(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B01J19/12 C
(21)【出願番号】P 2020077969
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533929(JP,A)
【文献】特開2011-005726(JP,A)
【文献】特開2011-025170(JP,A)
【文献】特開2011-189312(JP,A)
【文献】特開2015-188884(JP,A)
【文献】特開2016-25165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
B29C 35/08
B29C 71/04
B41J 2/01
B29C 35/08
B29C 71/04
B41M 7/00
C08F 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する対象物に紫外線を照射する紫外線照射装置であって、
第1のピーク波長を有する紫外線を照射可能な第1の発光素子を有する光源を複数備えた第1の照射ユニットと;
前記第1のピーク波長よりも短い第2のピーク波長を有する紫外線を照射可能な第2の発光素子を有する少なくとも1つの第2の照射ユニットと;
を具備し、
前記複数の光源のそれぞれに設けられた前記第1の発光素子から照射された前記第1のピーク波長を有する紫外線は、前記対象物における略同じ照射位置に同時に照射され、
前記複数の光源のそれぞれに設けられた前記第1の発光素子の出射面の中心と、前記対象物における前記照射位置と、の間の距離は略同一であり、
前記第2の発光素子の出射面の中心と、前記対象物における、前記第2の発光素子から照射された紫外線の照射位置と、の間の距離は、前記第1の発光素子の出射面の中心と、前記対象物における、前記第1の発光素子から照射された紫外線の照射位置と、の間の距離よりも小さく、
前記第1のピーク波長は、350nm以上、450nm以下であり、
前記第1のピーク波長を有する紫外線の積算光量は、1000mJ/cm
2以上であり、
前記第2のピーク波長は、300nm以上、350nm未満であり、
前記第2のピーク波長を有する紫外線の積算光量は、3.5mJ/cm
2以上であ
る紫外線照射装置。
【請求項2】
前記対象物の移動方向において、前記第1の照射ユニットの上流側および下流側の少なくともいずれかに、少なくとも1つの前記第2の照射ユニットが設けられている請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記複数の光源の1つは、前記第1の照射ユニットの中心軸上に設けられている請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記複数の光源は、前記第1の照射ユニットの中心軸に対して対称となる位置に設けられている請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂の硬化、表面改質、殺菌などのために、対象物に紫外線を照射する紫外線照射装置がある。紫外線を発生させる光源としては、水銀アークランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどの放電ランプが用いられている。近年においては、省エネルギー化や長寿命化などの観点から、放電ランプに代えて、紫外線発光ダイオード(Ultraviolet Light Emitting Diode)が用いられるようになってきている。
【0003】
ところが、紫外線発光ダイオードから照射される紫外線は、放電ランプから照射される紫外線に比べて、ナローバンド(狭波長域)となる。そのため、紫外線照射の対象物の成分などによっては、処理に要する時間(例えば、紫外線硬化樹脂が硬化するまでの時間)が長くなる場合がある。
そこで、処理に要する時間を短縮することができる紫外線照射装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、処理に要する時間を短縮することができる紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る紫外線照射装置は、移動する対象物に紫外線を照射する。紫外線照射装置は、第1のピーク波長を有する紫外線を照射可能な第1の発光素子を有する光源を複数備えた第1の照射ユニットと;前記第1のピーク波長よりも短い第2のピーク波長を有する紫外線を照射可能な第2の発光素子を有する少なくとも1つの第2の照射ユニットと;を具備している。前記複数の光源のそれぞれに設けられた前記第1の発光素子から照射された前記第1のピーク波長を有する紫外線は、前記対象物における略同じ照射位置に同時に照射され、前記複数の光源のそれぞれに設けられた前記第1の発光素子の出射面の中心と、前記対象物における前記照射位置と、の間の距離は略同一である。前記第2の発光素子の出射面の中心と、前記対象物における、前記第2の発光素子から照射された紫外線の照射位置と、の間の距離は、前記第1の発光素子の出射面の中心と、前記対象物における、前記第1の発光素子から照射された紫外線の照射位置と、の間の距離よりも小さい。