(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】バイオプリンター用の3Dプリンティングヘッド
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20241113BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20241113BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241113BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20241113BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241113BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20241113BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/209
B33Y30/00
B29C64/106
B33Y50/02
B29C64/393
(21)【出願番号】P 2022507815
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 CA2020051087
(87)【国際公開番号】W WO2021022381
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-23
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522050343
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・プリンス・エドワード・アイランド
【氏名又は名称原語表記】University of Prince Edward Island
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】アフマディ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】マッカラム,ベン グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】マクネビン,ワイアット ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ナセリ,エマド
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119198(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105647801(CN,A)
【文献】国際公開第2020/178355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料堆積プロセスで利用されるミストアタッチメントシステムであって、
堆積させることができる材料が通る出口ノズルを有する蒸着ヘッドを受ける受器と、
蒸着ヘッドの出口ノズルに近接し、蒸着ヘッドを通って堆積される材料の周りの架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給するように配置されるミスト配路と、
蒸着ヘッドの出口ノズルに近接し、堆積される材料の周囲から過剰な架橋剤または粒子の懸濁液の流れを抽出するように配置されるミスト抽出路と、
を有するミストアタッチメントと、
霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液を提供する前記ミスト配路に接続されるミストチャンバ内の超音波噴霧器と、
前記ミスト抽出路と接続され、過剰な架橋剤または粒子の懸濁液を抽出するための吸引を提供する真空ポンプと、
を備えるミストアタッチメントシステム。
【請求項2】
霧状の架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給するため、ミストチャンバに接続されたエアポンプをさらに備える、
請求項1に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項3】
前記ミスト配路は
、蒸着ヘッドの出口ノズルを実質的に囲む、
請求項1に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項4】
前記ミスト配路の空洞は
、前記蒸着ヘッドの前記出口ノズルの周りの霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液の360°層流を促進する下向きの角度に配置された開口部を有する、
