(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】小型生体情報計測デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2024150405
(22)【出願日】2024-09-01
【審査請求日】2024-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523458531
【氏名又は名称】WhiteLab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英之
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-188032(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080183(WO,A1)
【文献】特開2017-158864(JP,A)
【文献】特開2012-095827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光、熱、振動のいずれかにより発電する発電部と、一次電池と、前記発電部の供給電圧が入力するコンパレータと、前記一次電池の電力供給を切り換える一次電池供給切換部と、を有する電力供給部と、
生体活動に関する情報を取得する生体センサと、前記生体センサによって取得された情報を送信する送信部と、を有し、前記電力供給部からの電力により駆動する生体情報取得送信部と、を有し、
前記コンパレータは、前記供給電圧に応じて前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給および供給停止を切り換えるとともに、前記コンパレータによる前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給状態に関する信号を第1端子から出力し、
前記一次電池供給切換部は、前記第1端子からの信号が入力し、前記第1端子からの信号に応じて前記一次電池から前記生体情報取得送信部への電力の供給および供給停止を切り換える小型生体情報計測デバイス。
【請求項2】
前記発電部は、光を受光して発電する光発電パネルを有する請求項1に記載の小型生体情報計測デバイス。
【請求項3】
前記生体センサは、温度センサ、体動センサ、SpO
2センサ、心拍センサ、血圧センサのいずれかを有する請求項1に記載の小型生体情報計測デバイス。
【請求項4】
前記コンパレータは、前記供給電圧が第1所定値以上に上昇した場合に前記発電部から前記生体情報取得送信部へ電力供給を開始させ、前記供給電圧
が第2所定値以下に下降した場合に前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力供給を停止させ、
前記一次電池供給切換部は、前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給が停止していることを示す信号を前記第1端子の出力から所定時間連続して得た場合に、前記一次電池から前記生体情報取得送信部へ電力を供給させ、前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給を行っていることを示す信号を前記第1端子の出力から得た場合に、前記一次電池から前記生体情報取得送信部への電力供給を停止させる請求項1に記載の小型生体情報計測デバイス。
【請求項5】
前記コンパレータの前記第1端子は、前記コンパレータによる前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給を行っている場合は「High」の信号を出力し、前記コンパレータによる前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力供給が停止している場合は「Low」の信号を出力するPGOOD端子であり、
前記PGOOD端子の出力を論理反転させるロジックインバータをさらに有し、
前記一次電池供給切換部は、前記一次電池と前記生体情報取得送信部との間に配置され、前記ロジックインバータによって論理反転された前記PGOOD端子の出力が入力されることでON/OFFを切り換えるDCDCコンバータを有する請求項4に記載の小型生体情報計測デバイス。
【請求項6】
開口が形成された収容部を有する不透明の本体部と、前記開口を封止するように前記本体部に固定される透明の蓋部と、を有する筐体部を有し、