前記第1のピーク波長は、350nm以上、450nm以下であり、前記第1のピーク波長を有する紫外線の積算光量は、1000mJ/cm2以上である。前記第2のピーク波長は、300nm以上、350nm未満であり、前記第2のピーク波長を有する紫外線の積算光量は、3.5mJ/cm2以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、処理に要する時間を短縮することができる紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る紫外線照射装置を例示するための模式斜視図である。
【
図2】第1の照射ユニットを例示するための模式側面図である。
【
図3】第1の照射ユニットを例示するための模式斜視図である。
【
図5】
図4における第1の照射ユニットのB-B線方向の模式断面図である。
【
図6】第2の照射ユニットを例示するための模式側面図である。
【
図7】第2の照射ユニットを例示するための模式斜視図である。
【
図9】
図8における第2の照射ユニットのC-C線方向の模式断面図である。
【
図10】他の実施形態に係るベースを例示するための模式側面図である。
【
図11】紫外線照射装置の効果を例示するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る紫外線照射装置100は、移動する対象物200に紫外線を照射することができる。対象物200の移動方法には特に限定がなく、例えば、コンベアやXYテーブルなどを用いて対象物200を移動させてもよいし、回転ローラなどを用いて対象物200を移動させてもよい。
【0010】
また、紫外線照射装置100の用途には特に限定はないが、対象物200を硬化させる用途に用いることが好ましい。例えば、紫外線照射装置100は、紫外線硬化樹脂を含むインキ、接着剤、塗料などの硬化に用いることができる。
そのため、以下においては、一例として、紫外線照射装置100が、紫外線硬化樹脂を含む対象物200を硬化させるものである場合を説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る紫外線照射装置100を例示するための模式斜視図である。
なお、
図1においては、煩雑となるのを避けるために、レンズユニット3の保持部3aを省いて描いている。
図1に示すように、紫外線照射装置100には、第1の照射ユニット1、第2の照射ユニット10、ブラケット20、電源30、およびコントローラ40を設けることができる。
【0012】
ここで、一般的には、紫外線硬化樹脂には、モノマー、オリゴマー(プレポリマー)、光重合開始剤、および添加剤が含まれている。紫外線が、紫外線硬化樹脂に照射されると、光重合開始剤がイオンを発生し、そのイオンがモノマーやオリゴマーと重合する(結合して鎖状や網状になる)。この様な反応は光重合反応と呼ばれ、光重合反応により紫外線硬化樹脂が硬化する。
【0013】
この場合、一般的には、光重合開始剤の反応感度は、照射される紫外線の波長が短くなるほど高くなる。そのため、より短いピーク波長の紫外線を照射する発光素子を用いれば、紫外線硬化樹脂の硬化時間(処理に要する時間)を短縮することが可能となる。
ただし、照射される紫外線の波長が長くなれば、対象物200の内部にまで到達する紫外線の量が多くなると考えられる。そのため、対象物200には、ピーク波長の異なる紫外線が照射されるようにすることが好ましい。
【0014】
また、発光素子の発光効率は、発生する紫外線のピーク波長によって変化する。一般的には、発光素子の発光効率は、発生する紫外線のピーク波長が短くなるほど低くなる。また、一般的には、発光素子の価格は、発生する紫外線のピーク波長が短くなるほど高くなる。
【0015】
そのため、紫外線照射装置100に設けられる発光素子の全てを、よりピーク波長の短い発光素子にすると、発光効率が低く価格の高い発光素子が多数必要となるので、製造コストの増大や紫外線照射装置100の大型化を招くことになる。また、前述したように、発光素子の発光効率は、発生する紫外線のピーク波長が短くなるほど低くなるので、ピーク波長が長い発光素子と、ピーク波長が短い発光素子とを同じ基板に実装すると、ピーク波長が短い紫外線の照度が不足したり、基板ひいては紫外線照射装置100が大型化したりするおそれがある。
【0016】
そこで、紫外線照射装置100には、第1の照射ユニット1と第2の照射ユニット10とが設けられている。例えば、第1の照射ユニット1は、ピーク波長(第1のピーク波長の一例に相当する)が350nm以上、450nm以下の紫外線を対象物200に照射するものとすることができる。第2の照射ユニット10は、ピーク波長(第2のピーク波長の一例に相当する)が300nm以上、350nm未満、好ましくは、ピーク波長が300nm以上、330nm以下の紫外線を照射するものとすることができる。
【0017】
(第1の照射ユニット1)
図2は、第1の照射ユニット1を例示するための模式側面図である。
