(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】運動装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241113BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/66 P
(21)【出願番号】P 2023040320
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2021564750の分割
【原出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】201910363238.3
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910628196.1
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521475369
【氏名又は名称】インガン セミコンダクター テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YINGUAN SEMICONDUCTOR TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building C, No. 888, Huanhu West 2nd Road, Nanhui New Town, Pudong New Area, Shanghai 200135, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉火亮
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06779278(US,B1)
【文献】特開2002-323584(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125260(WO,A1)
【文献】特開2010-109244(JP,A)
【文献】特開平11-284052(JP,A)
【文献】特開平02-202348(JP,A)
【文献】特開2003-028973(JP,A)
【文献】中国実用新案第201436604(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103309176(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイと、
前記トレイの下方に位置する回転ステージであって、前記回転ステージの上面に環状の上部凹状キャビティが設けられ、前記回転ステージの下面に下部凹状キャビティが設けられ、前記上部凹状キャビティと前記下部凹状キャビティとの前記回転ステージの上面に垂直な投影方向への投影が互いにずれている回転ステージと、
前記環状の上部凹状キャビティ内に収容された回転モータであって、前記回転ステージに対して固定された回転モータ固定子と、前記トレイに対して固定された回転モータ移動子とを含む回転モータと、
前記下部凹状キャビティ内に位置し、前記回転ステージを駆動して垂直移動させることができるように構成された垂直移動装置と、
前記下部凹状キャビティ内に位置し、前記回転ステージの重力補償を可能にするように構成された磁気浮上重力補償装置と、を備え、
前記垂直移動装置と前記磁気浮上重力補償装置とは、互いに集積され、前記下部凹状キャビティ内に位置しており、且つ、前記垂直移動装置と前記磁気浮上重力補償装置とが互いに集積された構造は、
外面に内側磁気リングが被せて設けられたボイスコイルモータ固定子と、
外面に外側磁気リングが被せて設けられたボイスコイルモータ移動子と、を含むことを特徴とする運動装置。
【請求項2】
ワークを前記トレイに載置するまたは前記トレイから搬出するように構成された上下シート装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の運動装置。
【請求項3】
前記トレイは真空チャック装置であることを特徴とする請求項1に記載の運動装置。
【請求項4】
前記回転ステージは前記環状の上部凹状キャビティ内に位置する回転グレーチングルーラーを備えることを特徴とする請求項1に記載の運動装置。
【請求項5】
前記回転モータ移動子と前記環状の上部凹状キャビティの内周壁との間に一つの軸受のみが設置されていることを特徴とする請求項1に記載の運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2019年04月30日に出願され、出願番号が201910363238.3であり、発明名称が「運動装置」である中国特許出願と、2019年07月12日に出願され、出願番号が201910628196.1であり、発明名称が「運動装置」である中国特許出願の優先権を主張しており、上記出願の全文は引用により本文に組み込まれる。
