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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】印刷基材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241113BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B41J2/01 501
B41M3/00 Z
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022546954
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032206
(87)【国際公開番号】W WO2022050324
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2020148006
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真悟
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-188806(JP,A)
【文献】特開2017-185655(JP,A)
【文献】特開平06-135015(JP,A)
【文献】特開平09-277569(JP,A)
【文献】特開2010-172575(JP,A)
【文献】特開2006-181251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に印刷部を備えた印刷基材であって、
印刷部が、インクジェット法により印刷されており、
印刷部が、異なる色がクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を含み、
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm以下であり、かつ印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が50~800である、異色印刷部1を含む、印刷基材。
【請求項2】
基材上に印刷部を備えた印刷基材であって、
印刷部が、インクジェット法により印刷されており、
印刷部が、異なる色が、にじみを生じることなくクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を少なくとも含み、
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm以下であり、かつ印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が50~800である、異色印刷部1を含む、印刷基材。
【請求項3】
基材上に印刷部を備えた印刷基材であって、
印刷部が、インクジェット法により印刷されており、
印刷部が、異なる色がクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を含み、
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm超であり、かつ印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が200以下である、異色印刷部2を含む、印刷基材。
【請求項4】
基材上に印刷部を備えた印刷基材であって、
印刷部が、インクジェット法により印刷されており、
印刷部が、異なる色が、にじみを生じることなくクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を少なくとも含み、
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm超であり、かつ印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が200以下である、異色印刷部2を含む、印刷基材。
【請求項5】
基材の印刷面の濡れ張力が30~50dyn/cmである、請求項1~4のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項6】
基材がプラスチックフィルムである、請求項1~5のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項7】
基材の印刷面がポリエステル系樹脂で構成されている、請求項1~6のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項8】
X/Yの値が50~500である、請求項1、2、5~7のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項9】
印刷部が、水性インクにより形成されている、請求項1~8のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項10】
印刷部が、カラーインク及びクリアインクで形成されている、請求項1~9のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項11】
印刷部が、水性のカラーインク及び水性のクリアインクで形成されている、請求項1~10のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項12】
印刷部における、樹脂及び着色剤の総量に対する樹脂の割合が20質量%以上である、請求項1~11のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項13】
クリアランスの幅が10~1500μmである請求項1~12のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項14】
X/Yの値が80以上である、請求項1、2、5~13のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項15】
色1の幅又は色2の幅が400μm以下であり、X/Yの値が100以上である、請求項1、2、5~14のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項16】
X/Yの値が150以下である、請求項3~13のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項17】
色1の幅又は色2の幅が600μm以上であり、X/Yの値が150以下である、請求項3~13、16のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項18】
異色印刷部が、請求項1、2、14又は15に記載の異色印刷部1を含む、請求項3~13、16、17のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項19】
異色印刷部が、異なる色のいずれか一方が白である異色印刷部を含む、請求項1~18のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項20】
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1が模様、色2が背景である、異色印刷部を含む、請求項1~19のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項21】
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1がバーコード又は2次元コード、色2が背景である、バーコード又は2次元コードとして認識可能な異色印刷部を含む、請求項1~20のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項22】
医療用ソフトバッグを形成するための、請求項1~21のいずれかに記載の印刷基材。
【請求項23】
基材に印刷部を印刷する印刷工程を少なくとも経て、請求項1~22のいずれかに記載の印刷基材を製造する方法であって、印刷工程において、異なる色間にクリアランスを設けて異色印刷部を印刷する、印刷基材の製造方法。
【請求項24】
基材上に、異なる色がクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を含む印刷部を備えた印刷基材において、異色印刷部における異なる色間のにじみを抑制又は防止する方法であって、
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm以下である異色印刷部1を含み、
基材にインクジェット法により印刷部を印刷する印刷工程において、印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、異なる色間にX/Yの値が50~800となるようにクリアランスを設けて異色印刷部1を印刷する、方法。
【請求項25】
基材上に、異なる色がクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を含む印刷部を備えた印刷基材において、異色印刷部における異なる色間のにじみを抑制又は防止する方法であって、
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm超である異色印刷部2を含み、
基材にインクジェット法により印刷部を印刷する印刷工程において、印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、異なる色間にX/Yの値が200以下となるようにクリアランスを設けて異色印刷部2を印刷する、方法。
【請求項26】
X/Yの値が50~500である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
印刷工程において、カラーインクおよびクリアインクを吐出して印刷する、請求項23~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
クリアランスの幅が、10~1500μmとなるように印刷する請求項23~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
請求項1~22のいずれかの印刷基材の成形品。
【請求項30】
