(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】超音波コーダ波の平均パワー減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20241113BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20241113BHJP
G01N 29/30 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/48
G01N29/30
(21)【出願番号】P 2024008263
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】202310901553.3
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519255908
【氏名又は名称】北京航空航天大学
(73)【特許権者】
【識別番号】524031027
【氏名又は名称】中国工程物理研究院研究生院
【氏名又は名称原語表記】GRADUATE SCHOOL OF CHINA ACADEMY OF ENGINEERING PHYSICS
【住所又は居所原語表記】No. 6 Huayuan Road, Haidian District, Beijing, 100088, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】何 晶靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雪飛
(72)【発明者】
【氏名】高 晨竣
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0145937(US,A1)
【文献】Rupeng Ma, Jing Ba,Coda and Intrinsic Attenuations From Ultrasonic Measurements in Tight Siltstones,JGR Solid Earth,第125巻第4号,米国,Advancing Earth and Space Sciences,2020年03月17日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-G01N 29/52
G01B 17/00-G01B 17/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の複数の結晶材料と厚さが同一になる若干のサンプルを製造し、信号を励起する形態とパラメーターを特定し、複数の結晶材料の平均晶径の検出システムを構築するステップS1と、
異なる平均晶径を有するサンプルについて、それぞれ超音波信号の励起と受信を行い、採集された超音波信号をバンドパスフィルタする先行処理を行うステップS2と、
取得されたコーダ波時間窓と参照時間窓は、それぞれ、超音波信号におけるコーダ波の部分と基本波の部分に位置しており、コーダ波の部分の選択について、二倍最短境界回波の到着時間を始まりタイミングとすると共に、選択されたコーダ波時間窓におけるコーダ波信号に
SN比を有するステップS3と、
コーダ波の平均パワーの等価減衰係数モデルに基づいて、サンプルについて平均晶径とコーダ波の平均パワー減衰との間の対数線性モデルを作成すると、
【請求項2】
ステップS1は、
検出対象の複数の結晶材料の材料成分情報に基づいて、化学成分が同一であると共に異なる平均晶径を有する若干のサンプルを製造し、検出対象の複数の結晶材料と厚さが一致する板状のサンプルに切断
するステップS11と、
超音波信号を励起させるための励起源が単一の中心周波数を有したハニング窓の変調正弦波パルスであり、検出対象の複数の結晶材料について弾性性質及び厚さの情報に基づいて超音波信号周波数を選択するステップS12と、
任意関数発生器の単一のチャネルにより超音波を出力し、ティージョイントにより二つの出力端を形成し、そのうち、第一出力端が高圧パワー増幅器に接続され、増幅されてから励起超音波トランスデューサーウエハーに伝導され、第二出力端がミックスドシグナルオシロスコープの触発チャネルに直接伝導されるステップS13、
各サンプルについて、同一の中心周波数を有し一対になる励起トランスデューサーウエハーと受信トランスデューサーウエハーを密接に設置すると共にサンプルにおける表面の中心位置に固定するステップS14と、
励起ごとに、触発チャネルが受信した触発信号に基づいて、受信トランスデューサーウエハーによりサンプル中を伝播している超音波信号を採集して、ミックスドシグナルオシロスコープの採集チャネルに送信するステップS15、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法。
