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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】スライド式化粧料容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20241113BHJP
   A45D 33/18 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A45D33/00 610G
A45D33/18 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019041120
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020141881
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】寺内 啓
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-117017(JP,A)
【文献】特開2018-179079(JP,A)
【文献】特開2013-192604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に化粧料収容用の凹部を有する略板状の容器本体と、上記容器本体の上面を覆う天面部を有する蓋体とを備えた化粧料容器であって、
上記容器本体と蓋体は、ともに樹脂成形品からなり、
上記容器本体の側面部と蓋体の側面部の内側とが互いにスライド自在に係合し、
初期状態における化粧料容器が、幅60mm以上、奥行き40mm以上、厚み15mm以下の略板状であり、
上記初期状態では上記蓋体の天面部が上記容器本体の上面を覆い、上記容器本体と蓋体とを相対的にスライドさせた状態では上記容器本体の上面が露呈するよう構成されているとともに、上記容器本体上面と、上記蓋体の天面部下面との最も狭い隙間代が0.5mm以下に設定されており、
上記蓋体の天面部下面、もしくは上記容器本体上面の凹部が形成されていない部分に、微細な凹凸が形成され、上記微細な凹凸による凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が、1~70μmに設定されていることを特徴とするスライド式化粧料容器。
【請求項2】
上記微細な凹凸が、上記蓋体の天面部下面の、少なくとも、上記容器本体上面のうち凹部が形成されておらずスライド方向に延びる部分と対峙する領域に形成されている請求項1記載のスライド式化粧料容器。
【請求項3】
上記蓋体の天面部上面に、加飾が施されている請求項1または2記載のスライド式化粧料容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体に対して容器本体をスライドさせることによって、容器本体に収容された化粧料を露出させるスライド式化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーションやアイカラー、リップカラー等の化粧料を収容した薄型の化粧料容器としては、化粧料を収容した容器本体と蓋体とを互いの後端部でヒンジ連結し、手前正面で開閉自在に係止した、いわゆるコンパクトタイプの化粧料容器が主流である。
【0003】
これに対し、より簡易な構成の化粧料容器として、例えば図8に示すような、スライド式化粧料容器が出回っている。このスライド式化粧料容器は、角筒状もしくは断面コ字状の蓋体50の内側に、化粧料51が充填された中皿52を収容する凹部53が設けられた容器本体54を、スライド自在に係合し、上記容器本体54を手前にスライドさせて、化粧料51を露出させるようになっている。
【0004】
上記スライド式化粧料容器の多くは、レフィル容器として用いられたり、店頭での試供用サンプルとして用いられたりしており、構成も簡素で、蓋体50の表面には加飾がなく、中の化粧料51が透けて見えるようになっているものが一般的である。そして、そのサイズも、単一の中皿52のみを収容できる大きさであればよく、平面視の外形が、例えば30mm×30mmといった小さなものが多い。
【0005】
このようなスライド式化粧料容器は、使い勝手がよいことから、単なるレフィル容器や試供用サンプルとして用いるだけでなく、より大型化して化粧料とパフ等を同時に収容できるようにするとともに、蓋体にも高級感ある加飾を施して、繰り返し使用するタイプの化粧料容器として提供してはどうか、との提案がある。
