IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーストラリス ファーマシューティカルズ リミテッド (トレーディング アズ プレススラ ニューロ)の特許一覧

特許7587215化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用
<>
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図1
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図2
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図3
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図4
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図5
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図6
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図7
  • 特許-化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】化合物の製造、その新しい塩形態および治療的使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/82 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
C07D213/82
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021536184
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 AU2019051433
(87)【国際公開番号】W WO2020132716
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】2018904929
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515340682
【氏名又は名称】ユーストラリス ファーマシューティカルズ リミテッド (トレーディング アズ プレススラ ニューロ)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リアカトス,アンジェラ
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0244668(US,A1)
【文献】特開2000-247957(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01035115(EP,A1)
【文献】特表2021-512869(JP,A)
【文献】Fabienne Hoffmann-Emery et al.,Efficient Synthesis of Novel NK1 Receptor Antagonists: Selective 1,4-Addition of Grignard Reagents to 6-Chloronicotinic Acid Derivatives,The Journal of Organic Chemistry,2006年,71巻,2000-2008頁
【文献】TORSTEN HOFFMANN et al.,Design and synthesis of a novel, achiral class of highly potent and selective, orally active neurokinin-1 receptor antagonists,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2006年,16巻,1362-1365頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
の化合物の二塩酸塩を調製する方法であって、
a)式(2):
【化2】
の化合物を式(3):
【化3】
の化合物を得る条件下で、o-トリルマグネシウムクロリド、N-メチルピペラジンおよびヨウ素で逐次処置すること、
b)ステップa)からの式(3)の前記化合物を式(1)の化合物を得る条件下で、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドおよび塩基で処置すること、
c)式(1)の前記化合物を式(1)の化合物の二塩酸塩を得る条件下で、ジエチルエーテル中の塩酸の溶液で処置すること、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、THF中で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(2)が、0℃でTHF中の1M o-トリルマグネシウムクロリドに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
N-メチルピペラジンが、20℃で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(2)に対して、5M当量のN-メチルピペラジンが、添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ヨウ素が次に、THF溶液として反応される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)の塩基が、カリウムtert-ブトキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドが、1.2モル当量の式(3)と反応される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式(3)の前記化合物が、次の反応に先立ち溶媒交換により精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式(1)の前記化合物が、塩への式(1)の前記化合物の変換に先立ち単離されない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式(2)に対して、5M当量のN-メチルピペラジンが、一度に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ヨウ素が次に、1.5モル当量で、0℃の窒素下で、THF溶液として反応される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)の塩基が、式(3)に相対的に1.5モル当量の量の、カリウムtert-ブトキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
式(3)の前記化合物が、MTBEでの、次の反応に先立ち溶媒交換により精製される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、特有の置換ピリジン化合物および/またはその塩形態の合成と共に、その新しい塩形態および治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
米国特許第6,303,790号は、とりわけ、以下の一般式:
【化1】
の置換ピリジン化合物の合成を開示する。
【0003】
これらの化合物は、ニューロキニン1(NK-1、サブスタンスP)受容体でアンタゴニスト活性を示しており、特定の中枢神経系障害の処置または予防に有用であり得る。これらの置換ピリジンの合成経路は、保護基の組み込みおよび除去と、次の反応の基質への反応性官能基の導入、を含む。これらの追加的ステップは、合成の全体的効率およびアトムエコノミーを低減する。さらに、この化合物およびそれらの中間体の精製手順は多くの場合、クロマトグラフィー工程を含む。
【0004】
欧州特許第1394150号は、とりわけ、以下の一般式:
【化2】
のフェニル置換されたピリジン化合物の合成を開示する。
【0005】
開示された合成経路は、フェニル置換基を組み込むためのアリールボロン酸のパラジウム触媒カップリングと、非常に高い(130℃)または非常に低い(-78℃)温度での反応と、保護基の使用とを含む複数のステップを必要とする。その文書はまた、各中間体がカラムクロマトグラフィーにより単離されることを開示し、クロマトグラフィーは、時間と資源を消費する。一般に、開示された合成経路は、ミリグラムまたはグラムスケールでの標的化合物およびその中間体の合成を教示しており、各中間体(およびしたがって標的化合物)は中等度の収率で生成される。
【0006】
これらの置換ピリジンの先行技術の経路は典型的には、多数の合成ステップおよび反応条件を利用し、それは、単独で、または一緒に検討された場合、大規模でのこれらの化合物の合成に障害をきたす。
【0007】
方法または経路の障害が、克服され得る場合でも、化合物の形態が、製品への製造にとって重要であるまたは望ましいことがあり得る。化合物の形態は、製品としてのその有用性にとっても重要であるまたは望ましいことがあり得る。例えば、加工性、流動性、熱安定性、粘稠性などの特定の特徴が、製造工程の間に望ましく、それが特定の化合物形態のみにより提供される場合がある。さらに、使用期限、着色、有効性、放出速度などの製品の特定の特徴が、望ましく、それが特定の化合物形態のみにより提供される場合がある。この点について、これらの特徴が単独で、または一緒に検討される場合、特定の化合物形態が、他の化合物形態よりも望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多量で大規模の、かつGMP加工を受け易い、特有の置換ピリジン化合物を調製するためのより効率的な経路を提供することを対象とする。本発明はまた詳細には、特に静脈内配合剤の調製のための、特異的加工および治療利点を実証する置換ピリジン化合物および/またはその特有の塩形態を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
一態様において、本発明は、式(1):
【化3】
の化合物またはその塩を調製する方法であって、
a)式(2):
【化4】

の化合物を、式(3):
【化5】

の化合物を得るのに充分な条件下で、逐次o-トリルマグネシウムクロリド、N-メチルピペラジンおよびヨウ素で処置すること、
b)ステップa)からの式(3)の化合物を、式(1)の化合物を得るのに充分な条件下で、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドおよび適切な塩基で処置すること、
を含む、方法を提供する。
【0010】
本明細書で用いられる用語「逐次」は、一連の試薬に関係して用いられる場合、添加された試薬の意図する反応を次に列挙された試薬の添加前に起こさせ、列挙された最後の試薬が反応物に添加される後まで反応生成物が単離されない様式での、基質への列挙された試薬の連続添加を指す。
【0011】
別の態様において、本発明は、式(1):
【化6】

の化合物の二塩酸塩を調製するための方法であって、
a)式(2):
【化7】

の化合物を、式(3):
【化8】

の化合物を得るのに充分な条件下で、逐次o-トリルマグネシウムクロリド、N-メチルピペラジンおよびヨウ素で処置すること、
b)ステップa)からの式(3)の化合物を、式(1)の化合物を得るのに充分な条件下で、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドおよび適切な塩基で処置すること、ならびに
c)ステップb)から得られた式(1)の化合物を、式(1)の化合物の二塩酸塩を得るのに充分な条件下で、ジエチルエーテル中の塩酸の溶液で処置すること、
を含む、方法を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、前述の態様により生成される式(1):
【化9】

