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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241113BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241113BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H01L21/302 104H
B01J19/08 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021077461
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2021190421
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2020093587
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593001624
【氏名又は名称】株式会社米倉製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】石島 達夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 康弘
(72)【発明者】
【氏名】相澤 洸
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507143(JP,A)
【文献】特開平09-153462(JP,A)
【文献】特開2012-064444(JP,A)
【文献】特開2017-143085(JP,A)
【文献】特開2008-227466(JP,A)
【文献】特開2002-346493(JP,A)
【文献】特開2000-173486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
H01L 21/3065
B01J 19/08
H01J 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に対象物が配置される処理室と、
前記処理室の外部に配置され、液体を貯留しているタンクと、
前記処理室と前記タンクとを接続する配管であって、前記タンク内に貯留されている液体が気化した気体が、前記処理室内の負圧により当該配管を通って前記処理室内に導入される配管と、
前記対象物に向けてマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器が発生させたマイクロ波を通過させて前記処理室内の前記気体に照射させることで、プラズマを発生させるスロットアンテナとを備え、
前記配管は、前記処理室の壁のうち、前記対象物より下方の位置で接続されている
表面処理装置。
【請求項2】
前記表面処理装置は、さらに、
前記対象物と前記スロットアンテナとの間に配置される、複数の開口を有する部材を備える
請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記スロットアンテナは、
導電性を有する板体と、
前記板体に設けられた第一スリットとを有し、
前記第一スリットは、
前記板体に設けられた直線状の第一開口部と、
前記板体に設けられた第二開口部であって、前記第一開口部の一方の端部で前記第一開口部と接続する第二開口部と、
前記板体に設けられた第三開口部であって、前記第一開口部の他方の端部で前記第一開口部と接続する第三開口部とを有する
請求項1または2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記スロットアンテナは、さらに、
前記板体に設けられた、前記第一スリットと離間した第二スリットを備える
請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記第二スリットは、
前記板体に設けられた直線状の第四開口部であって、前記第一開口部と平行である第四開口部と、
前記板体に設けられた第五開口部であって、前記第四開口部の一方の端部で前記第四開口部と接続する第五開口部と、
前記板体に設けられた第六開口部であって、前記第四開口部の他方の端部で前記第四開口部と接続する第六開口部とを有する
請求項4に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記第二開口部は、前記第二開口部の両端部のうち前記第四開口部に近い側の端部で、前記第一開口部と接続しており、
前記第三開口部は、前記第三開口部の両端部のうち前記第四開口部に近い側の端部で、前記第一開口部と接続しており、
前記第五開口部は、前記第五開口部の両端部のうち前記第一開口部に近い側の端部で、前記第四開口部と接続しており、
前記第六開口部は、前記第六開口部の両端部のうち前記第一開口部に近い側の端部で、前記第四開口部と接続している
請求項5に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記複数の開口を有する前記部材は、導電性を有するメッシュ部材またはパンチングプレートである
請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記複数の開口を有する前記部材は、他の導電性部材と電気的接続を有しない
請求項7に記載の表面処理装置。
【請求項9】
前記対象物は、レジストで被覆された基板であり、
前記気体は、超純水が気化した水蒸気であり、
前記表面処理装置は、前記水蒸気に前記マイクロ波が照射されたことで発生するプラズマによって、前記対象物から前記レジストを除去する
請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項10】
内部に対象物が配置される処理室と、
前記処理室の外部に配置され、液体を貯留しているタンクと、
前記処理室と前記タンクとを接続する配管であって、前記タンク内に貯留されている液体が気化した気体が、前記処理室内の負圧により当該配管を通って前記処理室内に導入される配管と、
前記対象物に向けてマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器が発生させたマイクロ波を通過させて前記処理室内の前記気体に照射させることで、プラズマを発生させるスロットアンテナと
前記マイクロ波発生器が発生させた前記マイクロ波を前記対象物に導く導波管であって、前記導波管の前記対象物に近い側の端部に前記スロットアンテナを有する導波管とを備え、
前記スロットアンテナは、
