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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】伝送回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20241113BHJP
   H04B 5/79 20240101ALI20241113BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20241113BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H04B1/59
H04B5/79
H04B5/48
G06K19/07 230
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020164908
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056911
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 昇
(72)【発明者】
【氏名】水流 槙介
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 友直
(72)【発明者】
【氏名】磯山 伸治
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0365549(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0124916(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2330538(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
H04B 5/48
H04B 5/79
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに接続するように構成される伝送回路であって、
前記伝送回路は、
第1インピーダンス回路と、第2インピーダンス回路と、移相器と、を含み、
前記第1インピーダンス回路および前記第2インピーダンス回路は、
複数の抵抗素子と、
前記複数の抵抗素子に各々に接続される複数のスイッチ素子と、を含むレジスタ回路部と、
前記複数のスイッチ素子を制御することで、前記レジスタ回路部の抵抗値を制御する制御回路部と、を備え、
前記第1インピーダンス回路は、前記アンテナからの入力信号の反射波を前記移相器に出力するように構成され、
前記移相器は、前記アンテナからの入力信号の位相をシフトさせて前記第1インピーダンス回路に入力し、前記第1インピーダンス回路から出力された前記アンテナからの入力信号の反射波の位相をシフトさせて合成回路に出力するように構成され、
前記第2インピーダンス回路は、前記アンテナからの入力信号の反射波を前記合成回路に出力するように構成されている、
伝送回路。
【請求項2】
請求項1に記載の伝送回路において、
前記制御回路部は、入力された基準電圧を分圧して、前記複数のスイッチ素子の各々の開閉状態を制御するための分圧電力を出力する複数の抵抗素子から構成されている、伝送回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伝送回路において、
前記制御回路部は、前記複数のスイッチ素子のうち、少なくとも1つのスイッチ素子を閉状態とすることで、前記レジスタ回路部の抵抗値を制御するように構成されている、伝送回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の伝送回路において、
前記合成回路は、アンテナで構成されている、伝送回路。
【請求項5】
請求項4に記載の伝送回路において、
前記アンテナは、ダイポールアンテナで構成されている、伝送回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝送回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置のデータ通信方法として、バックスキャッタ方式が知られている。例えば、特許文献1には、分波/合成器を用いて、USB(Upper Side Band)信号およびLSB(Lower Side Band)信号のいずれか一方の信号を抑制して、シングルサイドバンドを実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-323223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックスキャッタ方式のデータ通信を行うRFID(Radio Frequency Identification)システムでは無線通信装置の小型化が求められている。しかしながら、特許文献1は、シングルサイドバンドを実現するために、分波/合成器を用いているので、小型化には不利な構成である。
【0005】
本開示は、バックスキャッタ方式の無線通信装置を小型化することのできる伝送回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る伝送回路は、アンテナに接続するように構成される伝送回路であって、前記伝送回路は、第1インピーダンス回路と、第2インピーダンス回路と、移相器と、を含み、前記第1インピーダンス回路および前記第2のインピーダンス回路は、複数の抵抗素子と、前記複数の抵抗素子に各々に接続される複数のスイッチ素子と、を含むレジスタ回路部と、前記複数のスイッチ素子を制御することで、前記レジスタ回路の抵抗値を制御する制御回路部と、を備え、前記第1インピーダンス回路は、前記アンテナからの入力信号の反射波を前記移相器に出力するように構成され、前記移相器は、前記アンテナからの入力信号の位相をシフトさせて前記第1インピーダンス回路に入力し、前記第1インピーダンス回路から出力された前記アンテナからの入力信号の反射波の位相をシフトさせて合成回路に出力するように構成され、前記第2のインピーダンス回路は、前記アンテナからの入力信号の反射波を前記合成回路に出力するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、バックスキャッタ方式の無線通信装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る複素平面においてインピーダンスを回転制御する方法を説明するための図である。
図3A図3Aは、バックスキャッタリング信号の変化を説明するための図である。
