(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電極板プレス装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20241113BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20241113BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20241113BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01G11/86
H01G13/00 381
H01G13/00 391B
(21)【出願番号】P 2022078047
(22)【出願日】2022-05-11
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392009342
【氏名又は名称】株式会社レヨーン工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増澤 直貴
(72)【発明者】
【氏名】安枝 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】小室 好弘
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第214812912(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112368086(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103008297(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112118917(CN,A)
【文献】特開2016-051648(JP,A)
【文献】特開2015-076230(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1980226(KR,B1)
【文献】中国実用新案第215896449(CN,U)
【文献】中国実用新案第212975983(CN,U)
【文献】中国実用新案第208879143(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/04
H01G 11/86
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の電極板をロールプレスする電極板プレス装置であって、
上記電極板をロールプレスする一対のプレスロールと、
上記一対のプレスロールのうち、少なくとも一方の被清掃プレスロールについて、
一枚の帯状の清掃シートをその長手方向に、かつ上記被清掃プレスロールのロール表面の進行方向に対して逆向きに移動させ、上記被清掃プレスロールが上記電極板に接触する位置を基準に回転方向に見た
、複数の角度に対応する
複数の角度位置において、上記清掃シートを上記ロール表面に接触させて上記ロール表面を清掃する清掃部と、を備える
電極板プレス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極板プレス装置であって、
前記清掃部は、
前記清掃シートに液体を供給する液体供給部を有し、
上記清掃部は
、
前記複数の角度位置のうち、最も前記角度が大きい最大角度位置以外の少なくともいずれかの角度位置では、上記液体供給部によって、上記ロール表面に接触する接触面が上記液体で濡れた状態とされた上記清掃シートを上記ロール表面に接触させ、
上記最大角度位置では、上記接触面が乾いた状態の上記清掃シートを上記ロール表面に接触させる
電極板プレス装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電極板プレス装置であって、
前記液体供給部は、
前記清掃シートのうち、前記接触面とは逆の裏面に前記液体を供給し、上記清掃シート内を浸透した上記液体で上記接触面が濡れた状態とする
電極板プレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の電極板をロールプレスする電極板プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池やキャパシタなどの蓄電デバイスは、その内部に電極板を含む電極体を備えている。このような電極板は、例えば以下の手法により製造している。即ち、帯状の集電箔の主面に、活物質粒子、結着剤等を含む活物質ペーストを塗布し、更にこれを加熱乾燥させて、集電箔上に活物質層を形成する。その後、この集電箔上に活物質層を有する帯状の電極板を、一対のプレスロールを備える電極板プレス装置を用いてロールプレスし、電極板の活物質層を圧密化している。
【0003】