導電性を有する板体と、
前記板体に設けられた第一スリットとを有し、
前記第一スリットは、
前記板体に設けられた直線状の第一開口部と、
前記板体に設けられた第二開口部であって、前記第一開口部の一方の端部で前記第一開口部と接続する第二開口部と、
前記板体に設けられた第三開口部であって、前記第一開口部の他方の端部で前記第一開口部と接続する第三開口部とを有する
表面処理装置。
【請求項11】
前記スロットアンテナは、さらに、
前記板体に設けられた、前記第一スリットと離間した第二スリットを有し、
前記第二スリットは、
前記板体に設けられた直線状の第四開口部であって、前記第一開口部の長手方向に垂直な方向に並んで配置され、前記第一開口部と平行である第四開口部と、
前記板体に設けられた第五開口部であって、前記第四開口部の一方の端部で前記第四開口部と接続する第五開口部と、
前記板体に設けられた第六開口部であって、前記第四開口部の他方の端部で前記第四開口部と接続する第六開口部とを有する
請求項10に記載の表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中でプラズマを発生させ、発生させたプラズマを用いて、液体中に配置された対象物を処理する液中プラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示される液中プラズマ処理装置は、マイクロ波発生器から導かれたマイクロ波を液体中に放射するスロットアンテナと、液体中においてスロットアンテナと対象物との間に処理空間を形成するスペーサとを備える。スペーサは、スロットアンテナと対象物との距離を規定する。
【0004】
処理空間内には、スロットアンテナから放射されたマイクロ波によって、平面的に広がる気泡が安定的に発生する。そのため、気泡中に誘起されるプラズマも、気泡が発生する領域に平面的に広がって安定的に存在する。これにより、処理空間内に配置された平面形状の対象物を効率的にプラズマ処理できる液中プラズマ処理装置が得られる。液中プラズマ処理装置は、例えば、半導体基板の表面に設けられたレジスト膜を効率的に除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-127705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される液中プラズマ処理装置は、対象物をプラズマの原材料である液体の中で処理するので、対象物が液体に接触している。そのため、処理後に対象物から液体を取り除くための乾燥設備および乾燥工程が必要であり、乾燥設備のための空間および乾燥工程の所要時間などの追加的なコストが発生するという問題がある。また、対象物の表面のウォーターマークの有無を検査する設備または検査工程などのための追加的なコストが発生するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る表面処理装置は、内部に対象物が配置される処理室と、前記処理室の外部に配置され、液体を貯留しているタンクと、前記処理室と前記タンクとを接続する配管であって、前記タンク内に貯留されている液体が気化した気体が、前記処理室内の負圧により当該配管を通って前記処理室内に導入される配管と、前記対象物に向けてマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、前記マイクロ波発生器が発生させたマイクロ波を通過させて前記処理室内の前記気体に照射させることで、プラズマを発生させるスロットアンテナとを備える。
【0009】
このような構成によれば、表面処理装置は、処理室内の負圧によって、タンクから配管を通って処理室内に導入される気体にマイクロ波を照射することで発生するプラズマによって対象物を処理する。ここで、処理室内に液体が存在することがないので、対象物に液体が付着することが回避され、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。また、対象物の表面のウォーターマークの有無を検査する設備または検査工程が不要である効果もある。さらに、仮に液体を気化させる装置を用いて液体を気化させるとすれば必要となる、当該装置および液体または気体の流量制御装置が不要であるので、当該装置および流量制御装置に要するコストを低減することができる。また、配管内の結露を防止するために必要となる、配管内を加湿状態にするための装置が不要となることにより、コストを低減できる効果がある。このように、表面処理装置によれば、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0010】
また、前記配管は、前記処理室の壁のうち、前記対象物より下方の位置で接続されていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、表面処理装置において、処理室に配管が接続されている位置が対象物より下方であるので、仮に配管を通って液体が処理室内に導入されたとしても、その液体が対象物に付着することが回避される。よって、表面処理装置によれば、仮に配管を通って液体が処理室内に導入される場合であっても、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0012】
また、前記表面処理装置は、さらに、前記対象物と前記スロットアンテナとの間に配置される、複数の開口を有する部材を備えてもよい。
【0013】
このような構成によれば、複数の開口を有する部材の配置によって、マイクロ波およびプラズマを構成する荷電粒子束が、上記部材を通過し対象物へと到達する量が低減する。これより、対象物は、電荷を帯びていない電気的に中性な化学活性種(ラジカル)による表面処理が優位となる。そして、ラジカル密度が高い領域においては再結合等による失活により、その密度が低減すること、および、ラジカルは電磁界の影響を受けることなく自由に拡散することから、対象物に施される処理の強度の位置による差異が抑制される。このように、表面処理装置によれば、対象物に対する処理の強度を均一化でき、かつ、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0014】
また、本発明の1つの態様に係る表面処理装置は、内部に対象物が配置される処理室と、前記対象物に向けてマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、前記マイクロ波発生器が発生させたマイクロ波を通過させて前記処理室内の気体に照射させることで、プラズマを発生させるスロットアンテナと、前記対象物と前記スロットアンテナとの間に配置される、複数の開口を有する部材を備える。
