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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】両面研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20241113BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20241113BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241113BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20241113BHJP
   B24B 37/28 20120101ALI20241113BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/12 D
B24B49/12
B24B49/04 Z
B24B37/28
H01L21/304 621A
H01L21/304 622S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020187655
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022020537
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020123878
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 千宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 清仁
(72)【発明者】
【氏名】一本木 薫
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207455(JP,A)
【文献】特開平10-034529(JP,A)
【文献】特開2013-036881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 37/12
B24B 49/12
B24B 49/04
B24B 37/28
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に研磨パッドが固定され、回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の下定盤と、下面に研磨パッドが固定され、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の上定盤と、前記下定盤の中央に配置された太陽ギアと、前記下定盤を囲んで配置されたインターナルギアと、前記下定盤および前記上定盤の間に配置され、ワークを保持する透孔を有し、前記太陽ギアおよび前記インターナルギアに噛合して、前記太陽ギアの回りを公転、かつ自転するキャリアを具備する両面研磨装置であって、
前記上定盤もしくは前記下定盤のいずれかの定盤に設けられて該定盤と共に回転し、前記定盤に設けられた測定孔を通じて前記ワークにレーザ光を照射する光学系を含み、前記ワークからの反射光もしくは透過光の干渉光を受光して前記ワークの厚さを測定可能な厚さ測定部と、
前記測定孔の真上若しくは真下を通過する前記キャリアを検出可能なキャリア検出センサと、
前記定盤の回転速度、前記太陽ギアの回転速度および前記インターナルギアの回転速度から、前記キャリアに保持された前記ワークを前記レーザ光が横切るレーザ光の通過経路を、通過時刻と関連してワークの中心からの位置情報として演算する位置演算部と、
前記キャリア検出センサからの検出信号から実測される前記キャリアと前記ワークの実測境界部を通過する前記レーザ光の実測通過時刻と、前記位置演算部により演算される前記キャリアと前記ワークの境界部を前記レーザ光が通過する演算時刻とのズレから、前記位置演算部で演算された前記ワークの位置情報を補正する位置補正部と、
前記位置補正部により補正されたワークの所要位置におけるワークの厚さが設定厚さに達した段階でワークの研磨を終了する制御部と
を有することを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ワークのエッジ部の直近内側の厚さが設定厚さに達した段階でワークの研磨を終了するよう制御することを特徴とする請求項1記載の両面研磨装置。
【請求項3】
前記キャリア検出センサのセンサ部が、前記キャリアに渦電流を誘起する高周波コイルを含むことを特徴とする請求項1または2記載の両面研磨装置。
【請求項4】
前記高周波コイルのセンサ部が前記上定盤に設けた前記測定孔内に、前記上定盤の下面に近接して配置されていることを特徴とする請求項3記載の両面研磨装置。
【請求項5】
前記高周波コイルと前記光学系から前記ワークへ照射されるレーザ光とが同軸となるように前記高周波コイルと前記光学系が設定されていることを特徴とする請求項3または4記載の両面研磨装置。
【請求項6】
前記キャリア検出センサのセンサ部がフッ素樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の両面研磨装置。
【請求項7】
前記キャリア検出センサのセンサ部が電磁シールドされていることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の両面研磨装置。
【請求項8】
前記キャリア検出センサのセンサ部からの検出信号を増幅するセンサーアンプが設けられ、該センサーアンプ側でキャリア検出の感度調整がなされるか、もしくは閾値が設定されてキャリア検出のオン、オフがなされることを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の両面研磨装置。
【請求項9】
前記測定孔内に、前記測定孔の上部に固定された上キャップ、前記測定孔の下部に固定された下キャップ、および前記上キャップおよび前記下キャップに同軸に固定され、前記レーザ光を通す透明板を有する窓体が配設されていることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の両面研磨装置。
【請求項10】
