(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】被験者の睡眠状態を検出するための感知ユニットを備えたシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241113BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/11 300
(21)【出願番号】P 2021559451
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2020058822
(87)【国際公開番号】W WO2020193778
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521437655
【氏名又は名称】サンライズ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティノット、ピエール
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0128624(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108451503(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265801(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0000563(US,A1)
【文献】特表2007-502670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16-5/18
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部及び下顎骨を有する被験者の睡眠状態を検出するためのシステムであって、
該システムは、前記被験者の下顎骨に取り付けるために構成された感知ユニット、データ分析ユニット及びデータリンクを含み;
ここで、前記感知ユニットは、一定期間中に前記被験者の下顎骨の回転運動を測定するように構成されたジャイロスコープ、及び一定期間中に前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動き及び/または位置を示す加速度を測定するために構成された加速度計を含み;
該データリンクは、前記ジャイロスコープから測定された回転運動のデータ及び前記加速度計から測定された加速度のデータを前記データ分析ユニットに送信するために構成され;
ここで、該データ分析ユニットは、N個の下顎骨運動クラスを保管するように構成されたメモリユニットを含み、ここで、Nは1より大きい整数であり、前記N個の下顎骨運動クラスのうちの少なくとも1つは、前記被験者が覚醒していることを示し、ここで、前記N個の下顎骨運動クラスの複数は、前記被験者が睡眠中であることを示し;
ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットを含み、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、及び/または振幅を示し、かつ/または各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、加速度値の第jセットを含み、各加速度値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨の動き及び/または頭部の動きの少なくとも1つを示し;
ここで、該データ分析ユニットは、同じ期間中に測定された回転運動のデータ及び測定された加速度のデータをサンプリングし、それによって、サンプリングされた回転運動及び加速度のデータを取得するために構成されたサンプリング要素を含み;
ここで、該データ分析ユニットは、
前記サンプリングされた回転運動及び加速度のデータから複数の測定された回転値及び加速度値を導出し;
前記測定された回転値及び加速度値を N個の下顎骨運動クラスと照合し;そして、
前記被験者が覚醒しているか、または睡眠中であるかを示す睡眠状態を検出するために構成される、
システム。
【請求項2】
磁力計をさらに含む、請求項1に記載のシステムであって、該磁力計は、磁場データを測定するように適合され、磁場データの変動は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを示し、
前記データリンクは、前記加速度計から測定された磁場データを前記データ分析ユニットに送信するためにさらに構成され;
ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、磁場データの値の第jセットを含み、各磁場データの値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨または頭部の動きの少なくとも1つの速度または速度変化を示し;
ここで、前記データ分析ユニットは、一定期間中に測定された磁場データをサンプリングし、それによって、サンプリングされた磁場データを取得するために構成されたサンプリング要素を含み;
ここで、前記データ分析ユニットは、前記サンプリングされた磁場データから複数の測定された磁場値を導出するように構成され;かつ、
ここで、前記データ分析ユニットは、さらに、前記測定された磁場値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するために構成される、
システム。
【請求項3】
前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、頭部位置の変化を示し;前記データ分析ユニットが、前記回転運動及び加速度のデータに基づいて、前記被験者の頭部の動きを識別し、前記被験者の下顎骨の動きから頭部の動きを識別するためにさらに構成される、請求項1または2のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項4】
前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数が、前記被験者の呼吸を示す振動数からなる所定の振動数範囲によって特徴付けられ、該少なくとも1つの所定の振動数範囲が、0.15 Hz~0.60 Hzの振動数からなる、請求項1~
3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がN1の睡眠状態であることを示し、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がREMの睡眠状態であることを示し、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がN2の睡眠状態であることを示し、かつ/または前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がN3の睡眠状態であることを示す、請求項1~
4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記データ分析ユニットが、
下顎骨運動のピーク間振幅及び/または振動数の正規化された平均を測定し;
下顎骨運動のピーク間振幅及び/または振動数の変動が、下顎骨運動のピーク間振幅及び/または振動数の正規化された平均と比較して増加した場合、REM睡眠状態を検出し;
および/または
下顎骨運動のピーク間及び/または振動数の変動が、下顎骨運動のピーク間振幅及び/または振動数の正規化された平均と比較して減少した場合、N3睡眠状態を検出する
ために構成された、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記データ分析ユニットが、前記被験者が睡眠中であることを示す睡眠状態中の呼吸障害を検出するために構成され、前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数が、閉塞性無呼吸、混合型無呼吸、閉塞性低呼吸、呼吸努力関連覚醒、中枢性無呼吸、及び/または中枢性低呼吸を示す、請求項1~
6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記データ分析ユニットが、
一定期間の下顎骨位置、頭部の位置、下顎骨運動のピーク間振幅、下顎骨運動のピーク間振幅の分散、下顎骨運動の頻度、及び/または下顎骨運動の頻度の分散の変化を分析観察し;そして
下顎骨運動のピーク間振幅及び/または下顎骨運動の振動数の変化が観察される場合、呼吸障害事象の存在を検出する
ために構成された、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記N個の下顎骨運動クラスの1つが、歯ぎしりを示し、ここで、前記測定された回転運動のデータが、少なくとも1 mmの下顎骨運動振幅、前記動きが位相性である場合、少なくとも3回の呼吸サイクル中に0.5~5 Hzの範囲に確立された振動数で、または少なくとも2秒間持続的かつ強直的に1 mmを超える下顎骨運動振幅を示す、請求項1~
8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
頭部及び下顎骨を有する被験者の睡眠状態を検出するための方法であって、
ジャイロスコープを用いて前記被験者の下顎骨の回転運動を測定し、加速度計を用いて一定期間中に前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動き及び/または位置を示す加速度を測定するステップ、ここで、 前記ジャイロスコープ及び加速度計は、前記被験者の下顎骨に配置され;
データ分析ユニットで、前記ジャイロスコープから測定された回転運動のデータ及び前記加速度計から測定された加速度のデータを、データリンクを介して受信するステップ;
該データ分析ユニットに含まれるメモリユニットで、N個の下顎骨運動クラスを保管するステップ、ここで、Nは1より大きい整数であり、該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは前記被験者が覚醒していることを示し、ここで、前記N個の下顎骨運動クラスの複数は、前記被験者が睡眠中であることを示し;
ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットを含み、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、または振幅を示し、及び/または各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、加速度値の第jセットを含み、各加速度値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨の動き及び/または頭部の動きの少なくとも1つを示し;
該データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素を用いて、同じ期間中の回転運動のデータ及び測定された加速度のデータをサンプリングし、それにより、サンプリングされた回転運動及び加速度のデータを取得するステップ;
該データ分析ユニットを用いて、前記サンプリングされた回転運動及び加速度のデータから複数の測定された回転及び加速度の値を導出するステップ;
該データ分析ユニットを用いて、前記測定された回転及び加速度の値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するステップ;及び
前記被験者が覚醒しているか、または睡眠中であるかを示す睡眠状態を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1
0に記載の方法であって、
磁力計を用いて、磁場データを測定するステップ(該磁場データの変動は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを示す);
前記データリンクを用いて、該磁力計から前記測定された磁場データを前記データ分析ユニットに送信するステップ;
ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、磁場データの値の第jセットを含み;各磁場データの値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨または頭部の動きの少なくとも1つの速度または速度変化を示し;
前記データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素を用いて、一定期間中に測定された磁場データをサンプリングし、それにより、サンプリングされた磁場データを取得するステップ;
前記データ分析ユニットを用いて、前記サンプリングされた磁場データから複数の測定された磁場値を導出するステップ;及び
前記データ分析ユニットを用いて、前記測定された磁場値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するステップ
をさらに含む、方法。
【請求項12】
前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、頭部位置の変化を示し;前記方法が、回転運動及び加速度のデータに基づいて、前記被験者の頭部の動きを識別し、前記被験者の下顎骨の動きから頭部の動きを識別することをさらに含む、請求項1
0または1
1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がN1の睡眠状態であることを示し;前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がN2の睡眠状態であることを示し;前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がREMの睡眠状態であることを示し;及び/または前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つが、前記被験者がN3の睡眠状態であることを示す、請求項1
0~1
2のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に生じうる睡眠障害を検出するための装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠障害、より具体的には睡眠時呼吸障害を評価するための最も一般的な方法は、実験室での睡眠ポリグラフ(PSG)検査である。該検査を受けるには、訓練を受けた技術者による監督の元で専用の施設における一晩の滞在が必要である。しかし、該方法は、費用と時間がかかり、需要のペースに応じられない。PSG検査では、様々な種類のセンサーを使って、複数の生理学的信号(EEG、EMG、ECG、サーミスタ、圧力、ビデオ等)を記録する。その後、医療専門家は、これらのセンサーから取得されたデータを論評する。
【0003】
当技術分野では、他のシステムが検討されている。US 2017/0265801は、歯ぎしりや咀嚼を検出するための歯ぎしり検出システムに関する。該システムは、顎に取り付けられた加速度計を含む。これは、顎を噛み締める開始時と終了時の加速度の変化を感知して記録する。該加速度計からのデータを処理し、加速度計閾値と比較することで歯ぎしりに関連する動きを頭部の他の動きと区別する。
【0004】
US 2017/0035350も、歯ぎしり検出システムに関する。該システムは、咬筋に取り付けられた2つの加速度計を含む。1つ目の加速度計は左咬筋の皮膚に取り付けられ、2番目の加速度計は右咬筋の皮膚に取り付けられる。該2つの加速度計の記録データが実質的に等しい時に歯ぎしりが検出される。
【0005】
US 2007/273366は、睡眠障害検出器システムに関する。該システムは、放出された磁場を検出することによる距離測定装置を含む。該装置は、口の動きを測定するように頭部に配置された支持体に取り付けることができる。該装置からのデータを処理し、いびき等の睡眠時の呼吸器疾患を検出する。
【0006】
これらの既知のシステムの問題は、感知ユニットを装着している被験者の頭部の動きと下顎骨の動きが互いに別々に考慮されることである。同様な問題が、加速度計で測定された動きから計算される頭部と下顎骨の位置にも当てはまる。しかし、加速度計からのデータには制限があり、呼吸中の胸部や気管等の他の体の部分の動きの影響を受ける可能性がある。従って、これらの様々な動きと位置の間の関連は、睡眠障害を分析するために十分に考慮されておらず、測定されたデータストリームに基づく診断に悪影響を与える可能性がある。
【0007】
実際、下顎骨の動きは、呼吸運動または非呼吸運動のいずれかによって誘発される場合がある。従って、ヒトが眠っているときの頭部の動きは、下顎骨の動きを引き起こすことがある。下顎骨は、気管牽引との機械的な関連または脳による制御の効果の両方と見なすことができる。従って、下顎骨の動きは、気管牽引の呼吸の動きによって受動的に誘発されるか、または脳によって直接制御される。該牽引は、胸部がヒト頭部に及ぼす牽引力である。呼吸筋は脳によって制御され、胸部は呼吸とともに動くため、該牽引力はヒトの呼吸振動数にある。従って、頭部が該呼吸振動数で動くとすれば、頭部に取り付けられている下顎骨は、呼吸振動数で頭部に課される動きに追従するであろう。これは、頭部の動きに続く受動的な動きである。頭部が動かなくても、ほとんどの時に動かない場合でも、下顎骨の動きは、同様に脳によって直接かつ積極的に制御される。脳は、下顎骨筋群を刺激することで下顎骨の動きを制御する。従って、脳に制御される下顎骨運動と気管牽引の付着に制御される下顎骨運動を区別できることは有用である。脳からの信号をより正確に解釈し、睡眠障害をより正確に特定できるシステムが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、感知ユニット及び測定データの分析において、被験者の頭部及び下顎骨の動き及び位置の測定値を時間的に関連付けるためのデータ処理装置のシステムを提供することである。
【0009】
特に、本発明は、被験者に生じうる睡眠障害に関連する感知ユニット及びそのデータを処理するための処理ユニットを(同等に、組み合わせて)含むシステムに関する。ここで、該感知ユニットは、被験者の下顎骨の動きを測定するように適合されたジャイロスコープを含む。驚くべきことに、本発明者らは、ジャイロスコープを用いて下顎骨の回転を捕らえることができ、これにより、睡眠中の下顎骨の動きを制御する脳幹の活動を評価できることを発見した。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、被験者に生じうる睡眠障害に関連する、感知ユニット及びデータ処理装置、例えば、処理ユニットを含むシステムに関する。ここで、該感知ユニットは、被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを測定するように適合された加速度計と、該被験者の下顎骨の動きを測定するように適合されたジャイロスコープとを含む。該感知ユニットは、行われた測定に基づいて測定信号を産生するように適合される。該処理ユニットは、それぞれ前記加速度計及びジャイロスコープからの測定信号のそれぞれ第1及び第2時間ストリームを受信するための第1及び第2入力を含む。
【0011】
従って、本明細書で提供されるのは、頭部及び下顎骨を有する被験者における睡眠障害を特徴づけるためのシステムであって、これは、データリンクによって接続されたジャイロスコープ及びデータ分析ユニットを含む。特定の実施形態では、該システムは、それが以下を含むことを特徴とする。
- 被験者の下顎骨の回転運動を測定するために構成されたジャイロスコープ;
- データ分析ユニット及びデータリンク(該データリンクは、前記ジャイロスコープから測定された回転運動のデータを前記データ分析ユニットに送信するために構成される;
ここで、該データ分析ユニットは、N個の下顎骨運動クラスを保管するように構成されたメモリユニットを含み、ここで、Nは1より大きい整数であり、前記N個の下顎骨運動クラスのうちの少なくとも1つは睡眠障害の発症を示す;
- ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットを含み、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、及び/または振幅を示す;
- ここで、該データ分析ユニットは、サンプリング期間中に測定された回転運動のデータをサンプリングし、それによって、サンプリングされた回転運動のデータを取得するために構成されたサンプリング要素を含む;
- ここで、該データ分析ユニットは、前記サンプリングされた回転運動のデータから複数の測定された回転値を導出するように構成される;かつ、
- ここで、該データ分析ユニットは、さらに、前記測定された回転値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するために構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記システムは、加速度を測定するように適合された加速度計を含む。該加速度は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動き及び/または位置を示す。
- 前記データリンクは、該加速度計から測定された加速度のデータを前記データ分析ユニットに送信するためにさらに構成される;
- ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、加速度値の第jセットを含み、各加速度値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨または頭部の少なくとも1つの動きを示す;