図3B図3Bは、バックスキャッタリング信号の変化を説明するための図である。
図3C図3Cは、バックスキャッタリング信号の変化を説明するための図である。
図4図4は、実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法を説明するための図である。
図5A図5Aは、実施形態に係るインピーダンス回路から合成回路に入力する信号の一例を説明するための図である。
図5B図5Bは、実施形態に係るインピーダンス回路から合成回路に入力する信号の一例を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る合成回路として用いるダイポールアンテナの一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る合成信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る合成回路として用いるモノポールアンテナの一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る合成信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態]
図1を用いて、実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。図1は、実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、無線通信装置1は、アンテナ10と、BPF(Band Pass Filter)11と、RFBS(Radio Frequency Backscatter)デバイス20と、制御装置30と、センサ40と、を含む。無線通信装置1は、RFIDなどのバックスキャッタ方式の無線通信するように構成される通信装置である。
【0012】
アンテナ10は、無線通信装置1に対して送信された信号を受信するように構成される。アンテナ10は、無線通信装置1の外部に向かって電波を送信するように構成される。BPF11は、所望の周波数帯域の信号を通過させるように構成されるフィルタである。
【0013】
RFBSデバイス20は、高周波スイッチ21と、アンプ22と、復調部23と、発振部24と、LPF(Low Pass Filter)25と、LPF26と、制御回路27と、伝送回路28と、を含む。RFBSデバイス20は、バックスキャッタ方式のデータ通信に対応している無線通信デバイスである。バックスキャッタ方式のデータ通信では、送信されてきた電波の反射を利用して通信を行う。
【0014】
高周波スイッチ21は、アンテナ10と、送信回路系または受信回路系との接続を切り替えるように構成される。高周波スイッチ21は、アンテナ10に送信回路系を接続可能に構成される。無線通信装置1は、アンテナ10と送信回路系とが接続されているときに、送信するように構成される。高周波スイッチ21は、アンテナ10に受信回路系を接続可能に構成される。送信回路系は、発振部24と、LPF25と、LPF26と、制御回路27と、伝送回路28と、を含む。受信回路系は、アンプ22と、復調部23と、を含む。
【0015】
アンプ22は、アンテナ10から受けた信号を増幅して出力するように構成される。アンプ22は、増幅した信号を復調部23に出力するように構成される。復調部23は、入力された信号に対して、復調処理を実行するように構成される。復調部23は、アンプ22から受けた信号を復調するように構成される。例えば、復調部23は、アンプ22から受けた信号(ASK(Amplitude Shift Keying)などの変調信号)に対して、復調処理を実行するように構成される。
【0016】
制御装置30は、例えば、プロセッサ等によって、内部に記憶されたプログラムがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行されることにより実現される。制御装置30は、コントローラ(Controller)であり得る。制御装置30は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御装置30は、ソフトウェアと、ハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0017】
制御装置30は、センサ40からの出力データに基づいたシリアルデータS1を、LPF25を介して、制御回路27に出力するように構成される。制御装置30は、センサ40からの出力データに基づいたシリアルデータS2を、LPF26を介して制御回路27に出力するように構成される。シリアルデータS1と、シリアルデータS2とは位相が概ね90°異なる。
【0018】
制御装置30は、キャリア信号に対するUSB信号及びLSB信号のいずれか一方を抑圧させるための制御信号S3を制御回路27に出力するように構成される。制御装置30は、通信に用いるチャネルを制御するための制御信号S4を発振部24に信号を出力するように構成される。
【0019】
センサ40は、各種の物理量を検出するように構成される。センサ40が検出する物理量に特に制限はない。センサ40は、例えば、無線通信装置1の周囲の温度を検出するように構成される温度センサ、及び無線通信装置1に生じた加速度を検出するように構成される加速度センサの一方又は両方を含み得る。センサ40は、その他のセンサを含んでよい。
【0020】
発振部24は、所定の周波数の発振信号を生成するように構成される。発振部24は、制御信号S4に従って、発振信号S5を生成するように構成される。発振部24は、発振信号S5とは位相が90°異なる発振信号S6を生成するように構成される。
【0021】
制御回路27は、伝送回路28を制御するように構成される。制御回路27は、シリアルデータS1と、シリアルデータS2と、制御信号S3とに基づいて、伝送回路28のインピーダンスの値を制御するように構成される。制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを変化させるように構成される。インピーダンスの変化によって、アンテナ10側の出力端子の反射係数は、複素平面において回転する。制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを変化させて、出力端子の反射係数が複素平面において回転するように制御する。例えば、反射信号(以下、バックスキャッタ信号とも呼ぶ)におけるキャリア信号に対するUSB信号またはLSB信号を低減して、シングルサイドバンドを実現するように、制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを制御するように構成される。
【0022】