の化合物またはその塩を提供する。
【0013】
また別の態様において、本発明は、式(1):
【化10】

の化合物の二塩酸塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】化合物(1)2HCl塩のFT-IRスペクトル。
図2】化合物(1)遊離塩基のH-NMRスペクトル(400MHz、DMSO-d6)(20.5mg)(2.50ppmでのDMSO-dに相対的)。
図3】化合物(1)遊離塩基の13C NMRデータ(150MHz、DMSO-d6)(20.5mg)(39.57ppmでのDMSO-dに相対的)。
図4】化合物(1)2HCl塩の1H-NMRスペクトル(600MHz、DMSO-d6)(200mg)(2.50ppmでのDMSO-d6に相対的)。
図5】化合物(1)塩の13C NMRデータ(150MHz、DMSO-d6)(200mg)(39.57ppmでのDMSO-d6に相対的)。
図6】化合物(1)2HCl塩の質量スペクトル。
図7】化合物(1)2HCl塩のXRPD。
図8】化合物(1)2HCl塩のDSC。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の詳細な記載
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈で他に求められなければ、言語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)および「含むこと(comprising)」などの変形例が、述べられた整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群の包含を示唆するが、任意の他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群の除外を示唆しないことは、理解されよう。
【0016】
本発明は、式(1)の化合物および/またはその塩が、良好なないし高い収率で、キログラムスケールの量で効率的に調製され得るという、予期されなかった発見に基づく。本明細書に開示された工程は、スケールアップし易いことが示され、医薬投与に適した材料の生成のためのGMP条件に適した効率的かつ安全な手法で大規模での式(1)の化合物および/またはその塩の生成を可能にする。この工程の効率は、試薬および基質上の保護基の使用を最小限に抑えるステップを用いることにより改善され、添付の実施例に示される通り、非常に高いまたは非常に低い温度を利用せずに実施され得る。
【0017】
本発明者らは、式(3):
【化11】

の化合物が、式(2):
【化12】

の化合物をo-トリルマグネシウムクロリド、N-メチルピペラジンおよびヨウ素で逐次処置することにより得ることができることを見出した。本発明者らはまた、o-トリルマグネシウムクロリドおよびN-メチルピペラジンでの式(2)の化合物の処置から得られた中間体が、次の反応ステップの前に単離を必要としないこと、および反応不純物を除去する簡単な精製手順が、次の反応に充分な純度の化合物または中間体を提供し得ることも見出した。
【0018】
本明細書で用いられる用語「単離された」は、化合物または中間体に言及する場合、化合物または中間体が任意の他の化合物、溶媒または物質から物理的に除去されることを指す。本明細書で用いられる「精製」ステップへの言及は、「単離」ステップとは別であり、後者の完了のみが、化合物または中間体を単離形態で提供し、前者の完了は、化合物または中間体を少なくとも1種の他の化合物、溶媒または他の物質の存在下で提供する。例えば精製ステップは、水性または有機溶媒での洗浄、酸-塩基抽出、簡単な濾過または溶媒交換などのステップを含んでよい。これは、化合物を実質的に純粋な形態で提供する、クロマトグラフィー分離ステップ、例えばフラッシュカラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよび他の分取クロマトグラフィー法と対比されるべきである。
【0019】
したがって特定の実施形態において、本発明の工程は、数グラムスケールで実施される。特定の実施形態において、本発明の工程は、キログラムスケールで実施される。特定の実施形態において、本発明の工程は、数キログラムスケールで実施される。
【0020】
一実施形態において、方法は、式(2)のアミドを、式(5a)の中間体を生成する条件下で、o-トリルマグネシウムクロリドで処置することを含み、式(5a)の中間体は、その場で式(5b)の化合物に互変異性化されてよい:
【化13】
【0021】
特定の実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応は、テトラヒドロフラン(THF)中で実施されてよい。特定の実施形態において、THFは、無水である。特定の実施形態において、反応は、約-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの-5℃~5℃の温度範囲で実施される。一実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応は、約0℃の温度で実施される。一実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応は、約0℃の温度で無水THF中にて実施される。
【0022】
特定の実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応は、式(2)のアミドをo-トリルマグネシウムクロリドの溶液に添加することにより実施される。特定の実施形態において、o-トリルマグネシウムクロリドの溶液は、THF中の溶液である。特定の実施形態において、o-トリルマグネシウムクロリドの溶液は、THF中の溶液で、1モル/Lの濃度である。特定の実施形態において、式(2)のアミドは、o-トリルマグネシウムクロリドの溶液に滴加される。特定の実施形態において、式(2)のアミドは、約0℃の温度でo-トリルマグネシウムクロリドの溶液に滴加される。特定の実施形態において、式(2)のアミドは、約1時間の時間をかけて約0℃の温度でo-トリルマグネシウムクロリドの溶液に滴加される。特定の実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応物は、少なくとも1時間撹拌される。特定の実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応物は、約20℃の温度で少なくとも1時間撹拌される。
【0023】
式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりモニタリングされてよい。特定の実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応物は、式(2)のアミドが反応混合物の約8%以下の量で存在することをHPLC分析が示すまで、約20℃の温度で撹拌される。特定の実施形態において、式(2)のアミドが約8%を超える量で存在することを、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応のHPLC分析が示している場合、THF中の溶液としてのo-トリルマグネシウムクロリドのさらなるアリコートが、反応混合物に滴加される。
【0024】
特定の実施形態において、式(2)のアミドが反応混合物の約8%以下の量で存在することをHPLC分析が示す場合、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応物は、酢酸エチルで希釈される。特定の実施形態において、式(2)のアミドとo-トリルマグネシウムクロリドの間の反応物は、式(5a)およびその互変異性体の式(5b)の化合物を生成する。式(5a)の化合物と式(5b)の化合物の間の互変異性関係を前提として、式(5a)の化合物への任意の言及は、他に断りがなければ、式(5a)の化合物と、存在すればその互変異性体の式(5b)の化合物を意味すると捉えられよう。
【0025】
察知される通り、式(5a)と、存在すればその互変異性体の式(5b)の化合物は、それらが形成される反応混合物から単離されず、直接次の反応に供される。
【0026】
式(5a)の化合物はその後、式(4):
【化14】