【0006】
蓋体を加飾する方法としては、例えばコンパクトタイプの化粧料容器に対して、その蓋部に装飾フィルムを転写する方法が知られている(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-292827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような加飾を行う場合、金型を通常よりも高い温度に加熱するため、成形品の冷却時に反りや歪みが生じやすい。また、加飾しないものであっても、その形状や材質、成形条件によっては反りや歪みが生じることがある。とりわけ、スライド式化粧料容器の蓋体のように、フラットで外形の厚みが薄い成形品は、反りや歪みが残留しやすいことが判明した。
【0009】
ところで、化粧料容器では、内容物である化粧料を衛生的に保つため、容器本体と蓋体との間にはできるだけ隙間がなく、内部が密閉される構造であることが望ましく、スライド式化粧料容器においても、容器本体と蓋体との間は、スライド可能な最小限の隙間代にすることが前提となっている。このため、上述のように、加飾等によって蓋体に反りや歪みが生じると、スライド時に容器本体と蓋体との間にきしむような異音が発生したり、スムーズなスライドが妨げられるような違和感を感じたりすることがあり、スライド式化粧料容器の解決すべき課題となっている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、蓋体に反りや歪みが残留しやすい薄型のスライド式化粧料容器であっても、スライドがスムーズで異音や違和感の生じることのない、優れたスライド式化粧料容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]上面に化粧料収容用の凹部を有する略板状の容器本体と、上記容器本体の上面を覆う天面部を有する蓋体とを備えた化粧料容器であって、上記容器本体と蓋体とが互いにスライド自在に係合し、初期状態では上記蓋体の天面部が上記容器本体の上面を覆い、上記容器本体と蓋体とを相対的にスライドさせた状態では上記容器本体の上面が露呈するよう構成されているとともに、上記容器本体上面と、上記蓋体の天面部下面との最も狭い隙間代が0.5mm以下に設定されており、上記蓋体の天面部下面、もしくは上記容器本体上面の凹部が形成されていない部分に、微細な凹凸が形成されているスライド式化粧料容器。
[2]上記微細な凹凸が形成された凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が、1~70μmに設定されている[1]に記載のスライド式化粧料容器。
[3]上記微細な凹凸が、上記蓋体の天面部下面の、少なくとも、上記容器本体上面のうち凹部が形成されておらずスライド方向に延びる部分と対峙する領域に形成されている[1]または[2]に記載のスライド式化粧料容器。
[4]上記初期状態における化粧料容器が、幅60mm以上、奥行き40mm以上、厚み15mm以下の略板状である[1]~[3]のいずれかに記載のスライド式化粧料容器。
[5]上記蓋体の天面部上面に、加飾が施されている[1]~[4]のいずれかに記載のスライド式化粧料容器。
【0012】
なお、本発明において、上記「隙間代」は、実際に完成したスライド式化粧料容器における実測値ではなく、設計段階での設定値をいう。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明のスライド式化粧料容器は、蓋体の天面部下面、もしくは上記容器本体上面の凹部が形成されていない部分に、微細な凹凸が形成されているため、上記蓋体や容器本体に多少反りや歪みがあって、両者の相対的なスライド動作時に、互いに擦れることがあっても、上記微細な凹凸によって、互いの接触面積が非常に小さくなり、両者が吸いつくように密着することがない。このため、スライド式化粧料容器が、たとえ歪み等を生じやすい形状であったとしても、蓋体と容器本体とがスムーズにスライドし、スライド時に異音を生じたり、引っ掛かり等の違和感を感じたりすることなく、良好に使用することができる。
【0014】
したがって、スライド式化粧料容器の厚みを薄くしてよりコンパクトにすることや、水平方向の面積を広くして化粧料とパフ等を同時に収容することが可能となり、その用途を広げることができる。そして、蓋体に反りや歪みが多少あっても、容器本体とのスライド動作に何ら問題がないことから、加工条件を気にすることなく蓋体にさまざまな加飾を施すことができ、化粧料容器としての商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態において、容器本体を蓋体から引き出した状態を示す平面図である。