図2のポーラーチャート(極座標)を用いて、制御回路27が伝送回路28のアンテナ10側の出力端子の反射係数がポーラーチャートの複素平面上を回転するように制御する方法について説明する。図2は、制御回路27が伝送回路28のインピーダンスを変化させ、その出力端子の反射係数を回転するように制御する方法を説明するための図である。
【0023】
図2は、インピーダンスの変化による反射係数Γの変化をポーラーチャート上に示した図である。インピーダンスは、次の式(1)で算出される。 式(1)において、Zはインピーダンス、Rはレジスタンス、jは虚数、ωは角周波数、Lはインダクタンス、Cはキャパシタンスである。
Z=R+j(ωL-1/ωC)・・・(1)
【0024】
また、反射係数Γは、次式で表せる。
Γ=(Z-Z)/(Z+Z)・・・(2)
ここで、Zはアンテナ10またはBPF11のインピーダンスである。
【0025】
制御回路27は、インピーダンスZを選択制御して、反射係数Γが基準点の周囲を回るよう制御する。基準点は、原点を含むが、原点に限定されず、任意の点を含む。伝送回路は、基準点が原点に近いほど、理想に近い信号を得られうる。伝送回路は、基準点の周囲を円状に回すように制御するほど、理想に近い信号を得られうる。スミスチャートで考えると、下半円領域が容量性を示し、上半分がインダクタンス性を示す。実軸上の変化は抵抗値の変化を表すことになる。
【0026】
制御回路27は、伝送回路28が備えている複数のインピーダンスを選択制御することができる。例えば、制御回路27は、インピーダンスを0°、45°、90°、135°、180°、-135°、-90°、-45°の45°刻みで伝送回路28のインピーダンスを制御するように構成される。制御回路27は、インピーダンスを制御することで電圧反射係数Γを制御するように構成される。制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを順次変更することで、インピーダンスが離散的に回転するように制御可能に構成される。制御回路27は、インピーダンスの離散的な回転に応じて、反射係数Γが離散的に回転する。
【0027】
制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスの変更順によって、当該インピーダンスを左回転で変更可能に構成される。制御回路27は、インピーダンスの左回転によって、反射係数Γを左回転で変更可能に構成される。反射係数の制御が左回転の場合、RF(Radio Frequency)に対する反射信号は、USB(Upper Side Band)信号のみとなる。反射係数が右回転となるように制御すると、LSB(Lower Side Band)信号のみが得られることになる。その際、反射信号の周波数は、RF信号周波数から回転速度周波数分、離調した周波数となる。図3Aと、図3Bと、図3Cとを用いて、インピーダンスを変化させ反射係数を制御することによる、バックスキャッタ信号の変化についていくつかの例を説明する。
【0028】
図3Aは、制御回路27がインピーダンスの抵抗成分のみを制御し、反射係数Γをポーラーチャート(図2)の実軸上で変化させた場合のバックスキャッタ信号の様子を説明するための周波数スペクトラムを示す図である。横軸は周波数、縦軸はRF信号および反射信号の強度を示す。図3Aには、キャリア信号51と、USB信号52と、LSB信号53とが示される。抵抗成分が制御されると、反射係数Γは、0°と、180°との実軸上のいずれかに制御される。抵抗成分のみでインピーダンスを変えて反射係数Γ制御する場合、図3Aに示すように、例えば、0°から180°に切り替わる際に、右回りの信号成分と、左回りの信号成分と、が内在する。2つの回転方向の信号成分が内在することによって、USB信号52及びLSB信号53を同時に出現し、一方の信号のみを選択的に抑制することができない。結果として、SSB信号は、抵抗成分のみの制御で得ることができない。
【0029】
図3Bは、制御回路27がインピーダンスのインダクタンス/キャパシタンスを変化させ反射係数Γの軌跡が円を描くように制御した場合のバックスキャッタ信号の変化を説明するための周波数スペクトラムを示す図である。横軸は周波数、縦軸はRF信号および反射信号の強度を示す。式(1)、(2)に基づき、制御回路27は、インダクタンスの値を制御することで、インピーダンスを左回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、0°から45°、90°、135°と左回りに回転する。制御回路27は、さらにキャパシタンスの値を制御することで、インピーダンスを左回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、180°から-135°、-90°、-45°と左回りに回転する。図3Bに示すように、制御回路27は、インピーダンスを左回りに回転するように制御することで、LSB信号53を抑圧するように、送信されてきたRF信号を反射させることができる。言い換えれば、制御回路27は、インピーダンスの左回りの回転制御によって、USB信号52にSSB化されたバックスキャッタ信号を得ることができる。
【0030】
図3Cは、制御回路27がインピーダンスのキャパシタンス/インダクタンスを変化させ、反射係数Γの軌跡が円を描くように制御した場合のバックスキャッタ信号の変化を説明するための図である。式(1)、(2)に基づき、制御回路27は、キャパシタンスの値を制御することで、インピーダンスを右回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、0°から-45°、-90°、-135°と右回りに回転する。制御回路27は、さらにインダクタンスの値を制御することで、インピーダンスを右回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、180°から、135°、90°、45°と右回りに回転する。図3Cに示すように、制御回路27は、インピーダンスを右回りに回転するように制御することで、USB信号52を抑圧するように、送信されてきたRF信号を反射させることができる。言い換えれば、制御回路27は、インピーダンスの右回りの回転制御によって、LSB信号53にSSB化されたバックスキャッタ信号を得ることができる。
【0031】
伝送回路28は、無線通信装置1のフロントエンドに配置されている。伝送回路28は、送信されてきた電波をバックスキャッタ信号として反射するバックスキャッタ通信を行うように構成される回路である。伝送回路28は、アンテナ10に接続されるように構成されている。伝送回路28は、各々のインピーダンスが異なる複数のインピーダンス回路を含む。複数のインピーダンス回路の各々は、スイッチ素子を含む。スイッチ素子は、当該インピーダンス回路の接続を切り替えるように構成される。制御回路27は、複数のスイッチ素子を制御することで、複数のインピーダンス回路の接続を切り替えるように構成される。制御回路27は、複数のスイッチ素子を制御することで、伝送回路28のインピーダンスを制御するように構成される。
