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特許7587367粘着剤層付き偏光フィルム、画像表示パネル、画像表示パネルの製造方法及び粘着剤層
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  • 特許-粘着剤層付き偏光フィルム、画像表示パネル、画像表示パネルの製造方法及び粘着剤層 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】粘着剤層付き偏光フィルム、画像表示パネル、画像表示パネルの製造方法及び粘着剤層
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241113BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241113BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241113BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20241113BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
C09J11/06
C09J171/00
C09J133/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020130893
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027097
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100214639
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】小野 寛大
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003576(JP,A)
【文献】特開2016-062029(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031496(WO,A1)
【文献】特開2019-152863(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146678(WO,A1)
【文献】特開2008-009122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
C09J 11/06
C09J 171/00
C09J 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムと、粘着剤組成物から形成された粘着剤層とを備えた粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤組成物は、ベースポリマーと、酸性基又は酸無水物基を有する化合物(C)とポリエーテル化合物(D)とを含み、
前記粘着剤組成物における前記化合物(C)の含有量が、前記ベースポリマー100重量部に対して0.4重量部以上であり、
前記粘着剤層について、下記試験1により求めた接着力P85が10.0N/25mm以下であり、かつ、下記試験2により求めた接着力P105が10.0N/25mmより大きい、粘着剤層付き偏光フィルム。
試験1:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、85℃で5時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P85)を測定する。
試験2:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、105℃で24時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P105)を測定する。
【請求項2】
前記粘着剤層について、下記試験3により求めた接着力P0が10.0N/25mm以下である、請求項1に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
試験3:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層を、剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で前記酸化インジウムスズ層から引きはがす。このときに必要な力(接着力P0)を測定する。
【請求項3】
前記化合物(C)の重量平均分子量及び前記ポリエーテル化合物(D)の数平均分子量のそれぞれが10000以下である、請求項1又は2に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項4】
前記酸無水物基がカルボン酸無水物基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項5】
前記化合物(C)は、ケイ素原子と前記ケイ素原子に結合した加水分解性基とをさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項6】
前記化合物(C)における前記加水分解性基の含有率が10wt%以上である、請求項5に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項7】
前記化合物(C)は、シロキサン結合を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項8】
前記ポリエーテル化合物(D)は、ケイ素原子と前記ケイ素原子に結合した加水分解性基とをさらに有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項9】
前記ポリエーテル化合物(D)における前記加水分解性基の含有率が14wt%以下である、請求項8に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項10】
前記粘着剤組成物は、前記ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、酸性基を有する、請求項10に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の粘着剤層付き偏光フィルムと、
金属酸化物を含む導電層と、
透明基板と、
を備え、
前記粘着剤層が前記導電層と直接接している、画像表示パネル。
【請求項13】
前記金属酸化物は、酸化インジウムスズを含む、請求項12に記載の画像表示パネル。
【請求項14】