の化合物を生成する条件下で、N-メチルピペラジンとの反応に供される。
【0027】
特定の実施形態において、N-メチルピペラジンは、式(5a)の溶液に添加される。特定の実施形態において、式(5a)の化合物は、約5モル当量のN-メチルピペラジンで処置される。特定の実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンとの反応混合物が、約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの、約15℃~25℃の温度範囲で撹拌される。一実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンの反応物は、約20℃の温度で撹拌される。特定の実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンの反応物は、約20℃で約10時間撹拌される。特定の実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンの間の反応は、HPLCによりモニタリングされる。特定の実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンの間の反応物は、式(5a)の化合物(互変異性体の式(5b)を除く)が反応混合物の約2%以下の量で存在することをHPLC分析が示すまで、20℃の温度で撹拌される。特定の実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンの間の反応は、溶液の式(4)の化合物を生成する。
【0028】
特定の実施形態において、式(5a)の化合物とN-メチルピペラジンの間で形成された式(4)の化合物を含む反応混合物は、式(5a)の化合物が反応混合物の約2%以下の量で存在することをHPLC分析が示す場合、約-5℃~5℃の温度範囲に冷却される。特定の実施形態において、温度は、約-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃である。特定の実施形態において、式(4)の化合物を含む反応混合物は、酢酸の水性溶液で希釈される。特定の実施形態において、酢酸の水性溶液は、約7%の濃度を有する。特定の実施形態において、酢酸の水性溶液は、得られた溶液の温度が約20℃を超えないように、式(4)の溶液に添加される。特定の実施形態において、式(4)の溶液は、酢酸の溶液の添加後に、約8のpHを有する。
【0029】
式(4)の化合物は、任意のさらなる反応に先立ってクロマトグラフィーで単離されないが、任意のさらなる反応に先立って精製に供されてもよい。特定の実施形態において、式(4)の化合物は、水性溶媒と有機溶媒の間の分配により精製される。特定の実施形態において、式(4)の化合物は、水相から有機相への抽出により精製される。特定の実施形態において、水性溶液は、式(4)の化合物が溶解された溶液であり、かつ添加された酢酸溶液を含んでよい。特定の実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタンである。特定の実施形態において、式(4)の化合物は、水相からのジクロロメタンへの抽出により精製される。特定の実施形態において、式(4)の化合物は、ジクロロメタンでの水相の複数回の抽出により精製される。特定の実施形態において、水相は、ジクロロメタンで少なくとも2、3または4回抽出される。特定の実施形態において、式(4)の化合物を含有するジクロロメタンの抽出物は、ひとまとめにされ、乾燥剤で乾燥され、濃縮される。特定の実施形態において、乾燥剤は、無水硫酸ナトリウムである。特定の実施形態において、ジクロロメタン中の式(4)の化合物は、溶媒交換により精製される。特定の実施形態において、ジクロロメタン中の式(4)の化合物は、THFでの溶媒交換により精製される。特定の実施形態において、式(4)の化合物のジクロロメタン溶液は、ジクロロメタンが除去されてTHFのみが溶媒として残留するまで、THFのアリコートの添加および次の真空下での溶液の濃縮により、THF中の溶液に変換される。式(4)の化合物が任意の次の反応に先立って単離されないことは、察知されよう。
【0030】
式(4)の化合物はその後、式(3):
【化15】

の化合物を生成する条件下で、ヨウ素との反応に供される。
【0031】
特定の実施形態において、THFの溶液中の式(4)の化合物は、ヨウ素との反応に供されて、式(3)の化合物を生成する。特定の実施形態において、THF中の式(4)の溶液は、ヨウ素との反応に先立って、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの約-5℃~約5℃の範囲の温度に冷却される。特定の実施形態において、ヨウ素は、THFの溶液中にある。特定の実施形態において、THF中のヨウ素の溶液は、式(4)の化合物との反応に先立って、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの約-5℃~約5℃の範囲の温度に冷却される。特定の実施形態において、ヨウ素の冷却溶液は、式(4)の化合物の冷却溶液に添加される。特定の実施形態において、ヨウ素の冷却溶液は、式(4)の化合物の冷却溶液に滴加の様式で添加される。
【0032】
特定の実施形態において、THF中の式(4)の化合物とヨウ素の反応混合物は、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約15℃~約25℃の範囲の温度に昇温される。一実施形態において、反応混合物は、約20℃に昇温される。特定の実施形態において、式(4)の化合物とヨウ素の反応混合物は、約20℃の温度で約15時間撹拌される。
【0033】
特定の実施形態において、式(4)の化合物とヨウ素の反応は、HPLCによりモニタリングされる。特定の実施形態において、式(4)の化合物とヨウ素の反応物は、反応物が2%以下の存在する式(4)の化合物を含むことをHPLC分析が示すまで撹拌される。特定の実施形態において、式(4)の化合物とヨウ素の反応物の15時間を超える撹拌は、HPLC分析により2%以下の式(4)の化合物を含有する反応混合物をもたらすであろう。2%以下の式(4)の化合物が15時間後に存在する場合、反応混合物は、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの約-5℃~約5℃の範囲の温度に冷却され、水酸化マグネシウムおよび酢酸の水性溶液が、反応混合物に添加される。特定の実施形態において、0.2モル当量の水酸化マグネシウムが、添加される。特定の実施形態において、酢酸は、水性溶液中に約10%v/vの濃度で存在する。特定の実施形態において、式(4)の化合物、ヨウ素、水酸化マグネシウムおよび酢酸を含む反応混合物は、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約15℃~約25℃の範囲の温度に昇温され、少なくとも15時間撹拌される。特定の実施形態において、反応混合物は、HPLC分析により2%以下の式(4)の化合物を含有する。特定の実施形態において、反応混合物は、式(3)の化合物を含有する。
【0034】
特定の実施形態において、式(3)の化合物は、THFの溶液中にあり、溶液はさらに、ヨウ素、水酸化マグネシウムおよび酢酸を含む。特定の実施形態において、式(3)の化合物は、次の反応ステップに先立って精製される。特定の実施形態において、式(3)の化合物の精製は、チオ硫酸ナトリウム(Na)の水性溶液が添加される前に、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃などの約0℃~約10℃の範囲の温度への反応混合物の冷却を必要とする。特定の実施形態において、チオ硫酸ナトリウムの水性溶液の濃度は、約10%である。特定の実施形態において、反応混合物は、チオ硫酸ナトリウムの水性溶液の添加の間、10℃以下の温度で保持される。
【0035】
特定の実施形態において、THFおよび水性チオ硫酸ナトリウムの溶液中の式(3)の化合物は、存在するTHFが除去されるように、真空蒸留に供される。特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する反応混合物からのTHFの真空蒸留は、40℃以下の温度で実施される。
【0036】
特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する溶液は、塩酸の水性溶液が添加される前に、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃などの約0℃~約10℃の範囲の温度に冷却される。
【0037】
特定の実施形態において、塩酸の水性溶液の濃度は、約2mol/Lである。特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する溶液は、塩酸の水性溶液の添加の結果として、約1~約2の間のpHに調整される。特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する溶液は、塩酸の水性溶液の添加の間、10℃以下の温度で保持される。特定の実施形態において、酸性化された水性溶液は、酢酸エチル(EtOAc)への抽出により精製される。
【0038】
特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する酸性化された水性溶液は、酢酸エチルへの抽出後に、約8~約9の間のpHに調整される。特定の実施形態において、水酸化ナトリウム(NaOH)の水性溶液は、式(3)の溶液のpHを調製するために用いられる。特定の実施形態において、NaOHの水性溶液は、約2mol/Lの濃度を有する。特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する溶液は、NaOHの水性溶液の添加の間、10℃以下の温度で保持される。
【0039】
特定の実施形態において、約8~約9の間のpHでの式(3)の溶液は、相抽出により精製される。特定の実施形態において、式(3)の水性溶液は、ジクロロメタン中に抽出され、ジクロロメタンのひとまとめにされた抽出物は、硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥される。特定の実施形態において、式(3)の化合物を含有する溶液の容量は、真空下で低減される。特定の実施形態において、式(3)の溶液は、約20mL/g化合物の濃度である。
【0040】
本発明者らは、式(3)の中間体化合物が、実施される次の反応のために単離を必要とせず、溶媒交換手順により充分に生成され得ることを見出した。
【0041】
特定の実施形態において、式(3)の化合物のジクロロメタン溶液は、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約15℃~約25℃の範囲の温度に冷却され、その後、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)での溶媒交換に供される。特定の実施形態において、MTBEは、式(3)の冷却溶液に添加される。特定の実施形態において、MTBEは、式(3)の冷却溶液に約20分、約30分または約40分の時間をかけて添加される。特定の実施形態において、ジクロロメタンおよびMTBE中の式(3)の溶液の容量は、真空下にて40℃以下の温度で低減される。特定の実施形態において、MTBEでの溶媒交換手順が、ガスクロマトグラフィーにより分析された時に、式(3)の溶液がジクロロメタンを3%以下の濃度で含有するまで、繰り返される。特定の実施形態において、溶媒交換手順は、少なくとも2回繰り返される。
【0042】
特定の実施形態において、MTBE中の式(3)の化合物の懸濁液が、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約15℃~約25℃の範囲の温度で少なくとも1時間造粒される。特定の実施形態において、造粒された式(3)の化合物は、濾過により単離される。特定の実施形態において、式(3)の化合物は、MTBEのアリコートで洗浄される。特定の実施形態において、式(3)の化合物は、少なくとも5アリコートのMTBEで洗浄される。特定の実施形態において、洗浄された式(3)の化合物は、真空下にて30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、また40℃などの約30℃~約40℃の範囲の温度で乾燥される。特定の実施形態において、単離された式(3)の化合物は、固体である。特定の実施形態において、単離された式(3)の化合物は、オフホワイト色の固体である。特定の実施形態において、単離された式(3)の化合物は、褐色の固体である。特定の実施形態において、単離された式(3)の化合物は、オフホワイト色~褐色の固体である。特定の実施形態において、式(3)の化合物は、さらなる単離ステップに供されてもよい。
【0043】
式(3)の化合物はその後、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドおよび塩基との反応に供されて、式(1):
【化16】