【0032】
[インピーダンスの制御方法]
図4を用いて、実施形態に係るインピーダンスを制御する方法について説明する。図4は、実施形態に係るインピーダンスを制御する方法を説明するための図である。
【0033】
図4には、インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2と、制御回路部111と、スイッチ回路部112と、移相器120と、が示されている。インピーダンス回路110-1は、移相器120を介して、アンテナ10側の合成回路130と接続されている。インピーダンス回路110-2は、合成回路130と直接接続されている。インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2とは、同様の構成を有している。インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2とを区別する必要のない場合には、インピーダンス回路110と総称することもある。
【0034】
図1に示す伝送回路28は、スイッチ回路部112と、移相器120とを含む。図1に示す制御回路27は、制御回路部111を含む。制御回路部111は、制御回路27の出力部に位置する。制御回路部111は、スイッチ回路部112に含まれる各スイッチ素子の開閉を制御するように構成されている。
【0035】
インピーダンス回路110は、抵抗素子R1と、制御回路部111と、スイッチ回路部112と、を含む。制御回路部111は、スイッチ回路部112の抵抗値を制御する。スイッチ回路部112は、複数の抵抗素子から構成される。
【0036】
信号源V1と、信号源V1Aとは、それぞれ、センサ40からの検出結果などに応じて、制御装置30から図1に示すLPF25と、LPF26とを介して入力される制御信号の信号源を示している。抵抗素子R1は、信号源V1に接続されている。抵抗素子R1は、入力抵抗を設定する接地抵抗である。一般的には高抵抗を用いる。
【0037】
制御回路部111は、基準電源V2と、抵抗素子R2と、抵抗素子R3と、抵抗素子R4と、抵抗素子R5と、抵抗素子R6と、抵抗素子R7と、抵抗素子R8と、抵抗素子R9と、抵抗素子R10と、を備える。制御回路部111は、コンパレータCM1と、コンパレータCM2と、コンパレータCM3と、コンパレータCM4と、コンパレータCM4と、コンパレータCM5と、コンパレータCM6と、コンパレータCM7と、コンパレータCM8と、備える。
【0038】
抵抗素子R2と~抵抗素子R10とは、直列に接続されている。抵抗素子R2~抵抗素子R10とは、分圧回路を構成している。
【0039】
ノードN1は、抵抗素子R2と、抵抗素子R3との間のノードである。ノードN2は、抵抗素子R3と、抵抗素子R4との間のノードである。ノードN3は、抵抗素子R4と、抵抗素子R5との間のノードである。ノードN4は、抵抗素子R5と、抵抗素子R6との間のノードである。ノードN5は、抵抗素子R6と、抵抗素子R7との間のノードである。ノードN6は、抵抗素子R7と、抵抗素子R8との間のノードである。ノードN7は、抵抗素子R8と、抵抗素子R9との間のノードである。ノードN9は、抵抗素子R9と、抵抗素子R10との間のノードである。ノードN1~ノードN9からは、基準電源V2の基準電圧の電圧値と、抵抗素子R2~抵抗素子R10の抵抗値に応じた分圧電圧と入力信号レベルをコンパレータCM1からコンパレータCM8で比較し、各コンパレータの出力がスイッチ回路部112の制御信号として出力される。
【0040】
ノードN9と、ノードN10と、ノードN11と、ノードN12と、ノードN13と、ノードN14と、ノードN15と、ノードN16とには、制御回路部111に入力された入力信号が入力されるノードである。
【0041】
スイッチ回路部112は、スイッチ素子SW1と、スイッチ素子SW2と、スイッチ素子SW3と、スイッチ素子SW4と、スイッチ素子SW5と、スイッチ素子SW6と、スイッチ素子SW7と、スイッチ素子SW8と、を備える。
【0042】
コンパレータCM1の一方の入力端子には、ノードN9が電気的に接続されている。コンパレータCM1の他方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCM1の出力端子は、スイッチ素子SW1の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM1は、ノードN9から入力された入力信号と、ノードN1から入力された制御信号としての第1分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW1に出力する。例えば、コンパレータCM1は、入力信号よりも第1分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW1を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM1は、入力信号よりも第1分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW1を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0043】
スイッチ素子SW1の一方の入力端子は、コンパレータCM1の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW1の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW1の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW1の他端は、抵抗素子R11を介して電気的にGND(グラウンド)に接続されている。スイッチ素子SW1が閉状態となると、抵抗素子R11と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW1が開状態となると、抵抗素子R11と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW1が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R11の抵抗値が付加される。
【0044】