- ここで、前記サンプリング要素は、サンプリング期間中に測定された加速度のデータをサンプリングし、それによって、サンプリングされた加速度のデータを取得するために構成される;
- ここで、前記データ分析ユニットは、前記サンプリングされた加速度のデータから複数の測定された加速度値を導出するように構成される;かつ、
- ここで、前記データ分析ユニットは、さらに、前記測定された加速度値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するために構成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記システムは、磁力計をさらに含む。該磁力計は、磁場データを測定するように適合される。磁場データの変動は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを示す。
- 前記データリンクは、前記加速度計から測定された磁場データを前記データ分析ユニットに送信するためにさらに構成される;
- ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、磁場データの値の第jセットを含み、各磁場データの値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨または頭部の動きの少なくとも1つの速度または速度変化を示す;
- ここで、前記データ分析ユニットは、サンプリング期間中に測定された磁場データをサンプリングし、それによって、サンプリングされた磁場データを取得するために構成されたサンプリング要素を含む;
- ここで、前記データ分析ユニットは、前記サンプリングされた磁場データから複数の測定された磁場値を導出するように構成される;かつ、
- ここで、前記データ分析ユニットは、さらに、前記測定された磁場値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するために構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ジャイロスコープ、及び任意選択で、加速度計及び/または磁力計またはその一部は、感知ユニットに含まれ、該感知ユニットは、前記被験者の下顎骨に取り付け可能である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、所定の振動数範囲によって特徴付けられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記分析ユニットは、前記ジャイロスコープ、加速度計、及び/または磁力計のデータに基づいて、前記被験者の頭部の動きを識別するために構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者が覚醒していることを示し、前記N個の下顎骨運動クラスの複数は、該被験者が睡眠中であることを示す。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN1の睡眠状態であることを示し、かつ、該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がREMの睡眠状態であることを示し、任意選択で、該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN2の睡眠状態であることを示し、及び/または該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN3の睡眠状態であることを示す。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、閉塞性無呼吸、閉塞性低呼吸、呼吸努力関連覚醒、中枢性無呼吸、及び/または中枢性低呼吸を示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つは歯ぎしりを示す。ここで、前記測定された回転運動のデータは、少なくとも1 mmの下顎骨運動振幅、前記動きが位相性である場合、少なくとも3回の呼吸サイクル中に0.5~5 Hzの範囲に確立された振動数で、または少なくとも2秒間持続的かつ強直的に1 mmを超える下顎骨運動振幅を示す。
【0021】
さらに提供されるのは、下顎骨を有する被験者における睡眠障害の特徴付けを支援するための方法であり、以下のステップを含む。
- データ分析ユニットで、該被験者の下顎骨に配置されたジャイロスコープから回転運動のデータを、データリンクを介して受信するステップ;
- 該データ分析ユニットに含まれるメモリユニットで、N個の下顎骨運動クラスを保管するステップ(ここで、Nは1より大きい整数であり、該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは睡眠障害の発症を示す);
- ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットを含み、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、または振幅を示す;
- 該データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素を用いて、サンプリング期間中の回転運動のデータをサンプリングし、それにより、サンプリングされた回転運動のデータを取得するステップ;
- 該データ分析ユニットを用いて、前記サンプリングされた回転運動のデータから複数の測定された回転値を導出するステップ;及び、
- 該データ分析ユニットを用いて、前記測定された回転値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するステップ。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記方法は、さらに以下のステップを含む。
- 加速度計を用いて、加速度を測定するステップ(該加速度は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動き及び/または位置を示す);
- 前記データリンクを用いて、該加速度計から測定された加速度のデータを前記データ分析ユニットに送信するステップ;
- ここで、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、加速度値の第jセットを含み、各加速度値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨または頭部の少なくとも1つの動きを示す;
- サンプリング要素を用いて、サンプリング期間中に測定された加速度のデータをサンプリングし、それにより、サンプリングされた加速度のデータを取得するステップ;
- 前記データ分析ユニットを用いて、サンプリングされた加速度のデータから複数の測定された加速度値を導出するステップ;及び
- 前記データ分析ユニットを用いて、前記測定された加速度値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するステップ。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記方法は、さらに以下のステップを含む。
- 磁力計を用いて、磁場データを測定するステップ(該磁場データの変動は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを示す);
- 前記データリンクを用いて、該磁力計から前記測定された磁場データを前記データ分析ユニットに送信するステップ;
- ここで、第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、磁場データの値の第jセットを含み;各磁場データの値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨または頭部の動きの少なくとも1つの速度または速度変化を示す;
- 前記データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素を用いて、サンプリング期間中に測定された磁場データをサンプリングし、それにより、サンプリングされた磁場データを取得するステップ;
- 前記データ分析ユニットを用いて、前記サンプリングされた磁場データから複数の測定された磁場値を導出するステップ;及び
- 前記データ分析ユニットを用いて、前記測定された磁場値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するステップ。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記分析ユニットを用いて、前記ジャイロスコープ、加速度計、及び/または磁力計のデータに基づいて、前記被験者の頭部の動きを識別するステップをさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは歯ぎしりを示す。ここで、前記測定された回転運動のデータは、少なくとも1 mmの下顎骨運動振幅、前記動きが位相性である場合、少なくとも3回の呼吸サイクル中に0.5~5 Hzの範囲に確立された振動数で、または少なくとも2秒間持続的かつ強直的に1 mmを超える下顎骨運動振幅を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本システム及びその動作を示す図面を用いて本発明をより詳細に説明する。本システムは、感知ユニットのシステム及び感知されたデータを処理するための装置またはユニットとして説明することができる。図面については、以下の通りである。
【0027】
【0028】
【
図2A-2B】ベッドに横臥しているヒトの頭部の位置が変化している間の2つのストリーム。
【0029】
【
図3A-3B】歯ぎしり中に感知ユニットに捕らえられたストリーム。
【0030】
【0031】
【0032】
【
図6】バンドパスフィルタリングを適用した後の測定された信号。
【0033】
【0034】
【
図8】閉塞性無呼吸における第1及び第2測定信号ストリームの一例。
【0035】
【
図9】閉塞性低呼吸における第1及び第2測定信号ストリームの一例。
【0036】
【
図10】混合型無呼吸における第1及び第2測定信号ストリームの一例。
【0037】
【
図11】中枢性無呼吸における第1及び第2測定信号ストリームの一例。
【0038】
【
図12】中枢性低呼吸における第1及び第2測定信号ストリームの一例。
【0039】
【
図13】呼吸努力関連覚醒(RERA)における第1及び第3測定信号ストリームの一例。
【0040】
【
図14】下顎骨運動の振動数分布のスペクトログラム。
【0041】
【
図15】特徴抽出、データ処理、及びデータ記述の手順の一例。
【0042】
【
図16-17】磁気センサーを用いて取得した下顎骨運動データの分析。
【0043】
【
図18】ジャイロスコープと加速度計を用いて取得した下顎骨運動データから自動睡眠段階を検出する方法の一例。該方法を実施例18で詳しく説明する。
【0044】
図1では、次の付番が用いられている:1:感知ユニット;2:加速度計;3:ジャイロスコープ;4:磁力計;5:酸素計;6:温度計;7:オーディオセンサー;8:筋電図検査ユニット;9:光電式容積脈波記録;10:データ処理装置;11-1:第1入力;11-2:第2入力;11-3:第3入力;11-4:第4入力;12:識別ユニット;13:分析ユニット。
【発明の詳細な説明】
【0045】
本発明のシステム及びプロセスを説明する前に理解されたいこととして、当然なことに、そのようなシステム及び方法またはその組み合わせは変化し得るので、これは、説明される特定のシステム及び方法または組み合わせに限定されない。また理解されたいこととして、用語の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は限定を意図するものではない。
【0046】
本明細書で使用される場合、単数形「1つ」及び「この」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、単数及び複数の参照物を両方含む。
【0047】
本明細書で使用される「含んでいる」、「含む」及び「からなる」という用語は、「包含している」、「包含する」、「含有している」、または「含有する」と同義であり、包括的または自由形式であり、追加の、引用されていない構成員、要素、または方法のステップを除外しない。本明細書で使用される「構成している」、「構成する」及び「構成される」という用語は、「からなっている」や「からなる」という用語を含むことが理解されよう。
【0048】
エンドポイントによる数値範囲の列挙には、それぞれの範囲内に含まれる全ての数値や分数、並びに列挙されたエンドポイントが含まれる。
【0049】
パラメーター、量、持続時間等のような測定可能な値を指すときに、本明細書で使用される「約」または「ほぼ」という用語は、そのような変動が、開示された態様及び実施形態において実行するのに適切な指定値から、及びその指定値の+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含することを意味する。理解されるべきこととして、修飾語「約」または「ほぼ」が指す値自体も、具体的に、かつ好ましく開示される。
【0050】
グループの1つまたは複数、または少なくとも1つの構成員等、「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」という用語は、はそれ自体が明確であり、さらに例示することにより、前記用語は、とりわけ、構成員のいずれか1つ、または構成員の任意の2つ以上、例えば、構成員のいずれの3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上等、全ての構成員までの言及を含む。
【0051】
本明細書で引用されている全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及される全ての参考文献の教示は、参照により組み込まれる。別段の定義がない限り、技術用語及び科学用語を含む本明細書で使用される全ての用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなるガイダンスによって、本明細書に記載のように、用語の定義は、本教示をよりよく理解するために含まれる。
【0052】
次の節では、様々な側面がより詳細に定義されている。そのように定義された各側面は、反対に明記されない限り、他の1つまたは複数の側面と組み合わせることができる。特に、好ましい、特定の、または有利であると示される任意の特徴は、好ましい、特定の、または有利であると示される任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0053】
本発明は、睡眠中の被験者の下顎骨運動の測定及び評価に関する。下顎骨または下顎骨は上顎の下に位置し、下顎骨を形成する。これはヒトの頭蓋骨の唯一の可動な骨である(中耳の耳小骨を除く)。運動中、下顎骨は顎関節を中心に回転し、そこで下顎骨は耳の前の頭蓋骨(側頭骨)に接続する。下顎骨の運動中、下顎骨に固定された筋線維の長さと張力の関係が変化する。これは、睡眠中に不安定になるリスクのある被験者の上気道の硬化をもたらす可能性がある。この動きは、下顎骨を上下させるための作動筋/拮抗筋の下で活性化され、それによってそれぞれ口を開閉する。該作動筋/拮抗筋は、脳幹(脳橋中枢)にある三叉神経の核に由来する運動神経によって神経支配され、該神経の運動枝によって支えられている。
【0054】
本明細書で提供されるのは、頭部及び下顎骨を有する被験者における睡眠障害を特徴づけるためのシステムである。該システムは、ジャイロスコープを含む。該ジャイロスコープは、前記被験者の下顎骨の回転運動を測定するように構成される。これは、本発明者らによって観察されたように、ジャイロスコープが特に適している活動である。前記ジャイロスコープは、上気道(咽頭)を開いたままにし、睡眠時無呼吸を防ぐ方法で、睡眠中の下顎骨運動を刺激する脳幹の活動を評価するために使用できる。下顎骨の可動骨は、レバーのように回転して、舌を含む直接または間接的に(第2可動骨である舌骨を介して)下顎骨のアーチに付着した咽頭筋線維を伸ばす。
【0055】
ジャイロスコープの動きは、ある程度で、中枢ドライブを表している。これは、脳橋の三叉神経の核が、脳幹にもある呼吸中枢に関して、睡眠機構(睡眠の段階)に関与する高次中枢の影響下で下顎骨を細かく変位させるように作用していることを意味する。その結果、感知ユニット内のジャイロスコープの提供は、呼吸、睡眠段階、または他の事象(例えば、運動または運動発症)を含み得る回転下顎骨の変位を調べることによって、様々な睡眠関連活動を評価するために使用できる。また、測定値から直接的または間接的に導き出された測定基準に加えて、被験者の下顎骨の回転運動を測定するために配置されたジャイロスコープによって測定された値(下顎骨ジャイロスコープ信号の速度及び振幅等)は、三叉神経の核に由来する中枢ドライブの評価を取得するために使用できる。
【0056】
本発明者らは、他の感知ユニットが、本明細書で提供される下顎骨運動の測定及び評価に適していないことを見出した。例えば、加速度計のような慣性センサーでは、線形加速度の測定が制限されているため、下顎骨の回転変位の測定には適していない。加速度計による測定は、呼吸中の胸や気管等の体や頭部の動きの影響を受ける可能性があり、データの出所を区別することは困難であり、システムに不要なノイズと複雑さを加える。結果として、睡眠障害を分析する既存のシステムでは、起こり得る体と頭部の動きとの間の関連が十分に考慮されていない。これは、測定されたデータストリームに基づく診断に悪影響を及ぼす。本発明者らは、下顎骨の回転が正確に評価するための必要な情報を運び、さらにそのような動きがジャイロスコープによって正確に記録され得ることを発見した。
【0057】
前記システムは、データ分析ユニット及びデータリンクをさらに含む。該データリンクは、前記ジャイロスコープとデータ分析ユニットとの間の通信通路を提供する。有線通信を用いるデータリンクも確かに可能であるが、例えば、被験者の快適さを改善するため、好ましくは、該データリンクは無線のデータリンクである。
【0058】
回転運動のデータは、前記データリンクを介して、前記ジャイロスコープから前記データ分析ユニットに送信される。該データリンクは、汎用の性質を有し、データを無線または有線で転送するための構成を含む。
【0059】
前記データ分析ユニットは、メモリユニット、例えば、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、メモリカード等のデータ保管装置を備える。該メモリユニットは、いくつか(N)の下顎骨運動固有パターン(クラス)を保管するために構成されている。ここで、Nは1より大きい整数である。該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、睡眠障害の発症を示す。好ましくは、該N個の下顎骨運動クラスは、様々な下顎骨運動を示す複数の運動クラスを含む。各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットで構成され、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、及び/または振幅を示す。
【0060】
前記ジャイロスコープによって測定または記録された回転運動のデータは、次のように下顎骨運動クラスにリンクされている。
【0061】
前記データ分析ユニットは、サンプリング期間中に測定された回転運動のデータをサンプリングするように構成されたサンプリング要素を含む。従って、サンプリングされた回転運動のデータが得られる。従って、前記ジャイロスコープによって記録された信号に含まれる情報は、さらなる分析のために抽出され得る。理解されたいこととして、特殊なハードウェアの提供も確かに可能であるが、いくつかの実施形態では、前記データ分析ユニットは、パーソナルコンピューターまたはスマートフォン等の汎用コンピューティング装置に含まれ得る。
【0062】
前記データ分析ユニットは、サンプリングされた回転運動のデータから複数の測定された回転値を導出し、測定された回転値をN個の下顎骨運動クラスと照合するように構成される。好ましくは、サンプリングされた回転運動のデータから測定された回転値を導出することは、以下の手順のうちの1つまたは複数を含む:離散化、時間平均化、高速フーリエ変換等である。また、前記照合は、機械学習モデルの提供によって完全にまたは部分的に自動化され得る。それにより、前記データ分析ユニットは、振動数及び時間ドメインで信号の特性を捕らえて、睡眠段階や呼吸努力等の特定の事象に対して回転信号のパターンを識別するために、いくつかの統計的及び/または物理的な測定基準を学習するように構成される。従って、機械学習モデルの提供は、関連情報の自動解釈及び/または特性データを睡眠障害発症と照合することを提供し得る。従って、睡眠中の下顎骨運動に関する試験は、頭部位置の一連の変化に関係するかどうかに関係なく、上気道の気流の通過性または抵抗の変化に応じた呼吸制御状態に関する情報を提供する。また、本発明によるシステムを使用した下顎骨運動の性質の分析は、歯ぎしりまたは咀嚼等の睡眠中に繰り返される非呼吸運動の発症、または口腔顔面の運動障害等の別の特徴を検出することができる。乳児の嚥下と吸乳の動きも明確に識別できる。また、嚥下の動きは成人でも検出できる。これにより、覚醒と微小覚醒を区別することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の下顎骨運動クラスは、別の大きな下顎骨運動(IMM)を示す。IMMは、微小覚醒または呼吸障害誘発性覚醒に関連しているため、前記測定及び分析から微小覚醒を効果的に推測できる。