【請求項3】
ステップS2は、
各サンプルをランダムに切り出してサンプリングしながら、実際の晶径を取得するステップS21と、
パルス回波による形態を採用して各サンプルを検出し、トランスデューサーウエハーがサンプルに生じる励起超音波信号を励起させ、受信トランスデューサーウエハーがサンプルにおいて伝送する超音波信号を受信するステップS22と、
異なる平均晶径を有したサンプルと対応する超音波信号を取得するまで、ステップS21とステップS22を繰り返して実行し、超音波信号をバンドパスフィルタする先行処理を行うステップS23を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法。
【請求項4】
ステップS2において受信トランスデューサーウエハーが受信する信号は、ミックスドシグナルオシロスコープが128回だけ信号を連続的に採集する平均値である、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法。
【請求項5】
ステップS2においてパルス回波の形態を採用して各サンプルにおける超音波信号を検出する、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法。
【請求項6】
ステップS21においてサンプルの実際の晶径は、電子線後方散乱回折技術を介して量化されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法。
【請求項7】
ステップS1において、前記複数の結晶材料の平均晶径検出システムは、任意関数発生器、ティージョイント、高圧パワー増幅器、励起トランスデューサーウエハー、受信トランスデューサーウエハー、ミックスドシグナルオシロスコープ及び上位コントローラーを含み、
前記任意関数発生器における単一のチャネルから超音波を出力しながら前記ティージョイントに伝送し、前記ティージョイントが二つの出力端を有し、第一出力端が高圧パワー増幅器に接続され、増幅されてから励起超音波トランスデューサーウエハーに伝導され、第二出力端がミックスドシグナルオシロスコープの触発チャネルに直接伝導され、
前記励起トランスデューサーウエハーは、励起超音波信号を生じるためのものであり、前記受信トランスデューサーウエハーは、伝送された超音波信号を受信しながら前記超音波信号を前記上位コントローラーに伝送する、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の結晶材料の晶径を損なわなく検出する技術分野に関し、特に、超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基高温合金は、現代の先進的な航空向けエンジンにおけるタービンディスクなどを始めコア部品を製造するための代表的な主要材料として、ある先進的な航空向けエンジンに広く使用されている。現在、タービンディスクに使用されている大型高温合金ブランクは、加工用技術の限界により、加工中に結晶粒組織が不均一になりやすく、一部の結晶粒が粗大となり、引張強度や耐疲労性が低下し、機械的性質がバラバラである。深刻な場合には、製品が故障になり廃棄され、機器の完全性と信頼性に重大な影響を与えてしまうおそれがある。したがって、合金ブランクについて効率的かつ正確な粒度評価方法を開発するということは、量産条件下で高温合金タービンディスクの安定した品質を達成するのに役立ち、重要な工学的かつ実用的価値を有する。
【0003】
現在、よく使用されている晶径検出方法は、主に破壊検出方法と非破壊検出方法の2つに分けられる。光学的金属組織検査や後方散乱電子回折などの破壊検査技術では、検査対象のサンプルから小さな試験片を切り出し、光学顕微鏡または電子顕微鏡により、試験片の表面の粒子構造特性を写真として撮影して平均粒径を評価する。破壊検出法は、粒子の微細構造を高精度で特徴付けることができるものの、工学的に実際の構造を検出するため、サンプルを切断することはできないことが多く、検出コストが高いため、その適用範囲も限られている。そのため、X線検査法や実体波超音波検査法などの非破壊検出技術が高度に発達されていくわけである。X線検出法は、X線が検査対象物中を伝播している際に、物質との相互作用の減衰や散乱特性を利用して、検査対象物の内部結晶粒微細構造を観察するが、装置が高価であることから必要に応じて長期間にわたって使用されると、測定が非効率になってしまう。
【0004】