【0002】
本発明は、集積回路の装備製造の分野に関し、具体的には、高精度の垂直運動および回転機能を提供することができる運動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体シリコンウェーハの膜厚検出の分野では、ワークステージがシリコンウェーハ搬送システムとシリコンウェーハの受け渡しを完成するとともに、12インチあるいは8インチのシリコンウェーハを支えながら360°回転と垂直運動を完成し、シリコンウェーハの膜厚検出を完成することが要求されている。したがって、膜厚検出に適用されるワークステージ装置では、回転・垂直移動ステージがそのコア部品である。歩留まりへの要求が高まり、膜厚検出精度が向上するにつれ、ワークステージの運行速度、加速度、性能も向上している。そのため、ワークステージの更なる軽量化、更なるフラット化、より高い運動精度の設計が求められている。米国特許US2004246012A1では、この分野のワークステージの方案が提出されている。当該発明の垂直移動ステージ(支持プラットフォーム112)は垂直方向装置に固定され、チャックユニットは垂直移動ステージに固定される。且つ、垂直方向装置は、くさび形ブロックをリニアモータで駆動しながら、厚さ0.5mmの2枚のリードで往復力を与えることによって、垂直運動を実現する。当該発明の構造は比較的簡単だが、高さ寸法が大きく、フラット化設計を実現するのは難しい。
【0004】
米国特許US6779278B1では、この分野の別のワークステージの方案が提出されている。この発明の垂直方向移動ステージ(Zプラットフォーム)は垂直方向装置に固定され、チャックユニットは垂直方向移動ステージに固定される。垂直方向装置はボイスコイルモータにより直接駆動を実現し、スプリングによりボイスコイルモータの重力補償を実現し、ボイスコイルモータの負荷を低減する。この発明は構造が比較的簡単で、垂直方向の寸法が小さく、フラット化設計を基本的に実現している。しかし、ボイスコイルモータには重力補償するためのスプリングが採用されているため、垂直方向の精度を高精度にすることは困難である。
【0005】
そのため、集積回路の装備製造の分野では、フラット化設計を実現できながら垂直方向の運動精度が低いという問題を解決できる精密運動装置が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はフラット構造を有する精密運動装置を提供することにより、従来の運動装置の高さ寸法が大きいという問題を解決し、フラット化設計を実現し、垂直方向の運動精度が低いという問題を解決する。
【0007】
具体的には、上記課題を解決するために、本発明は、
トレイと、
前記トレイの下方に位置する回転ステージであって、前記回転ステージの上面に環状の上部凹状キャビティが設けられ、前記回転ステージの下面に下部凹状キャビティが設けられ、前記上部凹状キャビティと前記下部凹状キャビティの前記回転ステージの上面に垂直な投影方向への投影が互いにずれている回転ステージと、
前記環状の上部凹状キャビティ内に収容された回転モータであって、前記回転ステージに対して固定された回転モータ固定子と、前記トレイに対して固定された回転モータ移動子と、を含む回転モータと、
前記下部凹状キャビティ内に位置し、前記回転ステージを駆動して垂直移動させることができるように構成された垂直移動装置と、
前記下部凹状キャビティ内に位置し、前記回転ステージの重力補償を可能にするように構成された磁気浮上重力補償装置と、を備える運動装置を提供する。
【0008】
一実施例において、前記垂直移動装置と前記磁気浮上重力補償装置とは、互いに集積され、前記下部凹状キャビティ内に位置している。
【0009】
一実施例において、前記下部凹状キャビティは複数の下部凹状キャビティを含み、前記垂直移動装置および前記磁気浮上重力補償装置は、それぞれ異なる下部凹状キャビティ内に位置する。
【0010】
一実施例において、前記複数の下部凹状キャビティは、中心凹状キャビティと周部凹状キャビティとを含み、前記中心凹状キャビティは、平面位置が前記環状の上部凹状キャビティによって囲まれ、前記垂直移動装置を収容するためのものであり、前記周部凹状キャビティは、前記環状の上部凹状キャビティの外周に位置し、前記磁気浮上重力補償装置を収容するために使用される。
【0011】
一実施例において、前記運動装置はワークを前記トレイに載置するまたは前記トレイから搬出するように構成された上下シート装置をさらに備える。
【0012】
一実施例において、前記垂直移動装置はボイスコイルモータを備え、前記ボイスコイルモータは中空構造であり、前記トレイは真空チャック装置である。
【0013】
