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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ダニの増殖を予測するシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241113BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20241113BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023067670
(22)【出願日】2023-04-18
(65)【公開番号】P2024154062
(43)【公開日】2024-10-30
【審査請求日】2024-03-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509081540
【氏名又は名称】有限会社日革研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 秀夫
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-163194(JP,A)
【文献】ダニAI判定,[online],2022年06月25日,[2024年5月22日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20220625204657/https://apps.apple.com/jp/app/%E3%83%80%E3%83%8Bai%E5%88%A4%E5%AE%9A/id1514901019>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するシステムであって、
前記居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む第1空気状態データを取得する環境センサと、
前記特定空間における前記ダニの匹数を計測するダニ計測ユニットと、
前記第1空気状態データおよび前記匹数に基づいて、前記特定空間における前記ダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力するサーバとを備え、
前記サーバは、前記ネットワークを介して前記居住空間の外部の空気の第2温度および第2湿度の少なくとも1つを含む第2空気状態データを取得し、前記第1空気状態データ、前記第2空気状態データ、および前記匹数に基づいて、前記特定情報を算出し、
前記第1空気状態データは、前記第1温度および前記第1湿度を含み、
前記第2空気状態データは、前記第2温度および前記第2湿度を含み、
前記サーバは、
基準時間間隔において、前記第1温度が特定温度範囲に含まれ、かつ前記第1湿度が特定湿度範囲に含まれる時間間隔の前記基準時間間隔に対する第1割合を算出し、
前記基準時間間隔において、前記第2温度が前記特定温度範囲に含まれ、かつ前記第2湿度が前記特定湿度範囲に含まれる時間間隔の前記基準時間間隔に対する第2割合を算出し、
前記匹数の時間変化に関する値、前記第1割合、および前記第2割合に基づいて、前記特定情報を算出する、システム。
【請求項2】
前記特定温度範囲は、20℃より高く、かつ35℃より低い温度範囲であり、
前記特定湿度範囲は、60%Rhより高く、かつ95%Rhより低い湿度範囲である、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するシステムであって、
前記居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む第1空気状態データを取得する環境センサと、
前記特定空間における前記ダニの匹数を計測するダニ計測ユニットと、
前記第1空気状態データおよび前記匹数に基づいて、前記特定空間における前記ダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力するサーバとを備え、
前記特定情報は、前記ダニの増殖の程度を表す特定値を含み、
前記サーバは、前記端末装置から前記特定空間の断熱性能に関する情報を取得し、前記断熱性能と正の相関となるように前記特定値を算出する、システム。
【請求項4】
前記サーバは、前記特定情報をAPI(Application Programming Interface)を介
して外部装置に公開する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダニの増殖を予測するシステム、プログラム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダニの増殖と、気温および湿度との相関性が知られている。たとえば、非特許文献1には、ダニ匹数と、各月の外気の平均気温および平均相対湿度との関係が示されている。非特許文献1においてダニ匹数が多い時期として示されている7月から9月までの期間には、ダニ対策が行われることが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】日革研究所,[online],[令和5年3月14日検索],インターネット <URL:https://nikkaku-j.com/what_about_mite>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、断熱材およびペアガラス等によって断熱性能が高められた居住空間が普及している。居住空間内の温度および湿度は、優れた断熱性能によって外気の温度および湿度の影響を受けにくい。そのため、エアーコンディショナあるいは加湿器具等による空調動作(冷房、暖房、加湿、あるいは除湿)によって、居住空間の温度および湿度を、居住者の所望の温度および湿度に近づけることができる。その結果、断熱性能が優れた居住空間においては、年間を通じて快適性を維持することが可能である。