実体波超音波に基づく検出方法は、材料内に超音波を発生させ、材料内部の微細構造と相互作用してその波の特性を解析し、材料特性を評価する。選択される実体波超音波の波形特性には、主に波速特性、後方散乱特性、減衰特性が含まれる。波速特性の原理については、測定対象物の厚さと2つのエコー間の時間遅れから音速を計算し、平均粒径を評価するということができる。波速と粒径との関係は特定の粒径範囲内で単調ではなく、また、一部の金属材料に対する感度が低いため、検出に正確な測定システムが必要になる。後方散乱特性については、超音波と材料の内部において音響インピーダンスが不整合になる結晶粒界面との相互作用によって生成される多数の散乱波に焦点を当てており、時間領域信号において、波とエコー信号との間におけるノイズのような妨害信号として現れる。しかし、後方散乱信号の取得は、複数回だけの空間サンプリングを経て平均を行うことが必要になるため、非効率になってしまう。減衰特性とは、超音波が物質中を伝播する過程で、伝播距離が長くなるほど、付けられているエネルギーが弱くなるという特性を意味する。それにより、パルスエコー法における表面エコーと各底波の振幅が順次に減少し粒径を評価するように観察することができ、安定性が良好である。しかしながら、実体波超音波の制限により、単一チャネルにある平均粒子サイズしか検出できず、大きな構造で空間的に高密度なサンプリングが必要になり、効率が低く、局所的な粒子が異常であったとの検出の漏れに繋がるおそれがある。
【0005】
コーダ波は、不均質な媒体において超音波の複数の散乱によって形成され、波の背後に尾部として直接現れる。コーダ波は、実体波よりも長い時間スケールで空間を繰り返しサンプリングする役割を果たすため、微細な粒子構造の特性に対してより敏感であり、単一のセンサー位置で単一の測定により広範囲の測定を達成することができる。したがって、超音波減衰特性とコーダ波を検出する利点を組み合わせて、平均粒径評価を効率的に達成するための超音波後流波の平均パワー減衰に基づく多結晶材料の粒径評価方法を見出すことが非常に緊急かつ非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術における欠陥に対して、超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、検出対象の複数の結晶材料と厚さが同一になる若干のサンプルを製造し、信号を励起する形態とパラメーターを特定する。次に、複数の結晶材料の平均晶径の検出システムを搭建する。異なる平均晶径を有しているサンプルについて、それぞれ超音波信号の励起と受信を行い、バンドパスフィルタする先行処理を行う。コーダ波時間窓及び参照時間窓とされる信号を選択し、それぞれ平均パワーを取得し、時間差に基づいてコーダ波の平均パワー減衰を算出する。等価減衰係数モデルに基づいて、サンプル平均晶径とコーダ波の平均パワー減衰との間の対数線性モデルを作成する。検出対象のものであって晶径が未知されている複数の結晶材料の信号を採集し、フィルタリングしてから、対応するコーダ波の平均パワー減衰を取得し、対数線性モデルに基づいて複数の結晶材料の平均晶径を特定する。本発明は、従来の実体波方法に比べると、検出する効率が高いと共に比較的に容易であり、実用性が強いと共に検出する結果が一層正確になる。
【0008】
具体的に、本発明が提供する超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法は、
検出対象の複数の結晶材料と厚さが同一になる若干のサンプルを製造し、信号を励起する形態とパラメーターを特定し、複数の結晶材料の平均晶径の検出システムを構築するステップS1と、
異なる平均晶径を有しているサンプルについて、それぞれ超音波信号の励起と受信を行い、採集された超音波信号をバンドパスフィルタする先行処理を行うステップS2と、
択し、それぞれ平均パワーを取得し、時間差に基づいてコーダ波の平均パワー減衰を算出するステップS3であって、
そのうち、前記コーダ波平均パワーP(t)がtタイミングに超音波信号のコーダ波の部分のエネルギー状態を示すステップS31と、
衰係数モデルを算出すると、
示すステップS33を含み、
取得されたコーダ波時間窓と参照時間窓は、それぞれ、超音波信号におけるコーダ波の部分と基本波の部分に位置しており、コーダ波の部分の選択について、二倍最短境界回波の到着時間を始まりタイミングとすると共に、選択されたコーダ波時間窓におけるコーダ波信号に高SN比を有するステップS3と、
そのうち、θ
1、θ
2は、それぞれ、モデル第一フィッティングパラメーターとモデル第二フィッティングパラメーターを示し、
モデル第一フィッティングパラメーターとモデル第二フィッティングパラメーターについて最小二乗法により評価を行うステップS4、
複数の結晶材料の平均晶径検出システムにより、検出対象の未知の晶径における複数の結晶材料の超音波信号を採集してフィルタリングを行い、ステップS3において取得され
【0009】
好ましく、ステップS1は、検出対象の複数の結晶材料の材料成分情報に基づいて、化学成分が同一であると共に異なる平均晶径を有する若干のサンプルを製造し、検出対象の複数の結晶材料と厚さが一致する板状のサンプルに切断るステップS11と、