医療用ソフトバッグである、請求項29記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な印刷基材等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種印刷方法(画像記録方法)が知られており、例えば、インクジェット法は、微小なインク滴を吐出して印刷(画像を記録又は形成)する印刷法(印刷方式)である。
そして、このようなインクジェット用のインクとして、印刷性能、印刷する基材の種類や塗膜性能等に応じて、種々のものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-132946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規な印刷基材及びその製造方法等を提供することにある。
【0005】
前記のように、従来より各種印刷方法が知られているが、異なる色のインク(カラーインク)を隣接させて(離間することなく)印刷すると、この隣接する色間(異なる色の境界部分)でインクが混じり、にじみ(混色)を生じる場合があった。
【0006】
特に、このような異なる色間でのにじみは、本発明者の検討によれば、インクジェット法のようにドット状にインクを印刷(画像記録)する印刷法において生じやすく、このような印刷法の中でも、非又は低吸収性(吸液性)の基材(例えば、プラスチックフィルム等)に印刷する場合、水性インクを使用する場合、カラーインクとクリアインクを重ねて印刷する場合等において、顕著に確認できた。
【0007】
異なる色のインクは、隣接はするものの、当然のことながら、互いに重ならない位置(ドット)に印刷しているのであり、このようなにじみの問題の解決は困難を極めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような中、本発明者は、鋭意検討した結果、異なる色のインクを隣接させて印刷するに際し、異なる色間にクリアランスが生じるように印刷することで、隣接する色間のにじみを効率よく解決できること等を見出し、さらなる検討を重ねて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
[1]
基材上に印刷部を備えた印刷基材であって、印刷部が、異なる色がクリアランスを隔てて印刷された異色印刷部を含む(少なくとも含む)、印刷基材。
[2]
基材上に印刷部を備えた印刷基材であって、
印刷部が、異なる色が、にじみを生じることなく隣接して印刷された異色印刷部を少なくとも含む、印刷基材。
[3]
基材の印刷面の濡れ張力が30~50dyn/cmである、[1]又は[2]記載の印刷基材。
[4]
基材がプラスチックフィルムである、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷基材。
[5]
基材の印刷面がポリエステル系樹脂で構成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の印刷基材。
[6]
印刷部が、インクジェット法により印刷されている、[1]~[5]のいずれかに記載の印刷基材。
[7]
印刷部が、水性インクにより形成されている、[1]~[6]のいずれかに記載の印刷基材。
[8]
印刷部が、カラーインク及びクリアインクで形成されている、[1]~[7]のいずれかに記載の印刷基材。
[9]
印刷部が、水性のカラーインク及び水性のクリアインクで形成されている、[1]~[8]のいずれかに記載の印刷基材。
[10]
印刷部における、樹脂及び着色剤の総量に対する樹脂の割合が20質量%以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の印刷基材。
[11]
クリアランスの幅が10~1500μmである[1]~[10]のいずれかに記載の印刷基材。
[12]
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅をA(μm)、クリアランスの幅をB(μm)とするとき、B/Aの値が8以下である異色印刷部を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の印刷基材。
[13]
異色印刷部が、印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が20~800である異色印刷部を含む、[1]~[12]のいずれかに記載の印刷基材。
[14]
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm以下であり、かつ印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が50以上である、異色印刷部1を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の印刷基材。
[15]
異色印刷部1において、色1の幅又は色2の幅が400μm以下であり、X/Yの値が100以上である、[14]記載の印刷基材。
[16]
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅が500μm超であり、かつ印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が200以下である、異色印刷部2を含む、[1]~[15]のいずれかに記載の印刷基材。
[17]
異色印刷部2において、色1の幅又は色2の幅が600μm以上であり、X/Yの値が150以下である、[16]記載の印刷基材。
[18]
異色印刷部が、[14]又は[15]に記載の異色印刷部1、及び[16]又は[17]に記載の異色印刷部2を含む、[1]~[17]のいずれかに記載の印刷基材。
[19]
異色印刷部が、異なる色のいずれか一方が白である異色印刷部を含む、[1]~[18]のいずれかに記載の印刷基材。
[20]
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1が模様、色2が背景である、異色印刷部を含む、[1]~[19]のいずれかに記載の印刷基材。
[21]
異色印刷部が、異なる色を、色1、2とするとき、色1がバーコード又は2次元コード、色2が背景である、バーコード又は2次元コードとして認識可能な異色印刷部を含む、[1]~[20]のいずれかに記載の印刷基材。
[22]
医療用ソフトバッグ(例えば、輸液バッグ)を形成するための、[1]~[21]のいずれかに記載の印刷基材。
[23]
基材に印刷部を印刷する印刷工程を少なくとも経て、[1]~[22]のいずれかに記載の印刷基材を製造する方法であって、印刷工程において、異なる色間にクリアランスを設けて異色印刷部を印刷する、印刷基材の製造方法。
[24]
基材上に、異なる色が隣接して印刷された異色印刷部を含む印刷部を備えた印刷基材において、異色印刷部における異なる色間のにじみを抑制又は防止する方法であって、基材に印刷部を印刷する印刷工程において、異なる色間にクリアランスを設けて異色印刷部を印刷する、方法。
[25]
インクジェット法により印刷する[23]又は[24]記載の方法。
[26]
印刷工程において、カラーインクおよびクリアインクを吐出して印刷する、[23]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]
クリアランスの幅が、10~1500μmとなるように印刷する[23]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28]
異なる色を、色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅をA(μm)、クリアランスの幅をB(μm)とするとき、B/Aの値が8以下となるように、クリアランスを設ける、[23]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29]
印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Yの値が20~800となるように、クリアランスを設ける、[23]~[28]のいずれかに記載の方法。
[30]
[1]~[22]のいずれかの印刷基材の成形品。
[31]
医療用ソフトバッグである、[30]記載の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規な印刷基材及び新規な印刷基材の製造方法等を提供できる。このような印刷基材や製造方法によれば、異なる色間のにじみを効率よく防止(又は抑制)できる。このような印刷基材や方法によれば、隣接して異なる色(異なる色のインク)を印刷しているにもかかわらず、にじみにより、視認性や意匠性を損なうことがなく、好適である。特に、印刷基材が医薬品の包材である場合、にじみによる視認性の低下を防止することで、医薬品の取り違え等の医療事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1で得られた印刷基材のうち、異色印刷部1を接写した写真である。
図2図2は、実施例1で得られた印刷基材のうち、異色印刷部1の顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例1で得られた印刷基材のうち、異色印刷部2を接写した写真である。
図4図4は、実施例1で得られた印刷基材のうち、異色印刷部2の顕微鏡写真である。
図5図5は、実施例1で得られた印刷基材のうち、異色印刷部3を接写した写真である。
図6図6は、実施例1で得られた印刷基材のうち、異色印刷部3の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<印刷基材>
印刷基材は、基材上に印刷部(塗膜、被膜)を備えている。換言すれば、印刷基材は、基材と、この基材上に形成され(設けられ)た印刷部とを有する。
【0013】
そして、この印刷部は、少なくとも異なる色が印刷された印刷部(異色印刷部)を有しており、本発明では、この異色印刷部に特徴を有する。
【0014】
すなわち、本発明の第1の態様では、異色印刷部において、異なる色がにじみを生じることなく隣接して(離間せずに)印刷されている。前記の通り、異なる色を隣接して印刷する場合には、隣接する異なる色間においてにじみを生じうるのであるが、第1の態様では、このようなにじみを生じることなく異なる色が隣接して印刷されている。
【0015】
また、本発明の第2の態様では、この異色印刷部において、異なる色がクリアランス(隙間)を隔てて印刷されている(異なる色間にクリアランスを有する)。
【0016】
なお、このような第2の態様では、異なる色間にクリアランスを有するのであるから、通常、第1の態様同様、異なる色間においてにじみ(混色)は生じていない。
【0017】
