(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ホルダおよびホルダユニット
(51)【国際特許分類】
B28D 5/00 20060101AFI20241113BHJP
C03B 33/027 20060101ALI20241113BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
C03B33/027
H01L21/78 G
(21)【出願番号】P 2022532553
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024177
(87)【国際公開番号】W WO2021261586
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2020110861
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】阪口 良太
(72)【発明者】
【氏名】岩坪 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 一磨
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-234748(JP,A)
【文献】特開2016-56074(JP,A)
【文献】特開2019-194006(JP,A)
【文献】特開2019-209478(JP,A)
【文献】特開平10-62206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/027
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクライビングホイールを支持するピンを支持する支持部を含み、
前記支持部は前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの下部を支持する下部支持部と、前記ピンが前記下部支持部から離れた状態において前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの上部を支持する上部支持部とを含む
ホルダ。
【請求項2】
前記上部支持部は前記ピンが前記下部支持部から離れた状態において前記ピンを挟む上部支持面を含む
請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記上部支持面は斜面を含む
請求項2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記上部支持面の傾斜角度は20°以上かつ80°以下の範囲に含まれる
請求項3に記載のホルダ。
【請求項5】
前記ピンの上部と前記上部支持部との接触角度は100°以上かつ180°未満の範囲に含まれる
請求項1~4のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項6】
前記ピンの上部と前記上部支持部との接触角度は120°以上かつ150°以下の範囲に含まれる
請求項5に記載のホルダ。
【請求項7】
前記支持部は前記ピンに対して上方に設けられる退避部をさらに含み、
前記退避部は前記ピンが前記上部支持部に支持される状態では、前記ピンの上部における前記上部支持部に接触する部分よりも上方の部分との間に空間が形成されるように構成される
請求項1~6のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項8】
前記上部支持部に支持される前記ピンと前記退避部との間隔は前記上部支持部に支持される前記ピンと前記下部支持部との間隔よりも広い
請求項7に記載のホルダ。
【請求項9】
ホルダと、
スクライビングホイールと、
ピンとを備え、
前記ホルダは前記スクライビングホイールを支持するピンを支持する支持部を含み、
前記支持部は前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの下部を支持する下部支持部と、前記ピンが前記下部支持部から離れた状態において前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの上部を支持する上部支持部とを含む
ホルダユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホルダおよびホルダユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
脆性材料基板等の被加工物のスクライブ加工にスクライブ装置が用いられる。スクライブ装置は被加工物に対してスクライビングホイールを走査し、被加工物にスクライブラインを形成する。特許文献1には、従来のスクライブ装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクライブ加工時におけるホルダに対するスクライビングホイールの位置が安定しない場合、スクライブ加工された被加工物の品質が低下するおそれがある。
本発明の目的はホルダに対するスクライビングホイールの位置の安定性が向上するホルダおよびホルダユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に関するホルダはスクライビングホイールを支持するピンを支持する支持部を含み、前記支持部は前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの下部を支持する下部支持部と、前記ピンが前記下部支持部から離れた状態において前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの上部を支持する上部支持部とを含む。
【0006】
上記ホルダによれば、スクライビングホイールが被加工物に接触し、スクライビングホイールおよびピンに対して上方に荷重が働く場合、ピンが上部支持部に支持される。ピンが上部支持部に支持された状態では、ホルダに対するピンの位置が変化しにくく、ホルダに対するスクライビングホイールの姿勢の安定性が向上する。
【0007】
前記ホルダの一例では、前記上部支持部は前記ピンが前記下部支持部から離れた状態において前記ピンを挟む上部支持面を含む。
上記ホルダによれば、ピンが上部支持部に適切に支持される。
【0008】
前記ホルダの一例では、前記上部支持面は斜面を含む。
上記ホルダによれば、ピンが上部支持部に適切に支持される。
前記ホルダの一例では、前記上部支持面の傾斜角度は20°以上かつ80°以下の範囲に含まれる。
【0009】
上記ホルダによれば、ピンが上部支持部に適切に支持される。
前記ホルダの一例では、前記ピンの上部と前記上部支持部との接触角度は100°以上かつ180°未満の範囲に含まれる。
【0010】
上記ホルダによれば、ピンが上部支持部に適切に支持される。
前記ホルダの一例では、前記接触角度は120°以上かつ150°以下の範囲に含まれる。
【0011】
上記ホルダによれば、ピンが上部支持部に適切に支持される。
前記ホルダの一例では、前記支持部は前記ピンに対して上方に設けられる退避部をさらに含み、前記退避部は前記ピンが前記上部支持部に支持される状態では前記ピンの上部における前記上部支持部に接触する部分よりも上方の部分との間に空間が形成されるように構成される。
【0012】
上記ホルダによれば、ピンの上部における上部支持部に接触する部分よりも上方の部分がホルダに接触しにくい。
前記ホルダの一例では、前記上部支持部に支持される前記ピンと前記退避部との間隔は前記上部支持部に支持される前記ピンと前記下部支持部との間隔よりも広い。
【0013】
上記ホルダによれば、ピンの上部における上部支持部に接触する部分よりも上方の部分がホルダに接触しにくい。
本発明に関するホルダユニットはホルダと、スクライビングホイールと、ピンとを備え、前記ホルダは前記スクライビングホイールを支持するピンを支持する支持部を含み、前記支持部は前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの下部を支持する下部支持部と、前記ピンが前記下部支持部から離れた状態において前記ピンの下方への移動を規制するように前記ピンの上部を支持する上部支持部とを含む。
【0014】
上記ホルダユニットによれば、スクライビングホイールが被加工物に接触し、スクライビングホイールおよびピンに対して上方に荷重が作用する場合、ピンが上部支持部に支持される。ピンが上部支持部に支持された状態では、ホルダに対するピンの位置が変化しにくく、ホルダに対するスクライビングホイールの姿勢の安定性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関するホルダおよびホルダユニットによれば、ホルダに対するスクライビングホイールの姿勢の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1、