【0015】
このような構成によれば、表面処理装置は、複数の開口を有する部材の配置によって、マイクロ波およびプラズマを構成する荷電粒子束が、上記部材を通過し対象物へと到達する量を低減させる。これにより、プラズマを構成する荷電粒子の密度を、マイクロ波の照射方向に垂直な面内で均一化するとともに、荷電粒子の速度を減速させる。よって、対象物に施される処理の強度の位置による差異が抑制される。また、メッシュ部材によって処理対象物に照射される荷電粒子束を低減させ、ラジカル反応を優位とすることによって、対象物に施される処理の強度の位置による差異が抑制される。このように、表面処理装置によれば、対象物に対する処理の強度を均一化しながら、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0016】
また、前記スロットアンテナは、導電性を有する板体と、前記板体に設けられた第一スリットとを有し、前記第一スリットは、前記板体に設けられた直線状の第一開口部と、前記板体に設けられた第二開口部であって、前記第一開口部の一方の端部で前記第一開口部と接続する第二開口部と、前記板体に設けられた第三開口部であって、前記第一開口部の他方の端部で前記第一開口部と接続する第三開口部とを有してもよい。
【0017】
このような構成によれば、表面処理装置は、スロットアンテナによって、左右方向において比較的大きな幅を有する形状のプラズマを発生させる。そして、このプラズマによって対象物を処理するので、表面処理装置は、対象物の比較的広い領域を均一にプラズマ処理することができる。よって、表面処理装置は、対象物の比較的広い領域を均一にプラズマ処理することができ、さらに、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0018】
また、前記スロットアンテナは、さらに、前記板体に設けられた、前記第一スリットと離間した第二スリットを備えてもよい。
【0019】
これによれば、表面処理装置は、離間した2つのスリットによってマイクロ波を照射することで、プラズマを比較的広い範囲に発生させることができるので、対象物に施される処理の強度の位置による差異が抑制される。このように、表面処理装置によれば、対象物に対する処理の強度を均一化しながら、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0020】
また、前記第二スリットは、前記板体に設けられた直線状の第四開口部であって、前記第一開口部と平行である第四開口部と、前記板体に設けられた第五開口部であって、前記第四開口部の一方の端部で前記第四開口部と接続する第五開口部と、前記板体に設けられた第六開口部であって、前記第四開口部の他方の端部で前記第四開口部と接続する第六開口部とを有してもよい。
【0021】
このような構成によれば、表面処理装置は、離間した2つのスリットを備えるスロットアンテナを用いて、マイクロ波の照射方向に垂直な面内でより大きな幅を有する形状のプラズマを発生させて、対象物のより広い領域を均一にプラズマ処理することができる。よって、表面処理装置は、対象物の比較的広い領域を均一にプラズマ処理することができ、さらに、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0022】
また、前記第二開口部は、前記第二開口部の両端部のうち前記第四開口部に近い側の端部で、前記第一開口部と接続しており、前記第三開口部は、前記第三開口部の両端部のうち前記第四開口部に近い側の端部で、前記第一開口部と接続しており、前記第五開口部は、前記第五開口部の両端部のうち前記第一開口部に近い側の端部で、前記第四開口部と接続しており、前記第六開口部は、前記第六開口部の両端部のうち前記第一開口部に近い側の端部で、前記第四開口部と接続していてもよい。
【0023】
このような構成によれば、表面処理装置は、離間した2つのU字状のスリットを備えるスロットアンテナを用いて、マイクロ波の照射方向に垂直な面内でより大きな幅を有する形状のプラズマを発生させて、対象物のより広い領域を均一にプラズマ処理することができる。よって、表面処理装置は、対象物の比較的広い領域を均一にプラズマ処理することができ、さらに、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0024】
また、前記複数の開口を有する前記部材は、導電性を有するメッシュ部材またはパンチングプレートであってもよい。
【0025】
このような構成によれば、導電性を有するメッシュ部材またはパンチングプレートの配置によって、マイクロ波およびプラズマを構成する荷電粒子束が、メッシュを通過し対象物へと到達する量が、より一層低減する。これより、対象物は、電荷を帯びていない電気的に中性な化学活性種(ラジカル)による表面処理が優位となる。そして、ラジカル密度が高い領域においては再結合等による失活により、その密度が低減すること、および、ラジカルは電磁界の影響を受けることなく自由に拡散することから、対象物に施される処理の強度の位置による差異が抑制される。このように、表面処理装置によれば、対象物に対する処理の強度を均一化でき、かつ、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0026】
また、前記複数の開口を有する前記部材は、他の導電性部材と電気的接続を有しなくてもよい。
【0027】
このような構成によれば、表面処理装置は、メッシュ部材と他の導電性部材との電気的接続が絶たれているので、メッシュ部材の電位が安定し、プラズマを安定的に生成することができる。よって、表面処理装置によれば、安定的に生成されるプラズマによって対象物を処理することができ、かつ、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【0028】
また、前記対象物は、レジストで被覆された基板であり、前記気体は、超純水が気化した水蒸気であり、前記表面処理装置は、前記水蒸気に前記マイクロ波が照射されたことで発生するプラズマによって、前記対象物から前記レジストを除去してもよい。
【0029】
このような構成によれば、表面処理装置は、表面処理として、半導体装置の製造においてレジストの除去処理をすることができる。よって、表面処理装置によれば、レジスト除去処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の態様に係るプラズマ処理装置は、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施の形態に係る表面処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2図1における枠II内の構成の拡大図である。
