(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】燃焼システム
(51)【国際特許分類】
F23J 15/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
F23J15/00 A
(21)【出願番号】P 2019538444
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2019009202
(87)【国際公開番号】W WO2020179077
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】清永 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 徹
(72)【発明者】
【氏名】春田 正毅
(72)【発明者】
【氏名】秦 慎一
(72)【発明者】
【氏名】猪股 雄介
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】村山 美保
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047377(WO,A1)
【文献】特開昭55-121826(JP,A)
【文献】特開2000-24453(JP,A)
【文献】特許第6410202(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/042895(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/131636(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0225119(US,A1)
【文献】A.Inglot,M.Najbar,Phases in Vanadium Pentoxide-Tungsten Trioxide Catalysts, Journal of the Chemical Society Faraday Transactions,英国,THE ROYAL OF CHEMISTRY,1995年01月07日,Vol.91 No1,P145-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00
B01D 53/00
B01J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、
前記排気路に配置され且つ前記排ガス中の煤塵を収集する集塵装置と、
前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応により、除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムであって、
前記脱硝装置は、前記排気路における前記集塵装置の下流側に配置され、
前記脱硝触媒は、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で50wt%以上存在する
とともに、
第2の金属の酸化物を含有し、前記第2の金属
がCo、W
またはNb
であり、前記第2の金属がCoである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上10wt%以下であり、前記第2の金属がWである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が12wt%以上38wt%以下であり、前記第2の金属がNbである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が2wt%以上16wt%以下である、燃焼システム。
【請求項2】
前記燃焼システムは、前記排気路に配置され且つ前記排ガスから熱回収する空気予熱器を更に備え、
前記空気予熱器は、前記集塵装置の上流側に配置される、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項3】
燃料を燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、
前記排気路に配置され且つ前記排ガスから熱回収する空気予熱器と、
前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応により、除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムであって、
前記脱硝装置は、前記排気路における前記空気予熱器の下流側に配置され、
前記脱硝触媒は、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で50wt%以上存在する
とともに、
第2の金属の酸化物を含有し、前記第2の金属
がCo、W
またはNb
であり、前記第2の金属がCoである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上10wt%以下であり、前記第2の金属がWである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が12wt%以上38wt%以下であり、前記第2の金属がNbである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が2wt%以上16wt%以下である、燃焼システム。
【請求項4】
燃料を燃焼させる内燃機関と、
前記内燃機関において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、
前記排気路に配置され且つ前記内燃機関から排出される排ガスから排熱を回収する排熱回収装置と、
前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応により、除去する脱硝装置とを備える燃焼システムであって、
前記脱硝装置は、前記排気路における前記排熱回収装置の下流側に配置され、
前記脱硝触媒は、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で50wt%以上存在する
とともに、
第2の金属の酸化物を含有し、前記第2の金属
がCo、W
またはNb
であり、前記第2の金属がCoである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上10wt%以下であり、前記第2の金属がWである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が12wt%以上38wt%以下であり、前記第2の金属がNbである場合、前記第2の金属の酸化物の含有量が2wt%以上16wt%以下である、燃焼システム。
【請求項5】
前記排熱回収装置は、タービン装置と排ガスエコノマイザとを備え、
前記排ガスエコノマイザは、前記内燃機関から排出される排ガスと前記タービン装置から供給される排ガスとを熱源として蒸気を発生させ、
前記タービン装置は、前記内燃機関から排出される排ガスと、前記排ガスエコノマイザから供給される蒸気とを用いて発電をする、請求項4に記載の燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼システムに関する。より詳しくは、本発明は、燃料が燃焼することによって発生する排ガスを、脱硝触媒を用いて浄化する燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼により大気中に排出される汚染物質の一つとして、窒素酸化物(NO,NO2,NO3,N2O,N2O3,N2O4,N2O5)が挙げられる。窒素酸化物は、酸性雨、オゾン層破壊、光化学スモッグ等を引き起こし、環境や人体に深刻な影響を与えるため、その処理が重要な課題となっている。
【0003】
上記の窒素酸化物を取り除く技術として、アンモニア(NH3)を還元剤とする選択的触媒還元反応(NH3-SCR)が知られている。特許文献1に記載のように、選択的触媒還元反応に用いられる触媒としては、酸化チタンを担体とし、酸化バナジウムを担持した触媒が広く使用されている。酸化チタンは硫黄酸化物に対して活性が低く、また安定性が高いため最も良い担体とされている。
【0004】
一方で、酸化バナジウムはNH3-SCRにおいて主要な役割を果たすものの、SO2をSO3に酸化するので、酸化バナジウムを1wt%程度以上担持できなかった。また、従来のNH3-SCRでは、酸化チタン担体に酸化バナジウムを担持させた触媒が低温ではほとんど反応しないので,350-400℃という高温で使用せざるを得なかった。
しかし、NH3-SCRを実施する装置や設備の設計の自由度を高め、効率化するためには、低温でも高い窒素酸化物還元率活性を示す触媒の開発が求められていた。
【0005】
その後、本発明者らは、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m2/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒を見出した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-275852号公報
【文献】特許第6093101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記特許文献2の更なる改良を試みて鋭意検討した結果、更に優れた窒素酸化物の還元率活性を示す脱硝触媒を見出した。
【0008】
本発明は、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応の際、従来技術に比較して、低温での脱硝効率が更に良い触媒を用いた燃焼システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料を燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、前記排気路に配置され且つ前記排ガス中の煤塵を収集する集塵装置と、前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムであって、前記脱硝装置は、前記排気路における前記集塵装置の下流側に配置され、前記脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の脱硝触媒である燃焼システムに関する。
【0010】
また、前記燃焼システムは、前記排気路に配置され且つ前記排ガスから熱回収する空気予熱器を更に備え、前記空気予熱器は、前記集塵装置の上流側に配置されることが好ましい。
【0011】