図2に示されるスクライブヘッドA10は被加工物のスクライブ加工に用いられる。被加工物の例として、基板が挙げられる。基板の例として、脆性材料基板が挙げられる。脆性材料基板の例として、ガラス基板、セラミックス基板、シリコン基板、化合物半導体基板、サファイア基板、および、石英基板が挙げられる。セラミックス基板の例として、低温焼成セラミックスおよび高温焼成セラミックスが挙げられる。
【0018】
スクライブヘッドA10は被加工物をスクライブ加工するスクライブ加工装置に組み込まれる。一例では、スクライブ加工装置は走査装置およびスクライブヘッドA10を備える。スクライブヘッドA10は走査装置に取り付けられる。走査装置は被加工物に対するスクライブヘッドA10の位置を任意に変更できるように構成される。一例では、走査装置は第1走査部および第2走査部の少なくとも1つを含む。第1走査部は被加工物の被加工面に対して平行な方向に関するスクライブヘッドA10の位置を変更する。第2走査部は被加工物の被加工面に対して垂直な方向に関するスクライブヘッドA10の位置を変更する。
【0019】
スクライブヘッドA10はベースA11、連結構造A20、ホルダジョイント保持具A12、および、ホルダアセンブリA30を備える。ベースA11は走査装置に取り付けられる。ベースA11と走査装置との関係について例示する。第1例では、ベースA11は走査装置の第1走査部に取り付けられる。第2例では、ベースA11は走査装置の第2走査部に取り付けられる。ホルダジョイント保持具A12は連結構造A20を介してベースA11に取り付けられる。連結構造A20の構成について例示する。第1例では、連結構造A20はホルダジョイント保持具A12がベースA11に対して所定方向に移動できるようにホルダジョイント保持具A12をベースA11に連結する。所定方向は例えば被加工物の被加工面に対して垂直な方向、および、被加工物の被加工面に対して平行な方向の少なくとも一方を含む。第2例では、連結構造A20はホルダジョイント保持具A12がベースA11に対して移動できないようにホルダジョイント保持具A12をベースA11に連結する。
【0020】
図1、
図2には、第1例の連結構造A20が示される。連結構造A20はレールA21およびスライダA22を含む。レールA21はベースA11およびホルダジョイント保持具A12の一方に取り付けられる。スライダA22はベースA11およびホルダジョイント保持具A12の他方に取り付けられる。図示される例では、レールA21はベースA11に取り付けられる。スライダA22はホルダジョイント保持具A12に取り付けられる。連結構造A20は例えば被加工物の被加工面に対して垂直な方向において、ベースA11とホルダジョイント保持具A12との相対的な移動を許容する。
【0021】
ホルダジョイント保持具A12はホルダアセンブリA30を保持する状態と、ホルダアセンブリA30を保持しない状態とを選択できるように構成される。ホルダアセンブリA30はホルダジョイントB10およびホルダユニット10を備える。ホルダジョイントB10はホルダユニット10を支持し、ホルダジョイント保持具A12に着脱できるように構成される。ホルダユニット10はホルダ100、スクライビングホイールC10、および、ピンD10を含む。ホルダ100はホルダジョイントB10に結合される。ピンD10はホルダ100に支持される。スクライビングホイールC10はホルダ100に対して回転できるようにピンD10に支持される。ホルダユニット10はホルダジョイントB10を介してホルダジョイント保持具A12に連結される。
【0022】
スクライブヘッドA10は荷重調節部A40をさらに備える。荷重調節部A40はスクライビングホイールC10を被加工物に押し付ける力を調節する。荷重調節部A40はアクチュエータA41およびブラケットA42を含む。ブラケットA42はベースA11に取り付けられる。アクチュエータA41はブラケットA42に取り付けられる。アクチュエータA41は例えばホルダジョイント保持具A12、ホルダジョイント保持具A12に取り付けられるレールA21、または、ホルダジョイント保持具A12に取り付けられるスライダA22を被加工物に向けて押す。アクチュエータA41の例として、動力シリンダ、ソレノイド、電動機、サーボモータ、および、リニアアクチュエータが挙げられる。動力シリンダの例として、油圧シリンダ、空圧シリンダ、水圧シリンダ、および、電動シリンダが挙げられる。
【0023】
図3および
図4に示されるように、スクライビングホイールC10は内周部C20および刃先部C30を含む。スクライビングホイールC10の基礎的構造の例として、第1構造および第2構造が挙げられる。第1構造では、内周部C20および刃先部C30を含むスクライビングホイールC10の全体が単一の高硬度材料により形成される。第2構造では、スクライビングホイールC10は高硬度材料により形成される内周部C20、および、内周部C20とは異なる高硬度材料により形成される刃先部C30を含む。高硬度材料としては例えば超硬合金、多結晶ダイヤモンド、および、単結晶ダイヤモンドが挙げられる。多結晶ダイヤモンドは例えばダイヤモンド焼結体(Poly-Crystalline Diamond、略称はPCD)、または、ナノ多結晶ダイヤモンド(Nano-Polycrystalline Diamond、略称はNPD)である。
【0024】
内周部C20はスクライビングホイールC10の中心軸LWまわりに設けられる。以下では、中心軸LWに沿う方向をスクライビングホイールC10の軸方向と称する。スクライビングホイールC10の中心面である中心面C11はスクライビングホイールC10の軸方向においてスクライビングホイールC10の中心を通過し、中心軸LWに直交するように規定される。スクライビングホイールC10は中心面C11に対して対称または非対称である。
図3に示される例では、スクライビングホイールC10は中心面C11に対して対称である。
【0025】
図3に示されるスクライビングホイールC10の側面視では、内周部C20の形状は環である。刃先部C30は内周部C20に対してスクライビングホイールC10の径方向の外方に設けられる。刃先部C30はスクライビングホイールC10の刃を構成する。スクライビングホイールC10の側面視では、刃先部C30の形状は環である。刃先部C30の厚さはスクライビングホイールC10の径方向の外方に向かうにつれて薄くなる。刃先部C30の先端には、スクライビングホイールC10の円周に相当する稜線C31が形成される。
【0026】
内周部C20は側面C21、内周面C22、貫通孔C23、および、面取りC24を含む。側面C21は中心面C11に対して平行である。側面C21の外周と刃先部C30との間には境界部C40が形成される。境界部C40は側面C21と刃先部C30の外面との間に形成されるエッジ、または、これに相当する部分である。内周面C22は貫通孔C23を規定する。貫通孔C23はスクライビングホイールC10の軸方向に沿う方向に関して内周部C20を貫通する。貫通孔C23は円形である。面取りC24は貫通孔C23の周囲に形成される。
【0027】
図5はホルダ100の一例を示す。ホルダ100に関する説明には、例えば直交座標系が用いられる。X軸はホルダ100の幅方向に平行である。Y軸はホルダ100の前後方向に平行である。Z軸はホルダ100の上下方向に平行である。X軸およびY軸は第1基準面を定める。X軸およびZ軸は第2基準面を定める。Y軸およびZ軸は第3基準面を定める。
【0028】
ホルダ100は本体部110および支持部200を備える。本体部110はホルダジョイントB10を介してホルダジョイント保持具A12に連結される。支持部200はスクライビングホイールC10がホルダ100に対して回転するようにスクライビングホイールC10を支持する。
【0029】
支持部200は第1支持部200Aおよび第2支持部200Bを含む。第1支持部200Aはホルダ100の幅方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して一方に離れた位置に設けられる。第2支持部200Bはホルダ100の幅方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して他方に離れた位置に設けられる。
【0030】
ホルダ100の幅方向に関して、第1支持部200Aと第2支持部200Bとは間隔を空けて設けられる。第1支持部200Aと第2支持部200Bとの間にホイール配置空間101が形成される。ホイール配置空間101はスクライビングホイールC10を配置できるように形成される。
【0031】
