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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】汚れ防止シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/44 20060101AFI20241113BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61F5/44 H
A61F13/47
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024059819
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523480118
【氏名又は名称】田中 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-045821(JP,A)
【文献】特表2003-524441(JP,A)
【文献】特開平08-117261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0045843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F5/44
A61F13/00-13/02
A61F13/15-13/84
A61M1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オムツ着用者の身体の便汚れを防止する汚れ防止シートであって、前記身体側となる内側面及びその反対側の外側面を有する基材、前記基材の前記内側面の全部又は一部に粘着剤が積層された粘着層、前記粘着層の周囲又は前記基材の周囲の少なくとも一部に形成された非粘着性のピックアップ部及び前記粘着層を前記内側面において被覆する剥離紙とからなり、前記基材及び前記粘着層を前記内側面から前記外側面にかけて貫通するように形成された排便孔又は前記排便孔と排尿孔を有し、且つ前記排便孔が、X字状やこれを基本とした放射線状の線状切込みや十字状やこれを基本とした横断線が複数の線状切込み又は前記線状切込みと開孔の組み合わせから成り、前記粘着層により前記排便孔が肛門に当接するように貼り付けることで、前記排便孔が排便時の肛門の動きに追従するようにした汚れ防止シート。
【請求項2】
前記基材が、不織布、織布、ニット、紙、非透水性フィルム又はエラストマーフィルムである請求項記載の汚れ防止シート。
【請求項3】
前記排尿孔は排尿管が貫通可能である請求項記載の汚れ防止シート。
【請求項4】
前記排便孔の前記外側面に便収容袋を有する請求項記載の汚れ防止シート。
【請求項5】
前記内側面の一部にさらにトップシートが積層された請求項記載の汚れ防止シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オムツ着用者の身体の便汚れを防止する汚れ防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
介護用オムツとして、使い捨てのオムツが多用されている。介護用使い捨てオムツは、パンツタイプや巻き付けタイプなどが一般的であるが、介護用使い捨てオムツの着用者から排泄される便は、着用者の身体側のオムツ内部で受けられて、その全部または大部分が着用者の身体とオムツとの間に溜め置かれる。この溜め置かれた排泄便によって着用者の身体の特に陰部や臀裂部は汚れてしまう。また、大便排泄後におけるオムツ替えの作業時には、その介護作業者の手などが、オムツ内に溜め置かれた排泄便によって汚れてしまう場合がある。このような問題を解決するために、着用者の臀裂部に当接可能であり、且つ、排泄便を受け入れ収容する便収容部や大便溜め袋をオムツ内部に設けたオムツに関する技術が、例えば下記の特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6959470号公報
【文献】特開2001-29378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オムツ内部に便収容部や便溜め袋を取り付けた場合でも、便が収容部等にきれいに導入される訳ではなく、また、便が収容部等から逆流することもあり、オムツの着用者の身体の便による汚れを必ずしも十分低減出来なかった。
【0005】
