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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】支持具及びこれを用いた打継工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20241113BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
E04G21/10 A
E04G21/02 103A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021014168
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117590
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】306029718
【氏名又は名称】株式会社エアーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】金井 大明
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027229(JP,A)
【文献】特開2007-224572(JP,A)
【文献】特開平11-182045(JP,A)
【文献】実開平04-092950(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/00-21/10
21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部材に貫通されレベル出し部材を保持する保持部材の基部を、支柱部材に結合された二つの結合部材で挟み込むことにより、保持部材を支柱部材に連結固定した状態にすることができ、かつ、支柱部材に対する二つの結合部材の結合位置を変えることにより、支柱部材に連結固定する保持部材の位置を変更可能である天端レベル調整用治具を支持するための支持具であって、
切欠き溝を挟んで対向する二つの対向片の一方に、前記切欠き溝に進退可能なボルトをねじ込むねじ孔を設け、
二つの対向片は、その長手方向に延びる縁どうしを互いに平行な一対の側面板によって連結してあり、前記一対の側面板は、前記切欠き溝を形成するようにそれぞれ正面視略コの字状をし、
前記天端レベル調整用治具の支柱部材の雄ねじ部が挿通し、挿通する方向が相互に異なる二つの挿通部を設け
前記二つの挿通部の一方は、前記二つの対向片にそれぞれ設けた貫通孔によって構成し、他方は、前記一対の側面板に設けた貫通孔によって構成してあり、
当該支持具による支柱部材の支持は、支柱部材に挿通された挿通部を、支柱部材に連結された結合部材によって挟み込み、支柱部材が挿通部に連結固定された状態となるようにすることによって行えるようにした支持具。
【請求項2】
前記切欠き溝において、前記二つの対向片のうちの前記ボルトをねじ込むねじ孔が設けられていない方の対向片側の縁から、外方に向かって受け片が突出している請求項1に記載の支持具。
【請求項3】
コンクリートを打ち継ごうとする境界に沿って間隔をあけて複数設置された請求項1または2に記載の支持具によってそれぞれ請求項1に記載の天端レベル調整用治具を支持し、複数の天端レベル調整用治具を用いてレベル出し部材を保持し、前記レベル出し部材を目安にしてコンクリートを打設する打継工法であって、
前記支持具の設置は、コンクリートを打設するエリアにおいて固定配置された鉄筋、スタッド等の棒状部材を前記切欠き溝内に受け入れ、前記ボルトを該棒状部材に当接させることによって行う打継工法。
【請求項4】
前記天端レベル調整用治具の保持部材は、支柱部材に貫通される貫通孔が形成された板状の基部と、この基部の一端側から二股に分かれて延び、レベル出し部材を保持するための保持部とを有し、
前記保持部は、間隔調整用ねじがねじ結合する雌ねじ部が形成されたねじ支持片と、この雌ねじ部にねじ結合した間隔調整用ねじの先端に対向する位置に配された受圧片とを有し、