図3は、第1の照射ユニット1を例示するための模式斜視図である。
図4は、
図2におけるA部の模式断面図である。
図5は、
図4における第1の照射ユニット1のB-B線方向の模式断面図である。
図2および
図3に示すように、第1の照射ユニット1には、光源2、レンズユニット3、およびベース4を設けることができる。
【0018】
光源2は、複数設けることができる。例えば、
図2に示すように、第1の照射ユニット1の中心軸1aの両側に少なくとも1つの光源2を設けることができる。例えば、中心軸1a上に光源2を1つ設け、中心軸1aの両側に少なくとも1つの光源2を設けることもできる。複数の光源2は、基板2aが延びる方向と交差する方向に、並べて設けることができる。
【0019】
図3に示すように、光源2は、基板2a、および複数の発光素子2b(第1の発光素子の一例に相当する)を有することができる。
基板2aは、板状を呈し、一方の方向に延びた形状を有している。基板2aの平面形状は、例えば、長方形とすることができる。基板2aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いてベース4の面4aに取り付けることができる。なお、ベース4の面4aに凹部を設け、凹部の内部に基板2aを設けることもできる。この様にすれば、ベース4と光源2の位置合わせ、ひいては、光源2とレンズユニット3の位置合わせを容易とすることができる。
【0020】
基板2aの一方の面には、配線パターンを設けることができる。配線パターンには、複数の発光素子2bを実装することができる。複数の発光素子2bは、配線パターンにより直列接続することができる。配線パターンには、一対の接続端子2a1を設けることができる。一対の接続端子2a1は、配線を介して、第1の照射ユニット1の外部に設けられた電源30と電気的に接続される。
【0021】
また、配線パターンを覆う保護膜を設けることができる。この場合、白色の保護膜(例えば、白レジスト)や、酸化チタンなど光散乱粒子が混合された保護膜などとすることで反射膜の機能を有する保護膜とすることもできる。
【0022】
基板2aの材料は、紫外線に対する耐性を有し、熱伝導率が高いものとすることが好ましい。基板2aの材料は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスとすることができる。基板2aは、金属板の表面を無機材料で覆ったもの(メタルコア基板)とすることもできる。基板2aの材料がセラミックスなどであったり、基板2aがメタルコア基板であったりすれば、紫外線に対する耐性と高い放熱性を得ることができる。
【0023】
複数の発光素子2bは、基板2aの面に設けることができる。複数の発光素子2bは、基板2aが延びる方向に並べて設けることができる。なお、
図3に例示をした光源2においては、複数の発光素子2bが一列に並べられているが、複数の発光素子2bが複数列に並べられていてもよい。複数の発光素子2bのピッチ寸法(発光素子2b同士の間隔)は、一定であってもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
複数の発光素子2bのピッチ寸法が一定であれば、照射ムラが生じるのを抑制することができる。
一方、紫外線照射装置100の用途などによっては、複数の発光素子2bのピッチ寸法が異なる様にした方が好ましい場合もある。例えば、光源2の中央領域から照射される紫外線の照度を周縁領域から照射される紫外線の照度よりも大きくした方が好ましい場合がある。また、これとは逆に、光源2の周縁領域から照射される紫外線の照度を中央領域から照射される紫外線の照度よりも大きくした方が好ましい場合がある。この様な場合には、照射される紫外線の照度を大きくする領域に設けられる発光素子2bの数を多くし、発光素子2bのピッチ寸法を短くすることができる。
【0025】
発光素子2bは、紫外線を照射可能な素子であれば特に限定はない。発光素子2bは、例えば、紫外線を照射可能な発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
例えば、発光素子2bは、ピーク波長が350nm以上、450nm以下の紫外線を照射するものとすることができる。
【0026】
発光素子2bは、例えば、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)型などの表面実装型の発光素子とすることができる。なお、発光素子2bは、例えば、砲弾型などのリード線を有する発光素子とすることもできる。
図3に例示をした発光素子2bは、表面実装型の発光素子である。
【0027】
また、発光素子2bは、COB(Chip On Board)により実装されるものとすることもできる。COBにより実装される発光素子2bとする場合には、チップ状の発光素子2bと、発光素子2bと配線パターンとを電気的に接続する配線と、発光素子2bと配線を囲む枠状の部材と、枠状の部材の内部に設けられた封止部などを基板2aの上に設けることができる。この場合、枠状の部材は、封止部の形成範囲を規定する機能と、リフレクタの機能とを有することができる。なお、枠状の部材を設けずに封止部のみを設けることもできる。封止部のみを設ける場合には、ドーム状の封止部が基板2aの上に設けられる。封止部は、例えば、シリコーン樹脂などから形成することができる。