超音波信号を励起させるための励起源が単一の中心周波数を有したハニング窓の変調正弦波パルスであり、検出対象の複数の結晶材料について弾性性質及び厚さの情報に基づいて超音波信号周波数を選択するステップS12と、
任意の関数発生器の単一のチャネルにより超音波を出力し、ティージョイントにより二つの出力端を形成し、そのうち、第一出力端が高圧パワー増幅器に接続され、増幅されてから励起超音波トランスデューサーウエハーに伝導され、第二出力端がミックスドシグナルオシロスコープの触発チャネルに直接伝導されるステップS13、
各サンプルについて、同一の中心周波数を有し一対になる励起トランスデューサーウエハーと受信トランスデューサーウエハーを密接に設置すると共にサンプルにおける表面の中心位置に固定するステップS14と、
励起ごとに、触発チャネルが受信した触発信号に基づいて、受信トランスデューサーウエハーによりサンプル中を伝播している超音波信号を採集して、ミックスドシグナルオシロスコープの採集チャネルに送信するステップS15、を含む。
【0010】
好ましく、ステップS2は、具体的に、
各サンプルをランダムに切り出してサンプリングしながら、実際の晶径を取得するステップS21と、
パルス回波による形態を採用して各サンプルを検出し、トランスデューサーウエハーがサンプルに生じる励起超音波信号を励起させ、受信トランスデューサーウエハーがサンプルにおいて伝送する超音波信号を受信するステップS22と、
異なる平均晶径を有したサンプルと対応する超音波信号を取得するまで、ステップS21とステップS22を繰り返して実行し、超音波信号をバンドパスフィルタする先行処理を行うステップS23を含む。
【0011】
好ましく、ステップS2において受信トランスデューサーウエハーが受信する信号は、ミックスドシグナルオシロスコープが128回だけ信号を継続的に採集する平均値である。
【0012】
好ましく、ステップS2においてパルス回波の形態を採用して各サンプルにおける超音波信号を検出する。
【0013】
好ましく、ステップS21においてサンプルの実際の晶径dは、電子線後方散乱回折技術を介して量化されたものである。
【0014】
好ましく、ステップS1において、前記複数の結晶材料の平均晶径検出システムは、任意関数発生器、ティージョイント、高圧パワー増幅器、励起トランスデューサーウエハー、受信トランスデューサーウエハー、ミックスドシグナルオシロスコープ及び上位コントローラーを含む。
【0015】
前記任意関数発生器における単一のチャネルから超音波を出力しながら前記ティージョイントに伝送し、前記ティージョイントが二つの出力端を有し、第一出力端が高圧パワー増幅器に接続され、増幅されてから励起超音波トランスデューサーウエハーに伝導され、第二出力端がミックスドシグナルオシロスコープの触発チャネルに直接伝導され、前記励起トランスデューサーウエハーは、励起超音波信号を生じるためのものであり、前記受信トランスデューサーウエハーは、伝送された超音波信号を受信しながら前記超音波信号を前記上位コントローラーに伝送する。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明が提供する超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法は、超音波の散乱理論を理論的に基礎として、複数の結晶材料における微視的構造により超音波の性質に与える影響に基づいて、それぞれコーダ波時間窓と参照時間窓を選択し、材料平均晶径と対応するコーダ波の平均パワー減衰を取得し、サンプル平
の複数の結晶材料的コーダ波の平均パワー減衰を取得し、上記対数線性モデルに基づいて検出対象の複数の結晶材料的平均晶径を特定する。当該検出方法は、破壊検出対象の複数の結晶材料を破壊させることが無くても、複数の結晶材料の平均晶径を正確に取得することができる。この方法は、超音波減衰特徴とコーダ波検出との優位性を取り込んで、コーダ波の平均パワー減衰を用いた形態により、複数の結晶材料的平均晶径を量化して評価するものであり、検出を行う効率が高く、測量にロバストネス性が優れる。
【0017】
(2)本発明が提出する超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法は、直達波減衰を採用する従来の超音波法に比べると、コーダ波の部分の減衰を用いて超音波と材料を評価することから、単一のセンサーの位置において、一回だけ測量により大範囲の晶径情報を評価でき、より高い検出効率を有する。平均パワーを用いて超音波のエネルギー状態を示すことから、高度かつ非均一構造を伝播してきた超音波の幅値を取得することが難しくなり、干渉され易いという欠点を避けることができ、ロバストネス性が一層良い晶径の評価が図れ、電子線後方散乱回折技術により測量された真の晶径は、取得される晶径を予測する信頼区間の99%に含まれることから、予測の確実性を有していると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、図面を参照しながら実施例について非制限で詳しく記載したが、本願における他の特徴、目的や利点が一層明確になるだろう。