そして、このような本発明の第1及び2の態様の印刷基材は、後述するように、通常、異なる色間にクリアランスが生じるように印刷することで、効率よく得ることができる。
【0018】
このような印刷を経て、印刷時に設定したクリアランスが異色印刷部に反映されると、異なる色間にクリアランスを有する異色印刷部(第2の態様の異色印刷部)が形成される。
【0019】
一方、クリアランスが生じるように(クリアランスを設けるように設定して)印刷しても、基材の種類、インクの種類や印刷方法等によっては、異なる色インクが互いの色間に向かって若干広がる場合がある。
【0020】
このような場合、クリアランスの大きさを調整し、クリアランスの大きさ(幅)と広がりの大きさ(幅)を合わせることにより、異なる色インクが互いの色間に迫って広がりながらも、にじみは生じず、(見かけ上)異なる色間にクリアランスが存在しない異色印刷部が形成される(第1の態様の異色印刷部)。
【0021】
このため、第1の態様は、第2の態様の特別な態様(印刷時に設定されたクリアランスが異色印刷部において(見かけ上)反映されず、にじみも生じていない態様)ということもできる。
【0022】
以下、さらに詳細に説明する。
【0023】
[基材]
基材(記録媒体、被印刷媒体)としては、例えば、プラスチック、金属、木材、紙等が挙げられ、これらを組み合わせた基材であってもよい。
【0024】
プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン系樹脂)、ハロゲン系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0025】
このような基材(材質)の種類は、用途、取扱性、生産性、印刷性等に応じて選択できる。例えば、ポリエステル系樹脂は、印刷性や高速製袋性(高速シール性)等の観点で、好適に使用してもよい。
【0026】
基材の形状は、一次元的形状(例えば、棒状)、二次元的形状[例えば、フィルム(又はシート)状]、三次元的形状(例えば、各種成形品)等のいずれであってもよく、代表的にはフィルム(シート)状であってもよい。
【0027】
フィルム状の基材は、延伸フィルムであってもよい。
また、フィルム状の基材は、積層フィルムであってもよく、袋状(チューブ状、チューブフィルム、インフレーションフィルム)等であってもよい。
【0028】
基材は、コート処理された基材(例えば、コート紙)や表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理)された基材であってもよい。
【0029】
なお、このような処理は、基材のうち、少なくとも印刷部位(記録部位、印刷部を形成する部位、例えば、フィルム状基材の印刷面)においてなされていてもよい(以下、基材の特性・物性等について同じ)。
【0030】
基材は、その材質にもよるが、透明であってもよい。
【0031】
代表的な基材には、プラスチックフィルム(特に、透明プラスチックフィルム)が含まれる。
【0032】
また、基材は、着色されていてもよく、無色であってもよい。
【0033】
基材(基材の印刷面、印刷部を形成する部位)は、特に、低ないし非吸液性(特に低ないし非吸水性)であってもよい。本発明では、このような基材であっても、異なる色間ににじみのない(又はクリアランスを有する)異色印刷部を効率よく形成しうる。
【0034】
基材(基材の印刷面、異色印刷部を形成する部位)のぬれ張力は、例えば、25~55dyn/cm、好ましくは28~52dyn/cm、さらに好ましくは30~50dyn/cm(例えば、32~45dyn/cm、33~42dyn/cm)程度であってもよい。
【0035】
ぬれ張力は、例えば、JISK6768に従って(準じて)測定できる。ぬれ試薬としては、例えば、ぬれ張力試験用混合液(富士フィルム和光純薬製等)、ぬれ性チェック用ダインペン(enerdyneシリーズ、enercon社製等)等を使用できる。
具体的な方法としては、ぬれ張力試験用混合液で綿棒等の先を浸漬し、その綿棒にて被印刷物の表面を濡らす。液が2秒後程度でもある程度広がっている領域・液がはじいてしまう領域を番手違いの混合液で調べていく方法等が挙げられる。
【0036】
ぬれ張力は、印刷に使用するインクの濡れ性、ひいては印刷(記録)のしやすさに関連しうるが、濡れ性が大きくなるほど隣接する色間で混色しやすく(にじみやすく)なる。本発明では、十分な印刷のしやすさ(適度な濡れ性)とにじみの防止(抑制)とを効率よく両立しうる。
【0037】
[インク]
印刷部(異色印刷部)は、通常、インク(インク組成物)により形成される。
【0038】
なお、インクが揮発性成分(溶媒成分)を含む場合、印刷部(異色印刷部)は、インクから揮発性成分が揮発(蒸発)したもの、すなわち、インクの固形分(後述のように、着色剤、樹脂等)で構成されることになる。
【0039】
インクは、少なくともカラーインクで構成すればよく、必要に応じて他のインク(クリアインク等)と組み合わせてもよい。
【0040】
(カラーインク)
カラーインクに含まれる着色剤(色剤)としては、白色系の着色剤、非白色系の着色剤(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、グレー、レッド、オレンジ、グリーン等)のいずれも使用できる。
【0041】
特に、異色印刷部を構成する色は、少なくとも白色系の着色剤を含んでいてもよい。異色印刷部を構成する異なる色に白色を含む(さらには、特に基材が透明である)場合、異色印刷部に設けたクリアランスが目視にて確認しにくい(目立ちにくい)傾向があり、クリアランスを目立たせることなく、自然な形でにじみを防止しうる。
【0042】
着色剤としては、例えば、染料、顔料が用いられ、好ましくは顔料を好適に使用してもよい。顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれも使用できる。
【0043】
無機顔料としては、例えば、金属化合物(例えば、酸化チタン、塩基性炭酸鉛、硫化亜鉛、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等)、カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等)等が挙げられる。
【0044】
有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料(例えば、アゾレーキ顔料等)、フタロシアニン系顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。
【0045】
着色剤のカラーインデックス(C.I)は、特に限定されず、例えば、白色系の顔料のカラーインデックスを例示すると、C.I.Pigment White1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)等が挙げられる。
【0046】
なお、着色剤(顔料)は、表面処理されていても(自己分散型の顔料であっても)よく、分散剤(界面活性剤、樹脂等)に分散させた形態(分散型の顔料)であってもよい。
【0047】
カラーインクは、通常、樹脂(樹脂成分)を含んでいてもよい。樹脂は、塗膜(被膜)の耐擦過性や密着性等の観点で使用しうる。
【0048】
樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、カルボン酸ビニルエステル系樹脂(例えば、酢酸ビニル系樹脂)、オレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ジエン系樹脂(例えば、ブタジエン系樹脂)、ハロゲン系樹脂(例えば、塩化ビニル系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂(ポリウレタン系樹脂)、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0049】
また、塗膜において樹脂を形成[例えば、塗膜の乾燥とともに反応(重合、縮合等)してポリマー化や架橋]できれば、樹脂の前駆体となる成分やプレポリマー(例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリオール系化合物等)を樹脂(樹脂成分)として使用することもできる。
【0050】
樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0051】
樹脂は、官能基(反応性基)を有していてもよい。官能基としては、例えば、酸基(例えば、カルボキシ基等)、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等が挙げられる。
【0052】
樹脂は、1種又は2種以上の官能基を有していてもよい。
【0053】
このような官能基は、印刷したインク(塗膜)の架橋等に寄与しうる。
【0054】
樹脂の形態は、限定されないが、特に、粒子状(樹脂粒子)であってもよく、代表的には、このような樹脂エマルション粒子(エマルションを構成する樹脂粒子)であってもよい。このようなエマルション粒子は、分散剤(界面活性剤)を含んでいてもよい。
【0055】
カラーインクは、架橋性を有していてもよい。架橋性を有することで、より一層、強固な被膜(印刷被膜)を形成しうる。
【0056】
このような架橋性は、例えば、樹脂として少なくとも官能基を有する樹脂を使用し、この官能基と反応して架橋しうる成分(架橋剤)をカラーインクに含有させたり、後述のクリアインクを構成する樹脂と反応する架橋剤をカラーインクに含有させる等により、カラーインクに付与できる。
【0057】
架橋剤(架橋性成分)としては、カラーインクを構成する樹脂及び/又はクリアインクを構成する樹脂が有する官能基の種類等に応じて適宜選択できる。
【0058】
例えば、官能基がカルボキシル基等である場合、カルボキシル基に対する反応性基(例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボイジミド基、オキサゾリン基等)を有する架橋剤を使用しうる。
【0059】
なお、官能基や反応性基(さらには架橋剤)は、被膜において架橋できればよく、インク(印刷前のインク)においては保護(ブロック)されていてもよい。このような場合、被膜において脱保護、架橋がなされる。
【0060】
なお、印刷部(異色印刷部)においては、架橋剤(架橋性成分)は、樹脂を架橋している、すなわち、樹脂の構成成分となっている。
【0061】
カラーインクは、例えば、分散剤、界面活性剤、消泡剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤等を含んでいてもよい。これらは単独で又は2種以上組み合わせてカラーインクに含まれていてもよい。