前記透明板以外の前記下キャップの下面を覆って樹脂製の保護板が固定されていることを特徴とする請求項9記載の両面研磨装置。
【請求項11】
前記厚さ測定部は、
参照用ワークを用いた光源監視用回路を有し、
該光源監視用回路は、波長掃引レーザ光源によるレーザ光を、前記参照用ワークに導いて照射する第2の光学系と、
前記参照用ワークから得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する第2の検出器と、
前記第2の検出器により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するDAQを具備することを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか一項記載の両面研磨装置。
【請求項12】
前記光源監視用回路が、前記第2の検出器から出力される電圧の平均値から前記レーザ光の光量を監視することを特徴とする請求項11記載の両面研磨装置。
【請求項13】
前記光源監視用回路が、前記第2の検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視することを特徴とする請求項11記載の両面研磨装置。
【請求項14】
前記厚さ測定部は、
マッハツェンダ干渉計と、
検出器と、を有しており、
前記マッハツェンダ干渉計が光源監視用回路を兼用し、該光源監視用回路が、前記検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視することを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか一項記載の両面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェーハ等のワークの両面研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリアによって保持されたワークを、上下の定盤によって挟み込んで、太陽ギアとインターナルギアの回転により、キャリアと共に公転および自転させながら研磨する両面研磨装置がある。
これら両面研磨装置においては、特許文献1~3に示すように、ワークの研磨中、ワークの厚さをリアルタイムで測定可能なワーク厚さ測定部を備えている。
【0003】
特許文献1(特開2015-47656号公報)の両面研磨装置におけるワーク厚さ測定部は、上下どちらかの定盤に貫通した1つ以上のワーク測定用の孔を設けた構造としており、さらに、ワーク厚さを測定する際、太陽ギアとインターナルギアの回転を同期制御してキャリアの公転運動を停止し、自転のみさせて、研磨しながらワークの厚さを測定するようにしている。
【0004】
また、特許文献2(特開2017-204609号公報)および特許文献3(特開2017-207455号公報)の両面研磨装置におけるワーク測定部は、研磨中の太陽ギアとインターナルギアの回転位置に基づいて、ワーク厚さの測定位置(ワーク上の座標)を把握することにより、厚さの測定位置と測定値とを関連付けて取り込むことにより、計算処理によってワークの連続した厚さ分布(径方向の断面形状)を求めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-47656号公報
【文献】特開2017-204609号公報
【文献】特開2017-207455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における両面研磨装置では、ワークの厚さを測定する際、研磨中にキャリアの公転を止めることになるので、キャリアの自転運動のみをさせる制御が必要となる。また、研磨に必要なキャリアの公転を停止するため、ワークの加工精度や加工能率に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0007】
特許文献2および特許文献3のものでは、太陽ギアとインターナルギアの回転位置情報の取得および計算処理の遅延によるタイムラグや、回転位置情報の誤差(各種ギアのバックラッシュ)等の影響で、図15に示すように、実際の厚さ測定位置と太陽ギアとインターナルギアの回転位置情報から求めた厚さ測定位置にズレが生じる場合がある。図15は、時間(横軸)に対するキャリアの測定位置の極座標位置との関係(破線が計算値、実線が実測値)を示すグラフである。計算値と実測値にズレがある。
【0008】
このため、正確な厚さ測定位置(ワークの座標上の位置)を把握することができず、正確な厚さ分布が得られない。また、回転位置情報から求めた厚さ測定位置と実際の厚さ測定位置とのズレにより、図16に示すように、ワーク21が存在しない、キャリア20上のスラリー層19の厚さを、ワーク21の厚さと誤認する可能性がある等の問題がある。すなわち、スラリー層19の表裏面の反射光の干渉によりスラリー層19の厚さを測定してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、研磨中のキャリアの公転を停止する必要がなく、またスラリー層の厚さをワーク厚さと誤認することのない両面研磨装置を提供することにある。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る両面研磨装置は、上面に研磨パッドが固定され、回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の下定盤と、下面に研磨パッドが固定され、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の上定盤と、前記下定盤の中央に配置された太陽ギアと、前記下定盤を囲んで配置されたインターナルギアと、前記下定盤および前記上定盤の間に配置され、ワークを保持する透孔を有し、前記太陽ギアおよび前記インターナルギアに噛合して、前記太陽ギアの回りを公転、かつ自転するキャリアを具備する両面研磨装置であって、前記上定盤もしくは前記下定盤のいずれかの定盤に設けられて該定盤と共に回転し、前記定盤に設けられた測定孔を通じて前記ワークにレーザ光を照射する光学系を含み、前記ワークからの反射光もしくは透過光の干渉光を受光して前記ワークの厚さを測定可能な厚さ測定部と、前記測定孔の真上若しくは真下を通過する前記キャリアを検出可能なキャリア検出センサと、前記定盤の回転速度、前記太陽ギアの回転速度および前記インターナルギアの回転速度から、前記キャリアに保持された前記ワークを前記レーザ光が横切るレーザ光の通過経路を、通過時刻と関連してワークの中心からの位置情報として演算する位置演算部と、前記キャリア検出センサからの検出信号から実測される前記キャリアと前記ワークの実測境界部を通過する前記レーザ光の実測通過時刻と、前記位置演算部により演算される前記キャリアと前記ワークの境界部を前記レーザ光が通過する演算時刻とのズレから、前記位置演算部で演算された前記ワークの位置情報を補正する位置補正部と、前記位置補正部により補正されたワークの所要位置におけるワークの厚さが設定厚さに達した段階でワークの研磨を終了する制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