【
図1】本発明に係る超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例に係る複数の結晶材料の平均晶径検出システム及び流れを示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係るサンプルサイズ及びトランスデューサーの設置を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係る測定された異なるサンプルについて参照時間窓とコーダ波時間窓においてフィルタリングされた波形を対比する図である。
【
図5】本発明の実施例に係る対数線性フィッティングを採用して作成するサンプル平均晶径とコーダ波の平均パワー減衰の対数線性関係についてサンプルと検出対象の複数の結晶材料との実験値の対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面と共に実施例に基づいて本願を一層詳しく説明する。理解可能なことは、ここで説明する具体的な実施例が係る発明を解釈するためのものに過ぎず、当該発明を制限するものでない。なお、説明を必要にするのは、説明を便宜にするために、図面において本発明に関連する部分だけを示す。
【0020】
説明を必要にするのは、矛盾がない限り、本願に係る実施例及びその中の特徴を互いに組み合わせてもよい。以下、図面を参照しながら実施例と共に本願を詳しく説明する。
【0021】
本発明は、超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法を提供し、
図1に示すように、以下のステップを含む。
【0022】
ステップS1は、検出対象の複数の結晶材料と厚さが同一になる若干のサンプルを製造し、信号を励起する形態とパラメーターを特定し、複数の結晶材料の平均晶径の検出システムを構築する。
【0023】
複数の結晶材料の平均晶径の検出システムは、任意関数発生器、BNCティージョイント、高圧パワー増幅器、励起トランスデューサーウエハー、受信トランスデューサーウエハー、ミックスドシグナルオシロスコープ及び上位コントローラーを含む。任意関数発生器の単一のチャネルにより超音波を出力しながらティージョイントに伝送する。ティージョイントは、二つの出力端を有し、第一出力端が高圧パワー増幅器に接続され、増幅されてからトランスデューサーウエハーに伝導される。第二出力端は、ミックスドシグナルオシロスコープの触発チャネルに直接伝導される。励起トランスデューサーウエハーは、励起超音波信号を生じるためのものであり、受信トランスデューサーは、伝送された超音波信号を受信しながら超音波信号を上位コントローラーに伝送する。本実施例では、上位コントローラーがコンピューターとされる。
【0024】
ステップS1は、具体的に、以下のサブステップを含む。
ステップS11は、検出対象の複数の結晶材料(多結晶金属材料又は多結晶金属構造とも呼ばれる)の材料成分情報に基づいて、熱処理におけるプロセスのパラメーターを調整し、化学成分が同一であると共に異なる平均晶径を有する若干のサンプルを製造し、検出対象の複数の結晶材料と厚さが一致する板状のサンプルに切断る。
ステップS12は、超音波信号を励起させるための励起源が単一の中心周波数を有したハニング窓の変調正弦波パルスであり、予め了解した検出対象の複数の結晶材料についての弾性性質及び厚さ情報に基づいて、超音波信号周波数を選択して、晶径測量の敏感度と分解度がバランスを取るようになる。
ステップS13は、任意関数発生器の単一のチャネルにより超音波を出力し、BNCティージョイントにより二つの出力端を形成し、そのうち、第一出力端が高圧パワー増幅器に接続され、増幅されてから励起超音波トランスデューサーウエハーに伝導され、第二出力端がミックスドシグナルオシロスコープの触発チャネルに直接伝導される。
ステップS14は、各サンプルについて、同一の中心周波数を有し一対になる励起トランスデューサーウエハーと受信トランスデューサーウエハーを用意して両者を密接に設置すると共に、のりによりサンプル表面の中心位置に固定する。
ステップS15は、励起ごとに、触発チャネルが受信した触発信号に基づいて、受信トランスデューサーウエハーによりサンプルを伝播している超音波信号を採集し、ミックスドシグナルオシロスコープの採集チャネルに伝送して、それからのデータ処理に備える。
【0025】