【0062】
カラーインクは、油性、水性等のいずれであってもよいが、環境面等を考慮し、水性インク(水系インク)を好適に使用してもよい。水性インクは、乾燥時間が長くなりやすいためか、異なる色間でのにじみを生じやすい(特に、プラスチックフィルムのような基材への印刷において顕著ににじみを生じやすい)が、本発明では、水性インクを使用しても、異なる色間でのにじみを効率よく抑制しうる。
【0063】
カラーインクに含まれる溶媒は、油性・水性の分類等に応じて適宜選択できる。
【0064】
例えば、水性インクに含まれる溶媒は、少なくとも水で構成してもよく、必要に応じて有機溶媒(水溶性有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0065】
このような有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、窒素系溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドの鎖状アミド系溶媒;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン等の環状アミド系溶媒;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,1,3,3-テトラメチル尿素等の尿素誘導体等)、硫黄系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等)等が挙げられる。
【0066】
アルコール系溶媒としては、例えば、モノオール類(例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、t-ペンタノール等のアルカノール類)、ポリオール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のポリアルカンジオール類;グリセリン等の3以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオール等の脂肪族ポリオール類)が挙げられる。
【0067】
エーテル系溶媒としては、例えば、ポリオール類(例えば、上記例示のポリオール類等)のモノ乃至ポリエーテル[例えば、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のアルカンジオールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のポリアルカンジオールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のポリオールポリアルキルエーテル(例えば、ポリアルカンジオールジアルキルエーテル)等]等が挙げられる。
【0068】
有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0069】
カラーインクにおいて、各成分の割合は、印刷方法(例えば、インクジェット法における吐出性)、インクの粘度等に応じて適宜選択できる。
【0070】
例えば、カラーインクにおいて、着色剤の割合は、例えば、0.1質量%以上(例えば、0.5~30質量%)、好ましくは1質量%以上(例えば、1.5~20質量%)、さらに好ましくは2質量%以上(例えば、3~15質量%)であってもよい。
【0071】
また、カラーインクにおいて、樹脂(樹脂成分)の割合は、例えば、0.1質量%以上(例えば、0.5~30質量%)、好ましくは1質量%以上(例えば、1.5~20質量%)、さらに好ましくは2質量%以上(例えば、3~15質量%)であってもよい。
【0072】
カラーインクが、架橋剤を含む場合、架橋剤の割合は、その種類や樹脂量等にもよるが、例えば、0.01質量%以上(例えば、0.05~10質量%)、好ましくは1質量%以上(例えば、0.1~5質量%)、さらに好ましくは0.3質量%以上(例えば、0.5~3質量%)であってもよい。
【0073】
カラーインクにおいて、溶媒の割合は、インクの粘度や組成等に応じて選択できる。
例えば、水性インクにおいて、水の割合は、例えば、20質量%以上(例えば、30~90質量%)、好ましくは40質量%以上(例えば、45~80質量%)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、50~75質量%)であってもよい。
【0074】
水性インクが有機溶媒(水溶性有機溶媒)を含む場合、水溶性有機溶媒の割合は、例えば、1質量%以上(例えば、3~60質量%)、好ましくは5質量%以上(例えば、8~50質量%)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、15~40質量%)であってもよい。
【0075】
カラーインクの粘度は、32℃において、例えば、1~80mPa・s、好ましくは2~50mPa・s、さらに好ましくは3~30mPa・s程度であってもよい。
【0076】
なお、粘度は、例えば、粘度計(E型粘度計、B型粘度計、ウベローデ粘度計等)やキャピラリーレオメーターにより測定できる。
【0077】
(クリアインク)
カラーインクは、クリアインクと組み合わせてもよい。このような組み合わせにより、カラーインク及びクリアインク(カラーインクとクリアインクとのインクセット)で印刷部(異色印刷部)が形成される。
【0078】
クリアインクの使用目的は、特に限定されないが、その目的の1つはインク全体(又は印刷部)に占める樹脂の割合(または着色剤に対する樹脂の割合)を増やすことであってもよい。特に、プラスチックフィルムのような基材に印刷する場合には、樹脂量を増やすことで、耐擦過性、密着性等の点で優れた印刷部を効率よく形成しやすい。
【0079】
ここで、単に、樹脂割合を増やすだけであれば、カラーインクにおける樹脂量を増やせばよいのであるが、そうすると、インクの粘度が高くなり、インクジェット法における吐出性を損なう等の問題が生じる可能性がある。
【0080】
そのため、効率よい印刷を行う等の観点から、クリアインクを好適に使用してもよい。
【0081】
クリアインクは、通常、樹脂(樹脂成分)を含む。このような樹脂としては、前記例示の樹脂(例えば、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等)等が挙げられ、前記と同様の官能基を有していてもよい。
【0082】
また、クリアインクは、架橋性を有していてもよく、その態様は前記と同様である。例えば、クリアインクは、架橋剤(前記例示の成分等)を含んでいてもよく、架橋剤は、クリアインクに含まれる樹脂(例えば、官能基を有する樹脂)、及び/又はカラーインクを構成する樹脂(官能基を有する樹脂)と反応してもよい。
【0083】
なお、クリアインクは、通常、着色剤(色剤)を含んでいなくてもよい。
【0084】
クリアインクもまた、分散剤、界面活性剤、消泡剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤等を含んでいてもよい。
【0085】
クリアインクは、油性、水性等のいずれであってもよいが、水性インク(水系インク)を好適に使用してもよい。特に、カラーインクとクリアインクとで油性・水性を揃えるのがよく、代表的には、カラーインク及びクリアインクの双方を水性インクとしてもよい。
【0086】
前記のように、クリアインクを使用することで(さらには水性インクを使用することで)、カラーインクのみを使用する場合に比べて相対的に印刷時における溶媒量(特に水分量)が大きくなる(ひいては乾燥時間が長くなる)ためか、異なる色間でのにじみの生じやすさがより顕著になるが、本発明ではクリアインクを使用しても(さらには水性インクを使用しても)、にじみを効率よく抑制しうる。
【0087】
クリアインクに含まれる溶媒は、油性・水性の分類等に応じて適宜選択できる。
例えば、水性インクに含まれる溶媒は、少なくとも水で構成してもよく、必要に応じて有機溶媒(水溶性有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0088】
水溶性有機溶媒としては、前記例示のもの(アルコール類、エーテル類)が挙げられる。
【0089】
クリアインクにおいて、樹脂(樹脂成分)の割合は、例えば、0.1質量%以上(例えば、0.5~30質量%)、好ましくは1質量%以上(例えば、1.5~20質量%)、さらに好ましくは2質量%以上(例えば、3~15質量%)であってもよい。
【0090】
クリアインクが、架橋剤を含む場合、架橋剤の割合は、その種類や樹脂量等にもよるが、例えば、0.01質量%以上(例えば、0.05~10質量%)、好ましくは1質量%以上(例えば、0.1~5質量%)、さらに好ましくは0.3質量%以上(例えば、0.5~3質量%)であってもよい。
【0091】
クリアインクにおいて、溶媒の割合は、インクの粘度や組成等に応じて選択できる。
例えば、水性インクにおいて、水の割合は、例えば、20質量%以上(例えば、30~90質量%)、好ましくは40質量%以上(例えば、45~80質量%)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、50~75質量%)であってもよい。
【0092】
水性インクが有機溶媒(水溶性有機溶媒)を含む場合、水溶性有機溶媒の割合は、例えば、1質量%以上(例えば、3~60質量%)、好ましくは5質量%以上(例えば、8~50質量%)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、15~40質量%)であってもよい。
【0093】
クリアインクの粘度は、32℃において、例えば、1~80mPa・s、好ましくは2~50mPa・s、さらに好ましくは3~30mPa・s程度であってもよい。
【0094】
なお、粘度は、例えば、粘度計(E型粘度計、B型粘度計、ウベローデ粘度計等)やキャピラリーレオメーターにより測定できる。
【0095】
[印刷部及び異色印刷部]
印刷基材は、前記の通り、基材に印刷部を備えており、この印刷部は少なくとも異色印刷部を含む。
【0096】
印刷部(異色印刷部)において、樹脂(樹脂成分)及び着色剤の総量に対する樹脂(樹脂成分)の割合は、基材の種類等や塗膜性能等に応じて選択できるが、例えば、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に50質量%以上等であってもよい。
樹脂及び着色剤の総量に対する樹脂の割合の上限値は、例えば、95質量%、90質量%、85質量%、80質量%、75質量%、70質量%等であってもよい。
具体的な樹脂(樹脂成分)及び着色剤の総量に対する樹脂(樹脂成分)の割合としては、例えば、10~95質量%、30~90質量%、50~80質量%等が挙げられる。
