(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/18 20060101AFI20241113BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C23F1/18
A61L2/18
(21)【出願番号】P 2023040658
(22)【出願日】2023-03-15
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114488
【氏名又は名称】メック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真依
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓佑
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/157628(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/013557(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/239877(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0199539(US,A1)
【文献】国際公開第2016/021367(WO,A1)
【文献】特開2022-028394(JP,A)
【文献】特許第6695558(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/18
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅の表面にマイクロエッチング剤を接触させて、前記銅の表面に粗化形状を形成することにより、前記銅の表面に抗菌性および抗ウイルス性を付与する粗化処理工程を備え、
前記粗化処理工程が、過酸化水素系ソフトエッチング
剤または希塩酸に、少なくとも前記銅の処理面を浸漬させる前処理ステップと、前記銅の処理面に、有機酸、金属イオン源、ハロゲン化物イオン源を含有する有機酸系マイクロエッチング剤を接触させる本処理ステップと、希硝酸または希塩酸に、少なくとも前記銅の処理面を浸漬させる後処理ステップとの3ステップを有するものであることを特徴とする銅の抗菌および抗ウイルス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は特に、COVID-19、いわゆる新型コロナウイルス感染症の感染予防のために、人が手で触れる部材などの表面に抗菌性や抗ウイルス性を付与することが要求されている。
【0003】
下記特許文献1には、部材の表面にショット材を投射する投射処理(以下、「ブラスト処理」ともいう)を施すことにより、特定の凹凸ピッチ幅および凹部の深さの幅を有する微小凹凸を無数にランダムに形成することで、部材の当該表面に抗ウイルス作用を持たせる抗ウイルス表面処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗ウイルス性の評価基準として、「抗ウイルス活性値」があり、特許文献1に記載の技術では、比較対象(ステンレス板材)は抗ウイルス性を示さないが、抗ウイルス表面処理方法を施すと抗ウイルス活性値が25℃で24時間経過後に0.4~0.7を示す。しかしながら、本発明者らが検討した結果、ブラスト処理では部材の表面にショット材を投射する投射処理を施す関係上、部材の裏面に向かって凸な形状しか付与することができないため、特許文献1に記載の技術で得られる抗菌性および抗ウイルス性では不十分で、さらなる抗菌性および抗ウイルス性の向上を図る必要があることが判明した。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、金属部材に優れた抗菌性および抗ウイルス性を付与し得る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記構成により解決し得る。本発明は、金属部材の表面にマイクロエッチング剤を接触させて、前記金属部材の表面に粗化形状を形成することにより、前記金属部材の表面に抗菌性および抗ウイルス性を付与する粗化処理工程を備えることを特徴とする金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(1)に関する。
【0008】
上記金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(1)において、前記粗化処理工程が、前処理ステップと、本処理ステップと、後処理ステップとの3ステップを有するものである金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(2)が好ましい。
【0009】