前記粘着剤層は、前記化合物(C)又はその反応物を含む第1層と、前記ポリエーテル化合物(D)又はその反応物を含む第2層とを有し、
前記導電層、前記第1層及び前記第2層が積層方向にこの順で並んでいる、請求項12又は13に記載の画像表示パネル。
【請求項15】
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)又はその反応物を含む第3層をさらに有し、
前記第3層は、前記第2層と前記偏光フィルムとの間に位置する、請求項14に記載の画像表示パネル。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1項に記載の画像表示パネルの製造方法であって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムを前記導電層に貼り付けた状態で、前記粘着剤層について、70℃~95℃で第1加熱処理を行うこと、を含む、画像表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記第1加熱処理の後に、前記粘着剤層について、95℃より高い温度で第2加熱処理を行うこと、をさらに含む、請求項16に記載の画像表示パネルの製造方法。
【請求項18】
粘着剤組成物から形成された粘着剤層であって、
前記粘着剤組成物は、ベースポリマーと、酸性基又は酸無水物基を有する化合物(C)とポリエーテル化合物(D)とを含み、
前記粘着剤組成物における前記化合物(C)の含有量が、前記ベースポリマー100重量部に対して0.4重量部以上であり、
下記試験1により求めた接着力P85が10.0N/25mm以下であり、かつ、下記試験2により求めた接着力P105が10.0N/25mmより大きい、粘着剤層。
試験1:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、85℃で5時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P85)を測定する。
試験2:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、105℃で24時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P105)を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付き偏光フィルム、画像表示パネル、画像表示パネルの製造方法及び粘着剤層に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの画像表示装置が備える画像表示パネルは、例えば、偏光フィルムが粘着剤層を介して透明基板に貼り付けられた構造を有する。透明基板の表面には、画像表示装置の帯電を防止するために、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物を含む導電層が設けられることがある。透明基板の表面に導電層が設けられている場合、画像表示パネルにおいて、粘着剤層は、通常、導電層と直接接している。
【0003】
画像表示パネルを製造するときには、例えば、粘着剤層及び偏光フィルムを備えた粘着剤層付き偏光フィルムが透明基板に貼り付けられる。このとき、粘着剤層付き偏光フィルムの貼り付け位置がずれる、又は、粘着剤層付き偏光フィルムと透明基板との間に異物が混入するといった問題が生じることがある。この場合、画像表示パネルの生産性を向上させるためには、粘着剤層付き偏光フィルムを透明基板から引きはがし、部材を再利用することが望ましい。そのため、粘着剤層付き偏光フィルムは、透明基板から容易に剥離できることが求められる。本明細書では、透明基板や導電層に対する粘着剤層付き偏光フィルムの剥離しやすさを「粘着剤層のリワーク性」と表現することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6071459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光フィルムの水分量が大きい場合、画像表示装置を高温環境下(例えば95℃より高い温度の環境下)で使用すると、画像表示装置の光学特性が低下する傾向がある(例えば、特許文献1)。高温環境下での光学特性の低下は、偏光フィルム中の偏光子がポリビニルアルコールを含む場合に特に顕著である。そのため、高温環境下での画像表示装置の使用が想定される場合、例えば画像表示装置が車載用ディスプレイとして用いられる場合、には、粘着剤層付き偏光フィルムを透明基板に貼り付けた段階で、粘着剤層付き偏光フィルムを70℃~95℃程度の温度で加熱処理(プレヒート)して、偏光フィルムの水分量をあらかじめ減少させる必要がある。
【0006】
ただし、このプレヒートによって、偏光フィルムや透明基板が破損することがある。そのため、プレヒートの後においても、透明基板から粘着剤層付き偏光フィルムを剥離できるように、粘着剤層のリワーク性が維持されることが求められる。しかし、粘着剤層付き偏光フィルムにおける粘着剤層は、通常、高温環境下で接着性が向上するように、その組成が調整されている。そのため、上記のプレヒートが行われた場合、粘着剤層の接着性が向上し、粘着剤層のリワーク性が低下する傾向がある。本発明者らの検討によると、リワーク性の低下は、粘着剤層が導電層、特にITO層、と直接接している場合に顕著である。
【0007】
本発明者らの検討によると、粘着剤層のリワーク性を向上させる化合物を粘着剤層に過剰に添加すれば、プレヒートによる粘着剤層のリワーク性の低下を抑制できる可能性がある。しかし、この場合、高温環境下での粘着剤層の耐久性が大きく低下する傾向がある。
【0008】
そこで本発明は、導電層に貼り付けられた場合であっても、プレヒート後のリワーク性が維持されるとともに、高温環境下での耐久性を有する粘着剤層を備えた粘着剤層付き偏光フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
偏光フィルムと、粘着剤組成物から形成された粘着剤層とを備えた粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤組成物は、酸性基又は酸無水物基を有する化合物(C)とポリエーテル化合物(D)とを含み、
前記粘着剤層について、下記試験1により求めた接着力P85が10.0N/25mm以下であり、かつ、下記試験2により求めた接着力P105が10.0N/25mmより大きい、粘着剤層付き偏光フィルムを提供する。
試験1:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、85℃で5時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P85)を測定する。