【0097】
なお、架橋剤は樹脂等と反応する成分であるため、架橋剤を使用して印刷部を形成する場合には、架橋剤もまた印刷部における樹脂を構成する。
【0098】
印刷部における樹脂量を十分なものとすることで、前記のように、プラスチックフィルムのような基材に対しても、強固な塗膜(印刷部)を効率よく形成しうる。
なお、樹脂量を増やすには、前記の通り、クリアインクの使用が好都合であるが、本発明では、このようなクリアインクを使用しても、前記のように、異なる色間でのにじみを効率よく抑えることができる。
【0099】
印刷部は、印刷方法によるが、特に、ドット状に印刷されてもよい。このような印刷部は、代表的には、インクジェット法により形成できる。
【0100】
なお、インクジェット法等によりドット状に印刷したとき、ドットは、印刷部(異色印刷部)に反映されていてもよく[印刷部(異色印刷部)がドット状に形成(印刷部がドットで構成)されていてもよく]、その一部又は全部においてドットがつぶれていてもよい。
【0101】
インクの種類(例えば、クリアインクの使用の有無、水性インクの使用の有無等)や解像度等にもよるが、ドット状に印刷しても、隣接するドット(又はその上に吐出されたインク)が混じり、ドットが大きくつぶれる(例えば、見かけ上ドットがなくなる)場合がある。本発明では、このようなにじみやすいと言える場合においても、異なる色間のにじみを効率よく抑制しうる。
【0102】
ドットの密度(解像度)は、所望の印刷部に合わせて適宜選択できるが、例えば、50dpi以上等の範囲から選択してもよく、100dpi以上、好ましくは200dpi以上、さらに好ましくは300dpi以上であってもよい。
解像度の上限値は、例えば、1200dpi、1000dpi、800dpi、600dpi等であってもよい。
具体的な解像度としては、例えば、50~1200dpi、200~1000dpi、300~800dpi等が挙げられる。
【0103】
前記のように、解像度が高くなるにつれてにじみやすくなるが、本発明は比較的高い解像度であっても、異なる色間でのにじみを効率よく抑制しうる。
【0104】
なお、解像度は、印刷部の全領域において同じであってもよく異なってもよい。例えば、印刷方向(縦方向)と、印刷方向に直行する方向(横方向)とで解像度は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
また、クリアインクを使用する場合、カラーインクと同じ位置(ドット)に印刷(吐出)する限り、カラーインクのドットとクリアインクのドットとは同じであってもよく、異なっていても(例えば、少なくともカラーインクのドットにクリアインクのドットが重なるようにしても)よい。
【0106】
異色印刷部では、異なる色が隣接して(又はクリアランスを隔てて)印刷されている。
【0107】
異なる色において各色の幅(大きさ)は、所望の印刷部に応じて小さいものから大きいものまで種々選択でき、例えば、互いに異なる色方向の幅(長さ)として、例えば、500μm超(比較的大きい幅の色、例えば、550μm以上、600μm以上、800μm以上、1000μm以上、2000μm以上、10000μm以上等)であってもよく、500μm以下(比較的小さい幅の色、例えば、480μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下等)であってもよい。
なお、色の幅の上限値は、特に限定されず、印刷基材の使用目的等に応じて適宜選択できるが、例えば、50000μm、30000μm、10000μm、8000μm、5000μm、4000μm、3000μm等であってもよい。
また、色の幅の下限値も、同様に印刷基材の使用目的等に応じて適宜選択できるが、例えば、10μm、20μm、30μm、50μm、80μm、100μm等であってもよい。
具体的な色の幅の範囲は、上記下限値・上限値を適宜組み合わせたもの、例えば、100~10000μm等が挙げられる。
【0108】
異なる色の幅は同一でも異なっていてもよい。隣接する異なる色を、それぞれ、色1、2として、具体的な例を説明すると、色1、2の幅は同一であってもよく、異なっていてもよい(例えば、色1及び2の幅がいずれも500μm超又は500μm以下であるが、異なる場合、色1の幅が500μm超、色2の幅が500μm以下の場合等)。
【0109】
なお、後述するように、異なる色のうち、一方(例えば、色1)が模様、他方が(例えば、色2)その背景等である場合、色の幅を明確に規定できなかったり、他方の幅が一方の色の幅に比べてかなり大きくなる場合がある。このような場合には、いずれか一方の明確な色(例えば、色1)の幅、クリアランスの目立ちやすさに影響しやすい等の観点から、小さい方の色(例えば、色1)の幅や、模様を構成する色の幅を利用してもよい(利用して各種調整を行ってもよい)。また、色の幅が変動するとき(例えば、模様が一定の幅で無い場合、色が背景である場合等)、その最も狭い幅を色の幅としてもよい。
【0110】
第2の態様の異色印刷部において、クリアランス(異なる色間の隙間)の幅(異なる色方向の幅)は、例えば、2000μm以下程度の範囲から選択してもよく、1500μm以下、好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下(例えば、700μm以下)程度であってもよく、600μm以下(例えば、500μm以下、400μm以下、350μm以下)であってもよい。
【0111】
クリアランスの幅の下限値は、例えば、3μm、5μm、7μm、10μm、15μm、20μm、30μm、50μm等であってもよい。
具体的なクリアランスの幅としては、例えば、3~2000μm、10~1000μm、20~500μm、30~400μm、50~300μm、100~200μm等が挙げられる。
【0112】
クリアランスの幅はクリアランスの有無が目立つため、大きすぎないのが好ましい。
一方、クリアランスが目立たないようにするには、クリアランスの幅は0に近いほど良いと考えられる。しかし、複数の異色印刷部の全部において、総じて第1の態様のように実質的にクリアランスが確認できないように印刷するためには煩雑な印刷設定が必要となったり、一部の異色印刷部において混色(にじみ)が生じる可能性がある。また、クリアランスの幅は、多少の有限値であっても、クリアランスの存在が目立たない(例えば、少なくとも目視ではクリアランスの有無がほぼ確認できない)場合がある。そのため、クリアランスの幅は、大きすぎない範囲で有限値であるのが、現実的である。
【0113】
なお、クリアランスの幅は、印刷時に設定するクリアランス(後述の設定クリアランスに相当)と同じか又は異なる幅であってもよい。例えば、印刷の設定において所定の幅Xでクリアランスが生じるように印刷しても、異なる色間において色インクが若干広がることで、異色印刷部におけるクリアランスの幅は、Xよりも小さくなる場合がある。
【0114】
このように小さくなる場合、異色印刷部のクリアランス(印刷基材において実際に確認できるクリアランス)の幅は、実際に設定した幅や色の幅等によるが、例えば、印刷において設定したクリアランスの幅を1とするとき、0.99以下、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下、0.55以下、0.5以下等であってもよく、下限値は、例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75等であってもよい。
具体的な異色印刷部のクリアランスの幅は、印刷において設定したクリアランスの幅を1とするとき、例えば、0.1~0.99、0.2~0.98、0.3~0.97、0.4~0.96等が挙げられる。
【0115】
異色印刷部におけるクリアランスの大きさは、異なる色の幅や印刷の解像度に応じて選択してもよい。
【0116】
例えば、異なる色を色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)をA(μm)、クリアランスの幅をB(μm)とするとき、B/Aの値は、10以下(例えば、9.5以下、9以下)程度の範囲から選択でき、8以下(例えば、7.5以下)、好ましくは7以下(例えば、6以下)、さらに好ましくは5以下(例えば、4以下)、特に3以下(例えば、2.5以下)程度であってもよく、2以下(例えば、1以下、0.8以下、0.5以下、0.3以下、0.1以下)等であってもよい。
B/Aの値の下限値としては、例えば、0.005、0.01、0.015、0.02、0.03、0.05、0.08、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5等が挙げられる。
具体的なB/Aとしては、例えば、0.005~7、0.01~5、0.15~3、0.2~2等が挙げられる。
【0117】
クリアランスの目立ちやすさは、色の幅(異なる色の幅が異なる場合には、より小さい(狭い)方の幅)にも影響するようであり、上記のような範囲であると、クリアランスが目立つのを抑えつつ、効率よくにじみを抑制しうる。
【0118】
また、クリアランスの幅は、印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Y[dpi/数(ピクセル数)]の値は、例えば、20~800程度(例えば、22~700、25~650、28~600、30~550、40~500、45~450)程度であってもよい。
【0119】
例えば、解像度が600dpi、クリアランスの幅に対応するピクセル数が2ピクセルであるとき、クリアランスの幅は2ピクセル分[約85μm(2.54cm÷600×2)]、X/Yの値は300で、上記X/Yの値の範囲内(20~800)となる。
【0120】
クリアランスの目立ちやすさは、解像度にも影響するようであり、上記のように解像度に関連付けてクリアランスを設定することで、クリアランスが目立つのを抑えつつ、効率よくにじみを抑制しうる。
【0121】
また、このようなX/Yの値は、異なる色の幅に応じて選択してもよい。
【0122】
例えば、異色印刷部において、色1の幅又は色2の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)が比較的小さい幅(例えば、500μm以下、300μm以下、200μm以下)であるとき、X/Yの値は、小さすぎないように(例えば、50以上、80以上、100以上、120以上、120超、125以上等となるように)してもよい。
【0123】
一方、異色印刷部において、色1の幅又は色2の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)が比較的大きい幅(例えば、500μm超、600μm以上)であるとき、X/Yの値は、大きすぎないように(例えば、200以下、150以下、120以下となるように)してもよい。