図3】実施の形態に係るスロットアンテナの第一例を示す模式図である。
図4】実施の形態に係るスロットアンテナの第二例を示す模式図である。
図5】実施の形態に係るスロットアンテナの第三例を示す模式図である。
図6】実施の形態に係るスロットアンテナの第四例を示す模式図である。
図7】実施の形態に係るスロットアンテナの第五例を示す模式図である。
図8】実施の形態に係るメッシュ部材の第一例を示す模式図である。
図9】実施の形態に係るメッシュ部材の第二例を示す模式図である。
図10】関連技術および実施の形態に係る表面処理装置による表面処理の結果の例を示す説明図である。
図11】実施の形態に係る表面処理装置による表面処理の均一度の評価結果の例を示す第一の説明図である。
図12】実施の形態に係る表面処理装置による表面処理の均一度の評価結果の例を示す第二の説明図である。
図13】実施の形態に係る表面処理装置による表面処理の均一度の評価結果の例を示す第三の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る表面処理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
なお、以下で説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0034】
(実施の形態)
本実施の形態において、表面処理の後の対象物から液体を取り除く乾燥工程が不要である表面処理装置について説明する。
【0035】
図1は、本実施の形態に係る表面処理装置の構成の一例を示す模式図である。図2は、図1における枠II内の構成の拡大図である。図1および図2は、表面処理装置の使用状態における姿勢を示している。なお、図示されたXYZ軸を用いて説明することもある。Z軸プラス方向を下または下方向ともいい、Z軸マイナス方向を上または上方向ともいう。
【0036】
図1および図2に示される表面処理装置10は、対象物80の表面、つまり図1および図2における上側の面をプラズマ処理する装置である。表面処理装置10は、マイクロ波発生器11と、導波管12と、マイクロ波透過部材13と、容器14と、スロットアンテナ15と、メッシュ部材16と、スペーサ17と、ホルダ18と、配管20と、タンク21とを備える。
【0037】
マイクロ波発生器11は、パルス変調されたマイクロ波を発生する装置である。マイクロ波発生器11は、マグネトロンまたは半導体などによりマイクロ波を発生し、導波管12を経て、処理室S1の対象物80に向けてマイクロ波を出力する。
【0038】
導波管12は、マイクロ波発生器11から出力されたマイクロ波を伝搬させるテーパー導波管である。導波管12の内部には、マイクロ波透過部材13が設けられる。マイクロ波透過部材13は、例えば水晶で形成されてもよい。
【0039】
容器14は、内部に処理室S1を有する容器である。処理室S1には対象物80が配置されている。容器14は、例えばアクリル樹脂で形成される。容器14の上面には、導波管12の先端が接続されている。また、容器14の側壁には、配管20が接続されており、さらに配管20を介してタンク21が接続されている。
【0040】
また、容器14は、排気口141を有する。排気口141に接続されるエアポンプ(不図示)によって容器14内の処理室S1が減圧されることにより、容器14内の圧力は負圧となる。
【0041】
スロットアンテナ15は、マイクロ波発生器11から導波管12およびマイクロ波透過部材13を介して伝搬されたマイクロ波を処理室S1へ放射するアンテナである。スロットアンテナ15は、処理室S1内において、導波管12の先端に配置されている。スロットアンテナ15は、導電性の板体で形成され、マイクロ波を通過させるスリット151を有している。スロットアンテナ15を通過したマイクロ波は、スロットアンテナ15の下方に存在する気体に照射されることでプラズマ(表面波プラズマ)を発生させる。スロットアンテナ15の材料は、導電性を有する物質であり、例えばシリコンまたは銅である。ただし、表面処理として基板のレジスト除去処理を想定する場合には、スロットアンテナ15の材料は、例えばシリコンである。銅が上記基板に対する不純物を生じさせる可能性があるからである。
【0042】
スリット151は、導電性の板体に設けられた細長い開口、言い換えれば隙間または空隙である。スリット151は、例えば、ワイヤカットで形成される。スリット151の形状は、後で詳しく説明する。
【0043】
メッシュ部材16は、導電性を有するメッシュ部材である。メッシュ部材16は、対象物80とスロットアンテナ15との間に配置され、例えば、スロットアンテナ15から下方に4mm移動した位置に固定される。なお、メッシュ部材16は、複数の開口を有する部材の一例である。ここでは、複数の開口を有する部材としてメッシュ部材16を用いる場合を例として説明するが、パンチングプレートが用いられてもよい。なお、メッシュ部材16は必須の構成ではない。
【0044】
メッシュ部材16は、導電性を有してもよいし、導電性を有しなくてもよい。
【0045】
メッシュ部材16が、導電性を有する場合、他の導電性部材との電気的接続を有しないようにしてもよい。メッシュ部材16の材料は、例えば、アルマイト加工したアルミニウム、または、ステンレスなどである。メッシュ部材16の線径は例えば0.11mm、目数は例えば#20メッシュまたは#30メッシュであるが、これに限定されない。メッシュ部材16の線径、目数または材料は、メッシュ部材16の全体において一様であってもよいし、位置によって異なってもよい。
【0046】
メッシュ部材16は、スロットアンテナ15を通過したマイクロ波を遮蔽する効果を有する。言い換えれば、メッシュ部材16は、スロットアンテナ15を通過したマイクロ波のうち、対象物80に到達するマイクロ波の量を低減させる効果を有する。このようなマイクロ波の遮蔽効果は、メッシュ部材16の表面がアルマイト加工されていたとしても、皮膜内部に導電性があれば発揮される。
【0047】
メッシュ部材16は、スロットアンテナ15を通過したマイクロ波により発生したプラズマ19の強度を調整する。具体的には、メッシュ部材16は、XY面内におけるプラズマ19の密度を均一化する効果を有し、その結果、対象物80の表面のプラズマ処理の強度を均一化することができる。このようなプラズマ19の密度の均一化の効果は、メッシュ部材16が導電性を有する場合でも、導電性を有しない場合でも、発揮される。
【0048】
スペーサ17は、スロットアンテナ15と、メッシュ部材16および対象物80との各距離を規定する。