前記電力供給部および前記生体情報取得送信部は、前記収容部に収容してある請求項1に記載の小型生体情報計測デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に装着して用いる小型生体情報計測デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生体に装着して用い、装着対象の体温や血中酸素濃度、体の動きなどの生体情報を測定し、測定結果をスマートフォンなどに通信する各種の小型生体情報計測デバイスが提案されている。たとえば、指輪型のスマートリングや、体に貼り付けて用いるものなど、小型で装着対象の活動を阻害しないものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、上述のような小型生体情報計測デバイスでは、充電しないで長時間の駆動を可能とするものが好ましい。充電しないで長時間の駆動を可能とする電力供給システムとしては、たとえば、電池の電力と発電機構の電力とを併用するものが考えられる(特許文献3等参照)。しかしながら、電力供給の切り換えを機械的な動作を伴うスイッチによって行う従来の切り換え機構は、耐久性や消費電力の点で課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7481775号明細書
【文献】特開2024-049524号公報
【文献】特許平10-155240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされ、耐久性が良好で充電なしで長時間の駆動が可能である小型生体情報計測デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る小型生体情報計測デバイスは、
光、熱、振動のいずれかにより発電する発電部と、一次電池と、前記発電部の供給電圧が入力するコンパレータと、前記一次電池の電力供給を切り換える一次電池供給切換部と、を有する電力供給部と、
生体活動に関する情報を取得する生体センサと、前記生体センサによって取得された情報を送信する送信部と、を有し、前記電力供給部からの電力により駆動する生体情報取得送信部と、を有し、
前記コンパレータは、前記供給電圧に応じて前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給および供給停止を切り換えるとともに、前記コンパレータによる前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給状態に関する信号を第1端子から出力し、
前記一次電池供給切換部は、前記第1端子からの信号が入力し、前記第1端子からの信号に応じて前記一次電池から前記生体情報取得送信部への電力の供給および供給停止を切り換える。
【0007】
本発明に係る小型生体情報計測デバイスは、発電部と一次電池とを併用することで、充電なしで長時間の駆動が可能である小型生体情報計測デバイスを実現することができる。このような小型生体情報計測デバイスは、外部から電気を充電することができる二次電池などを有する必要がないため、シンプルな構造を実現でき、かつ、小型化に対して有利である。さらに、本発明に係る小型生体情報計測デバイスは、第1端子を有するコンパレータと一次電池供給切換部により、機械的な動作を伴うスイッチを用いることなく、シンプルな電子回路により発電部および一次電池の電力供給および供給停止を切り換えることができる。また、第1端子を有するコンパレータおよび第1端子の出力を用いる一次電池供給切換部を有する電子回路は、耐久性が良好であり、かつ、消費電力も抑制できる。
【0008】
また、前記発電部は、光を受光して発電する光発電パネルを有する。
【0009】
発電部が光発電パネルを有することにより、小型生体情報計測デバイスは、所定量の光を受光できる環境にデバイスが置かれれば、一次電池の電力を消費せずに動作できる。したがって、このような小型生体情報計測デバイスは、充電なしで長時間の駆動が可能である。また、一次電池の電圧が低下した後も、所定量の光を受光できる環境にデバイスが置かれていれば動作することができるため、用途によっては、充電なしで極めて長時間使用することも可能である。
【0010】
また、たとえば、前記生体センサは、温度センサ、体動センサ、SpO2センサ、心拍センサ、血圧センサのいずれかを有してもよい。
【0011】
小型生体情報計測デバイスが有するセンサ部としては、特に限定されないが、体温等を計測する温度センサや、加速度や角速度により装着対象の動きを計測する体動センサ、血液による光の吸収を計測するSpO2センサ、血管または血流の脈動または心電を計測する心拍センサ、血管に作用する圧力を計測する血圧センサなどが挙げられる。
【0012】
また、たとえば、前記コンパレータは、前記供給電圧が第1所定値以上に上昇した場合に前記発電部から前記生体情報取得送信部へ電力供給を開始させ、前記供給電圧が前記第2所定値以下に下降した場合に前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力供給を停止させてもよく、
前記一次電池供給切換部は、前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給が停止していることを示す信号を前記第1端子の出力から所定時間連続して得た場合に、前記一次電池から前記生体情報取得送信部へ電力を供給させ、前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給を行っていることを示す信号を前記第1端子の出力から得た場合に、前記一次電池から前記生体情報取得送信部への電力供給を停止させてもよい。