【0124】
このように色の幅に応じてX/Yの値を選択することにより、より一層クリアランスの目立ちを効率よく抑えやすい。
【0125】
印刷部(異色印刷部)は、無地であってもよく、模様を有して(形成して)もよい。
模様としては、特に限定されず、基材(印刷基材)の用途、その表示目的等に応じて選択でき、例えば、文字(例えば、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット等)、数字(例えば、アラビア数字、ローマ数字等)、図形等が挙げられる。
図形は、バーコード、2次元コード等のパターン状(図形パターン)であってもよい。
【0126】
ところで、バーコードは、にじみが生じても、またクリアランスが大きくなりすぎても認識しがたいか又は認識できない(読み取りがたい又は読み取れない)ものとなるため、認識可能なバーコードの印刷は難しい。
【0127】
しかし、本発明では、前記のように、クリアランスの幅を特定の指標を用いて調整すること等により、効率よく認識(読み取り)可能なバーコードを印刷(記録)できる。
【0128】
なお、バーコードが認識(読み取り)可能であることは、バーコードリーダー(例えば、後述の方法)により確認できる。
【0129】
具体的な異色印刷部の態様としては、例えば、異なる色1、2のうち、(i)色1が模様、色2がその背景となっている場合、(ii)色1と2がその組み合わせにより模様を形成している場合(例えば、色1と2が交互に隣接してストライプ状になっている場合、色1が波型模様、色2が色1の波型模様に沿って波型模様となっている場合)等が挙げられる。代表的な異色印刷部には、(i)の異色印刷部が挙げられる。
【0130】
印刷部は、前記のように、異色印刷部を1つ又は2以上有していてもよく、特に2以上(複数)有していてもよい。
【0131】
異色印刷部を複数有する場合、複数の異色印刷部は同一の異色印刷部であってもよく、異なる異色印刷部(例えば、色の種類、色の組み合わせ、色の幅、クリアランスの幅、模様等から選択された少なくとも1種において異なる異色印刷部)であってもよい。
【0132】
例えば、複数の異色印刷部は、幅の大きいもの(例えば、500μm超)と、幅の小さいもの(例えば、500μm以下)を組み合わせて有していてもよい。便宜上、印刷部が、2つの異なる異色印刷部を有し、これらをそれぞれ、異色印刷部1、2として、具体的な例を説明すると、異色印刷部1を構成する異なる色の少なくとも一方の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)が500μm超であり、異色印刷部2を構成する異なる色の少なくとも一方の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)が500μm以下となるようなケースが挙げられる。
【0133】
第2の態様の異色印刷部の見やすさ(クリアランスの目立ちにくさ)は、前述のように、色の幅に応じて調整可能であるため、このように幅の大きい色を有する異色印刷部と幅の小さい色を有する異色印刷部を組み合わせて有していても、印刷基材全体において(総じて)、効率よく見やすい複数の異色印刷部を形成可能である。
【0134】
複数の異色印刷部は、通常、少なくとも異なる異色印刷部を含む場合が多い。このような異なる異色印刷部において、効率よく総じて、色のにじみを抑えつつ、クリアランスを目立たなくするためは、各異色印刷部のクリアランスを特定の指標(色の幅や解像度等)にて選択(異色印刷部に応じて選択)するのが好ましい。
【0135】
なお、印刷部は、少なくとも異色印刷部(特に、複数の異なる異色印刷部)を有していればよく、非異色印刷部(例えば、無地(一色だけの無地)の印刷部、一色の模様を有する印刷部)を有していてもよい。
【0136】
[製造方法]
印刷基材は、基材に印刷部を形成(記録)することで得られる。
【0137】
ここで、本発明では、印刷部のうち、異色印刷部(異なる色が隣接して印刷された印刷部)の印刷に際して、異なる色間にクリアランスが生じるように(又は異なる色間にクリアランスを設けて)印刷する。
【0138】
このように印刷することで、前記のような印刷基材を効率よく得ることができる。すなわち、異色印刷部においてにじみを抑制ないし防止できる。そのため、このような方法は、異色印刷部におけるにじみの抑制又は防止方法ということもできる。
なお、前記のように、クリアランスが生じるように(クリアランスを設けるように設定して)印刷しても、異なる色インクが互いの色間に向かって若干広がる場合があり、このような場合の中でも、クリアランスの大きさ(幅)と広がりの大きさ(幅)が同じになると、異なる色インクが互いの色間に迫って広がりながらも、にじみは生じず、(見かけ上)異なる色間にクリアランスが存在しない異色印刷部が形成される(第1の態様の異色印刷部)。
【0139】
印刷方法は限定されないが、特に、インクジェット法(インクジェット方式)であってもよい。
【0140】
インクジェット法において、インクジェット方式は、例えば、コンティニュアス型、オンデマンド型(例えば、ピエゾ方式、サーマル方式、バルブ方式等)等が挙げられる。代表的には、オンデマンド型(例えば、ピエゾ方式)である。
【0141】
なお、印刷装置は、印刷方法に応じて選択でき、例えば、インクジェット法では、インクジェットプリンターを使用してもよい。
【0142】
クリアインクを併用する場合、カラーインクを吐出するためのインク室と、クリアインクを吐出するためのインク室を備えたプリンターヘッドを用いてもよい。
【0143】
なお、印刷(インクの吐出等)は、基材を搬送しつつ行ってもよい。
このような場合、搬送速度は、基材の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、1~20m/分(例えば、2~15m/分、3~12m/分)等であってもよい。
【0144】
印刷(インクジェット)において、インク、解像度等の態様は、前記の通りである。
【0145】
インクの吐出量は、1滴(ドット)あたり、例えば、1pL以上(例えば、3pL以上)、好ましくは5pL以上(例えば、7pL以上)、さらに好ましくは8pL以上(例えば、9pL以上)程度であってもよい。
インクの吐出量の上限値は、1滴(ドット)あたり、例えば、50pL、30pL、20pL、15pL等であってもよい。
【0146】
なお、このような吐出量は、カラーインク及びクリアインクのいずれにおいても適用可能である。
【0147】
特に、クリアインクを併用する場合、カラーインク及びクリアインクの吐出量[1滴(1ドット)あたりの吐出量]の総量は、カラーインクの吐出量を1とするとき、1.1以上、好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上(例えば、1.8以上等)であってもよく、10以下、8以下、5以下、3以下等であってもよい。
【0148】
クリアインクを併用すると、このようにカラーインクを単独で使用する場合に比べて、吐出量(ひいては印刷部における溶媒量)が大きくなるが、このように溶媒量が大きくなっても、クリアランスを取って印刷することでにじみを効率よく抑えることが可能となる。
【0149】
インクの吐出は、キャリッジ(ヘッドを有するキャリッジ)の走査(移動)とともに行ってもよい。このような場合、走査方向は、例えば、基材の搬送方向に垂直な方向であってもよい。走査速度は、例えば、30m/分以上(例えば、40~500m/分)、好ましくは50m/分以上(例えば、80~300m/分)、さらに好ましくは100m/分以上(例えば、120~200m/分)程度であってもよい。
【0150】
前記のように、異色印刷部の印刷に際しては、異なる色間にクリアランスが生じるように印刷(印刷装置を設定して印刷)する。クリアランスの態様は、前記の通りであるが、このような印刷の際に設定するクリアランス(設定クリアランス等ということがある)もまた、同様であってもよい。
【0151】
例えば、クリアランス(設定クリアランス、以下、印刷時に設定するクリアランスについて同じ)の幅は、例えば、2000μm以下程度の範囲から選択してもよく、1500μm以下、好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下(例えば、700μm以下)程度であってもよく、600μm以下(例えば、500μm以下、400μm以下、350μm以下)となるように印刷してもよい。
設定クリアランスの幅の下限値は、例えば、3μm、5μm、7μm、10μm、15μm、20μm、30μm、50μm等であってもよい。
【0152】
具体的な設定クリアランスの幅としては、例えば、3~2000μm、10~1000μm、20~500μm、30~400μm、50~300μm、100~200μm等が挙げられる。
【0153】
なお、前記のように、インクの広がり等により、形成される異色印刷部におけるクリアランス[(設定クリアランスに対して)実クリアランス等と言うことがある)]は、設定クリアランスよりも小さくなる場合がある。
そのため、設定クリアランスの幅は、実クリアランスの幅と同じであってもよく、実クリアランス(所望のクリアランス)の幅より大きくしてもよい。このように大きくする場合、その程度は、想定されるインクの広がりや所望のクリアランスの幅等に応じて選択でき、特に限定されない。
【0154】
このような場合、設定クリアランスの幅は、実クリアランスの幅よりも、例えば、1μm以上[例えば、1.5μm以上(例えば、2~300μm)、2.5μm以上(例えば、3~250μm)、3.5μm以上(例えば、4~200μm)、4.5μm以上(例えば、5~150μm)]程度大きくしてもよい。
その他、設定クリアランスの幅を、実クリアランスの幅の1倍超[例えば、1.001倍以上(例えば、1.005倍以上)、1.01倍以上(例えば、1.02倍以上)、1.05倍以上(例えば、1.07倍以上)、1.08倍以上、1.1倍以上等]としてもよく、実クリアランスの幅の5倍以下(例えば、4倍以下、3.5倍以下、3倍以下、2.5倍以下、2倍以下、1.8倍以下、1.5倍以下、1.3倍以下、1.2倍以下、1.1倍以下、1.05倍以下等)としてもよい。
【0155】
クリアランスの大きさは、異なる色の幅や印刷の解像度に応じて選択しうることも前記の通りである。
【0156】