ピンD10の形状は例えば円柱である。ピンD10は第1端部D11、第2端部D12、および、中間部D13を含む。第1端部D11および第2端部D12は支持部200に支持される。中間部D13はピンD10の中心軸に沿う方向に関して第1端部D11と第2端部D12との間に設けられる。中間部D13はスクライビングホイールC10を支持する。ピンD10とスクライビングホイールC10とのはめあいは例えばすきまばめである。ピンD10の外周面D14は支持部200およびスクライビングホイールC10に接触する。
【0032】
支持部200はホルダ100の上下方向に関して、本体部110に対して下方に設けられる。本体部110および支持部200の関係について例示する。第1例では、本体部110と支持部200とは単一の物体を構成する。第2例では、個別に構成された本体部110と支持部200とが結合される。
【0033】
支持部200の表面210は例えば内側面211、外側面212、および、底面213を含む。内側面211はホルダ100の幅方向の中心側を向く。内側面211は第3基準面に対して平行である、または、第3基準面に対して傾斜する。外側面212はホルダ100の幅方向の外側を向く。底面213はホルダ100の上下方向の下方を向く。内側面211、外側面212、および、底面213は各支持部200A、200Bに設けられる。ホイール配置空間101は第1支持部200Aの内側面211と第2支持部200Bの内側面211との間に形成される。支持部200の内側面211とスクライビングホイールC10の側面C21との間にはクリアランスが形成される。
【0034】
支持部200はピン配置空間201および配置面F10を含む。ピン配置空間201はピンD10を配置できるように形成される。ピン配置空間201は各支持部200A、200Bに同軸に形成される。第1支持部200Aのピン配置空間201はピンD10の第1端部D11を配置できるように形成される。第2支持部200Bのピン配置空間201はピンD10の第2端部D12を配置できるように形成される。配置面F10はピン配置空間201の周囲に設けられる。配置面F10はピン配置空間201を規定する。
【0035】
ピン配置空間201は支持部200の内側面211に開口する。各支持部200A、200Bの少なくとも1つのピン配置空間201は外側面212に開口する。ピンD10は外側面212に設けられるピン配置空間201の開口を介してピン配置空間201に挿入される。
【0036】
ピン配置空間201は第1基準面に対して平行である、または、第1基準面に対して傾斜する。ピン配置空間201は第2基準面に対して平行である、または、第2基準面に対して傾斜する。ピン配置空間201と内側面211との関係について例示する。第1例では、ピン配置空間201の中心軸は内側面211に対して垂直である。第2例では、ピン配置空間201の中心軸は内側面211に対して傾斜する。
【0037】
支持部200は抜止部220を含む。抜止部220はピン配置空間201に配置されたピンD10が、ピン配置空間201の開口を介して支持部200の外部に移動しないように構成される。抜止部220は各支持部200A、200Bの少なくとも1つに設けられる。
【0038】
抜止部220の構成について例示する。第1例では、抜止部220は支持部200の外部に設けられる。第2例では、抜止部220はピン配置空間201に設けられる。抜止部220と各支持部200A、200Bとの関係について例示する。第1例では、抜止部220は支持部200に対して着脱できるように構成される。第2例では、抜止部220は固定手段により支持部200に固定される。固定手段は例えば、カシメ、接着、および、溶接の少なくとも1つを含む。
【0039】
図6、
図7に支持部200の側面視が示される。第3基準面に第1基準線L1および第2基準線L2が規定される。第1基準線L1は第3基準面に投影されるホルダ100の中心軸LHである。第2基準線L2はホルダ100の前後方向に平行であり、ピンD10の中心軸LPを通過する。
【0040】
ピンD10は上部D20および下部D30を含む。上部D20はホルダ100の上下方向に関して、第2基準線L2に対して上方に位置する。下部D30はホルダ100の上下方向に関して、第2基準線L2に対して下方に位置する。
【0041】
ピンD10の上部D20は上部前部D20Fおよび上部後部D20Rを含む。上部前部D20Fはホルダ100の前後方向に関して、第1基準線L1に対して前方に位置する。上部後部D20Rはホルダ100の前後方向に関して、第1基準線L1に対して後方に位置する。
【0042】
ピンD10の下部D30は下部前部D30Fおよび下部後部D30Rを含む。下部前部D30Fはホルダ100の前後方向に関して、第1基準線L1に対して前方に位置する。下部後部D30Rはホルダ100の前後方向に関して、第1基準線L1に対して後方に位置する。
【0043】
支持部200は上部支持部300および下部支持部400を含む。上部支持部300および下部支持部400はホルダ100の上下方向に並ぶ。上部支持部300はホルダ100の上下方向に関して、下部支持部400に対して上方に設けられる。上部支持部300はピンD10の上部D20を支持するように構成される。下部支持部400はピンD10の下部D30を支持するように構成される。上部支持部300および下部支持部400は各支持部200A、200Bの少なくとも1つに設けられる。第1例では、上部支持部300および下部支持部400は各支持部200A、200Bの1つに設けられる。第2例では、上部支持部300および下部支持部400は各支持部200A、200Bの両方に設けられる。
【0044】
上部支持部300はピンD10が下部支持部400から離れた状態においてピンD10の下方への移動を規制するようにピンD10の上部D20を支持する。上部支持部300は上部支持面F20を含む。上部支持面F20は配置面F10に含まれる。上部支持面F20は配置面F10のうちの上方に設けられる。上部支持面F20はピンD10の上部D20の外周面D14に接触する。上部D20の外周面D14における上部支持面F20に接触する部分を上部接触部D20Tと称する。
【0045】
上部支持面F20は例えばピンD10の上部D20を挟むように構成される。上部支持面F20は上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rを含む。上部前方支持面F20Fはホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して前方に位置する。上部前方支持面F20Fは例えば斜面または曲面である。上部後方支持面F20Rはホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して後方に位置する。上部後方支持面F20Rは例えば斜面または曲面である。上部前方支持面F20FはピンD10の上部前部D20Fの上部接触部D20Tに接触する。上部後方支持面F20RはピンD10の上部後部D20Rの上部接触部D20Tに接触する。上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rはホルダ100の前後方向においてピンD10の上部D20を挟む。
【0046】
下部支持部400はピンD10が上部支持部300から離れた状態においてピンD10の下方への移動を規制するようにピンD10の下部D30を支持する。下部支持部400は下部支持面F30を含む。下部支持面F30は配置面F10に含まれる。下部支持面F30は配置面F10のうちの下方に設けられる。下部支持面F30はピンD10の下部D30の外周面D14に接触する。下部D30の外周面D14における下部支持面F30に接触する部分を下部接触部D30Tと称する。
【0047】
下部支持面F30は例えばピンD10の下部D30を挟むように構成される。下部支持面F30は下部前方支持面F30Fおよび下部後方支持面F30Rを含む。下部前方支持面F30Fはホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して前方に位置する。下部前方支持面F30Fは例えば斜面または曲面である。下部後方支持面F30Rはホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して後方に位置する。下部後方支持面F30Rは例えば斜面または曲面である。下部前方支持面F30FはピンD10の下部前部D30Fの下部接触部D30Tに接触する。下部後方支持面F30RはピンD10の下部後部D30Rの下部接触部D30Tに接触する。下部前方支持面F30Fおよび下部後方支持面F30Rはホルダ100の前後方向においてピンD10の下部D30を挟む。
【0048】