【0064】
いくつかの実施形態では、測定された回転値をN個の下顎骨運動クラスと照合するプロセスは、人工知能法、例えばランダムフォレストを利用する。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記システムは、加速度計をさらに含む。該加速計は、被験者の頭部及び/または下顎骨の動き及び/または位置を示す加速度(加速度変動を含む)を測定するように適合されている。本発明者らは、加速度計が頭部の動き及び位置を測定するのに特に適していることを見出した。本システムに加速度計を加えることによって、睡眠中の下顎骨の挙動をさらに評価することを可能にする。特に、本発明者らは、加速度を測定して、ジャイロスコープの動き、振幅、及び/または速度の予期しない変化を説明できることを発見した。従って、加速度計による測定は、前記ジャイロスコープによる測定を補足するために使用できる。
【0066】
測定または記録された加速度のデータは、前記加速度計によってデータリンクを介してデータ分析ユニットに送信される。これらの実施形態では、各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、加速度値の第jセットで構成される。加速度値または測定基準の各第jセットは、該第jクラスに関連付けられた少なくとも1つの下顎骨の動きまたは頭部の動きを示す。前記サンプリング要素は、サンプリング期間中に測定された加速度のデータをサンプリングするように構成される。サンプリング後、測定された加速度のデータは、サンプリングされた加速度のデータと呼ばれる。前記データ分析ユニットは、例えば、離散化及び任意選択で時間平均化によって、該サンプリングされた加速度のデータから複数の測定された加速度値を導出するように構成される。前記加速度計によって記録された信号に含まれる情報は、さらなる分析のために抽出される場合がある。前記データ分析ユニットは、測定された加速度値をN個の下顎骨運動クラスと照合するためにさらに構成される。該照合のプロセスは、測定された加速度値に最も近い下顎骨運動クラスを自動的に測定することを含むと理解されている。機械学習モデルで該照合を完全にまたは部分的に自動化できる。これにより、関連情報及び/または特徴的なデータと睡眠障害発症との照合を自動的に解釈できる。
【0067】
本発明者らは、前記加速度計が頭部の動きに特に敏感であることを発見した。また、前記ジャイロスコープ及び加速度計は、下顎骨の動きから頭部の動きを効率的に識別することを可能にし、それにより、睡眠障害発症の検出が改善できる。その結果、単一のシステムにジャイロスコープ及び加速度計を提供することで、本システムの感度及び精度を向上させることができ、ジャイロスコープまたは加速度計だけでは測定値から解釈できなかった新しい情報の評価にも使用できる。例えば、中枢の活性化によって刺激された頭部位置の変化は、下顎骨の回転運動に影響を与える可能性があり、これは、口の開閉度の変化として誤って解釈されることがある。従って、ジャイロスコープと加速度計の組み合わせにより、顎の動きから頭部の動きを見分けることができる。本組み合わせによって提供される優れた予想外の機能を考慮すると、ジャイロスコープの存在は、例えば第2の加速度計のような他の感知装置の代替と見なすことはできない。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記システムは、磁場データを測定するように適合された磁力計をさらに含む。磁場データの変動は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きの方向及び/または位置を示す。本システムに磁力計を加えることで、睡眠中の下顎骨の挙動をさらに評価することを可能にする。理解され得ることとして、本システムに磁力計を提供することは、コンパスと同様に感知ユニットの向きを評価するのに役立つ。従って、その主な機能は、本システムの範囲に限定されないものと理解されるが、該磁力計は、当技術分野で企図されるように距離を測定するためのユニットとして機能することを意図していない。
【0069】
前記データリンクは、測定または記録された磁場データを前記磁力計から前記データ分析ユニットに送信するようにさらに構成される。各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、磁場データの値の第jセットを含む。磁場データの値の各第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨運動または頭部の動きの少なくとも1つの速度または速度変化を示す。前記データ分析ユニットは、サンプリング期間中に測定された磁場データをサンプリングするように構成されたサンプリング要素を含む。従って、サンプリングされた磁場データが得られる。前記データ分析ユニットは、前記サンプリングされた磁場データから複数の測定された磁場値を導出するように構成される。該データ分析ユニットは、前記測定された磁場値をN個の下顎骨運動クラスと照合するためにさらに構成される。
【0070】
特定の形態では、前記磁力計は、2つの部分を含み得る:1つの部分は患者の額に取り付けられ、そしてもう1つの部分は該患者の下顎骨に取り付けられる。本発明者らは、これが下顎骨の動きを検出するための特に効果的な構成であることを見出した。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記磁力計、ジャイロスコープ、加速度計、及び/またはさらなるセンサーから発生する信号は、例えば、時分割多重化及び/または異なる振動数の搬送波で単一の物理媒体を介して転送される。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記ジャイロスコープ、及び/または加速度計、及び/または磁力計、またはそれらの一部は、感知ユニットに含まれる。該感知ユニットは、前記被験者の下顎骨に取り付けることができる。これは、非常にコンパクトなフォーム要素を備えた実施形態であり、適用が容易であり、患者の快適さが改善される。該加速度計及び/または磁力計の提供は、ジャイロスコープの機能を置き換えるのではなく、ジャイロスコープと、加速度計や磁力計等の1つまたは複数の追加の感知装置との組み合わせによってのみ可能になる新しい解釈を実現すると理解されている。好ましくは、最初に、取得された信号の解釈を前記ジャイロスコープからのデータに関連付け、第2ステップで、該加速度計及び/または磁力計からのデータで補足する。例えば、最初に、前記ジャイロスコープからのデータを用いて下顎骨の角速度を分析し、サイクル分析で包括的なサイクルに到達することができる。そして、前記加速度計からのデータを用いて、サイクルが産生される状況(例えば、活性化の起源(皮質及び皮質下)、エンドタイプ(呼吸障害のダイナミクス)、筋肉の咀嚼活動のタイプ(多かれ少なかれ強直的または位相性))を提供できる。また、データの組み合わせから、単一の感知ユニットからのデータだけでは不可能な、新しい評価を行うことができる。例えば、発症タイプの正確な説明により、睡眠障害の発症または再発、または呼吸の変化(例えば、末梢毛細血管酸素飽和度SpO2)について予測を行う可能性が開かれる。
【0073】
好ましくは、前記感知ユニットのサイズは、最大で、長さ5 cm、厚さ2cm、かつ高さ1 cmである。これにより、前記被験者の通常の睡眠への干渉が減少する。
【0074】
いくつかの実施形態では、N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、所定の振動数範囲に関連付けられている。言い換えれば、これらの実施形態では、N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、所定の振動数範囲で発生する下顎骨運動を含む。好ましくは、N個の下顎骨運動クラスの少なくとも2つは、所定の第A振動数範囲及び所定の第B振動数範囲を含む所定の振動数範囲に関連付けられ、かつ、該所定の第A振動数範囲及び所定の第B振動数範囲は重複しない。
【0075】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの所定の振動数範囲は、0.15 Hz~0.60 Hz、0.25 Hz~0.50 Hz、または0.30 Hz~0.40 Hzの振動数からなる。これは、前記被験者の呼吸を示す信号の振動数範囲である。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記システムは、酸素計、及び/または温度計、及び/またはオーディオセンサー、及び/または筋電図検査ユニット、及び/または脈拍フォトプレチスモグラフを含むリストから選択される1つまたは複数の補助的な構成要素をさらに含む。好ましくは、これらの補助的な構成要素は、操作上でデータリンクを介して前記分析ユニットに接続される。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記分析ユニットは、ジャイロスコープ、及び/または加速度計、及び/または磁力計のデータに基づいて、前記被験者の頭部の動きを識別するために構成される。好ましくは、該頭部の動きは、回転、例えば、被験者の頭部の中心を通る軸の周りの回転を含む。その場合、好ましくは、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、頭部位置の変化を示す。これにより、一般的な頭部の動きと下顎骨自体の動きを効率的に区別できる。これらの実施形態では、前記システムは、好ましくは、加速度計及びジャイロスコープを両方含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記分析ユニットは、1つまたは複数の前処理ステップをジャイロスコープデータ、及び/または加速度計データ、及び/または磁力計データに適用するように適合されている。1つまたは複数の前処理ステップは、以下を含むリストから選択される:バンドパスフィルターの適用、ローパスフィルターの適用、指数移動平均、及び/またはジャイロスコープデータ、及び/または加速度計データ、及び/または磁力計データの振動数のエントロピーの計算。ローパスフィルタリングを適用すると、微小覚醒の検出が向上する。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記分析ユニットは、睡眠の質及び睡眠時呼吸障害の範囲を測定する特定のパラメーターを解釈するために構成された解釈モジュールを含み得る。睡眠の質のパラメーターには、例えば、総睡眠時間(TST)、睡眠開始潜伏期(SOL)、入眠からの初回覚醒(WASO)、覚醒指数、睡眠効率(SE)、REMの比、非REMの睡眠、REM睡眠の潜伏期、及びその他の睡眠質の指標の測定基準が含まれ得る。睡眠時呼吸障害に関連する測定基準には、睡眠中の1時間ごとの発生率と呼吸努力の累積期間が含まれる場合がある。前記分析ユニットは、解釈された被験者固有のパラメーターを報告するために構成することができる。該報告には、コンピューターやスマートフォン等の装置へ出力を提供することが含まれる場合がある。該報告には、例えば催眠術の形で、被験者固有のパラメーターの視覚的またはテキストによる報告書を提供することも含まれる場合がある。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者が覚醒中であることを示し、該N個の下顎骨運動クラスの複数は、該被験者が睡眠中であることを示す。本法に「睡眠中」及び「覚醒中」の分類を組み込むことにより、被験者が覚醒中または睡眠中の間に行われた測定がそれに応じて解釈されることが保証される。該解釈は、解釈モジュールを用いて実行することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN1の睡眠状態であることを示し、該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がREMの睡眠状態であることを示す。任意選択で、該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN2の睡眠状態であることを示し、かつ/または該N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN3の睡眠状態であることを示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN2の睡眠状態であることを示している。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、前記被験者がN3の睡眠状態であることを示している。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、睡眠段階の検出に関連している。該睡眠段階の検出は、前記被験者固有の睡眠パターンを確立するためにさらに実施され得る。該睡眠段階の検出は、好ましくは、異なるレベルの解像度で自動化される。
【0085】
好ましい実施形態では、睡眠パターンは以下を含み得る(複雑度の増加による分類):
(1)2クラススコアリング(即ち、二進法):被験者の覚醒状態または睡眠状態を検出する場合;
(2)3クラススコアリング:被験者の覚醒状態、非REMの睡眠段階、またはREMの睡眠段階を含む睡眠段階を分類する場合;
(3)4クラススコアリング:被験者の覚醒状態、浅い睡眠(N1及びN2)段階、深い睡眠(N3)段階、またはREMの睡眠段階を含む睡眠段階を分類する場合;
(4)5クラススコアリング:被験者の覚醒状態、N1の睡眠段階、N2の睡眠段階、N3の睡眠段階、及びREMの睡眠段階を含む全ての睡眠段階を分類する場合。
【0086】
実施例18及び19には3クラススコアリングの睡眠段階の自動検出の例示的な方法を示している。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、皮質活性化を示している。
【0088】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは、皮質下活性化を示している。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、閉塞性無呼吸、閉塞性低呼吸、呼吸努力関連覚醒、中枢性無呼吸、及び/または中枢性低呼吸を示す。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つは、歯ぎしりを示す。また、前記測定された回転運動のデータは、少なくとも1 mmの下顎骨運動振幅、前記動きが位相性である場合、少なくとも3回の呼吸サイクル中に0.5~5 Hzの範囲に確立された振動数で、または少なくとも2秒間持続的かつ強直的に1 mmを超える下顎骨運動振幅を示す。
【0091】
睡眠中の歯ぎしりは、成人の5~10%が頻繁に訴えられている。それは、しばしば断続的で、時間とともに変動し、時には数週間消えてから再発し、夜の間に、または数夜連続に繰り返される。歯ぎしりは、不快で大音量の歯ぎしりの形で睡眠者のパートナーによって認識されることがよくある。これは、被験者の顔面または側頭部の痛み及び歯のエナメル質の摩耗の兆候につながる可能性がある。その起源はよく分かっていないが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が考えられる原因の1つとされている。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨運動クラスの1つまたは複数は、ループゲイン、無呼吸または低呼吸または努力期間中に下顎骨を動員する筋肉ゲイン、活性化後の受動的崩壊点、及び/または活性化前の覚醒点を示す。
【0093】
本明細書でさらに提供されるのは、下顎骨を有する被験者における睡眠障害、例えば睡眠時呼吸障害(SDB)の特徴付けを支援するための方法であり、該方法は、以下のステップを含む。
- データ分析ユニットで、前記被験者の下顎骨に配置されたジャイロスコープから回転運動のデータを、データリンクを介して受信するステップ;
- 該データ分析ユニットに含まれるメモリユニットで、N個の下顎骨運動クラスを保管するステップ(注:Nは1より大きい整数であり、N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは睡眠障害の発症(例えば、睡眠時呼吸障害(SDB)の発症)を示す。各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットで構成され、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、または振幅を示す);
- 前記データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素を用いて、サンプリング期間中の回転運動のデータをサンプリングするステップ(それにより、サンプリングされた回転運動のデータは得られる);
- 前記データ分析ユニットを用いて、サンプリングされた回転運動のデータから複数の測定された回転値を導出するステップ;及び、
- 前記データ分析ユニットを用いて、測定された回転値をN個の下顎骨運動クラスと照合するステップ。
従って、患者における睡眠障害は、快適かつ効率的に検出することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記方法は、さらに以下のステップを含む。
- 加速度計を用いて、加速度を測定するステップ(該加速度は、被験者の頭部及び/または下顎骨の動き及び/または位置を示す);
- 前記データリンクを用いて、該加速度計から測定された加速度のデータを前記データ分析ユニットに送信するステップ;
- サンプリング要素を用いて、サンプリング期間中に測定された加速度のデータをサンプリングし、それにより、サンプリングされた加速度のデータを取得するステップ;
- 前記データ分析ユニットを用いて、サンプリングされた加速度のデータから複数の測定された加速度値を導出するステップ;及び
- 前記データ分析ユニットを用いて、測定された加速度値をN個の下顎骨運動クラスと照合するステップ。注:各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、加速度値の第jセットを含み、各加速度値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた少なくとも1つの下顎骨または頭部の動きを示す。
加速度計とジャイロスコープの両方を使用すると、頭部全体の動きから下顎骨の動きを効果的に識別できる。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記方法は、さらに以下のステップを含む。
- 磁力計を用いて磁場データを測定するステップ(該磁場データの変動は、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを示す);
- 前記データリンクを用いて、該磁力計から測定された磁場データを前記データ分析ユニットに送信するステップ;
- 前記データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素を用いて、サンプリング期間中に測定された磁場データをサンプリングし、それにより、サンプリングされた磁場データを取得するステップ;
- 前記データ分析ユニットを用いて、サンプリングされた磁場データから複数の測定された磁場値を導出するステップ;及び
- 前記データ分析ユニットを用いて、測定された磁場値をN個の下顎骨運動クラスと照合するステップ。注:第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、磁場データの値の第jセットで構成され;各磁場データの値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨運動または頭部の動きの少なくとも1つの速度または速度変化を示す。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記分析ユニットを用いて、ジャイロスコープ、及び/または加速度計、及び/または磁力計のデータに基づいて前記被験者の頭部の動きを識別するステップをさらに含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、N個の下顎骨運動クラスの少なくとも1つは歯ぎしりを示す。また、前記測定された回転運動のデータは、少なくとも1 mmの下顎骨運動振幅、前記動きが位相性である場合、少なくとも3回の呼吸サイクル中に0.5~5 Hzの範囲に確立された振動数で、または少なくとも2秒間持続的かつ強直的に1 mmを超える下顎骨運動振幅を示す。前記パラメーターの組み合わせは歯ぎしりを示し、これにより歯ぎしりを効果的に検出することができる。いくつかの実施形態では、前記振動数範囲は、1.0~4.5 Hz、または1.5~4.0 Hz、または2.0~3.5 Hz、または2.5~3.0 Hzである。
【0098】
以下では、データ(例えば、好ましくはサンプリングされた回転、加速度、及び/または磁場に関するデータ)をN個の下顎骨運動クラスと照合する特定の実施形態について説明する。これらの実施形態は、前述データから特徴を抽出することを含む。該特徴は、測定された回転値を含み、任意選択で、測定された加速度値、及び/または測定された磁場値を含む。該特徴を抽出した後、それらを1つまたは複数の下顎骨運動クラスと照合する。好ましくは、該特徴と照合する下顎骨運動クラスは、中枢性低呼吸、正常な睡眠、及び閉塞性低呼吸を含む。好ましくは、SHAPスコアでこれらの特徴を下顎骨運動クラスと照合し、該照合を解釈及び説明する。