【0013】
このような小型生体情報計測デバイスは、第1および第2所定電圧を基準として、発電部の発電量が多い場合は発電部により電力供給がされ、発電部の発電量が少ない場合は一次電池による電力供給がされることにより、発電量の変動があっても、継続的な動作が可能である。
【0014】
また、たとえば前記コンパレータの前記第1端子は、前記コンパレータによる前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給を行っている場合は「High」の信号を出力し、前記コンパレータによる前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力供給が停止している場合は「Low」の信号を出力するPGOOD端子であり、
前記PGOOD端子の出力を論理反転させるロジックインバータをさらに有し、
前記一次電池供給切換部は、前記一次電池と前記生体情報取得送信部との間に配置され、前記ロジックインバータによって論理反転された前記PGOOD端子の出力が入力されることでON/OFFを切り換えるDCDCコンバータを有してもよい。
【0015】
このような一次電池供給切換部を有する小型生体情報計測デバイスは、コンパレータとの組み合わせにより、個々の部分自体はシンプルで汎用的な部品を用いる回路構成でありながら、低消費電力で信頼性の高い切換回路を実現することができる。
【0016】
また、たとえば、本発明に係る小型生体情報計測デバイスは、開口が形成された収容部を有する不透明の本体部と、前記開口を封止するように前記本体部に固定される透明の蓋部と、を有する筐体部を有してもよく、
前記電力供給部および前記生体情報取得送信部は、前記収容部に収容してあってもよい。
【0017】
このような筐体部は、光を透過する蓋部により収容部内へ光が届くようにするとともに、本体部は不透明とすることで強度やセンサのための機能性を確保することができる。また、収容部内を密閉構造とすることにより、防水性の高い小型生体情報計測デバイスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る小型生体情報計測デバイスの外観図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す小型生体情報計測デバイスの断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す小型生体情報計測デバイスの回路図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す小型生体情報計測デバイスの使用状態を示す使用状態図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る小型生体情報計測デバイスの外観図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す小型生体情報計測デバイスの断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る小型生体情報計測デバイスの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る小型生体情報計測デバイス10の外観図である。
図1に示すように、小型生体情報計測デバイス10は、1円玉大の円盤状(コイン状)の外形状を有する。小型生体情報計測デバイス10の大きさは、直径15~25mm、厚さ2.0~4.0mm程度とすることができ、たとえば
図4に示すように、人の手首などに装着して使用することができる。
【0020】
図2は、
図1に示す小型生体情報計測デバイス10の断面図である。小型生体情報計測デバイス10は、内部に回路基板12等を収容する筐体部50を有する。筐体部50は、開口52bが形成された収容部52aを有する不透明の本体部52と、開口52bを封止するように本体部52に固定される透明の蓋部54とを有する。後述するように、回路基板12には、電力供給部20および生体情報取得送信部40(
図3参照)が実装されており、電力供給部20および生体情報取得送信部40は、収容部52aに収容してある。
【0021】
図1に示すように、小型生体情報計測デバイス10は、光により発電する発電部としての光発電パネル22を有する。光発電パネル22は、いわゆるソーラーパネルや太陽電池と呼ばれる発電素子であり、たとえば、アモルファスシリコン太陽電池や、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池等が挙げられる。なお、小型生体情報計測デバイス10が有する発電部は、光発電パネル22のみには限定されず、熱により発電する熱発電素子(半導体の熱励起電荷を用いる熱発電素子(「半導体増感型熱利用発電」とも言う。)や、振動により発電する圧電素子などを、光発電パネル22に換えて、あるいは光発電パネル22と併せて有してもよい。