例えば、異なる色を色1、2とするとき、色1の幅又は色2の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)をA(μm)、クリアランスの幅をB(μm)とするとき、B/Aの値は、10以下(例えば、9.5以下、9以下)程度の範囲から選択でき、8以下(例えば、7.5以下)、好ましくは7以下(例えば、6以下)、さらに好ましくは5以下(例えば、4以下)、特に3以下(例えば、2.5以下)程度であってもよく、2以下(例えば、1以下、0.8以下、0.5以下、0.3以下、0.1以下)等となるようにしてもよい。
B/Aの値の下限値としては、例えば、0.005、0.01、0.015、0.02、0.03、0.05、0.08、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5等が挙げられる。
具体的なB/Aとしては、例えば、0.005~7、0.01~5、0.15~3、0.2~2等が挙げられる。
【0157】
また、クリアランスの幅は、印刷の解像度をX(dpi)、クリアランスの幅に対応するピクセル数をYとするとき、X/Y[dpi/数(ピクセル数)]の値は、例えば、20~800程度(例えば、22~700、25~650、28~600、30~550、40~500、45~450)程度となるように調整してもよい。
【0158】
さらに、このようなX/Yの値は、異なる色の幅に応じて選択してもよい。
【0159】
例えば、色1の幅又は色2の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)が比較的小さい幅(例えば、500μm以下、300μm以下、200μm以下)であるとき、X/Yの値は、小さすぎないように(例えば、50以上、80以上、100以上、120以上、120超、125以上等となるように)してもよい。
【0160】
一方、色1の幅又は色2の幅(例えば、これらのうち、いずれか小さい方の幅、模様を形成している色の幅)が比較的大きい幅(例えば、500μm超、600μm以上)であるとき、X/Yの値は、大きすぎないように(例えば、200以下、150以下、120以下となるように)してもよい。
【0161】
このように、色の幅や解像度等の条件に応じてクリアランスの設け方を選択(調整)することで、異色印刷部における、色間のにじみを抑制しつつ、クリアランスが目立ちにくい自然な異色印刷部を効率よく形成できる。
【0162】
なお、前述の通り、上記のような印刷条件(クリアランスの態様等)は、印刷部(異色印刷部)において全く同じ態様にて反映されてもよく、異なる態様にて反映されていてもよい。
【0163】
例えば、インクジェット法により印刷しても、印刷部においてドットがつぶれていてもよいし、異色印刷部におけるクリアランスの幅は、印刷時に設定したクリアランスの幅よりも小さくなっていてもよい。
前記のように、異なる色インクの少なくともいずれか一方のインク(特に両方のインク)が互いの色間に向かって広がると、印刷時に設定した色の幅[例えば、ピクセル数に対応する幅(長さ)]は、印刷部において大きくなるが、このことは、実クリアランスが、設定クリアランスよりも小さくなることにつながる。
このような場合、印刷時に設定した色の幅(以下、設定色幅等ということがある)をC1、異色印刷部における色の幅[以下、(設定色幅に対して)実色幅等と言うことがある)]をC2とするとき、これらの差[C2(実色幅C2)-C1(設定色幅C1)]は、例えば、0.5μm以上(例えば、0.8μm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上、3.5μm以上、4μm以上、4.5μm以上、5μm以上)等であってもよく、300μm以下(例えば、280μm以下、250μm以下、200μm以下、180μm以下、150μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、70μm以下、50μm以下等)であってもよい。
【0164】
印刷後、必要に応じて、加熱処理(乾燥処理)を行ってもよい。加熱処理により、印刷部から溶媒を除去できる。また、インクが架橋剤を含む場合においては、加熱(乾燥)とともに、架橋を進行させてもよい。
【0165】
[印刷基材の用途等]
印刷基材は、基材の種類や態様に応じてそのまま各種用途に利用してもよく、必要に応じてさらに成形(加工)して所望の成形品を得ることもできる。
【0166】

例えば、基材がプラスチックフィルム(インフレーションフィルム等)である印刷基材は、熱融着工程、裁断工程、ポート(内容物の充填口)取付工程等を経て、ソフトバッグ(医療用ソフトバッグ)に成形できる。
【0167】
そして、ソフトバッグは、例えば、さらに内容物(輸液等)の充填工程、高圧滅菌(高圧シャワー滅菌)工程等を経て、内容物を備えたソフトバッグ(輸液バッグ)とすることができる。
【0168】
このように、印刷後の成形加工では、印刷基材に種々の負荷がかかるため、印刷部(異色印刷部)が十分に固定(記録)されていないと、脱落する場合がある。
例えば、前記輸液バッグに加工する例では、高圧滅菌処理等を経ることで、印刷部(異色印刷部)が脱落しやすくなる。
その他、印刷部の固定が十分でないと、薬品(例えば、エタノール等のアルコール)の接触により、脱落が生じやすくなる。
【0169】
このような脱落を効率よく防止するためには、前記のように、クリアインクを併用して印刷部(異色印刷部)の樹脂量を十分なものとすること等が好都合であるが、一方でクリアインクを使用すると異色印刷部における色間でのにじみ(混色)、ひいては印刷部の視認性や外観における損失が顕著になる傾向がある。
【0170】
しかし、本発明によれば、前記のように、クリアインクを使用しても、異色印刷部におけるにじみを効率よく抑制でき、医療用ソフトバッグ等に要求される強固な(例えば、耐擦過性、優れた密着性、耐薬品性等を有する)印刷(記録)と、にじみの抑制(さらにはクリアランスの目立ちにくさ)とを、効率よく両立しうる。
【実施例
【0171】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0172】
なお、使用した材料は以下の通りである。
【0173】
インク(カラーインクおよびクリアインク)
特開2020-19180号公報の実施例に記載されたインク1~4、8を作成して、カラーインクとして使用した。また、特開2020-19180号公報の実施例に記載されたインク9を作成して、クリアインクとして使用した。
各インクの組成等は以下の通りである。なお、下記表において、「部」とは質量部である。
【0174】
【表1】
【0175】
<消泡剤>
・DF110D:商品名「サーフィノール DF110D」、アセチレンジオール系界面活性剤、日信科学工業株式会社製
<界面活性剤>
・BYK348:商品名、シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製
<顔料>
・ブラック顔料:カーボンブラック
・シアン顔料:C.I.ピグメントブルー15:3
・マゼンタ顔料:C.I.ピグメントレッド122
・イエロー顔料:C.I.ピグメントイエロー150
・ホワイト顔料:C.I.ピグメントホワイト6
<樹脂>
・ジョンクリル62J(商品名、スチレンアクリル系樹脂、BASFジャパン株式会社製)
・AQUACER539(商品名、水系用変性パラフィンワックスエマルション、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
【0176】
また、各種測定・分析は次のようにして行った。
【0177】
粘度
レオメーター(商品名「MCR300」 アントンパール社製)を使用し、測定温度32℃、せん断速度200s-1にて測定した。
【0178】
濡れ張力
ぬれ試薬として、ぬれ張力試験用混合液(富士フィルム和光純薬製等)を用いた。No35のぬれ張力試験用混合液に綿棒を浸漬し、被印刷物に綿棒に付いた液を塗り付け、2秒後まで濡れている場合は、その数値のぬれ張力があるとする。
No45のぬれ張力試験用混合液に新たな綿棒を浸漬し、同様の操作をし、2秒以内にはじいてしまうので、45以下のぬれ張力があるとする。35から45の間に被印刷物のぬれ張力の数値があるとして、適切なぬれ張力の数値の液を用いて、2秒間濡れているMAX値を被印刷物のぬれ張力とした。
【0179】
バーコードの認識可否
印刷基材(バーコード部分)の上部20cm程度にキーエンス製SR2000を置き、撮像・読取を行う。なおSR2000はキャリブレーションシートの検証機での検証値(モジュレーション・デコーダビリティ・デフェクト)と最も近い検証値が出るように機器の調整を行った。モジュレーションが25%以上、デコーダビリティが37%以上、デフェクトが30%未満の時、認識可とする。
【0180】
目視判定
概ね40cmの距離から目視で観察し、にじみ、クリアランスのそれぞれを下記の基準にて判定した。
A:全く確認できない
B:ほぼ確認できない
C:確認できるが、目立たない
D:目立って確認できる
標記判定を30人にて行い、最も多かった判定を目視判定結果とした。
【0181】
[実施例1]
(印刷基材の製造)
原反ロールから、インフレーション成型したチューブ状のフィルム(ポリブチレンテレフタレートとオレフィン系樹脂との積層フィルム)の内面のエアを抜いて巻いてあるフィルムを、印刷面(積層フィルムのうち、ポリブチレンテレフタレートの面(濡れ張力38dyn/cm))を上にした状態で、無地透明の帯状フィルムをバッファ用ロールに送り出して、搬送させつつ、インクジェット法により印刷部を形成した。
【0182】
すなわち、チューブ状フィルムは、医療用ソフトバッグ用を想定したものであり、フィルム上に、下記表に示す条件にて、複数の異色印刷部が形成されるよう、インクを吐出し、印刷した。
【0183】
【表2】
【0184】
なお、異色印刷部の色(模様及びその背景)は、いずれも、フィルムの横方向に沿って印刷した(すなわち、異色印刷部1では「糖加電解質液(維持液)」、異色印刷部2では「輸液」、異色印刷部3では「1000mL」が、異色印刷部4ではバーコードを構成するバーが、それぞれ、並ぶ方向がフィルムの横方向である)。
【0185】
なお、インクジェット装置のインク吐出ヘッドはフィルム進行方向(縦方向、フィルム搬送速度8m/分)に対して垂直(すなわち横方向)に移動(ヘッド走査速度152m/分)し、その際にノズルからインクを吐出した。そして、インク吐出ヘッドが移動する往路及び復路でインクを吐出した。往路ではカラーインク吐出の直後(ほぼ同時)にクリアインクが吐出され、復路ではクリアインク吐出の直後にカラーインクが塗布される。これは、吐出ヘッドの構造によるもので、往路における進行方向からカラーインクを吐出するノズル、クリアインクを吐出するノズルの順にノズルが並んでいるからである。
また、クリアインクは往路においてカラーインク吐出部(復路においては吐出予定部)に対して吐出されるものであり、フィルム全体に吐出されるものではない(カラーインクが吐出されない場所にはクリアインクも吐出されない)。