図2】(a)は上記実施の形態の、容器本体と蓋体とを閉じ合わせた状態を示す平面図、(b)は(a)の正面図である。
図3】上記実施の形態の分解斜視図である。
図4】(a)、(b)は、ともに、上記実施の形態における容器本体と蓋体との係合状態を説明する説明図である。
図5】上記実施の形態における蓋体の底面図である。
図6図2(a)のA-A’断面図である。
図7】上記実施の形態における容器本体の平面図である。
図8】従来のスライド式化粧料容器の一例において、容器本体を蓋体から引き出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1図2(a)は、ともに、本発明のスライド式化粧料容器の一実施の形態を示す平面図であり、図1は、容器本体1を蓋体2から引き出した状態を示し、図2(a)は、容器本体1と蓋体2とを閉じ合わせた状態を示している。図2(b)は、図2(a)の正面図である。
【0018】
より詳しく説明すると、このスライド式化粧料容器は、図3に示すように、平面視が左右に長い長方形状の、厚みの薄い略板状の容器本体1と、この容器本体1の上面を覆う蓋体2とを備えている。そして、上記容器本体1の上面には、化粧料が充填された中皿3を収容するための第1の凹部4と、化粧料を肌に塗布するための塗布具(パフ等)40(図1を参照)を収容するための第2の凹部5とが左右に並んで形成されている。
【0019】
また、上記容器本体1の、凹部4、5が設けられた部分より奥側には、左右方向に延びる細長い第3の凹部6が設けられている。この凹部6は、容器本体1を蓋体2の内側から手前に引き出した状態で、両者の重なり代となる部分で(図1を参照)、容器本体1の軽量化のために設けられている。
【0020】
そして、上記容器本体1の、左右の側面部7、8の下縁部は、互いに内側に向って幅が狭くなるよう切り欠かれて、前後に延びる段差部9、10が形成されている(図2を参照)。この段差部9、10が、後述する蓋体2のレール部15、16と係合して、容器本体1と蓋体2とが、互いにスライド自在に取り付けられている。
【0021】
一方、上記蓋体2は、天面部11と、左右の側面部12、13と、背面部14とを備えており、上記左右の側面部12、13の下縁部に、互いに内側に向って突出して前後に延びるレール部15、16が形成されている。このレール部15、16に、上記容器本体1の段差部9、10が係合して、上述のとおり、容器本体1と蓋体2とが互いにスライド自在に取り付けられている。
【0022】
なお、上記容器本体1の、左右の側面部7、8に設けられた段差部9、10(図3を参照)において、垂直方向の切り欠き面9a、10aの前端近傍に、図4(a)に示すように、側方にわずかに盛り上がる小突起20が設けられている。また、同じくこの垂直方向の切り欠き面9a、10aの後端近傍に、図4(b)に示すように、比較的大きく側方に盛り上がるストッパ21が設けられている[図4(a)、(b)では、見やすいように、蓋体2の天面部11の記載を省略]。
【0023】
そして、上記蓋体2の、左右の側面部12、13に設けられたレール部15、16の前端部分が内側に大きく突出して、係止部22が形成されており、容器本体1と蓋体2とを閉じ合わせた状態では、図4(a)に示すように、上記係止部22が容器本体1側の小突起20と係合して、容器本体1が手前に勝手に出てこないように位置決め保持している。
【0024】
また、上記容器本体1の底面と蓋体2の天面に手をかけて、両者をずらせるように軽く力をかけると、容器本体1の左右手前の小突起20が上記係止部22の先端を乗り越えるため、容器本体1が蓋体2の真下から手前に引き出されるようになっている。
【0025】
そして、上記容器本体1を大きく引き出して、第1の凹部4に収容された中皿3を露呈させた状態にすると、図4(b)に示すように、容器本体1の左右奥のストッパ21が上記蓋体2側の係止部22と係合して、それ以上手前に容器本体1が引き出されないようになっている。これにより、容器本体1が抜け止めされている。
【0026】
このように取り付けられる容器本体1と蓋体2のうち、上記蓋体2の天面部11の下面、すなわち容器本体1の上面と対峙する面には、その全面にわたって、微細な凹凸Pが形成されている。上記微細な凹凸Pが形成された領域を、蓋体2を下から見上げた図5において右上がりの斜線で示す。
【0027】