【0022】
図1および
図2に示すように、光発電パネル22は、収容部52aにおける最も開口52b側に配置されており、より具体的には、開口52bを封止する蓋部54の直下に配置されている。蓋部54は透明で光を透過するため、収容部52a内の光発電パネル22には筐体部50の外部からの光が蓋部54を介して入射する。したがって、光発電パネル22を有する発電部は、小型生体情報計測デバイス10が蓋部54の側から光を受ける状態になることで、発電を行うことができる。
【0023】
蓋部54の本体部52への固定方法は特に限定されず、たとえば接着、溶接、ネジ止めなどにより、蓋部54を本体部52に対して固定することができる。ただし、蓋部54は、収容部52aが密閉空間となるように、本体部52の開口52bを封止していることが好ましい。後述するように、筐体部50の表面には、充電ための端子のような外部に露出する端子を設ける必要がないことと相まって、小型生体情報計測デバイス10は、光発電パネル22や回路基板12等を収容する収容部52aへの水分の侵入を防止し、小型生体情報計測デバイス10に高い防水性能を持たせることができる。また、小型生体情報計測デバイス10に高い防水性能を持たせることにより、小型生体情報計測デバイス10を装着したままの入浴や水泳が可能になるとともに、小型生体情報計測デバイス10の丸洗いが可能となり、紫外線殺菌やアルコール消毒を行うことも容易となる。
【0024】
蓋部54の材質は特に限定されないが、ガラスや透明樹脂などが挙げられる。本外部52の材質も特に限定されないが、たとえば不透明の樹脂や金属などが挙げられ、また、回路基板12に実装される生体センサ42のタイプによっては、不透明の樹脂、金属などの不透明な材料と併せて、ガラスや透明樹脂などの光を透過する材料が部分的に用いられてもよい。
【0025】
また、本体部52の開口52bの直径は、本体部52の外径の80~99.9%であることが好ましく、90~99.8%であることがさらに好ましい。本体部52の開口52bの直径と本体部52の外形の比率をこのような範囲にすることにより、収容部52aに配置可能な光発電パネル22の受光面積を広く確保しつつ、本体部52の強度を確保することができる。
【0026】
図2に示すように、光発電パネル22は、回路基板12における蓋部54側の面に、直接実装されている。また、回路基板12の蓋部54側の面、蓋部54側とは反対側の面、または回路基板12の内部には、アンテナ48や生体センサ42など、小型生体情報計測デバイス10に含まれる複数のチップが実装されている。回路基板12は、たとえばフレキシブルプリント基板(FPC)や、リジット基板などで構成される。回路基板12の厚さは、たとえば1.0~3.0mm程度とすることができるが、特に限定されない。
【0027】
光発電パネル22の外径は、本体部52の開口52bの直径にほぼ等しいか、本体部52の開口52bの直径よりわずかに小さいことが好ましい。光発電パネル22の厚さは、0.1~0.3mm程度とすることが小型化の観点から好ましいが、特に限定されない。また、光発電パネル22が回路基板12における蓋部54側の面に、直接実装されることにより、回路基板12が光発電パネル22をサポートして補強するとともに、小型生体情報計測デバイス10の薄型化に資する。
【0028】
図3は、
図1および
図2に示す小型生体情報計測デバイス10の回路図である。
図3に示すように、小型生体情報計測デバイス10は、生体センサ22や送信部44等を有する生体情報取得送信部40と、生体情報取得送信部40に電力を供給する電力供給部20と、を有する。
【0029】
電力供給部20は、発電部としての光発電パネル22と、一次電池24と、光発電パネル22を有する発電部の供給電圧が入力するコンパレータ26と、一次電池24の電力供給を切り換える一次電池供給切換部30と、コンデンサと、ダイオード等を有する。
【0030】
図3に示すコンパレータ26は、光発電パネル22からの供給電圧に応じて光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給および供給停止を切り換える。また、コンパレータ26は、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給状態に関する信号を出力する第1端子26aを有する。第1端子26aが出力したコンパレータ26を介する光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給状態に関する信号は、一次電池供給切換部30が有するDCDCコンバータのON/OFFを切り換えるための信号が入力する端子に入力する。
【0031】