上記金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(1)または(2)において、前記マイクロエッチング剤が、有機酸系マイクロエッチング剤、無機酸系マイクロエッチング剤、アルカリ系マイクロエッチング剤および過酸化水素系マイクロエッチング剤からなる群より選択される少なくとも1種のマイクロエッチング剤である金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(3)が好ましい。
【0010】
上記金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(1)~(3)のいずれかにおいて、前記金属部材がアルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金である金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法(4)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法によれば、抗菌性に加え、優れた抗ウイルス性、具体的には高い抗ウイルス活性値を示す金属部材を提供し得る。ブラスト処理に比して、より優れた抗菌性および抗ウイルス性を金属部材に付与できる理由は明らかではないが、以下の理由が推定可能である。
【0012】
部材の表面にショット材を投射する投射処理を施す関係上、基本的にブラスト処理では部材の裏面に向かって凸な形状しか形成できない。一方、本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法では、粗化処理工程において、金属部材の表面にマイクロエッチング剤を接触させて、金属部材の表面を粗化することにより、金属部材の表面に粗化形状を形成する。したがって、後述の実験結果が示すとおり、ブラスト処理により形成される粗化面に比して、遥かに複雑な形状を形成し得る。なお、本発明の粗化処理工程によって金属部材の表面に形成される複雑な形状(粗化形状)により得られる抗ウイルス性および抗菌性が、他の処理方法、特にはブラスト処理により金属表面に付与し得る抗ウイルス性および抗菌性に比して著しく優れる点は、本発明者らにより初めて見出されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】比較例1の(未処理)金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図2】比較例1の(未処理)金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図3】実施例1で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図4】実施例1で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図5】実施例2で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図6】実施例2で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図7】比較例2の(未処理)金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図8】比較例2の(未処理)金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図9】実施例3で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図10】実施例3で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図11】実施例4で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図12】実施例4で製造した金属部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図13】粗化処理を実施していない未処理のステンレス部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図14】粗化処理を実施していない未処理のステンレス部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【
図15】未処理のステンレス部材の表面をブラスト処理した後の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)。
【
図16】未処理のステンレス部材の表面をブラスト処理した後の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法は、金属部材の表面にマイクロエッチング剤を接触させて、金属部材の表面に粗化形状を形成することにより、金属部材の表面に抗菌性および抗ウイルス性を付与する粗化処理工程を備える。