【0028】
図1および
図2に示すように、レンズユニット3は、ベース4の、光源2が設けられる側に設けることができる。
レンズユニット3は、保持部3a、およびレンズ3bを有することができる。
【0029】
保持部3aは、板状を呈し、一対設けることができる。一対の保持部3aは、基板2aが延びる方向において、ベース4の面4aの外側に設けることができる。一対の保持部3aは、基板2aが延びる方向において対峙している。一対の保持部3aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いてベース4に取り付けることができる。一対の保持部3aは、例えば、アルミニウムなどの金属から形成することができる。
【0030】
レンズ3bは、一対の保持部3a同士の間に設けることができる。基板2aが延びる方向におけるレンズ3bの端部は、保持部3aに固定することができる。レンズ3bは、複数の光源2に対して1つずつ設けることができる。レンズ3bは、光源2から照射された紫外線を照射位置に集光させる。
【0031】
レンズ3bは、例えば、基板2aが延びる方向に延びるシリンドリカルレンズとすることができる。なお、レンズ3bが、複数の光源2に対して1つずつ設けられる場合を例示したが、複数のレンズ3bが一体化されていてもよい。また、レンズ3bの形状は、紫外線照射装置100の用途などに応じて適宜変更することができる。例えば、
図2に例示をしたレンズ3bは、凹凸レンズ(メニスカスレンズ)であるが、平凸レンズや両凸レンズなどであってもよい。
【0032】
また、レンズ3bは、フライアレイレンズとすることもできる。レンズ3bがフライアレイレンズの場合には、光源2に設けられた複数の発光素子2bごとにレンズを設けることができる。
【0033】
レンズ3bの材料は、紫外線を透過させることができ、且つ、紫外線に対する耐性を有するものであればよい。レンズ3bの材料は、例えば、石英ガラス、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などとすることができる。
【0034】
ベース4は、複数の光源2を保持する機能と、複数の光源2を冷却する機能とを有することができる。ベース4は、ブロック状を呈し、熱伝導率の高い金属から形成することができる。ベース4は、例えば、アルミニウムなどの金属から形成することができる。
【0035】
図4および
図5に示すように、ベース4の内部には、水などの冷媒を流す流路4bを設けることができる。流路4bは、例えば、複数の光源2ごとに設けることができる。この場合、発光素子2bの光軸の延長線上に、対応する流路4bの中心を設けることができる。この様にすれば、発光素子2bと流路4bとの間の距離を短くすることができるので、発光素子2bを冷却するのが容易となる。
【0036】
また、流路4bは、複数の発光素子2bの列と同じ方向に延びる形状を有することができる。この様にすれば、複数の発光素子2bに冷却むらが生じるのを抑制することができる。
【0037】
流路4bと隣接する流路4bとは、ベース4の内部において接続することもできるし、
図2、
図4、および
図5に示すように、配管継ぎ手4cと配管を介して接続することもできる。また、流路4bには、冷媒を供給するための配管継ぎ手4c1と、供給された冷媒を排出するための配管継ぎ手4c2を接続することができる。
また、ベース4には放熱フィンなどを設けることもできる。
【0038】
ベース4は、1つの基板2aが設けられる面4aを複数有している。
図2に示すように、基板2aが延びる方向からベース4を見た場合に、複数の面4aの中心は、設置円5の円周上に設けることができる。設置円5は、複数の光源2(発光素子2b)の光軸が交わる点を中心とした仮想円とすることができる。より具体的には、設置円5は、一の光源2に設けられた発光素子2bの出射面の中心と紫外線の照射位置200aとを結ぶ線分と、他の光源2に設けられた発光素子2bの出射面の中心と紫外線の照射位置200aとを結ぶ線分と、が交わる点を中心とした仮想円とすることができる。
【0039】
なお、設置円5の半径は、紫外線照射装置100の用途、大きさ、発光素子2bから照射される紫外線の照度などに応じて適宜変更することができる。
【0040】
また、前述した光軸同士の間の角度(前述した線分同士の間の角度)を設置角度θpとした場合、設置角度θpが同じとなるようにすることもできるし、異なる様にすることもできる。
図2に例示をした第1の照射ユニット1の場合には、設置角度θpを同じにしている。
【0041】
対象物200の面200bに対して垂直な方向から、紫外線が入射すれば、対象物200の面200bにおいて反射される紫外線を少なくすることができる。この場合、設置角度θpを小さくすれば、第1の照射ユニット1の中心軸1aと、最も外側に設けられた光源2の光軸との間の角度θ1を小さくすることができる。そのため、最も外側に設けられた光源2から照射された紫外線が対象物200の面200bにおいて反射されるのを抑制することができる。
