように、シートバック1及びシートクッション2の内部に取り付けられ、詳しく言うと、
図2に示すように、クッション材1b,2bと表皮材1c,2cの間に取り付けられている。
シートヒータ40は、
図4に示すように、シート状のシート基材41と、シート基材41上にそれぞれ取り付けられ、電源と接続されている電線42と、電線42と接続されているヒータ線43と、電線42と接続される温度測定センサ44と、電線42と接続される温度調整装置45と、から主に構成されている。
【0032】
シートヒータ40は、
図4に示すように、クッション本体部20上面に載置される略矩形状の中央ヒータ部40aと、左右のクッションサイド部21,22上面に載置される略L字形状のサイドヒータ部40b,40cと、から主に構成されている。
中央ヒータ部40aの後端部分には、電線42、ヒータ線43、温度測定センサ44、及び温度調整装置45が密集して配置されている。
【0033】
シート基材41は、伸縮可能な布材からなり、シートヒータ40の土台部分である。
シート基材41のシート幅方向の中央部分において前端及び後端には、V字状に切り欠かれた切欠き部41dが位置決め部として形成されている。
シートヒータ40がクッション材2bに正しく載置されたとき、各切欠き部41dのV字状マークと、クッション材2bに設けられた不図示のT字状マークが合わさる配置となっている。
【0034】
電線42は、電源からヒータ線43、温度測定センサ44及び温度調整装置45に向けて電気を供給するものであって、その一端部分において複数の電線42が束ねられることでハーネス42aが形成されている。
ハーネス42aは、その一端部分がシート基材41上に取り付けられ、その他端部分がシート基材41上から突出するように延びて、電源及び制御装置と接続されている。
【0035】
ヒータ線43は、シート基材41上に接着固定されており、クッション材2bの後端部分からシート前方側に向かって蛇行しながら延びていき、クッション材2bの前端部分において屈曲して折り返され、再び後端部分に戻るように延びている。
ヒータ線43は、電線42とそれぞれ接続され、互いに並列状態で配置されている第1ヒータ線43a、第2ヒータ線43b、及び第3ヒータ線43cを備えている。
第1ヒータ線43aは、中央ヒータ部40aに配置され、第2ヒータ線43b、第3ヒータ線43cは、中央ヒータ部40aの後端部分からシート幅方向の外側に突出し、それぞれ左側のサイドヒータ部40b、右側のサイドヒータ部40cに配置されている。
なお、ヒータ線43は、接着剤によってシート基材41上に固定されているが、シート基材41の内部に折り込まれるように固定されても良い。
【0036】
温度測定センサ44は、ヒータ線43の温度を測定するサーミスタであって、ヒータ温度の測定結果に基づく出力信号を制御装置に向けて出力するものである。
温度調整装置45は、ヒータ線43の温度を調整する熱動式のサーモスタットであって、ヒータ温度が所定値を超えるとヒータ線43への電気供給を遮断することで、ヒータ温度を一定以下に保持するものである。
なお、不図示の制御装置は、ECU(Electronic Control Unit)に相当し、温度測定センサ44で検出された出力信号を受信して、ヒータ温度を設定値と比較することで、電源から各ヒータ線43への電気供給を制御するものである。
【0037】
上記構成において、
図4に示すように、シートヒータ40は、中央ヒータ部40aと、左右のサイドヒータ部40b,40cと、から構成されている。
そのため、シートクッション2をシート幅方向において中央部分と、左右のサイドボルスター部分とに分けて、それぞれ独立して暖めることが可能なシートヒータ付きシートになる。
【0038】
また上記構成において、シートヒータ40は、互いに並列状態で配置されている第1ヒータ線43a、第2ヒータ線43b及び第3ヒータ線43cを備えている。
そのため、例えば、第2ヒータ線43b又は第3ヒータ線43cが外部からの衝撃等によって変形してしまった場合にも、第1ヒータ線43aがヒータ機能を有するため、シートヒータ全体のヒータ機能が失われることがない。
【0039】
<シートヒータを収納させる収納凹部>
次に、クッション材2bのクッションサイド部11,12に形成された収納凹部24について詳細を説明する。
収納凹部24は、
図2、
図3に示すように、シートヒータ40のうち、左右のサイドヒータ部40b,40cを収納させるための段差部分であって、断面略コ字形状の凹部からなり、クッションサイド部21,22の延出方向に沿って、言い換えれば、シート前後方向に沿って延びている。
詳しく言うと、左右の収納凹部24は、平面視において略L字形状からなり、クッション本体部20の後端部分からシート幅方向の外側へ延びて、それぞれ左右のクッションサイド部11,12に沿ってシート前後方向に延びている。
また、左右の収納凹部24は、クッション本体部20に対して左右対称となるように形成されている。
【0040】
収納凹部24は、