の化合物を生成する。
【0044】
特定の実施形態において、用いられる塩基は、カリウムtert-ブトキシド(KOtBu)である。
【0045】
特定の実施形態において、単離された式(3)の化合物は、THFに溶解される。特定の実施形態において、THFは、無水である。特定の実施形態において、式(3)の化合物は、不活性雰囲気下でTHFに溶解される。特定の実施形態において、不活性雰囲気は、窒素雰囲気である。特定の実施形態において、単離された式(3)の化合物は、窒素下にて-2.5℃、-1.5℃、-1°、0℃、0.5℃、1.5℃、2.5℃、3.5℃、4.5℃、5℃、5.5℃、6.5℃または7.5℃などの約-2.5℃~約7.5℃の範囲の温度でTHFに溶解される。
【0046】
特定の実施形態において、KOtBuが、THFに溶解された式(3)の化合物に添加される。特定の実施形態において、KOtBuと式(3)の化合物との混合物は、少なくとも15分間撹拌される。
【0047】
特定の実施形態において、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドが、KOtBuと式(3)の化合物の溶液に添加される。特定の実施形態において、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドは、少なくとも30分の時間をかけて、5℃以下の温度で滴加される。特定の実施形態において、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドとKOtBuと式(3)の化合物との混合物が、5℃以下の温度で少なくとも30分間、撹拌される。特定の実施形態において、式(3)の反応物が、式(3)の化合物が2%以下の濃度で存在することをHPLCによる分析が示すまで撹拌される。
【0048】
特定の実施形態において、2%以下の式(3)を含有する反応混合物が、水で希釈される。特定の実施形態において、反応混合物は、水で希釈される時には20℃以下の温度である。特定の実施形態において、希釈された反応混合物は、約1~約2の間のpHに酸性化される。特定の実施形態において、希釈された反応混合物は、塩酸の水性溶液を用いて酸性化される。特定の実施形態において、塩酸の水性溶液は、約2mol/Lの濃度を有する。特定の実施形態において、酸性化された反応混合物は、n-ヘプタンで洗浄される。
【0049】
特定の実施形態において、酸性化された反応混合物は、約8~約9の間のpHに調整される。特定の実施形態において、NaOHの水性溶液が、酸性化された反応混合物のpHを調整するために用いられる。特定の実施形態において、NaOHの水性溶液は、約2mol/Lの濃度を有する。特定の実施形態において、酸性化された反応混合物は、pHがNaOHの水性溶液で調整される時、約20℃以下の温度で保持される。特定の実施形態において、pH調整された反応混合物は、ジクロロメタン中に抽出される。特定の実施形態において、反応混合物は、ジクロロメタン中に少なくとも3回抽出される。特定の実施形態において、ひとまとめにされたジクロロメタンの抽出物が、硫酸ナトリウムで乾燥される。特定の実施形態において、ジクロロメタンの乾燥された抽出物は、シリカゲルのプラグに循環される。特定の実施形態において、ジクロロメタンの乾燥された抽出物は、シリカゲルのプラグで少なくとも3回濾過される。特定の実施形態において、シリカゲルのプラグは、ジクロロメタンで洗浄される。特定の実施形態において、シリカゲルは、シリカゲル60である。
【0050】
式(1)の化合物は、多くの溶媒に非常に可溶性または可溶性であるが、本発明者らは、式(1)の化合物が大規模での取り扱いが困難であることを見出した。理論に結びつけることを望むものではないが、本発明者らは、これは、式(1)の化合物が非晶質であり、疎水性を有することが原因であり得ると考える。また結晶材料を形成する遊離塩基としての式(1)の化合物の傾向はなく、明確な熱事象および回折ピークを示さない。このことは、工程時間が増加され得、それは加工する際のより大きな材料損失により悪化され得るため、望ましくない。
【0051】
この点について、製造工程における化合物の取り扱いおよび最終生成物の特性を改善する可能性をさらに模索するために、式(1)の化合物と様々な対イオンとの、様々な溶媒中での相互作用の分析を、実行した。
【0052】
当業者は、それらの組み合わせを実行可能な試験選択として根拠づけるためには多くの要因が検討される必要があるため、そのような実行が平易ではなく、自明でないことを、理解されよう。さらに、分析が管理可能になるように、組み合わせの数を限定する必要性がある。例えば、pKa、pH、分子量、融点、比重、溶解度、極性、および外観などの化合物の物理的特性、ならびに劣化プロファイル、反応性、安定性および異性などの化学的特性が、この方法工程の間の取り扱いのためだけでなく化合物が製品として形成された時に活性のままであることを確保するためにも、検討される必要があろう。さらに、塩形態は、その薬物動態特性について分析されることも必要となろう。特定の塩形態が、一態様、例えば製造工程において、所望の性質を提供し得るとしても、その選択は、他の性質(例えば、薬物動態特性)を鑑みて評定されなければならない。この点についてさらに厄介なことに、式(1)の化合物は、3つの可能な酸性部位を有する。そのため、塩形成により式(1)の重大な物理化学的特性を改善および予測することは、平易ではない。
【0053】
本発明者らは、式(1)の化合物の特有の二塩酸塩形態が、特に静脈内(IV)配合剤のための所望の特性を示すことを見出した。その目的は、式(1)の化合物の重大な物理化学的特性の幾つか(例えば、溶解度、安定性、生物学的利用度など)についてどんな点を改善し得るかを検討することであった。この点について本発明者らは最初に、結晶性、多形挙動、溶解度(特に、潜在的な水性IV配合剤中での使用のため)などの基準に基づいてスクリーニングした。例えば本発明者らは、ギ酸塩、酢酸塩、リン酸塩および硫酸塩が、用いられる任意の溶媒中で結晶材料を形成する傾向を有しないことを見出し、これに基づきそれらを考慮しなかった。クエン酸塩、酒石酸塩、臭化水素酸塩およびメタンスルホン酸塩は、最良の結晶形態を生成し、それらは適切な候補になり得ると最初は考えられたが、これらの塩形態の幾つかは、安定であるようでなく、時間を経ると若干の劣化および/または多形性を示す。そのような塩はまた、使用可能なpHにおいても不安定であり、非晶質ゲルに転換する。さらに、これらの塩形態の幾つかは、融解の間に分解し始め、これらの塩を加工することは難題であることを示唆する。
【0054】
式(1)の化合物の塩酸塩形成について、本発明者らは、式(1)の化合物が、理論上は3種の塩形態:一塩酸塩、二塩酸塩および三塩酸塩を形成し得ると仮定した。この研究が実際に実施された時、一塩酸塩は、加工が困難な粘性固体をさらに生成し、結晶材料を形成する傾向が相対的に低いことを示したことが見出された。比較して、三塩酸塩は、加工がより容易であるが、吸湿性であり、より長々しく経費のかかる工程を必要とし、これは望ましくない。また、三塩酸塩形態は、一塩酸塩または二塩酸塩形態のどちらかよりも酸性であり、これは、対象に投与されれば局所刺激を誘導するであろう。対照的に、二塩酸塩は驚くべきことに、それが非晶質形態で生成されたとしても、管理可能な加工、安定性および治療転帰に関して理想的であることが見出された。特定の実施形態において、二塩酸塩は、例えば95%を超える純度で、一塩酸塩または三塩酸塩のどちらかを実質的に含まずに生成される。
【0055】
したがって一実施形態において、本発明はまた、式(1):
【化17】