【0049】
ホルダ18は、処理室S1内に固定され、対象物80を保持する部材である。例えば、ホルダ18は、対象物80を鉛直下方から保持する。対象物80は、例えば、スロットアンテナ15から下方に9mm移動した位置に保持される。
【0050】
配管20は、処理室S1(容器14)とタンク21とを接続する配管である。配管20は、処理室S1とタンク21とを連通させる。配管20は、金属または樹脂など形状が固定されたものであってもよいし、ゴムなど柔軟性があるものであってもよい。
【0051】
タンク21は、プラズマの原材料である液体を貯留しているタンクである。タンク21は、処理室S1の外部に配置され、配管20を介して、容器14内部の処理室S1に接続されている。タンク21内の気圧は、配管20によって連通している処理室S1内とほぼ同じであり、タンク21内において液体81が気化して気体が生成される。液体81は、例えば、超純水またはエタノールなどである。
【0052】
このように構成される表面処理装置10において、タンク21に貯留されている液体81が気化した気体が、処理室S1内の負圧により配管20を通って処理室S1内に導入される。処理室S1内に導入された気体は、スロットアンテナ15を通過したマイクロ波により電離しプラズマ19を生成する。生成されたプラズマ19によって対象物80の表面が処理される。
【0053】
なお、図1および図2において、プラズマ19は対象物80とメッシュ部材16との間の位置に図示されているが、プラズマ19の一部はメッシュ部材16より下方にまで到達することもある。
【0054】
すなわち、スロットアンテナ15とメッシュ部材16との間の空間で、プラズマ19を構成する荷電粒子とラジカルとが発生する。発生する荷電粒子とラジカルとの密度は、スリット151付近つまりスロットアンテナ15の中央部に近いほど大きい。ここで、メッシュ部材16は、荷電粒子に対しては電位の壁として作用する。また、メッシュ部材16は、荷電粒子を減速させる効果もある。そのため、メッシュ部材16が存在することによって、荷電粒子は、メッシュ部材16より下方の空間に移動することが抑制される。なお、電気的に中性であるラジカルは、メッシュ部材16の影響をそれほど受けずにメッシュ部材16の下方に到達すると考えられる。このように、プラズマ19の一部はメッシュ部材16より下方にまで到達すると考えられる。
【0055】
なお、配管20が処理室S1(容器14)に接続される位置は、処理室S1の壁のどの位置であってもよいが、使用状態において対象物80より下方の位置で接続されていてもよい。配管20がこのような位置に接続されていると、仮に配管20を通じて微量の液体81が処理室S1内に導入された場合であっても、その液体81が対象物80に付着することを回避することができる。
【0056】
なお、対象物80の一例は、レジストで被覆された基板である。また、液体81は、超純水である。この場合、表面処理装置10は、液体81である超純水が気化した水蒸気にマイクロ波が照射されたことで発生するラジカルによって、対象物80からレジストを除去する、レジスト除去装置(レジストアッシャー)として機能する。このとき、処理室S1内の気圧は、例えば3kPa程度である。水の飽和蒸気圧が室温で2.5kPa程度であるので、処理室S1内の気圧を3kPa程度にまで低下させることにより処理室S1内の気体に占める水蒸気の割合を比較的大きくすることができ、高密度のプラズマの発生に寄与する。なお、液体81として、過酸化水素を用いることもできる。
【0057】
なお、タンク21が処理室S1の外部であって、かつ、マイクロ波発生器11が発生するマイクロ波が照射されない位置に配置されていれば、マイクロ波が照射されたことによる液体81の気化が抑制され、処理室S1内の気圧の安定化に寄与し得る。仮に、マイクロ波の照射が液体81に照射されると、液体81の気化が促進され、処理室S1内の気圧が変動してしまい、プラズマ19による対象物80に対するプラズマ処理の速度の変化、または、プラズマ処理の特性の変化を生じさせるおそれがある。
【0058】
このように、処理室S1内には配管20を通じて気体が導入され、言い換えれば、液体81が存在することがない。そのため、液体81が対象物80に付着することを回避することができ、その結果、対象物80に対する処理の後に、ウォーターマークの検出および処理をする必要がない利点がある。
【0059】
以降において、スロットアンテナ15について詳しく説明する。
【0060】
図3は、本実施の形態に係るスロットアンテナ15の第一例を示す模式図である。
【0061】
図3に示されるように、スロットアンテナ15は、スリット151として、3つの直線状の開口部(空隙)である、第一開口部151Aと、第二開口部151Bと、第三開口部151Cとを有する。直線状の開口部は、細長い矩形形状の開口部ともいえる。
【0062】
第一開口部151Aは、両端部が第二開口部151Bと第三開口部151Cとに接続されている。
【0063】
第二開口部151Bは、第一開口部151Aの一方の端部で第一開口部151Aと接続している。第二開口部151Bと第一開口部151Aとのなす角は、例えば90度であり、または、90度プラスマイナス10度程度の範囲内であるが、これに限定されない。
【0064】
第三開口部151Cは、第一開口部151Aの他方の端部で第一開口部151Aと接続している。第三開口部151Cと第一開口部151Aとのなす角は、例えば90度であり、または、90度プラスマイナス10度程度の範囲内であるが、これに限定されない。
【0065】
第一開口部151Aの幅L1は、例えば、マイクロ波の周波数が2.45GHzであり、真空を封止するための導波管の材質が石英である場合には、数mm程度であり、長さL2は例えば数cm程度である。また、第二開口部151Bおよび第三開口部151Cの幅L3は例えば数mm程度であり、長さL4は例えば数cm程度である。これらの寸法は、マイクロ波(電磁波)の周波数、または、マイクロ波を伝搬させる媒質の誘電率により決定され得る。
【0066】
このようなスロットアンテナ15を用いることにより、XY面内で円形に比較的近い形状のプラズマ19を発生させることができる。仮に、1つの直線状の開口部のみを有するスロットアンテナを使用するとすれば、XY面内で直線状または楕円形状のプラズマが発生する。このような形状のプラズマは、X方向およびY方向に広がりを有する対象物80に処理を施すには適さない。これに対し、上記のようにXY面内で円形に比較的近い形状のプラズマ19は、X方向およびY方向に広がりを有する対象物80に処理を施すのに適している。
【0067】
図4は、本実施の形態に係るスロットアンテナ15の第二例を示す模式図である。
【0068】