例えば、設置角度θpを24°程度、角度θ1を60°程度とすることができる。なお、設置角度θpおよび角度θ1は、光源2の大きさ、数などに応じて適宜変更することができる。
【0042】
また、第1の照射ユニット1の中心軸1aと、光源2の光軸との間の角度が小さくなるほど、照射された紫外線が対象物200の面200bにおいて反射されにくくなる。そのため、光源2(発光素子2b)を中心軸1a上、または、中心軸1aの近傍に設けることが好ましい。
【0043】
(第2の照射ユニット10)
第2の照射ユニット10は、少なくとも1つ設けることができる。例えば、
図1に示すように、対象物200の移動方向において、第1の照射ユニット1の上流側に少なくとも1つの第2の照射ユニット10を設けることができる。なお、対象物200の移動方向において、第1の照射ユニット1の下流側、または、第1の照射ユニット1の上流側および下流側に、少なくとも1つの第2の照射ユニット10を設けることもできる。すなわち、対象物200の移動方向において、第1の照射ユニット1の上流側および下流側の少なくともいずれかに、少なくとも1つの第2の照射ユニット10を設けることができる。
【0044】
図6は、第2の照射ユニット10を例示するための模式側面図である。
図7は、第2の照射ユニット10を例示するための模式斜視図である。
図8は、第2の照射ユニット10の模式断面図である。
図9は、
図8における第2の照射ユニット10のC-C線方向の模式断面図である。
図6および
図7に示すように、第2の照射ユニット10には、光源12、およびベース14を設けることができる。
【0045】
図7に示すように、光源12は、基板12a、および複数の発光素子12b(第2の発光素子の一例に相当する)を有することができる。
基板12aは、板状を呈し、一方の方向に延びた形状を有している。基板12aの平面形状は、例えば、長方形とすることができる。基板12aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いてベース14の面14aに取り付けることができる。なお、ベース14の面14aに凹部を設け、凹部の内部に基板12aを設けることもできる。この様にすれば、ベース14と光源12の位置合わせを容易に行うことができる。
【0046】
基板12aの一方の面には、配線パターンを設けることができる。配線パターンには、複数の発光素子12bを実装することができる。複数の発光素子12bは、配線パターンにより直列接続することができる。配線パターンには、一対の接続端子12a1を設けることができる。一対の接続端子12a1は、配線を介して、第2の照射ユニット10の外部に設けられた電源30と電気的に接続される。
【0047】
また、配線パターンを覆う保護膜を設けることができる。この場合、白色の保護膜(例えば、白レジスト)や、酸化チタンなど光散乱粒子が混合された保護膜などとすることで反射膜の機能を有する保護膜とすることもできる。
【0048】
基板12aの材料は、紫外線に対する耐性を有し、熱伝導率が高いものとすることが好ましい。基板12aの材料は、例えば、前述した基板2aの材料と同じとすることができる。
【0049】
複数の発光素子12bは、基板12aの面に設けることができる。複数の発光素子12bは、基板12aが延びる方向に並べて設けることができる。なお、
図7に例示をした光源12においては、複数の発光素子12bが一列に並べられているが、複数の発光素子12bが複数列に並べられていてもよい。複数の発光素子12bのピッチ寸法(発光素子12b同士の間隔)は、一定であってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
複数の発光素子12bのピッチ寸法が一定であれば、照射ムラが生じるのを抑制することができる。
一方、紫外線照射装置100の用途などによっては、複数の発光素子12bのピッチ寸法が異なる様にした方が好ましい場合もある。例えば、光源12の中央領域から照射される紫外線の照度を周縁領域から照射される紫外線の照度よりも大きくした方が好ましい場合がある。また、これとは逆に、光源12の周縁領域から照射される紫外線の照度を中央領域から照射される紫外線の照度よりも大きくした方が好ましい場合がある。この様な場合には、照射される紫外線の照度を大きくする領域に設けられる発光素子12bの数を多くし、発光素子12bのピッチ寸法を短くすることができる。
【0051】
発光素子12bは、紫外線を照射可能な素子であれば特に限定はない。発光素子12bは、例えば、紫外線を照射可能な発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
発光素子12bは、ピーク波長が300nm以上、350nm未満、好ましくは、ピーク波長が300nm以上、330nm以下の紫外線を照射するものとすることができる。
【0052】