【0015】
本発明において使用可能な金属部材としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス、チタン、チタン合金、鉄または鉄合金などが挙げられる。これらの中でも、本発明においては金属部材としてアルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金を使用することが好ましい。金属部材の形状や大きさは、抗菌性および抗ウイルス性を付与した後に使用する用途に応じて適宜設計可能である。なお、ブラスト処理では、部材の表面にショット材を投射する関係上、抗菌性および抗ウイルス性を付与する金属部材の処理面(表面)は平坦面であることが好ましいが、本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法では、金属部材の表面にマイクロエッチング剤を接触させて、金属部材の表面を粗化する関係上、金属部材の処理面は平坦面に限られず、任意の形状の表面に抗菌性および抗ウイルス性を付与し得る点も特徴である。
【0016】
粗化処理工程で使用するマイクロエッチング剤としては、例えば有機酸系マイクロエッチング剤、無機酸系マイクロエッチング剤、アルカリ系マイクロエッチング剤、または過酸化水素系マイクロエッチング剤などが使用可能である。
【0017】
有機酸系マイクロエッチング剤としては、例えば、有機酸、金属イオン源、ハロゲン化物イオン源などを含有する水溶液からなるマイクロエッチング剤などが挙げられる。
【0018】
無機酸系マイクロエッチング剤としては、例えば、無機酸、金属イオン源、ハロゲン化物イオン源などを含有する酸性水溶液からなるマイクロエッチング剤などが挙げられる。
【0019】
アルカリ系マイクロエッチング剤としては、例えば、アルカリ源、両性金属イオン源、硝酸イオン、チオ化合物などを含有する水溶液からなるマイクロエッチング剤などが挙げられる。
【0020】
過酸化水素系マイクロエッチング剤としては、例えば、過酸化水素および硫酸を主剤とする水溶液からなるマイクロエッチング剤などが挙げられる。
【0021】
本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法では、粗化処理工程を1ステップで行ってもよいが、製造する金属部材の抗菌性および抗ウイルス性をさらに高めるために、2ステップで行うことが好ましく、前処理ステップと、本処理ステップと、後処理ステップとの3ステップで行うことが特に好ましい。以下において、3ステップで粗化処理工程を行う実施態様を説明する。
【0022】
前処理ステップでは、例えば希硝酸や過酸化水素および硫酸を主剤とする水溶液からなる過酸化水素系ソフトエッチング剤、上記アルカリ源、両性金属イオン源、硝酸イオン、チオ化合物などを含有する水溶液などのアルカリ系ソフトエッチング剤などに、少なくとも金属部材の処理面を浸漬させるステップが例示可能である。処理温度としては、例えば15~40℃、処理時間としては3秒~10分程度が例示可能である。
【0023】
本処理ステップでは、上記の有機酸系マイクロエッチング剤、無機酸系マイクロエッチング剤、アルカリ系マイクロエッチング剤、または過酸化水素系マイクロエッチング剤などに、少なくとも金属部材の処理面を浸漬させるステップが例示可能である。処理温度としては、例えば10~40℃、処理時間としては5秒~10分程度が例示可能である。
【0024】
後処理ステップでは、例えば希硝酸などに、少なくとも金属部材の処理面を浸漬させるステップが例示可能である。処理温度としては、例えば15~40℃、処理時間としては3~40秒程度が例示可能である。
【0025】
粗化処理工程後には、金属部材の表面に複雑な粗化形状が形成される。これにより、金属部材の表面に優れた抗菌性および抗ウイルス性が付与される。粗化処理工程後に金属部材の表面に形成される複雑な粗化形状の具体例については後述する。
【0026】
本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法により、抗菌性および抗ウイルス性に優れた金属部材を製造することができるが、抗ウイルス性の程度を示す抗ウイルス活性値は、JIS R1756:2020(可視光応答型光触媒、抗ウイルス、フィルム密着法)を参考として、以下の計算式より算出可能である。
VD=Log(BD)-Log(CD) (1)
上記式(1)において、VDは抗ウイルス活性値、Dは暗所、Bは無加工品感染価、Cは加工品感染価を示す。
【0027】