また本発明は、燃料を燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、前記排気路に配置され且つ前記排ガスから熱回収する空気予熱器と、前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムであって、前記脱硝装置は、前記排気路における前記空気予熱器の下流側に配置され、前記脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の脱硝触媒である燃焼システムに関する。
【0012】
また本発明は、燃料を燃焼させる内燃機関と、前記内燃機関において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、前記排気路に配置され且つ前記内燃機関から排出される排ガスから排熱を回収する排熱回収装置と、前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置とを備える燃焼システムであって、前記脱硝装置は、前記排気路における前記排熱回収装置の下流側に配置され、前記脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の脱硝触媒である燃焼システムに関する。
【0013】
また、前記排熱回収装置は、タービン装置と排ガスエコノマイザとを備え、前記排ガスエコノマイザは、前記内燃機関から排出される排ガスと前記タービン装置から供給される排ガスとを熱源として蒸気を発生させ、前記タービン装置は、前記内燃機関から排出される排ガスと、前記排ガスエコノマイザから供給される蒸気とを用いて発電をすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る燃焼システムは、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応の際、従来技術に比較して、低温での脱硝効率が更に良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】各実施例に係る第2の金属を含有するバナジウム触媒と含有しないバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図2】各実施例に係る、コバルトを含有するバナジウム触媒と含有しないバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図3】各実施例及び比較例に係る、コバルトを含有するバナジウム触媒の粉末XRDパターンを示すグラフである。
【
図4】各実施例に係る、コバルトを含有するバナジウム触媒のラマンスペクトルを示すグラフである。
【
図5A】各実施例及び比較例に係る、コバルトを含有するバナジウム触媒のV2p領域におけるXPSスペクトルを示すグラフである。
【
図5B】各実施例及び比較例に係る、コバルトを含有するバナジウム触媒のCo2p領域におけるXPSスペクトルを示すグラフである。
【
図6】各実施例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒と含有しないバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図7】各実施例及び比較例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒の粉末XRDパターンを示すグラフである。
【
図8】各実施例及び比較例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒のタングステン元素の割合を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒と含有しないバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図10】各実施例及び比較例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒の粉末XRDパターンを示すグラフである。
【
図11】各実施例及び比較例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒のタングステン元素の割合を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例に係る、タングステンを含有するバナジウム触媒と含有しないバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例に係る、ニオブを含有するバナジウム触媒と含有しないバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施例に係る炭素とコバルトとを含有するバナジウム触媒と、比較例に係るバナジウム触媒のNO転化率を示すグラフである。
【
図15】本発明の第1の適用例に係る燃焼システムの構成を示す図である。
【
図16】本発明の第2の適用例に係る燃焼システムの構成を示す図である。
【
図17】本発明の第3の適用例に係る燃焼システムの構成を示す図である。
【
図18】本発明の第4の適用例に係る燃焼システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る脱硝触媒について説明する。
【0017】
本発明の脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である。このような脱硝触媒は、従来用いられているバナジウム/チタン触媒等の脱硝触媒に比べて、低温環境下でも高い脱硝効果を発揮できる。
【0018】
第1に、本発明の脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分とする。この酸化バナジウムは、酸化バナジウム(II)(VO)、三酸化バナジウム(III)(V2O3)、四酸化バナジウム(IV)(V2O4)、五酸化バナジウム(V)(V2O5)を含み、脱硝反応中、五酸化バナジウム(V2O5)のV元素は、5価、4価、3価、2価の形態を取ってもよい。
なお、この酸化バナジウムは、本発明の脱硝触媒の主成分であり、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の物質を含んでいても良いが、本発明の脱硝触媒中、五酸化バナジウム換算で50wt%以上存在することが好ましい。更に好ましくは、酸化バナジウムが、本発明の脱硝触媒中、五酸化バナジウム換算で60wt%以上存在することが好ましい。
【0019】
第2に、本発明の脱硝触媒は、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であるが、このような第2の金属の酸化物を含むことにより、従来用いられているバナジウム/チタン触媒等の脱硝触媒に比べて、低温環境下でも高い脱硝効果を発揮できる。本発明の脱硝触媒中に不純物が入り込むと、脱硝触媒中にアモルファスの部分が生成されるために結晶構造が連続せず、結晶格子中の線や面がひずむことにより高い脱硝効果が発揮されるが、この不純物としての第2の金属の酸化物が多く存在するほど、高い脱硝効果が発揮されることが推察される。
【0020】
本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化コバルトの含有量が1wt%~10wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で79%~100%のNO転化率を、水分の共存下の場合で38%~90%のNO転化率を示した。
一方、第2の金属の酸化物として、酸化コバルトの含有量が0wt%の脱硝触媒を用いた200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で76%のNO転化率、水分の共存下の場合で32%のNO転化率しか示されなかった。
【0021】
また、第2の金属の酸化物として、酸化タングステンの含有量が12wt%~38wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で83%~96%のNO転化率を、水分の共存下の場合で50%~55%のNO転化率を示した。
一方、第2の金属の酸化物として、酸化タングステンの含有量が0wt%の脱硝触媒を用いた200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で76%のNO転化率、水分の共存下の場合で32%のNO転化率しか示されなかった。
また、第2の金属の酸化物として、酸化タングステンの含有量が62wt%~100wt%の脱硝触媒を用いた200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で3~69%のNO転化率、水分の共存下の場合で0%~29%のNO転化率しか示されなかった。
【0022】
また、第2の金属の酸化物として、酸化ニオブの含有量が2wt%~16wt%の脱硝触媒を用いた選択触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で76wt%~97%のNO転化率、水分の共存化の場合で32%~73%のNO転化率を示した。
【0023】
また、上述の記載では、本発明の脱硝触媒は、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であるとしたが、3wt%以上38wt%以下とすると好ましい。また、第2の金属の酸化物の含有量は、3wt%以上10wt%以下とするとより好ましい。また、第2の金属の酸化物の含有量は、5wt%以上10wt%以下とするとより好ましい。また、第2の金属の酸化物の含有量は、5wt%以上8wt%以下とするとより好ましい。また、第2の金属の酸化物の含有量は、6wt%以上8wt%以下とするとより好ましい。また、第2の金属の酸化物の含有量は、6wt%以上7wt%以下とするとより好ましい。
【0024】
第3に、第2の金属は、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、Feからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である。これにより、酸化バナジウムの結晶構造を乱し、ルイス酸性を高めることができる。とりわけ、Co、Mo、Ce、Sn、Ni、Feの場合は、V2O5の酸化還元サイクルを促進する。また、これらの元素のうち、Coは、酸化力が強いことが知られている。W、Mo、Nbは、いずれも固体酸として機能すると共に、アンモニアの吸着サイトを提供することで、アンモニアが効率的にNOと接触し反応することが可能となる。
【0025】