【0005】
このように居住者にとって快適な温度範囲および湿度範囲を維持可能な居住空間においては、居住空間内の温度および湿度がダニが増殖し易い温度範囲および湿度範囲において維持される場合がある。ダニは非常に微細な生物のため、外気の温度および湿度に加えて、ダニが生育する限定された空間の温度および湿度の影響も大きい可能性がある。そのため、近年の優れた断熱性能を有する居住空間におけるダニの増殖を、外気の温度および湿度にのみ基づいて予測すると、ダニ増殖の予測精度が低下し得る。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ダニ増殖予測の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係るシステムは、ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測する。システムは、環境センサと、ダニ計測ユニットと、サーバとを備える。環境センサは、居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む第1空気状態データを取得する。ダニ計測ユニットは、特定空間におけるダニの匹数を計測する。サーバは、第1空気状態データおよびダニの匹数に基づいて、特定空間におけるダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力する。
【0008】
本開示の他の局面に係るプログラムは、ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するためのプログラムである。プログラムは、プロセッサに実行されることによって、居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む空気状態データを取得し、特定空間におけるダニの匹数を取得し、空気状態データおよびダニの匹数に基づいて、特定空間におけるダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力する。
【0009】
本開示の他の局面に係る方法は、ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するための方法である。方法は、居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む空気状態データを取得するステップと、特定空間におけるダニの匹数を計測するステップと、空気状態データおよびダニの匹数に基づいて、特定空間におけるダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るダニの増殖を予測するシステム、プログラム、および方法によれば、居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む空気状態データにより、ダニ増殖予測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るダニ増殖予測システムの構成を示すブロック図である。
図2図1のダニ増殖予測システムにおける処理および通信の流れの一例を示すシーケンス図である。
図3図1の情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4図3のダニ増殖予測レベルの計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図1のダニ計測ユニットの画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0013】
図1は、実施の形態に係るダニ増殖予測システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、ダニ増殖予測システム1は、サーバ100と、環境センサ200と、ダニ計測ユニット300とを備える。サーバ100、環境センサ200、およびダニ計測ユニット300は、ネットワークNWを介して互いに接続されている。ネットワークNWには、たとえば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、あるいはクラウドシステムが含まれる。ダニ増殖予測システム1は、ネットワークNWを介して取得したデータから、ユーザUs(居住者)の居住空間Lsにおけるダニの増殖を予測する。
【0014】