コンパレータ26の第1端子26aとしては、コンパレータ26による発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給を行っている場合と、コンパレータ26による発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力供給が停止している場合とで、出力信号を反転させるなど、前者と後者とで異なる信号を出力するものであれば、特に限定されない。第1端子26aからの出力が入力する一次電池供給切換部30の端子としては、コンパレータ26による電力供給/供給停止による出力信号の違いを認識するものであれば、特に限定されない。
【0032】
図7は、第1変形例に係る小型生体情報計測デバイス210の回路図である。
図7に示すように、電力供給部220のコンパレータ226は、たとえばコンパレータ26の出力電圧が一定レベルに達したことを示すパワーグッド出力機能を有するICなどで構成される。コンパレータ226は、光発電パネル22からの供給電圧が第1所定値以上に上昇した場合に、光発電パネル22から生体情報取得送信部40へ電力供給を開始させ、光発電パネル22からの供給電圧が第2所定値以下に下降した場合に、光発電パネル22から生体情報取得送信部への電力供給を停止させる。また、コンパレータ226の第1端子はPGOOD端子226aで構成され、PGOOD端子226aの出力は、コンパレータ226を介する光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給を行っている場合と、コンパレータ226を介する光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給が停止している場合とで異なる。たとえば光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給を行っている場合はPGOOD端子226aの出力は「High」であり、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給が停止している場合はPGOOD端子226aの出力は「Low」である。
【0033】
コンパレータ26、226が生体情報取得送信部40への電力の供給および供給停止を切り換える供給電圧の第1所定値および第2所定値は、光発電パネル22の能力や生体センサ42の消費電力などに応じて異なるが、たとえば1.5~6.0V程度とすることができる。コンパレータ26、226と後述する一次電池供給切換部30とが連動することにより、光発電パネル22を有する発電部の発電量が変動しても、生体情報取得送信部40に対して継続的に電力を供給することができる。
【0034】
コンパレータ26、226が電力供給を開始させる供給電圧の第1所定値と、コンパレータ26、226が電力供給を停止させる供給電圧の第2所定値とは、同じ値であってもよいが、第2所定値を第1所定値に対して5~30%程度低い値としてもよい。第2所定値を、第1の所定値に対して所定の範囲で低い値とすることにより、このようなコンパレータ26は、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給および供給停止の切り換えが、短時間に高頻度で生じてしまうことを防止できる。
【0035】
図3および
図7に示すように、光発電パネル22での発電により生じた電気は、コンパレータ26、226およびダイオードを介して、生体情報取得送信部40へ送られる。
【0036】
図3に示す一次電池24としては、たとえば市販のボタン電池や、円筒型電池や、ピン型電池等の他、市販されていない特殊形状の乾電池などが挙げられる。一次電池24は、ユーザー自身によって交換可能であってもよく、サプライヤー側のサービスによって交換可能であってもよく、交換不可であってもよい。
【0037】
図3に示す一次電池供給切換部30は、第1端子26aからの信号が入力し、第1端子26aからの信号に応じて、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力の供給および供給停止を切り換える。
【0038】
図7に示すように、コンパレータ226と一次電池供給切換部30との間には、ロジックインバータ232が配置されていてもよい。ロジックインバータ232は、PGOOD端子226aの出力を論理反転させる。
【0039】
図3および
図7に示す例では、一次電池供給切換部30は、発電部である光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給が停止していることを示す信号を第1端子26aの出力から所定時間連続して得た場合に、一次電池24から生体情報取得送信部40へ電力を供給させる。たとえば、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給が連続して5~15秒程度停止した場合に、一次電池供給切換部30は、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給を開始させる。一方、発電部である光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給を行っていることを示す信号を第1端子26aの出力から得た場合に、一次電池供給切換部30は、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給を停止させる。なお、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給が連続して所定時間停止した場合に始めて、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給の開始させることは、回路保護の観点で有効である。