図2に示すように、シートヒータ40が収納された状態で、ヒータ線43が収納凹部24の開口部分から外側に張り出さない程度の深さまで形成されている。
また、収納凹部24は、シート幅方向において左右の側壁部24aから中央部分に向かうに従って深くなるように形成されており、言い換えれば、その底壁部24bが縦断面略くの字形状となるように形成されている。
このとき、ヒータ線43は、シート幅方向において収納凹部24の中央部分に寄せた位置に配置されていると良い。
【0041】
収納凹部24は、
図2に示すように、シート幅方向においてクッション材2b(クッションサイド部21)がクッションフレーム2a(サイドフレーム部2aa)と当接している範囲内に配置されている。詳しく言うと、シート幅方向において当該範囲の外側の端部分よりも内側に位置するように配置されている。
このとき、ヒータ線43は、シート幅方向においてサイドフレーム部2aaの外側の端部分よりも内側に位置するように配置されていると良い。
また、収納凹部24は、上下方向においてサイドフレーム部2aaのうち、クッションサイド部21側(上方側)に最も突出している突出部分2abと重なる位置に配置されている。
【0042】
収納凹部24は、
図2に示すように、クッションサイド部11のうち、表皮材2c側(上方側)に最も突出している部分よりもシート幅方向の内側に配置されている。
また、収納凹部24は、上下方向においてクッション本体部10の上面よりも上方側の位置に配置されている。
【0043】
上記構成において、
図3に示すように、収納凹部24は、クッションサイド部21の延出方向(シート前後方向)に沿って連続して延びている。
詳しく言うと、
図5(a)、
図5(b)に示すように、収納凹部24は、当該延出方向においてクッションサイド部21の後端部分から略中央部分に向かうに従って幅広となるように形成されている。
一般にシートクッション2のクッションサイド部21については、そのシート中央部分が、着座者の臀部が支持される部分であって着座荷重が加わる部分である。
そのため、当該シート中央部分が、シートヒータ40によって好適に暖めたい部分であって、かつ、シートヒータ40の変形を抑制したい部分となる。
そこで、上記収納凹部24の形状、配置とすれば、シートヒータ40の好適な形状、配置を実現し、かつ、シートヒータ40の変形を抑制できる。
【0044】
また上記構成において、
図5(b)、
図5(c)に示すように、収納凹部24は、当該延出方向においてクッションサイド部21の略中央部分から前方部分に向かうに従って徐々に幅狭となるように形成されている。
一般にクッションサイド部21については、そのシート前方部分が、着座者が跨がる部分であって繰り返しの着座荷重が加わる部分である。
そのため、当該シート前方部分が、シートヒータ40によって適度に暖めたい部分であって、かつ、シートヒータ40の変形を抑制したい部分となる。一方で、着座者が常に触れている部分ではないため、シートヒータ40の領域を幾分小さくしても良い。
そこで、上記収納凹部24の形状、配置とすれば、シートヒータ40の好適な形状、配置を実現し、かつ、シートヒータ40の変形を抑制できる。
【0045】
<車両用シートの第2実施形態>
次に、車両用シートの第2実施例について、
図6に基づいて説明する。なお、上述した車両用シートSと重複する内容は説明を省略する。
第2実施形態の車両用シートS2では、シートクッション2のサイドボルスター部分において、クッションサイド部121を通常位置と、通常位置よりも表皮材102c側(上方側)に突出させた
図6に示す突出位置との間で移動させることが可能なサイドサポート装置70を備えている点が大きく異なる。
【0046】
サイドサポート装置70は、エアセル駆動式のユニットからなり、上下方向においてサイドフレーム部102aaとクッションサイド部121との間に取り付けられている。
詳しく言うと、サイドサポート装置70は、上下方向において収納凹部124と重なる位置に配置されている。
サイドサポート装置70は、サイドフレーム部102aaに固定される固定プレート71と、固定プレート71に対して回動軸72を中心として回動可能に取り付けられる可動プレート73と、固定プレート71及び可動プレート73を連結し、自身が膨張することで可動プレート73をクッションサイド部121側に押し上げ可能なエアセル74と、から主に構成されている。
【0047】
上記構成において、
図6に示すように、クッションサイド部121が突出位置に移動したときに、収納凹部124は、クッションサイド部121のうち、表皮材102c側(上方斜め内側)に最も突出する部分と重なる位置に配置されている。
また、そのとき、収納凹部124は、当該最も突出する部分と重なる位置において最も深くなるように形成されている。
一般にサイドボルスター部分のうち、サイドサポート装置70によって支持された部分が、着座者に最も当接し易い部分となる。
そのため、この当接し易い部分が、シートヒータ140によって好適に暖めたい部分であって、かつ、シートヒータ140の変形を抑制したい部分となる。