支持部200は上部支持部300に対応する退避部230を含む。退避部230はホルダ100の上下方向に関して、ピンD10に対して上方に設けられる。退避部230はホルダ100の上下方向に関して、上部支持部300の上方に設けられる。退避部230はピンD10が上部支持部300に支持される状態では、ピンD10のうちの上部接触部D20Tよりも上方の部分との間に空間が形成されるように構成される。退避部230は対向面F40を含む。対向面F40は配置面F10に含まれる。対向面F40は例えば平面または曲面である。退避部230はピンD10が上部支持部300に支持される状態では、ピンD10のうちの上部接触部D20Tよりも上方の部分と対向面F40との間に空間が形成されるように構成される。
【0049】
支持部200によるピンD10の支持状態(以下「ピン支持状態」という)は例えば第1ピン支持状態および第2ピン支持状態を含む。第1ピン支持状態はピンD10が上部支持部300により支持された状態である。第2ピン支持状態はピンD10が下部支持部400により支持された状態である。
【0050】
図6に第1ピン支持状態の一例が示される。第1ピン支持状態では、上部支持面F20はピンD10の上部D20に接触する。上部前方支持面F20FはピンD10の上部前部D20Fの上部接触部D20Tに接触する。上部後方支持面F20RはピンD10の上部後部D20Rの上部接触部D20Tに接触する。ピンD10の上部接触部D20Tと上部支持部300との間に摩擦力が生じる。ピンD10の上部D20が上部支持部300に支持される。ピンD10の下部D30と下部支持部400との間に隙間GBが形成される。
【0051】
第1ピン支持状態では、ホルダ100に対するピンD10の移動が規制される。ホルダ100の上下方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の上方または下方への移動が規制される。ホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の前方または後方への移動が規制される。ピンD10に荷重が働く場合にピンD10がホルダ100に対して移動しにくい。
【0052】
第1ピン支持状態におけるホルダ100の上下方向に関する支持部200とピンD10との間隔について例示する。第1例では、退避部230とピンD10の上部D20との間隔は下部支持部400とピンD10の下部D30との間隔よりも広い。第2例では、退避部230とピンD10の上部D20との間隔は下部支持部400とピンD10の下部D30との間隔よりも狭い。第3例では、退避部230とピンD10の上部D20との間隔は下部支持部400とピンD10の下部D30との間隔に等しい。
【0053】
ホルダ100の上下方向に関する退避部230とピンD10の上部D20との間隔は、例えばピンD10のうちの上部接触部D20Tよりも上方の部分と対向面F40との間隔である。ホルダ100の上下方向に関する下部支持部400とピンD10の下部D30との間隔は、例えばピンD10における下部接触部D30Tよりも下方の部分と下部支持面F30との間隔である。
【0054】
スクライブ加工時には、スクライビングホイールC10が被加工物に押し付けられた状態において被加工物に対して走行し、スクライビングホイールC10に荷重が働く。ホルダ100の上下方向の上方に作用する荷重が、スクライビングホイールC10を介してピンD10に伝達される。第1ピン支持状態においてピンD10に伝達される場合、ピンD10の上部D20が上部支持面F20に押し付けられる。ピンD10の上部D20と上部支持面F20との間に働く摩擦力が大きくなる。ピンD10の上部D20が上部支持部300に強く支持される。
【0055】
図7に第2ピン支持状態の一例が示される。第2ピン支持状態では、下部支持面F30はピンD10の下部D30に接触する。下部前方支持面F30Fは下部前部D30Fに接触する。下部後方支持面F30Rは下部後部D30Rに接触する。ピンD10の下部接触部D30Tと下部支持部400との間に摩擦力が生じる。ピンD10の下部D30が下部支持部400に支持される。ピンD10の上部D20と上部支持部300との間に隙間GAが形成される。
【0056】
第2ピン支持状態では、ホルダ100に対するピンD10の移動が規制される。ホルダ100の上下方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の下方への移動が規制される。ホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の前方または後方への移動が規制される。
【0057】
第1ピン支持状態および第2ピン支持状態では、ピンD10の運動状態が変化する場合がある。運動状態の変化の例として、第1運動状態および第2運動状態が挙げられる。
第1運動状態では、ピンD10がホルダ100に対してホルダ100の上下方向の下方または上方に移動する。第1ピン支持状態において第1運動状態が生じる場合、ピンD10がホルダ100に対して下方に移動する。ピン支持状態が第1ピン支持状態から第2ピン支持状態に遷移する。第2ピン支持状態において第1運動状態が生じる場合、ピンD10がホルダ100に対して上方に移動する。ピン支持状態が第2ピン支持状態から第1ピン支持状態に遷移する。第1ピン支持状態と第2ピン支持状態との間でのピン支持状態の遷移にともない、ピンD10における上部接触部D20Tまたは下部接触部D30Tの位置が変化する場合がある。
【0058】
第2運動状態では、ピンD10が支持部200に支持された状態においてピンD10が回転する。第1ピン支持状態において第1運動状態が生じることにともない第2運動状態が生じる場合、ピンD10が回転する。第2ピン支持状態において第2運動状態が生じる場合、ピンD10の下部D30が下部支持部400に支持された状態において、ピンD10が回転する。ピンD10の回転にともないピンD10における上部接触部D20Tまたは下部接触部D30Tの位置が変化する場合がある。
【0059】
図5に示されるホルダユニット10は例えば次のように組み立てられる。スクライビングホイールC10が支持部200のホイール配置空間101に配置される。ピンD10が支持部200のピン配置空間201およびスクライビングホイールC10の貫通孔C23に挿入される。支持部200に抜止部220が設けられる。
【0060】
ホルダユニット10が組み立てられた直後の状態では、ピン支持状態は例えば第2ピン支持状態である。ホルダユニット10がスクライブ加工に用いられる場合、被加工物に対するスクライビングホイールC10の走行の開始前にピン支持状態が第1ピン支持状態にセットされる。
【0061】
一例では、次のようにピン支持状態が第1ピン支持状態にセットされる。第2ピン支持状態のホルダユニット10のスクライビングホイールC10が所定の対象物に押し付けられる。所定の対象物は被加工物、または、被加工物とは別の物体である。スクライビングホイールC10が所定の対象物に押し付けられた場合、ホルダ100の上下方向に関する上方に作用する荷重がスクライビングホイールC10およびピンD10に働く。ピンD10がホルダ100に対してホルダ100の上下方向の上方に移動し、ピンD10の上部D20が上部支持面F20に押し付けられる。ピン支持状態が第2ピン支持状態から第1ピン支持状態に遷移する。
【0062】
所定の対象物が被加工物とは別の物体である場合、ピン支持状態が第1ピン支持状態にセットされた後、スクライブ加工のためにスクライブヘッドA10の位置の設定等が行われる。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態のホルダ100は第1実施形態を前提に構成される。
図8にホルダ100の一例が示される。
【0064】
下部支持部400は溝部410を含む。溝部410はホルダ100の前後方向に関する下部支持部400の前方の部分と下部支持部400の後方の部分との間に設けられる。溝部410は支持部200の内側面211、外側面212、底面213のそれぞれに開口する。溝部410は溝部前方面411および溝部後方面412を含む。溝部前方面411はホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して前方に位置する。溝部後方面412はホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100の中心軸LHに対して後方に位置する。溝部前方面411および溝部後方面412は溝部410の空間を規定する。一例では、ホルダ100の前後方向に関する溝部前方面411と溝部後方面412との間隔は一定である。
【0065】