前記制御部は、前記ワークのエッジ部の直近内側の厚さが設定厚さに達した段階でワークの研磨を終了するよう制御すると好適である。
前記キャリア検出センサのセンサ部を、前記キャリアに渦電流を誘起する高周波コイルで構成することができる。
前記高周波コイルのセンサ部を前記上定盤に設けた前記測定孔内に、前記上定盤下面に近接して配置するとキャリアの検出感度をよくすることができる。
【0012】
前記高周波コイルと前記光学系から前記ワークへ照射されるレーザ光とが同軸となるように前記高周波コイルと前記光学系を設定することができる。
前記キャリア検出センサのセンサ部をフッ素樹脂で被覆したり、電磁シールドすると好適である。
前記キャリア検出センサのセンサ部からの検出信号を増幅するセンサーアンプを設け、該センサーアンプ側でキャリア検出の感度調整をするか、もしくは閾値を設定してキャリア検出のオン、オフをするとよい。
【0013】
前記測定孔内に、前記測定孔の上部に固定された上キャップ、前記測定孔の下部に固定された下キャップ、および前記上キャップおよび前記下キャップに同軸に固定され、前記レーザ光を通す透明板を有する窓体を配設することにより、測定孔内にスラリーや水等の液体が進入するのを防止できる。
前記透明板以外の前記下キャップの下面を覆って樹脂製の保護板を設けると好適である。
【0014】
前記厚さ測定部は、参照用ワークを用いた光源監視用回路を有し、該光源監視用回路は、波長掃引レーザ光源によるレーザ光を、前記参照用ワークに導いて照射する第2の光学系と、前記参照用ワークから得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する第2の検出器と、前記第2の検出器により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するDAQと、で構成することができる。
【0015】
前記厚さ測定部は、マッハツェンダ干渉計と、検出器と、を有しており、前記マッハツェンダ干渉計が光源監視用回路を兼用し、該光源監視用回路により、前記検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視するようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような有利な作用効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、研磨中のキャリアの公転を停止する必要がなく、またスラリー層の厚さをワーク厚さと誤認することのない両面研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】両面研磨装置の概略の断面図である。
図2】下定盤上におけるキャリアの配置状態を示す平面図である。
図3】厚さ測定部の概略を示すブロック図である。
図4図4A、Bは下定盤上にワークもキャリアも存在しない時の、キャリアとワークの検出状態を示す説明図である。
図5図5A、Bはキャリアが高周波コイルの下方に進入した時の、キャリアとワークの検出状態を示す説明図である。
図6図6A、Bはワークがプローブの下方に進入した時の、キャリアとワークの検出状態を示す説明図である。
図7図7A、Bはキャリア上を、レーザ光がラインL1、L2、L3上を通過するときの、キャリアとワークの検出状態を示す説明図である。
図8】上定盤の回転速度、太陽ギアの回転速度、インターナルギアの回転速度から割り出した、15枚のワーク上を刻々通過するレーザ光の通過経路を示すシミュレーション図である。
図9】上定盤の回転速度、太陽ギアの回転速度、インターナルギアの回転速度から割り出した、15枚のワーク上を刻々通過するレーザ光の通過経路を示すシミュレーション図である。
図10】上定盤の回転速度、太陽ギアの回転速度、インターナルギアの回転速度から割り出した、15枚のワーク上を刻々通過するレーザ光の通過経路を示すシミュレーション図である。
図11】上定盤の回転速度、太陽ギアの回転速度、インターナルギアの回転速度から割り出した、15枚のワーク上を刻々通過するレーザ光の通過経路を示すシミュレーション図である。
図12】システム全体を制御する制御部のブロック図である。
図13図13A、Bはキャリア検出センサを組み込んだ窓体の構成の説明図である。
図14】キャリア検出センサとプローブの位置とを別位置に設定した説明図である。
図15】キャリアの時刻に対する回転位置の計算値と実測値のズレを示すグラフである。
図16】キャリア上のスラリーの厚さを検出してしまう状態を示す説明図である。
図17】ワークの厚さを測定する他の厚さ測定部の概略を示すブロック図である。
図18図17に示す厚さ測定部における光学系を含んだ、厚さ測定プロセスを示す信号処理のフロー図である。
図19】レーザ光源のトリガー信号からA/Dボード内部クロックで同時間でコンピュータに取り込んだワークからの直接の干渉波形とMZI干渉計72からコンピュータに取り込んだ干渉波形を示すグラフである。
図20】DAQのブロック図である。
図21】FFT処理データを平均化処理しない場合(図7A)と、平均化処理をした場合(図7B)のパワースペクトルの状況を示すグラフである。
図22厚さ測定部のさらに他の実施の形態を示す全体システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
まず両面研磨装置の一例について説明する。両面研磨装置は公知のものでよいので、以下簡単に説明する。
図1はシリコンウェーハ等のワークを研磨する両面研磨装置10の概略の断面図である。また図2は下定盤上におけるキャリアの配置状態を示す平面図である。