の化合物の二塩酸塩を調製する方法であって、
a)式(2):
【化18】

の化合物を、式(3):
【化19】

の化合物を得るのに充分な条件下で、逐次o-トリルマグネシウムクロリド、N-メチルピペラジンおよびヨウ素で処置すること、
b)ステップa)からの式(3)の化合物を、式(1)の化合物を得るのに充分な条件下で、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドおよび適切な塩基で処置すること、
c)式(1)の化合物を、式(1)の化合物の二塩酸塩を得るのに充分な条件下で、ジエチルエーテル中の塩酸の溶液で処置すること、
を含む、方法を提供する。
【0056】
本発明者らは、式(1)の化合物が、二塩酸塩に変換され得ることを見出した。さらに本発明者らは、式(1)の化合物は、式(1)の化合物の遊離塩基の単離を行わずに二塩酸塩に変換され得るが、幾つかの実施形態において、式(1)の化合物は、二塩酸塩への変換前に単離され得ることを見出した。
【0057】
特定の実施形態において、シリカゲルでの濾過から得られた式(1)の化合物を含有するジクロロメタンのひとまとめにされた抽出物は、真空下にて40℃以下の温度で濃縮される。特定の実施形態において、ジクロロメタンの抽出物は、濃縮されてジクロロメタンの溶液中の式(1)の化合物を与え、ここでの溶液は、約10mL/gの式(1)の濃度を有する。特定の実施形態において、ジクロロメタン中の式(1)の溶液は、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの約-5℃~約5℃の範囲の温度に冷却される。特定の実施形態において、塩酸の水性溶液が、式(1)の冷却溶液に添加される。特定の実施形態において、塩酸の水性溶液は、式(1)の冷却溶液に滴加される。特定の実施形態において、式(1)の冷却溶液は、塩酸の水性溶液の添加の間、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの約-5℃~約5℃の範囲の温度で保持される。特定の実施形態において、塩酸の水性溶液の濃度は、約2mol/Lである。
【0058】
特定の実施形態において、式(1)の二塩酸塩の懸濁液が、塩酸の添加後に得られる。特定の実施形態において、式(1)の二塩酸塩の懸濁液は、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃などの約-5℃~約5℃の範囲の温度で約1時間撹拌される。特定の実施形態において、MTBEは、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約15℃~約25℃の温度で式(1)の二塩酸塩の懸濁液に添加される。特定の実施形態において、MTBEは、約20分、約30分または約40分の時間をかけて式(1)の二塩酸塩の懸濁液に添加される。特定の実施形態において、ジクロロメタンおよびMTBE中に懸濁された式(1)の溶液の容量は、真空下にて40℃以下の温度で低減される。特定の実施形態において、MTBEでの溶媒交換手順が、ガスクロマトグラフィーにより分析された時に式(1)の溶液が3%以下の濃度のジクロロメタンを含有するまで繰り返される。特定の実施形態において、溶媒交換手順は、少なくとも2回繰り返される。
【0059】
特定の実施形態において、式(1)の二塩酸塩を含有する懸濁液は、少なくとも1時間、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約15℃~約25℃の温度で造粒される。
【0060】
特定の実施形態において、式(1)の化合物が、生成される。他の実施形態において、式(1)の化合物またはその塩が、生成される。この点について、塩は、医薬的に許容できる塩であってよい。
【0061】
また別の態様において、本発明は、式(1):
【化20】