図4に示されるスロットアンテナ15は、図3に示されるスロットアンテナ15の第一開口部151A、第二開口部151Bおよび第三開口部151Cの幅を変更したものである。
【0069】
図4に示されるスロットアンテナ15は、スリット152として、3つの直線状の開口部(空隙)である、第一開口部152Aと、第二開口部152Bと、第三開口部152Cとを有する。これらの開口部の接続関係は、スリット151における場合と同様である(図3参照)。
【0070】
第一開口部152Aの幅M1は、第一開口部151A(図3参照)の幅L1より小さい。また、第二開口部152Bの幅M3は、第二開口部151B(図3参照)の幅L3より大きい。このように、開口部の幅を異ならせることで、生成されるプラズマ19のXY面内における形状を調整することができる。特に、図4に示されるように、第二開口部152Bおよび第三開口部152Cの幅を大きくすることで、XY面内でより一層円形に近い形状のプラズマ19を生成することができ、X方向およびY方向に広がりを有する対象物80に効果的に処理を施すことができる。
【0071】
なお、第一開口部152Aの長さM2を第一開口部151A(図3参照)の長さL2より大きく、または小さくしたり、第二開口部152Bの長さM4を第二開口部151B(図3参照)の長さL4より大きく、または小さくしたりすることによっても、生成されるプラズマ19のXY面内における形状を調整することができる。
【0072】
図5は、本実施の形態に係るスロットアンテナ15の第三例を示す模式図である。
【0073】
図5に示されるスロットアンテナ15は、図3に示されるスロットアンテナ15の第二開口部151Bおよび第三開口部151Cの形状を変更したものである。
【0074】
図5に示されるスロットアンテナ15は、スリット153として、3つの開口部(空隙)である、第一開口部153Aと、第二開口部153Bと、第三開口部153Cとを有する。これらの開口部の接続関係は、スリット151における場合と同様である(図3参照)。
【0075】
第二開口部153Bは、第二開口部151Bまたは第二開口部152Bが矩形であったのに対して、五角形の形状を有する。第三開口部153Cについても同様である。
【0076】
このように、第二開口部153Bまたは第三開口部153Cは、必ずしも矩形である必要はなく、多角形であってもよいし、一部または全部が曲線である図形であってもよい。また、第二開口部153Bと第三開口部153Cとが同一の形状である必要もない。
【0077】
また、第一開口部153Aは矩形であるが、上記と同様に、多角形であってもよいし、一部または全部が曲線である図形であってもよい。
【0078】
このように、開口部の形状を多角形または曲線を含む図形に変更することによっても、生成されるプラズマ19のXY面内における形状を調整することができる。
【0079】
図6は、本実施の形態に係るスロットアンテナ15の第四例を示す模式図である。
【0080】
図6に示されるスロットアンテナ15は、図4に示されるスリット152を2つ備えるものである。説明の便宜上、図6に示されるスロットアンテナ15が備える2つのスリット152を、スリット154Pおよび154Qと称する。
【0081】
スリット154Pは、第一開口部154A、第二開口部154Bおよび第三開口部154Cを備える。スリット154Qは、第四開口部154D、第五開口部154Eおよび第六開口部154Fを備える。
【0082】
スリット154Pおよび154Qは、離間している。
【0083】
スリット154Qの第四開口部154Dが、スリット154Pの第一開口部154Aと平行である場合を例として図示しているが、これに限られない。なお、平行という語は、厳密に平行である場合だけでなく、実質的に平行と認められる範囲(例えば、なす角が10度または20度程度以下である範囲)内である場合も含む。以降でも同様である。
【0084】
また、スリット154Qの第五開口部154Eが、スリット154Pの第二開口部154Bの延長線上に位置する場合を例として図示しているが、これらが平行であってもよく、また、上記に限られない。
【0085】
また、スリット154Qの第六開口部154Fが、スリット154Pの第三開口部154Cの延長線上に位置する場合を例として図示しているが、これらが平行であってもよく、また、上記に限られない。
【0086】
図6に示されるスリット154Pおよび154Qを備えるスロットアンテナ15によれば、生成されるプラズマ19のXY面内における形状を調整することができる。より具体的には、スリット154Pおよび154Qを備えるスロットアンテナ15によれば、XY面内でより一層円形に近い形状のプラズマ19を生成することができ、X方向およびY方向に広がりを有する対象物80に効果的に処理を施すことができる。
【0087】
図7は、本実施の形態に係るスロットアンテナ15の第五例を示す模式図である。
【0088】
図7に示されるスロットアンテナ15は、図4に示されるスリット152に類似するスリットを2つ備えるものである。説明の便宜上、図7に示されるスロットアンテナ15が備える2つのスリット152を、スリット155Pおよび155Qと称する。
【0089】
図6に示されるスリット154Pおよび154Qと同様に、スリット155Pは、第一開口部155A、第二開口部155Bおよび第三開口部155Cを備える。スリット155Qは、第四開口部155D、第五開口部155Eおよび第六開口部155Fを備える。スリット155Pおよび155Qは、離間している。
【0090】
また、図6に示されるスリット154Pおよび154Qと同様に、スリット155Qの第四開口部155Dが、スリット155Pの第一開口部155Aと平行である場合を例として図示しているが、これに限られない。スリット155Qの第五開口部155Eが、スリット155Pの第二開口部155Bの延長線上に位置する場合を例として図示しているが、これらが平行であってもよく、また、上記に限られない。スリット155Qの第六開口部155Fが、スリット155Pの第三開口部155Cの延長線上に位置する場合を例として図示しているが、これらが平行であってもよく、また、上記に限られない。
【0091】
さらに、図7に示されるように、第二開口部155Bは、第二開口部155Bの両端部のうち第四開口部155Dに近い側の端部で、第一開口部155Aと接続している。第三開口部155Cは、第三開口部155Cの両端部のうち第四開口部155Dに近い側の端部で、第一開口部155Aと接続している。第五開口部155Eは、第五開口部155Eの両端部のうち第一開口部155Aに近い側の端部で、第四開口部155Dと接続している。第六開口部155Fは、第六開口部155Fの両端部のうち第一開口部155Aに近い側の端部で、第四開口部155Dと接続している。