【0040】
図3および
図7に示すように、一次電池供給切換部30は、一次電池24と生体情報取得送信部40との間に配置され一次電池24からの電圧が入力するDCDCコンバータ34を有する。DCDCコンバータ34は、DCDCコンバータ34のON/OFFを切り換えるイネーブル端子34aを有し、イネーブル端子34aに「High」の信号が所定時間連続して入力すると、DCDCコンバータ34がONになる。すなわち、DCDCコンバータ34は、イネーブル制御回路を有するICなどで構成される。
【0041】
図7に示す例では、一次電池供給切換部30は、DCDCコンバータ34のイネーブル端子34aに、PGOOD端子226aの出力を論理反転させて入力することで、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給および供給停止を切り換える。たとえば光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力の供給を行っている場合はPGOOD端子226aの出力は「High」であり、ロジックインバータ32は、その出力を「Low」に論理反転させてDCDCコンバータ34のイネーブル端子34aに入力し、一次電池供給切換部30は、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給を停止させる。一方、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力供給が停止している場合はPGOOD端子226aの出力は「Low」であり、ロジックインバータ32は、その出力を「High」に論理反転させてDCDCコンバータ34のイネーブル端子34aに入力し、一次電池供給切換部30は、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給を行わせる。
【0042】
図3および
図7に示すように、一次電池24で蓄えられる電気は、一次電池供給切換部30のDCDCコンバータ34およびダイオードを介して、生体情報取得送信部40へ送られる。
【0043】
このような電力供給部20、220は、発電部である光発電パネル22の発電量が生体情報取得送信部40の動作を行わせるのに十分である場合には、光発電パネル22から生体情報取得送信部40へ電力を供給し、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給を停止させる。また、電力供給部20は、発電部である光発電パネル22の発電量が生体情報取得送信部40の動作を行わせるのに不十分である場合には、光発電パネル22から生体情報取得送信部40への電力供給を停止し、一次電池24から生体情報取得送信部40への電力供給を行う。なお、
図7に示す小型生体情報計測デバイス210が有する電力供給部220は、コンパレータ226の第1端子がPGOOD端子226aであり、DCDCコンバータ34とコンパレータ226との間にロジックインバータ32が追加されている点で
図3に示す電力供給部20とは異なるが、その他の点では電力供給部20と同様である。
【0044】
図3に示すように生体情報取得送信部40は、生体活動に関する情報を取得する生体センサ42と、生体センサ42によって取得された情報を送信する送信部44とを有する。また、生体情報取得送信部40は、生体センサ42や送信部44の動作を制御する制御部46や、生体情報取得送信部40の駆動状態を示すLED49や、アンテナ48等を有する。生体情報取得送信部40は、電力供給部20からの電力により駆動する。
【0045】
生体センサ42は、制御部46による制御を受けて動作し、小型生体情報計測デバイス10の装着者の身体活動に関する情報を取得する。制御部46は、たとえば、生体センサ42へ給電することにより生体センサ42を動作させ、また、生体センサ42への給電を停止することで生体センサ42を動作させないようにすることができる。
【0046】
図1~
図3に示す小型生体情報計測デバイス10では、生体センサ42として装着者の体温を測定する体温センサを有する。体温センサは、たとえば、皮膚の表面温度を抵抗変化等により検出するサーミスタを有するものや、皮膚表面から生じる赤外線を集光して温度を検出するものなどが挙げられる。生体センサ42は、制御部46の制御により給電されると、装着者の体温に関する情報を取得し、取得した情報を直接または制御部46を介して送信部44に伝える。