断熱材およびペアガラス等によって居住空間Lsの断熱性能が高められている場合、居住空間Ls内の温度および湿度は、居住空間Lsの外部の空気(外気)の温度および湿度の影響を受けにくい。そのため、エアーコンディショナあるいは加湿器具等による空調動作(冷房、暖房、加湿、あるいは除湿)によって、居住空間Lsの温度および湿度を、居住者Usの所望の温度および湿度に近づけることができる。その結果、居住空間Lsにおいては、年間を通じて快適性を維持することが可能である。
【0015】
このように居住者Usにとって快適な温度範囲および湿度範囲を維持可能な居住空間Lsにおいては、居住空間Ls内の温度および湿度がダニが増殖し易い温度範囲および湿度範囲において維持される場合がある。たとえば、居住者Usが布団で就寝している間、体温の上昇および汗の放出等の影響により、居住者Usに接触している布団の温度および湿度が上昇し易い。ダニは非常に微細な生物のため、外気の温度および湿度に加えて、ダニが生育する限定された空間の温度および湿度の影響も大きい可能性がある。そのため、近年の優れた断熱性能を有する居住空間Lsにおけるダニの増殖を、外気の温度および湿度にのみ基づいて予測すると、ダニ増殖の予測精度が低下し得る。
【0016】
そこで、ダニ増殖予測システム1においては、居住空間Lsに含まれる物Mtによって形成される特定空間Semに環境センサ200を配置して、特定空間Semの温度および湿度の少なくとも1つを含む空気状態データを取得する。ダニ増殖予測システム1は、特定空間Semに生育するダニに直接的な影響を与えることが想定される特定空間Semの空気状態データに基づいて、特定空間Semにおけるダニの増殖を予測する。ダニ増殖予測システム1によれば、特定空間Semの空気状態データを用いずに外気の温度および湿度に基づいてダニの増殖を予測する場合よりも、ダニ増殖予測の精度を向上させることができる。
【0017】
環境センサ200は、居住空間Lsに含まれる物Mtによって形成される特定空間Semに配置されている。物Mtには、たとえば、布団、畳、タンス、ブーツ、あるいはバッグが含まれる。環境センサ200は、当該特定空間の温度(第1温度)および湿度(第1湿度)の少なくとも1つを含む空気状態データ(第1空気状態データあるいは極微気象データ)をサンプリングタイム(たとえば1時間)毎に取得して、サーバ100に空気状態データを送信する。環境センサ200は、たとえばIoT(Internet of Things)センサを含む。以下では、環境センサ200が温度および湿度を取得する場合について説明する。
【0018】
サーバ100は、情報処理装置110と、データベース120とを含む。情報処理装置110は、パーソナルコンピュータ、あるいはワークステーションを含む。情報処理装置110は、端末装置400から特定空間Semの位置情報、居住空間Lsの断熱性能に関する情報、および居住空間Lsあるいは特定空間Semに対して行われる単位時間(たとえば、1日、1週間、あるいは1月)あたりの掃除の回数(掃除頻度)を取得する。
【0019】
情報処理装置110は、ネットワークNWを介して、居住空間Lsの外部の空気(外気)の空気状態データ(第2空気状態データ)を気象データサーバ500から取得し、環境センサ200から空気状態データを取得し、ダニ計測ユニット300からダニの匹数を取得する。外気の空気状態データは、外気の温度(第2温度)および湿度(第2湿度)の少なくとも1つを含む。具体的には、外気の空気状態データは、たとえば、特定空間Semの位置情報から特定される居住空間Lsが存在する地点(緯度および経度)、地域、あるいは都市の気象データのタイムチャート(たとえば、1時間毎、1日毎、あるいは1週間毎の気象データ)を含む。気象データは、たとえば、最高気温、最低気温、湿度、降水確率、降水量、風速、および気圧を含む。気象データサーバ500には、たとえば、気象庁のサーバ、日本気象協会のサーバ、あるいは企業のサーバが含まれる。ダニ増殖予測システム1によれば、特定空間Semの空気状態データに加えて外気の空気状態データも併せて使用することにより、ダニ増殖予測の精度をさらに向上させることができる。
【0020】
情報処理装置110は、ネットワークNWを介して取得した、特定空間Semの空気状態データ、外気の空気状態データ、およびダニの匹数に基づいて、特定空間Semにおけるダニの増殖に関する特定情報(ダニ増殖情報)を端末装置400に出力するとともに、API(Application Programming Interface)を介してダニ増殖情報を外部装置600に公開する。ダニの増殖に関する特定情報には、ダニの増殖の程度を表すダニ増殖予測レベル(特定値)、ダニ増殖予測レベルの平均値、あるいはダニ増殖予測レベルに対して推奨されるダニ対策に関する情報が含まれる。特定空間Semにおけるダニの増殖に関する特定情報をAPIによって公開することにより、他のサービス(たとえばマイナポータル)をダニ増殖予測システム1と連携させることができる。
【0021】
端末装置400は、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、AR(Augmented Reality)グラス、あるいはパーソナルコンピュータを含む。
【0022】
データベース120には、ネットワークNWを介して取得されたデータおよび情報処理装置110による処理の結果が保存される。
【0023】