上記のとおり、本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法により、抗菌性および抗ウイルス性に優れた金属部材を製造することができる。したがって、本発明に係る金属部材の抗菌および抗ウイルス処理方法は、家電製品、住宅建材/設備、トイレ関係施設/用品、キッチン関係施設/用品、浴室関係施設/用品、事務用機器・事務用品、印刷(印刷物、ラミネート加工品や紙)、輸送機器、産業用機器・産業用品(フィルム、食品などの包装資材/フィルム、梱包資材など)、医療・介護・ヘルス、通信関係・アクセサリ、ペット用品、日用品(靴、清掃用品、コスメなど)などに使用される金属部材に抗菌性および抗ウイルス性を付与する処理方法として特に有用である。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を説明するが、かかる説明に本発明は何ら限定されるものではない。
【0029】
「無加工品」として、Ref.(-)(ガラス板)を準備した。つぎに、未使用のアルミニウム合金板(A-6063-t5)(40mm×40mm×t2mm)を、粗化処理を実施していない未処理のアルミニウム合金部材として準備した。この(未処理)アルミニウム合金部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図1、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図2に示す。
図1および
図2、特に
図2の写真を参照しても、(未処理)アルミニウム合金部材の表面に凹凸は全くなく、鏡面に近いことがわかる。(未処理)アルミニウム合金部材を比較例1とする。
【0030】
実施例1
未使用のアルミニウム合金板(A-6063-t5)(40mm×40mm×t2mm)に対し、以下の条件で粗化処理工程(前処理ステップ、本処理ステップ、後処理ステップの3ステップ)を実施した(以下では、実施例1での粗化処理工程を「粗化処理1」という)。各ステップの条件を以下に示す。
(前処理ステップ)
処理対象であるアルミニウム合金板の表面を希硝酸中に浸漬処理(静置)。処理温度:35℃。処理時間:5~10分。
(本処理ステップ)
前処理に続いて、処理対象であるアルミニウム合金板の表面をアルカリ系マイクロエッチング剤(アルカリ源、両性金属イオン源、硝酸イオン、チオ化合物などを含有する水溶液)中に浸漬処理(静置)。処理温度:35℃。処理時間:4分。
(後処理ステップ)
本処理に続いて、処理対象であるアルミニウム合金板の表面を希硝酸中に浸漬処理(静置)。処理温度:室温。処理時間:30秒。
後処理に続いて、純水中で1分間超音波洗浄を行った。
【0031】
実施例1の粗化処理工程(粗化処理1)後に得られたアルミニウム合金部材(「(粗化処理1)アルミニウム合金部材」とする)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図3、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図4に示す。
図3の写真から、粗化処理工程1により、アルミニウム合金部材の表面全体に複雑な粗化形状が形成されていることがわかる。特に
図4の写真を参照すると、アルミニウム合金部材の表面には任意の方向に凸形状が形成されていることがわかる。
【0032】
参考として、粗化処理を実施していない未処理のステンレス部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図13、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図14、次に未処理のステンレス部材の表面をブラスト処理した後の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図15、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図16に示す。
図13と
図15、
図14と
図16を対比しても明らかなとおり、ブラスト処理では単に部材の裏面に向かって凸な形状しか形成できないため、ステンレス表面に複雑な粗化形状は形成できないことがわかる。一方、
図3および
図4、特に
図4の写真を参照すると、(粗化処理1)アルミニウム合金部材の表面には、ブラスト処理を行ったステンレス表面に比して、遥かに複雑な粗化形状が形成されていることがわかる。
【0033】
実施例2
未使用のアルミニウム合金板(A-6063-t5)(40mm×40mm×t2mm)に対し、以下の条件で粗化処理工程(前処理ステップ、本処理ステップ、後処理ステップの3ステップ)を実施した(以下では、実施例2での粗化処理工程を「粗化処理2」という)。各ステップの条件を以下に示す。
(前処理ステップ)
処理対象であるアルミニウム合金板の表面をアルカリ系ソフトエッチング剤中に浸漬処理(静置)。処理温度:35℃。処理時間:1分。
(本処理ステップ)
前処理に続いて、処理対象であるアルミニウム合金板の表面を無機酸系マイクロエッチング剤(無機酸、両性金属イオン源、ハロゲン化物イオン源などを含有する水溶液)中に浸漬処理(静置)。処理温度:30℃。処理時間:10分。
(後処理ステップ)
本処理に続いて、処理対象であるアルミニウム合金板の表面を希硝酸中に浸漬処理(静置)。処理温度:室温。処理時間:30秒。