上記微細な凹凸Pは、容器本体1の上面と、蓋体2の天面部11の下面とが、スライド時に擦れ合ってきしむような異音を生じたり、滑りに対する違和感を生じたりするのを防ぐために設けられている。
【0028】
すなわち、すでに述べたとおり、スライド式に限らず化粧料容器では、内容物である化粧料を衛生的に保つため、容器本体と蓋体との間にはできるだけ隙間がなく、内部が密閉される構造であることが求められる。そこで、このスライド式化粧料容器においても、図2(a)のA-A’断面図である図6に示すように、容器本体1の上面と蓋体2の天面部11の下面との隙間代Qは、スライド可能な、最小限の隙間となるように設定されている(通常、0.5mm以下)。ちなみに、この例では、その隙間代Qは、設計上0.15mmとなっている。
【0029】
しかしながら、上記容器本体1は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)の射出成形品であり、上記蓋体2は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)の射出成形品であり、ともに金型を用いた成形品である。このため、加熱成形後の冷却時に、成形品に反りや歪みがわずかに残留することがある。特に、上記蓋体2は、厚みが薄く天面部11の面積が広い、略板状の外形であるため、とりわけ反りや歪みが残留しやすい形状である。このため、蓋体2の天面部11の下面が反って、容器本体1側に当たり、その状態でスライドさせると、当接した面が吸いつくように密着して動きにくくなったり、きしむような異音が生じたりしやすい。
【0030】
そこで、上記天面部11の下面に微細な凹凸Pを付与しておくと、蓋体2と容器本体1が互いに当接する際に、接触面積が非常に小さくなり、スライド動作においても両者の接触面積が小さいため、吸いつくような密着が未然に防止され、異音や滑りに逆らうような違和感の発生が効果的に防止されるのである。
【0031】
なお、上記微細な凹凸Pによる効果は、前記隙間代Qが0.5mm以下の、容器内の密閉性を考慮したスライド式化粧料容器に適用して初めて得られる効果であり、本発明は、隙間代Qが0.5mm以下に設定されたスライド式化粧料容器を対象とする。すなわち、容器本体1と蓋体2との隙間が0.5mmを超える、密閉性に考慮していない容器への適用は考慮していない。
【0032】
本発明において、上記微細な凹凸Pの凹凸の程度は、特に限定するものではないが、例えば、JIS B 0601-2001に定める微細な凹凸Pによる凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が、1~70μmに設定されていることが、効果の点で好適である。そして、なかでも、Raが2~20μmであると、より好適である。すなわち、上記Raが小さすぎると、蓋体2の反りや歪みが大きい場合、スライド時の異音や抵抗感の発生を充分に解消することができないおそれがあり、逆に、Raが大きすぎると、凹凸面に汚れが溜まりやすくなり、蓋体2の内側面であり外から見えない部分であるとはいえ好ましくないからである。
【0033】
そして、上記微細な凹凸Pは、例えば、上記蓋体2を成形するための金型の、該当する賦形面に凹凸加工を施し、その凹凸を成形面に転写することによって形成することができる。また、金型による転写ではなく、レーザ照射によって、蓋体2の天面部11に直接、微細な凹凸Pを形成してもよい。
【0034】
上記金型に凹凸加工を施す方法としては、金型面をエッチングにより幾何学模様、皮シボ模様、梨地、ヘアライン等の微細模様を形成する方法や、金型面に砂やガラスビーズを吹き付けるサンドブラスト法等があげられる。
【0035】
また、上記レーザ照射によって、蓋体2の天面部11に直接凹凸加工を施す場合、用いるレーザとしては、CO2レーザ、YAGレーザ、ルビーレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザがあげられる。
【0036】
これらのなかでも、金型にエッチング等により凹凸加工を施す方法が好適であり、なかでも、皮シボ模様や梨地模様を形成することが、効果の点でとりわけ好適である。
【0037】
上記スライド式化粧料容器によれば、蓋体2の天面部11の下面に、微細な凹凸Pが形成されているため、上記蓋体2や容器本体1に多少反りや歪みがあって、両者の相対的なスライド動作時に、互いに擦れることがあっても、上記微細な凹凸Pによって、互いの接触面積が非常に小さくなり、両者が吸いつくように密着することがない。このため、スライド式化粧料容器が、たとえ歪み等を生じやすい形状であったとしても、蓋体2と容器本体1とがスムーズにスライドし、スライド時に異音を生じたり、引っ掛かり等の違和感を感じたりすることがなく、良好に使用することができる。