ステップS2は、それぞれ、異なる平均晶径を有するサンプルについて超音波信号の励起と受信を行い、採集された超音波信号をバンドパスフィルタする先行処理を行う。当該ステップは、具体的に、以下のサブステップを含む。
ステップS21は、各サンプルをランダムに切り出してサンプリングしながら、実際の晶径を取得し、つまり、電子線後方散乱回折技術を介して、その真の晶径を量化にして参照用ものとする。
ステップS22は、パルス回波という形態で各サンプルを検出し、トランスデューサーウエハーがサンプルに生じる励起超音波信号を励起させ、受信トランスデューサーウエハーがサンプルにおいて伝送する超音波信号を受信する。受信トランスデューサーウエハーが受信する超音波信号は、ミックスドシグナルオシロスコープが128回だけ信号を継続的に採集する平均値である。
ステップS23は、異なる平均晶径を有したサンプルと対応する超音波信号を取得するまで、ステップS21とステップS22を繰り返して実行し、超音波信号をバンドパスフィルタする先行処理を行う。そして、晶径を評価すると関係していない周波数成分を排除する。
【0026】
する超音波信号を選択し、それぞれ、両者の平均パワーを取得し、時間差に基づいてコーダ波の平均パワー減衰を算出する。当該ステップは、具体的に、以下のサブステップを含む。
そのうち、コーダ波平均パワーP(t)がtタイミングに超音波信号コーダ波の部分のエネルギー状態を示す。コーダ波の部分の選択については、二倍最短境界回波の打擲時間を始まりタイミングとすることが好ましい。しかも、選択された時間窓内においてコーダ波信号が比較的に高いSN比を有さなければならない。
を算出すると、
パワーの等価減衰係数モデルを算出すると、
【0027】
ステップS3に取得されたコーダ波時間窓と参照時間窓は、それぞれ、超音波信号コーダ波の部分と基本波の部分に位置する。コーダ波の部分の選択については、二倍最短境界回波の到着時間を始まりタイミングとすると共に、選択されたコーダ波時間窓におけるコーダ波信号が高いSN比を有する。
【0028】
ステップS4、コーダ波の平均パワーの等価減衰係数モデルに基づいて、サンプル平均
そのうち、θ
1、θ
2は、それぞれ、モデル第一フィッティングパラメーターとモデル第二フィッティングパラメーターを示し、両者について、いずれも、最小二乗法により評価を行う。
【0029】
ステップS4では、モデル第一フィッティングパラメーターとモデル第二フィッティングパラメーターについて、最小二乗法に基づいて評価を行う。
【0030】
ステップS5は、検出対象のものであって晶径が未知である複数の結晶材料の超音波信号を採集し、ステップS3において検出対象のものであって晶径が未知である複数の結晶
【0031】
以下、具体的な複数の結晶材料晶径を検出する一実施例に基づいて本発明をより詳しく説明し、流れ全体が
図2に示される。
【0032】
ステップS1は、検出対象のものであって型番号がGH742である高温ニッケル合金からなるサンプルと成分が同じである五つのサンプル(それぞれが#1、#2、#3、#4、#5とされる)を製造し、サンプルと検出対象のすべきサンプルは、いずれも厚さが5mm、長さが190mm、幅が100mmであり、
図3に示すように、具体的なプロセスが以下の通りである。
ステップS11は、五つのサンプルについて熱処理を行うプロセスに採用される固溶の温度と時間が異なることから、異なる平均晶径を有することになる。
ステップS12は、励起信号が中心周波数を5MHzとし3.5周期とするハニング窓変調正弦パルスである。
ステップS13は、任意関数発生器(Tektronix、AFG 31022)により生じた励起信号を、BNCティージョイントにより形成された二つの回路により出力し、そのうち、第一出力端が高圧パワー増幅器(Aigtek、ATA-4012)に接続され、増幅されてからピーク値が80Vになり、トランスデューサーウエハー(Siansonic、中心周波数が5MHz)に伝導され、第二出力端がミックスドシグナルオシロスコープ(Tektronix、MDO3104)の触発チャネルに直接伝導される。
ステップS14は、直径が10mmであり円形状を呈した励起トランスデューサーウエハーと受信トランスデューサーウエハー(Siansonic、中心周波数が5MHz)を密接に設置し、のりなどの粘着剤によりサンプル表面の中心位置に固定し、
図3に示される。
ステップS15は、励起ごとに、触発チャネルが受信した触発信号に基づいて、受信トランスデューサーウエハーによりサンプルを伝播している超音波信号を採集し、ミックスドシグナルオシロスコープの採集チャネルに伝送する。
【0033】