前述した発光素子2bの場合と同様に、発光素子12bは、表面実装型の発光素子とすることもできるし、砲弾型などのリード線を有する発光素子とすることもできるし、COBにより実装されるチップ状の発光素子とすることもできる。チップ状の発光素子とする場合には、発光素子12bと配線パターンとを電気的に接続する配線と、発光素子12bと配線を囲む枠状の部材と、枠状の部材の内部に設けられた封止部などを適宜設けることができる。
【0053】
ベース14は、光源12を保持する機能と、光源2を冷却する機能とを有することができる。ベース14は、ブロック状を呈し、熱伝導率の高い金属から形成することができる。ベース14は、例えば、アルミニウムなどの金属から形成することができる。
【0054】
図8および
図9に示すように、ベース14の内部には、水などの冷媒を流す流路14bを設けることができる。この場合、発光素子12bの光軸の延長線上に、流路14bの中心を設けることができる。この様にすれば、発光素子12bと流路14bとの間の距離を短くすることができるので、発光素子12bを冷却するのが容易となる。
【0055】
また、流路14bは、複数の発光素子12bの列と同じ方向に延びる形状を有することができる。この様にすれば、複数の発光素子12bに冷却むらが生じるのを抑制することができる。
また、流路14bには、冷媒を供給するための配管継ぎ手14c1と、供給された冷媒を排出するための配管継ぎ手14c2を接続することができる。
また、ベース14には放熱フィンなどを設けることもできる。
【0056】
図10は、他の実施形態に係るベース14dを例示するための模式側面図である。
紫外線照射装置100の設置スペースが狭い場合などには、第1の照射ユニット1と第2の照射ユニット10との間の距離を小さくした方が好ましい。この様な場合には、
図10に示すように、ベース4と一体化されたベース14dとすることができる。ベース4と一体化されたベース14dとすれば、紫外線照射装置100の小型化を図ることができるので、狭い設置スペースであっても紫外線照射装置100を設けることができる。
【0057】
ここで、対象物200の面200bに対して垂直な方向から、紫外線が入射すれば、対象物200の面200bにおいて反射される紫外線を少なくすることができる。そのため、ベース14の、光源12が設けられる面14aは、対象物200の面200bに略平行となるようにすることが好ましい。
【0058】
前述したように、発光素子の発光効率は、発生する紫外線のピーク波長が短くなるほど低くなる。そのため、発光素子12bの発光効率は、発光素子2bの発光効率よりも低くなる。この場合、必要となる照度を得るために、価格の高い発光素子12bの数を多くすると、光源12の大型化や製造コストの増大を招くことになる。
【0059】
紫外線照射装置100には、発光素子2bを有する第1の照射ユニット1と、発光素子2bよりもピーク波長が短い紫外線を照射する発光素子12bを有する第2の照射ユニット10と、が設けられている。そのため、発光素子12bの出射面の中心と、対象物200における、発光素子12bから照射された紫外線の照射位置と、の間の距離が、発光素子2bの出射面の中心と、対象物200における、発光素子2bから照射された紫外線の照射位置と、の間の距離よりも小さくすることが容易となる。すなわち、発光素子12bの出射面と対象物200との間の距離が小さくなるので、発光素子12bから照射された紫外線の照度を大きくすることができる。そのため、発光素子12bの発光効率が発光素子2bの発光効率よりも低い場合であっても、必要となる照度を得ることが容易となる。
【0060】
例えば、発光素子12bの出射面の中心と紫外線の照射位置200aとの間の距離を10mm以下とすることができる。例えば、発光素子2bの出射面の中心と紫外線の照射位置200aとの間の距離を80mm以下とすることができる。
【0061】
また、対象物200を移動させるための回転ローラなどが第2の照射ユニット10の近傍に設けられている場合がある。この様な場合には、前述した第1の照射ユニット1の場合と同様に、レンズユニットをさらに設けることもできる。レンズユニットが設けられていれば、照射された紫外線を集光させることができるので、発光素子12bの出射面と対象物200の面200bとの間の距離を大きくすることができる。そのため、第2の照射ユニット10の設置が容易となる。ただし、発光素子12bの出射面と対象物200の面200bとの間の距離を小さくしてレンズユニットを省けば、製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
(ブラケット20)
ブラケット20には、第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10を設けることができる。この場合、