【0038】
そして、従来は、反りや歪みが生じやいとして敬遠されてきた、例えば幅60mm以上、奥行き40mm以上、厚み15mm以下、といった、平面方向に大きい略板形状のデザインを採用することができ、水平方向の面積を広くして化粧料とパフ等の塗布具40を同時に収容した、繰り返し使用に耐える容器とすることができる。また、全体の厚みをより薄くして、容器のさらなるコンパクト化を図ることができる。
【0039】
さらに、蓋体2に反りや歪みが多少あっても、容器本体1とのスライド動作に何ら問題がないことから、加工条件を気にすることなく蓋体2にさまざまな加飾を施すことができ、化粧料容器としての商品価値を高めることができる。
【0040】
このような蓋体2への加飾の方法としては、印刷、コーティング、着色層や模様層の転写、金属蒸着、レーザ加工等、各種の加飾方法があげられる。なかでも、反りや歪みを生じやすい、転写加工等の高温加工に適用した場合、実用的効果が大きいと思われる。
【0041】
なお、上記の例では、上記微細な凹凸Pを、蓋体2の天面部11の下面全面に形成したが、微細な凹凸Pは、必ずしも全面に形成する必要はない。例えば、天面部11の下面の、少なくともスライド時に容器本体1の上面と連続して当たる部分、すなわちスライド方向に長く延びる部分に形成しておけば、一定の効果を得ることができる。この領域の一例を、図5において、右下がりの斜線Rで示す。
【0042】
また、蓋体2側ではなく、容器本体1の上面に、微細な凹凸Pを形成してもよい。その場合の形成領域の一例を、図7において斜線で示す。もちろん、上記容器本体1の上面に微細な凹凸Pを形成する場合も、その上面の、スライド方向に長く延びる部分のみに形成しても、一定の効果を得ることができる。
【0043】
ただし、上記のように、容器本体1側に微細な凹凸Pを形成する場合は、金型の賦形面が、幅の狭い凹部の底面となるため、凹凸加工がしにくいという問題がある。このため、特に理由のない場合、微細な凹凸Pは蓋体2側に形成することが好ましい。
【0044】
さらに、上記の例では、容器本体1の化粧料収容用の凹部(第1の凹部4)に、化粧料を充填した中皿3を収容したが、中皿3は必ずしも必要ではなく、上記凹部内に、化粧料を直接充填するようにしても差し支えない。
【実施例
【0045】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1~5、比較例1]
まず、後記の表1に示す特徴を備えた実施例1~5、比較例1のスライド式化粧料容器を準備した。なお、各化粧料容器の基本的な構成は、図1図7の記載に従う。材質は、容器本体1がPET、蓋体2がABS、容器本体1の上面と蓋体2との隙間代Qは0.15mmの設定である。特徴的な構成については、後記の表1に示すとおりである。
【0047】
そして、各スライド式化粧料容器について、専門モニター11名が、容器本体1の出し入れを30回ずつ繰り返し、その使用感を、下記の評価基準にしたがって評価した。そして、最も人数の多い評価を、その評価として下記の表1に併せて示す。
<使用感の評価基準>
◎…異音の発生も違和感も全くなし。
〇…異音の発生もしくは違和感を1~2回わずかに感じたが問題なし。
×…異音の発生もしくは違和感が3回以上あり、動作時に気になる。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の結果から、実施例1、2品は、ともに容器本体1と蓋体2とを相対的なスライドさせて容器本体1を開閉する動作に何ら支障がなく、優れた使用感となることがわかる。また、微細な凹凸Pの算術平均粗さ(Ra)が比較的大きい実施例3、微細な凹凸Pの形成領域が限定されている実施例4、5は、実施例1、2に比べてやや劣るものの、使用感に問題はないことがわかる。一方、微細な凹凸Pが形成されていない比較例1品は、異音等があり、使用感に問題があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、蓋体に反りや歪みが残留しやすい薄型のスライド式化粧料容器であっても、スライドがスムーズで異音や違和感の生じることのない、優れたスライド式化粧料容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
2 蓋体
4 第1の凹部
11 天面部
P 微細な凹凸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8