【0099】
いくつかの実施形態では、前記特徴は、以下を含む非網羅的なリストから選択される:MM(即ち、ジャイロスコープ、加速度計、及び/または磁力計を用いて測定された回転、加速度、及び/または位置を意味する下顎骨運動)振幅の中心傾向(平均値、中央値、及び最頻値);MM分布(生信号またはエンベロープ信号):歪度、尖度、IQR、百分位数25、75、及び90;極値:MM振幅の最小値、最大値、百分位数5及び95;変動傾向:時間の関数でMMを評価するための、一般化された加法モデルからのテンソル積ベースのスプライン係数(S1、2、3、4)の線形傾向と係数;及び各発症の期間。理解されるべきこととして、そのような特徴は、サンプリングされた及び/または離散化されたかどうかにかかわらず、測定された回転値、加速度値、及び/または磁気値を指す。好ましくは、前記の値はサンプリングされ、かつ離散化される。理解されるべきこととして、前記リストは、例示的な実施形態を示し、本システムを限定するものと見なされない。
【0100】
いくつかの実施形態では、特徴の抽出は、発症を分離することを含む。発症は、頭部及び/または下顎骨の単一の動きに起因しうる一連の下顎骨運動データ(好ましくは、サンプリングされた回転、加速度、及び/または磁気に関するデータ)である。発症の1つ特定なタイプは、通常呼吸、例えば、所定時間の通常呼吸である。該所定時間は、例えば、2~20秒間、または5~15秒間、30秒間、または10秒間であってもよい。該時間の範囲は、目的の用途に適合させることができ、例えば、睡眠段階を特定するには30秒間、睡眠時歯ぎしりや微小覚醒を特定するには10秒間、呼吸事象を特定するには20秒間がそれぞれ適している。
【0101】
いくつかの実施形態では、以下ステップ1~4の手順に従って前記特徴を抽出する。
1. サンプリングされた下顎骨運動のデータを得る。下顎骨運動のデータは、サンプリングされた回転値、及び任意選択でサンプリングされた加速度値及び/またはサンプリングされた磁場値を含む。好ましくは、サンプリング速度は、1.0~100.0 Hz、または2.0~50.0 Hz、または5.0~25.0 Hz、好ましくは10.0 Hzである。好ましくは、得られたサンプリングされた下顎骨運動のデータを、10.0分間~12.0時間、または20.0分間~4.0時間、または30.0分間~2.0時間の間に得る。
2.下顎骨運動事象のタイムスタンプを特徴づける。
3.各タイムスタンプtiについて、次のステップを実行する:
3.a.tiが下顎骨運動事象の始まりであるかどうかを確認する。
3.b.tiが下顎骨運動事象の始まりであれば、
- tiをt_beginに割り当て、続いて該下顎骨運動事象の終了(t_end)を検索する;及び、
- t_begin及びt_endに指標をつける;
4.各下顎骨運動事象Eについて、次のステップを実行する:
4.a. 事象の期間を計算する。dt=(t_end-t_begin)
4.b. 該事象中にサンプリングされた下顎骨運動のデータの統計的分布を測定する。好ましくは、これは、最小値、最大値、平均値、中央値、最頻値、百分位数5、25、75、90、95、歪度、尖度、及びIQRを含むリストから選択された1つまたは複数の特徴を計算することを含む。
追加的または代替的に、GAM(General Additive Model)非線形モデルを用いて、時間tに対するスプライン関数でMM振幅及び/または位置を推定して、スプライン関数の係数を抽出する。
追加的または代替的に、単純な線形モデルを適合させ、振幅及び/または位置を含む下顎骨の動きから切片及び勾配を抽出する。
任意選択で、全ての特徴を連結する。
次に、下顎骨運動事象を下顎骨運動クラスと照合する。
【0102】
いくつかの実施形態では、下顎骨運動事象を下顎骨運動クラスと照合するには、探索的データ視覚化、一元配置分散分析、及びボンフェローニ補正を伴う対でのスチューデントt検定を使用する。好ましくは、本手順において、有意水準をp=0.0001~0.01に、より好ましくは、p=0.001に設定する。
【0103】
いくつかの実施形態では、機械学習方法、(例えば、極端な勾配ブースティング、深いニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ランダムフォレスト)を用いて、測定された下顎骨運動データを下顎骨運動クラスに分類する。
【0104】
いくつかの実施形態では、採用されたランダムフォレスト法アルゴリズムは、20~5000、または100~2000、または200~1000、または500の決定木を使用する。いくつかの実施形態では、各決定木を前記特徴のランダムなサブセット上に構築する。
【0105】
いくつかの実施形態では、モデル開発(即ち、人工知能法のトレーニング)において、測定された下顎骨運動のデータを2つのサブセットにランダムに分割する。その大きい方がモデル開発のためであり、その小さい方がモデル検証のためである。いくつかの実施形態では、より大きなセットは、測定された下顎骨運動のデータの60~80%、または70%を含む。いくつかの実施形態では、より小さなセットは、下顎骨運動のデータの20~40%、または30%を含む。好ましくは、該モデルを開発する前に、総合的なマイノリティオーバーサンプリング手法(SMOTE)をトレーニングセットで使用する。
【0106】
いくつかの実施形態では、モデル開発において、LundbergのShapley加法説明(SHAP)法で、複数の特徴の分類への寄与を評価する。従って、SHAP法によって、採用された機械学習モデルによって行われた予測を解釈でき、該モデルを説明できるようになる。
【0107】
本開示の特定の態様を代替的または追加的に以下のように表現してもよい。
いくつかの実施形態では、前記システムは、感知ユニット及び被験者の睡眠中に生じうる障害に関連するデータを処理するための装置を含む。該処理装置は、第1及び第2測定信号ストリームを識別するように適合された識別ユニットを含む。第1信号は、その周波数が第1所定周波数範囲に位置する。第2信号は、頭部及び/または下顎骨の動きを特徴付ける少なくとも1つの固有の特性の値が、該値からなる第2所定範囲に位置する。前記第1所定振動数範囲及び前記第2所定範囲は、前記被験者の睡眠状態を特徴付ける、該被験者のそれぞれ頭部及び下顎骨の動きの振動数の値からなる。前記識別ユニットは、第1及び第2ストリームで識別された第1及び第2信号が第1所定期間で存在することを観察した後、トリガー信号を産生するように適合される。また、前記識別ユニットは、前記トリガー信号を産生した後、第1及び第2測定信号ストリームにおいて、前記少なくとも1つの固有の特性の周波数及び/または値が前記被験者の下顎骨の動き及び頭部位置の変化を表す第3信号を識別するように適合される。前記識別ユニットは、前記トリガー信号の制御下で活性化されるように適合された分析ユニットに接続されている。該分析ユニットはまた、第3信号を睡眠障害に関連する振動数及び/または値を特徴付けるプロファイルと比較し、該比較の結果を産生するように適合される。本発明は、次の概念に基づいている。即ち、被験者の睡眠において、その呼吸運動が脳の神経中枢によって制御され、神経中枢がそれに取り付けられている頭部と下顎骨の筋肉を制御し、次に、筋肉が該被験者の頭部と下顎骨を位置付ける。前記加速度計及びジャイロスコープはそれぞれ、頭部と下顎骨の動きを特徴付ける測定信号の時間ストリームを提供する。前記識別ユニットを使用することにより、これらの測定信号のストリームから、被験者の睡眠状態を特徴付けるものを識別し、前記分析ユニットを起動し、実際の睡眠中の被験者に影響を与える睡眠障害を分析することができる。
【0108】
従って、分かるように、下顎骨の動きは、胸部の動きだけによって決められるではなく、それに取り付けられた筋肉を制御し、下顎骨を位置付ける脳の中枢神経によっても直接に決められる。これらは、頭部の位置も制御する。
【0109】
実際、必然的に呼吸振動数にある気管牽引によって頭部は動くことがあるため、加速度計とジャイロスコープの両方による測定が好ましい。実際には、前記ジャイロスコープは、気管牽引が生み出せる頭部の動きを示す加速度計よりも、脳の直接制御下でそれ自体の筋肉によって作動する下顎骨の回転運動に敏感である。呼吸運動以外に、中枢が活性化すると、測定されるのは大きな振幅の別の信号がある。しかし、気管牽引による動きは、下顎骨を頭部の残りの部分に接続する組織の弾性によって減衰される動きであり、よって、動きを受動的に伝達することができる。従って、これは脊椎ドライブ、即ち気管牽引を産生する横隔膜の比較的知覚できない反射であり、一方、下顎骨の拮抗筋/作動筋は、特に脳から直接三叉神経の駆動枝の作用、即ち三叉神経駆動によって、直接的な動きを与える。前記ジャイロスコープで、下顎骨の筋肉による、また下顎骨に対する脳の直接作用の結果となる下顎骨の回転運動をうまく測定できる。従って、前記加速度計及びジャイロスコープからの信号を組み合わせることで、下顎骨運動の起源及び性質の検出を改善でき、ヒトが睡眠中であるかどうかの判断を改善できる。
【0110】
好ましくは、前記感知ユニットは、前記被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを測定するように適合された磁力計を含む。装置またはユニットが、該磁力計からの測定信号の第3時間ストリームを受信するための第3入力を含む。前記分析ユニットは、前記磁力計からの測定信号を前記第3信号と統合するように適合されている。磁力計を使用することで、頭部及び下顎骨の絶対位置を測定することができる。
【0111】
好ましくは、感知ユニットは、酸素計、及び/または温度計、及び/またはオーディオセンサー、及び/または筋電図検査ユニット、及び/または脈拍フォトプレチスモグラフを含む。前記識別装置またはユニットは、それぞれ酸素計、温度計、オーディオセンサー、筋電図検査ユニット、脈拍フォトプレチスモグラフからの測定信号の第4及び/または第5及び/または第6及び/または第7及び/または第8時間ストリームを受信するための第4及び/または第5及び/または第6及び/または第7及び/または第8入力を含む。前記分析ユニットは、それぞれ酸素計、温度計、オーディオセンサー、筋電図検査ユニット、脈拍フォトプレチスモグラフからの測定信号を前記第3信号と統合するように適合される。次に、前記識別装置またはユニットは、酸素計、及び/または、温度計、及び/またはオーディオセンサー、及び/または筋電図検査ユニット、及び/または脈拍フォトプレチスモグラフからの測定信号を前記第3信号と関連付けるように適合される。酸素計、及び/または温度計、及び/またはオーディオセンサー、及び/または筋電図検査ユニットからのこれらの測定信号により、より多くの測定信号を考慮に入れることができ、従って、睡眠障害の分析の信頼性を向上させることができる。
【0112】
好ましくは、振動数からなる第1所定範囲は、0.15 Hz~0.60 Hzである。前記識別ユニットは、前記被験者の少なくとも2回の呼吸サイクルの期間にわたって第1信号を識別するように適合される。第2所定範囲は、下顎骨の回転運動の振幅値からなる。その値は、例えば、通常の呼吸の1/10ミリメートルのオーダーの振幅である。0.15 Hz~0.60 Hzの振動数範囲は、被験者の頭部がいわば準不動である状況を特徴づけ、従って、該被験者が睡眠中であるか、または入眠状況を反映する。
【0113】
好ましくは、前記分析ユニットは、第1及び第2ストリームにおいて、被験者の頭部を通って伸びる少なくとも1本の軸の周りの頭部の回転を特徴付ける信号を第3信号の中から識別するように適合される。頭部の回転は、しばしば睡眠中の覚醒、微小覚醒、皮質活性化及び/または皮質下活性化と密接に関連し、睡眠障害を示す。
【0114】
本明細書でさらに提供されるのは、好ましくは、ジャイロスコープによって記録された下顎骨回転運動のデータからの睡眠段階を自動的に検出するための方法である。該方法は、本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態に従った機械学習に基づく方法であってもよい。該方法は、好ましくは、以下のステップを含む:
- 少なくとも1人の被験者からサンプリングされた回転運動のデータを提供するステップ; 該サンプリングされたデータは、本明細書に記載されるような1つまたは複数のサンプリング及び処理の方法によって提供され得る。
- 提供されたデータを機械学習分類器に入力し、予測スコアを算出するステップ;及び
- 算出されたスコアに基づいて、睡眠段階を判定するステップ。
【0115】
分かるように、本明細書に記載されている他の方法の好ましい実施形態は、睡眠または睡眠段階の自動検出方法の好ましい実施形態でもある。本法のデータを本質的に治療用になりうる他の方法に使用し、その装置に入力してもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、睡眠段階には、(複雑度の増加による分類して)以下のクラスが含まれ得る。
(1)被験者の覚醒状態または睡眠状態を検出するための2クラススコアリング(即ち、二進法);
(2)被験者の覚醒状態、非REMの睡眠段階、またはREMの睡眠段階を含む睡眠段階を分類するための3クラススコアリング;
(3)被験者の覚醒状態、浅い睡眠(N1及びN2)段階、深い睡眠(N3)段階、またはREMの睡眠段階を含む睡眠段階を分類するための4クラススコアリング;及び
(4)被験者の覚醒状態、N1の睡眠段階、N2の睡眠段階、N3の睡眠段階、及びREMの睡眠段階を含む全ての睡眠段階を分類するための5クラススコアリング。
【0117】
実施例18及び19には、3クラススコアリングの睡眠段階を自動的に検出する方法の例が示され、考察されている。
【0118】
睡眠関連障害の検出とは別に、本明細書に記載のシステム及び方法は、以下の例示的な用途にも使用できる:健康な被験者、高齢者、または異常な睡眠パターンに苦しむ被験者における睡眠段階の検出及び/または睡眠の質の監視。睡眠障害の検出は、本質的に臨床的であろうと心理的であろうと、治療を調整したり、被験者のニーズに合わせたりすることができる。さらに、慢性疾患の臨床転帰に対する睡眠行動への影響を研究することで、当該疾患及び治療効果についての新たな洞察が得られる可能性がある。また、本明細書に記載のシステムは、他のシステムまたは方法と組み合わせても使用できる。これらのシステムは、任意選択で本質的に治療(例えば、呼吸装置(CPAP、BiPAP、適応サポート換気)、下顎骨前進装具、及び経口装置、経皮的または移植された神経及び/または筋肉を刺激するための装置、睡眠中の体及び/または頭部の姿勢及び/または位置を修正するための装置等)に用いてもよい。いくつかの実施形態では、前記システムにアラームを接続することができる。または前記システムは、アラーム機能を有する装置に接続されるか、またはその装置を備えてもよい。
【0119】
追加的または代替的に、以下の付番された実施形態で本発明を説明してもよい。これらの付番された実施形態において、「組み合わせ」という用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、「システム」という用語と同等である。
【0120】
実施形態1
感知ユニット及びデータを処理するための装置(例えば、被験者の睡眠中に生じうる障害に関連する処理ユニット)を含む組み合わせ。前記感知ユニットは、被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを測定するように適合された加速度計、及び該被験者の下顎骨の動きを測定するように適合されたジャイロスコープを含む。前記感知ユニットは、行われた測定に基づいて測定信号を産生するように適合される。前記装置は、それぞれ加速度計及びジャイロスコープからの測定信号のそれぞれ第1及び第2時間ストリームを受信するための第1及び第2入力を含む。該処理装置は、第1及び第2測定信号ストリームを識別するように適合された識別ユニットを含む。第1信号は、その周波数が第1所定周波数範囲に位置する。第2信号は、頭部及び/または下顎骨の動きを特徴付ける少なくとも1つの固有の特性の値が、該値からなる第2所定範囲に位置する。前記第1所定振動数範囲及び前記第2所定範囲は、前記被験者の睡眠状態を特徴付ける、該被験者のそれぞれ頭部及び下顎骨の動きの振動数の値からなる。前記識別ユニットは、第1及び第2ストリームで識別された第1及び第2信号が第1所定期間で存在することを観察した後、トリガー信号を産生するように適合される。また、前記識別ユニットは、前記トリガー信号を産生した後、第1及び第2測定信号ストリームにおいて、前記少なくとも1つの固有の特性の周波数及び/または値が前記被験者の下顎骨の動き及び頭部位置の変化を表す第3信号を識別するように適合される。前記識別ユニットは、前記トリガー信号の制御下で起動されるように適合された分析ユニットに接続される。該分析ユニットはまた、第3信号を睡眠障害に関連する振動数及び/または値を特徴付けるプロファイルと比較し、該比較の結果を産生するように適合される。
【0121】
実施形態2
前記感知ユニットが当該被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを測定するように適合された磁力計を含み、前記装置またはユニットが該磁力計からの測定信号の第3時間ストリームを受信するための第3入力を含み、前記分析ユニットが該磁力計からの測定信号を前記第3信号と統合するように適合されることを特徴とする、実施形態1による組み合わせ。
【0122】
実施形態3
前記感知ユニットが酸素計、及び/または温度計、及び/またはオーディオセンサー、及び/または筋電図検査ユニット、及び/または脈拍フォトプレチスモグラフを含み、前記識別装置またはユニットがそれぞれ、該酸素計、温度計、オーディオセンサー、筋電図検査ユニット、及び脈拍フォトプレチスモグラフからの測定信号の第4、及び/または第5、及び/または第6、及び/または第7、及び/または第8時間ストリームを受信するための第4及び/または第5及び/または第6及び/または第7及び/または第8入力を含み、前記分析ユニットがそれぞれ、該酸素計、温度計、オーディオセンサー、筋電図検査ユニット、及び脈拍フォトプレチスモグラフからの測定信号を第3信号に統合するように適合されることを特徴とする、実施形態1または2による組み合わせ。
【0123】
実施形態4
前記振動数からなる第1所定範囲が0.15 Hz~0.60 Hzであり、前記識別ユニットが被験者の少なくとも2回の呼吸サイクルの期間にわたって第1信号を識別するように適合されることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つによる組み合わせ。
【0124】
実施形態5
前記値からなる第2所定範囲が頭部位置の変化を示す少なくとも1つの頭部運動の振幅値を含むことを特徴とする、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組み合わせ。
【0125】
実施形態6
前記分析ユニットが第1及び/または第2ストリームにおいて、被験者の頭部を通って伸びる少なくとも1本の軸の周りの頭部の回転を特徴付ける信号を第3信号の中から識別するように適合されることを特徴とする、実施形態1~5のいずれか1つによる組み合わせ。
【0126】
実施形態7
前記識別ユニットが被験者の下顎骨の動きと頭部位置の変化を特徴付ける第1と第2信号ストリームの動きを識別するように適合され、前記分析ユニットが該動きを特徴付ける情報を識別するために使用される少なくとも1つの特徴を該動きの信号ストリームから除去するように適合されることを特徴とする、実施形態1~6のいずれか1つによる組み合わせ。
【0127】
実施形態8
前記処理装置がそれにバンドパスフィルター、及び/またはローパスフィルター、及び/または指数移動平均、及び/または信号の振動数のエントロピーの計算を適用することによって、第1及び/または第2ストリームに前処理を適用するように適合されることを特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つによる組み合わせ。
【0128】
実施形態9
前記分析ユニットは、第2期間、特に30秒間に、前記の動きを特徴付ける情報を識別するために使用される前記少なくとも1つの特性が、それぞれ睡眠状態か覚醒状態を特徴付ける値を有するかどうかを検証するように適合され、該分析ユニットは、前記の動きを特徴づけ、かつ第1及び第2受信済ストリームの分析済の信号から除去され、前記情報の識別に使用される少なくとも1つの特性が、それぞれ睡眠状態か覚醒状態を説明する値を有する場合に、それぞれ睡眠状態及び覚醒状態を示す第1データ項目を産生するように適合されることを特徴とする、実施形態7に依存する場合の実施形態7または8による組み合わせ。
【0129】
実施形態10
前記分析ユニットは、第2期間、特に30秒間に、前記の動きを特徴付ける情報を識別するために使用され、第1及び第2受信済のストリームの分析済の信号から除去された前記周波数及び/または少なくとも1つの特性が、それぞれN1の睡眠状態及びREMの睡眠状態を特徴付ける値を有するかどうかを検証するように適合され、該分析ユニットは、前記の動きを特徴づけ、かつ第1及び第2受信済ストリームの分析済の信号から除去された前記周波数及び/または少なくとも1つの特性が、それぞれN1の睡眠状態及びREMの睡眠状態を表す値を有する場合に、それぞれN1の睡眠状態及びREMの睡眠状態を示す第2及び第3データ項目を産生するように適合されることを特徴とする、実施形態7に依存する場合の実施形態7、9または8のいずれか1つによる組み合わせ。
【0130】
実施形態11