本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化コバルトの含有量が3.1wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で94.6%のNO転化率を、水分の共存下の場合で69.4%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化タングステンの含有量が8.4wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で92%のNO転化率を、水分の共存下の場合で64%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化モリブデンの含有量が5.4wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で97%のNO転化率を、水分の共存下の場合で62%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化ニオブの含有量が5.0wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で96.7%のNO転化率を、水分の共存下の場合で61.7%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化セシウムの含有量が6.4wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で89.8%のNO転化率を、水分の共存下の場合で52.9%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化スズの含有量が5.6wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で88.1%のNO転化率を、水分の共存下の場合で45.5%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化ニッケルの含有量が2.9wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で81.9%のNO転化率を、水分の共存下の場合で37.9%のNO転化率を示した。
また、本発明の実施形態において、第2の金属の酸化物として、酸化鉄の含有量が3.1wt%の脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で74.5%のNO転化率を、水分の共存下の場合で33.9%のNO転化率を示した。
一方、第2の金属の酸化物を含有しない脱硝触媒を用いた200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で75.5%のNO転化率を、水分の共存下の場合で32%のNO転化率しか示されなかった。
【0026】
また、本発明の脱硝触媒は、300℃以下での脱硝に用いられることが好ましい。これは、本発明の脱硝触媒の焼成温度が300℃であることに由来する。一方で、後述の実施例において、本発明の脱硝触媒は、反応温度200℃以下での選択的触媒還元反応において、高い脱硝効果を発揮したことから、本発明の脱硝触媒は、200℃以下での脱硝に用いることが可能である。200℃以下ではSO2からSO3への酸化が発生しないため、上記の特許文献2でも知見が得られたように、選択的触媒還元反応時には、SO2のSO3への酸化が伴わない。
【0027】
また、上述の記載では、本発明の脱硝触媒は、300℃以下の脱硝に用いられることが好ましいとしたが、好ましくは200℃以下の脱硝に用いられてもよい、更に好ましくは、反応温度が100―200℃の脱硝に用いられてもよい。更に好ましくは、反応温度160-200℃の脱硝に用いられてもよい。あるいは、反応温度が80-150℃の脱硝に用いられてもよい。
【0028】
また、本発明の脱硝触媒は、更に炭素を含有することが好ましい。とりわけ炭素含有率が0.05wt%以上であることが好ましい。なお好ましくは、炭素含有率が0.07wt%以上であってもよい。更に好ましくは、炭素含有率が0.11wt%以上であってもよい。更に好ましくは、炭素含有率が0.12wt%以上であってもよい。更に好ましくは、炭素含有率が0.14wt%以上であってもよい。更に好ましくは、炭素含有率が0.16wt%以上であってもよい。更に好ましくは、炭素含有率が0.17wt%以上であってもよい。更に好ましくは、炭素含有率が0.70wt%以上であってもよい。
炭素を含むことにより、従来用いられているバナジウム/チタン触媒等の脱硝触媒に比べて、低温環境下でも高い脱硝効果を発揮できる。本発明の脱硝触媒中に不純物が入り込むと、脱硝触媒中にアモルファスの部分が生成されるために結晶構造が連続せず、結晶格子中の線や面がひずむことにより高い脱硝効果が発揮されるが、この不純物としての炭素が存在することにより、高い脱硝効果が発揮されることが推察される。
【0029】
以下、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である脱硝触媒を作製する方法を示す。
【0030】
上記の脱硝触媒の作製方法は、バナジン酸塩、キレート化合物、及び第2の金属の化合物の混合物を焼成する工程を備える。
バナジン酸塩としては、例えば、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸ストロンチウム、バナジン酸バリウム、バナジン酸亜鉛、バナジン酸鉛、バナジン酸リチウム等を用いてもよい。
また、キレート化合物としては、例えば、シュウ酸やクエン酸等の複数のカルボキシル基を有するもの、アセチルアセトナート、エチレンジアミン等の複数のアミノ基を有するもの、エチレングリコール等の複数のヒドロキシル基を有するもの等を用いてもよい。
また、第2の金属の化合物としては、キレート錯体、水和物、アンモニウム化合物、リン酸化合物であってよい。キレート錯体としては、例えば、シュウ酸やクエン酸等の錯体であってよい。水和物としては、例えば(NH4)10W12O41・5H2OやH3PW12O40・nH2Oであってよい。アンモニウム化合物としては、例えば(NH4)10W12O41・5H2Oであってよい。リン酸化合物としては、例えばH3PW12O40・nH2Oであってよい。
【0031】
また、上記の混合物には、更にエチレングリコールが含まれることが好ましい。
【0032】
これらの方法で製造された脱硝触媒は、従来用いられているバナジウム/チタン触媒等の脱硝触媒に比べて、低温環境下でも高い脱硝効果を発揮できる。本発明の脱硝触媒中に不純物が入り込むと、脱硝触媒中にアモルファスの部分が生成されるために結晶構造が連続せず、結晶格子中の線や面がひずむことにより高い脱硝効果が発揮されるが、この不純物としての炭素が多く存在するほど、高い脱硝効果が発揮されることが推察される。
【0033】
本発明の実施形態において、バナジン酸アンモニウム、シュウ酸、第2の金属のシュウ酸錯体の混合物を焼成する方法によって製造された脱硝触媒は、水分の共存下でない場合で74.5~100%のNO転化率を、水分の共存下の場合で33.9~90%のNO転化率を示した。
また、上記の混合物に更にエチレングリコールが含まれる方法によって製造された脱硝触媒は、水分の共存下でない場合で100%のNO転化率を、水分の共存下の場合で89%のNO転化率を示した。
一方、このような工程を含まない方法で製造された脱硝触媒として、例えば、バナジン酸アンモニウムとシュウ酸とを混合するが、第2の金属の酸化物を混合せずに、焼成する方法で製造された脱硝触媒は、水分の共存下でない場合で76%のNO転化率、水分の共存下の場合で32%のNO転化率しか示さなかった。
【0034】
また、上記の焼成は270℃以下の温度で行われることが好ましい。
本実施形態に係る脱硝触媒の生成時に、通常の300℃に比較して低温の270℃以下の温度で焼成することにより、当該脱硝触媒に含まれる五酸化バナジウム結晶の構造が局所的に乱れ、高い脱硝効果を発揮できるが、とりわけ五酸化バナジウムの結晶構造中に酸素原子が欠乏しているサイトが出現することで高い脱硝効果が発揮されることが推察される。なお、「酸素原子が欠乏しているサイト」のことを「酸素欠陥サイト」とも呼称する。
【0035】
このようにして調製される脱硝触媒においては、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を比較例と共に、具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
<1 第2の金属として各種金属を含有するバナジウム触媒>
<1.1 各実施例と比較例>
【0039】
[実施例1]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でコバルト(Co)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でCo3O4が3.1wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0040】
[実施例2]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるタングステン(W)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でタングステン(W)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でWO3が8.4wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0041】
[実施例3]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるモリブデン(Mo)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でモリブデン(Mo)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でMoO3が5.4wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、モリブデン(Mo)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0042】
[実施例4]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニオブ(Nb)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でニオブ(Nb)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でNb2O5が5.0wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、ニオブ(Nb)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0043】