【0047】
小型生体情報計測デバイス10が有する生体センサ42としては、上述した体温センサのみには限定されず、体の動きを測定する体動センサ部や、血中酸素飽和度を測定するSpO2センサや、心拍を計測する心拍センサや、血圧を計測する血圧センサなど、装着者の身体活動に関する各種の情報を取得できるセンサを採用可能である。また、生体センサ42は、装着者の身体活動に関する1種類の情報を取得するものであってもよいが、複数のセンサ部を組み合わせ、装着者の身体活動に関する複数種類の情報を取得可能であってもよい。
【0048】
図3に示す送信部44は、制御部46からの制御を受けて動作し、生体センサ42が取得した情報を、チップアンテナなどのアンテナ48を介して外部に送信する。送信部44は、たとえばBLEモジュール等で構成される。制御部46は、たとえば、送信部44へ給電することにより送信部44を動作させ、また、送信部44への給電を停止することで送信部44を動作させないようにすることができる。
【0049】
送信部44は、たとえば、生体センサ42で取得された情報の送信先である外部機器に対する所定の通信プロトコルを確立し、生体センサ42が取得した情報を所定の周波数帯の信号に変換し、外部機器に対して情報を送信する。小型生体情報計測デバイス10が情報を送信する外部機器としては、たとえばスマートフォンのような携帯型情報端末や、パーソナルコンピュータや、スマートリング専用の受信端末などが挙げられるが、特に限定されない。また、送信部44としては、たとえばBluetooh(登録商標)等として規格化される2.4GHz帯で情報を送信するものや、Wi-fi(登録商標)等として規格化される2.4GHz帯、5GHz帯、60GHz帯で情報を送信するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0050】
なお、送信部44は、情報の送信のみを行い、送信部44および小型生体情報計測デバイス10の他の部分は、無線通信による情報の受信を行わないものであることが、小型生体情報計測デバイス10の電力消費を低減し、長時間の持続的な動作を可能とする観点から好ましい。ただし、送信部44は、情報の送受信機能を有していてもよい。なお、制御部46、送信部44および生体センサ42は、モジュール化されていてもよい。
【0051】
図3に示す制御部46は、電力供給部20に蓄えられる電気を用いて、生体センサ42および送信部44等を制御する。制御部46は、マイクロコントローラ等の制御回路で構成される。制御部46は、たとえば、電力供給部20から継続的に電力が供給されている状態では、所定の周期で生体センサ42および送信部44を動作させ、生体情報を取得して外部に送信させることができる。
【0052】
また、生体情報取得送信部40は、電力供給部20から電力が供給されない状態になると電圧低下により自然に動作を停止し、また、電力供給部20からの電力供給が再開されると電圧上昇により自然に動作を再開する。このような動作停止および動作再開の繰り返しは、電力供給部20が有する一次電池24の蓄電量が所定量以下となった場合に発生し得る。
【0053】
制御部46は、電力供給部20から電力が供給されている状態においてLED49を点灯させ、装着者等に小型生体情報計測デバイス10の動作状況を伝えることができる。また、制御部46は、発電部である光発電パネル22から生体情報取得送信部40へ電気が送られている状態でLED49を点灯させ、一次電池24から生体情報取得送信部40へ電気が送られている状態ではLED49を消灯させてもよい。このような小型生体情報計測デバイス10は、一次電池24を長持ちさせつつ、装着者等に小型生体情報計測デバイス10の動作状況を伝えることができる。
【0054】
以上のように、小型生体情報計測デバイス10は、光発電パネル22と一次電池24とを併用することで、充電なしで長時間の駆動が可能である小型生体情報計測デバイス10を実現することができる。小型生体情報計測デバイス10は、外部から電気を充電することができる二次電池を具備する必要がないため、シンプルな構造を実現でき、かつ、小型化に対して有利である。さらに、小型生体情報計測デバイス10は、PGOOD端子226aのような第1端子26aを有するコンパレータ26、226と一次電池供給切換部30により、機械的な動作を伴うスイッチを用いることなく、シンプルな電子回路により、光発電パネル22および一次電池24の電力供給/供給停止を切り換えることができる。また、コンパレータ26および第1端子26aの出力を用いる一次電池供給切換部30を有する電子回路は、耐久性が良好であり、かつ、消費電力も抑制できる。
【0055】
また、小型生体情報計測デバイス10は、一次電池24の電圧が低下した後も、所定量の光を受光できる環境にデバイスが置かれていれば動作することができるため、用途によっては、充電なしで極めて長時間使用することも可能である。
【0056】