本発明の目的は、オムツの着用者本人(以下、単に「着用者」ということがある。)の排泄便による身体の汚れを低減し、着用者の介護作業者(以下、単に「介護者」ということがある。)の介護用オムツの交換処理手数を減らして容易にし、更に着用者の陰部などの便汚れによる雑菌などに起因する感染症を極力低減できる汚れ防止シートを提供することである。すなわち、本発明は着用者の陰部や臀部の便汚れを低減し、オムツの使い心地の良さ、交換のし易さ、更に衛生面などの利便性を兼ね揃えている汚れ防止シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オムツ着用者の身体の便汚れを防止する汚れ防止シートであって、前記身体側となる内側面及びその反対側の外側面を有する基材、前記基材の前記内側面の全部又は一部に積層された粘着層、前記粘着層の周囲又は前記基材の周囲の少なくとも一部に形成された非粘着性のピックアップ部及び前記粘着層を前記内側面において被覆する剥離紙とからなることを特徴とする汚れ防止シートである。
【0007】
本発明は、また、前記基材及び前記粘着層を前記内側面から前記外側面にかけて貫通するように形成された排尿孔又は排便孔を有する汚れ防止シートである。
【0008】
本発明は、さらに、前記排尿孔又は排便孔が、線状切込み、開孔又は線状切込みと開孔の組み合わせから成る汚れ防止シートである。
【0009】
本発明は、さらにまた、前記排尿孔は排尿管が貫通可能である汚れ防止シートである。
【0010】
本発明は前記基材が、不織布、織布、ニット、紙、非透水性フィルム又はエラストマーフィルムである汚れ防止シートである。
【0011】
本発明は、別の態様として、前記排便孔の前記外側面に便収容袋を有する汚れ防止シートである。
【0012】
本発明は、また別の態様として、前記内側面の一部にさらにトップシートが積層された汚れ防止シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の汚れ防止シートによれば、オムツ着用者の排便や排尿による陰部や臀裂部の汚れを最小限にできることから、オムツ着用者のオムツ使用時の不快感の低減や介護者のオムツ交換処理手数を減らし、オムツ着用者や介護者の精神的、肉体的負担を軽減することができる。更に便汚れに起因した陰部の雑菌などによる感染症を起こす恐れを低減し、オムツ交換時に於ける陰部の湯洗による洗浄作業を簡素化でき、介護事業に於ける衛生管理を容易にするとともに、感染症の予防にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の汚れ防止シート(A)の平面図であって、剥離紙と粘着層の一部をそれぞれ剥離及び除去した場合の当該シートの積層構造を示す。
図2】本発明の汚れ防止シート(A)の剥離紙を全部剥がした状態を示す平面図である。
図3】本発明の汚れ防止シート(A)の底面図である。
図4】本発明の汚れ防止シート(A)の図1のD-D線における断面図である。
図5】本発明の汚れ防止シート(B)の平面図であり、特にピックアップ部を基材の周囲に形成した例を示す。
図6】本発明の汚れ防止シート(B)の剥離紙を全部剥がした状態を示す平面図である。
図7】本発明の汚れ防止シート(B)の底面図である。
図8】本発明の汚れ防止シート(B)の図5のE-E線における断面図である。
図9】本発明の汚れ防止シート(C)の平面図である。
図10】本発明の汚れ防止シート(C)の剥離紙を全部剥がした状態を示す平面図である。
図11】本発明の汚れ防止シート(C)の底面図である。
図12】本発明の汚れ防止シート(C)の図9のF-F線における断面図である。
図13】排尿孔及び排便孔の実施形態の例を示す図である。
図14】本発明の汚れ防止シート(A)の着用例を示す図である。
図15】本発明の汚れ防止シート(B)又は(C)の着用例を示す図である。
図16】本発明の汚れ防止シート(B)又は(C)の着用例を示す図である。
図17】本発明の汚れ防止シート(B)又は(C)の着用例を示す図である。
図18】本発明の汚れ防止シート(B)の排尿孔(線状切込みの場合の例)及び排便孔(開孔の場合の例)にそれぞれ排尿管及び便収容袋を取り付けた状態を示す斜視図である。
図19図18のα-α線における断面図を示す図である。
図20図18のβ-β線における断面図を示す図である。
図21】本発明の汚れ防止シート(B)の排便孔(開孔の場合の例)に便収容袋を基材と一体になるように取り付けた状態を示す断面図である。
図22】本発明の汚れ防止シート(B)の排尿孔(開孔の場合の例)に排尿管を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
なお、これらの実施形態はあくまでも説明の為に便宜的に示す例に過ぎず、本発明はいかなる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の汚れ防止シート(以下、単に「タイプA」ということがある。)の平面図であり、剥離紙と粘着層の一部をそれぞれ剥離及び除去した場合の当該シートの積層構造を示し、図4はそのような積層構造の断面を示す。
【0017】
図1図2図3及び図4に示すように、本発明の汚れ防止シート(タイプA)は、オムツ着用者の身体に触れる内側面及びその反対側となる外側面を有する基材、前記基材の前記内側面の全部または一部に積層された粘着層、前記粘着層の周囲の少なくとも一部に形成された非粘着性のピックアップ部及び前記粘着層を前記内側面において被覆する剥離紙とから構成される。