このロールプレスの際、電極板の活物質層をなす活物質粒子や結着剤等の成分がプレスロールのロール表面に付着し、ロール表面が次第に汚れた状態となることがある。このため、ロール表面を清掃しながら電極板のロールプレスを行うことが望まれている。例えば特許文献1(特許請求の範囲、
図1、
図2等を参照)には、プレスロールの軸線方向に長い棒状で低沸点溶媒で濡らした不織布を、回転するロールプレスのロール表面に接触させて、ロール表面の汚れを除去しながら、電極板をロールプレスする電極板プレス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電極板プレス装置では、不織布の同じ部位を使い続けている。具体的には、袋状の不織布を装着フレームに被せるように装着して、この装着フレームに被せた袋状の不織布のうち底面部を、回転するプレスロールのロール表面に接触させ続けることによって、ロール表面を清掃している(特許文献1の段落(0027)、
図2等を参照)。このため、ロール表面の汚れが多い場合や連続生産時間が長い場合には、不織布の底面部に汚れが溜まって、途中からロール表面の汚れを適切に除去できなくなる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、プレスロールのロール表面を適切に清掃しながら、電極板をロールプレスすることができる電極板プレス装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、帯状の電極板をロールプレスする電極板プレス装置であって、上記電極板をロールプレスする一対のプレスロールと、上記一対のプレスロールのうち、少なくとも一方の被清掃プレスロールについて、一枚の帯状の清掃シートをその長手方向に、かつ上記被清掃プレスロールのロール表面の進行方向に対して逆向きに移動させ、上記被清掃プレスロールが上記電極板に接触する位置を基準に回転方向に見た、複数の角度に対応する複数の角度位置において、上記清掃シートを上記ロール表面に接触させて上記ロール表面を清掃する清掃部と、を備える電極板プレス装置である。
【0008】
上述の電極板プレス装置は、上述の清掃部を備えるので、帯状の清掃シートをロール表面の進行方向に対して逆向きに移動させることができる。これに加えて、複数の角度位置で清掃シートをロール表面に接触させてロール表面を清掃することができる。このため、清掃シートに汚れが溜まらないので、清掃シートで被清掃プレスロールのロール表面を適切に清掃しながら、電極板をロールプレスすることができる。
【0009】
特に、複数の角度位置で清掃シートをロール表面に接触させる場合は、角度位置の角度が大きいほど、清掃シートがロール表面に接触した回数が少なくなっており、より清浄な清掃シートをロール表面に接触させてロール表面を清掃することができる。
【0010】
なお、「清掃シート」としては、例えば、不織布や紙、布などからなる清掃シートが挙げられる。また清掃シートを、一定の移動速度で連続的に移動させてもよいし、間欠的に移動させてもよい。
電極板プレス装置で、集電箔の両主面上にそれぞれ活物質層を有する電極板をロールプレスする場合には、一対のプレスロールのそれぞれが活物質層に接触して汚れるため、一対のプレスロールを被清掃プレスロールとし、それぞれに清掃部を設けるのが好ましい。一方、集電箔の一方の主面上にのみ活物質層を有する電極板をロールプレスする場合には、活物質層に接触して汚れる側のプレスロールを被清掃プレスロールとし、これに清掃部を設けるのが好ましい。
【0011】
(2)更に(1)に記載の電極板プレス装置であって、前記清掃部は、前記清掃シートに液体を供給する液体供給部を有し、上記清掃部は、前記複数の角度位置のうち、最も前記角度が大きい最大角度位置以外の少なくともいずれかの角度位置では、上記液体供給部によって、上記ロール表面に接触する接触面が上記液体で濡れた状態とされた上記清掃シートを上記ロール表面に接触させ、上記最大角度位置では、上記接触面が乾いた状態の上記清掃シートを上記ロール表面に接触させる電極板プレス装置とすると良い。
【0012】
上述の電極板プレス装置では、複数回(複数の角度位置で)、清掃シートをロール表面に接触させるので、より適切にロール表面を清掃することができる。その上、少なくとも一度は、接触面が濡れた状態の清掃シートをロール表面に接触させるので、ロール表面の汚れをより確実に除去できる。一方、最大角度位置では、接触面が乾いた状態の清掃シートをロール表面に接触させる。これにより、ロール表面に付着していた液体が除去されるので、乾いたロール表面により電極板をロールプレスすることができる。
【0013】
具体的には、例えば2つの角度位置Q1(角度θ1)及び角度位置Q2(角度θ2)(但しθ1<θ2)で清掃シートをロール表面に接触させる場合には、角度θ1が小さい角度位置Q1で、濡れた状態の清掃シートをロール表面に接触させる一方、角度θ2が大きい最大角度位置Q2では、乾いた状態の清掃シートをロール表面に接触させる。