[実施例5]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるセシウム(Ce)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でセシウム(Ce)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でCeO2が6.4wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、セシウム(Ce)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0044】
[実施例6]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるスズ(Sn)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でスズ(Sn)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でSnO2が5.6wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、スズ(Sn)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0045】
[実施例7]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニッケル(Ni)を炭酸ニッケルとして0.113g、金属原子換算でニッケル(Ni)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でNiOが2.9wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、ニッケル(Ni)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0046】
[実施例8]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属である鉄(Fe)のシュウ酸錯体を、金属原子換算で鉄(Fe)が3.5mol%となるように、すなわち金属酸化物換算でFe2O3が3.1wt%となるように添加した。得られたバナジウム-異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、鉄(Fe)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0047】
[比較例1]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)4.96g(42.4mmol)とシュウ酸((COOH)2)11.5g(127.6mmol)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、第2の金属を含有しない五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0048】
<1.2 評価>
<1.2.1 NO転化率>
以下の表1の条件の下、反応温度150℃で、固定床流通式触媒反応装置を用いてNH3-SCR反応を行った。触媒層を通過したガスのうち、NOをJasco FT-IR-4700で分析した。
【0049】
【0050】
また、NO転化率を、下記の式(1)により算出した。なお、NO
inは反応管入口のNO濃度、NO
outは反応管出口のNO濃度である。
【数1】
【0051】
(測定結果)
表2に各五酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図1は、この表2をグラフ化したものである。
【表2】
【0052】
水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方で、実施例の脱硝触媒は、概ね、比較例の脱硝触媒よりも高いNO転化率を示した。とりわけ、バナジン酸アンモニウムに対し、コバルト、タングステン、モリブデン、ニオブを添加し焼成した脱硝触媒が高いNO転化率を示した。中でも、水分が共存しない場合においては、実施例3(モリブデンを添加)、水分が共存する場合においては、実施例1(コバルトを添加)が、最も高いNO転化率を示した。
【0053】
<2 第2の金属としてコバルトを含有するバナジウム触媒>
<2.1 各実施例>
【0054】
上記のように、実施例1~実施例8のバナジウム触媒において、水分が共存する場合では、実施例1(コバルトを添加)が、最も高いNO転化率を示したため、コバルトの添加量を変化させることにより、以下の各実施例に係るバナジウム触媒を生成した。
【0055】
[実施例9]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が1wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0056】
[実施例10]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が3wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0057】
[実施例11]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が5wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0058】
[実施例12]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が6wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0059】
[実施例13]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が7wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0060】
[実施例14]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が8wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0061】
[実施例15]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるコバルト(Co)の前駆体であるシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo3O4が10wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0062】
なお、以下の表3は、実施例9~実施例15における、コバルト導入時の前駆体の仕込み量を示す。
【表3】
<2.2 評価>
<2.2.1 NO転化率>
(測定方法)
上記の表1の条件の下、反応温度150℃で、固定床流通式触媒反応装置を用いてNH
3-SCR反応を行った。触媒層を通過したガスのうち、NOをJasco FT-IR-4700で分析した。
また、NO転化率を、上記の式(1)により算出した。
【0063】
(測定結果)
表4に各酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図2は、この表4をグラフ化したものである。
【表4】
【0064】
水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方で、実施例の脱硝触媒は、全て、比較例の脱硝触媒よりも高いNO転化率を示した。とりわけ、水分が共存しない場合においては、実施例12(6wt%)、実施例13(7wt%)が最も高いNO転化率を示し、水分が共存する場合においては、実施例14(8wt%)が最も高いNO転化率を示した。
【0065】
<2.2.2 粉末X線回折>
(回折方法)
粉末X線回折としては、Rigaku smart labにより、Cu-Kαを用いて測定を行った。
【0066】
(回折結果)
図3は、実施例9(1wt%)、実施例10(3wt%)、実施例12(6wt%)、実施例15(10wt%)、及び比較例1(None:0wt%)の粉末XRD(X-Ray Diffraction)パターンを示す。
安定相であるV
2O
5が主成分として存在すると共に、Coの添加率を上げると、Co
3O
4相も出現することが示された。
【0067】
<2.2.3 ラマンスペクトル>
(測定方法)
各五酸化バナジウム触媒の結晶構造について分析するため、ラマン分光法によりラマンスペクトルを測定した。より詳細には、スライドガラス上に、各触媒のサンプルを少量置き、ラマン分光装置によってラマンスペクトルを測定した。測定機器としては、日本分光製NRS-4100ラマン分光光度計を用いた。
【0068】
(測定結果)
図4は、各触媒のラマンスペクトルを示す。Coの添加量を上げると、V
2O
5の結晶構造が崩れ、パターン強度が弱くなることが示された。
【0069】
<2.2.4 X線光電子スペクトル(XPS)測定>
(測定方法)
実施例9(1wt%)、実施例10(3wt%)、実施例12(6wt%)、実施例15(10wt%)、及び比較例1(None:0wt%)につき、電子状態について分析するため、X線光電子スペクトル(XPS:X-Ray Photoelectron Spectrum)を測定した。より詳細には、各実施例及び比較例の触媒の粉末試料を、カーボンテープを用いてサンプルホルダーに固定し、X線光電子スペクトルを測定した。測定装置としては、日本電子製JPS-9010MX光電子分光計を用いた。
【0070】
(測定結果)
図5Aは、V2p領域におけるXPSスペクトルを示す。
図5Bは、Co2p領域におけるXPSスペクトルを示す。Coの添加量を上げると、V
4+及びCo
2+成分が増大することが示された。
【0071】
<3 第2の金属としてタングステンを含有するバナジウム触媒>
<3.1 各実施例>
上記のように、実施例1~実施例8のバナジウム触媒において、水分が共存する場合では、実施例2(タングステンを添加)が2番目に高いNO転化率を示したため、タングステンの添加量を変化させることにより、以下の各実施例に係るバナジウム触媒を生成した。なお、単にタングステンの添加量を変化させるのみならず、後述のように、前駆体として、K2WO4を用いる場合と、H3PW12O40・nH2Oを用いる場合のそれぞれにおいて、タングステンの添加量を変化させた。
【0072】