一実施例において、前記下部凹状キャビティは、4つの周部凹状キャビティを含み、各前記周部凹状キャビティは、1つの磁気浮上重力補償装置を収容する。
【0014】
一実施例において、前記垂直移動装置と前記磁気浮上重力補償装置とが互いに集積された構造は、
外面に内側磁気リングが被せて設けられたボイスコイルモータ固定子と、
外面に外側磁気リングが被せて設けられたボイスコイルモータ移動子と、を含む。
一実施例において、前記回転ステージは前記環状の上部凹状キャビティ内に位置する回転グレーチングルーラーを備える。
一実施例において、前記回転モータ移動子と前記環状の上部凹状キャビティの内周壁との間に一つの軸受のみが設置されている。
【0015】
従来技術に、多次元運動を実現できる運動装置において、回転運動と垂直方向運動を実現するための部分が互いに重なり合っていることが多いため、運動装置の垂直方向の寸法が大きくなっている。本発明の運動装置の垂直方向の寸法は、従来技術に比べて著しく減少し、磁気浮上重力補償装置の適用により、運動装置の垂直方向の運動精度を顕著に上げる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1は本発明に係る運動装置の斜視図である;
図2は本発明に係る運動装置の断面図である;
図3は本発明に係る運動装置の平面図であって、トレイが取り外されている;
図4は本発明に係る磁気浮上重力補償装置の斜視図である;
図5は本発明に係る磁気浮上重力補償装置の断面図である;
図6は本発明に係る回転ステージベースの平面斜視図である;
図7は本発明に係る回転ステージベースの底面斜視図である;
図8は本発明に係る精密運動装置のボイスコイルモータの断面図である;
図9は本発明に係る磁気浮上重力補償装置のレイアウトの別の実施例である;
図10は本発明に係る磁気浮上重力補償装置の別の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の目的、特徴および利点をよりよく理解するために、図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。図面に示される実施例は、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではなく、単に本発明の技術方案の本質的な精神を説明することを理解するべきである。
【0018】
以下の説明では、開示されたさ各実施例を説明する目的から、開示された各実施例を完全に理解するために、何らかの具体的な詳細を記載する。但し、当業者は実施例がこれらの具体的な詳細のうちの1つまたは複数なしに実施されてもよいことを認識するべきである。他の場合では、実施例の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、本出願に関連する周知のデバイス、構造、および技術は詳細に示されないか、または記載されない可能性がある。
【0019】
文脈で特に必要とされない限り、明細書および請求の範囲を通して、「備える」という言葉とそのバリエーション、例えば「含む」や「有する」などの用語は、オープンで包括的な意味と理解するべきであり、すなわち、「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである。
【0020】
明細書全体にわたる「一つ実施例」または「一実施例」への言及は、実施例に説明される特定の特点、構造、または特徴が少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。そのため、明細書全体の各箇所での「一つの実施例では」または「一実施形態では」の表現は、必ずしもすべてが同じ実施例を指しているわけではない。また、特定の特点、構造、または特徴が1つまたは複数の実施例で任意の方法で組み合わせることができる。
【0021】
本明細書および添付の請求の範囲で使用されるように、単数形「一」および「前記」は、文脈がそうでないことを明確に記載しない限り、複数の指示対象も含む。「または」という用語は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、「および/或いは」を含む意味で一般的に使用されることである。
【0022】
以下の記載では、本発明の構成及び動作形態を明確に示すために、多くの方向性の語を用いて説明するが、「前」、「後」、「左」、「右」、「外」、「内」、「外を向く」、「内を向く」、「上」、「下」などの語は、限定的な語ではなく、便宜上の語として理解されるべきである。
【0023】
本発明に係る運動装置100を図面を参照して説明する。
図1~
図8を参照すると、本実施例は上下シート装置と、トレイ102と、回転ステージ103と、垂直移動装置104と、磁気浮上重力補償装置105と、水平移動装置106と、ブラケット108と、水平ベース1062と、垂直ベース1045とをさらに備えている運動装置100を開始した。