【0186】
インク吐出後のフィルムを、さらに、熱風を吹き込みつつ搬送することで印刷面を乾燥させ、目的物(複数の異色印刷部を含む印刷部を備えたフィルム)を得た。
【0187】
(印刷基材の評価)
異色印刷部1
得られたフィルムのうち、異色印刷部1について、接写した写真を図1、顕微鏡写真(20倍、背景黒地)を図2に示す。
【0188】
異色印刷部1は、比較的幅(すなわち、文字列「糖加電解質液(維持液)」の各文字の幅)の小さい文字を色1とするものであるが、目視では、色1とその背景との間に、にじみは全くみられず(判定A)、クリアランスも確認できなかった(判定A)。このことは至近距離とも言える図1、拡大写真の図2からも見て取れた。
【0189】
なお、異色印刷部1において、上記の通り、印刷時に設定したクリアランスは全く目立っていないが、より高倍率の顕微鏡写真にて観察すると、わずかにクリアランス(文字列とその背景との間の間隙)の存在は確認できた[縦方向に約78μm(印刷時に設定したクリアランスの約0.92倍(1.8ピクセル分)、幅1(350μm)、幅2(175μm)、幅B/幅1=0.22、幅B/幅2=0.45、X/Y=333)、横方向に約42μm(印刷時に設定したクリアランスの0.50倍(0.99ピクセル分)、幅1(350μm)、幅2(175μm)、幅B/幅1=0.12、幅B/幅2=0.24、X/Y=606)]。
【0190】
色1が白であることから、色が白であることもまたクリアランスが目立たないことに関係していることが示唆された。
【0191】
異色印刷部2
同様に、異色印刷部2について接写した写真を図3、顕微鏡写真(20倍、背景黒地)を図4に示す。
【0192】
異色印刷部2は、中程度の幅(すなわち、文字列「輸液」の各文字の幅)の文字を色1とするものであるが、目視では、色1とその背景との間に、にじみは全くみられず(判定A)、クリアランスもほぼ確認できなかった(判定B)。すなわち、至近距離写真の図3でも、色1(文字列)と背景との間に明確といえる程のクリアランスは確認できず、拡大写真の図4によってようやく明確なクリアランスが認められる程度であった。
【0193】
なお、異色印刷部2において、上記の通り、印刷時に設定したクリアランスは目視ではほぼ確認できないが、顕微鏡観察よりクリアランスの存在は確認できた[縦方向に約159μm(印刷時に設定したクリアランスの約0.94倍(3.8ピクセル分)、幅1(1636μm)、幅2(630μm)、幅B/幅1=0.097、幅B/幅2=0.25、X/Y=158)、横方向に約116μm(印刷時に設定したクリアランスの0.69倍(2.7ピクセル分)、幅1(1636μm)、幅2(630μm)、幅B/幅1=0.071、幅B/幅2=0.18、X/Y=222)]。
【0194】
異色印刷部3
同様に、異色印刷部3について接写した写真を図5、顕微鏡写真(20倍、背景白地)を図6に示す。
【0195】
異色印刷部3は、比較的大きい幅[すなわち、文字列「1000mL」の各文字(数字、アルファベット)の幅)の文字を色1とするものであるが、目視では、色1とその背景との間に、にじみは全くみられず(判定A)、クリアランスもほぼ確認できなかった(判定B)。すなわち、至近距離写真の図5でも、色1(文字列)と背景との間に所々で若干のクリアランスが確認できる程度で、拡大写真の図6によってようやく明確なクリアランスが認められる程度であった。
【0196】
なお、異色印刷部3において、上記の通り、印刷時に設定したクリアランスは目視ではほぼ確認できないが、顕微鏡観察よりクリアランスの存在は確認できた[縦方向に約226μm(印刷時に設定したクリアランスの約0.89倍(5.3ピクセル分)、幅1(2388μm)、幅2(2802μm)、幅B/幅1=0.095、幅B/幅2=0.081、X/Y=113)、横方向に約144μm(印刷時に設定したクリアランスの0.57倍(3.4ピクセル分)、幅1(2388μm)、幅2(2802μm)、幅B/幅1=0.060、幅B/幅2=0.051、X/Y=176)]。
【0197】
異色印刷部4
異色印刷部4(バーコード)についても、目視では、色1(バーコードのバー)とその背景との間に、にじみは全くみられず(判定A)、クリアランスも確認できなかった(判定A)。目視でクリアランスが確認できなかったのは、背景の色が白であったことも関連しているものと考えられる。
【0198】
異色印刷部4については、前述の方法により、バーコードとして認識可能であるか否かを確認したところ、認識可能であった。
【0199】
なお、異色印刷部4についても、拡大写真を撮影して観察したところ、クリアランスの存在は確認できた[縦方向に約154μm(印刷時に設定したクリアランスの約0.91倍(3.6ピクセル分)、幅1(367μm)、幅2(350μm)、幅B/幅1=0.42、幅B/幅2=0.44、X/Y=167)、横方向に約118μm(印刷時に設定したクリアランスの約0.7倍(2.8ピクセル分)、幅1(367μm)、幅2(350μm)、幅B/幅1=0.32、幅B/幅2=0.34、X/Y=214)]。
【0200】
(輸液バッグの成形及びその評価)
得られた印刷後のフィルムにおいて、輸液バッグの4辺となる位置を熱溶着した(ただし、ポート取付位置は熱溶着しなかった)。熱溶着工程後、輸液バッグとなるよう裁断し、ポート取付位置に樹脂製のポートを熱溶着により取り付けた。
【0201】
そして、ポート取付工程後、内容物(輸液)をポートから充填し、ポートにゴム栓を取り付け、ゴム栓表面を保護するためにポートに保護フィルムを熱融着により貼り付けた後、高圧シャワー滅菌し、輸液バッグを得た。
【0202】
なお、高圧シャワー滅菌までの工程はインラインにて行った。
【0203】
輸液バッグの成形過程において、異色印刷部1~4の脱落は生じなかった。
また、高圧シャワー滅菌後の輸液バッグにおいて、異色印刷部1~4を指で強くこすったが、脱落を生じることはなかった。
さらに、異色印刷部1~4を、エタノールを浸した布で拭いてみたが、同じく脱落は生じなかった。
このように、輸液バッグにおいて、異色印刷部1~4は強固に印刷されていることを確認した。
【0204】
[参考例1]
実施例1において、印刷時において異色印刷部(色1と色2(背景))との間にクリアランスをとることなく印刷したこと以外は、実施例1と同様にして印刷し、印刷基材を得た。
得られたフィルムにおいて、異色印刷部1~4のいずれも、目視の段階で、既に、色1とその背景との間に、にじみがはっきりと確認できた(判定D)。
【0205】
[参考例2]
実施例1において、クリアインクを使用せず、異色印刷部(色1と色2(背景))との間にクリアランスを設定することなく印刷したこと以外は、実施例1と同様にして印刷し、印刷基材を得た。
【0206】
異色印刷部1~4は、参考例1に比べるとやや少ないものの、いずれも、目視において色間ににじみが見られた(判定C)。
【0207】
また、印刷基材を用いて実施例1と同様に輸液バッグを成形したところ、異色印刷部1~4は、その所々において脱落が見られた。そして、エタノールを浸した布で拭いたところ、ほぼすべての異色印刷部が脱落した。
【0208】
[実施例2]
実施例1において、異色印刷部1の縦方向のクリアランスの幅を、下記表に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各クリアランス幅にて印刷基材を得た。
そして、得られた各印刷基材の異色印刷部1について、目視にて実施例1と同様にして評価した。結果は下記表の通りである。
【0209】
【表3】
【0210】
[実施例3]
実施例1において、異色印刷部3の横方向のクリアランスの幅を、下記表に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各クリアランス幅にて印刷基材を得た。
【0211】
そして、得られた各印刷基材の異色印刷部3について、目視にて実施例1と同様にして評価した。結果は下記表の通りである。
【0212】
【表4】
【0213】
上記の表の結果から明らかなように、比較的大きい幅の色は、多少クリアランスの幅を大きくとっても、X/Yの値を調整することで、クリアランスが目立ちにくい異色印刷部を形成できることがわかった。
【0214】
[実施例4]
実施例1において、チューブ状のフィルムとして、ポリエチレンの単層フィルム(印刷面のぬれ張力35dyn/cm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【0215】
[実施例5]
実施例1において、チューブ状のフィルムとして、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂の単層フィルム(印刷面のぬれ張力45dyn/cm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【0216】
[実施例6]
特開2018-141066号公報の実施例1のインクを調製した。
そして、得られたインク(シアン)を、インク2に代えて使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4(特に、異色印刷部2、4)、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【0217】
[実施例7]
インク1~4をそれぞれ、ローランド・ディー・ジー株式会社製のインク、ブラック(FPG-BK)、シアン(FPG-CY)、マゼンタ(FPG-MG)、イエロー(FPG-YE)に代えて使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【0218】
[実施例8]
実施例1において、縦方向の解像度を400dpiに変更したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【0219】
[実施例9]
実施例1において、横方向の解像度を200dpiに変更したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【0220】
[実施例10]
実施例1において、縦方向の解像度を300dpi、横方向の解像度を300dpiに変更したこと以外は、実施例1と同様にして印刷基材を得た。
得られたフィルムは、異色印刷部1~4、輸液バッグの成形及びその評価において実施例1と同様の傾向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明によれば、新規な印刷基材及びその製造方法等を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6