【0018】
本発明における基材は不織布、織布、ニット、紙、非透水性フィルム又はエラストマーフィルムが使用できる。それらの内でも、伸縮性に優れる不織布、織布、ニット又はエラストマーフィルムが好適に使用できる。
【0019】
不織布、織布又はニットの材料としては、天然繊維や合成繊維が使用できるが、自然界で分解可能な天然繊維を使用するのがより良い。撥水化工処理した紙や生分解性プラスチックなどの自然分解される素材も活用できる。
【0020】
非透水性フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他の高分子材料が好適に使用できる。
【0021】
エラストマーフィルムとしては伸縮性の天然又は合成ゴムをシートやフィルム状にしたものが使用でき、特に伸縮性、引張強度及び安全性等に優れる天然ゴムラテックス、水系又は溶剤系ポリウレタン又はポリイソプレン等のゴムが好適に使用できる。
【0022】
基材の外周輪郭形状は矩形が最も入手しやすく、生産時に発生する廃棄ロスも少ないので生産に適している。しかしながら、着用者の陰部や臀裂部等の身体の形状に合わせて、使用時に粘着固定し易くしたり、粘着部分が剥がれ難くする又は着用時のフィット感を改善する等のために、長尺中央部分が縊れた瓢箪形の形状など、本発明の目的を達成できる範囲で、必要に応じて様々な形状にして差し支えない。
【0023】
基材の大きさは、タイプAはその外形寸法において縦約200mm、横約200mmで、タイプB及びタイプCは外形寸法において縦約300mm、横約200mmが適当であるが、着用者の体格なども考慮して適宜変更することができる。
【0024】
本発明の粘着層は、基材に粘着剤を積層したものであり、基材の内側面の全部又は一部に積層される。
【0025】
粘着剤としては、ウレタンゲル、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びハイドロコロイドなどが例示されるがこれらに限定されない。
【0026】
剥離紙(3)は、本発明の汚れ防止シートを保管しておくときに粘着面(2)の表面を被覆しておくもので、粘着部分の劣化や汚れの付着を防止する役割を果たすとともに、使用する際にはこれを剥がして着用者の体に貼り付ける。
【0027】
ピックアップ部(4)は粘着剤が塗布されておらず、本発明の汚れ防止シートを使用後に着用者の身体から粘着層を剥がして取り外す際に、このピックアップ部(4)を摘まんで引っ張ることにより作業が容易になるようにしている。言い換えると、着用者の身体に粘着した粘着層(2)を直接に指先や爪などで剥そうとすると着用者の肌を傷付ける恐れがあるが、ピックアップ部(4)によりそのような不都合を防ぐことができる。
【0028】
ピックアップ部(4)は所定の幅と厚みを有する必要がある。幅としては約2mm~約10mm程度あれば良く、約3mm~約5mmの幅が好適である。厚みとしては、着用者が装着時に違和感を覚えない程度になるべく薄いほうがよい。ピックアップ部(4)の形状は、単一箇所として連続的に設置しても、複数箇所として非連続的に設置しても良く、幅も一定でも一定でなくても良い。使用済みの汚れ防止シートをなるべく簡単に剥がし易く工夫して設置することが重要である。
【0029】
ピックアップ部(4)は粘着層の周囲又は基材の周囲の少なくとも一部に形成された非粘着性の部材又は部分である。図2及び図10は、粘着層の周囲に複数のピックアップ部を形成した例を示し、図6は、基材の周囲に複数のピックアップ部を形成した例を示す。
【0030】
粘着層の周囲にピックアップ部を形成する場合、その形成部分に粘着剤を塗布しないようにするかあるいはその形成部分の粘着層に非粘着性の小部材を貼り付ける等して形成することができる。
【0031】
また、基材の周囲にピックアップ部を形成する場合、例えば基材周囲に予めピックアップとする部分を形成しておき、その部分を避けて粘着剤を塗布するようにすることで比較的簡単に形成することができる。またはピックアップとする少なくとも一つの小部材を基材周囲に接着や融着により固定することで形成することもできる。
【0032】
ピックアップ部(4)は、柔軟性を有する材料から成る。ピックアップ部(4)用の柔軟性材料としては、例えば、紙素材、ゴム系素材、スポンジ材、これら以外にも樹脂材料が例示される。紙素材としてはある程度の柔軟性と耐水性があるものが好適に使用できる。ゴム系素材としては、例えばシリコーンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、及びエチレンエチレンプロピレンゴムが挙げられ、スポンジ材としては、例えばセルローススポンジ、ポリウレタンスポンジ、及びメラミンスポンジが挙げられる。上記樹脂材料しては、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、及び軟質塩化ビニール樹脂が挙げられる。
【0033】