前記保持部内に挿入したレベル出し部材に強く当接するように間隔調整用ねじを締め付ければ、保持部によってレベル出し部材を保持することができるように構成してある請求項3に記載の打継工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリートを打ち継いで床スラブ等を構築する際の打設コンクリートの天端レベルを調整するための治具を支持するのに用いて好適な支持具と、この支持具を用いた打継工法とに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大きい床スラブ等を構築する場合に採用される工法として、一日あたりに打設可能なコンクリート量その他の条件に基づき、コンクリートを打設する空間を複数の区間に分け、コンクリートの打設を区間単位で順次行う打継工法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-1662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記打継工法によって打設したコンクリートの打継ライン(隣接する区間の境界)に大きな不陸(高低差)が生じると、綺麗な仕上がりにならない。こうした問題に鑑み、全区間にわたって打設コンクリートの天端レベルの調整を正確かつ簡便に行えるようにすることが求められている。
【0005】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、床スラブ等を構築するための打設コンクリートの天端レベルの調整の容易化に資する支持具及びこれを用いた打継工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る支持具は、支柱部材に貫通されレベル出し部材を保持する保持部材の基部を、支柱部材に結合された二つの結合部材で挟み込むことにより、保持部材を支柱部材に連結固定した状態にすることができ、かつ、支柱部材に対する二つの結合部材の結合位置を変えることにより、支柱部材に連結固定する保持部材の位置を変更可能である天端レベル調整用治具を支持するための支持具であって、切欠き溝を挟んで対向する二つの対向片の一方に、前記切欠き溝に進退可能なボルトをねじ込むねじ孔を設け、二つの対向片は、その長手方向に延びる縁どうしを互いに平行な一対の側面板によって連結してあり、前記一対の側面板は、前記切欠き溝を形成するようにそれぞれ正面視略コの字状をし、前記天端レベル調整用治具の支柱部材の雄ねじ部が挿通し、挿通する方向が相互に異なる二つの挿通部を設け、前記二つの挿通部の一方は、前記二つの対向片にそれぞれ設けた貫通孔によって構成し、他方は、前記一対の側面板に設けた貫通孔によって構成してあり、当該支持具による支柱部材の支持は、支柱部材に挿通された挿通部を、支柱部材に連結された結合部材によって挟み込み、支柱部材が挿通部に連結固定された状態となるようにすることによって行えるようにした(請求項1)。
【0007】
上記支持具の前記切欠き溝において、前記二つの対向片のうちの前記ボルトをねじ込むねじ孔が設けられていない方の対向片側の縁から、外方に向かって受け片が突出していてもよい(請求項2)。
【0008】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る打継工法は、コンクリートを打ち継ごうとする境界に沿って間隔をあけて複数設置された請求項1または2に記載の支持具によってそれぞれ請求項1に記載の天端レベル調整用治具を支持し、複数の天端レベル調整用治具を用いてレベル出し部材を保持し、前記レベル出し部材を目安にしてコンクリートを打設する打継工法であって、前記支持具の設置は、コンクリートを打設するエリアにおいて固定配置された鉄筋、スタッド等の棒状部材を前記切欠き溝内に受け入れ、前記ボルトを該棒状部材に当接させることによって行う(請求項3)。
打継工法において、前記天端レベル調整用治具の保持部材は、支柱部材に貫通される貫通孔が形成された板状の基部と、この基部の一端側から二股に分かれて延び、レベル出し部材を保持するための保持部とを有し、前記保持部は、間隔調整用ねじがねじ結合する雌ねじ部が形成されたねじ支持片と、この雌ねじ部にねじ結合した間隔調整用ねじの先端に対向する位置に配された受圧片とを有し、前記保持部内に挿入したレベル出し部材に強く当接するように間隔調整用ねじを締め付ければ、保持部によってレベル出し部材を保持することができるように構成してあってもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、床スラブ等を構築するための打設コンクリートの天端レベルの調整の容易化に資する支持具及びこれを用いた打継工法が得られる。