前記分析ユニットは、第2期間、特に30秒間に、前記の動きを特徴付ける情報を識別するために使用され、第1及び第2受信済のストリームの分析済の信号から除去された少なくとも1つの特性が、それぞれN2の睡眠状態及びN3の睡眠状態を特徴付ける値を有するかどうかを検証するように適合され、該分析ユニットは、前記の動きを特徴づけ、かつ第1及び第2受信済ストリームの分析済の信号から除去され、前記情報の識別に使用される少なくとも1つの特性が、それぞれN2の睡眠状態及びN3の睡眠状態を表す値を有する場合に、それぞれN2の睡眠状態及びN3の睡眠状態を示す第4及び第5データ項目を産生するように適合されることを特徴とする、実施形態7、9または10による組み合わせ。
【0131】
実施形態12
前記分析ユニットは、第3期間、特に3~15秒間に、第1及び第2の受信済のストリームの分析済の信号の少なくとも1つの固有の特性が、それぞれ皮質活性化及び皮質下活性化を特徴付けるレベルを有するかどうかを検証するように適合され、該分析ユニットは、第1及び第2受信済ストリームの分析済の信号の前記少なくとも1つの固有の特性がそれぞれ皮質活性化及び皮質下活性化を表すレベルを有する場合、皮質活性化及び皮質下活性化を示す第6データ項目を産生するように適合されることを特徴とする、実施形態1~11のいずれか1つによる組み合わせ。
【0132】
実施形態13
前記分析ユニットは、分析済の信号の少なくとも1つの固有の特性が、それぞれ閉塞性無呼吸、閉塞性低呼吸、呼吸努力関連覚醒、中枢性無呼吸、及び中枢性低呼吸を特徴付けるレベルを有するかどうかを検証するように適合され、該分析ユニットはまた、第1及び第2ストリームの分析済の信号の前記少なくとも1つの固有の特性がそれぞれ閉塞性無呼吸、閉塞性低呼吸、呼吸努力関連覚醒、中枢性無呼吸、及び中枢性低呼吸を表すレベルを有する場合、それぞれ閉塞性無呼吸、閉塞性低呼吸、呼吸努力関連覚醒、中枢性無呼吸、及び中枢性低呼吸を示す第7、第8、及び第9データ項目を産生するように適合されることを特徴とする、実施形態1~12のいずれか1つによる組み合わせ。
【0133】
実施形態14
前記識別ユニットが、振動数の値及び/または睡眠状態中に観察されない変動を示す少なくとも1つの固有の特性の値を第1及び第2ストリームで識別し、そのような変動を観察した際に中和信号を産生し、それを中和するために該中和信号を前記分析ユニットに供給するように適合されることを特徴とする、実施形態1~13のいずれか1つによる組み合わせ。
【0134】
実施形態15
前記分析ユニットは、少なくとも3回の呼吸サイクル中に0.5~5 Hz範囲に確立された周波数で、第1及び第2ストリームの分析済の信号の少なくとも1つの固有の特性が少なくとも1 mmを超えて増加したかどうか、該動きが位相性である場合、または少なくとも2秒間持続的かつ強直的に1 mmを超えたかどうかを検証し、該検証中の歯ぎしりを示す第10データ項目を産生するように適合されることを特徴とする、実施形態1~14のいずれか1つによる組み合わせ。
【0135】
実施形態16
前記分析ユニットが無呼吸、低呼吸または努力期間中に下顎骨を動員する筋肉ゲインのループゲインの計算へのアクセスを提供する第1及び第2ストリームの1つまたは複数の値を起動後の受動的崩壊点及び/または起動前の覚醒点から捕らえるように適合されることを特徴とする、実施形態1~15のいずれか1つによる組み合わせ。
実施例
【実施例1】
【0136】
実施例1では、
図1が参照される。
図1は、本発明によるシステムを示している。該システムは、被験者が睡眠中に生じうる障害に関連する、感知ユニット1及びデータを処理するための装置10、好ましくは処理ユニットを含む。前記感知ユニットは、好ましくは三次元で、被験者の頭部及び/または下顎骨の動きを測定するように適合された加速度計2を含む。前記感知ユニットはまた、好ましくは三次元で、被験者の下顎骨の回転運動を測定するように適合されたジャイロスコープ3を含む。1つの好ましい実施形態によれば、前記感知ユニット1はまた、特にコンパス形態の磁力計4、及び/または酸素計5、及び/または温度計6、及び/またはオーディオセンサー7、及び/または筋電図検査ユニット8、及び/または脈拍フォトプレチスモグラフ9を含む。発汗センサーまたは鼻圧センサー等の他のセンサーもまた、該感知ユニットの一部を形成し得る。前記脈拍フォトプレチスモグラフは、透過または反射によって機能し、脈拍の振動数及び動脈緊張の変化の計算へのアクセスを提供する。
【0137】
前記感知ユニットは、被験者の通常の睡眠を妨げないように、好ましくは小さいサイズ、例えば、最大で、長さ5 cm、厚さ2 cm、高さ1 cmである。該感知ユニットは、好ましくは、全体のサイズが非常に小さく、軽量で柔軟性があり、良好なエルゴノミクスを可能にする。該感知ユニットによって産生された信号は、人工知能を使用した解読に非常に適している。該感知ユニットによって得られた測定の診断力は、完全な睡眠ポリグラフ記録の診断力に匹敵する。下顎骨の動きは、軸上、例えば前後軸上で優先的に発生する可能性があるが、被験者の頭部は右に向けられる。他の軸上での動きも同様に測定できる。前記感知ユニットは、衛生上の理由から一度だけの使用を意図することが好ましいが、再調整してから再利用することも当然できる。
【0138】
好ましくは、頭部の位置を加速度計2によって3本の軸に沿って測定された値に基づいて測定する。該加速度計は、地球の重力に対する加速度の値を測定するため、ヒト頭部への感知ユニットの適用中に初期化段階がなかった場合、さらに相対位置となる頭部の位置を取得するために、これらの測定値を経時的に統合することが好ましい。前記位置は、例えばオイラー角のピッチ角、ロール角、及びヨー角の値、または15°のトランシェによるゲインで表すことができる。頭部の位置は、次の用語で表すこともできる:立位、横臥、左、右、仰向け。
【0139】
次の表は、様々な角度値及びその頭部の推定位置を示している:
【0140】
磁力計4は、頭部の向きを感知するために、特に該動きが重力ベクトルに対して垂直に発生する場合に加えられる。前記加速度計及び磁力計で測定した値を組み合わせることで、その移動距離を計算し、これにより、頭部位置の絶対値を得ることができる。
【0141】
頭部の動きに関しては、下顎骨の動きは、加速度計2からの測定値の助けを借りて、好ましくは3本の軸上で測定される。下顎骨の動きもジャイロスコープ3の助けを借りて測定される。
【0142】
頭部及び下顎骨の動きとその結果としての位置変化には様々な種類がある。下顎骨の場合、その動きは、例えば呼吸振動数での回転運動である。しかし、歯ぎしりや咀嚼の場合、または口腔ジスキネジアの場合、睡眠中に側方運動が可能であり、また、下顎骨の顆頭は、顎関節の関節窩内で回転するが、これらは呼吸運動の場合とほぼ同じ軸ではない。
【0143】
頭部の場合、その動きの結果は確率的である。即ち、動きの終わりに頭部が占める位置は、活性化後に予測できない。その動き及び位置変化の振幅は異なる値をもっている。従って、頭部の動きの振幅が大きい場合、ジャイロスコープによって測定された下顎骨の位置変化は調べられなく、そのような場合、被験者は覚醒し、該被験者の睡眠障害に関する情報が得られない。ジャイロスコープによって捕らえられた下顎骨の動きの小さな振幅は、それらが呼吸運動に起因するときに観察される。ヨー角の変化は、頭部に関連し、頭部が左から右に回転することを示す。ピッチ角の変化は、他のパラメーターを用いているにもかかわらず、下顎骨の動きに関する情報を提供するという事実に加えて、頭部の屈曲または伸展に関連する。捕らえられた信号のこれらの値は、以下に説明するように、前記分析ユニットの助けを借りて分析される。
【0144】
下顎運動は、非呼吸運動と同じくらい呼吸運動によって課せられる可能性がある。従って、ヒトが眠っているときの頭部の動きは、下顎骨の動きを引き起こす可能性がある。下顎骨の動きは、気管牽引またはヒトの脳によって引き起こされる場合がある。気管牽引は、胸部が頭部に及ぼす牽引力である。該牽引は、ヒトの呼吸振動数にある。従って、頭部が呼吸の振動数で動く場合、頭部に取り付けられている下顎骨は、頭部によって課されるその動きに従い、該呼吸の振動数で動く。これは、頭部の動きに続く受動的な動きである。下顎骨の動きは、脳によって直接かつ積極的に制御される可能性があり、この場合、頭部は動かない。脳が下顎骨の動きを制御しているとき、直接刺激されるのは下顎骨の筋肉である。従って、脳によって制御される下顎骨の動きと気管牽引によって制御される下顎骨の動きとを明確に区別できると有用である。
【0145】
脳の活性化時の独立した下顎運動(IMM)(例えば、呼吸努力の期間の終わり、咳、または唾吐きの間、または再び睡眠中に話すとき)と被験者の呼吸によって引き起こされる呼吸下顎運動(RMM)とは区別される。歯ぎしりや咀嚼によって引き起こされる下顎骨の動きもある。RMMタイプの下顎骨の動きは、被験者の脳によって直接制御され、頭部の動きにはつながらない。RMMタイプの動きは、気管牽引によっても引き起こされ、そして、呼吸の振動数での頭部の動きと組み合わされる。RMMタイプの動きが停止、正規化、または開始したときに、加速度計による測定の助けを借りて、そのときに頭部が動いたかどうかを観察することが有用である。歯ぎしりタイプの動きは、頭部を動かし、加速度計が示す活性化に続くことがよくある。これは、ジャイロスコープがはっきりと示す下顎骨の比較的細かい回転運動とは対照的に、この大きな振幅の動きを実際に捕らえるためである。
【0146】
睡眠障害に関連するデータを処理するための本発明による装置10は、加速度計2からの測定信号の第1時間ストリームF1、即ち、測定された加速度のデータを受信するための第1入力11-1を含む。これは、ジャイロスコープ3からの測定信号の第2時間ストリームF2、即ち、測定された回転運動のデータを受信するための第2入力11-2を含む。それはまた、磁力計4からの測定信号の第3時間ストリームF3、即ち、磁場データを受信するための第3入力11-3を含み得る。前記感知ユニットが酸素計も含む場合、前記識別装置は、該酸素計からの測定信号の第4時間ストリームF4、即ち、酸素計のデータを受信するように適合された第4入力を含む。前記感知ユニットが温度計も含む場合、前記識別装置は、該温度計からの測定信号の第5時間ストリームF5、即ち、温度計のデータを受信するように適合された第5入力を含む。前記感知ユニットがオーディオセンサーも含む場合、前記識別装置は、該オーディオデータからの測定信号の第6時間ストリームF6、即ち、オーディオデータを受信するように適合された第6入力を含む。前記感知ユニットが筋電図検査ユニットも含む場合、前記識別装置は、該筋電図検査ユニットからの測定信号の第7時間ストリームF7、即ち、筋電図のデータを受信するように適合された第7入力も含む。前記感知ユニットが脈拍フォトプレチスモグラフも含む場合、前記識別装置は、該脈拍フォトプレチスモグラフからの測定信号の第8時間ストリームF8、即ち、フォトプレチスモグラフィーのデータを受信するように適合された第8入力も含む。言い換えると、様々なセンサーからの測定データは、これらのセンサーからデータリンクを介して前記分析ユニットに送信される。
【0147】
前記の様々なストリームは時分割多重化され、及び/またはそれぞれが異なる振動数の搬送波で運ばれることがあるため、前記の様々な入力は物理的に異なってはならない。従って、様々な入力ストリームは、単一のデータリンクを介して送信されてもよい。
【0148】
前記装置には、第1及び第2測定信号ストリームF1及びF2において、その振動数が振動数からなる第1所定範囲に位置する第1信号及びその値が値からなる第2所定範囲に位置する第2信号を識別するように適合された識別ユニット12を含むデータ分析ユニットが含まれる。前記第1所定範囲及び第2所定範囲は、それぞれ、前記被験者の睡眠状態を特徴付ける該被験者の頭部及び下顎骨の動きの振動数値からなる。前記感知ユニットが磁力計4を含む場合、識別ユニット12はまた、測定信号の第3ストリームF3において、その値が睡眠中に観察され得るような前記被験者の頭部の向きの第3所定範囲に位置する第3信号を識別するように適合される。前記識別ユニットは、第1及び第2ストリームで識別された第1及び第2信号が第1所定期間中に存在することを観察した後、トリガー信号を産生するように適合されている。また、前記識別ユニットは、該トリガー信号を産生した後、第1及び第2測定信号ストリームにおいて、その振動数及び/またはその値が被験者の下顎骨の動き及び/または頭部位置の変化を特徴付ける第3信号を識別するように適合される。前記識別ユニットは、該トリガー信号の制御下で起動されるように適合された分析ユニット13に接続される。また、該分析ユニットは、前記第3信号を睡眠障害に関連する振動数及び/または値を特徴付けるプロファイルと比較し、該比較の結果を産生するように適合される。
【0149】
特に、前記識別ユニットは、メモリユニットも含むデータ分析ユニットに含まれてもよい。該メモリユニットは、N個の下顎骨運動クラスを保管するように構成される。ここで、Nは、1より大きい整数である。また、前記N個の下顎骨運動クラスのうちの少なくとも1つは、睡眠時呼吸障害の発症を示す。各第j(1<j<N)下顎骨運動クラスは、回転値の第jセットで構成され、各回転値の第jセットは、該第jクラスに関連付けられた下顎骨回転の少なくとも1つの速度、速度変化、振動数、及び/または振幅を示す。また、各第j下顎骨運動クラスは、任意選択で、加速度値の第jセット及び/または磁場データの値の第jセットを含む。前記データ分析ユニットは、サンプリング期間中に測定された回転運動のデータ、及び任意選択で、測定された加速度のデータ、及び/または測定された磁場データをサンプリングするように構成されたサンプリング要素を含み、それにより、サンプリングされた回転運動のデータ、及び任意選択でサンプリングされた加速度のデータ、及び/またはサンプリングされた磁場データを取得する。前記データ分析ユニットは、サンプリングされた回転運動のデータから複数の測定された回転値を導出し、任意選択で、サンプリングされた加速度のデータ、及び/またはサンプリングされた磁場データから複数の測定された加速度値及び/または測定された磁場値を導出するように構成される。前記データ分析ユニットは、該測定された回転値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するようにさらに構成される。任意選択で、前記データ分析ユニットは、該測定された加速度値及び/または磁場値を前記N個の下顎骨運動クラスと照合するようにさらに構成される。従って、睡眠時呼吸障害の発症は効果的に検出される。
【0150】
前記データリンクについて、前記装置及び前記感知ユニットは、好ましくは、無線で通信するが、ケーブルでの接続も同様に可能であることは言うまでもない。該装置は、好ましくは、データ処理センターに配置されたコンピューターの一部である。無線通信は、例えば、電話通信ネットワークの助けを借りて行われ、前記感知ユニットは、例えば、電話と通信できるブルートゥースシステムを備えている。従って、前記感知ユニットによって産生された測定信号のストリームは、該装置に送信される。
【0151】
本発明は、次の観察された事実に基づいている。即ち、下顎骨の動きが胸の動きによって決定されるだけでなく、文献に示されるように、下顎骨に取り付けられた筋肉を制御し、その役割が下顎骨を配置する脳の神経中枢からの直接制御によっても決定される。観察されたように、頭部の位置、そしてとりわけ睡眠中の頭部の変化は、前記胸部の動きとは完全に無関係に、全ての下顎骨の動きを停止させるか、その動きを開始させることがある。即ち、下顎骨の動きは、頭部の位置がそれを可能にし、かつそれを固定していない場合にのみ、胸部の動きに追従することができる。従って、頭部の動きは、下顎骨の動きを作用させたり、麻痺させたりすることができる。この意味では、微小覚醒または覚醒を特徴づけ、下顎骨の動きに他の影響を与えうる脳の活性化の付帯徴候に他ならない。
【0152】
実際、頭部の動きは、睡眠状態で折りたためるときに押しつぶす力を加えるか、上気道の筋運動単位を活性化/非活性化することによって、上気道の通過性に影響を及ぼす。睡眠中のこれらの頭部の動きは、上気道の通過性を改変するため、下顎骨の動きを把握し、時間内に重ね合わせる必要がある。従って、下顎骨のこれらの動きを正しく分析し、睡眠中の被験者によって産生される気流から始まる呼吸制御の変動の観点から解釈することができる。言い換えれば、微小覚醒または覚醒の際であるかどうかにかかわらず、睡眠中の頭部の位置及びその変化を考慮して下顎骨の動きを感知及び分析することは、下顎骨に取り付けられた筋肉を活性化/非活性化することにより、下顎骨を配置または再配置するための脳制御を考慮に入れることである。脳の活性化の以外に、呼吸振動数での頭部の位置の動きは気管牽引によって産生されるが、同じ振動数での下顎骨の動きは神経中枢によって直接決定される。
【0153】
下顎骨が形成する可動骨をレバーのように作動させることにより、脳制御は、無呼吸を回避するために舌及びそれに付着した咽頭部の筋肉を活性化することによって上気道を硬化させようとする。該目的のために、脳の制御は、呼吸振動数で、睡眠中に口を上げたり下げたり、口を開閉したりする筋肉に依存する。脳の制御はまた、呼吸振動数で下顎骨を前方に押す筋肉に作用することもでき、あるいは、異なる方向への動きに関与するこれらの組み合わされた筋肉群を組み合わせて作用することさえできる。
【0154】
睡眠中の頭部の位置変化は、しばしば、例えば頭皮に配置された電極でも記録される覚醒または微小覚醒を伴う。これは、脳の皮質の活動を記録する。何しろ下顎骨の動作に変化があった頭部の動きがある場合、頭皮電極は活性化を記録しないことがある。この理由は、活性化が皮質下にとどまり、時には脳幹で純粋に自律神経であるためである。これらの頭部の動きは、胸部の動きとは完全に別にして行われる。
【0155】
頭のこの位置が体の位置と一致しなくなったため、または頭の位置の変化は、神経中枢の制御下での自発的または非自発的な寝返りの付帯徴候であるために、首のゆがみが作られる。その結果となる頭部の位置の関数として、垂直面及び水平面において、下顎骨の運動を分析することは、気道を通る気流の流れに対する抵抗の変化の際に脳の神経中枢による制御が採用する呼吸努力のレベル、特にその振幅に関する情報を提供する。呼吸の事象は、神経中枢からの制御が増加すると努力の増加と見なされ、神経中枢からの制御が減少すると中枢神経性と見なされる。生物が無呼吸から抜け出すことを可能にする脳制御は、上気道の圧迫を防ぐために、理想的には頭部が体と軸方向に整列した状態で、垂直面で上向きに、水平面で前方に下顎骨レバーを作動させる必要がある。(微小)覚醒自体は、独立した大きな下顎骨運動(IMM)によって識別される。その持続時間は測定され、呼吸または非呼吸にかかわらず、追従する下顎骨運動とは明確に区別される。
【実施例2】
【0156】
【0157】
睡眠中に、感知ユニットからの測定データストリームに影響を与える分析の結果が情報を提供し、加速度計からの信号によって示される頭部位置の変化がしばしばその状態変化のマーカーとなるのは、脳の制御状態にある。
図2A及び
図2Bは、ベッドに横臥しているヒトの頭部の位置が変化している間のストリームを示している。この動きは、睡眠医学以外の専門家によって研究されているように、覚醒時の下顎骨の動き、従って咀嚼、発声、または嚥下中の意識状態に重ね合わせることができない。その後者は、睡眠状態ではない意識のある被験者において、歯科、口腔病学、顎顔面外科、歯列矯正、歯列矯正、ロゴペディック等で研究された咀嚼、発声、及び嚥下の問題に関係している。
【0158】
図2Aは、左から右へ、最初に、頭部が左に向けられる第1位置から、頭部が右に向けられる第2位置への頭部の変化を示している。その後、頭部が再び左に向けられる第3位置への変化が見られる。加速度計によって産生される第1ストリームF1は、測定が行われる3次元の3本の軸(Fx、Fy、Fz)に関連する。ジャイロスコープによって産生される第2ストリームF2も、該3本の軸に関連する。頭部が回転する瞬間に、この2つのストリームが高振幅のピークをもつことがはっきりと分かる。また分かるように、頭部が第1位置にあるとき、ストリームF1及びF2は、特にストリームF1の垂直方向yにおいて、参照1によって示される、脳制御状態の増加を示すよりも大きな振幅の変動及び制御強度の変動を有する。さらに、これは、胸部の動きを示すストリームFtにも見られる。従って、前記分析ユニットは、これらのストリームから、その人が増加した変動する呼吸努力を示していることを推測することができる。
【0159】
頭部が回転し、かつ第2位置にあるとき、ストリームF2と同じくらいのストリームF1の振幅が著しく減少していることが分かる。参考文献2に示されているように、ストリームF1のレベルは減少し、これは口が開いたことを示す。また、空気流F5が減少し、酸素流が失われる可能性があることも分かる(参考文献3)。参考文献4に示されているように、ストリームF2でも振幅が減少していることが分かる。これは、脳の制御振幅が失われていることを示している。これは全て、努力の振幅が減少し、呼吸が影響を受けていることを示す(空気流F5を参照)。これにより、さらに脳が活性化され、指令が産生される。頭部が左に向くように、その位置が新たに変化する。この後、ストリームF2で、振幅が大きくなり、空気流F5が増加したことが分かる。従って、分かるように、脳の制御は呼吸を正常化する傾向がある。
【0160】
図2Bは、頭部の位置のわずかな変化でさえ、脳の制御によって引き起こされることを示している。
図2Bは、頭部がわずかに右に回転した場合の変化を示している。ストリームF1は、最初に、矢印1によって示されるように、脳制御状態が増加し、呼吸努力が生じたことを示している。参考文献2で示されているように、頭部の位置が変化すると、加速度計(F1)は、脳の活性化を示す振幅及び振動数の増加を示すことが分かる。ストリームF8(EEG)及びストリームF7(EMG)では、脳の活性化が30秒間はっきりと見られ、ここで拡大されている(参照2)。次に、ストリームF1(参照3)のレベルが、振幅が減少した脳制御状態を示し、下顎骨が上がっている(口が閉じている)ことが分かる。