また、図5及び図8は本発明の異なる実施形態の汚れ防止シート(以下、単に「タイプB」ということがある。)の平面図と断面図をそれぞれ示す。
【0034】
図5図6図7及び図8に示すように、本発明の汚れ防止シート(タイプB)は、本発明の汚れ防止シート(タイプA)において、さらに基材及び粘着層を内側面から外側面にかけて貫通するように形成された排尿孔又は排便孔を有する構成である。
【0035】
さらに、図9及び図12は本発明のまた別の異なる実施形態の汚れ防止シート(以下、単に「タイプC」ということがある。)の平面図と断面図をそれぞれ示す。
【0036】
図9図10図11及び図12に示すように、本発明の汚れ防止シート(タイプC)は、本発明の汚れ防止シート(タイプB)において、さらに排尿孔の周辺にトップシートを備えた構成である。
【0037】
ここで、トップシート(7)とは、特に着用者が女性の場合に性器等の陰部を衛生的に保護し感染症のリスクを低減したり、汚れ防止シートの使い心地を良くするためのものである。すなわち、汚れ防止シートの粘着面が、特にデリケートな性器等の陰部に直接接触するのを回避するとともに、直接肌に接する部分を低刺激性としあるいは水透過性とすることで乾燥状態を担保させること等で、着用者の使い心地の良さを向上させる。したがってまた、本発明の汚れ防止シート(タイプA)において、オムツ着用者の性器等の陰部に当接する部分にトップシートを備える構成もあり得る。
【0038】
トップシート(7)の素材としては、例えば、不織布、織布、メッシュシート、紙及び、液透過孔の形成されたプラスチックフィルムが、挙げられる。
【0039】
トップシート用素材の不織布や織布をなすための繊維は、好ましくは、親水性繊維、又は、界面活性剤での表面処理によって表面の親水化が図られた疎水性繊維とする。
【0040】
また、トップシート用素材の不織布や織布を成す為の繊維の構成材料としては、たとえば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セルロース、レーヨン、及びコットンが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレンが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートがあげられる。
【0041】
図14は、本発明の汚れ防止シート(タイプA)の着用例を示す。
本発明の汚れ防止シート(タイプA)は、オムツ着用者の排便による身体の汚れを防止する場合、特に女性の性器等の陰部とその周辺に粘着層を押し付けて貼り付け被覆することで、陰部の便汚れを防止する。本発明の汚れ防止シートのタイプBやタイプCと比較するとシンプルな構成で、その使用方法においては。オムツ着用者の肛門やその周辺の臀裂部は被覆しないという特徴がある。
【0042】
図15図16及び図17は、本発明の汚れ防止シート(タイプB又はタイプC)の着用例を示す。排尿孔及び排便孔がそれぞれ性器及び肛門に当接するように、性器及び肛門並びにその周辺部に粘着層を押し付け、貼り付け被覆して使用する。
【0043】
本発明の汚れ防止シートのタイプB及びタイプCは、排尿孔又は排便孔のいずれか一つ又はその両方を有するので、オムツ着用者はオムツの中に排尿及び排便をすることができる。オムツ着用者の体外に排出された尿はオムツの吸水システムにより吸収され、また排出された大便はオムツの内側スペースに収容保持される。このような場合、性器等の陰部とその周辺並びに肛門とその周辺の臀裂部に粘着層を押し付けて貼り付け被覆することで、陰部や臀裂部の便汚れを防止又は低減する。
【0044】
図13は排尿孔及び排便孔を形成する場合の、線状切り込みや開孔並びにその両方を組み合わせたものの具体的な例を示す。
線状切込みは十字状、X字状、それらに更に複数の斜線や横断線等を組み合わせた形が考えられる。
開孔の形としては、円形、楕円形又は多角形が考えられる。
【0045】
線状切込みの場合、X字状やこれを基本とした放射線状の線状切込みや十字状やこれを基本とした横断線が複数の線状切込みとする。これらの中でも、特にX字のように、縦の切込み線が無いものが、排便時の臀部や性器やその周辺への広がりをより少なくする上で好ましい。
【0046】
なお、線状切込みの場合、切込み中心部等に鋭角又は直角の先端が生じてオムツ着用者の皮膚や粘膜等に痛みが感じられるような場合には、そのような先端部分が円形や多角形状になるように切断除去することで、改善することができる。
すなわち、この場合、線状切込みと開孔を組み合わせた形となり、使用者の使用感を改善したり、排便をし易くすることができる。
【0047】
排便孔の大きさについて、大人の大便の最大直径(約35mm)を考慮して決めるのが良い。排便孔を開孔とする場合も同様である。
なお、基材を伸縮性のあるものとした場合、上記大人の大便の最大径より小さくしても良い。肛門やその周辺への便の広がりを少なくする為にもなるべく小さい方が望ましく、具体的には開口部の直径が約30mm以下であることが好ましい。