【0092】
図7に示されるスリット155Pおよび155Qを備えるスロットアンテナ15によれば、生成されるプラズマ19のXY面内における形状を調整することができる。より具体的には、スリット155Pおよび155Qを備えるスロットアンテナ15によれば、XY面内でより一層円形に近い形状のプラズマ19を生成することができ、X方向およびY方向に広がりを有する対象物80に効果的に処理を施すことができる。
【0093】
図8は、本実施の形態に係るメッシュ部材16の第一例を示す模式図である。
【0094】
図8に示されるメッシュ部材16は、XY面内の全体において一様なメッシュを有するメッシュ部材である。なお、メッシュ部材16の外形が矩形である場合を例として示しているが、スペーサ17に保持され得る形状であればどのような形状であってもよい。
【0095】
図9は、本実施の形態に係るメッシュ部材16の第二例(メッシュ部材16A)を示す模式図である。
【0096】
図9に示されるメッシュ部材16Aは、メッシュの目数がXY面内における位置によって異なるメッシュ部材の一例である。
【0097】
すなわち、メッシュ部材16Aは、その中央部に、周辺部の目数と比較して目数が大きいメッシュ部材16Bを有する。
【0098】
上述のとおり、プラズマ19のXY面内における密度は、スリット151の近傍つまり中央部のほうが、周辺部より大きい。そこで、メッシュ部材16のうちスリット151の近傍つまり中央部に近い位置の目数を大きくすることで、その中央部における荷電粒子の分布の均一化および減速の効果をより大きくすることができる。このように、メッシュ部材16Aの位置によって異なる目数を有することで、プラズマ19の密度または形状を調整することができる。
【0099】
なお、メッシュ部材16Aは、メッシュの目数がXY面内における位置によって異なるメッシュ部材の一例であるが、同じように、メッシュの線径がXY面内における位置によって異なるメッシュ部材、または、メッシュの材料がXY面内における位置によって異なるメッシュ部材を採用することもできる。
【0100】
図10は、関連技術および本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の結果の例を示す説明図である。図10を参照しながら、表面処理装置10が備えるスロットアンテナ15、およびメッシュ部材16の効果を考察する。
【0101】
図10では、プラズマ処理の例として、対象物80である半導体基板の表面に設けられたレジスト膜を除去する処理(アッシング処理)を採用し、アッシング処理の速度(アッシングレート)を測定した結果を示す。アッシング処理の速度の大きさのXY面内における分布から、生成されたプラズマのXY面内における密度が推察され得る。
【0102】
図10の(a)~(d)において、マイクロ波発生器11が発生するマイクロ波の周波数は2.45GHzであり、マイクロ波は、矩形波変調され、ピーク電力は200Wである。矩形波変調周波数は、100Hzであり、オンデューティファクタは30%である。処理室S1内の気圧は3kPaである。
【0103】
図10の(a)~(d)の紙面上の左側において、対象物80の位置ごとのアッシング速度が比較的大きい部分を、より白に近い色で表現し、比較的小さい部分を、より黒に近い色で表現している。
【0104】
また、図10の(a)~(d)の紙面上の左右方向における中央において、Z軸に直交する方向から見た対象物80とスロットアンテナとの位置関係を模式的に示している。表面処理装置がメッシュを備える場合には、そのメッシュも示されている。
【0105】
また、図10の(a)~(d)の紙面上の右側において、Z軸のプラス方向から見たスロットアンテナの形状を模式的に示している。
【0106】
図10の(a)は、関連技術に係る表面処理装置による表面処理の結果を示す説明図である。図10の(a)は、スロットアンテナと対象物80との離間距離が3.5mmであり、スロットアンテナと対象物80との間にメッシュ部材がない表面処理装置による表面処理の結果を示している。スロットアンテナは、一直線状のスリットのみを有するスロットアンテナである。
【0107】
図10の(a)に示される結果では、処理速度が比較的大きい領域の形状が、楕円形の形状を有する。
【0108】
これは、スロットアンテナが有するスリットが一直線状であることに起因して、生成されるプラズマがXY面内で一直線から少し幅を広げた楕円形を有することが一因であると考えられる。
【0109】
図10の(b)は、本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の結果を示す説明図である。図10の(b)は、スロットアンテナ15と対象物80との離間距離が3.5mmであり、スロットアンテナ15と対象物80との間にメッシュ部材16がない表面処理装置10による表面処理の結果を示している。
【0110】
図10の(b)に示される結果では、処理速度が比較的速い領域の形状が、図10の(a)と比較して円形に近い。
【0111】
このように、スロットアンテナ15を用いることで、対象物80における処理範囲を円形に近い形に広げることができる。これは、一直線状のスリットのみを有するスロットアンテナ(図10の(a)参照)よりも、スロットアンテナ15の方が、プラズマ19のXY面内での密度を均一化することができたことが一因であると考えられる。
【0112】
図10の(c)は、本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の結果を示す説明図である。図10の(c)は、スロットアンテナ15と対象物80との離間距離が9.0mmであり、スロットアンテナ15と対象物80との間にメッシュ部材16がない表面処理装置10による表面処理の結果を示している。
【0113】
図10の(c)に示される結果では、表面処理の処理量が大きい部分と小さい部分との差が、図10の(b)と比較して小さい。つまり、表面処理の処理量が、XY面内において均一化されている。
【0114】
このように、スロットアンテナ15と対象物80との離間距離を広げることで、対象物80における処理量を均一化することができる。スロットアンテナ15と対象物80との離間距離が大きい方が、プラズマ19が対象物80に対する作用が均一化されたことが一因であると考えられる。
【0115】
図10の(d)は、本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の結果を示す説明図である。図10の(d)は、スロットアンテナ15と対象物80との離間距離が9.0mmであり、スロットアンテナ15と対象物80との間にメッシュ部材16がある表面処理装置10による表面処理の結果を示している。