また例えば3つの角度位置Q1(角度θ1)、角度位置Q2(角度θ2)及び角度位置Q3(角度θ3)(但しθ1<θ2<θ3)で清掃シートをロール表面に接触させる場合には、角度位置Q1,Q2の少なくとも一方で、濡れた状態の清掃シートをロール表面に接触させる一方、最も角度θ3が大きい最大角度位置Q3では、乾いた状態の清掃シートをロール表面に接触させる。
【0014】
なお、「液体」としては、例えば、水やエタノールなどが挙げられる。
「液体供給部」としては、例えば、後述する実施形態1のように、清掃シートに向けて液体を噴霧することにより、清掃シートに液体を供給する液体供給部や、実施形態2のように、清掃シートを、ロール表面から液体を染み出させたロールに接触させることにより、清掃シートに液体を供給する液体供給部、また実施形態3のように、清掃シートに液体の液滴を垂らすことにより、清掃シートに液体を供給する液体供給部など挙げられる。
【0015】
(3)更に(2)に記載の電極板プレス装置であって、前記液体供給部は、前記清掃シートのうち、前記接触面とは逆の裏面に前記液体を供給し、上記清掃シート内を浸透した上記液体で上記接触面が濡れた状態とする電極板プレス装置とすると良い。
【0016】
上述の電極板ブレス装置では、清掃シートの裏面に液体を供給し、清掃シート内を浸透した液体で接触面が濡れた状態とする。これにより、液体供給部から供給した液体が直接被清掃プレスロールのロール表面に付着することが防止できる。また、裏面に供給された液体が接触面に到達するまでに、液体が均一に清掃シートに拡がるので、清掃シートの接触面を均一に濡れた状態にし易い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施形態1に係る電極板プレス装置の側方から見た説明図である。
【
図3】実施形態2に係る電極板プレス装置の側方から見た説明図である。
【
図4】実施形態2に係る液体供給部の説明図である。
【
図5】実施形態3に係る電極板プレス装置の側方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1にロールプレス後の電極板1の斜視図を示す。この電極板1は、帯状の正極板であり、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池を製造するのに用いられる。なお、以下では、電極板1の長手方向AH、幅方向BH及び厚み方向CHを、
図1に示す方向と定めて説明する。
【0019】
電極板1は、長手方向AHに延びる帯状のアルミニウム箔からなる集電箔2を有する。この集電箔2の第1主面2aのうち、幅方向BHの中央部で長手方向AHに延びる帯状の領域上には、厚み方向CHにプレスされ圧密化された活物質層3が、長手方向AHに帯状に形成されている。また集電箔2の反対側の第2主面2bのうち、幅方向BHの中央部で長手方向AHに延びる帯状の領域上にも、厚み方向CHにプレスされ圧密化された活物質層4が、長手方向AHに帯状に形成されている。これらの活物質層3,4は、正極活物質粒子、導電粒子及び結着剤から構成されている。一方、集電箔2のうち、幅方向BHの両端部で長手方向AHに延びる帯状の部位は、それぞれ活物質層3,4が存在せず、集電箔2が厚み方向CHに露出している。
【0020】
次いで、電極板1の製造方法について説明する。まず帯状の集電箔2を用意すると共に、正極活物質粒子、導電粒子、結着剤及び分散媒を混合して活物質ペーストを得ておく。そして集電箔2を長手方向AHに搬送しつつ、活物質ペーストを塗工ダイ(不図示)により集電箔2の第1主面2aのうち幅方向BHの中央部に吐出し、集電箔2の第1主面2a上に帯状に未乾燥活物質層3Xを連続して形成する。続いて、これを乾燥装置(不図示)内に搬送し、未乾燥活物質層3Xに熱風を吹き付け加熱乾燥させて活物質層3Yを形成する。次に集電箔2の反対側の第2主面2bのうち幅方向BHの中央部にも、同様にして、帯状に未乾燥活物質層4Xを形成し、これを加熱乾燥させて活物質層4Yを形成する。その後、この集電箔2上に活物質層3Y,4Yが形成された帯状の電極板1Yを巻取装置(不図示)を用いてロール状に巻き取る。
【0021】
次に本実施形態1に係る電極板プレス装置100(
図2参照)を用いて、上述の電極板1Yにロールプレスを行って、活物質層3Y,4Yをそれぞれ厚み方向CHに圧密化し、活物質層3,4を備える電極板1を形成する。まず電極板プレス装置100について説明する。この電極板プレス装置100は、電極板1Yをロールプレスする一対のプレスロール(第1プレスロール111及び第2プレスロール115)と、ロール状に巻かれたロールプレス前の電極板1Yを巻き出して長手方向AHに搬送する巻出装置(不図示)と、ロールプレス後の電極板1をロール状に巻き取る巻取装置(不図示)とを備える。更に電極板プレス装置100は、第1プレスロール(第1被清掃プレスロール)111のロール表面111mを帯状の不織布からなる清掃シートCS1により清掃する第1清掃部120と、第2プレスロール(第2被清掃プレスロール)115のロール表面115mを帯状の不織布からなる清掃シートCS2により清掃する第2清掃部140とを備える。