図2は、図1のダニ増殖予測システム1における処理および通信の流れの一例を示すシーケンス図である。以下ではステップを単にSと記載する。図2に示されるように、ダニ計測ユニット300は、S310においてユーザUsからユーザ情報を取得し、ユーザ情報をデータベース120に書き込むようにサーバ100に要求する。なお、S310は、ユーザUsがダニ増殖予測システム1の利用を開始する時に1回行われればよい。S310の後、ダニ計測ユニット300は、S320において、たとえば1日おきに、特定空間Semのダニ匹数を計測し、ダニ匹数を計測時刻と関連付けてデータベース120に書き込むようにサーバ100に要求する。
【0024】
環境センサ200は、S210において、たとえば1時間おきに、特定空間Semの温度と湿度とを含む空気状態データを計測して、空気状態データを計測時刻と関連付けてデータベース120に書き込むようにサーバ100に要求する。
【0025】
気象データサーバ500は、S510において、たとえば1日おきに、外気の温度と湿度とを含む空気状態データを気象データサーバ500から取得して、空気状態データを取得時刻と関連付けてデータベース120に書き込む。
【0026】
情報処理装置110は、S110において、データベース120から、特定空間Semのダニ匹数および空気状態データ、ならびに外気の空気状態データを読み出して、ダニ増殖予測レベル(特定情報)を計算する。情報処理装置110は、計算されたダニ増殖予測レベルをデータベース120に書き込みとともに、ダニ増殖予測レベルおよび当該ダニ増殖予測レベルに対応するダニ対策の推奨を端末装置400に送信する。
【0027】
端末装置400は、S230において、サーバ100からのダニ増殖予測レベルおよびダニ対策の推奨を表示する。
【0028】
外部装置600は、S610において、APIリクエストをサーバ100に送信する。情報処理装置110は、S120においてAPIリクエストを受信すると、データベース120からAPIリクエストに対応する値を読み出す。情報処理装置110は、S130において、当該値を含むAPIレスポンスを外部装置600に送信する。外部装置600は、S620においてサーバ100からAPIレスポンスを受信する。
【0029】
図3は、図1の情報処理装置110のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3に示されるように、情報処理装置110は、プロセッサ111と、メモリ112と、ハードディスク113と、入出力部114と、通信部115と、表示部116とを含む。これらの構成要素は、バス150を介して互いにデータ通信可能に接続されている。
【0030】
プロセッサ111は、CPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ111は、GPU(Graphics Processing Unit)をさらに含んでもよい。プロセッサ111は、ハードディスク113に保存された各種のプログラムをメモリ112に展開して実行する。プロセッサ111は、通信部115を介して、ネットワークNWに接続する。
【0031】
メモリ112は、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置である。メモリ112は、ハードディスク113から読み出されたプログラムに加えて、当該プログラムの実行に必要なデータ、およびプログラムの実行結果を一時的に保持する。
【0032】
ハードディスク113は、不揮発性の記憶装置である。ハードディスク113には、ダニ増殖予測プログラムPgが保存されている。ダニ増殖予測プログラムPgを実行するプロセッサ111によって、サーバ100の各機能が実現される。ハードディスク113には、OS(Operating System)、学習済みの機械学習モデル、あるいは各アプリケーションの設定値などが格納されてもよい。なお、ハードディスク113に加えて、あるいは、ハードディスク113に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置が使用されてもよい。
【0033】
入出力部114は、ユーザからの操作を受けて当該操作に対応する信号をプロセッサ111に送信する。入出力部114は、マウス、キーボード、およびタッチパネルを含む。
【0034】
表示部116は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、またはその他の表示機器を含む。表示部116は、不図示のタッチセンサと組み合わされてタッチパネルとして構成されてもよい。表示部116には、各種アプリケーションのGUI(Graphical User Interface)が表示される。
【0035】
図4は、図3のダニ増殖予測レベルの計算処理S110の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示される処理は、サーバ100を統合的に制御する不図示のメインルーチンから呼び出される。以下では、図4に示される処理が24時間間隔で実行される場合について説明する。
【0036】