試験2:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、105℃で24時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P105)を測定する。
【0010】
さらに本発明は、
上記の粘着剤層付き偏光フィルムと、
金属酸化物を含む導電層と、
透明基板と、
を備え、
前記粘着剤層が前記導電層と直接接している、画像表示パネルを提供する。
【0011】
さらに本発明は、
上記の画像表示パネルの製造方法であって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムを前記導電層に貼り付けた状態で、前記粘着剤層について、70℃~95℃で第1加熱処理を行うこと、を含む、画像表示パネルの製造方法を提供する。
【0012】
さらに本発明は、
粘着剤組成物から形成された粘着剤層であって、
前記粘着剤組成物は、酸性基又は酸無水物基を有する化合物(C)とポリエーテル化合物(D)とを含み、
下記試験1により求めた接着力P85が10.0N/25mm以下であり、かつ、下記試験2により求めた接着力P105が10.0N/25mmより大きい、粘着剤層を提供する。
試験1:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、85℃で5時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P85)を測定する。
試験2:酸化インジウムスズ層付きガラスの酸化インジウムスズ層に貼り付けた粘着剤層について、105℃で24時間加熱処理を行う。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、前記粘着剤層を前記酸化インジウムスズ層から引きはがすために必要な力(接着力P105)を測定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電層に貼り付けられた場合であっても、プレヒート後のリワーク性が維持されるとともに、高温環境下での耐久性を有する粘着剤層を備えた粘着剤層付き偏光フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる粘着剤層付き偏光フィルムの断面図である。
図2】粘着剤層付き偏光フィルムに含まれる粘着剤層の特性を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる画像表示パネルの断面図である。
図4】画像表示パネルの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0016】
(粘着剤層付き偏光フィルムの実施形態)
図1に示すように、本実施形態の粘着剤層付き偏光フィルム10は、粘着剤層1及び偏光フィルム2を備える。粘着剤層1は、例えば、偏光フィルム2に直接接している。粘着剤層1の表面は、例えば、粘着剤層付き偏光フィルム10の外部に露出している。
【0017】
粘着剤層付き偏光フィルム10では、粘着剤層1について、試験1により求めた接着力P85が10.0N/25mm以下であり、試験2により求めた接着力P105が10.0N/25mmより大きい。
【0018】
試験1は、次の方法によって行う。まず、粘着剤層付き偏光フィルム10を縦150mm×横25mmの短冊状に切り出して試験片とする。次に、酸化インジウムスズ(ITO)層付きガラスを準備する。ITO層付きガラスは、例えば、無アルカリガラスと、無アルカリガラスに接するITO層とを有する。無アルカリガラスは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)を実質的に含まないガラスであり、詳細には、ガラスにおけるアルカリ成分の重量比率が、例えば1000ppm以下であり、さらには500ppm以下である。無アルカリガラスは、例えば板状であり、0.5mm以上の厚さを有する。ITO層は、例えば、実質的に非結晶性(アモルファス)のITOのみからなる。ただし、ITO層は、ITO以外の不純物を含んでいてもよい。ITO層は、例えば、スパッタリング法などの物理堆積法によって、無アルカリガラスの表面上に形成することができる。
【0019】
次に、ITO層付きガラスのITO層の表面に試験片を粘着剤層1により貼り付ける。ITO層への試験片の貼り付けは、例えば、ラミネーターを用いて行い、ITO層と粘着剤層1との間に気泡が混入しないように実施する。試験片を貼り付けた後、50℃及び5気圧(絶対圧)のオートクレーブ内に15分収容してITO層と粘着剤層1との接合を均質化させ、粘着剤層1をITO層に密着させる。次に、試験片(粘着剤層1)について、85℃の大気圧雰囲気下で5時間加熱処理を行う。次に、試験片を室温(例えば23℃)の雰囲気に放置し、試験片の温度を室温まで低下させる。剥離速度300mm/min及び剥離角度90°で、試験片をITO層から引きはがす(測定長80mm)。このとき、試験片をITO層から引きはがすために必要な力を1回/0.5sの間隔で測定する。得られた測定値の平均値を接着力P85として特定する。
【0020】
試験2は、オートクレーブ内でITO層と粘着剤層1との接合を均質化させた後の加熱処理を105℃の大気圧雰囲気下で24時間行うことを除き、試験1と同じ方法で行うことができる。
【0021】
本発明者らの検討によれば、接着力P85が10.0N/25mm以下である場合、プレヒート後に、粘着剤層1のリワーク性が十分に維持される傾向がある。接着力P85は、好ましくは9.0N/25mm以下であり、より好ましくは8.0N/25mm以下であり、さらに好ましくは7.0N/25mm以下であり、特に好ましくは6.0N/25mm以下である。接着力P85の下限値は、実用上の観点から、例えば3.0N/25mmである。
【0022】
本発明者らの検討によれば、接着力P105が10.0N/25mmより大きい場合、粘着剤層1は、高温環境下で十分な耐久性を有する傾向がある。接着力P105は、好ましくは11.0N/25mm以上であり、より好ましくは12.0N/25mm以上であり、さらに好ましくは13.0N/25mm以上であり、特に好ましくは14.0N/25mm以上である。接着力P105の上限値は、特に限定されず、例えば30.0N/25mmである。
【0023】
さらに、粘着剤層付き偏光フィルム10では、粘着剤層1について、試験3により求めた接着力P0が10.0N/25mm以下であってもよい。試験3は、オートクレーブ内でITO層と粘着剤層1との接合を均質化させた後に、加熱処理を行わないことを除き、試験1と同じ方法で行うことができる。接着力P0は、好ましくは9.0N/25mm以下であり、より好ましくは8.0N/25mm以下であり、さらに好ましくは7.0N/25mm以下であり、特に好ましくは6.0N/25mm以下である。接着力P0の下限値は、実用上の観点から、例えば3.0N/25mmである。