の化合物の二塩酸塩を提供する。
【0062】
特別な実施形態において、一塩酸塩または三塩酸塩を実質的に含まない二塩酸塩を生成することが、望ましい。この点について本発明者らは、これが、1.80:1、1.81:1、1.82:1、1.83:1、1.84:1、1.85:1、1.86:1、1.87:1、1.88:1、1.89:1、および約1.90:1の比などの約1.8~1.9:1の酸:塩基モル比(25℃)で実現され得ることを見出した。
【0063】
本明細書における任意の先行の発行物(またはそれに由来する情報)または公知の任意事柄への言及は、その先行の発行物(またはそれに由来する情報)または公知の事柄が、本明細書が関係しようとする分野の共通する一般的知識の一部を形成するという知識または承認または任意の形態の示唆ではなく、そしてそう捉えるべきでない。
【0064】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の限定と解釈されるべきでない。
【0065】
以下の反応は、ミリグラム、グラムまたはキログラムスケールで実施されてよい。
【化21】
【0066】
N-メチル-6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-4-(o-トリル)ニコチンアミド(3)の合成
1.6-クロロ-N-メチルニコチンアミドを、無水THF(20容量/g)に溶解し、少なくとも3分間20±5℃(目標20℃)でN下にて撹拌する(無色、わずかに濁った溶液)。
2.THF(2.5当量)中のo-トリルマグネシウムクロリドの1M溶液を、0±5℃(目標0℃)に冷却し、N下で撹拌する(透明暗褐色/黒色溶液)。
3.6-クロロ-N-メチルニコチンアミド溶液を、0±5℃でo-トリルマグネシウムクロリド溶液に滴加する(目標0℃で少なくとも60分間)。
4.反応物を、20±5℃(目標20℃)に昇温させ、260nmで8%以下の6-クロロ-N-メチルニコチンアミドが存在することをHPLCが示すまで、少なくとも1時間撹拌する(暗緑色/褐色溶液)。HPLCの詳細を適合させることができないなら、THF中の1M o-トリルマグネシウムクロリドの追加の充填物を、HPLCの詳細が適合されるまで0±5℃(目標0℃)で緩やかに添加し撹拌する。
5.反応物を、0±5℃(目標5℃)に冷却し、EtOAc(6.6g/g)を、10℃以下(目標5℃)で添加する。
6.混合物を、20±5℃(目標20℃)に昇温させ、少なくとも40分間撹拌する。
7.N-メチルピペラジン(5当量)を、20±5℃(目標20℃)で一度に添加し、反応物を、260nmおよび330nmで2%以下の中間体5aが存在することをHPLCが示すまで少なくとも10時間撹拌する。
8.反応混合物を、5±5℃(目標5℃)に冷却し、15±5℃の水中の7%AcOH(20容量/g)を、内部温度が20℃以下(およそpH8)で保持されるような速度で添加する。
9.相を、分離し、水相を、DCM(4×10容量/g)で逆抽出する(暗褐色/赤橙色/黄色溶液)。
10.ひとまとめにした有機相を、無水NaSO(4.0g/g)で乾燥させ、濾過しDCM(2×5容量/g)で洗浄する。
11.溶液を、THFでの溶媒交換を介して、40℃以下でおよそ20mL/gの6-クロロ-N-メチルニコチンアミドへと真空下で濃縮する。
12.中間体2溶液を、0±5℃(目標0℃)に冷却する。
13.I(1.5当量)を、N下で無水THF(10容量/g)に溶解し、0±5℃(目標0℃)に冷却する。
14.ヨウ素溶液を、0±5℃(目標0℃)で中間体2溶液に滴加する。
15.反応物を、20±5℃(目標20℃)に昇温させ、330nmで2%以下の中間体2が存在することをHPLCが示すまで少なくとも15時間撹拌する。HPLCの詳細を適合させることができないなら、水酸化マグネシウム(0.2当量)および水中の10%v/v酢酸(1.5容量/g)を、0±5℃(目標0℃)で反応混合物に添加し、20±5℃(目標20℃)に昇温させかつHPLCの詳細が適合するまでさらに少なくとも15時間撹拌する。
16.反応物を、5±5℃(目標5℃)に冷却し、水中の10%Na(10容量/g)を、内部温度が10℃以下で保持されるような速度で添加する。
17.THFを、40℃以下で真空下にて蒸留する。
18.溶液を、5±5℃(目標5℃)に冷却し、2M HCl(およそ3.5容量/g)を、10℃以下でpHを1~2(目標pH1.5)に調整するために添加する。
19.水相を、EtOAc(3×30容量/g)で抽出する。
20.水相を、5±5℃(目標5℃)に冷却し、2M NaOH(およそ4容量/g)を、10℃以下でpHを8~9(目標pH8.5)に調整するために添加する。
21.水相を、DCM(3×30容量/g)で抽出し、ひとまとめにした有機相を、無水NaSO(2g/g)で乾燥させ、濾過しDCM(2×5容量/g)で洗浄する。
22.溶液を、容量が約20mL/gに減少するまで、40℃で真空下にて濃縮する。
23.MTBE(20容量/g)での溶媒交換を、溶液を20±5℃(目標20℃)に冷却すること、およびMTBEを20~40分(目標30分)かけて緩やかに添加することにより実施する。溶液を、容量が約20mL/gに減少するまで40℃以下で真空下にて濃縮する。
24.MTBE(20容量/g)での溶媒交換を、DCM含量が3%以下であることをGCが示すまで繰り返す。
25.得られた懸濁液を、20±5℃(目標20℃)で少なくとも1時間造粒する。
26.生成物を、濾過しMTBE(5×6mL/g)で洗浄し、35±5℃で真空下にて乾燥させて、64%の収率でオフホワイト色~褐色の固体である式(3)の化合物を産出する。
【化22】
【0067】
N-{[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}-N-メチル-4-(2-メチルフェニル)-6-(4-メチル-1-ピペラジニル)-3-ピリジンカルボキサミド(1)の合成
1.中間体3(1当量)を、20±5℃(目標20℃)でN下にて無水THF(10容量/g)に溶解し、-2.5±7.5℃(目標0℃)に冷却する。
2.カリウムtert-ブトキシド(1.5当量)を、5℃以下で添加し、少なくとも15分間撹拌する。
3.3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロミド(1.2当量)を、5℃以下で少なくとも30分かけて滴加する。
4.反応混合物を、260および300nmで2%以下の中間体3が存在することをHPLCが示すまで5℃以下で少なくとも30分間撹拌する。
5.反応が完了したら、水(10容量/g)を、20℃以下で添加する。
6.反応混合物を、20℃以下で2M HCl(およそ3容量/g)を用いてpH1~2(目標pH1.5)に酸性化する。
7.酸性化された溶液を、n-ヘプタン(1×10容量/g)で洗浄する。