上部支持面F20は平面である。上部支持面F20は斜面である。ホルダ100の側面視では、上部支持面F20はホルダ100の上下方向および前後方向に対して傾斜する。上部前方支持面F20Fは上部前方支持面F20Fの上部が上部前方支持面F20Fの下部よりもホルダ100の前後方向に関する後方に位置するように傾斜する。上部後方支持面F20Rは上部後方支持面F20Rの上部が上部後方支持面F20Rの下部よりもホルダ100の前後方向に関する前方に位置するように傾斜する。一例では、上部前方支持面F20Fと上部後方支持面F20Rとはホルダ100の中心軸LHを含む第2基準面に対して対称である。
【0066】
下部支持面F30は曲面である。第3基準面上では、曲面は第3基準面に規定される曲率円の一部である。曲率円の中心は第1基準線L1と第3基準線L3との交点である。第3基準線L3はホルダ100の前後方向に平行である。第3基準線L3は上部支持面F20と下部支持面F30との境界を通過する。
【0067】
下部前方支持面F30Fは溝部410の溝部前方面411と上部前方支持面F20Fとの間に設けられる。下部後方支持面F30Rは溝部410の溝部後方面412と上部後方支持面F20Rとの間に設けられる。下部支持面F30の曲率半径とピンD10の半径との関係について例示する。第1例では、下部支持面F30の曲率半径はピンD10の半径に等しい。第2例では、下部支持面F30の曲率半径はピンD10の半径よりも長い。
【0068】
退避部230の対向面F40はホルダ100の前後方向に平行な平面である。対向面F40はホルダ100の前後方向に関して、上部前方支持面F20Fと上部後方支持面F20Rとの間に設けられる。対向面F40と上部支持面F20とは曲面を介して繋がる。
【0069】
ホルダ100の上下方向に関する退避部230とピンD10の上部D20との間隔は、ホルダ100の上下方向に関する下部支持部400とピンD10の下部D30との間隔よりも大きい。退避部230とピンD10の上部D20との間隔は、例えば第1基準線L1における対向面F40とピンD10の上部D20の外周面D14との間隔である。下部支持部400とピンD10の下部D30との間隔は、例えば下部支持面F30の下方の縁とピンD10の下部D30の外周面D14との間隔である。
【0070】
上部支持面F20の傾斜角度(以下「上部傾斜角度PA」という)について説明する。第3基準面に第1直線M1および第2直線M2が規定される。第1直線M1は上部前方支持面F20Fに平行である。第2直線M2は上部後方支持面F20Rに平行である。上部傾斜角度PAは第1直線M1と第2直線M2とのなす角度である。第1直線M1と第2直線M2との交点はホルダ100の上下方向に関して、第3基準線L3よりも上方に位置する。上部傾斜角度PAは例えば0°よりも大きい。
【0071】
上部傾斜角度PAは上部前方支持面F20Fの傾斜角度(以下「上部前方傾斜角度PAF」)、および、上部後方支持面F20Rの傾斜角度(以下「上部後方傾斜角度PAR」)を含む。上部傾斜角度PAは上部前方傾斜角度PAFと上部後方傾斜角度PARとの和である。上部前方傾斜角度PAFは第1基準線L1と第1直線M1とのなす角度である。上部後方傾斜角度PARは第1基準線L1と第2直線M2とのなす角度である。第1基準線L1と第1直線M1および第2直線M2との交点はホルダ100の上下方向に関して、第3基準線L3よりも上方に位置する。
【0072】
上部前方支持面F20Fが第2基準面に平行である場合、上部前方傾斜角度PAFは0°である。上部前方傾斜角度PAFが大きくなるほど、上部傾斜角度PAは大きくなる。上部後方支持面F20Rが第2基準面に平行である場合、上部後方傾斜角度PARは0°である。上部後方傾斜角度PARが大きくなるほど、上部傾斜角度PAは大きくなる。
【0073】
上部前方傾斜角度PAFと上部後方傾斜角度PARとの関係について例示する。第1例では、上部前方傾斜角度PAFと上部後方傾斜角度PARとは等しい。第2例では、上部前方傾斜角度PAFは上部後方傾斜角度PARよりも大きい。第3例では、上部前方傾斜角度PAFは上部後方傾斜角度PARよりも小さい。
【0074】
ピンD10の上部D20と上部支持部300との接触角度(以下「上部接触角度QA」という)について説明する。第3基準面に第3直線M3および第4直線M4が規定される。第3直線M3はピンD10の中心軸LPおよび上部前部D20Fの上部接触部D20Tを通過する。第4直線M4はピンD10の中心軸LPおよび上部後部D20Rの上部接触部D20Tを通過する。上部接触角度QAは第3直線M3と第4直線M4とのなす角度である。上部接触角度QAは例えば180°未満である。
【0075】
上部接触角度QAは上部前方支持面F20Fに対応する上部接触角度(以下「上部前方接触角度QAF」という)、および、上部後方支持面F20Rに対応する上部接触角度(以下「上部後方接触角度QAR」という)を含む。上部接触角度QAは上部前方接触角度QAFと上部後方接触角度QARとの和である。上部前方接触角度QAFは第1直線M1と第3直線M3とのなす角度である。上部後方接触角度QARは第1直線M1と第4直線M4とのなす角度である。
【0076】
ピンD10の上部D20の外周面D14における上部前部D20Fの上部接触部D20Tの位置が第3基準線L3上である場合、上部前方接触角度QAFは90°である。ピンD10の上部D20の外周面D14における上部前部D20Fの上部接触部D20Tの位置が第1基準線L1に近くなるほど、上部前方接触角度QAFは小さくなる。
【0077】
ピンD10の上部D20の外周面D14における上部後部D20Rの上部接触部D20Tの位置が第3基準線L3上である場合、上部後方接触角度QARは90°である。ピンD10の上部D20の外周面D14における上部後部D20Rの上部接触部D20Tの位置が第1基準線L1に近くなるほど、上部後方接触角度QARは小さくなる。
【0078】
図9に第1ピン支持状態の一例が示される。上部支持面F20のうちの下部支持面F30との境界に近い部分がピンD10の上部D20に接触する。上部支持面F20のうち、下部支持面F30との境界に対してホルダ100の上下方向の上方に離れた部分はピンD10に接触しない。
【0079】
図10に第2ピン支持状態の一例が示される。下部支持面F30のおおよそ全体がピンD10の下部D30に接触する。
(第3実施形態)
第3実施形態のホルダ100は第2実施形態を前提に構成される。
図8にホルダ100の一例が示される。
【0080】
上部傾斜角度PAについて例示する。上部傾斜角度PAは第1上部傾斜角度以上の範囲から選択される。第1上部傾斜角度は例えば20°、30°、40°から選択される。上部傾斜角度PAは第2上部傾斜角度以下の範囲から選択される。第2上部傾斜角度は例えば50°、60°、70°、80°から選択される。第2上部傾斜角度は第1上部傾斜角度よりも大きい。一例では、上部傾斜角度PAは第1上部傾斜角度かつ第2上部傾斜角度以下の範囲から選択される。上部傾斜角度PAは例えば20°以上かつ80°以下の範囲から選択される。上部傾斜角度PAは例えば30°である。
【0081】
上部前方傾斜角度PAFについて例示する。上部前方傾斜角度PAFは第1上部前方傾斜角度以上の範囲から選択される。第1上部前方傾斜角度は例えば10°、15°、20°から選択される。上部前方傾斜角度PAFは第2上部前方傾斜角度以下の範囲から選択される。第2上部前方傾斜角度は例えば25°、30°、35°、40°から選択される。第2上部前方傾斜角度は第1上部前方傾斜角度よりも大きい。一例では、上部前方傾斜角度PAFは第1上部前方傾斜角度かつ第2上部前方傾斜角度以下の範囲から選択される。上部前方傾斜角度PAFは例えば10°以上かつ40°以下の範囲から選択される。上部前方傾斜角度PAFは例えば15°である。
【0082】
上部後方傾斜角度PARについて例示する。上部後方傾斜角度PARは第1上部後方傾斜角度以上の範囲から選択される。第1上部後方傾斜角度は例えば10°、15°、20°から選択される。上部後方傾斜角度PARは第2上部後方傾斜角度以下の範囲から選択される。第2上部後方傾斜角度は例えば25°、30°、35°、40°から選択される。第2上部後方傾斜角度は第1上部後方傾斜角度よりも大きい。一例では、上部後方傾斜角度PARは第1上部後方傾斜角度かつ第2上部後方傾斜角度以下の範囲から選択される。上部後方傾斜角度PARは例えば10°以上かつ40°以下の範囲から選択される。上部後方傾斜角度PARは例えば15°である。
【0083】
(第4実施形態)
第4実施形態のホルダ100は第2または第3実施形態を前提に構成される。
図8にホルダ100の一例が示される。
【0084】