請求項3に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項5】
前記蒸着ヘッドは、3Dプリントのプロセスのプリントヘッドである、
請求項1に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項6】
前記
ミスト抽出路は
、前記プリントヘッドの前記出口ノズルを実質的に囲む、
請求項5に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項7】
前記
ミスト抽出路と前記プリントヘッドの前記出口ノズルとの間
に配置され、当該ミストアタッチメントの表面上の抽出プロファイルをさらに含む、
請求項6に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項8】
前記抽出プロファイルは、前記プリントヘッドの前記出口ノズルを取り囲む弧状のプロファイルを有する、
請求項7に記載のミストアタッチメント
システム。
【請求項9】
前記受器は、前記プリントヘッドに着脱可能に固定されるように適合される、
請求項5に記載のミストアタッチメント
システム。
【請求項10】
前記プリントヘッドは、シリンジの1つと分注針とを含む、
請求項9に記載のミストアタッチメント
システム。
【請求項11】
前記蒸着ヘッドは、液滴蒸着ヘッドを含む、
請求項1に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項12】
前記
ミスト抽出路は、前記ミスト配路から下流に所定の距離だけ離間され、前記蒸着ヘッドから堆積された材料液滴を架橋剤または粒子の懸濁液に十分な時間曝す、
請求項11に記載のミストアタッチメントシステム。
【請求項13】
前記ミスト配路は、前記蒸着ヘッドによって堆積される前記材料の周りに360°霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給する、
請求項1に記載のミストアタッチメント
システム。
【請求項14】
前記出口ノズルの周囲に円周方向に配置された複数のミスト配路をさらに備える。
請求項1に記載のミストアタッチメント
システム。
【請求項15】
複数の
前記ミスト配路のそれぞれは、互いに流体連通される、
請求項14に記載のミストアタッチメント
システム。
【請求項16】
前記ミスト配路と、霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液の供給に接続する供給接続ポートをさらに備える、
請求項1に記載のミストアタッチメント
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在の出願は、2019年8月8日に提出された米国仮出願62/884,217の優先権を主張しており、その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
現在の開示は、3Dバイオプリンター、特に3Dバイオプリンター用のプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
3Dプリンティングは、物体がプリント材料の複数の層から構築される製造の付加的な形式である。使用できるプリント材料は多岐にわたる。通常、これらの材料は、プリント材料の加熱部分を冷却するか、紫外線硬化するか、熱硬化するかなど、何らかの方法で硬化させる必要がある。
【0004】
生物医学および/または組織工学の応用では、プリント材料は生体適合性の化合物であり得、化学架橋によって化学的に硬化されることが多い。3Dバイオプリンティングは、たとえば組織スキャフォールドを構築するなど、さまざまな目的に使用できる。プリント材料への化学架橋剤の適用は、制御が難しく、プリント結果が悪くなる可能性がある。
【0005】
加えて、3Dバイオプリンティングで使用するプリントヘッドの代替および/または改良が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示によれば、材料堆積プロセスで、用いられるミストアタッチメントが提供され、ミストアタッチメントは、堆積させることができる材料が通る出口ノズルを有する蒸着ヘッドを受ける受器と、存在する場合、蒸着ヘッドの出口ノズルに近接し、蒸着ヘッドを通って堆積される材料の周りの架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給するように配置されるミスト配路と、存在する場合、蒸着ヘッドの出口ノズルに近接し、堆積される材料の周囲から過剰な架橋剤または粒子の懸濁液の流れを抽出するように配置されるミスト抽出路と、を備える。
【0007】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記ミスト配路は、存在する場合、前記蒸着ヘッドの前記出口ノズルを実質的に囲む。