コンパレータCM2の一方の入力端子には、ノードN10が電気的に接続されている。コンパレータCM2の他方の入力端子には、ノードN2が電気的に接続されている。コンパレータCM2の出力端子は、スイッチ素子SW2の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM2は、ノードN10から入力された入力信号と、ノードN2から入力された制御信号としての第2分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW2に出力する。例えば、コンパレータCM2は、入力信号よりも第2分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW2を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM2は、入力信号よりも第2分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW2を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0045】
スイッチ素子SW2の一方の入力端子は、コンパレータCM2の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW2の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW2の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW2の他端は、抵抗素子R12を介して電気的にGNDに接続されている。スイッチ素子SW2が閉状態となると、抵抗素子R12と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW2が開状態となると、抵抗素子R12と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW2が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R12の抵抗値が付加される。
【0046】
コンパレータCM3の一方の入力端子には、ノードN11が電気的に接続されている。コンパレータCM3の他方の入力端子には、ノードN3が電気的に接続されている。コンパレータCM3の出力端子は、スイッチ素子SW3の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM3は、ノードN11から入力された入力信号と、ノードN3から入力された制御信号としての第3分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW3に出力する。例えば、コンパレータCM3は、入力信号よりも第3分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW3を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM3は、入力信号よりも第3分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW3を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0047】
スイッチ素子SW3の一方の入力端子は、コンパレータCM3の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW3の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW3の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW3の他端は、抵抗素子R13を介して電気的にGNDに接続されている。スイッチ素子SW3が閉状態となると、抵抗素子R13と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW3が開状態となると、抵抗素子R13と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW3が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R13の抵抗値が付加される。
【0048】
コンパレータCM4の一方の入力端子には、ノードN12が電気的に接続されている。コンパレータCM4の他方の入力端子には、ノードN4が電気的に接続されている。コンパレータCM4の出力端子は、スイッチ素子SW4の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM4は、ノードN12から入力された入力信号と、ノードN4から入力された制御信号としての第4分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW4に出力する。例えば、コンパレータCM4は、入力信号よりも第4分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW4を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM4は、入力信号よりも第4分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW4を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0049】
スイッチ素子SW4の一方の入力端子は、コンパレータCM4の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW4の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW4の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW4の他端は、抵抗素子R14を介して電気的にGNDに接続されている。スイッチ素子SW4が閉状態となると、抵抗素子R14と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW4が開状態となると、抵抗素子R14と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW4が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R14の抵抗値が付加される。
【0050】