8.水相を、20℃以下で2M NaOH(およそ3容量/g)を用いてpH8~9(目標pH8.5)に塩基性化する。
9.水相を、DCM(3×10容量/g)で逆抽出する。
10.ひとまとめにされたDCM層を、無水NaSO(2g/g ステージIV)で乾燥させ、シリカゲル60プラグ(0.4g/g)に3回循環させる。プラグを、DCM(2×2容量/g)で洗浄する。
11.溶液を、容量が約10mL/gに減少するまで40℃で真空下にて濃縮する。
12.溶液を、0±5℃(目標0℃)に冷却し、エーテル(1.5当量)中の2M HClを、内部温度が0±5℃(目標0℃)で保持される速度で滴加する。
13.ベージュ色の懸濁液を、少なくとも1時間-0±5℃で撹拌する。
14.MTBE(20容量/g)での溶媒交換を、溶液を20±5℃(目標20℃)に冷却すること、およびMTBEを20~40分(目標30分)かけて緩やかに添加することにより実施する。溶液を、容量が約10mL/gに減少するまで40℃以下で真空下にて濃縮する。
15.MTBE(20容量/g)での溶媒交換を、DCM含量が3%w/w以下であることをGCが示すまで繰り返す。
16.得られた懸濁液を、20±5℃(目標20℃)で少なくとも1時間造粒する。
17.生成物を、濾過し、MTBE(2×2.5mL/g)で洗浄し、55±5℃で真空下にて乾燥させて、75%の収率でオフホワイト色~黄色の固体を産出する。
18.生成物を、粉砕し、さらに55±5℃で真空下にて乾燥させて、95%の収率でオフホワイト色~黄色の固体である式(1)の化合物を産出する。
【0068】
実施例2 - a)最初の塩スクリーニング試験
式(1)の化合物の溶解度を最初に、50種の溶媒中で定性的に試験した。全てのSAS実験において、式(1)の化合物の非晶質遊離塩基を、実験物の蒸発後に得た。遊離塩基は、ほぼ全ての溶媒に非常に可溶性または可溶性であり、水が唯一の貧溶媒である。
【0069】
塩の形成を、144の実験からなるスクリーニングで調査した。スクリーニングを、式(1)の化合物の水系静脈内配合剤に最も適した濃度を含むように設計した。スクリーニングでは12種の溶媒、12種の酸および1:1.05の塩基:酸の1種のモル比を用いた。6種のモノプロトン酸を、6種のジ-またはポリプロトン酸と共に使用した。用いた12種の溶媒系は、ほとんどの溶媒分類に及び、以下の通りである:HO、エタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、クメンおよびDMSO。
【0070】
以下の12種の対イオンを用いた:ギ酸;酢酸;シュウ酸;クエン酸;酒石酸;リン酸;塩酸(37%、水性);臭化水素酸(48%、水性);硫酸(98%);メタンスルホン酸;p-トルエンスルホン酸およびエタン1,2-ジスルホン酸。ほとんどの実験を、スラリーとして実施された水中のもの、またはクエン酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸および1,2-エタンジスルホン酸を用いたものを除き、溶液中で実施した。
【0071】
水の実験の場合、ほとんどの実験は、室温での72時間の熟成の後に透明の溶液をもたらした。幾つかの実験はわずかな混濁を示したが、固体は回収され得なかった。5℃で24時間の冷却の後、固体は得られなかった。実験物を、最後に60℃および10mbar(1000Pa)で蒸発させ、得られた固体を測定した。
【0072】
エタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、エチルメチルケトン、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびヘプタンの実験の場合、固体は、室温での熟成後に得られた。沈殿が72時間の熟成後に起こらなければ、試料を、最初に-20℃に冷却し、固体が得られなければ、30℃および10mbar(1000Pa)で蒸発させた(exaporated)。
【0073】
クメン実験の場合、固体は、室温での熟成後に得られた。沈殿が72時間の熟成後に起こらなければ、試料を、最初に-20℃に冷却し、固体が得られなければ、90℃および10mbar(1000Pa)で蒸発させた。
【0074】
DMSO実験の場合、固体は、室温で48時間の熟成後に得られなかった。各実験物に、ジエチルエーテルを塩の貧溶媒として10:1比(2mL)で添加した。これは、なんらかの固体をもたらさなかったため、溶液を、5℃で一晩放置して冷却した。ほとんどの例で、黄色粘性液の相分離が観察された。最後に、試料を、固体を得るために、30℃および100mbar(10000Pa)で24時間蒸発させ、その後90℃、10mbar(1000Pa)で24時間蒸発させた。
【0075】
以下の結果が、得られた:
【0076】
ギ酸実験:XRDパターンは、観察されなかった。全ての実験は、非晶質材料をもたらした。
【0077】
酢酸実験:XRDパターンは、観察されなかった。全ての実験は、非晶質材料をもたらした。
【0078】
シュウ酸実験:2つのパターンが、得られた。両方のパターンは、安定性テストの後で不変のままであった。DSC分析は、2種の熱事象、おそらく融解と、その後のより高温での分解を示す。HPLC純度は、98%を超えた。
【0079】
クエン酸実験:4つのパターンが、得られた。安定の後、ほとんど全ての試料が、単一パターンに転換した。TGおよびDSC分析は、明確な熱事象を示さなかった遊離塩基と比較して、この形態が分解を伴い融解することを示す。HPLC純度は、100%であった。
【0080】
酒石酸実験:2つのパターンが、得られた。全ての実験物は、安定性実験の後に単一パターンに転換した。TG分析は、2つの熱事象、つまり融解と、直後の熱分解を示す。HPLC純度は、100%であった。
【0081】
PO酸実験:1つのパターンが、安定の後に得られた。DSC分析は、2つの別の吸熱事象、おそらく融解と、その後のより高温での分解が起こることを示す。HPLC純度は、100%であった。
【0082】
HCl実験:1つのパターンが、3つの実験で得られた。安定の後、このパターンは、もう1つの実験で出現した。HPLC純度は、99%を超えた。
【0083】
HBr実験:3つのパターンが得られ、全ての実験は、結晶材料をもたらした。それらの1つだけが、テストの間に他のものに転換した。TGおよびDSC分析は、質量の損失を生じない明確な融解事象を示す。HPLC純度は、99%を超えた。
【0084】
SO実験:1つの回折パターンが、1つの実験のみで得られた。ストレステストの後、全ての実験は、非晶質材料をもたらした。DSC分析は、より高温での吸熱事象を示すが、不確定であった。HPLC純度は、99%を超えた。
【0085】
メタンスルホン酸実験:1つのパターンが、大部分の実験で得られた。これは、新しい回折パターンが観察された1つの実験以外、安定性テストの後も不変のままであった。DSC分析は、明確な熱事象を示さなかった遊離塩基と比較して、複数の割り当て不能な熱事象。HPLC純度は、100%であった。