後処理に続いて、純水中で1分間超音波洗浄を行った。
【0034】
実施例2の粗化処理工程(粗化処理2)後に得られたアルミニウム合金部材(「(粗化処理2)アルミニウム合金部材」とする)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図5、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図6に示す。
図5の写真から、粗化処理工程2により、アルミニウム合金部材の表面全体に複雑な粗化形状が形成されていることがわかる。特に
図6の写真を参照すると、アルミニウム合金部材の表面には任意の方向に凸形状が形成されていることがわかる。つまり、単に部材の裏面に向かって凸な形状しか形成できないブラスト処理に比して、遥かに複雑な粗化形状がアルミニウム合金部材の表面に形成されていることがわかる。
【0035】
[抗ウイルス性評価]
Ref.(-)(ガラス板)を無加工品として、比較例1の(未処理)アルミニウム合金部材、および実施例1~2の金属部材の抗ウイルス処理方法を実施したアルミニウム合金部材((粗化処理1)アルミニウム合金部材および(粗化処理2)アルミニウム合金部材)の抗ウイルス性を以下の条件により評価した。
[試験規格]
JIS R1756:2020(可視光応答型光触媒、抗ウイルス、フィルム密着法)を参考
[無加工品名]
Ref.(-)(ガラス板)
[試験品名]
(未処理)アルミニウム合金部材(比較例1)、(粗化処理1)アルミニウム合金部材(実施例1)、(粗化処理2)アルミニウム合金部材(実施例2)
[試験品(アルミニウム合金部材)大きさ]
40mm×40mm×t2mm
[n数]
n=1
[試験ファージ]
・バクテリオファージQβ(NBRC 20012)[宿主大腸菌(NBRC 106373)];結果を表1に示す。
・バクテリオファージφ6(NBRC 105899、JIS規格外)[宿主Pseudomonas syringae(NBRC 14084)];結果を表2に示す。
[試験ファージの希釈液]
1/500NB
[試験品の無菌化]
UV254nmでの殺菌(表裏各15分)
[作用条件]
温度25℃、暗所、作用時間0時間、4時間
[密着フィルム]
ポリプロピレンフィルム(VF-10,KOKUYO)、30mm×30mm
【0036】
【0037】
表1に記載のとおり、実施例1および実施例2で得られた(粗化処理1)アルミニウム合金部材および(粗化処理2)アルミニウム合金部材は、暗所25℃で4時間経過後に感染価が著しく低下した。また、それに伴い抗ウイルス活性値も同様に暗所25℃で4時間経過後に5まで上昇した。これらの結果から、実施例1および実施例2の金属部材の抗ウイルス処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、抗ウイルス性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0038】
【0039】
表2に記載のとおり、実施例1および実施例2で得られた(粗化処理1)アルミニウム合金部材および(粗化処理2)アルミニウム合金部材は、暗所25℃で4時間経過後に感染価が著しく低下した。また、それに伴い抗ウイルス活性値も同様に暗所25℃で4時間経過後に5.3まで上昇した。これらの結果から、実施例1および実施例2の金属部材の抗ウイルス処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、試験ファージ如何を問わず、つまりノロウイルスやインフルエンザウイルス、さらにはコロナウイルスを問わず、抗ウイルス性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0040】
[抗菌性評価]
Ref.(-)(ガラス板)を無加工品として、比較例1の(未処理)アルミニウム合金部材、および実施例1~2の金属部材の抗菌処理方法を実施したアルミニウム合金部材((粗化処理1)アルミニウム合金部材および(粗化処理2)アルミニウム合金部材)の抗菌性を以下の条件により評価した。
[試験規格]
JIS Z2801:2012を参考
[無加工品名]
Ref.(-)(ガラス板)
[試験品名]
(未処理)アルミニウム合金部材(比較例1)、(粗化処理1)アルミニウム合金部材(実施例1)、(粗化処理2)アルミニウム合金部材(実施例2)
[試験品(アルミニウム合金部材)大きさ]
40mm×40mm×t2mm
[n数]
n=1
[試験菌]
・黄色ブドウ球菌(NBRC12732);結果を表3に示す。
・大腸菌(NBRC3972);結果を表4に示す。
[試験ファージの希釈液]
1/500NB
[試験品の無菌化]
UV254nmでの殺菌(表裏各15分)
[作用条件]
温度25℃、暗所、作用時間0時間、8時間
[密着フィルム]
ポリプロピレンフィルム(VF-10,KOKUYO)、30mm×30mm
【0041】
【0042】