コンパレータCM5の一方の入力端子には、ノードN13が電気的に接続されている。コンパレータCM5の他方の入力端子には、ノードN5が電気的に接続されている。コンパレータCM5の出力端子は、スイッチ素子SW5の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM5は、ノードN13から入力された入力信号と、ノードN5から入力された制御信号としての第5分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW5に出力する。例えば、コンパレータCM5は、入力信号よりも第5分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW5を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM5は、入力信号よりも第5分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW5を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0051】
スイッチ素子SW5の一方の入力端子は、コンパレータCM5の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW5の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW5の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW5の他端は、抵抗素子R15を介して電気的にGNDに接続されている。スイッチ素子SW5が閉状態となると、抵抗素子R15と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW5が開状態となると、抵抗素子R15と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW5が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R15の抵抗値が付加される。
【0052】
コンパレータCM6の一方の入力端子には、ノードN14が電気的に接続されている。コンパレータCM6の他方の入力端子には、ノードN6が電気的に接続されている。コンパレータCM6の出力端子は、スイッチ素子SW6の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM6は、ノードN14から入力された入力信号と、ノードN6から入力された制御信号としての第6分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW6に出力する。例えば、コンパレータCM6は、入力信号よりも第6分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW6を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM6は、入力信号よりも第6分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW6を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0053】
スイッチ素子SW6の一方の入力端子は、コンパレータCM6の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW6の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW6の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW6の他端は、抵抗素子R16を介して電気的にGNDに接続されている。スイッチ素子SW6が閉状態となると、抵抗素子R16と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW6が開状態となると、抵抗素子R16と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW6が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R16の抵抗値が付加される。
【0054】
コンパレータCM7の一方の入力端子には、ノードN15が電気的に接続されている。コンパレータCM7の他方の入力端子には、ノードN7が電気的に接続されている。コンパレータCM7の出力端子は、スイッチ素子SW7の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM7は、ノードN15から入力された入力信号と、ノードN7から入力された制御信号としての第7分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW7に出力する。例えば、コンパレータCM7は、入力信号よりも第7分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW7を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM7は、入力信号よりも第7分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW7を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0055】
スイッチ素子SW7の一方の入力端子は、コンパレータCM7の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW7の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW7の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW7の他端は、抵抗素子R17を介して電気的にGNDに接続されている。スイッチ素子SW7が閉状態となると、抵抗素子R17と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW7が開状態となると、抵抗素子R17と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW7が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R17の抵抗値が付加される。
【0056】