【0022】
第1プレスロール111及び第2プレスロール115は、ロール間隙GAを空けて平行に、第1プレスロール111が上方UHに、第2プレスロール115が下方DHに配置されている。これら第1プレスロール111及び第2プレスロール115は、ロール表面111m,115mがステンレスからなる。また第1プレスロール111及び第2プレスロール115には、それぞれモータ(不図示)が連結されており、第1プレスロール111は
図1中、反時計回りに、第2プレスロール115は、第1プレスロール111とは逆に
図1中、時計回りに回転可能に構成されている。巻出装置(不図示)から巻き出した電極板1Yは、本実施形態1では、活物質層3Yを上方UHに向け、活物質層4Yを下方DHに向けて長手方向AHに搬送する。このため、上方UHに配置された第1プレスロール111は、位置P1で電極板1Yの活物質層3Yに接触し、下方DHに配置された第2プレスロール115は、位置P2で電極板1Yの活物質層4Yに接触する。
【0023】
第1清掃部120は、帯状の清掃シートCS1を供給するシート供給部121と、清掃シートCS1を第1プレスロール111のロール表面111mに押し付けてロール表面111mを清掃する第1清掃ロール部123及び第2清掃ロール部125と、清掃シートCS1に液体LDを供給する液体供給部127と、清掃シートCS1をその長手方向IHに移動させる複数の送りロール131と、清掃シートCS1を回収するシート回収部133とを有する。
【0024】
このうちシート供給部121は、第1プレスロール111よりも上流側FH(
図2中、左方)に配置されている。このシート供給部121には、ロール状に巻かれた乾いた状態の清掃シートCS1が取り付けられており、シート供給部121から清掃シートCS1をその長手方向IHに送り出すように構成されている。一方、シート回収部133は、第1プレスロール111よりも下流側EH(
図2中、右方)に配置されており、ロール表面111mを清掃した後の清掃シートCS1をロール状に巻き取って回収するように構成されている。
【0025】
第1清掃ロール部123は、第2清掃ロール部125よりも下流側EHに配置されており、第2清掃ロール部125で清掃に用いた清掃シートCS1を再度利用して(後述するように濡れた状態で清掃シートCS1を用いて)、ロール表面111mを清掃する。第1清掃ロール部123は、濡れた状態の清掃シートCS1が巻かれるロール123aと、このロール123aに巻かれた清掃シートCS1の接触面CS1aを第1プレスロール111のロール表面111mに押し付けるロール押付部123bとを有している。ロール123aに巻かれた清掃シートCS1は、第1プレスロール111が電極板1Yに接触する位置P1を基準に回転方向(
図2において反時計方向)に見た所定の角度θ1(本実施形態1では、θ1は概ね150度。
図2参照)に対応した角度位置Q1において、ロール表面111mの進行方向MHに対して逆向きに移動する。そしてこの角度位置Q1において、ロール123aに巻かれた清掃シートCS1の接触面CS1aをロール表面111mに接触させる。これにより、角度位置Q1において、接触面CS1aが濡れた状態の清掃シートCS1でロール表面111mを清掃する。
【0026】
また第2清掃ロール部125は、第1清掃ロール部123よりも上流側FHに配置されており、シート供給部121から巻き出された、乾いた状態の清掃シートCS1が巻かれるロール125aと、このロール125aに巻かれた清掃シートCS1の接触面CS1aを第1プレスロール111のロール表面111mに押し付けるロール押付部125bとを有している。ロール125aに巻かれた清掃シートCS1は、所定の角度θ2(但しθ2>θ1。本実施形態1では、θ2は概ね210度。)に対応した角度位置Q2において、ロール表面111mの進行方向MHに対して逆向きに移動する。またこの角度位置(最大角度位置)Q2において、ロール125aに巻かれた清掃シートCS1の接触面CS1aをロール表面111mに接触させる。これにより、最大角度位置Q2において、接触面CS1aが乾いた状態の清掃シートCS1でロール表面111mを清掃する。
【0027】
液体供給部127は、第1プレスロール111の上方UHにおいて第2清掃ロール部125と第1清掃ロール部123との間に設けられており、第2清掃ロール部125から送り出された乾いた状態の清掃シートCS1に、液体LD(本実施形態1では水)を供給して、清掃シートCS1全体を液体LDで濡らす。本実施形態1では、液体供給部127は、清掃シートCS1の上方UHに配置される噴霧ノズル128を有しており、この噴霧ノズル128から下方DHに向けて、即ち、清掃シートCS1のうち、第1プレスロール111に接触する接触面CS1aとは逆の裏面CS1bに向けて液体LDを噴霧する。この裏面CS1bに供給された液体LDは、清掃シートCS1内を浸透し、接触面CS1aまで濡れた状態となる。裏面CS1bに供給された液体LDが接触面CS1aに到達するまでに、液体LDは均一に清掃シートCS1に拡がるため、接触面CS1aを均一に濡れた状態とすることができる。その後、この濡れた状態の清掃シートCS1が第1清掃ロール部123に届くため、第1清掃ロール部123においては、接触面CS1aが濡れた状態の清掃シートCS1でロール表面111mを清掃することができる。