【0116】
図10の(d)に示される結果では、表面処理の処理量が大きい部分と小さい部分との差が、図10の(c)と比較して小さい。つまり、表面処理の処理量が、XY面内においてより一層均一化されている。
【0117】
このように、スロットアンテナ15と対象物80との間にメッシュ部材16が存在することで、対象物80における処理量をより一層均一化することができる。メッシュ部材16によって、プラズマ19のXY面内における密度が均一化されたことが一因であると考えられる。
【0118】
次に、図4図6および図7に示されるスロットアンテナ15を備える表面処理装置10による表面処理の均一度の評価結果を説明する。
【0119】
図11は、本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の均一度の評価結果の例を示す第一の説明図である。より具体的には、図11は、スリット152を有するスロットアンテナ15((a)参照)を用いて生成されるプラズマ19の、スロットアンテナ15からZ軸プラス方向へ6.3mm進んだ位置のXY平面における電界強度分布とアッシングレートとの評価結果を示す。アッシングレートの評価指標として下記に示される均一度(Uniformity)を用いる。
【0120】
均一度(%) = (最大値-最小値)/(2×平均値)
【0121】
ここで、最大値、最小値および平均値は、それぞれ、XY平面内のアッシングレートの最大値、最小値および平均値である。
【0122】
図11の(b)に示されるように、電界強度分布は、XY面内で中心において比較的高く、中心から遠いほど低い。電界強度の最大値は944V/mである。
【0123】
図11の(c)に示されるように、アッシングレートは、電界強度分布と同様に、XY面内で中心において比較的高く、中心から遠いほど低い。アッシングレートの均一度は、30.00%である((d)参照)。
【0124】
図12は、本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の均一度の評価結果の例を示す第二の説明図である。より具体的には、図12は、スリット154Pおよび154Qを有するスロットアンテナ15((a)参照)を用いて、図11の場合と同様の条件で測定される電界強度分布とアッシングレートとの評価結果を示す。
【0125】
図12の(b)に示されるように、電界強度分布は、XY面内で中心からY軸プラス方向およびマイナス方向それぞれに所定距離だけ進んだ位置において比較的高く、中心から離れるほど低い。電界強度が比較的高い部分の形状が、Y軸方向に長い瓢箪形状を有する。電界強度の最大値は875V/mである。
【0126】
図12の(c)に示されるように、アッシングレートは、XY面内で中心からY軸プラス方向およびマイナス方向それぞれに所定距離だけ進んだ位置において比較的高く、中心から離れるほど低い。アッシングレートの均一度は、18.12%である((d)参照)。
【0127】
図13は、本実施の形態に係る表面処理装置10による表面処理の均一度の評価結果の例を示す第三の説明図である。より具体的には、図13は、図7に示される形状((a)参照)を有するスロットアンテナ15を用いて、図11の場合と同様の条件で測定される電界強度分布とアッシングレートとの評価結果を示す。
【0128】
図13の(b)に示されるように、電界強度分布は、XY面内で中心からY軸プラス方向およびマイナス方向それぞれに所定距離だけ進んだ位置において比較的高く、中心から離れるほど低い。電界強度が比較的高い部分の形状が、Y軸方向に長い楕円形状を有する。電界強度の最大値は956V/mである。
【0129】
図13の(c)に示されるように、アッシングレートは、XY面内で中心において比較的高く、中心から離れるほど低い。アッシングレートの均一度は、14.66%である((d)参照)。
【0130】
以上のように、スリット152を有するスロットアンテナ15による表面処理より、スリット154Pおよび154Qを有するスロットアンテナ15による表面処理の均一度が高く、さらに、スリット155Pおよび155Qを有するスロットアンテナ15による表面処理の均一度が高い。
【0131】
なお、上記の表面処理装置10とは異なる構成を有する処理装置として、処理室内に2つの対向電極を備え、その電極間に高周波(13MHzまたは27MHz程度)を生じさせることで気体をプラズマ化させる装置が存在する。そのような装置では、プラズマに含まれるイオンのエネルギーが必要以上に大きくなり、対象物80へのダメージが大きくなることが知られている。
【0132】
そのような装置と比較して、上記の表面処理装置10は、マイクロ波をスロットアンテナ15を通過させることでプラズマを発生させることができ、プラズマに含まれるイオンのエネルギーが比較的小さく対象物80へのダメージを小さく抑えることができる利点がある。
【0133】
以上、本発明の1つまたは複数の態様に係る表面処理装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0134】
実施の形態では、一例として、表面処理装置のレジスト除去装置への応用について述べたが、表面処理装置は、レジスト除去装置に限らず、プラズマ処理の適応がある各種の表面処理を行う装置に広く利用できる。例えば、対象物の表面を親水化する表面改質装置や、液体に有機物(例えば、エタノールやメタノールなど)を用いて対象物の表面にグラフェン膜を形成する成膜装置などへの利用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、表面処理装置として、プラズマ処理の適応がある各種の表面処理を行う装置に広く利用できる。
【符号の説明】
【0136】
10 表面処理装置
11 マイクロ波発生器
12 導波管
13 マイクロ波透過部材
14 容器
15 スロットアンテナ
16、16A、16B メッシュ部材
17 スペーサ
18 ホルダ
19 プラズマ
20 配管
21 タンク
80 対象物
81 液体
141 排気口
151、152、153、154P、154Q、155P、155Q スリット
151A、152A、153A、154A、155A 第一開口部
151B、152B、153B、154B、155B 第二開口部
151C、152C、153C、154C、155C 第三開口部
154D、155D 第四開口部
154E、155E 第五開口部
154F、155F 第六開口部
S1 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13