さらに、小型生体情報計測デバイス10は、コンパレータ26の第1および第2所定電圧を基準として、光発電パネル22の発電量が多い場合は光発電パネル22により電力供給がされ、光発電パネル22の発電量が少ない場合は一次電池24による電力供給がされることにより、小型生体情報計測デバイス10が置かれる環境の光量変化などに伴い光発電パネル22の発電量に変動があっても、継続的な動作が可能である。また、小型生体情報計測デバイス10は、第1端子26aを有するコンパレータ26と、イネーブル端子34aを有するDCDCコンバータ34によるシンプルな構成で、低消費電力で信頼性の高い切換回路を実現することができる。
【0057】
以上、実施形態を示して本発明に係る小型生体情報計測デバイスを説明したが、本発明に係る小型生体情報計測デバイスは、上述した小型生体情報計測デバイス10のみには限定されず、他の多くの実施形態および変形例が存在することは言うまでもない。たとえば、
図5および
図6は、第2実施形態に係る小型生体情報計測デバイス110の平面図(
図5)および断面図(
図6)である。
【0058】
図5および
図6に係る小型生体情報計測デバイス110は、筐体部150の蓋部154側とは反対側の面に、付着部材156が設けられており、装着対象の皮膚などに貼り付けて使用可能である点で
図1~
図4に示す小型生体情報計測デバイス10とは異なるが、
図3に示される電力供給部20および生体情報取得送信部40の回路構成については、第1実施形態に係る小型生体情報計測デバイス10と同様である。小型生体情報計測デバイス110の説明では、小型生体情報計測デバイス10との相違点を中心に行い、小型生体情報計測デバイス10との共通点については説明を省略する。
【0059】
図5および
図6に示すように、小型生体情報計測デバイス110の筐体部150は略矩形平板状の外形状を有しており、筐体部150の本体部152は、蓋部154や光発電パネル122に対して、20%以上広い平面視面積を有する。本体部152はシリコン樹脂、ウレタン樹脂などの柔軟性を有する材質とすることが、小型生体情報計測デバイス110を皮膚に貼り付けた際において、皮膚の面に本体部152の形状が追従でき、小型生体情報計測デバイス110が皮膚から剥がれにくくなるため好ましい。付着部材156には、筐体部150を装着対象の皮膚などに貼り付けるための粘着層が形成されている。
【0060】
小型生体情報計測デバイス110では、本体部152に加えて、蓋部154、光発電パネル122および回路基板112についても、AS樹脂、ペロブスカイト太陽電池およびフレキシブルプリント基板のような柔軟性の高いものを選択することで、小型生体情報計測デバイス110を付着対象から剝がれにくくすることができる。回路基板112に対して光発電パネル122が直接実装されていることも、薄型化の観点等から好ましい。
【0061】
図5および
図6に示すように、電力供給部20からの電力の供給状態に応じて点灯状態が変化するLED149が(機能については
図3のLED49参照)、蓋部154の直下で発電部である光発電パネル122の中央に配置してある。LED149をこのように配置する小型生体情報計測デバイス110は、装着者が容易に小型生体情報計測デバイス110の電力供給状態を認識できる。
【0062】
また、小型生体情報計測デバイス110は、小型生体情報計測デバイス10との共通点については、小型生体情報計測デバイス10と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0063】
10、110、210…小型生体情報計測デバイス
12、112…回路基板
20、220…電力供給部
22…光発電パネル(発電部)
24…一次電池
26、226…コンパレータ
26…第1端子
226a…PGOOD端子
30…一次電池供給切換部
232…ロジックインバータ
34…DCDCコンバータ
34a…イネーブル端子
40…生体情報取得送信部
42…生体センサ
44…送信部
46…制御部
48…アンテナ
49、149…LED
50、150…筐体部
52、152…本体部
52a…収容部
52b…開口
54、154…蓋部
156…付着部材
【要約】
【課題】耐久性が良好で充電なしで長時間の駆動が可能である小型生体情報計測デバイスに関する。
【解決手段】発電する発電部と、一次電池と、コンパレータと、一次電池供給切換部と、を有する電力供給部と、生体活動に関する情報を取得する生体センサと、前記生体センサによって取得された情報を送信する送信部と、を有し、前記電力供給部からの電力により駆動する生体情報取得送信部と、を有し、前記コンパレータは、前記供給電圧に応じて前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給および供給停止を切り換えるとともに、前記発電部から前記生体情報取得送信部への電力の供給状態に関する信号を第1端子から出力し、前記一次電池供給切換部は、前記第1端子からの信号が入力し、前記第1端子からの信号に応じて前記一次電池から前記生体情報取得送信部への電力の供給および供給停止を切り換える小型生体情報計測デバイス。
【選択図】
図1