[実施例16]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、43.9mmolのK2WO4と、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、4.9wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウムの量を調整した。
【0073】
[実施例17]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、43.9mmolのK2WO4と、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、11.8wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウムの量を調整した。
【0074】
[実施例18]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、43.9mmolのK2WO4と、20mlの純水の混合物に、シュウ酸を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、22.1wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウムの量を調整した。
【0075】
[比較例2]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、43.9mmolのK2WO4と、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、略100wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウムの量を調整した。
【0076】
なお、以下の表5は、実施例16~実施例18、及び比較例2における、タングステン導入時の前駆体の仕込み量を示す。
【表5】
【0077】
[実施例19]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、H3PW12O40・nH2Oと、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、38.4wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウム及びH3PW12O40・nH2Oの量を調整した。
【0078】
[比較例3]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、H3PW12O40・nH2Oと、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、61.7wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウム及びH3PW12O40・nH2Oの量を調整した。
【0079】
[比較例4]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、H3PW12O40・nH2Oと、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、77.3wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウム及びH3PW12O40・nH2Oの量を調整した。
【0080】
[比較例5]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、H3PW12O40・nH2Oと、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、84.4wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウム及びH3PW12O40・nH2Oの量を調整した。
【0081】
[比較例6]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)と、H3PW12O40・nH2Oと、20mlの純水の混合物に、シュウ酸((COOH)2)を11.9g(131.7mmol)添加し、室温で10分間攪拌した後、70℃で12時間攪拌した。この前駆体試料を、300℃で4時間焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。なお、生成される脱硝触媒中のWO3の全重量比が、略100wt%となるように、原料としてのバナジン酸アンモニウム及びH3PW12O40・nH2Oの量を調整した。
【0082】
なお、以下の表6は、実施例19、及び比較例3~比較例6における、タングステン導入時の前駆体の仕込み量を示す。
【表6】
<3.2 評価>
<3.2.1 概略>
上記の表1の条件の下、反応温度略150℃で、固定床流通式触媒反応装置を用いてNH
3-SCR反応を行った。触媒層を通過したガスのうち、NOをJasco FT-IR-4700で分析した。
また、NO転化率を、上記の式(1)により算出した。
【0083】
(測定結果)
表7に各五酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図6は、この表7をグラフ化したものである。
【表7】
【0084】
水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方で、タングステン含有量が0wt%の比較例1、及びタングステン含有量が39wt%~100wt%の比較例2~5及び7に比較すると、概して、タングステンの添加量が10~38wt%の間の添加が有効であることが示された。
【0085】
以下、前駆体として、K2WO4を用いる場合と、H3PW12O40・nH2Oを用いる場合のそれぞれについて、粉末X線回折及びSEM-EDSによる元素分析を実施すると共に、各々の場合における、タングステン含有率毎のNO転化率をグラフ化した。
【0086】
<3.2.2 前駆体としてK2WO4を用いる場合>
<3.2.2.1 粉末X線回折及び元素分析>
(測定方法)
粉末X線回折としては、Rigaku smart labにより、Cu-Kαを用いて測定を行った。また、SEM-EDSによる元素分析を行った。
【0087】
(測定結果)
図7は、実施例16(4.9wt%)、実施例17(11.8wt%)、実施例18(22.1wt%)、比較例1(0wt%)、比較例2(100wt%)の粉末XRDパターンを示す。
また、
図8は、横軸をK
2WO
4のmol%とした場合の、タングステン元素の割合(%)を示す。
【0088】
図7及び
図8から、K
2WO
4を増やすことで、結晶相は三斜晶V
4O
7(12wt%)を経て、単斜晶WO
3(100wt%)となったこと、及び、触媒に含まれるタングステン原子の比率が比例的に増加することが示された。
【0089】
<3.2.2.2 NO転化率>
(測定結果)
表8に各五酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図9は、この表6をグラフ化したものである。
【表8】
【0090】
表8及び
図9から分かるように、三斜晶V
4O
7(22.1wt%)にて、触媒活性が最大(96.3%)となった。また、過剰のK
2WO
4は、触媒活性の低下を招き、タングステンの含有量が100wt%では、触媒活性はなかった。
【0091】
<3.2.3 前駆体としてH3PW12O40・nH2Oを用いる場合>
<3.2.3.1 粉末X線回折及び元素分析>
(測定方法)
粉末X線回折としては、Rigaku smart labにより、Cu-Kαを用いて測定を行った。また、SEM-EDSによる元素分析を行った。
【0092】
(測定結果)
図10は、実施例19(38.4wt%)、比較例4(61.7wt%)、比較例5(77.3wt%)、比較例6(84.4wt%)、比較例7(100wt%)の粉末XRDパターンを示す。
また、
図11は、横軸をH
3PW
12O
40・nH
2Oのmol%とした場合の、タングステン元素の割合(%)を示す。
【0093】
図10及び
図11から、H
3PW
12O
40・nH
2Oの仕込み量を増やすことで、H
3PW
12O
40・nH
2O由来の回折ピークが大きくなること、及び、比較的少量の仕込み量でタングステンの含有量が多くなることが示された。
【0094】
<3.2.3.2 NO転化率>
(測定結果)
表9に各五酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図12は、この表9をグラフ化したものである。
【表9】
【0095】
表9及び
図12から分かるように、H
3PW
12O
40・nH
2Oを前駆体とする場合は、タングステンの含有率が38.4wt%において触媒活性が最大(82.9%)となったものの、K
2WO
4を前駆体とする、タングステンの含有率が22.1wt%のバナジウム触媒の方が触媒活性が高い結果となった。
【0096】
<4 第2の金属としてニオブを含有するバナジウム触媒>
<4.1 各実施例>
【0097】
上記のように、実施例1~実施例8のバナジウム触媒において、水分が共存しない場合では、実施例4(ニオブを添加)が、2番目に最も高いNO転化率を示し、水分が共存する場合でも、比較的高いNO転化率を示したため、ニオブの添加量を変化させることにより、以下の各実施例に係るバナジウム触媒を生成した。
【0098】
[実施例20]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニオブ(Nb)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でNb2O5が1.8wt%となるように添加した。得られたバナジウム-ニオブ錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、ニオブ(Nb)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0099】
[実施例21]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニオブ(Nb)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でNb2O5が5.2wt%となるように添加した。得られたバナジウム-ニオブ錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、ニオブ(Nb)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0100】