【0008】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記ミスト配路の空洞は、存在する場合、前記蒸着ヘッドの前記出口ノズルの周りの霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液の360°層流を促進する下向きの角度に配置された開口部を備える。
【0009】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記蒸着ヘッドは、3Dプリントプロセスのプリントヘッドである。
【0010】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記抽出路は、存在する場合、前記プリントヘッドの前記出口ノズルを実質的に囲む。
【0011】
さらなる実施形態では、ミストアタッチメントは、存在する場合、前記抽出路と前記プリントヘッドの前記出口ノズルとの間の前記アタッチメントの表面上の抽出プロファイルをさらに含む。
【0012】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、存在する場合、前記抽出プロファイルは、前記プリントヘッドの前記出口ノズルを取り囲む弧状のプロファイルを有する。
【0013】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記受器は、前記プリントヘッドに着脱可能に固定されるように適合される。
【0014】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記プリントヘッドは、シリンジの1つと分注針を含む。
【0015】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記蒸着ヘッドは、液滴蒸着ヘッドを含む。
【0016】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記抽出路は、前記ミスト配路から下流に所定の距離離間され、前記蒸着ヘッドから堆積した材料液滴を、架橋剤または粒子の懸濁液に十分な時間曝す。
【0017】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記ミスト配路は、前記蒸着ヘッドによって堆積される材料の周りに360°霧状の架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給する。
【0018】
さらなる実施形態では、ミストアタッチメントは、前記出口ノズルの周囲に円周方向に配置された複数のミスト配路をさらに備える。
【0019】
ミストアタッチメントのさらなる実施形態では、前記複数のミスト配路のそれぞれは、互いに流体連通される。
【0020】
さらなる実施形態において、ミストアタッチメントは、前記ミスト配路と、霧状の架橋剤または粒子の懸濁液の供給に接続する供給接続ポートをさらに備える。
【0021】
本開示によれば、材料堆積プロセスで利用されるミストアタッチメントシステムがさらに提供され、堆積させることができる材料が通る出口ノズルを有する蒸着ヘッドを受ける受器と、存在する場合、蒸着ヘッドの出口ノズルに近接し、蒸着ヘッドを通って堆積される材料の周りの架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給するように配置されるミスト配路と、存在する場合、蒸着ヘッドの出口ノズルに近接し、堆積される材料の周囲から過剰な架橋剤または粒子の懸濁液の流れを抽出するように配置されるミスト抽出路と、を有するミストアタッチメントと、霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液を提供する前記ミスト配路に接続されるミストチャンバ内の超音波噴霧器と、前記ミスト抽出路と接続され、過剰な架橋剤または粒子の懸濁液を抽出するための吸引を提供する真空ポンプと、を備える。
【0022】
さらなる実施形態において、ミストアタッチメントシステムは、霧状の架橋剤または粒子の懸濁液の流れを供給するため、ミストチャンバに接続されたエアポンプをさらに備える。
【0023】
ミストアタッチメントシステムのさらなる実施形態では、前記ミスト配路は、存在する場合、前記蒸着ヘッドの前記出口ノズルを実質的に囲む。
【0024】
ミストアタッチメントシステムのさらなる実施形態では、前記ミスト配路の空洞は、存在する場合、前記蒸着ヘッドの前記出口ノズルの周りの霧状の前記架橋剤または粒子の懸濁液の360°層流を促進する下向きの角度に配置された開口部を有する。
【0025】
ミストアタッチメントシステムのさらなる実施形態では、前記蒸着ヘッドは、3Dプリントプロセスのためのプリントヘッドである。
【0026】
ミストアタッチメントシステムのさらなる実施形態では、前記抽出路は、存在する場合、前記プリントヘッドの前記出口ノズルを実質的に囲む。
【0027】