【0161】
意外なことに、本発明によるシステムが採用する技術は、睡眠中の下顎骨運動の性質、その中枢的な起源、神経中枢の制御に関する情報を提供する。即ち、咽頭を硬化させて換気を維持し、それによって被験者の酸素化を維持する必要があるが、その頭部の末端は、睡眠中に理想的には体、特に体幹と整列したままでなければならない。従って、下顎骨の動きは、頭部の位置とその変化の関数として解釈する必要がある。そうしないと、睡眠中になぜこれは停止か開始し、または振幅が変化するのかが理解されない。
【実施例3】
【0162】
【0163】
本明細書で提供される技術は、歯ぎしりの検出に適用できる。歯ぎしりの既知の診断は、実験室での睡眠ポリグラフ検査中に咬筋と前側頭筋、そしておそらく前側頭筋の筋電図検査を課す。該検査には、さらにオーディオビデオ記録が含まれる。睡眠記録の需要は睡眠実験室の記録能力に比例していないため、該検査は費用がかかり、面倒で、アクセスしにくい。該録音は、終夜での実施及び大変さによって、その再現を妨げる。また、歯ぎしりを追跡するには、毎晩体系的に再現されておらず、断続的に残ることがあるため、数夜にわたって録音を行うことが必要である。従って、実際の生活条件下で、睡眠の自然な進行を妨げることなく、被験者の自宅で実施する必要がある。最適に歯ぎしりを制御し、治療の効果を検証するために、その結果を迅速に提供する必要がある。
【0164】
現在、歯ぎしりは、これを行うための技術的な解決策がないため、家庭での検出は実施されていない。咬筋や側頭筋の表面筋電図検査等の提案された解決策では、確実な診断はできない。実際、咬筋または側頭筋の筋電図活動の唯一の記録は、夜間の寄食活動によって、または筋肉の脂肪媒体がその筋電図(EMG)活動の捕獲を妨げるために、影響を受ける可能性がある。ビデオ録画により、実験室では、下顎骨の動き及び得られる筋電図活動が歯ぎしりと関連することを確認できる。
【0165】
本発明によって提案された技術的解決策は、前記感知ユニットの助けを借りて、好ましくは空間における下顎骨の動きを3本の主軸上で記録し、次に前記分析ユニットの助けを借りて、その信号のアルゴリズム分析を実施することからなる。該分析によって、咬筋の表面筋電図検査中のRMMA(リズミカルな咬筋活動)、即ち位相性であるが時には強直性の活動の検出によって確立された、歯ぎしりの発症中に特にかつ排他的に発生する下顎骨運動を識別することができる。前記感知ユニットによって産生された信号のストリームは、前記3本の軸で分析され、これにより、歯ぎしり中に課せられ、エナメル質の摩耗に寄与しうる横方向の動きを捕らえることもできる。歯ぎしりと呼ばれる下顎骨運動は、前側頭筋等の下顎骨の昇降群だけでなく、内側広筋と外側広筋の両方の内側翼突筋と外側翼突筋も含む作動筋と拮抗筋の同時作用の結果である。
【0166】
図3A及び
図3Bは、歯ぎしり中に捕捉ユニットによって捕らえられたストリームを示している。ストリームF7D及びF7Gとして見られる、記録された筋肉のEMG活動は、下顎骨運動に寄与することが確認されている。咬筋及び/または前側頭筋電図活動の典型的な特徴は、歯ぎしりの病因でもある下顎骨運動に反映される。後者は、変調信号の形で、それらを産生する歯ぎしりの強直性(持続性)または位相性(リズミカル)筋電図発作に重ね合わされる。このサイクルまたは発作の期間は計算できる。
【0167】
歯ぎしりの発症前、矢印1で示される努力期間は、下顎骨運動の分析と、皮質または単に自律神経の皮質下活性化を伴う矢印2で示される一時的な覚醒によって簡単に識別できる。皮質であるかどうかにかかわらず、例えば、ストリームF8で示されるように、EEGの皮質波振動数の変化にのみ反映されるか、皮質下でEEGには表示されなく、活性化は以前の下顎骨運動によって十分に特徴づけられており、文献に記載されているように、歯ぎしりの発症に先行することが多い。分かるように、咬筋の位相性及び/または強直性の活動のピークは、下顎骨運動の極端な位置と同時に発生する。これにより、筋肉の動員と下顎骨可動骨の運動との関係が明確に確認された。
図3Aでは、ストリームF1において、矢印1で示される努力の期間、続いて矢印2で示される活性化、そして、矢印3で示される歯ぎしりによる下顎骨の動きが見られる。
図3Bは、
図3Aの右上の矢印Kで示される10秒間の拡大図である。
図3Bは、右咬筋(F7D)と左咬筋(F7G)のEMGの活動と、歯ぎしりの下顎骨運動との同期性を示している。
【0168】
ここでは、右咬筋(F7D)のストリームF7(EMG)の再開された活動が、左咬筋(F7G)の活動及び歯ぎしりによる下顎骨運動の活動と同期していることが分かる。この図で明確に示されているように、F1ZとF2Xで明確に示されている一定期間の努力の後、異常な振幅の下顎骨の位置が呼吸振動数で変化した。F1Zでは、頭部の動きを伴う大きな動きが続き、ジャイロスコープF2Xでは、皮質の活性化を示す動きの後、歯ぎしりの発症に対応する高周波(1 Hz)での4つの回転運動が続く。その後、努力期間が再現される。
【0169】
それらの固有の特性、即ち、とりわけ信号ストリームの振動数特性及び形態学的特性を介して分析された頭部及び下顎骨の動きは、それらの産生メカニズムの関数として区別され、時間的に連続的に順序付けられ得る。これらの特性は、例えば、測定された信号の振幅、面積、または勾配を分析することで観察できる。それらは、例えば:
・呼吸努力に関連する動き、その後、
・一時的な皮質活性化または皮質下活性化に関連する動き、その後、
・歯ぎしりのサイクル中の発作数、2つの発作間のサイクルの長さ、発作の持続時間等、明確に区別できる歯ぎしりまたは咀嚼の動きに関連する動き。
【0170】
下顎骨の動きは、下顎骨を上下させるための筋肉の作動/拮抗の作用によって産生される。後者は、三叉神経ドライブブランチの脳神経中枢のコアによって直接制御される。ここで、下顎骨の動きは、下顎骨が平面に対して移動している間、例えば水平面に対して垂直に移動しているときに下顎骨が示す角度の変化によって感知することができる。
【0171】
下顎骨の動きは、胸部の動きが続いていても、頭部の位置が変わった場合にのみ開始または停止することがある。頭部の位置変化は、常に皮質または皮質下の微小覚醒と同時に起こり、従って脳神経中枢による制御の障害となる。下顎骨運動は、腹部や胸部の動きがなくなった場合でも、即ち、脊髄神経によって制御された吸気中に胸部と腹部の拡張を行う横隔膜筋が機能しなくなったり停止したりした場合でも、睡眠中の呼吸数で継続する場合がある。次に、下顎骨運動は、別の平面、例えば水平面で、前から後へ、または後から前への動きの形で、即ち、気管牽引が影響を受ける吻側尾側牽引の平面以外の平面で発揮され得る。
【0172】
ジャイロスコープによって供給される第2ストリームと同様に、加速度計によって供給される第1ストリームには、上向き、即ち気管牽引によって産生される牽引力が発揮する方向とは反対の方向である下顎骨位置の呼吸振動数での緊張相運動が見られる。この上向き及び前向きの動きは、それぞれ、前側頭筋及び咬筋によって、翼突筋の収縮によって、特に上部筋肉群によって産生される。
【0173】
呼吸努力が始まり、中央呼吸制御の増加により下顎骨運動の振幅が増加すると、下顎骨運動に課せられる方向も、引っ張りの平面であった垂直面以外の平面にある可能性がある。これは、例えば、翼状突起群よりも多く動員される翼状突起群等、他よりも多く動員される特定の筋肉群の作用によるものである。呼吸振動数での動きは、慣性ユニットによって捕らえられるより水平な方向に発生する可能性がある。該慣性ユニットは、加速度計とジャイロスコープで構成される。実際、該努力を垂直面でのみ観測すると、努力期間は信号分析から逃れる可能性がある。前記動きはまた、別の方向ではなく、主に一方向(垂直または水平)で発生する可能性がある。
【0174】
呼吸運動の形状、特にその加速勾配は、動員された筋肉群の関数として変化する。垂直運動中、咬筋が活動する時、吸入時の動きの方向は上向きで、拮抗筋が優勢であるときに観察される方向とは逆の方向であり、動きの減少を引き起こし、この状況は動きの波形に変化をもたらす可能性がある。
【0175】
前記感知ユニットによって供給されるストリームの該分析によって、吸入中の下顎骨の動きが、下降筋の活動が支配的である場合は下向きであり、上昇筋の活動が支配的である場合は上向きであるという事実を検証することができる。捕らえられた速度と加速度の変化を分析することで、該情報を取得する。これにより、被験者の呼吸発症を回避するための反応のレベルと性質、及び上気道を安定化させるための下顎骨上昇筋の多少の動員にアクセスすることができる。
【実施例4】
【0176】
【0177】
観察されたストリームは、発症中の下顎骨の行動を説明する4つの特徴の識別である。これらの特徴から、被験者にとって、睡眠の特定の段階において、頭部の特定の位置での呼吸発症のメカニズム、及び脳が自身解放のための反応を理解できる。発症の進行状況の説明に加えて、短期的及び長期的に再発するリスクの情報を特定することができる。これらの特性は、例えば、ループゲインと呼ばれる障害に対する応答の振幅の値が高い場合、即ち障害に対する応答が高い場合等、予測値を持つ。
図4にループゲインを示す。この図では、矢印1は、ストリームF1の崩壊点を示す。即ち、下顎骨が例えば被験者の肥満によって決定される重さ等の局所的な解剖学的制約の影響下で受動的に下がるように、脳制御の行使がなくなったソリューションである。矢印2は、ストリーム2でも同時に見られる下顎骨の動きを示している。矢印2の先頭部にある下顎骨の動きのピーク間の振幅が低い。次に、その後、口が開こうとする間、下顎骨が低くなる。これは、下がるストリーム1のレベルで見ることができ、ピーク間の振幅が増加することになる。次に、ストリーム1のレベルは、覚醒点に対応する3で示されるレベルに到達し、そして、矢印4で示されるはるかに大きな振幅ピークが続く。該振幅の大きい動きは、ストリームF1とF2のピークによって示されるように、口を閉じることを伴うループゲインと、その間に口が再び閉じたにもかかわらずストリーム1が到達する最大値の測定を可能にする。ループゲインは、障害に対する応答を示す。これは、分子に対する矢印4と3、及び分母に対する矢印3と1で示される注目すべき点の差の比率として計算される。
【0178】
短い無呼吸の、特に中枢的な形で、発症が自発的に繰り返されるのは高いリスクで見られる。上気道の筋肉、特に位相性の獲得を評価することにより、発症期間を予測することができる。低い筋肉ゲインは、高いゲインの場合よりも発症が長く続くリスクがあることを意味する。発症を終了させる活性化の直前の下顎骨位置の最低ポイントである覚醒ポイントは、発症期間の予測も可能にする。該位置があまり下がっていない場合、発症が繰り返されるリスクがあり、場合によっては周期的に発生する。また、解剖学的な制約の影響、例えば、重さや上気道における脂肪組織の局所蓄積に関連するもの等は、特に前記加速度計での測定値に基づいて下顎骨の位置を計算することで、後者がまだ中枢より優勢の時に時微小覚醒または覚醒の直後の下顎骨の降下時(崩壊点)に測定し得る。
【実施例5】
【0179】
【0180】
前記感知ユニットによって産生される測定信号のストリームは、測定信号に影響を与えるノイズを含んでもよい。これを利用して、装置に受信されたときに該ストリームを前処理してもよい。該前処理の原理は、単に強化された信号を産生することである。当業者は、分析から、増強された脳制御状態のある期間中に下顎骨の位置、従ってその速度と加速度が呼吸数と同じ次数の振動数、即ち0.15 Hz~0.60 Hzの間でほぼ同じ値で周期的に変化することを知ることができた。例えば、前記加速度計及びジャイロスコープからの測定信号のローパスフィルタリングによって、呼吸振動数の帯域のより低い振動数のみを保持することによって、微小覚醒に関する信号を分離することが可能である。
図5は、該前処理を適用することにより、活性化を表す微小覚醒が、増強された脳制御状態の期間と比較して抑制されることを示している。各微小覚醒の際の信号に明確なピークが見られる。該前処理の適用は、例えば、デジタル信号処理の分野でよく知られている6次バターワースフィルタの適用によって可能になる。
【0181】
逆に、呼吸振動数帯域に対応するバンドパスフィルターを用いて捕らえられた信号の1つをフィルタリングすることにより、増強された脳制御状態の期間を確保することができる。この種のフィルターを前記ジャイロスコープからの信号に適用した結果を
図6に示す。この図から、努力期間中の信号値が高いことが分かる。
【0182】
測定信号のストリームに関する情報を識別するために用いられる特性は、例えば次のとおりである:
- 頭部と下顎骨の位置(例えば、ロール角、ピッチ角、及びヨー角)
- 下顎骨及び頭部の各軸に沿った加速度
- 下顎骨及び頭部の各軸に沿った回転速度
- 下顎骨及び頭部の1つまたは複数の軸の周りの回転速度の標準(空間では、ベクトルuが座標(x、y、z)をもつ場合、その標準は次のように記述される:(x2 + y2 + z2)0.5)
- 下顎骨及び頭部の1本または複数の軸に沿った加速度の標準
- 10または30秒間測定された値、または2回の活性化で定義された値の中央値
- 10または30秒間測定された値、または2回の活性化で定義された値の平均値
- 10または30秒間測定された値、または2回の活性化で定義された値の最大値
- 10または30秒間測定された値、または2回の活性化で定義された値の最小値
- 10または30秒間測定された値、または2回の活性化で定義された値の標準偏差
- 測定値の指数移動平均値(半減期は5、60、120、及び180秒を有する)
- 測定値の全ての振動数、呼吸振動数帯域(0.15~0.60 Hz)、低振動数帯域(0~0.10 Hz)にわたるフーリエ変換及び積分
- フーリエ変換及び測定値のエネルギー最大振動数または第2エネルギー最大振動数の識別
- 測定値の90秒間ウィンドウにわたるシャノンエントロピー
- 過去と未来を考慮に入れるために、下顎骨、頭部、及びその他の特性の回転速度及び加速度信号の時間オフセット。
【0183】
上記の方法を互いに組み合わせることも同様に可能である。
【0184】
測定信号のストリームで特性が識別されると、分析ユニットはそれらの分析に進むことができる。該目的のために、例えば、ランダムフォレストタイプのアルゴリズムを呼び出す人工知能を使用する。睡眠ポリグラフの結果が分かっている一連の信号フラグメント全体からこのように抽出された特徴は、新しいフラグメントのパターン認識タイプの分類を可能にするモデルを産生するために、期待される結果と並行してアルゴリズムに注入される。
【0185】
信号パターンは、信号系列の特定の状態であり、パラメーターを介して物理的または数学的に表示できる。パターン認識は、すでに取得された情報または該信号から抽出された統計パラメーターに基づく自動学習アルゴリズムを用いて、該信号における特定のパターンを識別する(分類する)ためのプロセスである。
【0186】
深層学習は、人工ニューラルネットワークと呼ばれるヒトの脳の構造に触発されたモデルを含む自動機械学習手法である。これらのネットワークは、データ内の情報の抽出と結果の産生を可能にする神経の複数の層で構成される。該手法は、画像、系列、生物学的信号等の非構造化タイプのデータに非常に効果的である。
【0187】
自動学習(または統計学習)は人工知能の分野であり、その目的は、マシン(コンピューター)にデータから情報を学習する能力を与える統計モデリング手法を適用して、タスクごとに明示的にプログラムすることなく、タスクを解決する際のパフォーマンスを向上させることである。
【0188】
人工知能(AI)は、機械が知的活動をシミュレートできるようにすることを目的とした一連の技術である。
【0189】
これらのモデルの開発は、例えば次のように進めることができる。
1)200人の被験者に感知ユニットを装備し、同時に睡眠分野での参照臨床検査である睡眠ポリグラフ検査を受けさせる。
2)次に、これらの被験者うちの40人から捕らえられた信号を用いて、各ランダムフォレストモデルをトレーニングする。該感知ユニットからの信号と前処理ステップ後に得られた特徴のサブセットを、ランダムフォレストアルゴリズムでの睡眠検査の参照結果と組み合わせて注入し、この入力データに基づいて分類モデルを産生する。
3)次に、残りの被験者をモデル検証に使用する。これらの被験者に対応する感知ユニットからの信号を、前のステップで産生されたモデルに注入し、結果を産生し、それらの結果を睡眠ポリグラフで得られた結果と比較する。モデルで得られた結果と睡眠ポリグラフで得られた結果が十分に一致すると見なされた場合、該モデルは有効であると見なされる。それ以外の場合、該セクションのステップ2から開発を再開する。
【0190】
被験者の睡眠中に生じる障害を確実に識別できるようにするために、被験者が実際に睡眠段階に入ったことを観察できることが好ましい。被験者が実際に睡眠段階にあることが検出されると、測定信号のストリームに存在する信号を正しく解釈できるように、被験者の睡眠段階を確立することも可能になる。入眠すると、下顎骨の、例えば0.15 Hz~0.60 Hzの呼吸振動数が想定される。安定な睡眠状態を確認するには、該呼吸数は、数十秒間連続に存在する必要がある。
【実施例6】
【0191】
実施例6では、被験者の様々な睡眠段階について説明する。特に、表1(以下、実施例の後に記載)は、被験者の様々な睡眠段階、及び該被験者の下顎骨の動きや頭部位置との関係を示している。覚醒状態を本質的に特徴づけるのは、その状態では下顎骨が予測できない動きをするのに対し、被験者では、睡眠障害のない睡眠状態は、下顎骨が呼吸振動数で回転運動を行うことによって特徴づけられるということである。覚醒状態やそれぞれの睡眠状態を検出するために、分析ユニットは、好ましくは、30秒間の分析ウィンドウを用いて機能し、バンドパスフィルター及び/または指数移動平均を用いて第1及び第2ストリームの前処理を行う。覚醒状態やそれぞれ睡眠状態を特徴付けるプロファイルを抽出するために、例えば、正規化された平均のレベルが考慮される。該レベルは、実際には、睡眠状態よりも覚醒状態の方が高くなっている。
【0192】
また、睡眠中には、N1、N2、N3、及びREM(急速な眼球運動)の段階が区別される。N1の睡眠段階では、呼吸数での下顎骨の動きに変化が見られ、成人ではよく数分間に限られた期間のピーク間振幅の変動が見られる。頭部の位置は一般的に安定しているが、下顎骨の位置は予測できないままであるか、定期的に変化する可能性がある。処理装置を用いてN1の睡眠段階を検出するには、動きの連続性を確保するために30秒間の分析ウィンドウを使用することが好ましい。信号の振動数のエントロピーを計算することによる第1及び第2ストリームの前処理を使用することができる。正規化された平均のレベルは、該N1の睡眠段階を特徴付けるプロファイルとして最初のアプローチで考慮されるが、分析の精度を向上させるために他のアプローチを使用することもできる。N1の段階では、正規化された平均のレベルはN2またはN3の段階よりも高くなる。
【0193】
前記分析ユニットは、第2期間、特に30秒間に、受信された第1及び第2ストリームの振幅及び振動数の正規化された平均及び変動が、N1の睡眠状態を特徴付けるレベルを有するかどうかを検証するように適合される。該分析ユニットは、該受信された第1及び第2ストリームの振幅及び振動数の正規化された平均及び変動がN1の睡眠状態を特徴付けるレベルを有すれば、N1の睡眠状態を示す第2データ項目を産生するように適合される。
【0194】
N2及びN3の睡眠段階では、脳制御の振幅及び/または振動数の変動は、N2からN3へと益々低くなる。従って、通常の被験者では、これらの段階で下顎骨または頭部の動きは事実上的にない。処理装置を用いてN2またはN3の睡眠段階を検出するために、動きの連続性を確実にするため、好ましくは、30秒間の分析ウィンドウを使用する。好ましくは、ローパスまたはバンドパスフィルターを使用した前処理も使用する。正規化された平均のレベルは、該N2の睡眠段階を特徴付けるプロファイルとして最初のアプローチで考慮される。N2及びN3の段階では、それぞれ正規化された平均のレベルは益々低くなる。正規化された中央値のレベルは、N2またはN3の段階または他の統計的測定手法を識別するためにも使用できる。
【0195】
前記分析ユニットは、第2期間、特に30秒間に、受信された第1及び第2ストリームの正規化された平均及び/または正規化された中央値が、それぞれN2の睡眠状態及びN3の睡眠状態を特徴付けるレベルを有するかどうかを検証するように適合される。該分析ユニットは、該受信された第1及び第2ストリームの正規化された平均及び/または正規化された中央値が、それぞれN2の睡眠状態及びN3の睡眠状態を特徴付けるレベルを有すれば、それぞれN2の睡眠状態及びN3の睡眠状態を示す第4及び第5データ項目を産生するように適合される。
【0196】
ヒトの場合、REMの段階は下顎骨の予測できない動きを特徴としている。処理装置を用いてこの種の段階を検出するには、動きの連続性を確保するために、30秒間の分析ウィンドウを使用することが好ましい。成人の場合、予測できない振動数及び/または振幅のこのタイプの動きは、多くの場合、N1の段階よりもREMの段階ではより長く続く。N1の段階中のこのような動きの期間は、多くの場合、数分間に限られる。口が開くため、脳の活性化中の下顎骨の動きの方向はしばしば負になる。REMの段階では、呼吸振動数での下顎骨の動きの変動が見られ、周期的ではないピーク間の振幅の変動が見られる。頭部の位置は通常、REMの段階の間変化しない。検出はN1の期間と同様の方法で行われ、その目的は、下顎骨の運動時に呼吸の不安定性を観察することである。EEGが捕獲できる皮質の活性化なしで、かつ頭部の動きなしでREMの段階に入ることがよくある。従って、加速度計は何も測定しないが、ジャイロスコープは下顎骨回転の変化を観察する。これは、REM段階への移行を正しく観察するために、ジャイロスコープからの信号と加速度計からの信号の両方を持つことの重要性を示している。REMの段階の終了は、加速度計及びジャイロスコープによって観察される脳の活性化と密接に関連することがよくある。該加速度計及びジャイロスコープは、独立した下顎骨の運動(IMM)と、該当する場合は頭部の動きを観察する。正規化された平均のレベルは、最初のアプローチとして考慮に入れることができる。例えば、振幅と振動数の変動も調べられる。睡眠の最初の15分間に、REMの検出によって、過眠症の診断が可能になる。