【0028】
次に第2清掃部140について説明する。第2清掃部140は、上述の第1清掃部120と同様であるため、省略または簡略化して説明する。第2清掃部140は、シート供給部141と、第1清掃ロール部143及び第2清掃ロール部145と、液体供給部147と、複数の送りロール151と、シート回収部153とを有する。このうちシート供給部141は、ロール状に巻かれた乾いた状態の清掃シートCS2をその長手方向JHに送り出し、一方、シート回収部153は、清掃後の清掃シートCS2をロール状に巻き取って回収する。
【0029】
第1清掃ロール部143は、ロール143aとロール押付部143bとを有している。ロール143aに巻かれた清掃シートCS2は、第2プレスロール115が電極板1Yに接触する位置P2を基準に回転方向(
図2において時計方向)に見た所定の角度θ3(本実施形態1では、θ3は概ね150度。
図2参照)に対応した角度位置Q3において、ロール表面115mの進行方向NHに対して逆向きに移動する。そしてこの角度位置Q3において、ロール143aに巻かれた清掃シートCS2の接触面CS2aをロール表面115mに接触させる。これにより、角度位置Q3において、接触面CS2aが濡れた状態の清掃シートCS2でロール表面115mを清掃する。
【0030】
また第2清掃ロール部145は、ロール145aとロール押付部145bとを有している。ロール145aに巻かれた清掃シートCS2は、所定の角度θ4(但しθ4>θ3。本実施形態1では、θ4は概ね210度。)に対応した角度位置Q4において、ロール表面115mの進行方向NHに対して逆向きに移動する。そしてこの角度位置(最大角度位置)Q4において、ロール145aに巻かれた清掃シートCS2の接触面CS2aをロール表面115mに接触させる。これにより、最大角度位置Q4において、接触面CS2aが乾いた状態の清掃シートCS2でロール表面115mを清掃する。
【0031】
液体供給部147は、第2プレスロール115の下方DHに設けられている。この液体供給部147は、清掃シートCS2の下方DHに噴霧ノズル148を有しており、この噴霧ノズル148から上方UHに、第2清掃ロール部145から送り出された乾いた状態の清掃シートCS2のうち、第2プレスロール115に接触する接触面CS2aとは逆の裏面CS2bに向けて液体LD(本実施形態1では水)を噴霧する。この裏面CS2bに供給された液体LDは、清掃シートCS2内を浸透し、接触面CS2aまで均一に濡れた状態にできる。その後、この濡れた状態の清掃シートCS2が第1清掃ロール部143に届くため、第1清掃ロール部143においては、接触面CS2aが濡れた状態の清掃シートCS2でロール表面115mを清掃することができる。
【0032】
次に上述の電極板プレス装置100を用いた電極板1Yのロールプレスについて説明する。巻出装置(不図示)から巻き出され、長手方向AHに搬送された電極板1Yは、第1プレスロール111と第2プレスロール115とのロール間隙GAに向かう。そしてロール間隙GAにおいて第1プレスロール111と第2プレスロール115とによって電極板1Yをロールプレスし、活物質層3Y,4Yを厚み方向CHに圧密化する。これにより、圧密化された活物質層3,4を備える電極板1を連続して製造する。その後、この電極板1を巻取装置(不図示)によってロール状に巻き取る。
【0033】
ロールプレスの際、電極板1Yの活物質層3Y,4Yをなす成分(正極活物質粒子、導電粒子及び結着剤)が第1プレスロール111のロール表面111m及び第2プレスロール115のロール表面115mに付着する。これに対し、電極板プレス装置100は、ロール表面111mを清掃する第1清掃部120及びロール表面115mを清掃する第2清掃部140を備えるので、清掃シートCS1,CS2でロール表面111m,115mを適切に清掃しながら、電極板1Yをロールプレスすることができる。
【0034】
具体的には、第1プレスロール111については、ロールプレス後の汚れたロール表面111mを、まず第1清掃部120の第1清掃ロール部123で清掃する。詳細には、角度θ1が小さい角度位置Q1において、ロール123aに巻かれた清掃シートCS1をロール表面111mに押し付けてロール表面111mを清掃する。この清掃シートCS1は、第1清掃ロール部123に届く前に、液体供給部127において全体が液体LDで濡れた状態となっているため、第1清掃ロール部123では、接触面CS1aが濡れた状態の清掃シートCS1でロール表面111mを清掃することができる。このため、ロール表面111mをより適切に清掃することができる。