図4に示されるように、プロセッサ111は、S111において、ダニ匹数をデータベース120から取得する(S111A)ともに、環境センサ200によって特定空間Semの空気状態データを取得して(S111B)、処理をS112に進める。S111A,S111Bは、並行して行われてもよいし、逐次に行われてもよい。プロセッサ111は、S112において、ダニ増殖予測レベルを算出して、処理をS113に進める。プロセッサ111は、S113において、ダニ増殖予測レベルをデータベースに保存して、処理をS114に進める。プロセッサ111は、S114において、ダニ増殖予測レベル、およびダニ増殖予測レベルに対応するダニ対策を端末装置400に送信し、処理をS115に進める。プロセッサ111は、S115において、APIによって公開されるダニ増殖情報(たとえばダニ増殖予測レベルの平均値)を更新し、処理をメインルーチンに返す。
【0037】
以下では、S112において算出されるダニ増殖予測レベルの計算処理の一例を説明する。まず、プロセッサ111は、以下の式(1)に基づいてダニ匹数の変化率Xrを算出する。
【0038】
【数1】
【0039】
式(1)においてXは、ダニ匹数の基準計測期間(たとえば14日以上の期間)の間、ダニ計測ユニット300のダニ目視キット230を特定空間Semに設置した場合に計測されたダニ匹数である。Xは、基準期間に単位期間(たとえば1日)を加えた期間の間、ダニ目視キット230を特定空間Semに設置した場合に計測されたダニ匹数である。
【0040】
次に、プロセッサ111は、以下の式(2)に基づいて、特定空間Semに関する基準時間間隔(たとえば24時間)のうち、特定空間Semにおいてダニの増殖を促進する条件が成立した時間間隔の割合Rsを算出する。
【0041】
【数2】
【0042】
Nsは、特定空間Semの空気状態データを基準時間間隔において取得するタイミングの総数である。たとえば、基準時間間隔が24時間であり、空気状態データの取得間隔が1時間である場合、Nsは24となる。Nsiは、基準時間間隔において取得された特定空間Semの複数の空気状態データのうち、特定空間Semの温度が繁殖温度範囲(たとえば20℃より高く35℃より低い温度範囲)に含まれ、かつ特定空間Semの湿度が繁殖湿度範囲(たとえば60%Rhより高く95%Rhより低い湿度範囲)に含まれる空気状態データの数である。繁殖温度範囲および繁殖湿度範囲は、それぞれ、ダニの生育が促進される温度範囲および湿度範囲である。
【0043】
次に、プロセッサ111は、以下の式(3)に基づいて、外気に関する基準時間間隔(たとえば1週間)のうち、外気の空気状態データにおいてダニの増殖を促進する条件が成立した時間間隔の割合Rwを算出する。
【0044】
【数3】
【0045】
Nwは、外気の空気状態データを基準時間間隔において取得するタイミングの総数である。たとえば、基準時間間隔が1週間であり、空気状態データの取得間隔が1日である場合、Nwは7となる。Nwiは、基準時間間隔において取得された外気の複数の空気状態データのうち、特定空間Semの温度が繁殖温度範囲(たとえば最低気温が20℃より高く、かつ最高気温が35℃より低い温度範囲)に含まれ、かつ特定空間Semの湿度が繁殖湿度範囲(たとえば60%Rhより高く95%Rhより低い湿度範囲)に含まれる空気状態データの数である。
【0046】
次に、プロセッサ111は、式(1)の変化率Xr、式(2)の割合Rs、式(3)のRw、および掃除頻度係数Cfを用いて、以下の式(4)からダニ増殖予測値Mpを算出する。
【0047】
【数4】
【0048】
式(4)において、dXr/dtは、ダニ匹数の変化率Xrの時間微分値(ダニ匹数の時間変化に関する値)である。αは、ダニ増殖予測値Mpを調整するための係数である。住宅性能係数Hp(断熱性能に関する情報)は、居住空間Lsの断熱性能が高いほど、特定空間Semにおいてダニが繁殖しに易くなることをダニ増殖予測値Mpに反映させるための係数である。住宅性能係数Hpは、端末装置400から取得された特定空間Semの断熱性能と正の相関となるように設定される。掃除頻度係数Cfは、特定空間Semにおける掃除頻度が多いほど特定空間Semにおいてダニが繁殖しにくくなることをダニ増殖予測値Mpに反映させるための係数である。掃除頻度係数Cfは、端末装置400から取得された特定空間Semの掃除頻度と逆相関となるように、たとえば以下の表1のように設定される。
【0049】
【表1】
【0050】
なお、掃除頻度係数Cf、住宅性能係数Hp、および係数αの各々は、式(4)に含まれていなくともよい。
【0051】
プロセッサ111は、ダニ増殖予測値Mpに基づいて、たとえば以下の表2のようにダニの増殖の程度を表す特定値としてダニ増殖予測レベルを決定し、端末装置400に送信する。
【0052】
【表2】
【0053】
なお、表2においてはダニ増殖予測レベルが5段階の場合が示されているが、ダニ増殖予測レベルは、4段階以下でもよいし、6段階以上であってもよい。また、ダニ増殖予測レベルに加えて、または替えて、ダニ増殖予測値Mpが端末装置400に送信されてもよい。さらに、ダニ増殖予測値Mpの算出にあたっては、変化率Xr、式(3)のRw、および掃除頻度係数Cfを用いずに、式(1)の変化率Xrおよび式(2)の割合Rsからダニ増殖予測値Mpが求められてもよい。
【0054】