【0024】
上下シート装置は、ブラケット108に固定される。この上下シート装置は、外部のロボットハンド(図示せず)およびトレイ102と共にシリコンウエーハの受け渡しを完成するためのものである。
図1に示すように、この上下シート装置は、4つのレシーバーハンド101a、101b、101c、101dを備えている。この上下シート装置は、4つのレシーバーハンド101a、101b、101c、101dで外部のロボットハンドから測定対象のシリコンウエーハを受け取ってトレイ102上に搬送し、測定済みのシリコンウエーハをトレイ102から外部のロボットハンドに搬送する。
【0025】
図2に示す実施例において、トレイ102は、シリコンウエーハを固定するための吸盤1021と吸盤ベース1022とから構成されている。本実施例では、トレイ102は真空式の吸盤であり、円盤状の吸盤1021に通気孔を設け、その下方に真空を形成することにより、シリコンウエーハを真空吸着により吸盤1021に固定する。しかし、トレイ102は、他の方式で、吸盤1021にシリコンウエーハを固定してもよく、例えば、吸盤1021にシリコンウエーハの周囲を掴み具で押さえることによって、シリコンウエーハを固定してもよいことを理解されたい。
【0026】
回転ステージ103は、
図2に示すように、トレイ102の下方に設けられ、トレイ102を駆動して中心軸線周りに回転運動させることができる。上記運動装置100は回転モータを備え、上記回転モータは回転モータ固定子1031、回転モータ移動子1032を備え、上記回転ステージ103は、軸受1033、回転ステージベース1034、回転グレーチングルーラー(grating ruler)1035を備える。
【0027】
回転ステージベース1034の具体的な構造については、
図6および
図7を参照する。回転ステージベース1034は、
図6に示すように、略直方体形状を呈し、具体的には、水平断面が略正方形の直方体である。ただし、回転ステージベース1034の形状は、上記に限定されるものではなく、必要に応じて任意に設定することができることが理解されるべきである。回転ステージベース1034の上面に環状の上部凹状キャビティ1034aが設けられ、下面に下部凹状キャビティ(後述)が設けられている。回転ステージベース1034の上面に垂直な方向における上記環状の上部凹状キャビティ1034aと下部凹状キャビティとの投影を互いにずらすことにより、この環状の上部凹状キャビティ1034aと下部凹状キャビティとを同じ垂直高さに設定することができ、回転ステージベース1034の垂直方向寸法を著しく低減することができる。この回転ステージベース1034の構造は、運動装置全体の垂直方向高さを効果的に低減する。
【0028】
具体的には、この環状の上部凹状キャビティ1034aの内周壁及び外周壁は円筒状を呈する。内周壁の頂部の周りに、円形面1034cが形成されている。トレイ102がシリコンウエーハを真空吸着により固定する場合には、この円形面にトレイ給気孔1034bが形成されている。
【0029】
図7に示すように、回転ステージベース1034の下面には、下部凹状キャビティが設けられている。下部凹状キャビティは、磁気浮上重力補償装置キャビティ1034dと垂直ボイスコイルモータキャビティ1034eとを含む。具体的には、本実施例では、回転ステージベース1034の外周輪郭と上記環状の上部凹状キャビティ1034aとの間の4つの角部位置に、それぞれ磁気浮上重力補償装置105を収容するための磁気浮上重力補償装置キャビティ1034dが設けられている。回転ステージベース1034の下面中央には、環状の上部凹状キャビティ1034aの内周壁で囲まれた領域に対応する位置に垂直ボイスコイルモータキャビティ1034eが設けられている。
【0030】
図2を参照すると、回転モータ固定子1031は、厚さのある円筒形を呈し、回転ステージベース1034の環状の上部凹状キャビティ1034a内に収容されて固定されている。回転ステージベース1034は、トレイ102の下方に位置し、環状の上部凹状キャビティ1034aの内周壁頂部で囲まれた円形面1034cがトレイ102を支えるために使用される。回転モータ移動子1032も環状の上部凹状キャビティ1034a内に収容され、回転モータ固定子1031の内周内に位置する。回転モータ移動子1032は、吸盤ベース1022に固定的に連結されている。回転モータ移動子1032は、回転モータ固定子1031に対して回転運動を行うことができ、それによって吸盤ベース1022を駆動し、さらにトレイ102を回転運動させ、回転グレーチングルーラー1035によって回転位置信号を供給する。