上部接触角度QAについて例示する。上部接触角度QAは第1上部接触角度以上の範囲から選択される。第1上部接触角度は例えば100°、110°、120°から選択される。上部接触角度QAは第2上部接触角度以下の範囲から選択される。第2上部接触角度は例えば140°、150°、160°、170°から選択される。第2上部接触角度は第1上部接触角度よりも大きい。一例では、上部接触角度QAは第1上部接触角度かつ第2上部接触角度以下の範囲から選択される。上部接触角度QAは例えば100°以上かつ180°未満の範囲から選択される。上部接触角度QAは例えば150°である。
【0085】
上部前方接触角度QAFについて例示する。上部前方接触角度QAFは第1上部前方接触角度以上の範囲から選択される。第1上部前方接触角度は例えば50°、55°、60°から選択される。上部前方接触角度QAFは第2上部前方接触角度以下の範囲から選択される。第2上部前方接触角度は例えば70°、75°、80°から選択される。第2上部前方接触角度は第1上部前方接触角度よりも大きい。一例では、上部前方接触角度QAFは第1上部前方接触角度かつ第2上部前方接触角度以下の範囲から選択される。上部前方接触角度QAFは例えば50°以上かつ80°以下の範囲から選択される。上部前方接触角度QAFは例えば75°である。
【0086】
上部後方接触角度QARについて例示する。上部後方接触角度QARは第1上部後方接触角度以上の範囲から選択される。第1上部後方接触角度は例えば50°、55°、60°から選択される。上部後方接触角度QARは第2上部後方接触角度以下の範囲から選択される。第2上部後方接触角度は例えば70°、75°、80°から選択される。第2上部後方接触角度は第1上部後方接触角度よりも大きい。一例では、上部後方接触角度QARは第1上部後方接触角度かつ第2上部後方接触角度以下の範囲から選択される。上部後方接触角度QARは例えば50°以上かつ80°以下の範囲から選択される。上部後方接触角度QARは例えば75°である。
【0087】
(第5実施形態)
第5実施形態のホルダ100は第2~第4実施形態の少なくとも1つを前提に構成される。
図11、
図12にホルダ100の一例が示される。
【0088】
図11は第1支持部200Aの側面を示す。第1支持部200Aの上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rの一方は斜面または曲面である。図示される例では、上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rの一方は斜面である。第1支持部200Aの上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rの他方は第2基準面に平行な平面である。
【0089】
図12は第2支持部200Bの側面を示す。第2支持部200Bの上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rの一方は斜面または曲面である。図示される例では、上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rの一方は斜面である。第2支持部200Bの上部前方支持面F20Fおよび上部後方支持面F20Rの他方は第2基準面に平行な平面である。
【0090】
ホルダ100の前後方向に関して、第1支持部200Aの斜面と第2支持部200Bの斜面とは互いに反対の位置に設けられる。第1例では、第1支持部200Aの上部前方支持面F20Fは斜面である。第2支持部200Bの上部後方支持面F20Rは平面である。第2例では、第1支持部200Aの上部前方支持面F20Fは平面である。第2支持部200Bの上部後方支持面F20Rは斜面である。
【0091】
(第6実施形態)
第6実施形態のホルダ100は第2~第5実施形態の少なくとも1つを前提に構成される。
図13にホルダ100の一例が示される。
【0092】
下部支持部400は溝部410を含まない。下部支持部400は溝部410に代えて中間部420を含む。ホルダ100の前後方向に関して、中間部420は下部支持部400の前方部分と後方部分とを繋げる。
【0093】
(第7実施形態)
第7実施形態のホルダ100は第6実施形態を前提に構成される。
図14にホルダ100の一例が示される。
【0094】
下部支持面F30は例えばピンD10の下部D30を挟むように構成される。下部前方支持面F30Fは平面である。下部後方支持面F30Rは平面である。下部前方支持面F30FはピンD10の下部前部D30Fの下部接触部D30Tに接触する。下部後方支持面F30RはピンD10の下部後部D30Rの下部接触部D30Tに接触する。下部前方支持面F30Fおよび下部後方支持面F30Rはホルダ100の前後方向においてピンD10の下部D30を挟む。
【0095】
上部支持面F20と下部支持面F30とは例えば曲面を介して繋がる。一例では、上部支持面F20と下部支持面F30とは第3基準線L3を含む第1基準面に対して対称である。
【0096】
支持部200は下部支持部400に対応する退避部230を含む。退避部230はホルダ100の上下方向に関して、ピンD10に対して下方に設けられる。退避部230はホルダ100の上下方向に関して、下部支持部400の下方に設けられる。退避部230はピンD10が下部支持部400に支持される状態では、ピンD10のうちの下部接触部D30Tよりも下方の部分との間に空間が形成されるように構成される。退避部230は対向面F40を含む。対向面F40は配置面F10に含まれる。対向面F40は例えば平面または曲面である。退避部230はピンD10が下部支持部400に支持される状態では、ピンD10のうちの下部接触部D30Tよりも下部の部分と対向面F40との間に空間が形成されるように構成される。
【0097】
下部支持面F30の傾斜角度(以下「下部傾斜角度PB」という)について説明する。第3基準面に第5直線M5および第6直線M6が規定される。第5直線M5は下部前方支持面F30Fに平行である。第6直線M6は下部後方支持面F30Rに平行である。下部傾斜角度PBは第5直線M5と第6直線M6とのなす角度である。第5直線M5と第6直線M6との交点はホルダ100の上下方向に関して、第3基準線L3よりも下方に位置する。下部傾斜角度PBは例えば0°よりも大きい。
【0098】
下部傾斜角度PBは下部前方支持面F30Fの傾斜角度(以下「下部前方傾斜角度PBF」)、および、下部後方支持面F30Rの傾斜角度(以下「下部後方傾斜角度PBR」)を含む。下部傾斜角度PBは下部前方傾斜角度PBFと下部後方傾斜角度PBRとの和である。下部前方傾斜角度PBFは第1基準線L1と第5直線M5とのなす角度である。下部後方傾斜角度PBRは第1基準線L1と第6直線M6とのなす角度である。第1基準線L1と第5直線M5および第6直線M6との交点はホルダ100の上下方向に関して、第3基準線L3よりも下方に位置する。
【0099】
下部前方支持面F30Fが第2基準面に平行である場合、下部前方傾斜角度PBFは0°である。下部前方傾斜角度PBFが大きくなるほど、下部傾斜角度PBは大きくなる。下部後方支持面F30Rが第2基準面に平行である場合、下部後方傾斜角度PBRは0°である。下部後方傾斜角度PBRが大きくなるほど、下部傾斜角度PBは大きくなる。
【0100】
下部前方傾斜角度PBFと下部後方傾斜角度PBRとの関係について例示する。第1例では、下部前方傾斜角度PBFと下部後方傾斜角度PBRとは等しい。第2例では、下部前方傾斜角度PBFは下部後方傾斜角度PBRよりも大きい。第3例では、下部前方傾斜角度PBFは下部後方傾斜角度PBRよりも小さい。
【0101】
下部傾斜角度PBに応じて、下部支持部400によるピンD10の支持状態が異なる。ピンD10の下部D30は下部支持面F30または対向面F40に支持される。
(第8実施形態)
第8実施形態のホルダ100は第6実施形態を前提に構成される。
図15にホルダ100の一例が示される。
【0102】
下部前方支持面F30Fおよび下部後方支持面F30Rは第2基準面に平行な平面である。下部前方傾斜角度PBFは0°である。下部後方傾斜角度PBRは0°である。第2ピン支持状態では、対向面F40はピンD10の下部D30に接触する。
【0103】
(第9実施形態)
第9実施形態のホルダ100は第6実施形態を前提に構成される。
図16にホルダ100の一例が示される。
【0104】
上部前方支持面F20Fおよび下部前方支持面F30Fは1つの斜面を構成する。上部後方支持面F20Rおよび下部後方支持面F30Rは1つの斜面を構成する。第2ピン支持状態では、対向面F40はピンD10の下部D30に接触する。
【0105】
(第10実施形態)
第10実施形態のホルダ100は第7実施形態を前提に構成される。
図17にホルダ100の一例が示される。
【0106】
上部傾斜角度PAと下部傾斜角度PBとが異なる。上部傾斜角度PAは下部傾斜角度PBよりも小さい。
(第11実施形態)
第11実施形態のホルダ100は第2実施形態を前提に構成される。
図18にホルダ100の一例が示される。
【0107】