【0010】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の支持具では、これからコンクリートを打設しようとするエリアにおいて通常固定配置された状態で存在する鉄筋、スタッド等の棒状部材を切欠き溝内に受け入れ、ボルトを棒状部材に当接させれば、該支持具を棒状部材に取り付けることができ、また、挿通部に天端レベル調整用治具の支柱部材の雄ねじ部を挿通させ、この雄ねじ部に適宜ナット等の結合部材を結合させれば、天端レベル調整用治具を支持具によって支持することができるのであり、これにより、天端レベル調整用治具を容易に設置することができ、ひいては、床スラブ等を構築するための打設コンクリートの天端レベルの調整の容易化を図ることが可能となる。
【0011】
請求項1に係る発明の支持具では、例えば一種類の支持具で、該支持具を取り付ける棒状部材が水平方向に延びる鉄筋である場合と、鉛直方向に延びるスタッドである場合との両方に対応することが可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明の打継工法では、上記支持具を用いて天端レベル調整用治具を簡単に支持することができ、この天端レベル調整用治具がレベル出し部材の位置調整を容易とするものであれば、床スラブ等を構築するための打設コンクリートの天端レベルや打継ラインの調整を正確かつ簡便に行うことができ、ひいてはその仕上がりを綺麗にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る支持具を用いた打継工法の施工例を概略的に示す斜視図、(B)は本発明の変形例に係る打継工法の施工例を概略的に示す斜視図である。
図2】(A)~(D)は、図1(A)に示す天端レベル調整用治具の構成を概略的に示す説明図である。
図3】(A)~(D)は、図1(A)に示す天端レベル調整用治具の使用方法を概略的に示す説明図である。
図4】(A)~(B)及び(C)~(F)は、図1(B)に示す天端レベル調整用治具の構成及び使用方法を概略的に示す説明図である。
図5】(A)及び(B)は、前記支持具の斜視図及び正面図である。
図6】前記支持具の使用方法の一例を示す斜視図である。
図7】前記支持具の使用方法の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0015】
図1(A)に示す打継工法では、例えば図外の鉄骨梁の上に底部型枠としての断面波型状のデッキプレート1(図1(A)では簡略的に示してある)を敷き並べ、このデッキプレート1の上にコンクリートを打設して床スラブを構築するにあたり、コンクリートの打設空間を複数の区間に分け、区間単位でコンクリートの打設を順次行う。
【0016】
そして、区間単位でのコンクリート打設を順次行うために、これからコンクリートを打設しようとする対象区間と、まだコンクリートを打設しない非対象区間との境界(打継ライン)に、複数の打継枠材2を間隔をあけずに並べて配置して型枠として用いる。図1(A)の例では、図面の手前側から右奥側に向かって一列に並ぶ打継枠材2の左側にある第1区間S1が対象区間、右側にある第2区間S2が非対象区間である。
【0017】
打継枠材2は、角柱状の弾性体(例えばウレタン素材等の多孔性弾性体)を有底箱型状(袋状)の包容体(例えば厚さ0.1mm程度のポリエチレン素材等の表面平滑化された樹脂フィルム)に収容して構成してある。
【0018】
ここで、第1区間S1に打設したコンクリートの硬化後、第2区間S2にコンクリートを打設して打ち継ぎを行うには、各打継枠材2を除去する必要があるが、この除去の際、第1区間S1で硬化したコンクリートが打継枠材2の外面に付着した状態になっている。そして、この付着に起因して除去後の打継枠材2の外面等に破損が生じていると、その再利用に支障を来す恐れがある。そこで、打継枠材2の外面を構成する包容体をコンクリートから容易に剥離し得る素材で構成するか、打継枠材2の外面に適宜の剥離剤を塗布等することにより、打継枠材2をこれに付着したコンクリートから容易に剥離できるようにしてあるのが好ましい。
【0019】