【0035】
その後、ロール表面111mを、第1清掃部120の第2清掃ロール部125で更に清掃する。詳細には、角度θ2が大きい(最大の)最大角度位置Q2において、ロール125aに巻かれた清掃シートCS1をロール表面111mに押し付けてロール表面111mを清掃する。シート供給部121から第2清掃ロール部125に届く清掃シートCS1は全体が乾いた状態にあるため、第2清掃ロール部125では、接触面CS1aが乾いた状態の清掃シートCS1でロール表面111mを清掃することができる。このため、ロール表面111mを清掃すると共に、ロール表面111mに付着していた液体LDを取り除くことができる。かくして、その後、乾いた状態のロール表面111mで電極板1Yをロールプレスすることができる。
【0036】
また第2プレスロール115については、ロールプレス後の汚れたロール表面115mを、まず第2清掃部140の第1清掃ロール部143で清掃する。詳細には、角度θ3が小さい角度位置Q3において、ロール143aに巻かれた清掃シートCS2をロール表面115mに押し付けてロール表面115mを清掃する。この清掃シートCS2は、第1清掃ロール部143に届く前に、液体供給部147において全体が液体LDで濡れた状態となっているため、第1清掃ロール部143では、接触面CS2aが濡れた状態の清掃シートCS2でロール表面115mを清掃することができる。このため、ロール表面115mをより適切に清掃することができる。
【0037】
その後、ロール表面115mを、第2清掃部140の第2清掃ロール部145で更に清掃する。詳細には、角度θ4が大きい(最大の)最大角度位置Q4において、ロール145aに巻かれた清掃シートCS2をロール表面115mに押し付けてロール表面115mを清掃する。シート供給部141から第2清掃ロール部145に届く清掃シートCS2は全体が乾いた状態にあるため、第2清掃ロール部145では、接触面CS2aが乾いた状態の清掃シートCS2でロール表面115mを清掃することができる。このため、ロール表面115mを清掃すると共に、ロール表面115mに付着していた液体LDを取り除くことができる。かくして、その後、乾いた状態のロール表面115mで電極板1Yをロールプレスすることができる。
【0038】
このように電極板プレス装置100は、第1清掃部120及び第2清掃部140を備えるので、帯状の清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mの進行方向MH,NHに対して逆向きに移動させ、それぞれ2つの角度位置Q1,Q2,Q3,Q4で清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mに接触させてロール表面111m,115mを清掃することができる。このため、清掃シートCS1,CS2に汚れが溜まらないので、清掃シートCS1,CS2でロール表面111m,115mを適切に清掃しながら、電極板1Yをロールプレスすることができる。
【0039】
更に本実施形態1では、各々2つの角度位置Q1,Q2,Q3,Q4で清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mに接触させるので、より適切にロール表面111m,115mを清掃することができる。その上、角度θ1,θ3が小さい角度位置Q1,Q3では、接触面CS1a,CS2aが濡れた状態の清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mに接触させるので、ロール表面111m,115mの汚れをより確実に除去できる。一方、角度θ2,θ4が最大の最大角度位置Q2,Q4では、接触面CS1a,CS2aが乾いた状態の清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mに接触させる。これにより、ロール表面111m,115mに付着していた液体LDが除去されるので、乾いたロール表面111m,115mにより電極板1Yをロールプレスすることができる。
【0040】
また本実施形態1では、清掃シートCS1,CS2の裏面CS1b,CS2bに液体LDを供給し、清掃シートCS1,CS2内を浸透した液体LDで接触面CS1a,CS2aが濡れた状態としている。これにより、液体供給部127,147から供給した液体LDが直接ロール表面111m,115mに付着することを防止できる。また、裏面CS1b,CS2bに供給された液体LDが接触面CS1a,CS2aに到達するまでに、液体LDが均一に清掃シートCS1,CS2に拡がるので、接触面CS1a,CS2aを均一に濡れた状態にし易い。
【0041】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する(
図3及び
図4参照)。なお、実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。実施形態1の電極板プレス装置100(