【0048】
排便孔の中心部に開孔を設ける場合、汚れ防止シートを交換するときに、着用者の肛門付近が便で少し汚れることになる。そのために便で汚れた部分を拭き取りや湯洗浄するなどの処置が必要になる。しかしながら、そのような開孔を設けない場合にもほぼ同様の処置は必要であり、さほど不都合なことではないと言える。さらに言えば、汚れ防止シートを着用しない場合の着用者の身体の便汚れはそれを着用した場合に比べて甚だしいので、拭き取りや湯洗浄処置の作業は大きく軽減される。その結果として衛生管理もし易くなる。
【0049】
排便孔は、着用者が排便するときに、それを通して排便をオムツ内に導く事が主な役割だが、一旦汚れ防止シートの外側面に出た便が逆戻りしてくるのを防止するという重要な機能を有する。それに依って結果的に着用者の陰部や臀裂部が便で汚れるのを防ぎ、衛生的に保護する。
【0050】
そのために、排便孔の内側面には粘着層が設けてあり、この粘着層により排便孔が肛門に当接するように貼り付けることで、排便孔が排便時の肛門の動きに追従することができるようになり、排便の時には開いた状態となり、排便完了すると肛門の動きに追従して閉じた元の状態に戻る。
【0051】
排尿孔の大きさについては、排便孔の最小開口直径より小さくてもよく、尿が汚れ防止シート内側面から外側面のオムツ内部にスムーズに移行できれば特に大きさや形状は制限されない。また、排尿孔は一つを一か所に又は複数を異なる別々の箇所に分けて設置しても良い。
【0052】
本発明の汚れ防止シートタイプB又はタイプCにおいて、排尿孔(5)は、必要に応じて排尿管(8)や排尿カテーテルを通す穴として利用することができる。
【0053】
排尿孔(5)が線状切込みの場合、図20に示すように、排尿管(8)等を汚れ防止シートの粘着層(2)がある内側面から外側面に押し出すようにし、身体に触れる排尿管(8)の部分が粘着剤等で汚染されないようにして利用するのが良い。
【0054】
また、排尿孔(5)が開孔の場合、図22に示すように、開孔の直径を排尿管(8)等の直径に合わせることもできる。
【0055】
本発明の汚れ防止シートタイプB又はタイプCにおいて、排便孔には、必要に応じて便収容袋(9)を取り付けることもできる。
【0056】
便収容袋(9)を構成する材料としては、紙、天然及び合成繊維若しくはそれらを撥水加工したもの、プラスチック、生分解性プラスチック及びエラストマーが使用できるがこれらに限定されない。着用者の使い心地の良さや使用時の違和感の低減等のためには特に伸縮性に優れるエラストマーフィルムが適している。そのようなエラストマーフィルムとしては天然又は合成ゴムをシートやフィルム状にしたものが使用でき、特に伸縮性、引張強度及び安全性等に優れる天然ゴムラテックス、水系又は溶剤系ポリウレタン又はポリイソプレン等のゴムが好適である。
【0057】
便収容袋(9)の取付方法としては、図19に示すような便収容袋固定片(9a)を有する袋体を別途準備し、その袋部分を汚れ防止シートの内側面から外側面に押し出すようにして、最後便収容袋固定片(9a)を排便孔(6)の開孔周辺の粘着層に粘着固定したり、図21に示すように、便収容袋(9)を基材(1)に接着固定したり、便収容袋(9)と基材(1)とを一体成型したものを使用する方法が考えられる。
【0058】
以上述べた通り、本発明の汚れ防止シートによれば、着用者の性器等の陰部を衛生的に保護して便汚れに起因した感染症を予防するのに役立つ。また介護者によるオムツ替えの際のオムツ着用者の身体の便汚れの拭き取りや湯洗浄作業を簡便にし、オムツ交換作業の処置手数を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
符号
A 汚れ防止シート
B 排尿孔及び排便孔を有する汚れ防止シート
C トップシート付きの排尿孔及び排便孔を有する汚れ防止シート
1 基材
2 粘着層
3 剥離紙
4 ピックアップ部
5 排尿孔
6 排便孔
7 トップシート
8 排尿管
9 便収容袋
9a便収容袋固定片
10 肛門
h、i、j、m、n 線状切込み
k、l 線状切込みと開孔の組み合わせ
o 開孔
D-D 図1の断面矢視方向を示す。
E-E 図5の断面矢視方向を示す。
F-F 図9の断面矢視方向を示す。
α-α 図18の断面矢視方向を示す。
β-β 図18の断面矢視方向を示す。
【要約】
【課題】オムツ着用者の排便による身体の汚れを低減し、介護者のオムツ交換処理手数を減らすと共に、更に感染症予防にもつながる汚れ防止シートを提供する。
【解決手段】オムツ着用者の身体側となる内側面及びその反対側の外側面を有する基材、前記基材の前記内側面の全部又は一部に積層された粘着層、前記粘着層の周囲又は前記基材の周囲の少なくとも一部に形成された非粘着性のピックアップ部及び前記粘着層を前記内側面において被覆する剥離紙とからなることを特徴とする汚れ防止シートとする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22