上で述べたように、第1区間S1と第2区間S2との境界に複数の打継枠材2を並べる際、その後に第1区間S1に打設したコンクリートの側圧を受けて打継枠材2の並びが乱れないように、本例では、コンクリートの打設空間(対象区間及び非対象区間)全体にわたって平面視網目状に配される鉄筋3に各打継枠材2を適宜に当接させて配置する。そのため、打継枠材2の配置に特別な工具等は不要である。
【0020】
第1区間S1と第2区間S2との境界に複数の打継枠材2を並べた状態で第1区間S1にコンクリートを打設する際、打設コンクリートの天端レベルの調整を正確かつ簡便に行えるようにするために、本例では天端レベル調整用治具(以下、「治具」と略称する)4を用いる。
【0021】
治具4は、図2(B)に示すように、支柱部材5と、支柱部材5に貫通される保持部材6と、支柱部材5に結合される第1結合部材7(図2(A)も参照)及び第2結合部材8とを具備する。
【0022】
ここで、支柱部材5は全ねじボルトであり、第1結合部材7及び第2結合部材8はこの全ねじボルトにねじ結合するナットである。
【0023】
一方、保持部材6は、支柱部材5に貫通される貫通孔が形成された板状の基部9と、この基部9の一端側から二股に分かれて延び、図2(D)等に示すレベル出し部材(本例では山形鋼)10を保持するための保持部11とを有する。
【0024】
保持部11は、間隔調整用ねじ12(図2(D)参照)がねじ結合する雌ねじ部13が形成されたねじ支持片14と、雌ねじ部13にねじ結合した間隔調整用ねじ12の先端に対向する位置に配された受圧片15とを有する。
【0025】
斯かる治具4では、図2(B)に示すように、支柱部材5に貫通された保持部材6の基部9を、支柱部材5に結合された二つの結合部材7,8で挟み込むことにより、保持部材6を支柱部材5に連結固定した状態にすることができる。
【0026】
そして、図2(D)に示すように、保持部11内に挿入したレベル出し部材10に強く当接するように間隔調整用ねじ12を締め付ければ、保持部11によってレベル出し部材10を保持することができる。また、保持部11内に挿入したレベル出し部材10に対して間隔調整用ねじ12が軽く当接する状態では、保持部11に対するレベル出し部材10の挿入深さを調整可能であり、つまりは保持部11によって保持するレベル出し部材10の位置を支柱部材5の軸方向に直交する方向(基部9に対して近接離間する方向)に調整可能である。
【0027】
なお、ねじ支持片14の雌ねじ部13は、保持部11により保持するレベル出し部材10の調整幅(基部9に対して近接離間する方向の調整幅)を確保する観点から、ねじ支持片14において基部9からある程度離間した位置に設ける必要があり、ねじ支持片14における先端寄り(基部9と反対寄り)の位置に設けるのが好ましい。
【0028】
さらに、上述のように、図2(B)では、保持部材6が支柱部材5に連結固定されているが、基部9が支柱部材5に貫通された状態を維持しながら、基部9から二つの結合部材7,8を離間させ、基部9が二つの結合部材7,8で挟み込まれていない状態にすると、保持部材6は、支柱部材5に対して貫通方向(支柱部材5の軸方向)に移動可能となる。また、言うまでもなく、支柱部材5に対する二つの結合部材7,8の結合位置はそれぞれ変更可能であり、全ねじボルトである支柱部材5の任意の位置に二つの結合部材7,8をそれぞれ停止させることができる。従って、支柱部材5に対する二つの結合部材7,8の結合位置を変えれば、この支柱部材5に連結固定する保持部材6の位置を変更可能であり、これはつまり、保持部材6によって保持するレベル出し部材10を支柱部材5の軸方向に位置調整することができる、ということである。
【0029】
以下、この治具4の使い方の説明を兼ねて、治具4を用いた本例の打継工法について説明する。本例の打継工法は、コンクリートの打設空間を複数の区間に分け、区間単位でのコンクリート打設を順次行うために、以下の工程(1)~(6)を一回または複数回(区間の数より一つ少ない回数だけ)繰り返して実施するものである。
【0030】
(1)まず、図1(A)に示す第1区間S1(対象区間)と第2区間S2(非対象区間)との境界(打継ライン)に沿って間隔をあけて複数の支柱部材5を立設(植設)する。この立設は、例えば支柱部材5を支持具20(詳細は後述する)によって支持することにより行える。
【0031】