図2参照)では、液体供給部127,147が噴霧ノズル128,148を有しており、この噴霧ノズル128,148から液体LDを清掃シートCS1,CS2に噴霧して、清掃シートCS1,CS2を液体LDで濡らしている。
これに対し、本実施形態2の電極板プレス装置200(
図3及び
図4参照)では、第1清掃部220及び第2清掃部240の液体供給部227,247が液体供給ロール228,248を有しており、この液体供給ロール228,248に接触する清掃シートCS1,CS2に、液体供給ロール228,248から液体LDを供給して、清掃シートCS1,CS2を液体LDで濡らす。
【0042】
具体的には、液体供給ロール228,248は、その内部を軸線方向に液体LDが流通可能な円筒形状を有すると共に、液体供給ロール228,248には、複数の染み出し穴228k,248kが軸線方向に並んで設けられている。このため、液体供給ロール228,248の内部に供給された液体LDは、各々の染み出し穴228k,248kから外部に染み出す。一方、液体供給ロール228,248には、第2清掃ロール部125,145から移動した清掃シートCS1,CS2が巻き付けられ、裏面CS1b,CS2bが液体供給ロール228,248に接している。このため、各染み出し穴228kから染み出した液体LDは、清掃シートCS1,CS2の裏面CS1b,CS2bに供給され、清掃シートCS1,CS2内を浸透して接触面CS1a,CS2aまで液体LDで濡れる。
【0043】
本実施形態2の電極板プレス装置200でも、第1清掃部220及び第2清掃部240により、清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mの進行方向MH,NHに対して逆向きに移動させ、角度位置Q1,Q2,Q3,Q4で清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mに接触させる。このため、ロール表面111m,115mを適切に清掃しながら、電極板1Yをロールプレスすることができる。その他、実施形態1と同様な部分は、実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0044】
(実施形態3)
次いで、第3の実施形態について説明する(
図5参照)。なお、実施形態1または2と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。本実施形態2の電極板プレス装置300では、第1清掃部320及び第2清掃部340の液体供給部327,347が滴下ノズル328,348を有しており、この滴下ノズル328,348によって、清掃シートCS1,CS2に液体LDを供給して、清掃シートCS1,CS2を液体LDで濡らす。
具体的には、滴下ノズル328,348から下方DHに、清掃シートCS1,CS2の裏面CS1b,CS2bに向けて液体LDを滴下する。この裏面CS1b,CS2bに供給された液体LDは、清掃シートCS1内を浸透し、接触面CS1aまで液体LDで濡れる。
【0045】
本実施形態3の電極板プレス装置300でも、第1清掃部320及び第2清掃部340により、清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mの進行方向MH,NHに対して逆向きに移動させ、角度位置Q1,Q2,Q3,Q4で清掃シートCS1,CS2をロール表面111m,115mに接触させる。このため、ロール表面111m,115mを適切に清掃しながら、電極板1Yをロールプレスすることができる。その他、実施形態1または2と同様な部分は、実施形態1または2と同様な作用効果を奏する。
【0046】
以上において、本発明を実施形態1~3に即して説明したが、本発明は実施形態1~3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1~3では、電極板1が正極板である場合を例示したが、電極板1は負極板であってよい。
【符号の説明】
【0047】
1 (ロールプレス後の)電極板
1Y (ロールプレス前の)電極板
100,200,300 電極板プレス装置
111 第1プレスロール(第1被清掃プレスロール)
111m (第1プレスロールの)ロール表面
115 第2プレスロール(第2被清掃プレスロール)
115m (第2プレスロールの)ロール表面
120,220,320 第1清掃部
127,227,327 液体供給部
140,240,340 第2清掃部
147,247,347 液体供給部
IH,JH (清掃シートの)長手方向
MH,NH 進行方向
CS1,CS2 清掃シート
CS1a,CS2a 接触面
CS1b,CS2b 裏面
LD 液体
P1 (第1プレスロールが電極板に接触する)位置
P2 (第2プレスロールが電極板に接触する)位置
θ1,θ2,θ3,θ4 角度
Q1,Q2,Q3,Q4 角度位置