図1に示す装置では、互いに反対方向に回転する下定盤12と上定盤14との間に、インターナルギア15と太陽ギア16とにより駆動されるキャリア20が配設される。
下定盤12の上面および上定盤14の下面にはそれぞれ研磨パッド17、18が貼付されている。
【0019】
キャリア20には、研磨対象のワーク21をその内部に保持する透孔22が設けられている。本実施の形態では、図2に示すように、太陽ギア16とインターナルギア15との間に両者に噛合する5個のキャリア20が周方向に一定の間隔をおいて配置されている。各キャリア20には3個ずつ透孔22が設けられている。したがって、合計15個のワーク21が同時に研磨加工可能となっている。
【0020】
キャリア20は、太陽ギア16およびインターナルギア15に噛合する遊星機構の構造となっていて、太陽ギア16の周りを公転し、また自身の軸線を中心として自転するようになっている。
キャリア20はチタン等の金属からなる。
下定盤12は図示しない定盤受け上に回転自在に配置されている。また上定盤14は、図示しない門型支柱に吊り支柱23を介して上下動自在かつ回転自在に支持された円盤24にロッド25を介して支持され、円盤24と共に上下動自在かつ回転自在に支持されている。
【0021】
下定盤12、上定盤14、太陽ギア16、インターナルギア15は、それぞれ図示しない公知の駆動機構によって回転されるようになっている。
上記のように、研磨時、下定盤12と上定盤14とは互いに反対方向に回転され、またキャリア20は太陽ギア16の周りに公転および自転することにより、キャリア20の透孔22内に保持されたワーク21が研磨される。
【0022】
なお、研磨時には、上定盤14上に設けられた図示しないスラリー供給部から研磨材入りのスラリーが下定盤12上に供給される。スラリー供給部は、図示しないホースを介して、上定盤14に設けられた貫通孔からスラリーを下定盤12上に供給するようになっている。
【0023】
図3はワーク21の厚さを測定する厚さ測定部30の概略を示すブロック図である。
31は公知の波長掃引型のレーザ光源である。レーザ光源31は、例えば波長掃引速度1~50kHz、波長可変範囲1200~1400nmの全部又は一部分を同じ波長範囲で繰り返し波長掃引する。レーザ光源31から放出されるレーザ光はサーキュレータ32、ロータリージョイント33、およびプローブ(光学系)34からワーク21の被測定部位に照射される。ロータリージョイント33は、上定盤14の回転中心となる吊り支柱23に配設されている。
【0024】
プローブ34は上定盤14上に固定して設けられ、上定盤14と共に回転する。プローブ34から、上定盤14に設けられた測定孔35を通じてレーザ光がワーク21上に照射される。測定孔35の位置は、キャリア20に保持された15個全部のワーク21上を万遍なく通過するように、キャリア20の幅方向のほぼ中央部(上定盤14の中心から定盤半径の4/5に相当する位置)に対応する上定盤14の位置に設けるのが好ましい。なお、プローブ34は下定盤12側に固定して設け(図示せず)、下定盤12に設けた測定孔(図示せず)からワーク21に向けてレーザ光を照射するように構成してもよい。
【0025】
ワーク21の表面および裏面で反射されたレーザ光(干渉光)は、測定孔35、プローブ34、ロータリージョイント33およびサーキュレータ32を介してフォトダイオード36で検出され、フォトダイオード36で電気信号(干渉光信号)に変換され、さらにこの電気信号が増幅器で増幅される。
【0026】
ワーク21の表面で反射されたレーザ光と裏面で反射されたレーザ光は干渉し、所要位相を有する干渉光として観測される。
なお、ワーク21を透過するレーザ光と、ワーク21の裏面で反射し、さらに表面で反射して裏面側に透過するレーザ光の干渉光を観測するようにしてもよい。
干渉光信号は、A/D変換器およびFFT処理器を含むDAQ(データ収集装置:デジタイザ)37でデジタル信号に変換され、さらにFFT処理がなされ、干渉波形のピーク値のデータが取得されて、制御部50内の厚さ演算部38に入力される(図12)。
DAQ37には、レーザ光源31で発生する外部トリガ信号が入力される。
【0027】
厚さ演算部38では、DAQ37からのFFT処理したデータより、中心周波数(ピーク値)を算出し、ワーク21の屈折率を含む公知の式により演算してワーク21の厚さが算出される。
なお、FFT処理は厚さ演算部38で行ってもよい。
【0028】
40は測定孔35内に配置されたキャリア検出センサ(近接センサ)であり、下定盤12(キャリア20)との対向部に設けられた高周波コイル(センサ部)41を有する(図4図6)。高周波コイル41は中空の支持体43下面に固定されている。高周波コイル41は、キャリア20の検出感度を上げるため、できるだけキャリア20に近接させるのがよく、3mm程度(限界4.5mm程度)とするのがよい。高周波コイル41は上定盤14の下面と同一の高さとするのが好適である。この場合、高周波コイル41とキャリア20との距離は、研磨パッド17の厚さ程度となる。
高周波コイル41には図示しない交流電源から高周波電流が印加される。
42は高周波コイル41のリード線である。
【0029】
本実施の形態においては、高周波コイル41は、プローブ(光学系)34からワーク21へ照射されるレーザ光と同軸となるように設けられている。プローブ34からのレーザ光は中空の支持体43および高周波コイル41を通過してワーク21に照射される。
キャリア検出センサ40のセンサ部である高周波コイル41は耐食性を向上させるためフッ素樹脂で被覆すると好適である(図示せず)。
また、鋼鉄製の上定盤14に対する磁気的相互作用を防止するため、高周波コイル41を電磁シールドすると好適である。
【0030】
上記のように、プローブ34から出たレーザ光は測定孔35を通過してワーク21に照射される。またその反射光も測定孔35を通過し、プローブ34、ロータリージョイント33からサーキュレータ32に導かれる。
【0031】
高周波コイル41下方、すなわち測定孔35下方を金属製のキャリア20が通過するとキャリア20に電磁誘導により渦電流が発生し、この渦電流による磁界により高周波コイル41のインピーダンスが変化し、このインピーダンスの変化をとらえてキャリア20の存在が検出される。
【0032】