【実施例7】
【0197】
【0198】
例えば、信号の振幅及び/または動きの振動数の値の変動、及び/または信号のその他の統計的特性の、単独での、または分類器、例えばランダムフォレストタイプの分類器にグループ化されたこと等の睡眠中の比較分析は、統計的推論を実践するために適用され、様々な段階を区別することができる。該目的のために、
図14は、段階を区別するための下顎骨運動振動数の分布のスペクトログラムを示している。
図14では、縦軸は振幅密度を表し、横軸は振動数を表している。各睡眠段階のこれらの特定の特性は、機械の深層学習によっても識別できる。このアルゴリズム的及び/または統計的アプローチは、呼吸発症及び非呼吸運動発症の特性評価にも使用できる。
【0199】
以下の表は、睡眠の様々な段階における下顎骨回転信号の振幅レベルの変動の例を示している。この表において、「間隔」は百分位数2.5の上位レベルと百分位数97.5の下位レベルの間の間隔を意味し、「振幅」は最大値と最小値の差を意味する。また、「変動」は、考慮される値の広がりの測定値である。該測定は、各段階で30秒間に取得された1000個のサンプルに基づいている。
【0200】
前記分析ユニットは、第2期間、特に30秒間に、受信された第1及び第2ストリームの振幅及び振動数の正規化された平均及び変動が、REMの睡眠状態を特徴付けるレベルを有するかどうかを検証するように適合される。該分析ユニットは、該受信された第1及び第2ストリームの振幅及び振動数の正規化された平均及び変動がREMの睡眠状態を特徴付けるレベルを有すれば、REMの睡眠状態を示す第3データ項目を産生するように適合される。
【0201】
前記識別ユニットは、第1及び第2ストリームにおいて、被験者の下顎骨の回転及び/または頭部の動きを特徴付ける運動信号を識別するように適合される。前記分析ユニットは、例えば、これらの運動信号にバンドパスフィルター及び指数移動平均または信号の振動数のエントロピーの測定を適用することによって、これらの信号を分析するように適合される。例えば、呼吸振動数、及びこの指数関数的な移動平均に、例えば5、60、120、または180秒間に等しい半減期で、供給された信号の第1及び第2ストリームに、30秒間の第1観測期間で、このバンドパスフィルターを適用することによって、該分析ユニットは、信号が不安定であるかどうかを観察できる。この場合、覚醒状態が観察される。一方、信号が安定であれば、睡眠状態が観察される。
【0202】
前記分析ユニットは、30秒間~15分間、特に3分間、第1及び第2ストリームの第2期間にわたる指数関数的移動平均を、睡眠状態を特徴付けるプロファイルとして適用するように適合される。一部の分析では、該第2期間は30分間になることもある。該分析ユニットは、前記第2期間中に、前記指数移動平均が実質的に一定の値を有するかどうかを検証し、前記値がそれぞれ実質的に一定であるか、または一定でない場合、それぞれ睡眠状態または覚醒状態を示す第1データ項目を産生するように適合される。
【0203】
前記識別ユニットは、第1及び第2ストリームにおいて、被験者の下顎骨及び頭部の回転を特徴付ける運動信号を識別するように適合される。前記分析ユニットは、これらの運動信号の振動数のエントロピーを計算するように適合される。該エントロピー関数を、例えば分析ウィンドウが90秒間で、供給された信号の第1ストリームと第2ストリームに適用し、観測期間を30秒間にすることにより、該分析ユニットは正規化された平均のレベルを観測できる。該レベルが高い場合、該レベル値の関数としてN1またはREMの睡眠状態が観察される。
【0204】
前記識別ユニットは、第1及び第2ストリームにおいて、被験者の下顎骨の回転及び/または頭部の動きを特徴付ける運動信号を識別するように適合される。前記分析ユニットは、これらの運動信号にバンドパスフィルターまたはローパスフィルターを適用するように適合される。該バンドパスフィルターを、例えば呼吸振動数で、または該ローパスフィルター(例えば0.10 Hz未満)を、供給された信号の第1及び第2ストリームに適用し、観測期間を30秒間にすることにより、該分析ユニットは正規化された平均及び/または中央値のレベルを観察できる。該レベルの関数として、N2またはN3の睡眠状況が観察される。
【0205】
微小覚醒の形での脳の活性化は、3~15秒間の持続時間があり、皮質型または皮質下型である可能性がある。覚醒につながる脳の活性化は15秒間以上続く。REMの睡眠における皮質大脳の活性化は、特徴として下顎骨の繰り返しの降下を伴う可能性がある。皮質の活性化の場合、皮質延髄反射が活性化され、下顎骨の振幅が大きい、または持続時間が長い複数の突然の動きが観察される。反射神経は動きを増幅する。皮質下活性化の場合、この反射は活性化されず、下顎骨が作用した呼吸振動数に対して振動数の不連続性を伴う、より小さな振幅の突然の動きを1つのみ観察することができる。この動きは、皮質球反射が活性化されたときよりもはるかに低い振幅と短い持続時間である場合がある。従って、この動きはあまり目立たないことが多く、それを識別することは、非常に短い距離でのみ生じうる頭部の付随運動の検出によって支援され得る。
【実施例8】
【0206】
該さらなる実施例では、表2が参照される。表2は、皮質及び皮質下の脳活性化の特徴を示している。皮質活性化の結果として、下顎骨が大きな振幅で3~15秒間突然に開閉する。該皮質活性化が睡眠中に起こる場合、それは一般に被験者の頭部位置の変化を伴う。前記分析ユニットは、第1及び第2データストリームを用いて、10秒間のウィンドウで、この動きの振幅と持続時間を分析する。
【0207】
皮質下活性化の特徴として、下顎骨の運動変化の振動数及びその形状が不連続である。下顎骨はほとんどの場合安定したままである。前記分析ユニットは、第1及び第2データストリームを用いて、10秒間のウィンドウで、この動きの振幅と持続時間を分析する。該分析は、連続変数に対しても同様に実行できる。
【0208】
従って、前記分析ユニットは、第3期間、特に3~15秒間、受信された第1及び第2ストリームの信号の振幅が、それぞれ皮質及び皮質下活性化を特徴付けるレベルを有するかどうかを検証する。該分析ユニットは、該受信された第1及び第2ストリームの振幅がそれぞれ皮質及び皮質下活性化を特徴付けるレベルを有すれば、それぞれ皮質活性化及び皮質下活性化を示す第6データ項目を産生するように適合される。
【0209】
呼吸事象または非呼吸運動の発症の有無を検出するには、前記分析ユニットは、下顎骨位置の変化、下顎骨運動のピーク間の振幅、脳制御振幅の変動を示す下顎骨運動のピーク間の振幅の変動、及び下顎骨運動の振動数を分析する。低振幅が観察された場合、即ち、正常な呼吸運動中に観察された振幅に対応する振幅が、安定した中枢性(連続的で安定した口の開きの程度で発生する下顎骨運動)の存在下で観察された場合、睡眠障害を考慮すべき発症がない。
【0210】
高い呼吸制御振幅、例えば、0.3 mmを超える動きに対応する振幅が観察された場合、即ち、正常な動きの間に観察された振幅の変化よりも大きい振幅の変化が観察された場合、睡眠障害を示しうる運動または呼吸努力の増加が推定される。
【0211】
呼吸制御の振幅の大幅な減少が観察された場合、即ち、制御の中枢性が安定または不安定で、例えば少なくとも10秒間または2回の呼吸サイクルで、例えば0.1 mmのオーダーの低い値、またはゼロの場合、中枢型呼吸発症が推定される。
【0212】
発症中の上気道の筋肉反応のゲインを測定することによって、呼吸努力がない、または呼吸努力が正常と見なされるレベルを下回ってしまう中枢的な特徴とは対照的に、その閉塞性、即ち顕著な呼吸努力を診断することができる。該分析により、無呼吸及び低呼吸を閉塞性または中枢性として特徴付けることができる。呼吸努力の正常レベルは、睡眠の各段階について、睡眠中の正常な呼吸の期間中に事前に測定される。
【0213】
頭部の位置を変えると、睡眠段階の変更の有無にかかわらず、または睡眠と覚醒の間の移行事象の構成を変更できる。発症中の筋肉反応のゲインは、発症中の呼吸振動数での位相性下顎骨運動中のピーク間の振幅変化を測定することによって計算される。これは、位相運動中の発症の期間の開始と終了の間のピーク間の振幅差の測定値であり、ゲイン値を提供する単一の呼吸サイクルからすでに計算できる。この変化は最小限で、0.1 mm、またはそれ以下のオーダーである可能性があるが、3 cmに達する可能性がある。この変化は、下顎骨の絶対位置の変化を伴う場合がある。これは、位相性変位が加えられたときに口が多少に開いていることを意味する。この変化は、睡眠中の頭部位置を考慮して、水平と垂直の間の任意の方向に発生する可能性がある。
【実施例9】
【0214】
実施例9では、表3が参照される。表3は、呼吸事象と非呼吸運動発症を検出するための脳制御の典型的な動作を示している。分かるように、閉塞性無呼吸や低呼吸を検出するために、前記分析ユニットは、例えば、測定信号の第1及び第2ストリームの中央値及び/または平均値を使用する。分析の信頼性を高めるために、少なくとも2回の呼吸サイクルまたは10秒間の観察時間が望ましいであろう。閉塞性無呼吸や低呼吸は、周期的または非周期的に繰り返すことができる呼吸数での大きな脳制御振幅によって特徴付けられ、最終的に、脳の活性化中、下顎骨が大きく動く。特に、対象ストリームにおける下顎骨運動の振幅値の分布が分析される。
【0215】
呼吸努力関連覚醒(RERA)を検出するために、前記分析ユニットは、前述と同様に進行する。中枢性無呼吸や低呼吸を検出するために、観察期間は、同じく少なくとも2回の呼吸サイクルまたは10秒間であろう。
【実施例10】
【0216】
【0217】
歯ぎしりの状況は、例えば、30秒間の観察時間にわたって、下顎骨の回転及びその加速度の中央値、平均値、最大値、または他の統計値を用いて検出される。
【0218】
頭部位置の変化を伴うまたは伴わない脳活性化後の脳制御は、
・低い振幅で安定し;
・高い、または「増強する」中枢性で増強し;口が閉じ、後者が閉塞性であれば、発症が修正され;
・低い、または「低減する」中枢性で増強し;口が開き、発症が課せられ、閉塞的であり;
・低い、または「低減する」中枢性で減少し; 発症が課せられ、中枢性であり;
・外側翼突筋が動員されるときに、高い、または「高まる」中枢性で増強する。
【0219】
頭部の位置は変わらないが呼吸制御のレベルが変化する場合、下顎骨の位置とその変化は、呼吸制御のレベルに関する情報を提供し続ける。
図7は、皮質大脳の活性化を示す信号を示しており、前記加速度計及びジャイロスコープで測定された下顎骨の動きをプロットしている。
図7の左から右の方向に、最初に見られるのは、一定の振動数での下顎骨の動きを示すいくつかの振動である。下顎骨のこの動きは、ある程度の努力による呼吸によって引き起こされる。被験者は、空気が上気道を通過するように努力する必要がある。これは、ジャイロスコープからの信号の振幅で確認できる。特に、参考文献1は、皮質の活性化によって引き起こされる微小覚醒を示している。次に見られるのは、脳の活性化に続くより大きな振幅の動きを示す強い振動である。その次に見られるのは、該信号のレベルが増加したことである。これは、口が閉じており、下顎骨が10分の数ミリメートル上昇したことを示している。下顎骨が上昇し、通常の値よりも大きい振幅でその動きの呼吸振動数がまだ検出されている場合、ここで観察されるように持続的な閉塞性発症があると推定することができる。動きの振幅が小さくなった場合、呼吸制御は正常を超えて上昇しておらず、呼吸努力は正常化されていると言える。参考文献2は、皮質下活性化によって引き起こされる微小覚醒が、皮質の活性化よりも低い振幅の信号を産生することを示している。
【0220】
前記分析ユニットによる信号の処理後に得られた一連の結果は、例えば、以下の方法で提示され得る。
・催眠術:睡眠の段階と、記録中の覚醒/睡眠の移行の瞬間の進化;
・録音の開始時間と終了時間、ベッドで過ごした時間、及び/または横臥している時間;
・総睡眠時間;様々な有効性指標;
・睡眠の断片化;例えば、微小覚醒と覚醒(活性化)の数と指標、覚醒/睡眠遷移変化の数と指標;
・呼吸及び非呼吸運動発症の数と指標;
・例えば、大脳制御振幅の周期的、定期的、徐々に増減する変動を伴う中枢呼吸発症が繰り返される場合において、期間の持続時間が40秒間を超えると測定されると、おそらく心不全の状況で、周期的な呼吸のタイプが進行していると疑うことができる;
・周期的な性質の事象は、閉塞性の発症である場合もあれば、閉塞性の発症が周期的に繰り返される場合もある(例えば、ループゲインが高い場合や覚醒度が強い場合);
・呼吸努力に無関係な繰り返される皮質下活性化は、その四肢運動と関連していることを示唆している。
【0221】
頭部の位置は、睡眠中に生じる呼吸及び非呼吸運動発症の振動数と性質に影響を与える。睡眠中の頭部位置の変化は、常に脳からの活性化と同時に起こる。後者の間に、頭部は新しい位置を見つけ、この変化の際に複数の繰り返しの動きによって大きな振幅で動いた下顎骨は、その後再び呼吸駆動を受ける新しい位置を見つけ、その振幅は、中枢制御レベルの尺度になる。従って、
図7に示すように、発症の関連付けがある。従って、中枢の活性化、頭部の位置の可能な変更、及びそれに伴う下顎骨の位置の可能な変更、ならびに下顎骨の呼吸運動の振幅の変更を伴う能動的な呼吸制御が脳に統合される。活動と脳の活性化との関係を調べた。制御活動のレベルが変化すれば、例えば下顎骨の呼吸運動のピーク間の振幅の変化を介して、これはまず、脳幹における中枢の活性化と制御状態の変化の結果である。さらに、呼吸活動は下顎骨の回転運動中に前記ジャイロスコープによって捕らえられるが、中枢の活性化は頭部の線形運動中に前記加速度計によって捕らえられる。
【0222】
頭部の位置変化とそれに伴う大脳の活性化は、制御レベル、従って発症のタイプを変更することにより、呼吸または非呼吸運動発症であるかどうかにかかわらず、発症が発生するリスクを決定する。頭部の位置変化は、必然的に脳の活性化を伴い、気道内の空気流の状態を変更でき、特に、上気道の口径の筋肉の保持状態を変更することで、頭部が想定する新しい向きによって気道が機械的な圧壊力にさらされる可能性がある。
【0223】
発症中に皮質活性化または皮質下活性化中の下顎骨の動きと位置の再決定を、次のように説明できる。
(1)下顎骨は受動的であるか、または中枢運動制御が数呼吸サイクルの期間中は抑制されている間、下顎骨は筋肉組織の強壮性及び/または位相性のサポートなしで活性化の退行で低下する。口が閉じた後、受動的に口を開くことによるその位置の緩和、即ち下顎骨は、それをサポートすると見なされる筋肉組織の強壮部分が、可変距離であるが、顕著な勾配(>1/10 mm/s)で失われるため、サポートされなくなった。口を閉じることとそれに続く勾配の変化の前に記録された最低点との間の距離の測定は、神経中枢による制御の喪失がある活性化から続くときの咽頭部の受動的崩壊性のマーカーである。この状況は、数回(最大5回)の呼吸サイクルに相当する時間続く可能性がある。
下顎骨の位置を制御する筋肉組織の中枢制御(強壮部分の持続性)が失われないため、この弛緩は起こらず、口は閉じたままであるか、実質的に閉じたままである可能性がある。
(2)次に、下顎骨は、新しい活性化が誘発される前に、発症中に呼吸制御の振動数で下顎骨の位置を再度決定する、位相性及び/または強直性の形態での筋肉反応ゲインを示す。これから、下顎骨の位置と動きを制御する筋肉活動の再開が続く。この筋肉の活動を再開は、呼吸運動がある場合とない場合、即ち位相成分がある場合とない場合、即ち測定のバックグラウンドノイズを超えて測定可能な少なくとも1つのピーク間の振幅がある場合の新しい位置を表す勾配の変化によって現れる場合がある(>0.05 mm)。この後者の動きは、呼吸運動の再開、即ち呼吸振動数の変化を示し、従って、評価の規則に従って、閉塞性発症を中枢または混合として認定することを可能にする呼吸努力を示す。中枢性の動きにより、口の開きの程度が安定しているか、増加しているか、減少しているかを特定できるが、呼吸の動きのピーク間の振幅は、現在の努力の程度を反映している。
(3)中枢性または振幅点が最も低くなり、そこから口を閉じる動作が実行される。活性化によって決定される最初の動作は、覚醒度の閾値と同様である。この動きは、例えばREMの場合や、口を前方及び高い位置に保持している外側翼突筋と咬筋の活動によって呼吸努力が発揮されるために口が開かない場合等、下向きになることがあり、この動きは、活性化の証明である。後者は皮質または皮質下、または皮質下、次に皮質系列であるか、発症中に下顎骨があまり開かなかった場合、おそらく外側翼突筋の活動が原因で、活性化中に突然開く可能性があるが、ほとんどの場合、発症中に口が開いたため、活性化によって残酷に閉じられる。
(4)
図4に示すように、前記覚醒点からの活性化中の最大距離で下顎骨位置点が続く。それらを隔てる距離は、活性化中の下顎骨運動の振幅の尺度である。その値は、努力の再開の開始から覚醒点までの呼吸運動の振幅の変化を介して活性化される前に、発症中に展開された呼吸努力のレベルと測定され、比較される。これらの値の比率は、下顎骨のループゲインの程度の尺度である。
【実施例11】
【0224】
実施例11では、
図8が参照される。
図8は、被験者が閉塞性無呼吸を患っている状況での、第1測定信号ストリームF1(加速度計で測定)と第2測定信号ストリームF2(ジャイロスコープで測定)の例を示している。この図では、F5nは鼻フローを示し、F5thは口鼻の熱フローを示す。そこで観察されたように、T1~T2での期間中、及び対照1によって示される無呼吸に続いて、信号が安定していない。該期間の開始時に、前記ジャイロスコープによって供給される信号は、発症の終了時よりも振幅が小さいことが分かる。無呼吸または低呼吸を引き起こす閉塞と戦う必要があるため、発症中は中枢制御が強化される。同じT1~T2の期間中、加速度計(対照2)とジャイロスコープ(対照3)は、呼吸努力とそれに続く脳の活性化(対照4)を示していることが分かる。
【0225】
信号分析に示されたように、T1~T2間に閉塞性無呼吸がある場合、加速度計(F1)で呼吸振動数での下顎骨の動きが観察され、下顎骨の位置の結果が呼吸サイクルから別の呼吸サイクルへと益々下降するにつれて、口が開くと同時に振幅がピーク間の振幅から増加する(A )。同時に(C)、振幅が増加する回転呼吸運動の角速度は、努力自体が増加していることを示していることが分かる。文字Bの高さにおける該加速度計で測定された下顎骨の動きに対する活性化の影響に注意されたい。該活性化は、下顎骨の上方への動きを引き起こし、口を閉じる結果になる。この機会に、下顎骨は新しい位置になる。ジャイロスコープの文字Dのレベルでは、口を閉じるこの動きは純粋に回転ではないことが分かる。文字Bと文字Dの高さでの信号状態の変化は、脳の活性化(微小覚醒)の際の換気の再開と同時に起こる。
【実施例12】
【0226】
実施例12では、
図9が参照される。
図9は、被験者が閉塞性低呼吸を患っている状況における第1測定信号ストリームF1及び第2測定信号ストリームF2の例を矢印1で示している。矢印0は覚醒状態を示す。該
図9は、いびきの存在を示すオーディオセンサーによって捕らえられた第6ストリームF6と、顎の筋電図によって検出された第7ストリームF7、及び脳波によって検出された第8ストリームF8も示している。数秒間、より大きな振幅の一連の下顎骨運動(R)が見られ、そのたびに皮質または皮質下活性化が示される。これらの動きは、ストリームF6、F7、及びF8のピークの変化に付随している。実際、筋電図と脳波の信号は、この場合に脳の活性化があることを明確に示している。閉塞性低呼吸は矢印2及び3で示され、矢印2は努力及び口の開放を示し、矢印3は努力及び下顎骨の回転を示す。該低呼吸の後には、矢印4で示される微小覚醒の形での活性化が続く。微小覚醒間の呼吸下顎骨運動の高い値は、いびきによってさらに強調される高い呼吸努力を反映している。従って、前記加速度計からのストリームF1及び前記ジャイロスコープからのストリームF2で、いびきをかくと口を開けて下顎骨が回転することが分かる。従って、
図9は、脳の活動が、呼吸振動数での努力期間中、脳の活性化中と同じくらい下顎骨の動きを測定する加速度計とジャイロスコープによって記録される可能性があり、しかし、この場合、もはや通常は呼吸の振動数ではない振動数を示している。また、
図9において、数字0は、被験者の覚醒状態を示している。
【実施例13】
【0227】
実施例13では、
図10が参照される。
図10は、被験者が混合型無呼吸を患っている場合における第1測定信号ストリームF1及び第2測定信号ストリームF2の例を示している。
図8のように、該
図10には、呼吸振動数に対応する振動数で下顎骨の角速度の増加が見られる。数字1は、数字2で示される制御と努力の欠如と密接に関連する呼吸流の欠如、及びその後続の数字3で示される脳の制御と努力の回復を示している。
【実施例14】
【0228】
実施例14では、
図11が参照される。
図11は、被験者が中枢性無呼吸を患っている場合における第1測定信号ストリームF1及び第2測定信号ストリームF2の例を示している。ピークFは、呼吸再開時の頭部と下顎骨の動きを示している。また、ピークFの間には、いわば下顎骨の動きがないことが見られる。数字1は、数字2で示される努力の欠如、及び数字3で示される努力の活性化と再開と密接に関連する呼吸流の欠如を示す。