表3に記載のとおり、実施例1および実施例2で得られた(粗化処理1)アルミニウム合金部材および(粗化処理2)アルミニウム合金部材は、暗所25℃で8時間経過後に生菌数が著しく減少した。また、それに伴い抗菌活性値も同様に暗所25℃で8時間経過後に3.8~4.2まで上昇した。これらの結果から、実施例1および実施例2の金属部材の抗菌処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、抗菌性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0043】
【0044】
表4に記載のとおり、実施例1および実施例2で得られた(粗化処理1)アルミニウム合金部材および(粗化処理2)アルミニウム合金部材は、暗所25℃で8時間経過後に生菌数が著しく減少した。また、それに伴い抗菌活性値も同様に暗所25℃で8時間経過後に4.5まで上昇した。これらの結果から、実施例1および実施例2の金属部材の抗菌処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、試験ファージ如何を問わず、つまり黄色ブドウ球菌や大腸菌を問わず、抗菌性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0045】
「無加工品」として、Ref.(-)(ガラス板)を準備した。つぎに、未使用の銅部材(50mm×50mm×t1.3mm)を、粗化処理を実施していない未処理の銅部材として準備した。この(未処理)銅部材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図7、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図8に示す。
図7および
図8、特に
図8の写真を参照しても、(未処理)銅部材の表面に凹凸は全くなく、鏡面に近いことがわかる。(未処理)銅部材を比較例2とする。
【0046】
実施例3
未使用の銅板(50mm×50mm×t1.3mm)に対し、以下の条件で粗化処理工程(前処理ステップ、本処理ステップ、後処理ステップの3ステップ)を実施した(以下では、実施例3での粗化処理工程を「粗化処理3」という)。各ステップの条件を以下に示す。
(前処理ステップ)
処理対象である銅板の表面を希塩酸でスプレー処理。処理温度:室温。処理時間:10秒。
(本処理ステップ)
前処理に続いて、処理対象である銅板の表面を有機酸系マイクロエッチング剤(有機酸、金属イオン源、ハロゲン化物イオン源などを含有する水溶液)でスプレー処理。処理温度:30℃。処理時間:60秒。
(後処理ステップ)
本処理に続いて、処理対象である銅板の表面を希塩酸でスプレー処理。処理温度:室温。処理時間:15秒。
【0047】
実施例3の粗化処理工程(粗化処理3)後に得られた銅部材(「(粗化処理3)銅部材」とする)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図9、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図10に示す。
図9の写真から、粗化処理工程3により、銅部材の表面全体に複雑な粗化形状が形成されていることがわかる。特に
図10の写真を参照すると、銅部材の表面には任意の方向に凸形状が形成されていることがわかる。つまり、単に部材の裏面に向かって凸な形状しか形成できないブラスト処理に比して、遥かに複雑な粗化形状が銅部材の表面に形成されていることがわかる。
【0048】
実施例4
未使用の銅板(50mm×50mm×t1.3mm)に対し、以下の条件で粗化処理工程(前処理ステップ、本処理ステップ、後処理ステップの3ステップ)を実施した(以下では、実施例4での粗化処理工程を「粗化処理4」という)。各ステップの条件を以下に示す。
(前処理ステップ)
処理対象である銅板の表面を希塩酸でスプレー処理。処理温度:室温。処理時間:10秒。
(本処理ステップ)
前処理に続いて、処理対象である銅板の表面を有機酸系マイクロエッチング剤(有機酸、金属イオン源、ハロゲン化物イオン源などを含有する水溶液)でスプレー処理。処理温度:30℃。処理時間:150秒。
(後処理ステップ)
本処理に続いて、処理対象である銅板の表面を希塩酸でスプレー処理。処理温度:室温。処理時間:15秒。
【0049】
実施例4の粗化処理工程(粗化処理4)後に得られた銅部材(「(粗化処理4)銅部材」とする)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を
図11、走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)を
図12に示す。
図11の写真から、粗化処理工程4により、銅部材の表面全体に複雑な粗化形状が形成されていることがわかる。特に
図12の写真を参照すると、銅部材の表面には任意の方向に凸形状が形成されていることがわかる。つまり、単に部材の裏面に向かって凸な形状しか形成できないブラスト処理に比して、遥かに複雑な粗化形状が銅部材の表面に形成されていることがわかる。