第3基準面に楕円Nが規定される。楕円Nの長軸は第1基準線L1である。楕円Nの短軸は第3基準線L3である。楕円Nの中心は第1基準線L1と第3基準線L3との交点である。第3基準面では、配置面F10は楕円Nにより規定される。配置面F10は楕円Nの一部である。
【0108】
(第12実施形態)
第12実施形態のホルダ100は第11実施形態を前提に構成される。
図19にホルダ100の一例が示される。
【0109】
下部支持部400は溝部410を含まない。下部支持部400は溝部410に代えて中間部420を含む。ホルダ100の前後方向に関して、中間部420は下部支持部400の前方部分と後方部分とを繋げる。
【0110】
(第13実施形態)
第13実施形態のホルダ100は第2実施形態を前提に構成される。
図20にホルダ100の一例が示される。
【0111】
上部支持面F20は曲面である。第3基準面上では、曲面は第3基準面に規定される曲率円の一部である。上部前方支持面F20Fに対応する曲率円の中心はホルダ100の前後方向に関して、上部前方支持面F20Fに対して前方に位置する。上部後方支持面F20Rに対応する曲率円の中心はホルダ100の前後方向に関して、上部後方支持面F20Rに対して前方に位置する。
【0112】
(第14実施形態)
第14実施形態のホルダユニット10は第1~第13実施形態の少なくとも1つを前提に構成される。
図21~
図23にホルダユニット10の一例が示される。
【0113】
ホルダ100とホルダジョイントB10との構造的関連の形態の例として、第1形態および第2形態が挙げられる。第1形態では、ホルダ100とホルダジョイントB10とは分離できないように一体的に構成される。
図21は第1形態の一例を示す。第2形態では、ホルダ100とホルダジョイントB10とは着脱できるように個別に構成される。
図22は第2形態の第1例を示す。
図23は第2形態の第2例を示す。
【0114】
図21に示される第1形態では、ホルダジョイントB10は基部B11を含む。基部B11はホルダジョイント保持具A12に取り付けられる。基部B11は軸受部B20および軸B12を含む。軸受部B20は軸B12を支持する。軸B12の中心軸LJはホルダジョイントB10の中心軸LJを規定する。軸B12はホルダ100の本体部110に設けられる。軸B12と本体部110との関係について例示する。第1例では、軸B12と本体部110とは単一の物体を構成する。第2例では、個別に構成された軸B12と本体部110とが結合される。
【0115】
軸受部B20の構成について例示する。第1例では、軸受部B20は1または複数のラジアルベアリングB30を含む。第2例では、軸受部B20は第1例の構成に加え、ケースB21、ストッパB40、および、スペーサの少なくとも1つをさらに含む。
図21は2つのラジアルベアリングB30、ケースB21、および、ストッパB40を含む第2例の軸受部B20を示す。ラジアルベアリングB30の内輪B31は軸B12に固定される。ケースB21はラジアルベアリングB30を収容する。ラジアルベアリングB30の外輪B32はケースB21に固定される。軸B12、内輪B31、および、ホルダ100は外輪B32およびケースB21に対して軸B12の中心軸LJまわりで回転する。軸受部B20にスペーサが含まれる例では、一方のラジアルベアリングB30と他方のラジアルベアリングB30との間にスペーサが設けられる。スペーサは軸B12に固定される。
【0116】
ストッパB40は例えば第1ストッパB41および第2ストッパB42を含む。第1ストッパB41は軸B12の先端に設けられる。第1ストッパB41はラジアルベアリングB30の移動を規制する第1規制面B41Aを含む。第2ストッパB42は軸B12の根元に設けられる。第2ストッパB42はラジアルベアリングB30の移動を規制する第2規制面B42Aを含む。
【0117】
第1ストッパB41の構成について例示する。第1ストッパB41は軸B12の雌ねじ部にかみ合うねじ付きファスナを含む。ねじ付きファスナは例えばねじまたはボルトを含む。ねじ付きファスナのヘッドは第1規制面B41Aを構成する。一方のラジアルベアリングB30の内輪B31の端面は第1規制面B41Aに接触する。第2ストッパB42の構成について例示する。第2ストッパB42は軸B12の周囲に設けられるフランジを含む。フランジの端面は第2規制面B42Aを構成する。他方のラジアルベアリングB30の内輪B31の端面は第2規制面B42Aに接触する。
【0118】
図22に示される第2形態の第1例では、ホルダジョイントB10は基部B11およびホルダ取付部B50を含む。ホルダ取付部B50はベースB60を含む。ベースB60は例えば第1プレートB61および第2プレートB62を含む。第1プレートB61は軸B12の中心軸LJに沿う方向に関するホルダ100の位置を決める。第2プレートB62は軸B12の中心軸LJに直交する方向に関するホルダ100の位置を決める。軸B12はベースB60に設けられる。軸B12とベースB60との関係について例示する。第1例では、軸B12とベースB60とは単一の物体を構成する。第2例では、個別に構成された軸B12とベースB60とが結合される。軸B12およびベースB60は分離できない形態、または、分離できる形態を取り得る。軸B12は例えば第1プレートB61に設けられる。
【0119】
図23に示される第2形態の第2例では、ホルダジョイントB10は基部B11およびホルダ取付部B50を含む。ホルダ取付部B50はソケットB70を含む。ソケットB70は例えば配置空間B71を含む。配置空間B71はホルダ100の本体部110を配置できるように形成される。軸B12はソケットB70に設けられる。軸B12とソケットB70との関係について例示する。第1例では、軸B12とソケットB70とは単一の物体を構成する。第2例では、個別に構成された軸B12とソケットB70とが結合される。軸B12およびソケットB70は分離できない形態、または、分離できる形態を取り得る。
【0120】
図22、
図23の第2形態のホルダ100およびホルダジョイントB10に含まれる軸受部B20は例えば第1形態のホルダ100およびホルダジョイントB10に含まれる軸受部B20と同様に構成される。軸B12、内輪B31、ホルダ取付部B50、および、ホルダ100は外輪B32およびケースB21に対して軸B12の中心軸LJまわりで回転する。
【0121】
一例では、ホルダアセンブリA30の側面視において、スクライビングホイールC10の中心軸LW、および、スクライビングホイールC10と被加工面との接触点はホルダ100の中心軸LH上に位置する。軸B12の中心軸LJとスクライビングホイールC10の中心軸LWとの関係について例示する。第1例では、軸B12の中心軸LJとスクライビングホイールC10の中心軸LWとの間にトレールが設定される。第2例では、軸B12の中心軸LJとスクライビングホイールC10の中心軸LWとの間にトレールが設定されない。
【0122】
トレールは軸B12の中心軸LJと被加工面との交点と、スクライビングホイールC10と被加工物との接触点との距離である。
図21~
図23に示されるホルダアセンブリA30の側面視では、軸B12の中心軸LJとホルダ100の中心軸LHとは平行である。軸B12の中心軸LJとホルダ100の中心軸LHとの距離がトレールに相当する。トレールが設定される形態では、スクライビングホイールC10の走査方向において中心軸LWが軸B12の中心軸LJよりも後方に位置する場合、スクライビングホイールC10の直進性が高くなる。
【0123】
ホルダアセンブリA30に第2形態のホルダ100およびホルダジョイントB10が含まれる場合、ホルダアセンブリA30は連結構造A31をさらに備える。連結構造A31はホルダジョイントB10とホルダ100とを連結する。連結構造A31は例えば機械的な結合方法によりホルダジョイントB10とホルダ100とを連結する機械結合部A31A、および、磁気的な結合方法によりホルダジョイントB10とホルダ100とを連結する磁気結合部A31Bの少なくとも1つを含む。
【0124】
図22に示される例では、連結構造A31は機械結合部A31Aを含む。機械結合部A31Aの構成について例示する。第1例では、機械結合部A31Aはねじ付きファスナによりホルダ取付部B50とホルダ100の本体部110とを連結する。ねじ付きファスナはねじまたはボルトを含む。第2例では、機械結合部A31Aは嵌合部によりホルダ取付部B50とホルダ100の本体部110とを連結する。嵌合部はホルダ取付部B50およびホルダ100の本体部110の一方に設けられる第1嵌合部と、ホルダ取付部B50およびホルダ100の本体部110の他方に設けられる第2嵌合部とを含む。