さらなる実施形態では、ミストアタッチメントシステムは、存在する場合、前記抽出路と前記プリントヘッドの前記出口ノズルとの間の前記アタッチメントの表面上に抽出プロファイルをさらに含む。
【0028】
前記ミストアタッチメントシステムのさらなる実施形態では、前記蒸着ヘッドは、液滴蒸着ヘッドを含む。
【0029】
ミストアタッチメントシステムのさらなる実施形態では、前記抽出路は、前記ミスト配路から下流に所定の距離離間され、前記蒸着ヘッドから堆積された材料液滴を架橋剤または粒子の懸濁液に十分な時間曝す。
【0030】
本開示のさらなる特徴および利点は、添付の図面と組み合わせた以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】3Dプリントヘッドアタッチメントシステムを組み込んだ3Dバイオプリンターの構成要素を示す。
【
図2A】3Dプリントヘッドアタッチメントの一例を示す。
【
図2B】使用中の
図2Aの3Dプリントヘッドアタッチメントを示す。
【
図3】さらなる3Dプリントヘッドアタッチメントの一例を示す。
【
図4】
図3のプリントヘッドアタッチメントの断面を示す。
【
図6】ミスト除去有りとミスト除去無しの3Dプリント結果の比較を示す。
【
図8】
図7のミストアタッチメントにおけるミスト濃度のシミュレーション結果を示す。
【
図9】
図7のミストアタッチメントを使用した液滴ベース蒸着を使用して印刷された構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
材料の3Dバイオプリンティングでは、プリントヘッドから押し出された後にプリント材料を硬化させる化学架橋剤を用いることができる。架橋剤をミストとして押し出されたプリント材料の供給し、過剰な架橋剤をプリントヘッドの周囲から抽出することを可能とする、プリントヘッドアタッチメントを以下でさらに説明する。過剰な架橋剤を抽出すると、プリント領域の周囲に過剰な架橋剤が蓄積することで発生する可能性のあるプリントエラーを防止または軽減できる。プリントヘッドアタッチメントは、3Dプリンターに大幅な変更を加えることなく、既存のプリントヘッドに取り付けることができる。
【0033】
図1は、3Dプリントヘッドアタッチメントシステムを組み込んだ3Dバイオプリンターの構成を示す。3Dバイオプリンター100は、プリントヘッド102およびプリントヘッドアタッチメント104を含むプリントヘッドアセンブリを有する。プリントヘッドアセンブリは、プリントヘッドマウント108によってXYポジショニングアセンブリ106に固定され得る。プリント材料は、プリントヘッド102からプリントステージ110上に制御可能に押し出すことがされて、印刷物112を付加的に形成することができる。プリントステージ110は、印刷物112が形成されるときにプリントステージ110を上昇させる/下げるために、Zポジショニングアセンブリ114に接続され得る。XYポジショニングアセンブリ106およびZポジショニングアセンブリ114は、プリントステージ110とプリントヘッド102との間の相対的な動きを提供することが理解されよう。プリントヘッドをXY方向に、プリントステージをZ方向に動かすように描かれるが、ポジショニングアセンブリは、プリントヘッドとプリントステージの間の相対的な動きを提供するために、さまざまな配置で接続され得る。
【0034】
プリントヘッドは、例えば、シリンジ、ルアーロック分配針等によって提供され得る。プリントヘッドは、圧縮空気源116による空気作用、モーターまたは他のタイプのアクチュエーターによる機械的手段を含む様々な手段によって制御され得る。プリントヘッドは、物体を形成するため、押し出され、または、堆積されるプリント材料で満たされ得る。プリント材料は、架橋剤と呼ばれる別の化学物質との接触によって硬化または固める広範囲の材料から選択し得る。使用される特定の架橋剤は、使用されるプリント材料によって異なるものになり得る。例えば、プリント材料は、アルギン酸ナトリウム、キトサン、コラーゲン、アガロース、または他の適合性のある生体材料および/またはヒドロゲルであり得る。架橋剤は、例えば、塩化カルシウム(カルシウムイオン)、ゲニピン、アルデヒド、またはプリント材料を架橋できる他の化学物質を含み得る。
【0035】
図1に示すように、プリントヘッドアタッチメント104は、プリントヘッド102に取り付けられる、または張り付けられて、プリントヘッドの出口ノズルでプリントヘッドを出るプリント材料がプリントヘッドアタッチメントを通過するようにできる。プリントヘッドアタッチメント内でプリントヘッド102を出るように描かれているが、プリントヘッドの出口ノズルがプリントヘッドアタッチメントの底部を越えて延びる可能性がある。押し出されるプリント材料の温度は、例えば、温度が4~20℃の範囲であり得るように制御され得る。プリント材料の温度により、材料の粘度が変化し、印刷適性の制御が改善され、架橋イオンの拡散が制御され得る。