そこで、この当接し易い部分に収納凹部124を形成すれば、シートヒータ140によって着座者の快適性を確保しながらも、シートヒータ140の変形を抑制できる。
【0048】
また上記構成において、クッションサイド部121が突出位置に移動すると、表皮材102cが着座者側に突っ張ることになるため、シートヒータ140の設置の影響によって着座面に凹凸が発生し易くなる虞がある。つまり、着座者に違和感を与え易くなる。
そのため、収納凹部124の形成による効果が、サイドサポート装置70を備えたシートにおいて一層際立つようになる。
【0049】
<車両用シートの第3実施形態>
次に、車両用シートの第3実施例について、
図7、
図8に基づいて説明する。
第3実施形態の車両用シートS3では、クッションサイド部221において、互いに間隔を空けて配置される第1サイドヒータ部240ba、及び第2サイドヒータ部240bbを備えている点が大きく異なる。
第1サイドヒータ部240ba、第2サイドヒータ部240bbは、クッションサイド部221の延出方向(シート前後方向)に沿ってそれぞれ延びており、第2サイドヒータ部240bbは、第1サイドヒータ部240baと独立して構成されている。
【0050】
クッションサイド部221には、第1サイドヒータ部240ba及び第2サイドヒータ部240bをそれぞれ収納させるための第1収納凹部224a及び第2収納凹部224bと、第1収納凹部224a及び第2収納凹部224bを連結させるための連結凹部224cと、が形成されている。
そのため、一般に高級な車両用シートでは、サイドボルスター部分に複数のシートヒータ240が取り付けられているところ、上記収納凹部224の構成により、複数のシートヒータ240が取り付けられても良好な着座感を達成し、かつ、シートヒータ240の変形を抑制できる。
また、上記のように連結凹部224cが形成されることで、シートヒータ240の位置決めがし易くなる。
【0051】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、
図1に示すように、車両用シートSはサイドボルスター部分(クッションサイド部21,22)を有するシートであって、シートヒータ40がクッション本体部20及びクッションサイド部21,22に取り付けられているが、特に限定されることなく、例えば、サイドボルスター部分を有さないシートであっても良い。
その場合、シートヒータ40が、クッション本体部20のみに取り付けられていれば良く、クッション本体部20をシート幅方向に3つの領域に区画しておき、それぞれの領域に各ヒータ線43を延ばして配置すれば良い。
【0052】
上記実施形態において、
図5(a)に示すように、クッションサイド部21のシート後方部分は、シート幅方向においてサイドフレーム部2aaよりも外側に張り出すことなく、サイドフレーム部2aaによって支持されている。
そのため、クッションサイド部21のシート後方部分については、クッション材の変形が比較的小さいことから、必ずしも収納凹部24が形成されていなくても良い。
【0053】
上記実施形態において、シートヒータ40は、収納凹部24の表面上に両面テープで接着されて取り付けられているが、特に限定されることなく、縫製で取り付けられていても良いし、そのまま載置されて収納されていても良い。
【0054】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、特に限定されることなく、電車、バス等に用いられる車両用シートのほか、飛行機、船等に用いられる乗り物用シートとしても利用することができる。
また、乗り物用シートのほか、映画館、プラネタリウム等の商業施設、病院待合室等の公共施設の室内、又は室外に広く用いられるシートとしても利用可能である。
【0055】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
S,S2,S3 車両用シート
1 シートバック
1b、2b、3b クッション材
1c、2c、3c,102c 表皮材
2ca ワディング材
2 シートクッション
2a クッションフレーム(フレーム)
2aa,102aa サイドフレーム部
2ab 突出部分
3 ヘッドレスト
4 シート連結部分(連結部分)
20 クッション本体部
21,22,121,221 クッションサイド部
23 吊り込み溝
24,124,224 収納凹部
24a 側壁部
24b 底壁部
224a 第1収納凹部
224b 第2収納凹部
224c 連結凹部
40,140,240 シートヒータ
40a 中央ヒータ部
40b,40c サイドヒータ部
240ba 第1サイドヒータ部
240bb 第2サイドヒータ部
41 シート基材
41d 切欠き部
42,142 電線
42a ハーネス
43 ヒータ線
43a 第1ヒータ線
43b 第2ヒータ線
43c 第3ヒータ線
44 温度測定センサ
45,145 温度調整装置
70 サイドサポート装置
71 固定プレート
72 回天軸
73 可動プレート
74 エアセル