回転グレーチングルーラー1035は、前記回転ステージベース1034の環状の上部凹状キャビティ1034a内に設置され、且つ回転モータ移動子1032の下端部に位置されることによって、回転グレーチングルーラー1035の位置情報を読み取ることにより、回転モータ移動子1032の回転位置を検出することができ、さらに、トレイ102の回転位置を検出することができる。回転グレーチングルーラー1035を環状の上部凹状キャビティ1034a内に配置するので、移動ステージの上面にグレーチングルーラーを新たに配置する必要がなく、移動ステージの構造をコンパクトにすることができる。軸受1033は、回転モータ移動子1032と環状の上部凹状キャビティ1034aの内周壁との間に配置され、回転ステージに回転案内を提供する。本発明では、回転ステージベース1034をよりフラット化することができるので、環状の上部凹状キャビティ1034aの高さを低くし、1つの軸受1033のみを設けることによって、回転モータ移動子1032と回転電機固定子1031との間の回転を実現することができる。軸受の数を減少させることによって、移動ステージ全体の構造をさらにコンパクトにすることができる。
【0031】
図2に示すように、垂直移動装置104は、回転ステージベース1034の下面の垂直ボイスコイルモータキャビティ1034e内に位置し、回転ステージベース1034を支える。本実施例では、垂直移動装置104は、ボイスコイルモータ移動子1041と、ボイスコイルモータ固定子1042と、垂直方向ガイドレールと、垂直方向グレーチングルーラー1044と、垂直方向ベース1045(
図3を参照)とを備える。ボイスコイルモータ固定子1042は垂直方向ベース1045に固定され、ボイスコイルモータ移動子1041はボイスコイルモータ固定子1042に被せて設けられ、ボイスコイルモータ固定子1042に対して垂直移動可能であり、ボイスコイルモータ移動子1041は回転ステージベース1034に固定的に連結され、回転ステージ103を駆動して垂直方向運動させて、垂直方向グレーチングルーラー1044により垂直方向の位置信号を供給する。示された実施例では、垂直方向グレーチングルーラー1044は、回転ステージベース1034の周囲に配置されて垂直に置かれて、回転ステージベース1034および支えられるトレイ102の垂直位置を確定する。
【0032】
ボイスコイルモータの構造を具体的に
図8に示す。ボイスコイルモータ固定子1042は、円筒状の中空構造である。ボイスコイルモータ移動子1041は、円柱状を呈し、下面に、中心貫通孔10411と、ボイスコイルモータ固定子1042の円筒壁を収容するためのリングキャビティとが設けられ、トレイ102は真空吸着式のトレイである場合に、当該中心貫通孔10411は真空配管の取り付けスペースを提供する。垂直移動装置104は、本発明の範囲を逸脱することなく、代わりに、例えば油圧移動装置などの他のリニア移動装置として配置されてもよいことを理解されたい。
【0033】
回転ステージベース1034と水平ベース1062との間には、垂直方向ガイドレールが設けられている。
図3に示す実施例では、略直方体形状の回転ステージベース1034と垂直方向ベース1045との間に、合計2本の垂直方向ガイドレール1043a、1043bが設けられている。各垂直方向ガイドレールは、回転ステージベース1034および垂直方向ベース1045にそれぞれ固定されたガイドレールおよびスライダを含み、垂直方向移動のための案内作用を提供することで、回転ステージベース1034およびそれに支えられたトレイ102が垂直方向ベース1045に対して垂直方向に移動することを可能にする。
【0034】
本実施例では、4組の磁気浮上重力補償装置105は、回転ステージベース1034の4つの角部内の磁気浮上重力補償装置キャビティ1034d内にそれぞれ配置され、垂直方向ボイスコイルモータに重力補償を提供し、垂直方向の運動精度を向上させる。
【0035】
図4および
図5によると、磁気浮上重力補償装置105は内側磁気リングブラケット1051と、内側磁気リング1052と、外側磁気リング1053と、外側磁気リングベース1054とを含む。このうち内側磁気リングブラケット1051は、円柱状のステム部1051aと、ステム部の頂部に位置する円盤状のヘッド部1051bとを備えている。内側磁気リング1052は、内側磁気リングブラケット1051の円柱状のステム部1051aの外周面に被せて設けられている。一方、円盤状のヘッド部1051bは、磁気浮上重力補償装置キャビティ1034dの頂部に接触し、回転ステージベース1034を支える。外側磁気リングベース1054は円筒状を呈し、外側磁気リングベース1054の内面には外側磁気リング1053が嵌入されている。内側磁気リング1052と外側磁気リング1053との間には環状のギャップが形成されている。内側磁気リング1052の磁極方向は軸方向(Z方向)に上向きであり、外側磁気リング1053の磁極方向は径方向に外向きである。しかし、内側磁気リング1052の磁極方向は、軸方向に下向きであってもよく、外側磁気リング1052の磁極方向は、径方向に内向きであってもよいことが理解されるべきである。内側磁気リング1052と外側磁気リング1053との間の磁力により、内側磁気リングブラケット1051を押し上げることができ、磁気浮上重力補償装置キャビティ1034dの天面に上向きの持ち上げ力を加え、この持ち上げ力は、回転ステージベース1034および回転ステージベース1034が支える例えば回転ステージモータやトレイなどの他の装置の重力とほぼ等しくなるようにする。