【0086】
p-トルエンスルホン酸実験:3つのパターンが、観察された。安定の後、全ての実験物が、結晶材料に変換し、新しい回折パターンが出現した。DSC分析は、材料が少量であることにより不確定と立証した。HPLC純度は、97%を超えた。
【0087】
1,2-エタンジスルホン酸実験:6つのパターンが、得られた。ストレステストの後、ほとんどが非晶質材料に転換したが、2つの例外があった。これらの2つの一方は、新しい回折パターンに対応する。DSC分析は、多形転移(polymorphic transitions)または融解事象のどちらかに割り当てられ得る少数の吸熱事象を示す。HPLC純度は、98%を超えた。
【0088】
最初の結論 - 塩スクリーニングは、以下の基準:結晶性(より重い計量)および多形挙動、溶解度および安定性、に基づき塩形成に最も適した候補としてクエン酸塩、トシル酸塩、酒石酸塩、臭化物、1-2-エタンジスルホン酸、塩酸塩およびメシル酸塩を強調した。
【0089】
b)第二の塩スクリーニング試験
スケールアップ能力の基準(より高収率およびより多量)に基づいて、一塩酸塩、クエン酸塩および酒石酸塩を、物理化学的特徴づけ、予備的安定性および水溶性に関してさらに調査することが決定された。
【0090】
結果を、以下に要約する。
【0091】
全ての3種の塩を、数グラムおよびキログラムスケールで得ることができた。
【0092】
クエン酸塩を、1.05:1の酸:塩基モル比および25℃で酢酸エチル溶媒から第二の試行において得た。塩は、3日の熟成後に沈殿した。XRPDパターンは、最初の塩スクリーニングの間に同定された「クエン酸塩1」のパターンと一致していた。最初のスケールアップ実験は、低結晶性の材料をもたらしたが、これは40℃/75%RHでの暴露後に改善した。第二のスケールアップ実験と同じ条件で実施された第三のスケールアップ実験は、「クエン酸塩1」の生成に成功した。
【0093】
酒石酸塩を、3日の熟成後に、1.05:1の酸:塩基モル比でアセトニトリルから第一の試行において得た。第一の実験で得られた結晶固体のパターンは、最初のスクリーニングの間に同定された「酒石酸塩2」パターンに対応した。
【0094】
一塩化物塩を、3日の熟成後に、1.05:1の酸:塩基モル比でジエチルエーテルから第三の試行において得た。実験で得られた結晶固体のパターンは、最初のスクリーニングの間に同定された「塩化物1」のパターンに対応した。
【0095】
最初の試行は、塩スクリーニングの間に検出されなかった新しい結晶形態をもたらし、それを「塩化物2」と表す。第二の試行は、非晶質材料をもたらし、それは40℃/75%RHでの暴露後に結晶性を改善した(「塩化物1」)。
【0096】
スケールアップされた塩の主な特性および特徴を、表1に簡単に表す。「pH max」は、化合物が最大溶解度「Smax」を有するpHを表す。分解/融解範囲の温度および溶媒分子の存在は、熱分析から推定される。多形のリスクは、この作業の間に同定された形態の数および塩スクリーニングの目標パターンの再現性に基づいて評定した。
【表1】
【0097】
第二のスクリーニングの結論
結晶性に関して - これは、沈殿により実現され得た。クエン酸塩および塩化物の場合、沈殿が実験物の熟成により起こらなかった場合に、溶液の急速な蒸発が非晶質固体を産したため、溶媒の選択は非常に重要と思われる。一塩化物は、水和物または多型を形成する可能性が高く、酒石酸塩はおそらく、不均化試験の幾つかでXRPDにより記録された通り、新しい形態を有する。全ての3種の塩は、周囲光、高温および高湿の存在下で最大1週間、良好な熱安定性および固体状態安定性を示す。クエン酸塩は、3%過酸化水素中で劣化した(HPLCによる結論として)。
【0098】
一般的結論として、全ての塩は、良好な特性および欠点の両方を示す。3種のスケールアップされた塩の組み合わせのうち、クエン酸塩および塩化物は、最も有望である。一塩化物の主な欠点は、水和物を形成する可能性であるが、クエン酸塩は、酸化条件での劣化およびpH4.5での不均化を示したが、それは塩化物の場合には起こらなかった。
【0099】
その後、式(1)の化合物の二および三塩酸塩を生成し得るかどうかを知り、これらの新しい塩形態の適切性を調査するための試験を進めることが、企図された。
【0100】
実施例3 - 式(1)の化合物の2HCl塩の生成
ジエチルエーテル溶液中の約2M(1.8~1.9M)塩酸を、式(1)の化合物の遊離塩基を含有する溶液に緩やかに充填する。混合物を、撹拌し、その後昇温させ、tert-ブチルメチルエーテルを、緩やかに充填する。混合物を、わずかな減圧下で式(1)の化合物の0.01L/gの近似容量に濃縮し、その後、冷却する。tert-ブチルメチルエーテルによる溶媒交換工程を、ジクロロメタン含量がs3%w/wであることをGCが示すまで繰り返す。得られた懸濁液を、造粒し、濾過により単離し、各湿性ケークを、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄する。2HCl塩を、真空オーブン内で一定重量に乾燥させて、オフホワイト色~黄色の固体を産出する。固体をその後、粉砕し、さらに乾燥させて、最終的な2HCl塩の薬物を産する。
【表2】
【0101】
式(1)の化合物の2HCl塩の特徴づけ
元素分析を、参照標準117621で実施し、結果は以下の通りである:
観測量:C 53.85%;H 5.11%;Cl 11.27%;N 9.03%
必要量:C 53.94%;H 4.85%;Cl 11.37%;N 8.99%
【0102】
バッチ117621のデータは、式(1)の化合物の2HCl塩で理論的に予期されたものと一致する。
【0103】
FT-IR - 式(1)の化合物の2HCl塩 - 図1参照。
質量分析 - 質量分析を、参照標準117621で実施し、データを図2に示す。
粉末X線回折(XRPD)および示差走査熱量測定(DSC)
XRPDおよびDSC分析は、式(1)の化合物の2HCl塩が非晶質であることを示す(図7および8参照)。
物理化学的特徴
式(1)の化合物の2HCl塩の物理化学的特徴の概要を、以下に提供する。
【0104】
外観:白色~黄色粉末
溶解度:水に非常に可溶であり(<0.2mg/μL)、エタノールに大いに可溶であり(0.1~0.2mg/μL)、1-プロパノールおよびアセトニトリルにわずかに可溶である(0.01~0.03mg/μL)。
融解範囲:120~124℃
pKa(遊離塩基):推定pKa1=7.54、pKa2=4.05;計算pKa1=7.07
吸湿性(90%RHでの水収量):3.2%
pH:2~3(精製水中の5mg/mL溶液)
多形:検出できない
【0105】
安定性データ
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8