コンパレータCM8の一方の入力端子には、ノードN16が電気的に接続されている。コンパレータCM8の他方の入力端子には、ノードN8が電気的に接続されている。コンパレータCM8の出力端子は、スイッチ素子SW8の一方の入力端子に電気的に接続されている。コンパレータCM8は、ノードN16から入力された入力信号と、ノードN8から入力された制御信号としての第8分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号をスイッチ素子SW8に出力する。例えば、コンパレータCM8は、入力信号よりも第8分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SW8を閉状態とするスイッチ制御信号を出力する。コンパレータCM8は、入力信号よりも第8分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SW8を開状態とするスイッチ制御信号を出力する。
【0057】
スイッチ素子SW8の一方の入力端子は、コンパレータCM8の出力端子が電気的に接続されている。スイッチ素子SW8の他方の入力端子は、基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SW8の一端は、移相器120を介して合成回路130に接続されている。スイッチ素子SW8の他端は、抵抗素子R18に電気的に接続されている。スイッチ素子SW8が閉状態となると、抵抗素子R18と、合成回路130とが電気的に接続される。スイッチ素子SW8が開状態となると、抵抗素子R18と、合成回路130とが電気的に離隔される。すなわち、スイッチ素子SW8が開状態となることにより、インピーダンス回路110のインピーダンスには、抵抗素子R18の抵抗値が付加される。
【0058】
インピーダンス回路110は、スイッチ素子SW1~スイッチ素子SW8の開閉状態に応じた信号を出力する。インピーダンス回路110-1は、スイッチ素子SW1~スイッチ素子SW8の開閉状態に応じた信号を移相器120に出力する。インピーダンス回路110-2は、スイッチ素子SW1~スイッチ素子SW8の開閉状態の応じた信号を合成回路130に出力する。インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2とから出力される信号の大きさは、それぞれ同じである。
【0059】
インピーダンス回路110の動作について説明する。入力信号の電圧値が徐々に増加するにつれて、コンパレータCM8、コンパレータCM7、コンパレータCM6、コンパレータCM5、コンパレータCM4、コンパレータCM3、コンパレータCM2、コンパレータCM1の順番に出力される制御信号がLowからHighに切り替わる。この制御信号により、スイッチ素子SW8、スイッチ素子SW7、スイッチ素子SW6、スイッチ素子SW5、スイッチ素子SW4、スイッチ素子SW3、スイッチ素子SW2、スイッチ素子SW1の順番にオンとなる。スイッチ素子がオンになると、各スイッチ素子に接続されている抵抗素子がインピーダンス回路110に電気的に接続される。すなわち、インピーダンス回路110には、抵抗素子R18、抵抗素子R17、抵抗素子R16、抵抗素子R15、抵抗素子R14、抵抗素子R13、抵抗素子R12、抵抗素子R11の順番に電気的に並列に接続される。これにより、スイッチ回路部112の出力側から見た抵抗値に、抵抗素子R18~抵抗素子R11のそれぞれの抵抗値が並列加算される。なお、抵抗素子R19は、スイッチ素子SW1~スイッチ素子SW8がオフとなったときに、電位がフローティングとなることを防止する高抵抗素子である。
【0060】
インピーダンス回路110-1は、各スイッチ素子に接続された抵抗素子の抵抗値が並列加算されることにより、複素平面で表す反射係数が実数軸上で変化するように、各抵抗素子の抵抗値が設定されるように構成されている。図5Aは、反射係数が実数軸上で変化する様子を説明するための図である。図5Aに示すように、インピーダンス回路110-1は、スイッチ素子SW1~スイッチ素子SW8を順番にオンにすることにより、反射係数が1から-1の間を実軸上で変化するように構成されている。
【0061】
また、入力信号の位相を90°遅らせると抵抗値は90°遅れて変化することになり、等価的に虚数軸上のインピーダンスの変化を表現することができる。すなわち、インピーダンス回路110-2は、反射係数を虚数軸上で変化させることができるように構成されている。図5Bは、反射係数が実数軸上で変化する様子を説明するための図である。図5Bに示すように、インピーダンス回路110-2は、スイッチ素子SW1~スイッチ素子SW8を順番にオンにすることにより、反射係数がjから-jの間を虚数軸上で変化するように構成されている。
【0062】
移相器120は、インピーダンス回路110-1と、合成回路130との間に配置される。移相器120は、インダクタL1と、キャパシタC1と、キャパシタC2とを含む。インダクタL1の一端は、キャパシタC1に電気的に接続されている。インダクタL1の他端は、キャパシタC2に電気的に接続されている。キャパシタC1と、キャパシタC2とは、接地されている。移相器の遅延量は、高周波信号に対して45°となるように設定する。
【0063】
移相器120の一端は、インピーダンス回路110-1と電気的に接続されている。移相器120の他端は、合成回路130と電気的に接続されている。すなわち、移相器120は、合成回路130からの入力信号の位相をシフトさせてインピーダンス回路110-1に入力する。移相器120は、インピーダンス回路110-1からの反射波の位相をシフトさせて合成回路130に入力する。移相器120は、例えば、位相を45°遅延させて出力する移相器である。この場合、インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2とから合成回路の入力される反射波の位相は、90°異なっている。
【0064】
合成回路130は、外部から入力された信号を合成する。合成回路130は、インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2とから入力された信号を合成する。すなわち、合成回路130は、実軸上でインピーダンスが制御され、位相を45°遅延させた信号と、虚軸上でインピーダンスが制御された信号とを合成することで、図5Aおよび図5Bなどに示した複素平面(極座標)の円上においてインピーダンス制御により反射係数を回転制御した信号を得ることができる。合成回路300に特に制限はない。合成回路300は、例えば、既存のダイポールアンテナおよびモノポールアンテナなどで実現することができる。
【0065】
図6を用いて、合成回路として用いるダイポールアンテナについて説明する。図6は、合成回路として用いるダイポールアンテナの一例を示す図である。
【0066】
図6に示すように、ダイポールアンテナ200は、導線210と、導線220と、を含む。導線210は、移相器120に接続されている導線である。導線220は、インピーダンス回路110-2に接続されている導線である。ダイポールアンテナ200は、グラウンドGとは独立するように構成されている。