【0050】
[抗ウイルス性評価]
Ref.(-)(ガラス板)を無加工品として、比較例2の(未処理)銅部材、および実施例3~4の金属部材の抗ウイルス処理方法を実施した銅部材((粗化処理3)銅部材および(粗化処理4)銅部材)の抗ウイルス性を以下の条件により評価した。
[試験規格]
JIS R1756:2020(可視光応答型光触媒、抗ウイルス、フィルム密着法)を参考
[無加工品名]
Ref.(-)(ガラス板)
[試験品名]
(未処理)銅部材(比較例2)、(粗化処理3)銅部材(実施例3)、(粗化処理4)銅部材(実施例4)
[試験品(銅部材)大きさ]
50mm×50mm×t1.3mm
[n数]
n=1
[試験ファージ]
・バクテリオファージQβ(NBRC 20012)[宿主大腸菌(NBRC 106373)];結果を表5に示す。
・バクテリオファージφ6(NBRC 105899、JIS規格外)[宿主Pseudomonas syringae(NBRC 14084)];結果を表6に示す。
[試験ファージの希釈液]
1/20NB
[試験品の無菌化]
UV254nmでの殺菌(表裏各15分)
[作用条件]
温度25℃、暗所、作用時間0分、30分
[密着フィルム]
ポリプロピレンフィルム(VF-10,KOKUYO)、40mm×40mm
【0051】
【0052】
表5に記載のとおり、実施例3および実施例4で得られた(粗化処理3)銅部材および(粗化処理4)銅部材は、暗所25℃で30分経過後に感染価が著しく低下した。また、それに伴い抗ウイルス活性値も同様に暗所25℃で30分経過後に5.3まで上昇した。これらの結果から、実施例3および実施例4の金属部材の抗ウイルス処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、抗ウイルス性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0053】
【0054】
表6に記載のとおり、実施例3および実施例4で得られた(粗化処理3)銅部材および(粗化処理4)銅部材は、暗所25℃で30分経過後に感染価が著しく低下した。また、それに伴い抗ウイルス活性値も同様に暗所25℃で30分経過後に5.6まで上昇した。これらの結果から、実施例3および実施例4の金属部材の抗ウイルス処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、試験ファージ如何を問わず、つまりノロウイルスやインフルエンザウイルス、さらにはコロナウイルスを問わず、抗ウイルス性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0055】
[抗菌性評価]
Ref.(-)(ガラス板)を無加工品として、比較例2の(未処理)銅部材、および実施例3~4の金属部材の抗菌処理方法を実施した銅部材((粗化処理3)銅部材および(粗化処理4)銅部材)の抗菌性を以下の条件により評価した。
[試験規格]
JIS Z2801:2012を参考
[無加工品名]
Ref.(-)(ガラス板)
[試験品名]
(未処理)銅部材(比較例2)、(粗化処理3)銅部材(実施例3)、(粗化処理4)銅部材(実施例4)
[試験品(銅部材)大きさ]
50mm×50mm×t1.3mm
[n数]
n=1
[試験菌]
・黄色ブドウ球菌(NBRC12732);結果を表7に示す。
・大腸菌(NBRC3972);結果を表8に示す。
[試験ファージの希釈液]
1/20NB(黄色ブドウ球菌)、1/500NB(大腸菌)
[試験品の無菌化]
UV254nmでの殺菌(表裏各15分)
[作用条件]
温度25℃、暗所、作用時間0分、15分
[密着フィルム]
ポリプロピレンフィルム(VF-10,KOKUYO)、40mm×40mm
【0056】
【0057】
表7に記載のとおり、実施例3および実施例4で得られた(粗化処理3)銅部材および(粗化処理4)銅部材は、暗所25℃で15分経過後に生菌数が著しく減少した。また、それに伴い抗菌活性値も同様に暗所25℃で15分経過後に3.5~3.7まで上昇した。これらの結果から、実施例3および実施例4の金属部材の抗菌処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、抗菌性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。
【0058】
【0059】
表8に記載のとおり、実施例3および実施例4で得られた(粗化処理3)銅部材および(粗化処理4)銅部材は、暗所25℃で15分経過後に生菌数が著しく減少した。また、それに伴い抗菌活性値も同様に暗所25℃で15分経過後に3.9まで上昇した。これらの結果から、実施例3および実施例4の金属部材の抗菌処理方法により製造された金属部材は、非常に複雑な粗化形状が金属部材の表面に形成されていることに起因して、試験菌如何を問わず、つまり黄色ブドウ球菌や大腸菌を問わず、抗菌性に関し、顕著な効果を奏することが理解できる。