(2)続いて、図2(A)に示すように、支柱部材5に第1結合部材7をねじ結合し、その後、図2(B)に示すように、保持部材6の基部9の貫通孔に支柱部材5を通し、第1結合部材7の上に保持部材6を載せ、さらにその上側から第2結合部材8を支柱部材5にねじ結合する。そして、二つの結合部材7,8の位置を調整し、保持部材6の高さ位置が目標とする打設コンクリートの天端レベルにおよそ合うように仮調整する。
【0032】
(3)このようにして各治具4の仮調整を行った状態で、図2(C)及び(D)に示すように、各治具4の保持部11にレベル出し部材10を保持させる。後工程でレベル出し部材10の正確な位置調整(上下及び水平方向の位置調整)を行うので、この段階でのレベル出し部材10の位置決めは厳密にしなくてよい。
【0033】
(4)図1(A)に示す第1区間S1と第2区間S2との境界(打継ライン)に沿って間隔をあけずに複数の打継枠材2をデッキプレート1上に載置する(図3(A)~(D)も参照)。このとき、一列に並ぶ各打継枠材2の第2区間S2側の側面を、この列と平行に延びる鉄筋3に当接させ、後工程で第1区間S1に打設したコンクリートの側圧を受けた各打継枠材2が第2区間S2側へ移動しないようにする。
【0034】
なお、各治具4は、隣り合う打継枠材2によって挟み込まれる位置に立設してあり、治具4を挟み込む二つの打継枠材2はそれぞれ治具4に密着するように弾性変形するので、治具4を挟み込む二つの打継枠材2の間に大きな隙間が形成されることは防止される。
【0035】
(5)各治具4で保持したレベル出し部材10のレベル(高さ)と前後方向(第1区間S1を前、第2区間S2を後ろとした場合の前後方向)の位置の確認・調整を行う。
【0036】
ここで、レベル出し部材10の上下方向の位置調整(最終調整)は、支柱部材5に対する二つの結合部材7,8の結合位置を調整することによって行える。また、レベル出し部材10の前後方向の位置調整は、保持部11内に挿入したレベル出し部材10に対して間隔調整用ねじ12が軽く当接する状態にし、この状態で最終調整した後、間隔調整用ねじ12を締め付けてレベル出し部材10に強く当接した状態となるようにすることによって行える。
【0037】
(6)レベル出し部材10を目安(基準)にして第1区間S1にコンクリートを打設し、適宜の養生期間が経過した後、再利用のために、打継枠材2を除去するとともに、レベル出し部材10を各治具4から取り外し、各治具4とこれを支持する支持具20も回収する。
【0038】
以上の工程(1)~(6)を1回または複数回繰り返して実施するのであり、最後の1区間へのコンクリートの打設の際、この最後の区間は通常の一般的な型枠とこの区間に隣接する区間に既に打設されたコンクリートとで囲まれているので、打継枠材2の設置は不要であり、また、最後の区間へのコンクリートの打設は、隣接する区間のコンクリートのレベルに合わせて行えばよいので、治具4の設置も不要である。
【0039】
以上説明した本例の打継工法では、治具4を用いることにより、レベル出し部材10の上下方向及び前後方向の位置調整が容易となるので、床スラブ等を構築するための打設コンクリートの天端レベルや打継ラインの調整を正確かつ簡便に行うことができ、ひいてはその仕上がりを綺麗にすることができる。
【0040】
そして、本例では、図1(A)に示すように、治具4(の支柱部材5)を支持具20によって起立状態に支持する。この支持具20は、図5(A)に示すように、切欠き溝21を挟んで対向する互いに平行な二つの対向片22,23の一方に、切欠き溝21に進退可能なボルト24をねじ込むねじ孔25を有する。
【0041】
図5(A)に示すように、二つの対向片22,23は、その前後縁(長手方向に延びる縁)どうしを互いに平行な一対の側面板26,27によって連結してあり、側面板26,27は、切欠き溝21を形成するようにそれぞれが正面視略コの字状をしている。そして、切欠き溝21において対向片23側の縁から、外方に向かって受け片28、29が突出している。
【0042】
さらに、図5(A)に示すように、支持具20には、治具4の支柱部材5の雄ねじ部(本例では支柱部材5の一端から他端までの全体が雄ねじ部になっている)が挿通する二つ(複数の一例)の挿通部30、31を設けてある。
【0043】