【0036】
空気浮上重力補償装置の例は、図面には示されていない。この装置は、加圧空気を用いて磁気浮上重力補償装置キャビティ1034dの天面に上向きの持ち上げ力を加え、この持ち上げ力は、回転ステージベース1034および回転ステージベース1034が支える例えば回転ステージモータおよびトレイなどの他の装置の重力とほぼ等しくなるようにする。
【0037】
図1および
図2に示すように、水平方向運動装置106は、2本の水平ガイドレール1061aおよび1061bと、水平ベース1062と、水平リニアモータ1063と、水平グレーチングルーラー1064とを備える。水平リニアモータ1063の移動子及び固定子は、水平ベース1062及び垂直方向ベース1045にそれぞれ固定され、垂直方向ベース1045に水平方向の移動を与える。水平ベース1062は、ブラケット108に固定的に連結されている。水平グレーチングルーラー1064は、水平方向運動のための水平位置信号を提供する。示された実施例では、水平グレーチングルーラー1064は、垂直方向ベース1045の下側に配置されているが、水平グレーチングルーラー1064は、垂直方向ベース1045の水平移動信号を取得できる限り、任意の位置に配置されてもよいことを理解されたい。垂直移動装置104が垂直方向ベース1045に固定されたボイスコイルモータ固定子1042は、回転ステージ103を支持する。2つの水平ガイドレール1061a、1061bは、ブラケット108の両側に固定され、ブラケット108と水平ベース1062との間に位置し、水平方向の移動を案内する。水平ガイドレール1061aと1061bは、ガイドレールと、ガイドレールに摺動するスライダとを備えている。ブラケット108及び水平ベース1062には、それぞれガイドレール及びスライダが設けられている。
【0038】
上記実施例では、回転ステージベース1034の4つの角部に配置された4つの磁気浮上重力補償装置105を採用している。しかし、
図9に示す実施例のように三角形レイアウト、好ましくは120°等角度レイアウトを採用することもできる。すなわち、磁気浮上重力補償装置105a、105b、105cをそれぞれ収容するための3つの磁気浮上重力補償装置キャビティ1034dが回転ステージベース1034に設けられている。
【0039】
図10は本発明の他の変形の実施例を示す図である。上述した2つの実施例では、ボイスコイルモータと磁気浮上重力補償装置105とが2つの分離する装置である方案が採用され、このうち、ボイスコイルモータは、回転ステージベース1034の中心に配置され、回転ステージおよびトレイ102をZ軸方向に押し、外周に配置された磁気浮上重力補償装置105(四隅配置または三角配置)により、ボイスコイルモータに重力補償を与える。一方、本実施例では、ボイスコイルモータと磁気浮上重力補償装置の形態である磁気浮上重力補償装置105とを組み合わせた一体型の構成を採用し、回転ステージベース1034の中心に配置する。
図10に示すように、ボイスコイルモータ固定子1042の外面には内側磁気リング1052が被せて設けられ、モータコイル1055の外周には外側磁気リング1053が被せて設けられている。これにより、ボイスコイルモータ固定子1042は内側磁気リングブラケットを兼ね、モータコイル1055は外側磁気リングブラケットを兼ねている。これにより、この一体型構造は、内側磁気リング1052と外側磁気リング1053との間の磁力により浮上力を発生し、ボイスコイルモータの重力を補償する一方、コイルで磁界を切断することによりローレンツ力を発生し、Z方向に移動する回転ステージ及びトレイ102に垂直移動の駆動力を提供することができる。
【0040】
以上、本発明のより良い実施例について詳細に説明したが、必要に応じて、様々な特許、出願、および出版物の態様、特徴、および概念を使用して追加の実施形態を提供するために、実施例の態様を修正することができることが理解されるべきである。
【0041】
上記の詳細な説明を考慮して、これらおよび他の変更を実施例に加えることができる。一般的に、請求の範囲では、使用される用語は説明および請求の範囲に開示された特定の実施例に限定されると考えられるべきではなく、これらの請求の範囲が享受するすべての同等範囲とともにすべての可能な実施例を含むと理解されるべきである。