キャリア20の存在は、次のようにしても検出される。例えば、渦電流の磁界により、高周波コイル41と同軸に設けた二次コイル(受信コイル:図示せず)に生じた誘導電流を捉え、この誘導電流をセンサーアンプ39により増幅し、ロータリージョイント33を経て、DAQ37を含む処理部にて処理してキャリアの検出信号を生成する。この場合、センサーアンプ39でキャリア20検出の感度調整をするか、DAQ37にて閾値を設定してキャリア検出のオン、オフをするようにすることができる。
【0033】
後記するように、このキャリア20の検出信号が制御部50内の位置補正部52(図12)に入力される。
ロータリージョイント33は、スリップリング等の構造を有し、プローブ34およびキャリア検出センサ40が上定盤14と共に回転することによる、光、電気信号の以後のA/D変換器37への伝達が妨げられないように構成されている。
【0034】
図4A、Bは、下定盤12上にワーク21もキャリア20も存在しない時の状態を示す説明図であり、キャリア20もワーク21も検出されていない。図5A、Bは、キャリア20が高周波コイル41の下方に進入した時の状態を示す説明図であり、キャリア検出センサ40によりキャリア20が検出される。図6A、Bはワーク21がプローブ34の下方に進入した時の状態を示す説明図であり、キャリア20は検出されず、ワーク21が検出される。
【0035】
図7A、Bは、キャリア20上をレーザ光がラインL1、L2、L3上を通過するときの、キャリア20とワーク21の検出状態を示す説明図である。
図7A、Bに示すように、キャリア20とワーク21とが明確に識別されて検出される。特に、キャリア20とワーク21との境界部が明確に識別される。
【0036】
従来のように、ワークの厚さ測定部のみであると、図15に示すように、キャリアの上にスラリーの膜が存在すると、ワークの厚さ測定部により、スラリーの膜厚を測定してしまい、ワークとキャリアとの境界部の識別が判然とせず、ワークの厚さ測定位置を正確に把握できず、正確なワークの厚さ分布(断面形状)を得ることができない一因となっていた。
【0037】
この点、本実施の形態では、キャリア検出センサ40を設けたことにより、例えキャリア20上にスラリーの膜が形成されていたとしても、キャリア20を検出することにより、それがキャリア20上のスラリー厚であることを判断できる。
この意味から、キャリア20とワーク21の境界部の把握が重要となる。
またキャリア20とワーク21との境界部の把握は以下の別の理由からも重要である。
【0038】
本実施の形態では、ワーク21を横切るレーザ光によって測定されるワーク21の断面形状を知ることができる。この断面形状は、レーザ光がワーク21を横切り始めたとき(キャリア20とワーク21との境界部)から、ワーク21上を通過し終えるまで(キャリア20とワーク21との境界部)の間のワーク21の厚さを測定することにより、レーザ光の通過経路におけるワーク21の断面形状を知ることができる。このワーク21断面形状を知る上からも、キャリア20とワーク21との境界部の把握が重要となるのである。
このワーク21の断面形状は、ワーク21の中心からの位置情報(XY座標あるいは極座標)との関連で把握される。
【0039】
図8図11は、プローブ34を設けた上定盤14の回転速度、太陽ギア16の回転速度、インターナルギア15の回転速度等から割り出した、15枚のワークWf1~Wf15を刻々通過するレーザ光の通過経路を示すシミュレーション図である。
図8図11に示すように、レーザ光は各ワーク21上を万遍なく通過する。
【0040】
図12は、システム全体を制御する制御部50のブロック図である。
制御部50には、厚さ分布演算部38aを含む厚さ演算部38の他、位置演算部51、位置補正部52を有する。
位置演算部51には、上定盤14の回転速度、太陽ギア16の回転速度、インターナルギア15の回転速度等のデータ(図示しない入力部における操作により設定変更可能)があらかじめ入力された記憶部53が接続されている。
位置補正部52にはキャリア検出センサ40が接続されている。
【0041】
本実施の形態では、図8図11に示すような、ワーク21上を通過するレーザ光の通過経路(厚さ測定位置の経路)を、通過時刻と関連してワークの中心からの位置情報(XY座標、もしくは極座標)として、位置演算部51において計算により求める。すなわち、位置演算部51では、記憶部53に入力されている上定盤14の回転速度、太陽ギア16の回転速度、インターナルギア15の回転速度等のデータに基づき、これらの関係の計算式により、ワーク21上を通過するレーザ光の通過経路を、通過時刻と関連してワーク21の中心からの位置情報(XY座標、もしくは極座標)として計算により求めるのである。
【0042】
ところで、上記計算により求めた位置情報(演算時刻)と、実測位置(実測時刻)とは、図15に示すように、太陽ギア16やインターナルギア15の回転位置情報を取り出す際のタイムラグや、回転位置情報の誤差等でズレが生じる。このため、正確な厚さ測定位置(ワーク21上の座標)を把握することができず、正確な厚さ分布が得られないことは前記した通りである。
【0043】
本実施の形態では、キャリア検出センサ40によりキャリア20を検出し、キャリア20とワーク21との実測境界部をレーザ光が通過する時刻を検出する(実測時刻)。この実測時刻と、位置演算部51で演算されるキャリア20とワーク21との境界部をレーザ光が通過する時刻(演算時刻)とのズレがゼロとなるように位置補正部52において補正する。
【0044】
すなわち、位置補正部52では、位置演算部51で演算されるキャリア20とワーク21との境界部をレーザ光が通過するとする演算時刻を上記実測時刻に置き換える。すなわち、上記実測時刻において、キャリア20とワーク21との境界部をレーザ光が通過するとして、位置演算部51で演算されたワーク21の位置情報(XY座標、もしくは極座標)を補正するのである。
これにより、レーザ光がワーク21上を通過する経路上のワーク21の厚さ(断面形状)が、実測境界部からのワーク21の中心に対する位置情報(座標)と関連づけて算出される。
【0045】
したがって、レーザ光が通過した通過経路上のエッジ部からエッジ部におけるワーク21の断面形状を得ることができる。
厚さ演算部38、位置演算部51、位置補正部52の制御は、全体の制御部50により行われる。
そして、制御部50は、ワーク21の所要位置(実位置)での厚さが設定厚に達した段階でワーク21の研磨を終了するように各部の制御をする。
【0046】
ところで、研磨されるワーク(シリコンウェーハ)21の断面形状は、研磨段階に応じて刻々変化することが知られている。