本例では、二つの挿通部30、31につき、支柱部材5が挿通する方向が相互に異なる。すなわち、図5(A)に示すように、挿通部30は、支柱部材5が支持具20をその長手方向に貫くことを可能とするように設けてあり、具体的には、二つの対向片22,23にそれぞれ設けた貫通孔30a、30bによって構成してある。また、挿通部31は、支柱部材5が支持具20をその厚み方向に貫くことを可能とするように設けてあり、具体的には、一対の側面板26,27に設けた貫通孔31a、31bによって構成してある。
【0044】
そして、図1(A)、図6に示すように、例えば水平方向に延びる鉄筋(コンクリートを打設するエリアにおいて固定配置された棒状部材の一例)3を利用して治具4を固定する場合は、この鉄筋3に支持具20を取り付ければよく、具体的には、図6に示すように、鉄筋3を切欠き溝21内に受け入れ、その状態でボルト24を切欠き溝21内に進入させ、鉄筋3に強く当接(係止)させればよい。このとき、図5(B)に示すように、支持具20が容易に動かないようにするため(安定性を高めるため)に、ボルト24の先端と切欠き溝21の縁とを鉄筋3の外面に密着させる。
【0045】
一方、図7に示すように、例えばデッキプレート1の上面に溶接され、鉛直方向に延びるスタッド(コンクリートを打設するエリアにおいて固定配置された棒状部材の他の例)32(図1(A)も参照)を利用して治具4を固定する場合は、このスタッド32に支持具20を取り付ければよく、具体的には、図7に示すように、スタッド32を切欠き溝21内に受け入れ、その状態でボルト24を切欠き溝21内に進入させ、スタッド32に強く当接(係止)させればよい。
【0046】
図6の例、図7の例のいずれにおいても、鉄筋3あるいはスタッド32にボルト24を当接させる際、図5(B)に示すように、支持具20が容易に動かないようにするため(安定性を高めるため)に、ボルト24の先端と切欠き溝21の縁とを鉄筋3あるいはスタッド32の外面に密着させ、かつ、ボルト24の先端と切欠き溝21との隙間から鉄筋3あるいはスタッド32が抜けないようにしてあるのが好ましい。
【0047】
また、図6の例、図7の例のいずれにおいても、支持具20による支柱部材5の支持は、支柱部材5に挿通された挿通部30あるいは31を、支柱部材5に連結されたナット等の結合部材33,34によって挟み込み、支柱部材5が挿通部30あるいは31に連結固定された状態となるようにすることによって行える。なお、結合部材33,34には、第1、第2結合部材7,8と同様のものを用いることができる。
【0048】
以上のように説明した支持具20を用いる本例では、これからコンクリートを打設しようとするエリアにおいて通常固定配置された状態で存在する鉄筋3、スタッド32等の棒状部材を切欠き溝21内に受け入れ、ボルト24を棒状部材に当接させれば、支持具20を棒状部材に取り付けることができ、また、挿通部30,31に治具4の支柱部材5を挿通させ、この支柱部材5に適宜ナット等の結合部材を結合させれば、治具4を支持具20によって支持することができるのであり、これにより、治具4を容易に設置することができ、ひいては、床スラブ等を構築するための打設コンクリートの天端レベルの調整の容易化を図ることが可能となる。
【0049】
しかも、上述のように、挿通部30、31につき、これを挿通する支柱部材5の向きが相互に異なる(90度異なる)ようにしてあるので、一種類の支持具20で、支持具20を取り付ける棒状部材が水平方向に延びる鉄筋3である場合と、鉛直方向に延びるスタッド32である場合との両方に対応することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0051】
支柱部材5は、全ねじボルトに限らず、例えば部分的にねじ山を有するボルトでもよい。
【0052】
図1(A)に示す例では、支柱部材5を打継枠材2の列内(打継枠材2によって挟まれる位置)に立設してあるが、これに限らず、支柱部材5を打継枠材2の列外(第1区画S1側または第2区画S2側)に立設してもよい。例えば、支柱部材5を打継枠材2よりも第2区画S2側に設ける場合、レベル出し部材10を打継枠材2よりも第1区画S1側の位置で保持できるように保持部材6を長く延ばせばよい。
【0053】
図2(B)の例では、ねじ支持片14が受圧片15の上側に位置するように保持部材6を支柱部材5に取り付けてあるが、これに限らず、ねじ支持片14が受圧片15の下側に位置するように保持部材6を支柱部材5に取り付けてもよい。ただし、間隔調整用ねじ12の締め付け等の作業は、ねじ支持片14が上側に位置している方が行い易いという利点がある。