図1に示すように、1つのブラケット20に第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10を設けることもできるし、第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10のそれぞれに対してブラケットを設けることもできる。1つのブラケット20に第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10を設ければ、小型化や製造コストの低減を図ることができる。第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10のそれぞれに対してブラケットを設ければ、第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10の設置に関する自由度を大きくすることができる。
【0063】
ブラケット20の材料、形状、大きさなどは、第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10の数、形状、大きさ、配置などに応じて適宜変更することができる。
ブラケット20は、例えば、対象物200を移動させるための装置の筐体などに取り付けることができる。なお、第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10が、対象物200を移動させるための装置の筐体などに取り付けられる場合には、ブラケット20を省くことができる。
【0064】
(電源30)
電源30は、第1の照射ユニット1および第2の照射ユニット10に電気的に接続することができる。電源30は、第1の照射ユニット1の光源2(発光素子2b)および第2の照射ユニット10の光源12(発光素子12b)に所定の電力を供給する。電源30は、例えば、直流電源とすることができる。直流電源には、整流回路、コンバータ、およびスイッチなどを設けることができる。整流回路は、交流電源と電気的に接続される。整流回路は、例えば、交流電源により印加された交流電圧を全波整流することができる。整流回路は、例えば、ダイオードブリッジなどを有することができる。コンバータは、整流回路により全波整流された電圧を、所定の直流電圧に変換する。コンバータは、例えば、スイッチング回路を有することができる。スイッチは、光源2(発光素子2b)および光源12(発光素子12b)への電力の印加と、電力の印加の停止とを切り替えることができる。
【0065】
(コントローラ40)
コントローラ40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子と、半導体メモリなどの記憶素子を有することができる。コントローラ40は、例えば、コンピュータとすることができる。記憶素子には、紫外線照射装置100に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。演算素子は、記憶素子に格納されている制御プログラムや、操作者により入力されたデータなどを用いて、紫外線照射装置100に設けられた各要素の動作を制御することができる。
【0066】
例えば、コントローラ40は、電源30を制御して、第1の照射ユニット1の光源2および第2の照射ユニット10の光源12から同時に紫外線を照射させることができる。光源2と光源12との間の距離が離れている場合には、上流側にある光源から紫外線を照射させ、その後、下流側にある光源から紫外線を照射させることもできる。この場合、照射タイミングは、光源2と光源12との間の距離と、対象物200の移動速度などに基づいて適宜決定することができる。
【0067】
図11は、紫外線照射装置100の効果を例示するための表である。
なお、比較例は、第1の照射ユニット1のみが設けられた場合である。この場合、照射される紫外線のピーク波長は385nm、積算光量は1600mJ/cm
2としている。
【0068】
紫外線照射装置100に設けられた第1の照射ユニット1から照射される紫外線のピーク波長は385nm、積算光量は1600mJ/cm2としている。紫外線照射装置100に設けられた第2の照射ユニット10から照射される紫外線のピーク波長は310nm、積算光量は4.7mJ/cm2としている。
【0069】
図11から分かるように、紫外線照射装置100とすれば、比較例の場合に比べて、対象物200の移動速度を33%程度速くしても、対象物200を硬化させることができる。このことは、処理に要する時間を33%程度短縮することができることを意味する。
【0070】
本発明者の得た知見によれば、第1の照射ユニット1から照射される紫外線のピーク波長を350nm以上、450nm以下とした場合に、積算光量が1000mJ/cm2以上となるようにすることが好ましい。第2の照射ユニット10から照射される紫外線のピーク波長を300nm以上、350nm未満(好ましくは、300nm以上、330nm以下)とした場合に、積算光量が3.5mJ/cm2以上となるようにすることが好ましい。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 第1の照射ユニット、1a 中心軸、2 光源、2a 基板、2b 発光素子、3 レンズユニット、4 ベース、10 第2の照射ユニット、12 光源、12a 基板、12b 発光素子、14 ベース、40 コントローラ、100 紫外線照射装置、200 対象物、200a 照射位置、200b 面