すなわち、研磨初期では、ワーク21の全面形状は、上に凸の形状であり、ワーク21外周では大きなダレ形状が見られる。研磨が進むと、ワーク21の全面形状は、平坦に近づくものの、ワーク21外周ではダレ形状が残っている。このときワーク21の厚さはほぼキャリア20と同じとなる。さらに研磨が進むと、ワーク21の全面形状は、ほぼ平坦な形状となり、ワーク21外周のダレ量が小さくなる。その後、研磨を進めると、ワーク21の形状が段々と中心部が凹んだ形状となり、ワーク21外周が切上がり形状となる。
【0047】
以上のことから、全面及び外周の平坦度の高いワーク21を得るために、ワーク21の厚さがキャリア20の厚さにほぼ等しくなるまでワーク21の研磨を行うのが一般的であり、この段階でワーク21の研磨を終了するのである。
経験上、ワーク21の研磨の終了時は、ワーク21のエッジ部を除く部位は極めて高精度の平坦度(例えば面粗さが10nm以下)が得られていることが知られている。
【0048】
この場合にあっても、ワーク21の外周部(エッジ部)は上記のように、切上がり状となっている、そのため、ワーク21の外周部は使用不能としているのが通常である。
したがって、ワーク21の研磨終了の判断は、ワーク21のエッジ部の直近内側(例えばエッジ部から2mm程度)の部位(座標として把握される)の厚さが設定厚さに達した段階で研磨終了とするのがベターである。
【0049】
本実施の形態では、上記のように、レーザ光が通過した任意の通過経路上のワーク21の断面形状を得ることができる。ワーク21全体の正確な断面形状を得るには、ワーク21の直径上、あるいはその近傍における断面形状を得るのが理想的であるが、研磨の終了時刻の判定には、必ずしもワーク21の直径上、あるいはその近傍における断面形状でなくともよい。
【0050】
すなわち、上記のように、ワーク21の研磨の終了の判断は、ワーク21のエッジ部の直近内側の厚さが設定厚さに達した段階でワークの研磨を終了するようにすればよいから、図8図11に示すような、測定光であるレーザ光がワーク21を横切る任意の位置で、そのエッジ部の直近内側の部位の厚さが設定厚さに達したかを判断することができ、したがって、例えば15枚のワーク21の厚さの判定をほぼ同時に行える。
【0051】
本実施の形態では、上記のように、定盤の公転を停止させることなく、ワーク21の研磨中にリアルタイムでワーク21の厚さを測定でき、また、キャリア検出センサ40を設けたのでスラリー層19の厚さをワーク21の厚さと誤検出することなく、また、計算上の測定位置とのズレを補正することによって、ワーク21の正確な位置(座標)での厚さを測定することができるという効果を奏する。
【0052】
図13A、Bは、キャリア検出センサ40を測定孔35内に設けた窓体45内に設けた実施の形態を示す説明図である。
窓体45は上キャップ60および下キャップ61を有する。
上キャップ60および下キャップ61は、ゴム等の弾性体で形成され、図13Bに明確なように2本の連結シャフト64によって連結されている。
上キャップ60は、上定盤14に設けられた前記測定孔35の上部に挿入、固定される。同様に下キャップ61は、上定盤14に設けられた測定孔35の下部に挿入、固定される。
上キャップ60と下キャップ61の上下方向の同一位置に設けられた透孔に薄板状の透明板65が嵌め込まれている。プローブ34からのレーザ光はこの透明板65を通じてワーク21に照射され、ワーク21からの反射光もこの透明板65からプローブ34に導かれる。
【0053】
また下キャップ61の透明板65が嵌め込まれた透孔と平行に位置して設けられた透孔にキャリア検出センサ40が嵌め込まれている。リード線42は上キャップ60に設けられた透孔から上キャップ60外部に導出されている。
下キャップ61は、その下面が上定盤14の下面よりも若干上方に位置するように測定孔35内下部に挿入、固定されている。そして、下キャップ61の下面を覆って樹脂製の保護板66が接着、固定され、測定孔35内にスラリーや水が進入しないようになされている。
【0054】
上キャップ60および下キャップ61の外壁面と測定孔35内壁面との間にはOリング68が装着され、液密化がされている。
さらに上キャップ60外壁面と測定孔35の内壁面、下キャップ61の外壁面と測定孔35の内壁面との間、リード線42と透孔との間の隙間にはシール剤が充填され、液密化が図られている。
本実施の形態におけるキャリア検出センサ40は、測定孔35に設けられた窓体45内に配設されているので、測定孔35内へのスラリーや水等の液体が進入するのを防止できる。
【0055】
なお、上記各実施の形態では、レーザ光を通す測定孔35内にキャリア検出センサ40を配設したが、レーザ光を通すプローブ34(測定孔35)とキャリア検出センサ40は上定盤14の別位置に設けてもよい。
図14は、キャリア検出センサ40とプローブ34の位置とを別位置に設定した説明図である。
【0056】
本実施の形態では、5個のキャリア20は同じ形状で、下定盤12上に均等間隔位置となるように配置され、かつ3個ずつの透孔22の位置も下定盤12の中心に対して同一角度配置となるように設定されている。またプローブ34(すなわち測定孔35)の位置、およびキャリア検出センサ40の位置は、共に、上定盤14の中心位置から上定盤14の半径の4/5となる同一距離位置であって、かつ対応するキャリア20に対して同一位置となるように設定されている。
【0057】
上記の条件により、5個のキャリア20は、同一の状態で公転かつ自転する。
上記条件設定により、キャリア検出センサ40によるキャリア20の検出は、プローブ
34位置(厚さ検出位置)でキャリア20を検出するのと時刻的に同等となり、上記と同様にしてワーク21の厚さ計測、キャリア20の存在の検出を行うことができる。
【0058】
プローブ34の位置する測定孔35は、図4図6図13において、キャリア検出センサ40を取り除いた構造でよく、またキャリア検出センサ40は単に定盤に設けた孔内にセンサ部等を配設する構造のものでよい。
なお、35aはスラリー供給孔である。
【0059】
次に、図17はワーク21の厚さを測定する厚さ測定30の他の実施の形態の概略を示すブロック図である。図18は、光学系を含んだ、厚さ測定プロセスを示す信号処理のフロー図である。上記実施の形態と同一の部材は同一の符号を用いている。
以下、図17図18を併せて説明する。