ステップS2は、各サンプルをランダムに切り出してサンプリングし、電子線後方散乱回折技術を介してサンプル顕微組織写真を撮り、等価直径法により晶径の対数正規分布の実験値を取得し、晶径の対数正規分布平均値をその真の晶径を参照として選択する。それぞれ、異なる平均晶径を有するサンプルについて超音波信号の励起と受信を行う。採集信号は、ミックスドシグナルオシロスコープの内部において、予め128次だけ信号を継続的に採集する時間領域を平均にしてから、上位コントローラーに入力すると、ウェーブレットフィルターにより通過帯域が[0.1MHz、10MHz]であるバンドパスフィルタする先行処理を行う。
【0034】
ステップS3は、
図4に示されるのが五つのサンプルについて選択され、コーダ波時間窓が[66.22μs、77.22μs]であり、参照時間窓が[0.5μs、40μs]である超音波信号である。結晶子の大きさにとって敏感になる特徴が、受信信号のデータコーダ波の部分の減衰である。また、異なる初期接触状態が最終的に構成に伝送されるエネルギーを変えることから、それにより、信号のコーダ波の部分に影響を与えるし、信号の参照窓の部分にも影響を与えることになる。減衰係数が相対的値であることから、接触状態が信号に与える影響を最小化にすることができる。この場合に、異なるサンプル間の減衰係数の変化が、ある大きな程度で、異なる晶径に由来するものである。各サンプルと対応する信号の時間窓についてそれぞれ平均パワーを取得し、式(3)に従って時間差に基づいてコーダ波の平均パワー減衰を算出する。
【0035】
ステップS4、式(4)と
図5に示すように、実験結果について対数線性フィッティン
成する。そのうち、塗りつぶされた円は、各サンプルについて、電子線後方散乱回折技術により量化した参照平均晶径とコーダ波の平均パワー減衰との関係を示し、実線は、対数線性最小二乗法を経てフィッティングした結果を示し、フィッティングしたモデル第一フィッティングパラメーターθ
1=5.5343となり、モデル第二フィッティングパラメーターθ
2=0.8732となる。平均晶径が増えると、コーダ波の平均パワー減衰が対数線性で増えることになる。
【0036】
ステップS5は、検出対象の未知の晶径複数の結晶材料的信号を採集し、フィルタリングを行うと、ステップS3により、検出対象の複数の結晶材料と対応するコーダ波の平均パワー減衰を取得し、対数線性モデルに基づいて複数の結晶材料の平均晶径を特定してから、電子線後方散乱回折技術により、実際の平均晶径を評価して評価に備える。検証した結果は、
図5における塗りつぶされたブロックで示される。結果から分かるように、電子線後方散乱回折技術を経て測量した実際の晶径が被包括在黒色付け点線により描かれたモデルの99%の信頼区間に含まれることから、係るモデルを可以用于評価測定対象の複数の結晶材料の平均晶径を評価することに用いられ、予測結果が極めて正確であると思われる。
【0037】
本発明が提出する超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法は、複数の結晶材料における微視的構造により超音波性に与える影響に基づいて、超音波コーダ波を測量信号として選択し、それぞれコーダ波時間窓と参照時間窓を選択し、
コーダ波の平均パワー減衰を試験により取得することから、複数の結晶材料の平均晶径を効率よく検出することができる。当該検出方法は、超音波減衰特徴とコーダ波を検出する優位性を取り込んで、コーダ波の平均パワー減衰の形態により、複数の結晶材料の平均晶径を量化にして評価することができ、検出する効率が高く、測量にロバストネス性が優れると共に、検出する結果が正確である。
【0038】
最後に説明すべきことは、以上の実施例が説明を行うためのものに過ぎず、本発明の技術手段を制限するためのものでない。上記実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者にとって理解可能のことは、依然として本発明を補正したり均等置換を行ったりすることも可能であり、本発明の趣旨や範囲を逸脱しない限り如何なる補正や局所的置換も、本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【要約】 (修正有)
【課題】超音波コーダ波の平均パワーの減衰に基づく複数の結晶材料の晶径の評価方法を提供する。
【解決手段】検出対象の結晶材料と厚さが同一になるサンプルを製造し、信号を励起する形態とパラメーターを特定し、結晶材料の平均晶径の検出システムを構築すること、異なる平均晶径を有するサンプルについてそれぞれ超音波信号の励起と受信を行い、バンドパスフィルタする先行処理を行うこと、コーダ波時間窓及び参照時間窓とされる信号を選択し、それぞれ平均パワーを取得し、時間差に基づいてコーダ波の平均パワー減衰を算出すること、等価減衰係数モデルに基づいて、サンプルについて結晶子の平均サイズとコーダ波の平均パワー減衰との間の対数線性モデルを作成すること、検出対象のものであって晶径が未知である結晶材料の信号を採集し、コーダ波の平均パワー減衰を取得し、対数線性モデルに基づいて結晶材料の平均晶径を特定すること、を含む。
【選択図】
図1