【実施例15】
【0229】
実施例15では、
図12及び13が参照される。
図12は、被験者が中枢性低呼吸の特徴である脳起源の全ての制御の一時的な消失を患っている場合における第1測定信号ストリームF1及び第2測定信号ストリームF2の例を示している。該消失は、口が筋肉に支えられなくなったために受動的に開くことを特徴としている。従って、ストリームF1及びF2で分かるように、ピーク間で信号が活動を示さない。一方、ピークの瞬間には、下顎骨の動きの大きな振幅が観察される。ピークの終わりに向かって、非呼吸振動数に対応する動きが見られ、これは、脳の活性化の結果であり、その後、微小覚醒を引き起こす。数字1は、サーミスタからストリームF5で流量の減少がはっきりと見える低呼吸の期間を示す。数字2及び数字3は、中枢性低呼吸の期間中のストリームF1とF2の下顎骨運動の消失を示す。
図13は、被験者が脳の活性化で終了する長期の呼吸努力を経験する場合における第1測定信号ストリームF1及び第2測定信号ストリームF2の例を示している。加速度計F1からの信号は、Hで示される位置で、頭部と下顎骨の大きな動きを示していることが分かる。その後、ストリームF2は実質的に一定のままであるが、該加速度計からのF1ではレベルが低下する。これは、いずれにせよ下顎骨の動きがあり、ゆっくりと下がっていることを示している。次に、活動期間を終了する活性化中の頭部の位置の変化の結果である高いピークIが続く。数字1は、いびきをかくことによってマークされたこの長い期間の努力を示す。数字2で示されているように、該努力は時間とともに増加していることが分かる。該努力は、数字3で示されているように、文字Iで示されている頭部と下顎骨の動きをもたらす脳の活性化で終了する。
【0230】
前記分析ユニットは、前述のように人工知能を用いて処理した結果であるこれらの様々な信号のメモリモデルを有する。該分析ユニットは、これらの結果を用いて前記ストリームを処理し、その結果の分析に関する報告書を作成する。
【0231】
前記加速度計は、頭部の動きを測定するのに特に適しているのに対し、回転の動きを測定するジャイロスコープは、下顎骨の回転運動を測定するのに特に適していることが分かった。従って、頭部の位置を変えることなく下顎骨の回転につながる脳の活性化は、前記ジャイロスコープによって検出することができる。一方、IMMタイプの動きは、特にこの場合に頭部が動くと、前記加速度計によって検出される。RMMタイプの動きは、それに非常に敏感なジャイロスコープによって検出される。
【実施例16】
【0232】
該さらなる例では、本明細書で提供される方法及び装置で使用される特徴抽出、データ処理、及びデータ記述のための例示的な手順が参照される。該手順は
図15に模式的に示されている。
【0233】
具体的に、特徴抽出、データ処理及び記述はR統計プログラミング言語(8)で行われ、機械学習の実験はPython言語のsci-kit learn及びSHAPパッケージを用いて行われた。
【0234】
各発症の下顎骨運動の生信号、または通常の呼吸の10秒間ごとに、23の異なる特徴が抽出された。これらの特徴には、MM振幅の中心傾向(平均値、中央値、最頻値);MM分布(生またはエンベロープ信号):歪度、尖度、IQR、百分位数25、75、及び90;極値:MM振幅の最小値、最大値、百分位数5及び95;変動の傾向:時間の関数でMMを評価するための、一般化された加法モデルからのテンソル積ベースのスプライン係数(S1、2、3、4)の線形傾向と係数;各発症の期間が含まれる。
【0235】
中枢性低呼吸、正常な睡眠、閉塞性低呼吸へのモデル分類に対する様々な特徴の影響は、SHAPスコアによって説明できる。SHAPスコアは、3つのターゲットラベルを分類するために、他の特徴との全ての可能な連合全体の平均限界寄与を測定する。SHAPスコアが高いほど、その特徴が提供する重要な寄与度が高くなる。LundbergのShapley加法説明(SHAP)法は、協力ゲーム理論(1953)(Lloyd S Shapley. “A value for n-person games”. In: Contributions to the Theory of Games 2.28 (1953), 307-317.)におけるShapleyのスコア及びローカル解釈アプローチ(Marco Tulio Ribeiro, Sameer Singh, Carlos Guestrin. “Why should i trust you? Explaining the predictions of any classifier”. In: Proceedings of the 22nd ACM SIGKDD International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining. ACM. 2016, 1135-1144.)を統合して、ブラックボックスモデルを説明するためのこれまでの最良の解決策を提供する。SHAP理論は、「ペイアウト」がターゲットラベル(即ち、中枢性または閉塞性低呼吸)を正しく予測している協力ゲームでは、入力された特徴を「プレーヤー」と見なす。SHAPアルゴリズムを使用すると、各特徴値をランダムな順序で他の特徴と結合して連立を形成し、全体の予測への寄与に応じて、各特徴値にペイアウト(SHAPスコア)を割り当てることができる。SHAPスコアは、新しい特徴が加えられたときに連合が獲得する予測の変化を平均した結果である。本質的に、特徴値のSHAPスコアは、特定の予測の全ての可能な連合にわたるその特徴値の平均限界寄与である。
【0236】
具体的に、前記特徴は、次のように抽出される。
1. 生のMMデータ系列を、例えば、サンプリング速度10または25 Hzでロードする。該系列は、例えば、30分間~8時間のような著しい期間を有する;
2. 閉塞性及び中枢性低呼吸発症のタイムスタンプを特徴づける;
3. タイムスタンプtiごとに次のステップを実行する:
3.a. tiが閉塞性または中枢性低呼吸発症の始まりであるかどうかを確認する。
3.b. tiが閉塞性または中枢性低呼吸発症の始まりであれば、
- tiを(t_begin)に割り当て、続いて終了(t_end)を検索し、そして、
- t_begin及びt_endに指標を付け、生のデータ系列を「発症E」という名前の一時的なホルダーに抽出する;
4. 発症Eごとに次のステップを実行する:
4.a. 発症期間dt=(t_end-t_begin)を計算し、
4.b. 発症中に測定されたパラメーターの分布を測定する;
- 最小値、最大値、平均値、中央値、最頻値、百分位数5、25、75、90、及び95、歪度、尖度、及びIQR;
- GAM非線形モデルを適合させて、時間tのスプライン関数によってMMの振幅及び/または位置を推定し、スプライン関数の係数を抽出する;
- 単純な線形モデルを近似し、切片と線形勾配を抽出する;
- 測定データを下顎骨運動クラスと照合することにより、全ての特徴とラベルを連結する。
【0237】
特徴抽出後、抽出された特徴と対応するターゲットラベルが表形式のデータセットに統合された。
【0238】
その後、探索的データの視覚化、一元配置分散分析、及びボンフェローニ補正を用いたペアワイズスチューデントt検定を実行して、下顎骨運動の特徴を3つのグループ(通常の呼吸、閉塞性、及び中枢性低呼吸)に分類する。有意な水準は、ヌル仮説検定の非常に厳密な基準(p=0.001)(10)に設定される。
【0239】
モデル開発のため、前記データは、ランダムに2つのサブセット(モデル開発用の大きなセット(70%)及びモデル検証用の小さなセット(30%))に分割された。元のトレーニングセットは、中枢性(マイノリティクラス)と閉塞性低呼吸(マジョリティクラス)の間で均衡が保たれていなかったため、モデル開発前のトレーニングセットでの合成マイノリティオーバーサンプリング手法(周知のSMOTE, Synthetic Minority Over-sampling Technique)が適用された。
【0240】
23の入力特徴を用いて3つのグループを分類するために、マルチクラス分類ルールが作成された。これは、500の異なる決定木を組み合わせたランダムフォレストアルゴリズムで構成されていた(それぞれが5つの特徴のランダムなサブセットで構築された)。
【0241】
次に、ランダムフォレストモデルの内容を分析し、各特徴の重要性と、分類に寄与した可能性のある連合(閉塞性低呼吸と中枢性低呼吸を区別するためのそれらの間の潜在的な組み合わせ)を評価した。予測に対する各特徴の寄与を評価するために、当技術分野で周知されているLundbergのShapley加法説明(SHAP)法が採用される。
【0242】
これらの方法によって、とりわけ、閉塞性低呼吸及び中枢性低呼吸の検出が可能となる。
【実施例17】
【0243】
該さらなる例では、
図16及び
図17が参照される。これらの図は、磁気センサーによって捕らえられた下顎骨運動データの分析を示している。それ自体のデータ分析は、磁気センサーに加えて加速度計及び/またはジャイロスコープによって取得した下顎骨運動データのデータ分析に類似している。
【0244】
図16は、磁力計の測定値から導き出された18の最も重要なMM信号の特徴を、モデルの予測に対するグローバルな影響によってランク付けして示している。バーは、3つのターゲットラベル(中枢低呼吸(濃い灰色)、正常(薄い灰色)、及び閉塞性低呼吸(灰色))で階層化された各特徴の平均SHAPスコアを示している。該SHAPスコアは、3つのターゲットラベルを分類するために、他の特徴との全ての可能な連合全体の平均限界寄与を測定する。該SHAPスコアが高いほど、その特徴が提供する可能性のある寄与が重要になる。
【0245】
図17は、抽出された特徴とSHAPスコアに基づく発症の解釈を示している。具体的に、
図17は、SHAPスコアスケールとターゲットラベルの確率を示している。
図17は、領域a)及び領域b)の2つの一般領域で構成されている。領域a)は、ターゲットラベルの予測をサポートする抽出された特徴を含み、領域b)は、前記ターゲットラベルから離れる方向を指す抽出された特徴を含む。
【実施例18】
【0246】
該さらなる例では、
図18が参照される。これは、ジャイロスコープ及び加速度計で捕らえられた下顎骨運動のデータから睡眠段階を測定するための例示的な方法を示している。以下に説明するステップは、
図18中の参照番号に対応する。
【0247】
具体的に、これらのステップは、次のとおりである:
(1)ジャイロスコープ及び加速度計を含む本発明のシステムを用いて、被験者の睡眠中の下顎骨の動きを記録する。得られたデータパックは、前記の3軸加速度計及びジャイロスコープセンサーで得られた6チャネルの生信号を含む。該生データは、睡眠段階用のEEG、EOG及びEMG信号、3軸加速度計及びジャイロスコープセンサーで得られた6チャネルのMM信号等、睡眠段階の測定に適した他の装置からの記録をさらに含む場合がある。
【0248】
(2)前処理及び特徴産生モジュールを通った後、生データを長さ30秒間連続的に分割する。該前処理は、睡眠スコア系列から0.1 Hz及び0.034 Hz(30秒間のスライディングウィンドウ)でサンプリングされた時系列及びセンサー及びPSGで得られた時系列を産生することで構成される。該前処理は、2つのステップで行われる。シリーズまたは系列が分割され、次に特徴抽出機能が各ウィンドウに適用される。
機械学習実験用の入力データとして、手作りの特徴抽出を使用できる。例えば、特徴産生モジュールは、30秒間ごとに中央に配置されたスライディングウィンドウを用いて、MM活動信号の6つのチャネルから1728個の特徴のセットを抽出した。抽出された特徴には、低振動数帯域(0~0.1 Hz)、高振動数帯域(>0.3 Hz)、または呼吸性振動数帯域(0.2~0.3 Hz)における信号エネルギー、いくつかの半減期を有する指数移動平均、いくつかの振動数帯域におけるエネルギーのエントロピー、上記の特徴に適用される統計的特徴:中枢性の傾向(平均値、中央値)、極値(最小値、最大値)、四分位数、標準偏差、及び上記の全ての特徴の正常な標準化値が含まれる。
【0249】
(3)抽出された特徴セットは、機械学習分類子に送られ、特定の分類タスクに従って、各ターゲットラベルのソフト予測スコア(即ち、確率)と二進数での出力が産生される。自動化された睡眠段階タスクは、3つのレベルの複雑さでアプローチされた。タスクターゲットは、基本的な3つの睡眠段階:覚醒、非REM(N1、N2、N3を含む)、及びREMである。
特徴選択とハイパーパラメーター調整は、入力データが参加者のレベルでランダムにフォールドに分割される交差検定を用いて実行された。最終モデルは、最も関連性の高い特徴と最適化されたハイパーパラメーター値のみを用いて、全てのトレーニングセットでトレーニングされた。ターゲットラベル間の比率が不均衡であるため、トレーニングデータは、各トレーニングセッションの前に総合的なマイノリティオーバーサンプリング手法(SMOTE)で均衡が保たれた。
機械学習アルゴリズム:Extreme GradieNt BoostiNg(XGB)分類器は、3つの分類タスク全てのコアアルゴリズムとして採用されている。該XGB分類器は、凸損失関数(予測出力とターゲット出力の差に基づく)とモデルの複雑さのペナルティ項を組み合わせた正則化された目的関数を最小化することにより、トレーニングプロセス中に最適化される。
モデルトレーニング:学習目標は、特定のタスクに応じて3つのターゲットラベルを分類することを目的としたマルチクラス分類に設定される。該トレーニングは、ドロップアウト-複数加法回帰ツリー(DART)ブースター及びヒストグラム最適化近似グリーディツリー構築アルゴリズムを意味した。対数損失が評価測定基準として選択された(従って、3つのターゲットクラス間の均衡の保たれた精度が最適化される)。過剰適合を防ぐために、学習速度(eta、またはステップサイズの縮小)パラメーターを0.01に設定する。これにより、特徴の重みが縮小され、ブースティングプロセスがより保守的になる。
モデルの出力は、各ターゲットラベルの確率スコアを産生するソフトマックス関数を意味する。そして、最終的な決定(30秒間ごとに1つのラベルのみを割り当てる)は、これら3つの確率スコアに最大値を与える引数の関数を適用することによって達成される。
【0250】
(4)モデルの予測と、見えない検証データセットでの参照PSGスコアリングとの間の期間ごとの一致に応じて、最も満足のいく解決策が実装に採用される。選択したアルゴリズムがTST、睡眠効率、REM比等の睡眠の質のスコアの信頼できる推定を提供できるかどうかを検証するために、さらに定量的な評価が行われた。モデルの選択は、次の基準に基づいている。
クラスごとの一致評価:正規化された混同行列により、特定のマルチクラス分類タスクに対するモデルのクラスごとのパフォーマンスを評価できる。行は手動のPSGスコアリングから導き出された真実であり、列は自動化されたアルゴリズムスコアリングの結果を示す。混同行列の対角セルは、クラスごとの真の陽性率を示す。
精度(または正の予測値)は、真陽性/(真陽性+偽陽性)として定義され、陽性のケースを正しく識別するモードの能力を測定する。再現率(感度、ヒット率、真陽性率とも呼ばれる)は、モデルの有用性(全ての被験者実例間の正しい分類の割合として定義される)を示し、再現率=真陽性予測/全て陽性実例;
F1スコアは、クラスごとの再現率と適合率の調和平均として定義される複合的な測定基準である。
2 ×(適合率×再現率)/(適合率+再現率)
F1スコアには直感的な意味があり、モデルの正確さ(正しく分類される期間の数)と、モデルの堅牢性(誤分類率が低い)を示す。実際のデータは、睡眠段階間の不均衡な比率を示しており、全てのラベルが等しく重要であるため、全てのクラスで等しく高いF1スコアを取得する分類子が採用されている。
グローバルな期間ごとの一致評価測定基準:均衡の保たれた精度(BAC)は、ターゲットクラス間の真の陽性率と真の陰性率の平均を測定する。コーエンのカッパ係数は、モデルの分類と実際の観測値(手動PSGスコアリング)の間の一致の強度を測定する。該一致の強度の6つのレベルとして解釈できる:0未満:弱い、0~2:わずか、0.2~0.4:普通、0.41~0.6:中程度、0.61~0.8:かなり、0.81~1:ほぼ完璧。
【0251】
(5)選択された(3クラスタスク)モデルからの予測データは、解釈モジュールを通過する。最初のサブモジュール(睡眠スコアの計算)は、予測された睡眠段階の系列を定量的なスコアに変換する。
これらの定量的スコアの定義を以下の表に示す:
【0252】
(6)催眠術の作成:カスタマイズされた関数は、離散的にエンコードされたラベルの系列(例えば、2=覚醒、1=REMの睡眠、0=非REMの睡眠)を催眠術に変換する。このグラフは、時間の関数として個別の睡眠段階の値を表すステップラインを示し、これは、手動のPSGスコアリングから得られた従来の催眠術をシミュレートする。
【実施例19】
【0253】
実施例19では、実施例18の実験が継続される。具体的に、例18に示されている方法は、トレーニングサブセット(n=68、70%)と検証サブセット(n=28、30%)にランダムに割り当てられた96人の参加者のグループで実行された。両方のサブセットは、18~53歳の健常人を表している。
【0254】
ジャイロスコープ及び加速度計を含む本発明のシステムを用いて、被験者の睡眠中に下顎骨の動きを記録した。得られたデータパックは、上記の3軸加速度計及びジャイロスコープセンサーで得られた6チャネルの生信号を含む。該生信号を自動睡眠段階モデルの開発に使用した。また、EEG、EOG、EMG等の睡眠段階を決定するのに適した装置を用いて、参考データを記録した。後者のデータを適用されたモデルの精度決定に使用した。
【0255】
深層学習モデルを使用する代わりに、従来のフレームワークに従った。これは、手作りの特徴抽出と構造化されたデータ駆動型アルゴリズムを意味する。手作りの特徴抽出により、畳み込みニューラルネットワークのようなブラックボックスモデルと比較して、入力データの制御と理解が向上する。分類タスクにはXGBoostを採用した。このアルゴリズムは、計算とリソースの効率が高く、非常に高速なトレーニングと実行速度を可能にする等、従来の方法(LDA、SVM、RF)に比べていくつかの利点がある。
【0256】
被験者サブセット:96人の参加者のグループからの睡眠ポリグラフ(PSG)プロファイルは、両方のサブセットグループで正常な睡眠活動を示し、睡眠効率の中央値は89.4%と87.3%であった。各セット内で、データ構造は3つの睡眠段階の間の比率の不均衡も示す:ほとんどの場合通常の覚醒ラベルを除いて、非REMの睡眠は両方のグループでREMの睡眠よりも優勢であった(訓練セットでは92.3対7.7、検証セットでは79.9対20.1)。これは、モデル開発において、データバランシング技術が必要であり、モデル検証中にパフォーマンス測定基準を注意深く解釈する必要があることを示唆している。
【0257】
3クラススのコアリング:現在のモデルは、覚醒(睡眠なし)、非REMの睡眠、及びREMの睡眠を分類することを目的としている。該モデルにより、3つのクラス間で均衡の保たれた精度が得られる(覚醒、非REM、及びREMの睡眠でそれぞれ82.9%、74.9%、及び82.5%)。該モデルには、かなりの一致強度もある(カッパ= 0.71)。 F1スコアが0.86で、覚醒期間の検出に最適である。該モデル内の覚醒、非REM、及びREM実例の分布に基づいて、覚醒の実例は十分にクラスター化され、他の実例から明確に分離されているのに対し、ほとんどのREMラベルはより変動され、他の非REMまたは覚醒ポイントに混在されているため、覚醒の識別は非REMとREMを区別するよりも簡単であることが分かった。このパターンに示唆されたように、3クラスをうまく分離するには、ランダムフォレスト、XGboost、深いニューラルネットワーク等の非線形アルゴリズムを考慮してもよい。
【0258】
睡眠質指標の一致分析:3クラスのタスク睡眠段階アルゴリズムは、30秒間ごとに覚醒、非REM、またはREMとして自動的に分類できる。次に、出力は第2アルゴリズムによって変換され、睡眠質指標の推定値が提供された。これらの指標は、3つの主要なカテゴリに分類できる:a)時間に基づく指標。これは、睡眠中(TST)または覚醒、REM、非REM等の特定の睡眠段階中の累積時間(単位:分間)を測定する;b)比率に基づく指標。これは、全ての睡眠中の期間にわたる特定の睡眠段階(REM、非REM)の百分率として推定される;c)潜伏期間に基づく指標。これは、記録の開始から入眠までの経過時間(入眠潜伏期)、または入眠から最初のREM期間までの経過時間(REM潜伏期)を測定する。
【0259】
実施例18に示されている表に従って、自動化された睡眠段階アルゴリズムの定量的スコアを測定した。PSGプロファイルの標準スコアと自動化された睡眠段階アルゴリズムの定量的スコアの違いを以下の表に示す:
【0260】
これらのデータは、3クラスベースのスコアリングアルゴリズムにより、参照方法(手動PSGスコアリング)と比較して、許容可能な精度(中央値の差は僅か-7.15分間であった。97.5% CIは-20.34~+4.38であった。)で総睡眠時間を測定できることを示している。この一致は、睡眠効率を測定するのにも適していた(中央値の差は-1.29%であった。-3.03~+0.01)。
【0261】
結論:ジャイロスコープ及び加速度計を含む本発明のシステムを用いて、被験者の睡眠中に記録された下顎骨運動の使用可否について調べた。その結果に示されたように、回転運動を測定するように構成されたジャイロスコープで測定されたデータに基づく自動化された睡眠段階の検出が、加速度計のみを含む当技術分野のシステムと比較して、3つの解像度レベル全て(3クラススコアリングの場合)でより優れた性能を提供する。
【0262】
【0263】
【0264】