70は公知の波長掃引型のレーザ光源である。
【0060】
レーザ光源70からは、波長1260~1350nmを含む一定の範囲で、波長掃引速度20~50kHzの内の一定速度で波長を掃引したレーザ光が発振される。なお、波長の掃引範囲は、シリコンウェーハ(ワーク)を測定対象とした場合、1300nmを中心に、1200~1400nmのシリコンを透過しやすい赤外光の範囲が好適である。
レーザ光源70から放出されるレーザ光はサーキュレータ32、光ロータリージョイント33、およびプローブ(レンズ系)34からワーク21の被測定部位に照射される。
【0061】
ワーク21の表面で反射されたレーザ光と裏面で反射されたレーザ光は干渉し、所要位相を有する干渉光として観測される。
干渉光信号は、A/D変換器およびFFT分析器を内蔵するDAQ(データ収集装置:デジタイザ)37に入力され、デジタル信号に変換される(図4、ステップ1:S1)。
DAQ37には、レーザ光源70で発生する外部トリガー信号が入力される。
DAQ37は、例えばTELEDYNE SP DEVICES社のADQ14OCTを好適に用いることができる。
【0062】
72は公知のMZI(マッハツェンダ)干渉計である。MZI干渉計72は、例えばソーラボ社の「Thorlabs INT-MZI-1300」を好適に用いることができる。
MZI干渉計72は、レーザ光源70から放出されるレーザ光の一部(5%ほど)をMZI光学系73に取り込み、干渉光の位相差を差分式フォトディテクタ74により検出し、サンプリングクロック信号を生成する(ステップ2:S2)。
MZI光学系73と差分式フォトディテクタ74とによりMZI干渉計72を構成する。
【0063】
図19は、レーザ光源70のトリガー信号からA/Dボード内部クロックで同時間でコンピュータに取り込んだワークからの直接の干渉光波形とMZI干渉計72からDAQ37に取り込んだサンプリングクロック信号(干渉光波形:1掃引分)を示す。
図19に示すように、MZI干渉計72からのサンプリングクロック信号(干渉光信号)は等間隔に並んでいる。この干渉光信号は、光周波数空間(k-空間)でも等間隔に並び、DAQ37内でそのゼロ交差がサンプリングされ、サンプリングクロック信号(k-クロック信号)として使用される(ステップ3:S3)。
【0064】
DAQ37内で、上記k-クロック信号を基準として、ワークからの干渉光信号がリサンプリングされる(ステップ4:S4)。
そして、DAQ37内のFFT処理器76(図20)で、k-クロック信号を基準としてワークからの上記リサンプリング信号に窓関数を掛けてFFT処理(具体的にはDFT:離散フーリエ変換)がなされ、リサンプリングされた干渉波形のピーク値のデータが取得される(ステップ5:S5)。
【0065】
さらに具体的には、FFT処理器76内部で、k-空間でリサンプリングしたワーク干渉波形を1024、2048、4096、もしくは8192ポイントで窓関数(ハニングもしくはハミング)を掛けてFFT(DFT)処理し、干渉波形のピーク値のデータを得、このピーク値のデータが演算部38に出力される。
なお、例えば、8192ポイントでFFT処理した場合に、122kHzの高速でのデータ取得が可能となる。
【0066】
演算部38では、DAQ37からのFFT処理したデータより、中心周波数(ピーク値)を算出し、ワーク21の屈折率を含む公知の式により演算してワーク21の厚さを計測することができる。
【0067】
図20はDAQ37のブロック図である。
ワーク21からの干渉光信号はA/D変換器にてサンプリングされる(ステップ1:S1)。
MZI干渉計72からのサンプリングクロック信号(干渉光信号)はA/D変換器にてサンプリングされ、k-クロック信号として使用される(ステップ3:S3)。
【0068】
そして、k-クロック信号を基準として、ワークからの干渉光信号がリサンプリングされる(ステップ4:S4)。
そして、リサンプリング信号に窓関数を掛けてFFT処理(具体的にはDFT:離散フーリエ変換)がなされる(ステップ5:S5)。
FFT(DFT)処理の出力はステップ6(S6)でパワースペクトルに変換され(PSD)、さらにステップ7で平均化処理(Signal averaging)される。平均化処理は移動平均が好ましい。
【0069】
測定状況などの影響で、ワーク21の光透過率が低い場合光の干渉強度が弱くなり、取得したパワースペクトルはワークの厚みを示す中心周波数のピークが低くなり、ピークがノイズに紛れて弁別し難くなる。そこで、本実施の形態では、パワースペクトルの平均化処理(ステップ7:S7)を行い、ランダムに発生するノイズの影響をキャンセルし、中心周波数のピークを顕在化するようにした。
【0070】
図21は、平均化処理しない場合(図21A)と、平均化処理をした場合(図21B)のパワースペクトルの状況を示すグラフである。図21からわかるように、平均化処理をした場合に、ノイズが低減され、中心周波数のピークが鮮明になったことが理解される。
これにより、中心周波数のピークを精度よく検出でき、ワーク21の厚さ計測の精度が向上する。
【0071】
平均化処理されたデータは、インターフェースを介して演算部38に出力される。
演算部38では、前記したように、DAQ37からのFFT処理したデータより、中心周波数(ピーク値)を算出し、ワーク21の屈折率を含む公知の式により演算してワーク21の厚さを計測することができる(ステップ8:S8)。
【0072】
DAQ37又は演算部38で、FFT値を2回以上の単純平均か、2回以上の移動平均し、そのピーク値を算出する。レーザ光源70の掃引周波数の速度でピーク値(測定値)計算を繰り返す。これにより、測定のバラツキを平均化でき、ワーク21の厚さを精度よく計測可能となる。
DAQ37での一連の処理は、演算部38とは別の制御部78によって制御される。制御部78は高速での処理条件等を書き換え可能なFPGAを内蔵している。
【0073】
特に、DAQ37で生成するk-クロック信号は、MZI干渉計72由来のクロック信号であり、極めて精度が高く、このk-クロック信号を基準にワーク21からの干渉光信号をリサンプリングして校正するので、波長掃引レーザ光源70からの掃引波長に多少のズレがあったとしても、ワーク21の厚さを精度よく計測できる。
【0074】
なお、両面研磨装置10においては、ワーク21とプローブ34との相対速度は大きく、一実施の形態においては、概ね1400mm/secで最大200msecで通過する。そして、ワークの形状(断面形状)を測定するには、1mm当たり5測定点数以上が必要となる。