[実施例22]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニオブ(Nb)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でNb2O5が8.5wt%となるように添加した。得られたバナジウム-コバルト錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、コバルト(Co)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0101】
[実施例23]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニオブ(Nb)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でNb2O5が11.7wt%となるように添加した。得られたバナジウム-ニオブ錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、ニオブ(Nb)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0102】
[実施例24]
バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)とシュウ酸((COOH)2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるニオブ(Nb)のシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でNb2O5が16.2wt%となるように添加した。得られたバナジウム-ニオブ錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、ニオブ(Nb)を含有する五酸化バナジウム(V2O5)の脱硝触媒を得た。
【0103】
なお、以下の表10は、実施例20~実施例24における、ニオブ導入時の前駆体の仕込み量を示す。
【表10】
<4.2 評価>
<4.2.1 NO転化率>
(測定方法)
上記の表1の条件の下、反応温度150℃で、固定床流通式触媒反応装置を用いてNH
3-SCR反応を行った。触媒層を通過したガスのうち、NOをJasco FT-IR-4700で分析した。
また、NO転化率を、上記の式(1)により算出した。
【0104】
(測定結果)
表11に各酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図13は、この表11をグラフ化したものである。
【表11】
【0105】
水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方で、実施例の脱硝触媒は、全て、比較例の脱硝触媒よりも高いNO転化率を示した。とりわけ、水分が共存しない場合においては、実施例22(9wt%)が最も高いNO転化率を示し、水分が共存する場合においては、実施例21(5wt%)が最も高いNO転化率を示した。
【0106】
<5 炭素と第2の金属としてのコバルトを含有し、低温で焼成されたバナジウム触媒>
<5.1 各実施例と比較例>
[実施例25]
バナジン酸アンモニウム(NH
4VO
3)とシュウ酸とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、エチレングリコールと、第2の金属であるコバルト(Co)の前駆体であるシュウ酸錯体を、金属酸化物換算でCo
3O
4が6wt%となるように添加した。得られた触媒躯体を電気炉によって270℃の温度で2時間焼成することにより、炭素及びコバルト(Co)を含有する酸化バナジウムの脱硝触媒を得た。
なお、以下の表12は、実施例25における、コバルト導入時の前駆体の仕込み量を示す。
【表12】
【0107】
<5.2 評価>
<5.2.1 炭素含有量>
(測定方法)
各五酸化バナジウム触媒の炭素含有量の測定の際は、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)の元素分析によって炭素含有量を定量した。より詳細には、エグゼタ-アナリティカル社製CE-440F内部の高温の反応管内で、各脱硝触媒を完全燃焼・分解し、主構成元素であるC、H、NをCO2、H2O、N2に変換した後、これらの三成分を三つの熱伝導度検出器で順次定量し、構成元素中のC、H、Nの含有量を測定した。
【0108】
(測定結果)
実施例25のバナジウム触媒に含まれる炭素含有量は、0.70wt%であった。
【0109】
<5.2.2 NO転化率>
(測定方法)
上記の表1の条件の下、反応温度150℃で、固定床流通式触媒反応装置を用いてNH3-SCR反応を行った。触媒層を通過したガスのうち、NOをJasco FT-IR-4700で分析した。
また、NO転化率を、上記の式(1)により算出した。
【0110】
(測定結果)
表13に、比較例1、実施例12、実施例25の各五酸化バナジウム触媒の、水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方のNO転化率を示す。
図14は、この表13をグラフ化したものである。
【表13】
【0111】
水分が共存しない場合と水分の共存下の場合との双方で、実施例25の脱硝触媒が最も高いNO転化率を示した。
【0112】
<6 適用例>
<6.1 燃焼システム>
<6.1.1 第1の燃焼システム>
以下、本発明の第1の適用例について図面を参照しながら説明する。
図15は、第1の適用例に係る燃焼システム1の構成を示す図である。燃焼システム1は、微粉炭を燃料とする燃焼システムである。
図15に示すように、燃焼システム1は、例として火力発電システムを想定しており、燃焼装置としてのボイラ10と、微粉炭機20と、排気路L1と、空気予熱器30と、熱回収器としてのガスヒータ40と、集塵装置50と、誘引通風機60と、脱硫装置70と、加熱器としてのガスヒータ80と、脱硝装置90と、煙突100と、を備える。
【0113】
ボイラ10は、燃料としての微粉炭を空気とともに燃焼させる。ボイラ10において、微粉炭が燃焼することにより排ガスが発生する。なお、微粉炭が燃焼することによって、クリンカアッシュ及びフライアッシュ等の石炭灰が生成する。ボイラ10において生成するクリンカアッシュは、ボイラ10の下方に配置されるクリンカホッパ11に排出されてから、図示しない石炭灰回収サイロに搬送される。
【0114】
ボイラ10は、全体として略逆U字状に形成される。ボイラ10において生成する排ガスは、ボイラ10の形状に沿って逆U字状に移動する。ボイラ10の排ガスの出口付近における排ガスの温度は、例えば300~400℃である。
【0115】
微粉炭機20は、図示しない石炭バンカから供給される石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成する。微粉炭機20は、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させる。微粉炭機20において形成された微粉炭は、エアーが吹きつけられることにより、ボイラ10に供給される。
【0116】
排気路L1は、上流側がボイラ10に接続される。排気路L1は、ボイラ10において発生する排ガスが流通する流路である。
【0117】
空気予熱器30は、排気路L1に配置される。空気予熱器30は、排ガスと図示しない押込式通風機から送り込まれる燃焼用の空気との間で熱交換を行い、排ガスから熱回収する。燃焼用の空気は、空気予熱器30において加熱されてからボイラ10に供給される。
【0118】
ガスヒータ40は、排気路L1における空気予熱器30の下流側に配置される。ガスヒータ40には、空気予熱器30において熱回収された排ガスが供給される。ガスヒータ40は、排ガスから更に熱回収する。
【0119】
集塵装置50は、排気路L1におけるガスヒータ40の下流側に配置される。集塵装置50には、ガスヒータ40において熱回収された排ガスが供給される。集塵装置50は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)等の煤塵を収集する装置である。集塵装置50において捕集されるフライアッシュは、図示しない石炭灰回収サイロに搬送される。集塵装置50における排ガスの温度は、例えば80~120℃である。
【0120】
誘引通風機60は、排気路L1における集塵装置50の下流側に配置される。誘引通風機60は、集塵装置50においてフライアッシュを除去した排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0121】
脱硫装置70は、排気路L1における誘引通風機60の下流側に配置される。脱硫装置70には、誘引通風機60から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置70は、排ガスから硫黄酸化物を除去する。詳しくは、脱硫装置70は、排ガスに石灰石と水との混合液(石灰石スラリー)を吹き付けることによって、排ガスに含まれる硫黄酸化物を混合液に吸収させて、排ガスから硫黄酸化物を除去する。脱硫装置70における排ガスの温度は、例えば50~120℃である。
【0122】
ガスヒータ80は、排気路L1における脱硫装置70の下流側に配置される。ガスヒータ80には、脱硫装置70において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。ガスヒータ80は、排ガスを加熱する。ガスヒータ40及びガスヒータ80は、排気路L1における、空気予熱器30と集塵装置50との間を流通する排ガスと、脱硫装置70と後述する脱硝装置90との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガスガスヒータとして構成してもよい。
とりわけガスヒータ80は、排ガスを、後段の脱硝装置90における脱硝反応に適した温度まで加熱させる。
【0123】
脱硝装置90は、排気路L1におけるガスヒータ80の下流側に配置される。脱硝装置90には、ガスヒータ80において加熱された排ガスが供給される。脱硝装置90は、脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する。脱硝装置90においては、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である上記の脱硝触媒を用いる。脱硝装置90における排ガスの温度は、例えば130~200℃である。
【0124】