【0036】
プリントヘッドアタッチメント102は、押し出されたプリント材料108の周囲に化学架橋剤のミストを供給するミスト配路118を備える。ミスト配路118は、例えば、管または管類等の、ミスト配管をミスト供給源122と接続させるミスト供給ポート120に接続され得る。ミスト供給源120は、架橋剤溶液を保持するタンクを含み得る。超音波噴霧器124は、架橋剤液滴のミスト126の生成に使用し得る。エアポンプ128は、架橋剤のミストのミスト配路118への流れの供給に使用し得る。生成される液滴は、大小の差があり得るが、アルギン酸ナトリウムを架橋するために使用される塩化カルシウムの場合、直径は約10~100ミクロンのサイズを使用し得る。同様に、架橋剤ミストの様々な流量は、(空気と液滴が混合される)約1L/分の速度で、エアポンプ128によって提供され得る。架橋剤のミストは、押し出されたプリント材料の周囲に架橋剤を供給するミスト配路118に供給される。ミスト配路は、存在する場合、ミスト配路が、プリントヘッドを通して押し出されたプリント材料の周りに霧状の架橋剤の流れを供給するように、プリントヘッドの出口ノズルの近くに配置される。ミスト配路118は、押し出されたプリント材料の周りの架橋剤ミストの層流を促進するための出口開口部を有し得る。
【0037】
過剰な架橋剤の印刷物への接触、または場合によってはプリントステージ上への貯留を防ぐため、プリントヘッドアタッチメントは、プリント領域から過剰な架橋剤を抽出する抽出路130をさらに含む。抽出路130は、廃液タンク136に収集され得る、又は、場合によっては、架橋剤溶液タンク122に再供給され得る過剰な架橋剤を抽出する十分な吸引を提供する真空ポンプ134と接続することができる抽出接続ポート132を有し得る。抽出流量は変動する可能性があるが、架橋剤の貯留を防止または低減するのに十分な過剰の架橋剤を抽出するには、約3~5L/分の流量で十分であろう。抽出路は、架橋剤と押し出されたプリント材料との間の相互作用を乱すことなく、過剰な架橋剤の均一な除去を可能にする。
【0038】
図2A、例示的な3Dプリントヘッドアタッチメントを示す。プリントヘッドアタッチメント104は、押し出された材料に近接する一の開口部を有するミスト配路を有するとして上述された。押し出されたプリント材料全体の周りの架橋剤の流れを促進することが望ましく、そのため、押し出された材料の近くに複数のミスト開口部を設けることができる。プリントヘッドアタッチメント200は、プラスチックおよび金属の両方を含む様々な材料から形成され得る本体202を備える。本体202は、プリントヘッドを受容するための受器開口部204を備える。受器開口部204は、例えば、摩擦嵌合によってアタッチメントをプリントヘッドに固定でき、または追加の固定機構(図示せず)を使用し得る。受器の特定の形状は、使用されるプリントヘッドの形状およびサイズに依存し得るが、一般に、プリント材料をプリントヘッドからプリントステージに押し出すことを可能にするために本体を通って続くプリントヘッドを受け入れることができる開口部を含む。
【0039】
本体は、架橋剤のミストを供給するためにチューブを固定するミストコネクタ206を含み得る。ミストコネクタ206は、本体202の受器開口部を囲むミスト配路208に接続され得る。複数の排出開口部210a,210bは、押し出されたプリント材料の周囲に架橋材のミストを供給するため、受器開口部の周囲の配路に接続され得る。プリントヘッドアタッチメントは、アタッチメントを真空ポンプに接続する抽出コネクタ212をさらに備え得る。抽出コネクタ212は、受器開口部204を囲む抽出路214に接続され得る。複数の抽出開口部216a,216bは、プリント領域から過剰な架橋剤を抽出するため、受器開口部204の周りの抽出路に接続され得る。
【0040】
図2Bは、
図2Aに用いられる3Dプリントヘッドアタッチメントを示す。
図2Aを参照して上述したプリントヘッドアタッチメントの要素は、図面を明確にするため、
図2Bでは符号が付されない。図示するように、プリント材料で満たされたシリンジであり得るプリントヘッドは、アタッチメント本体202の受器開口部204内に受け入れられ、アタッチメントに固定される。プリントヘッドは、制御可能にプリント材料220を押し出し、所望の形状を形成する。霧状の架橋剤は、接続ポート206を通って配路208に流れ、排出開口部210a,210bから排出される。矢印222a,222bで示される架橋剤の流れは、開口部から流れ出て、押し出されたプリント材料220を囲み、架橋が形成される。過剰な架橋剤は、抽出接続ポート212に接続される真空ポンプによって抽出される。過剰な架橋剤は、抽出路214の複数の抽出開口部216a,216bを通して抽出される。
【0041】
図3は、さらなる例示的な3Dプリントヘッドアタッチメントを示す。
図2A及び2Bに関して上述したプリントヘッドアタッチメントは、許容可能なプリント結果を提供し得るが、ミスト配路および開口部、同様に、抽出路および開口部は、所望のプリント結果を提供しない可能性がある。