したがって、1秒間に必要な測定点数は、7055測定点以上となる。
上記をウェーハが通過する毎に算出する。
【0075】
レーザ光源31の波長掃引30kHz(33.3μs/掃引)の場合、1秒間に約30000回のデータを取得できるが、DAQ37を例えばTELEDYNE SP DEVICES社のADQ14OCTを好適に用いることで上記のFFT処理データを取得でき、DAQ37又は演算部38で、4回毎平均とすると、1秒間に7500点となり、上記7055点以上取得でき、ワーク21の高速回転となる両面研磨機におけるワーク21の厚さ測定(形状測定)に十分対処できる。このように本実施の形態では、ワーク21の研磨中に、DAQ37内で高速、かつ多点のデータが取得できるので、ワーク21の研磨を高精度に行える。
【0076】
レーザ光源70の波長掃引20kHz(50μs/掃引)の場合、1秒間に約20000回のデータを取得でき、DAQ37又は演算部38で、2回毎平均とすると、1秒間に10000点となり、ワーク21の高速回転となる両面研磨機におけるワーク21の厚さ測定(形状測定)に十分対処できる。
なお、演算部38にて窓関数+FFT処理をすることも可能であるが、演算部38は研磨装置全体の制御も絡むため、データの処理速度が遅く、1秒間に45点程度しか取得できないため、満足するデータ点数を取得することができない。
この点本実施の形態では、上記のように、DAQ37内で、FPGAによりプログラミングして、別途制御部78により高速で処理できる。
【0077】
なお、加工対象となるワークには様々な種類のものが存在するため、測定するワーク21の光透過率も、加工するワーク21の種類によって異なる場合がある。これに伴い、ワーク21からの干渉光信号の強度は、測定するワーク21の種類によって変化する。具体的には,光透過率が低いと、干渉光信号の強度が小さくなる傾向がある。
そこで、干渉光信号を検出する検出器(フォトダイオード)36の増幅率を、測定するワーク21の種類や透過率に応じて適正な増幅率に切り替え、または調整する機能を設けると良い。増幅率の調整、切り替えは制御器(演算部)38によって行うのが良い。
これにより、光透過率の異なる様々な種類のワークに対し、正確に厚さの測定ができると共に、測定対象が前記干渉光信号の強度が小さいワークであっても、ノイズ等の影響を受けずに、正確に厚さを測定することが可能となる。
【0078】
図22は、厚さ測定30のさらに他の実施の形態を示す全体システムのブロック図である。
図3における部材と同一の部材は同一の符号をもって示し、その説明は省略する。
本実施の形態では、参照用ウェーハ(ワーク)による光源監視用回路80を追加している。
この光源監視用回路80は、レーザ光源70から放出され、分光されたレーザ光がサーキュレータ82およびプローブ84から参照用ウェーハ86に照射されるようになっている。サーキュレータ82およびプローブ84が第2の光学系を構成する。参照用ウェーハ86の表面および裏面で反射されたレーザ光(干渉光)は、プローブ84およびサーキュレータ82を経てフォトダイオード88(第2の検出器)で検出され、さらにDAQ37でデジタル信号に変換され、演算部38に入力されるようになっている。
【0079】
演算部38では、入力されたデジタル信号値から、フォトダイオード88から出力される電圧の平均値(設定時間内における平均値)を算出する。レーザ光源70から放出されるレーザ光の光量の増減に比例してフォトダイオード88から出力される電圧値が変動する。上記電圧値の変動を適宜監視し、上記電圧の平均値があらかじめ定めてある閾値よりも低下した場合に異常と判断され、警報が発せられるようになっている。
【0080】
あるいは、光源監視用回路80は、レーザ光源70の掃引波長精度の監視用としても利用できる。参照用ウェーハ86の厚さ(およびその分布)は一定であるから、測定した厚さにずれが生じた場合、レーザ光源70の掃引波長精度が変動したと判断でき、その変動要因把握の目安となりうる。掃引波長精度は、取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数(例えば1000回)測定した平均値、P-P値、偏差値等で把握しうる。
なお、監視のタイミングはプログラムで設定が可能である。例えば、ワーク厚み測定の直前などとすることができる。
【0081】
なお、光源監視用回路としてMZI(マッハツェンダ)干渉計72を兼用することもできる。
この場合、MZI(マッハツェンダ)干渉計72が第2の検出器となる。MZI(マッハツェンダ)干渉計72で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視するのである。掃引波長精度の変化が許容値を超えた場合に警報を発するようにする。
【0082】
以上の各実施の形態では、ワークの両面研磨装置におけるワーク厚さ測定部を例として説明したが、研磨ヘッドの下面側にワークを保持して、定盤の研磨パッドとの間でワークの下面側を研磨する片面研磨装置(図示せず)におけるワーク厚さ測定部にも本発明を適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
10 両面研磨装置
12 下定盤
14 上定盤
15 インターナルギア
16 太陽ギア
17、18 研磨パッド
19 スラリー層
20 キャリア
21 ワーク
22 透孔
23 吊り支柱
24 円盤
25 ロッド
30 厚さ測定部
31 レーザ光源
32 サーキュレータ
33 ロータリージョイント
34 プローブ
35 測定孔
35a スラリー供給孔
36 フォトダイオード
37 DAQ
38 厚さ演算部
39 センサーアンプ
40 キャリア検出センサ
41 高周波コイル(センサ部)
42 リード線
43 支持体
50 制御部
51 位置演算部
52 位置補正部
53 記憶部
60 上キャップ
61 下キャップ
64 連結シャフト
65 透明板
66 保護板
68 Oリング
70 レーザ光源
72 MZI干渉計
73 MZI光学系
74 差分式フォトディテクタ
76 FFT処理器
78 制御部
80 光源監視用回路
82 サーキュレータ
84 プローブ
86 参照用ウェーハ
88 フォトダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22