脱硝装置90では、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する。選択接触還元法によれば、還元剤及び、上記の脱硝触媒によって窒素酸化物から窒素及び水を生成することで、排ガスから効率的に窒素酸化物を除去することができる。選択接触還元法において用いられる還元剤は、アンモニア及び尿素の少なくとも一方を含む。還元剤としてアンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア及びアンモニア水溶液のいずれの状態のアンモニアを用いてもよい。
【0125】
より具体的には、脱硝装置90は、導入された排ガスに対してアンモニアガスを注入してから、その混合ガスを、脱硝触媒に接触させる構成とすることができる。
【0126】
このため、脱硝装置90は、例えば一段又は複数段の脱硝触媒層を備え、当該脱硝触媒層は、複数のケーシングと、これら複数のケーシングに収容される複数のハニカム触媒と、シール部材とを備えてもよい。
【0127】
より詳細には、ケーシングは、一端及び他端が開放された角筒状の金属部材により構成され、開放された一端及び他端が脱硝反応器における排ガスの流路に向かい合うように、つまり、ケーシングの内部を排ガスが流通するように配置されてもよい。また、複数のケーシングは、排ガスの流路を塞ぐように当接した状態で連結されて配置されてもよい。
【0128】
ハニカム触媒は、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成された長尺状(直方体状)に形成され、排ガス流通穴の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置されてもよい。
【0129】
煙突100は、排気路L1の下流側が接続される。煙突100には、脱硝装置90において窒素酸化物を除去した排ガスが導入される。煙突100に導入された排ガスは、ガスヒータ80によって加熱されていることから、煙突効果によって煙突100の上部から効果的に排出される。また、ガスヒータ80において排ガスが加熱されることで、煙突100の上方において水蒸気が凝縮して白煙が生じるのを防ぐことができる。煙突100の出口付近における排ガスの温度は、例えば110℃である。
【0130】
<6.1.2 第2の燃焼システム>
図16は、第2の適用例に係る燃焼システム1Aの構成を示す図である。燃焼システム1Aは、燃焼システム1と同様に、微粉炭を燃料とする燃焼システムである。燃焼システム1Aにおいて、燃焼システム1と同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明は省略する。
【0131】
燃焼システム1Aにおいては、脱硝装置90が、集塵装置50の直後に設置されている点で、燃焼システム1と異なる。更に、脱硝装置90の下流には、上流から順に、誘引通風機60、脱硫装置70、ガスヒータ80が備わる。
【0132】
燃焼システム1におけるガスヒータ80は、排ガスを、後段の脱硝装置90における脱硝反応に適した温度まで加熱させるものであった。一方で、燃焼システム1Aにおけるガスヒータ80は、排ガスを、後段の煙突100から拡散するまで適した温度まで加熱させる。
【0133】
脱硝装置90を集塵装置50の直後に設置することにより、脱硝装置90の前段にガスヒータを設ける必要なく、脱硝装置90における排ガスの温度を、130~200℃とすることができる。
【0134】
<6.1.3 第3の燃焼システム>
図17は、第3の適用例に係る燃焼システム1Bの構成を示す図である。燃焼システム1Bは、燃焼システム1及び1Aとは異なり、天然ガスを燃料とする燃焼システムである。燃焼システム1Bにおいて、燃焼システム1及び燃焼システム1Aと同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明は省略する。
【0135】
図17に示すように、燃焼システム1Bは、燃焼装置としてのボイラ10と、天然ガスの気化器15と、排気路L1と、空気予熱器30と、脱硝装置90と、誘引通風機60と、煙突100と、を備える。一方、燃焼システム1Bは、集塵装置と脱硫装置を必須の構成要素とはしていない。
【0136】
気化器15は、図示しないLNGタンクから供給される天然ガスを、気化してボイラ10に供給する。気化する際には、海水を利用する方式(オープンラック式)を用いてもよく、ガスバーナで温水を作り加熱する方式(サブマージドコンバスチョン式)を用いてもよく、中間媒体を用いて数段階の熱交換を行う方式を用いてもよい。
【0137】
脱硝装置90は、排気路L1における空気予熱器30の下流側に配置される。脱硝装置90には、空気予熱器30において冷却された排ガスが供給される。脱硝装置90は、脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する。脱硝装置90における排ガスの温度は、例えば130~200℃である。
【0138】
煙突100には、排気路L1の下流側が接続される。煙突100には、脱硝装置90において窒素酸化物を除去した排ガスが導入される。脱硝装置90における排ガスの温度は、例えば130~200℃であることから、煙突100に導入された排ガスは、煙突効果によって煙突100の上部から効果的に排出される。また、煙突100の出口付近における排ガスの温度は、例えば110℃である。
【0139】
脱硝装置90を空気予熱器30の下流側に配置することにより、脱硝触媒が脱硝する排ガスの温度が低くなり、脱硝触媒の劣化を低減することが可能となる。
【0140】
<6.1.4 第4の燃焼システム>
図18は、第4の適用例に係る燃焼システム1Cの構成を示す図である。
図18に示すように、燃焼システム1Cは、船舶の推進のために用いられる燃焼システムであり、燃料供給装置110と、燃焼装置としての内燃機関120と、集塵装置130と、排熱回収装置140と、脱硝装置150と、煙突160と、加勢モータ170と、燃料路R1、排気路R2及びR3、蒸気路R4、電力路R5とを備える。
【0141】
燃料供給装置110は、内燃機関120に対し、燃料路R1を用いて燃料を供給する。燃料としては、例えば、軽油・重油等の石油系燃料を用いることができる。
【0142】
燃料路R1は、上流側が燃料供給装置110に接続され、下流側が内燃機関120に接続される。燃料路R1は、燃料供給装置110から内燃機関120に向けて燃料が運搬される流路である。
【0143】
内燃機関120は、石油系燃料を空気と共に燃焼させる。内燃機関120において、石油系燃料が燃焼することにより排ガスが発生する。発生した排ガスは、排気路R2を経由して、集塵装置130に排出される。なお、内燃機関120は、例えば、大型船舶で用いられる2ストローク低速ディーゼル機関であってもよく、フェリー等で用いられる4ストローク中速ディーゼル機関であってもよく、高速船艇や小型船で用いられる4ストローク高速ディーゼル機関であってもよい。
【0144】
排気路R2は、上流側が内燃機関120に接続される。排気路R2は、内燃機関120で発生する排ガスが流通する流路である。
【0145】
集塵装置130は、排気路R2における内燃機関120の下流側に配置され、内燃機関120から排出された排ガスが供給される。集塵装置130は、排ガス中の煤塵を収集する装置である。煤塵の収集方法としては、例えば、電極に電圧を印加して煤塵を帯電させ、クーロン力を用いて収集する方法を用いてもよい。あるいは、ベンチュリスクラバが実施する方法のように、ベンチュリ部に煤塵吸収液を供給し、このベンチュリ部で高速になった排ガスによって煤塵吸収液を微細化させて、気液接触により煤塵を収集する方法を用いてもよい。
【0146】
排熱回収装置140は、排気路における集塵装置130の下流側に配置され、集塵装置130で煤塵が除去された排ガスが供給される。排熱回収装置140は、集塵装置130から供給される排ガスから排熱を回収する。より具体的には、排熱回収装置140は、タービン装置141と排ガスエコノマイザ145とを備える。
【0147】
タービン装置141は、ガスタービン142と、蒸気タービン143と、発電機144とを備える。ガスタービン142と発電機144、及び、蒸気タービン143と発電機144とは互いに接続される。ガスタービン142は、集塵装置130から排気路R3を経由して供給される排ガスによって駆動する。ガスタービン142が駆動されると、ガスタービン142に接続する発電機144も連動して駆動し発電を行う。また、蒸気タービン143は、後述の排ガスエコノマイザ145から蒸気路R4を経由して供給される蒸気によって駆動する。蒸気タービン143が駆動されると、蒸気タービン143に接続する発電機144も連動して発電を行う。発電機144によって生成される電力は、電力路R5を経由して加勢モータ170に供給される。
【0148】
排ガスエコノマイザ145は、集塵装置130から排気路R2を経由して供給される排ガスと、ガスタービン142から排気路R3を経由して供給される排ガスとを熱源として、給水タンク(図示せず)等に貯蓄された水から蒸気を発生させる。排ガスエコノマイザ145により生成された蒸気は、蒸気路R4を経由して、蒸気タービン143に供給される。
【0149】
排気路R3は、排気路R2とは異なる排気路であり、上流側が集塵装置130に、下流側が排ガスエコノマイザ145に接続されると共に、その途中で、ガスタービン142を経由する。排気路R3は、集塵装置130から供給される排ガスを、ガスタービン142を経由して、排ガスエコノマイザ145に流通する流路である。
【0150】
蒸気路R4は、上流側が排ガスエコノマイザ145に、下流側が蒸気タービン143に接続される。蒸気路R4は、排ガスエコノマイザ145で発生する蒸気が流通する流路である。
【0151】
電力路R5は、上流側が発電機144に、下流側が加勢モータ170に接続される。電力路は、発電機144で生成される電力が流通する流路である。
【0152】
脱硝装置150は、排気路R2における排熱回収装置140の下流側に配置され、排熱が回収された排ガスが供給される。脱硝装置150は、脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する。脱硝装置150においては、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、前記第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である上記の脱硝触媒を用いる。脱硝装置150は、排熱回収装置140の下流側に設置されているため、脱硝装置150における排ガスの温度は、例えば130~200℃である。
【0153】
脱硝装置150では、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する。選択接触還元法によれば、還元剤及び脱硝触媒によって窒素酸化物から窒素及び水を生成することで、排ガスから効率的に窒素酸化物を除去することができる。選択接触還元法において用いられる還元剤は、アンモニア及び尿素の少なくとも一方を含む。還元剤としてアンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア及びアンモニア水溶液のいずれの状態のアンモニアを用いてもよい。