図21は第1例の機械結合部A31Aを示す。機械結合部A31Aはホルダ取付部B50に設けられる雌ねじ部、ホルダ100の本体部110に設けられる貫通孔、および、ねじ付きファスナを含む。ねじ付きファスナはホルダ100の本体部110の貫通孔に挿入され、ホルダ取付部B50の雌ねじ部にかみ合う。ねじ付きファスナによりホルダ100の本体部110がホルダ取付部B50に固定される。
【0125】
図23に示される例では、連結構造A31は磁気結合部A31Bを含む。磁気結合部A31Bの構成について例示する。第1例では、磁気結合部A31BはソケットB70に設けられる永久磁石、および、ホルダ100の本体部110に設けられる磁性体を含む。第2例では、磁気結合部A31BはソケットB70に設けられる磁性体、および、ホルダ100の本体部110に設けられる永久磁石を含む。第3例では、磁気結合部A31BはソケットB70に設けられる永久磁石、および、ホルダ100の本体部110に設けられる永久磁石を含む。永久磁石と磁性体との間に働く磁力、または、永久磁石と永久磁石との間に働く磁力によりホルダ100がソケットB70に保持される。
【0126】
連結構造A31に磁気結合部A31Bが含まれる場合、一例では、ホルダ取付部B50はホルダ規制部B80をさらに備える。ホルダ規制部B80はソケットB70に対するホルダ100の位置が安定するようにホルダ100に接触する。ホルダ規制部B80は例えばピンB81を含む。ピンB81は配置空間B71に設けられる。ピンB81はソケットB70に支持される。ホルダ100は傾斜部120および平坦部130をさらに含む。傾斜部120はホルダ100の側面視においてホルダ100の中心軸LHに対して傾斜する斜面を含む。傾斜部120の斜面はホルダ100の中心軸LHに沿う方向に関する第1端部121および第2端部122を含む。第1端部121は第2端部122よりもスクライビングホイールC10から遠い。傾斜部120の斜面は第1端部121が第2端部122よりもホルダ100の中心軸LHに近くなるように傾斜する。平坦部130は傾斜部120に対して上方に設けられる。平坦部130はホルダ100の中心軸LHに対して平行な面を含む。
【0127】
磁気結合部A31Bによりホルダ100がソケットB70に保持された状態では、傾斜部120はピンB81に接触する。傾斜部120とピンB81との接触により、ホルダ100の中心軸LHに沿う方向に関するソケットB70に対するホルダ100の位置が決められる。ホルダアセンブリA30の側面視において、軸B12の中心軸LJと直交する方向の力がホルダ100に働く。この力により本体部110の外周面の一部がソケットB70の内周面に押し付けられる。
【0128】
(効果1)
ホルダ100の一例では、ホルダ100はスクライビングホイールC10を支持するピンD10を支持する支持部200を含む。支持部200は上部支持部300および下部支持部400を含む。上部支持部300はピンD10が下部支持部400から離れた状態においてピンD10の下方への移動を規制するようにピンD10の上部D20を支持する。下部支持部400はピンD10の下方への移動を規制するようにピンD10の下部D30を支持する。
【0129】
スクライビングホイールC10が被加工物に接触し、スクライビングホイールC10およびピンD10に対して上方に荷重が働く場合、ピンD10が上部支持部300に支持される。ピンD10が上部支持部300に支持された状態では、ホルダ100に対するピンD10の位置が変化しにくく、ホルダ100に対するスクライビングホイールC10の姿勢の安定性が向上する。
【0130】
ホルダ100の一例では、上部支持部300はピンD10が下部支持部400から離れた状態においてピンD10を挟む上部支持面F20を含む。
ピンD10が上部支持部300に適切に支持される。
【0131】
ホルダ100の一例では、上部支持面F20は斜面を含む。
ピンD10が上部支持部300に適切に支持される。
ホルダ100の一例では、上部支持面F20の傾斜角度は20°以上かつ80°以下の範囲に含まれる。
【0132】
ピンD10が上部支持部300に適切に支持される。
ホルダ100の一例では、ピンD10の上部D20と上部支持部300との接触角度である上部接触角度QAは100°以上かつ180°未満の範囲に含まれる。
【0133】
ピンD10が上部支持部300に適切に支持される。
ホルダ100の一例では、上部接触角度QAは120°以上かつ150°以下の範囲に含まれる。
【0134】
ピンD10が上部支持部300に適切に支持される。
ホルダ100の一例では、支持部200はピンD10に対して上方に設けられる退避部230をさらに含む。退避部230はピンD10が上部支持部300に支持される状態ではピンD10の上部D20における上部支持部300に接触する部分である上部接触部D20Tよりも上方の部分との間に空間が形成されるように構成される。
【0135】
ピンD10の上部接触部D20Tよりも上方の部分がホルダ100に接触しにくい。
ホルダ100の一例では、上部支持部300に支持されるピンD10と退避部230との間隔は上部支持部300に支持されるピンD10と下部支持部400との間隔よりも広い。
【0136】
ピンD10の上部接触部D20Tよりも上方の部分がホルダ100に接触しにくい。
ホルダユニット10の一例では、ホルダユニット10はホルダ100、スクライビングホイールC10、および、ピンD10を備える。
【0137】
ピンD10が上部支持部300に支持された状態では、ホルダ100に対するピンD10の位置が変化しにくく、ホルダ100に対するスクライビングホイールC10の姿勢の安定性が向上する。
【0138】
(効果2)
ホルダ100の一例では、上部支持部300は第1ピン支持状態において、ホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の前方または後方への移動を規制するように構成される。
【0139】
ホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の位置が変化しにくく、スクライビングホイールC10の位置の安定性が向上する。
ホルダ100の一例では、下部支持部400は第2ピン支持状態において、ホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の前方または後方への移動を規制するように構成される。
【0140】
ホルダ100の前後方向に関して、ホルダ100に対するピンD10の位置が変化しにくく、スクライビングホイールC10の位置の安定性が向上する。
ホルダ100の一例では、被加工物に対するスクライビングホイールC10の走行の開始前にピン支持状態が第1ピン支持状態にセットされる。
【0141】
被加工物に対するスクライビングホイールC10の走行の開始直後において、スクライビングホイールC10の位置の安定性が向上する。
ホルダ100の一例では、被加工物とは別の物体にスクライビングホイールC10が押し付けられ、ピン支持状態が第1ピン支持状態にセットされる。
【0142】
スクライブ加工のためにスクライビングホイールC10が被加工物に押し付けられた場合、押し付けにともなうホルダ100に対するピンD10の位置の変化が生じにくい。被加工物に対するスクライビングホイールC10の初期位置のセットに関する精度が向上する。
【0143】
ホルダ100と、ホルダ100とは異なる構成を含むホルダ(以下「他のホルダ」という)とを対比する。他のホルダはホルダ100の上部支持部300を含まない。
他のホルダを含むホルダユニットを用いたスクライブ加工では、被加工物に対するスクライビングホイールの走行距離が所定走行距離に達するまでの間、ホルダの上下方向に関するホルダに対するピンの移動が生じる回数は所定回数よりも多い。所定回数は0よりも大きい値である。ホルダの上下方向に関するホルダに対するスクライビングホイールの位置が安定しにくい。
【0144】
ホルダ100を含むホルダユニット10を用いたスクライブ加工では、被加工物に対するスクライビングホイールC10の走行距離が所定走行距離に達するまでの間、ホルダ100の上下方向に関するホルダ100に対するピンD10の移動が生じる回数は所定回数以下である。所定回数以下の回数には0も含まれる。他のホルダと比較して、ホルダ100の上下方向に関するホルダ100に対するスクライビングホイールC10の位置の安定性が高い。
【0145】
なお、上記各実施形態の説明は本発明に関するホルダおよびホルダユニットが取り得る形態を制限することを意図していない。本発明に関するホルダおよびホルダユニットは各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。
【符号の説明】
【0146】
10 :ホルダユニット
C10:スクライビングホイール
D10:ピン
100:ホルダ
200:支持部
230:退避部
300:上部支持部
F20:上部支持面
400:下部支持部