図3及び4を参照してさらに後述するプリントヘッドアタッチメントは、押し出されたプリント材料の360°周囲の架橋剤ミストの層流を促進するスト配路の改良された形状を有する。同様に、プリントヘッドアタッチメントは、プリント領域から過剰な架橋剤を除去する間、押し出されたプリント材料の周りの架橋剤ミストの層流の乱れを低減する形状が改善されたミスト抽出路を有する。
【0042】
プリントヘッドアタッチメント300は、その中に形成された種々の経路および開口部を有する一の単一材料として形成され得る。プリントヘッドアタッチメントは、3Dプリントや射出成形等の種々の製造技術を使用して形成できる。プリントヘッドアタッチメントの特定の形状およびサイズは、アタッチメントが設計されている特定のプリントヘッドに応じて変更し得る。
【0043】
プリントヘッドアタッチメント300は、シリンジ等のプリントヘッドを受け入れることができる受器開口部302を有する。受器開口部302は、プリントヘッドの一部を受け入れるためのシリンジ本体開口部304として本体の通過を継続する。受器開口部および本体開口部は、円錐先端針アタッチメント等のプリントヘッドの一部を受け入れるための円錐開口部306の通過を継続し得る。プリントヘッドの出口ノズルは、円錐開口部および出口開口部308を通って延びることができる。プリントヘッドの出口ノズルは、出口開口部308を通って完全に延びることができる、または出口開口部308内に、あるいは円錐開口部306内に均一に残ることができる。
【0044】
プリントヘッドアタッチメント300は、ミスト配路310を備える。配路は、連続的な360°経路を提供するため、本体の垂直軸の周りに形成され得る。配路310は、配路310への架橋剤ミストの流れを提供するために、チューブまたはホースをプリントヘッドアタッチメントに接続することを可能にする配送接続ポート312に接続される。配路310は、存在する場合、プリントヘッドの出口ノズルに近接し、プリントヘッドを通って押し出されたプリント材料の周りに霧状の架橋剤の流れを供給する。配路310は、実質的に出口開口部308を囲む、実質的に連続的な開口部314を有するものとして示されているが、出口開口部308を取り囲む複数の目立たない開口部を提供することが可能である。配路310は、ミストの流れに下向きの動きを加え、押し出されたプリント材料の周囲の層流を促進するために、配路開口部314に向かって30~45°の角度で下向きに下降する、断面プロファイルを有し得る。図示するように、経路プロファイルは、拡大された上部チャンバーの上部に向かって配置された接続ポート312を備える拡大された上部チャンバーを有することができ、これは、配路開口部314からの架橋剤により良い流れを提供するのに役立ち得る。
【0045】
プリントヘッドアタッチメント300は、プリント領域から過剰な架橋剤を抽出するミスト抽出路316をさらに備える。配路と同様に、抽出路316は、連続的な360°の経路を提供するために、本体の垂直軸の周りに形成され得る。抽出路316は、存在する場合、押し出されたプリント材料の周囲から過剰な架橋剤の流れを抽出するため、プリントシリンジの出口ノズルに近接して配置される。抽出路316は、出口開口部308を実質的に囲む、実質的に連続的な抽出開口部318を有し得るが、出口開口部308を囲む複数の目立たない抽出開口部を提供することが可能である。抽出開口部は、出口開口部308から、周方向に、間隔を空け得る。抽出開口部318と出口開口部308との間のアタッチメントの底面は、プリント領域からの過剰な架橋剤の抽出を助ける弧状のプロファイル320を有し得る。抽出接続ポート322は、抽出路に接続され、過剰な架橋剤を抽出するために真空ポンプを接続することを可能にする。
【0046】
図4は、
図3のプリントヘッドアタッチメントの断面を示す。プリントヘッド402は、開口部302、シリンジ本体開口部304、円錐開口部306内、および出口開口部308を通って受け取られる。図示するように、プリントヘッドの出口ノズルは、出口開口部を越えて延びるが、出口ノズルは、プリントヘッドアタッチメント内に残る。プリントヘッドは、プリント材料404をプリントプラットフォーム406に押し出すように制御される。プリント材料がプリントヘッドの出口ノズルを通って押し出されるとき、プリント材料は、矢印408によって示される架橋剤ミストの流れと接触する。架橋剤のミストは、接続ポート312を介して配路310に供給され、ノズル出口に近接する配路開口部314から排出される。配路310の形状は、押し出されるときに、架橋剤ミストの層流を下向きおよびプリント材料の周囲に促進するのに役立つ。プリント領域に残る過剰な架橋剤ミストは、抽出開口部318を通る矢印410によって示されるように、抽出路316によって抽出される。プリントヘッドアタッチメントの底部の抽出プロファイル320は、押し出されたプリント材の周囲の架橋剤の流れを妨げることなく、過剰な架橋剤の抽出を助け得る。