【0067】
導線210には、複素平面において、インピーダンスが実軸上で制御されたバックスキャッタ信号を移相器120により位相が45°遅延したバックスキャッタ信号が入力される。導線220には、複素平面において、インピーダンスが虚軸上で制御されたバックスキャッタ信号が入力される。すなわち、ダイポールアンテナ200には、位相が互いに異なる2つのバックスキャッタ信号が入力される。
【0068】
ダイポールアンテナ200は、位相が互いに異なる2つのバックスキャッタ信号を空間的に合成する。合成されたバックスキャッタ信号の合成信号は、位相の角度をθ、虚数をjとすると、「合成信号=cosθ+jsinθ」と表すことができる。すなわち、ダイポールアンテナ200は、2つのバックスキャッタ信号を合成することで、インピーダンスを回転するように制御することができる。ダイポールアンテナ200は、位相が互いに異なる2つのバックスキャッタ信号を空間的に合成して、電波201を送信する。
【0069】
図7を用いて、2つのバックスキャッタ信号の合成信号のスペクトル波形について説明する。図7は、実施形態に係る合成信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【0070】
図7には、ダイポールアンテナ200によって合成された2つのバックスキャッタ信号の合成信号のスペクトル波形W1が示されている。スペクトル波形W1は、キャリア信号S1と、LSB信号S2と、USB信号S3と、を含む。キャリア信号S1の周波数は、1.0GHzである。LSB信号S2の周波数は、0.99GHzである。USB信号S3の周波数は、1.01GHzである。図7に示すように、スペクトル波形W1において、LSB信号S3に比べてLSB信号S2は抑圧されている。すなわち、スペクトル波形W1において、USB信号S3のシングルバンドが実現している。
【0071】
図7では、ダイポールアンテナ200を用いて2つのバックスキャッタ信号を合成した例について説明したが、本開示は、これに限定されない。例えば、本開示では、ものポールアンテナを用いて、2つのバックスキャッタ信号を合成してもよい。
【0072】
本実施形態に係る合成回路は、ダイポールアンテナに限定されない。本実施形態に係る合成回路は、モノポールアンテナであってもよい。
【0073】
図8を用いて、合成回路として用いるモノポールアンテナについて説明する。図8は、実施形態に係るモノポールアンテナの一例を示す図である。
【0074】
モノポールアンテナ200Aは、導線210Aを含む。導線210Aは、インピーダンス回路110-2と、移相器120とに接続されている導線である。モノポールアンテナ200Aは、グラウンドGに電気的に接続されている。
【0075】
導線210Aには、複素平面において、インピーダンスが実軸上で制御されたバックスキャッタ信号を移相器120により位相が45°遅延したバックスキャッタ信号と、インピーダンスが虚軸上で制御されたバックスキャッタ信号が入力される。すなわちモノポールアンテナ200Aには、位相が互いに異なる2つのバックスキャッタ信号が入力される。
【0076】
モノポールアンテナ200Aは、位相が互いに異なる2つのバックスキャッタ信号を空間的に合成する。合成されたバックスキャッタ信号の合成信号は、位相の角度をθ、虚数をjとすると、「合成信号=cosθ+jsinθ」と表すことができる。すなわち、モノポールアンテナ200Aは、2つのバックスキャッタ信号を合成することで、インピーダンスを回転するように制御することができる。モノポールアンテナ200Aは、位相が互いに異なる2つのバックスキャッタ信号を空間的に合成して、電波201Aを送信する。
【0077】
図9を用いて、2つのバックスキャッタ信号の合成信号のスペクトル波形について説明する。図9は、実施形態に係る合成信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【0078】
図9には、モノポールアンテナ200Aによって合成された2つのバックスキャッタ信号の合成信号のスペクトル波形W2が示されている。スペクトル波形W2は、キャリア信号S11と、LSB信号S12と、USB信号S13と、を含む。キャリア信号S11の周波数は、1.0GHzである。LSB信号S12の周波数は、0.99GHzである。USB信号S13の周波数は、1.01GHzである。図9に示すように、スペクトル波形W2において、LSB信号S12は抑圧されている。すなわち、スペクトル波形W2において、USB信号S13のシングルバンドが実現している。図7と比べると、LSB信号S12の隣接している帯域と、USB信号S13に隣接している帯域とにピークが出ているが、USB信号S13のシングルバンドが実現されている。
【0079】
図7と、図9とに示したように、SSB信号の上側の、USB信号S3と、USB信号S13とにピークが出現している。ここで、信号源V1と信号源V1Aから出力される入力信号の位相の関係を逆にすると、LSB信号S2と、LSB信号S12とにピークが出現する。すなわち、伝送回路28は、インピーダンス回路110-1と、インピーダンス回路110-2とに入力される入力信号の位相を調整することで、ピークが出願する位置を適宜調整可能に構成されている。
【0080】
上述のとおり、本実施形態では、伝送回路が抵抗素子のみから構成された2つのインピーダンス回路から構成されている。本実施形態では、一方のインピーダンス回路のバックスキャッタ信号は合成回路に直接入力し、他方のインピーダンス回路のバックスキャッタ信号は位相を90°反転させて合成回路に入力する。本実施形態は、2つのバックスキャッタ信号を合成することで、バックスキャッタ信号のシングルサイドバンドを実現することができる。
【0081】
また、本実施形態では、伝送回路のインピーダンス回路は、インダクタおよびキャパシタは備えておらず、抵抗素子のみから構成されている。これにより、本実施形態は、伝送回路をIC化することが容易となる。その結果、本実施形態は、小型化に有利な構成となる。
【0082】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 無線通信装置
10 アンテナ
11 BPF
20 RFBSデバイス
21 高周波スイッチ
22 アンプ
23 復調部
24 発振部
25,26 LPF
27 制御回路
28 伝送回路
110 インピーダンス回路
120 移相器
130 合成回路
200 ダイポールアンテナ
200A モノポールアンテナ
SW1~SW8 スイッチ素子
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9