図5は、図1のダニ計測ユニット300の画面311の一例を示す図である。図5に示されるように、ダニ計測ユニット300によって取得された画像に含まれるダニの匹数が、画面311に表示される。なお、ダニ計測ユニット300による撮像は、撮像日が互いに異なる2つの画像の解析結果の比較を正確に行うために、同時刻に同じ角度で行われることが望ましい。ダニ計測ユニット300によって取得された画像は、サーバ100に送信され、情報処理装置110によって当該画像の分析およびダニの匹数の算出が行われてもよい。また、ダニの匹数の算出にあたっては、学習済みのAI(Artificial Intelligence)モデル(機械学習モデル)が用いられてもよい。
【0055】
以上、実施の形態に係るダニの増殖を予測するシステム、プログラム、および方法によれば、ダニ増殖予測の精度を向上させることができる。
【0056】
[付記]
上記に説明した本発明に係る実施の形態は、以下のような構成を含む。
【0057】
<構成1>
ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するシステムであって、
前記居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む第1空気状態データを取得する環境センサと、
前記特定空間における前記ダニの匹数を計測するダニ計測ユニットと、
前記第1空気状態データおよび前記匹数に基づいて、前記特定空間における前記ダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力するサーバとを備える、システム。
【0058】
<構成2>
前記サーバは、前記ネットワークを介して前記居住空間の外部の空気の第2温度および第2湿度の少なくとも1つを含む第2空気状態データを取得し、前記第1空気状態データ、前記第2空気状態データ、および前記匹数に基づいて、前記特定情報を算出する、構成1に記載のシステム。
【0059】
<構成3>
前記第1空気状態データは、前記第1温度および前記第1湿度を含み、
前記第2空気状態データは、前記第2温度および前記第2湿度を含み、
前記サーバは、
基準時間間隔において、前記第1温度が特定温度範囲に含まれ、かつ前記第1湿度が特定湿度範囲に含まれる時間間隔の前記基準時間間隔に対する第1割合を算出し、
前記基準時間間隔において、前記第2温度が前記特定温度範囲に含まれ、かつ前記第2湿度が前記特定湿度範囲に含まれる時間間隔の前記基準時間間隔に対する第2割合を算出し、
前記匹数の時間変化に関する値、前記第1割合、および前記第2割合に基づいて、前記特定情報を算出する、構成2に記載のシステム。
【0060】
<構成4>
前記特定温度範囲は、20℃より高く、かつ35℃より低い温度範囲であり、
前記特定湿度範囲は、60%Rhより高く、かつ95%Rhより低い湿度範囲である、構成3に記載のシステム。
【0061】
<構成5>
前記特定情報は、前記ダニの増殖の程度を表す特定値を含み、
前記サーバは、前記端末装置から前記特定空間の掃除頻度に関する情報を取得し、前記掃除頻度と逆相関となるように前記特定値を算出する、構成1~4のいずれか1つに記載のシステム。
【0062】
<構成6>
前記特定情報は、前記ダニの増殖の程度を表す特定値を含み、
前記サーバは、前記端末装置から前記特定空間の断熱性能に関する情報を取得し、前記断熱性能と正の相関となるように前記特定値を算出する、構成1~5のいずれか1つに記載のシステム。
【0063】
<構成7>
前記サーバは、前記特定情報をAPI(Application Programming Interface)を介して外部装置に公開する、構成1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【0064】
<構成8>
ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するためのプログラムであって、
前記プログラムは、プロセッサに実行されることによって、
前記居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む空気状態データを取得し、
前記特定空間における前記ダニの匹数を取得し、
前記空気状態データおよび前記匹数に基づいて、前記特定空間における前記ダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力する、プログラム。
【0065】
<構成9>
ネットワークを介して取得したデータから、人の居住空間におけるダニの増殖を予測するための方法であって、
前記居住空間に含まれる物によって形成される特定空間の第1温度および第1湿度の少なくとも1つを含む空気状態データを取得するステップと、
前記特定空間における前記ダニの匹数を計測するステップと、
前記空気状態データおよび前記匹数に基づいて、前記特定空間における前記ダニの増殖に関する特定情報を端末装置に出力するステップとを含む、方法。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 ダニ増殖予測システム、100 サーバ、110 情報処理装置、111 プロセッサ、112 メモリ、113 ハードディスク、114 入出力部、115 通信部、116 表示部、120 データベース、150 バス、200 環境センサ、300 ダニ計測ユニット、311 画面、400 端末装置、500 気象データサーバ、600 外部装置、Ls 居住空間、Mt 物、NW ネットワーク、Pg ダニ増殖予測プログラム、Sem 特定空間、Us ユーザ。
図1
図2
図3
図4
図5