【0047】
上述したようなプリントヘッドアタッチメントシステムは、容易に既存のプリントヘッドに接続できる。プリントヘッドは、プリント材料のフィラメントを押し出すことによって物体をプリントし得る。押し出されたフィラメントは、例えば、約20ミクロンから約2000ミクロンの間等、広範囲のサイズを有し得る。プリント材料は、例えば、生細胞、マイクロ粒子、ナノ粒子等を含む、種々の化合物または材料を含み得る。プリントヘッドアタッチメントは、架橋剤または他のコーティング粒子に曝されるプリント材料でプリントするときの、プリント結果を改善することができる。架橋剤は、霧状のミスト液滴の形で与え得る。プリントヘッドアタッチメントは、アルギン酸ナトリウムをプリント材料として使用することができ、塩化カルシウム(CaCk)を架橋剤として使用して、固体熱硬化性エラストマーであるアルギン酸カルシウムを形成できる。プリントヘッドアタッチメントは、他のプリント材料および架橋剤とともに使用し得る。架橋剤の超音波噴霧により、アタッチメントの外部に細かい液滴のミストが生成され、強制気流を用いてアタッチメントに送ることができる。架橋剤の液滴は、押し出された生体材料に直接焦点合わせされた針先の周囲のミストの層流を360°促進するように設計された空洞に提供される。過剰な架橋剤の液滴は、外部の真空ポンプで除去し得る。アタッチメントは、シリンジやルアーロックディスペンシングニードル等の一般的なバイオプリンティング機器に直接取り付け得る。ミストの除去は、狭い経路を特徴とする空洞を介して可能になり、過剰なミストの除去さえも促進して、架橋剤の液滴と押し出されるプリント材料との間の相互作用の混乱を低減し得る。抽出流量は、3~5L/分に設定し得る。架橋剤の液滴は、超音波噴霧システムを使用して10~100ミクロンの直径範囲で生成されることができ、エアポンプによって約1L/分(空気と液滴の混合)でプリントヘッドに押し込まれる。プリント材料の温度は、例えば4~20℃の温度範囲内に制御することができ、プリント材料の粘度を変化させて印刷適性を改善することができ、架橋イオンの拡散を改善し得る。アタッチメントは、シリンジやルアーロックディスペンシングニードル等の一般的なバイオプリンティング機器に直接取り付けることができる。
【0048】
図5は、3Dプリントされたシリンジ構造物の写真を示している。第1のシリンジ構造物502は、本開示に従って、ミストアタッチメントから750mL/分の流量で10重量%のCaCbミストを使用して、5重量%のアルギン酸ナトリウムでプリントされた。第2のシリンジ構造504は、本開示に従って、ミストアタッチメントからの10重量%のCaCbミストを使用して、7重量%のアルギン酸ナトリウムでプリントされた。両シリンジ構造物は、強い層接着を示した。
【0049】
図6は、本開示に従ってミストアタッチメントを使用したミスト除去の有無の3Dプリント結果の写真を示す。印刷の他のすべてのパラメータは同じままで、5重量%のアルギン酸ナトリウムと、10重量%のCaCLミストを使用した。パネル(a)と(e)、パネル(b)と(f)、パネル(c)と(g)に示されているプリント結果の比較からわかるように、プリント中にミスト除去を使用すると、プリント結果は、より高品質のプリントとなる。理論に縛られることを望まないが、より高品質のプリント結果は、少なくとも部分的に、パネル(d)と(h)の比較で見られるように、ミスト除去を使用するときのプリントステージ液体の蓄積がないかまたはほとんどない結果であると考えられる。プリントヘッドアタッチメントおよびシステムは、押し出されたプリント材料の周囲に架橋剤の霧状のミストを供給することを特に参考にして上述された。同じプリントヘッドアタッチメントおよびシステムは、架橋剤以外の材料でも使用し得る。例えば、ミストドロップは、上述したような架橋剤を含み得るか、または押し出された材料に適用されるコーティング等の他の粒子および液体の懸濁液を含み得る。粒子は、上記のような架橋剤であり得るか、または押し出された材料に適用されるコーティング等の他の粒子であり得る。コーティング粒子は、潤滑性、接着、着色、または粒子が提供する所望の機能等の、種々の機能を提供し得る。さらに、プリント材料の周囲に供給される霧状のミストは、架橋剤およびコーティング等の粒子の組み合わせを含み得る。アタッチメントは、種々の用途で使用し得る。血管および肝組織の製造のアルギン酸ナトリウム、皮膚組織の製造のコラーゲン、および種々の組織工学の適用のアガロースおよびキトサンを含む、生体適合性ポリマーを使用する組織構築物の製造を含む。さらに、上記は、押し出しベースの3Dプリントの使用に関して、プリントヘッドアタッチメントを説明した。以下でさらに説明するように、同様のアタッチメントを、押し出しベースの3Dプリントに加えて、またはその代替として、他の堆積プロセスとともに使用できる。
【0050】