【0054】
図2(B)の例では、保持部材6の基部9と受圧片15とを一枚の板を構成するように連続して繋ぎ、ねじ支持片14をその板から上方に突出する状態で設けてあるが、これに限らず、例えば、基部9とねじ支持片14とを一枚の板を構成するように連続して繋ぎ、受圧片15をその板から下方に突出する状態で設けてもよい。
【0055】
上記実施の形態では、レベル出し部材10が山形鋼(アングル)である例を示したが、これに限らず、例えば図1(B)に示すように、レベル出し部材10をフラットバー(平鋼)としてもよい。そして、この場合、治具4の代わりに治具(天端レベル調整用治具)16を用いることが考えられる。
【0056】
治具16は、図4(B)に示すように、治具4の支柱部材5に相当する部位である第1支柱部17aと、この第1支柱部17aに直交する方向に延びる第2支柱部17bとを有し、全体としてL型棒状に形成された支柱部材17と、支柱部材17(第1支柱部17a)に貫通される保持部材6と、支柱部材17(第1支柱部17a)に結合される第1結合部材7(図4(A)も参照)及び第2結合部材8とを具備する。
【0057】
すなわち、治具16は、治具4と比べ、支柱部材5が支柱部材17になっている点で相違するが、他の構成部材6,7,8を用いる点では共通する。
【0058】
そして、支持具20によりデッキプレート1上に立設した状態の治具4は、保持部材6で保持したレベル出し部材10の上下方向及び前後方向の位置調整を可能とし、この点は治具16も同様である。しかし、図2(B)と図4(B)とを対比すれば明らかなように、治具16において支柱部材5に相当する部位である第1支柱部17aの姿勢(横向き)は、治具4における支柱部材5の姿勢(縦向き)から90度回転したものとなっており、これに伴い、レベル出し部材10の上下方向及び前後方向の位置調整を担う部材が両者4、16で異なっている。
【0059】
すなわち、治具4では、保持部11に対するレベル出し部材10の挿入深さを調整することにより、レベル出し部材10の前後方向の位置調整を行えたが、治具16では、上下方向の位置調整を行えることになる。また、治具4では、支柱部材5に対する二つの結合部材7,8の結合位置を調整することにより、レベル出し部材10の上下方向の位置調整を行えたが、治具16では、支柱部材5に相当する部位である第1支柱部17aに対する二つの結合部材7,8の結合位置を調整することにより、レベル出し部材10の前後方向の位置調整を行えることになる。
【0060】
斯かる治具16は、図1(B)及び図4(C)~(F)に示すように用いられるのであり、その使用方法は治具4の使用方法と概ね同一である。
【0061】
上記実施の形態では、レベル出し部材10の上下方向の位置調整を治具4のみによって行っているが、支持具20による支柱部材5の支持高さの調整は、レベル出し部材10の上下方向の位置調整にも繋がるので、レベル出し部材10の上下方向の位置調整につき、治具4による上下方向の位置調整にかえて、あるいはこれに加えて、支持具20による支柱部材5の支持高さの調整によって行うようにしてもよい。
【0062】
また、支柱部材5を頭付きボルトとしてもよく、この場合、例えば図5(B)に示す結合部材34をなくし、この結合部材34の位置に結合部材34のかわりに頭を設けるようにすればよい。
【0063】
なお、本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1 デッキプレート
2 打継枠材
3 鉄筋
4 天端レベル調整用治具
5 支柱部材
6 保持部材
7 第1結合部材
8 第2結合部材
9 基部
10 レベル出し部材
11 保持部
12 間隔調整用ねじ
13 雌ねじ部
14 ねじ支持片
15 受圧片
16 天端レベル調整用治具
17 支柱部材
17a 第1支柱部
17b 第2支柱部
20 支持具
21 切欠き溝
22 対向片
23 対向片
24 ボルト
25 ねじ孔
26 側面板
27 側面板
28 受け片
29 受け片
30 挿通部
30a、30b 貫通孔
31 挿通部
31a、31b 貫通孔
32 スタッド
33 結合部材
34 結合部材
S1 第1区間
S2 第2区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7