【0154】
より具体的には、脱硝装置150は、導入された排ガスに対してアンモニアガスを注入してから、その混合ガスを脱硝触媒に接触させる構成とすることができる。
【0155】
煙突160は、排気路R2の下流側が接続される。煙突160には、脱硝装置150において窒素酸化物を除去した排ガスが導入される。煙突160に導入された排ガスは、脱硝装置150における排ガスの温度が、例えば130~200℃であることから、煙突効果によって煙突160の上部から効果的に排出される。また、煙突160の上方において水蒸気が凝縮して白煙が生じるのを防ぐことができる。煙突160の出口付近における排ガスの温度は、例えば110℃である。
【0156】
加勢モータ170は、電力路R5における発電機144の下流側に設置され、内燃機関120のプロペラシャフト周りの回転を加勢するように駆動する。加勢モータ170には、発電機144から電力路R5を経由して電力が供給され、この電力を用いることにより、内燃機関120により生成される動力を加勢するように駆動する。
【0157】
<6.1.5 第5の燃焼システム>
また、図示はしないが、第5の適用例として、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である上記の脱硝触媒を、生ゴミなどを焼却する燃焼システムに備わる脱硝装置で用いてもよい。生ゴミを燃焼するボイラの後段に設置される脱硝装置においては、排ガスの温度が150℃以下となることがあるが、上記の脱硝触媒は、反応温度が80-150℃の脱硝に用いることが可能であるため、このような燃焼システムにとっても有用である。
【0158】
<6.2 基盤に触媒成分をコーティングしてなる脱硝触媒>
上記の脱硝触媒は基本的に粉末状であるが、例えば、特開2005-199108号公報で開示されるように、火力発電所に設置される排煙脱硝装置においては、ハニカム形状の基盤に触媒成分をコーティングしたハニカムタイプの触媒が用いられることがある。本発明においても、第6の適用例として、基盤に対して、上記の脱硝触媒を触媒成分としてコーティングすることが可能である。
【0159】
上記の基盤としては、200℃以上の温度で変形等がなければ、任意の基盤を用いる事が可能である。例えば、基盤として、セラミック、陶器、チタン等の金属を用いてもよい。あるいは、基盤として、セラミック繊維ペーパー、ガラス繊維ペーパー、難燃紙、活性カーボンペーパー、脱臭用ペーパー、ハニカムフィルター不織布、フェルト、プラスチックシートから成るコルゲート型のハニカムフィルターを用いてもよい。
あるいは、新品の触媒や使用済みの触媒上に、更に本発明の触媒成分をコーティングしてもよい。また、基盤は任意の形状とすることが可能であり、例えば、板状、ペレット状、流体状、円柱型、星型状、リング状、押出し型、球状、フレーク状、パスティル状、リブ押出し型、リブリング状のいずれかとすることが可能である。例えば、コルゲート型のハニカムフィルターは、ブロック型、ローター型、斜交型、異形ブロック、短冊型、ミニプリーツ等の自由な形態を取ることが可能である。
【0160】
<6.3 ブロック状に成形された脱硝触媒>
更に、例えば、特開2017-32215号に記載されるように、石炭火力発電設備に備わる脱硝装置において、ハニカム触媒のような触媒ブロックが用いられることがあるが、本発明においても、第7の適用例として上記の脱硝触媒を触媒成分とする触媒ブロックを製造することが可能である。
【0161】
具体的には、上記の粉末状の脱硝触媒に対し、バインダーとして、例えば、CMC(カルボキシメチルセルロース)又はPVA(ポリビニルアルコール)を1~50wt%混合して混練し、押出造粒機、真空押出機等の成形器で押出成形したり、プレス成形したりした後、乾燥させてから、焼成することにより、触媒ブロックを製造することが可能である。なお、焼成の際、上記のバインダーが焼き飛ばされることから、焼成後の触媒ブロック中の、上記の脱硝触媒の重量比は100wt%となる。
【0162】
また、上記の粉末状の脱硝触媒に対し、更に、例えば、チタン、モリブデン、タングステン、及び/又はその化合物(とりわけ酸化物)、又はシリカ等を混合した上で、混練し、押し出し成形することにより、触媒ブロックを製造することが可能である。
【0163】
触媒ブロックは任意の形状を取ることが可能であり、例えば、板状、ペレット状、流体状、円柱状、星型状、リング状、押出し型、球状、フレーク状、ハニカム状、パスティル状、リブ押出し型、リブリング状とすることが可能である。また、例えば、ハニカム状の触媒ブロックは、ハニカム面が三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であったり、円形であったりしてもよい。
【0164】
<6.4 その他の用途>
上記の脱硝触媒の用途として、6.1では燃焼システムについて、6.2では基盤に触媒成分をコーティングしてなる脱硝触媒について、6.3ではブロック状に成形された脱硝触媒について述べたが、脱硝触媒の用途はこれには限られない。
例えば、6.1.1及び6.1.2では微粉炭を燃料とする燃焼システムについて、6.1.3では天然ガスを燃料とする燃焼システムについて述べたが、上記の脱硝触媒は、微粉炭や天然ガスの代わりに、石油やバイオマス燃料を用いる燃焼システムで用いられてもよい。また、6.1.4では船舶の推進のために用いられる燃焼システムについて述べたが、上記の脱硝触媒は、船舶の代わりに自動車を推進するために用いられる燃焼システムで用いられてもよい。
【0165】
上記の適用例に係る燃焼システムによれば、以下の効果が奏される。
(1)上記のように、上記適用例に係る燃焼システム1では、ボイラ(燃焼装置)10において発生する排ガスの流通する排気路L1において、脱硝装置90を集塵装置50の下流側に配置した。更に、上記実施形態では、脱硝装置90において、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の脱硝触媒を用いた。
上記の脱硝触媒を用いることにより、上記実施形態に係る燃焼システム1では、アンモニアを還元剤とする200℃以下の選択的触媒還元反応の際、従来技術に比較して、低温での脱硝効率が更に高いという効果を発揮できる。
【0166】
(2)上記適用例に係る燃焼システム1Aでは、排ガスから熱回収する空気予熱器30を更に備え、空気予熱器30は集塵装置50の上流側に配置した。
空気予熱器30により熱回収された排ガスが、集塵装置50に供給されることにより、排ガスの熱による集塵装置50への負荷が抑えられる。また、排気路L1におけるボイラ(燃焼装置)10の近傍に通常配置される空気予熱器30の上流に脱硝装置90が配置されていないことから、アンモニアと排ガス中のS分とが反応することで生成する硫酸アンモニウムに起因する空気予熱器30の目詰まりが生じない。これにより、燃焼システム1Aは稼働のコストが低い。
【0167】
(3)上記適用例に係る燃焼システム1Bでは、ボイラ(燃焼装置)10において発生する排ガスの流通する排気路L1において、脱硝装置90を空気予熱器30の下流側に配置した。更に、上記実施形態では、脱硝装置90において酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の脱硝触媒を用いた。
上記の脱硝触媒を用いることにより、上記実施形態に係る燃焼システム1Aでは、アンモニアを還元剤とする200℃以下の選択的触媒還元反応の際、従来技術に比較して、低温での脱硝効率が更に高いという効果を発揮できる。また、これにより、脱硝装置90を空気予熱器30の下流側に配置することが可能となるため、脱硝触媒が脱硝する排ガスの温度が低くなり、脱硝触媒の劣化を低減することが可能となる。
また、上記の実施形態における燃焼システム1Bでは、集塵装置と脱硫装置を必須の構成要素とはしていない。従って、燃焼システム1Bの構成を単純化することにより、設置コストを下げることが可能となる。
【0168】
(4)上記適用例に係る燃焼システム1Cは、内燃機関120において燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路R2と、排気路R2に配置され且つ内燃機関120から排出される排ガスから排熱を回収する排熱回収装置140と、排気路R2に配置され且つ脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置150とを備える燃焼システム1Cであって、脱硝装置150は、排気路R2における排熱回収装置140の下流側に配置され、脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒であって、第2の金属の酸化物の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の脱硝触媒である。
上記の脱硝触媒を用いることにより、上記実施形態に係る燃焼システム1Cでは、アンモニアを還元剤とする200℃以下の選択的触媒還元反応の際、従来技術に比較して、低温での脱硝効率が更に高いという効果を発揮でき、脱硝装置を排熱回収装置の下流側に配置することが可能となる。更に、脱硝装置150に排ガスを導入する直前で、排ガスを加熱することは必須ではない。これにより、脱硝触媒が高温に晒されることがなくなるため、脱硝触媒の劣化が低減され、燃焼システム1Cの稼働のコストは低くなる。
また、上記の実施形態の燃焼システム1Cは、排ガスを加熱する加熱ヒータが必須ではない分、コンパクトな構成とすることが可能である。これにより、船舶のような狭いスペースにも、脱硝装置付きの燃焼システムを設置することが可能となる。
【0169】
(5)上記のように、排熱回収装置140は、タービン装置141と排ガスエコノマイザ145とを備え、排ガスエコノマイザ145は、内燃機関120から排出される排ガスとタービン装置141から供給される排ガスとを熱源として蒸気を発生させ、タービン装置141は、内燃機関120から排出される排ガスと、排ガスエコノマイザ145から供給される蒸気とを用いて発電をすることが好ましい。
上記の実施形態における排熱回収装置140は、タービン装置141と排ガスエコノマイザ145とを備えることにより、内燃機関120における燃料の燃焼により生成される熱エネルギーを、より有効に活用することが可能となる。
【符号の説明】
【0170】
1、1A、1B、1C 燃焼システム
10 ボイラ
15 気化器
30 空気予熱器
50 電気集塵装置
90 150 脱硝装置
100 160 煙突
110 燃料供給装置
120 内燃機関
130 集塵装置
140 排熱回収装置
141 タービン装置
145 排ガスエコノマイザ
170 加勢モータ