液滴ベースの堆積技術は、3Dプリント技術としてだけでなく、医薬品開発、ハイスループット化学プロセス等の他のアプリケーションにも使用することができる。液滴ベースの堆積技術は、3Dバイオプリントに使用することができ、生体適合性ポリマーと生細胞(バイオインクと言われることもある)を正確に堆積させることができ、複雑なインビトロ組織モデルを作成する。
【0051】
既存のシステムは、印刷後にバイオインク液滴を架橋して剛構造を形成する。しかしながら、プリント後の架橋は、液滴の架橋剤が多すぎるか、またはゲル化が遅すぎる結果として、液滴のゲル化が速すぎる結果となり得る。速すぎる又は遅すぎるゲル化は、それぞれ接着力や形状の忠実度の低下につながる可能性がある。さらに、不適切なゲル化は細胞増殖を阻害する可能性がある。例えば、生体組織スフェロイドの堆積による複雑な組織および器官構築物の作製は、堆積したスフェロイドの融合の速度および程度によって制限され得、次に、ゲル化速度に依存し得る。上述と同様のミストアタッチメントを使用して、プリントステージに堆積する前にプリントされたバイオインク液滴の架橋を促進することができ、バイオインクの制御可能な適切なゲル化を提供し得る。
【0052】
図7は、液滴ベースの堆積プロセスのためのミストアタッチメントを示す。ミストアタッチメント700は、上述のプリントヘッドアタッチメントと同様である。ミストアタッチメント700は、材料の液滴704を表面(図示せず)に堆積させる液滴堆積ヘッド702に取り付けられるか、そうでなければ結合され得る。ミストアタッチメント700は、アタッチメントを通過するときに、液滴の周りに架橋剤のミストまたは他の粒子の懸濁液の供給を送るミスト配路706を備える。ミスト配路706は、霧状とされ得る架橋剤であろうと、他の粒子の懸濁液であろうと、ミストの流れを提供するために使用されることができる配路ポート708に接続され得る。アタッチメント700は、過剰なミストを抽出できるミスト抽出路710をさらに含む。抽出路710は、過剰なミストを抽出するための真空を提供できる抽出ポート712に接続され得る。ミストは、矢印714に示されるように、材料液滴が堆積される経路に入り、次に、矢印716に示されるように、堆積される液滴704が抽出される。
【0053】
図8は、
図7のミストアタッチメントによるミストアタッチメント内のミスト濃度のシミュレーション結果を示す。図示するように、ミスト濃度は、堆積した液滴がミスト抽出路を通って抽出される前に802を通過する経路において高い。アタッチメントの下のミストの濃度は、比較的低い。ミスト配路とミスト抽出路との間の長さは、材料の液滴が適切な時間ミストにさらされるように設定することができる。適切な時間の長さは、堆積される材料、ミスト物質、同様に、適切な適用のための特定の用途のためのゲル化量、コーティング量などの所望の特性に依存し得る。ミスト配路とミスト抽出路との間の長さに加えて、ミストの流量および濃度を変化させて、曝露レベルを所望のまたは適切な量に調整し得る。
【0054】
ミストアタッチメントは、液滴が堆積するときに、液滴と均一に360度接触するように、ミストの流れを方向付けし得る。アタッチメントの形状は、アタッチメントの中心線上に、または堆積した液滴の経路を介して、均一なミスト濃度を提供し得る。ミストの流量と濃度は、架橋速度を調整し得る曝露の程度を変更するために調整することができる。流量と濃度の調整は、堆積した材料の機械的特性を制御するために使用し得る。必要に応じて、架橋剤ミストの拡散を改善するため、バイオインクの温度を調整し得る(4~37℃)。
【0055】
プリントステージでの液体の蓄積を防ぐために、架橋剤または懸濁粒子をアタッチメント装置内に収集し得る。排水路の形状は、プリントされた液滴がアタッチメントを出るときに、それらの乱れを防ぎ得る。
【0056】
液滴ベースの堆積技術のミストアタッチメントは、例えば、インビトロ組織および臓器再生のための組織スフェロイドの製造、薬物送達のための生体適合性ビーズのプリントまたは製造、生体プリントされた液滴を機能性物質でコーティングすることを含む、種々の用途で使用され得る(すなわち、導電性、親水性、疎水性)。
【0057】
図9は、
図7を参照して上記のミストアタッチメントを用いてプリントされた多孔質スキャフォールドを示す。液滴ベースのプリントプロセスでは、3重量%のアルギン酸ナトリウムと10重量%のCaChの架橋ミスト剤を使用した。図示のように、スキャフォールドは、高い形状忠実度を示し、良好な共液滴接着性を有する。
図1~9に示されるシステムおよび構成要素は、図面に示されない構成要素を含み得ることが当業者によって理解されるであろう。図を簡潔かつ明確にするために、図中の要素は必ずしも一定の縮尺である必要はなく、概略的なものにすぎず、要素の構造を制限するものではない。当業者には、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの変形および修正を行うことができることが明らかであろう。