【0024】
[粘着剤層]
粘着剤層1は、粘着剤組成物から形成される。粘着剤組成物は、酸性基又は酸無水物基を有する化合物(C)とポリエーテル化合物(D)とを含み、例えばベースポリマーをさらに含む。「ベースポリマー」は、例えば、粘着剤組成物に重量基準で最も多く含まれるポリマーであり、粘着剤層1の粘着性に寄与する成分として機能する。
【0025】
<化合物(C)>
化合物(C)は、例えば、低分子化合物又はオリゴマーである。化合物(C)が有する酸性基は、例えばカルボキシル基又はメルカプト基であり、好ましくはカルボキシル基である。化合物(C)の酸性基は、酸無水物基が加水分解されることによって生じた基であってもよい。酸無水物基の具体例としては、コハク酸無水物基、フタル酸無水物基、マレイン酸無水物基などのカルボン酸無水物基が挙げられ、好ましくはコハク酸無水物基である。化合物(C)における酸性基の含有率と酸無水物基の含有率との合計値は、特に限定されず、例えば5.0wt%~50wt%であり、好ましくは8.3wt%~40wt%である。
【0026】
化合物(C)は、ケイ素原子を含んでいてもよく、ケイ素原子に結合した加水分解性基(h1)をさらに含んでいてもよい。加水分解性基(h1)は、例えば、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を形成することができる。加水分解性基(h1)としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、カルバモイル基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基などが挙げられる。加水分解性基(h1)が炭素原子を有する場合、その炭素数は、例えば10以下であり、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基又はアルケニルオキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。化合物(C)における加水分解性基(h1)の含有率は、例えば、10wt%以上であり、13wt%~50wt%であることが好ましく、13wt%~49wt%であることがより好ましい。
【0027】
化合物(C)は、酸性基、酸無水物基及び加水分解性基(h1)以外の他の官能基を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。一例として、化合物(C)は、ポリエーテル基を含まない。
【0028】
化合物(C)は、例えば、酸性基又は酸無水物基を有するアルコキシシラン化合物(S1)、酸性基又は酸無水物基を有するオルガノポリシロキサン化合物(S2)、及びこれらの加水分解縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、好ましくはオルガノポリシロキサン化合物(S2)を含む。
【0029】
アルコキシシラン化合物(S1)は、例えば、下記式(1)で表される。
12 aSi(OR33-a (1)
【0030】
式(1)において、R1は、酸性基又は酸無水物基を有する炭素数1~20の有機基である。この有機基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。R2は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R3は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、好ましくはメチル基又はエチル基である。aは、0又は1である。
【0031】
1は、アルコキシシラン化合物(S1)の入手容易性の観点から、下記式(2)で表される有機基であることが好ましい。
【化1】
【0032】
式(2)において、Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~10のアルキレン基又はアルケニレン基であり、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~6のアルキレン基であることが好ましい。Aの具体例は、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基などである。
【0033】
アルコキシシラン化合物(S1)としては、例えば、2-トリメトキシシリルエチルコハク酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製、商品名「X-12-967C」)、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、1-カルボキシ-3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。
【0034】
オルガノポリシロキサン化合物(S2)は、シロキサン結合を有する化合物であり、例えば下記式(3)で表されるシロキサン単位(U1)を含む。オルガノポリシロキサン化合物(S2)は、下記式(4)で表されるシロキサン単位(U2)をさらに含んでいてもよい。
【化2】
【化3】
【0035】
式(3)において、Xは、酸性基又は酸無水物基を有する有機基であり、式(2)で表される有機基であることが好ましい。式(3)及び式(4)において、R4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~10のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R4のアルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。R4の炭化水素基は、例えば、メチル基である。
【0036】
オルガノポリシロキサン化合物(S2)に含まれるシロキサン単位(U1)の数は、特に限定されず、例えば1~100であり、好ましくは1~50であり、より好ましくは1~20である。オルガノポリシロキサン化合物(S2)に含まれるシロキサン単位(U2)の数は、特に限定されず、例えば0~100であり、好ましくは0~50であり、より好ましくは0~20である。オルガノポリシロキサン化合物(S2)は、シロキサン単位(U2)を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0037】
オルガノポリシロキサン化合物(S2)は、下記式(5)で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物に含まれるO-Si結合の間に少なくとも1つのシロキサン単位(U1)が挿入された構造を有していてもよい。O-Si結合の間には、シロキサン単位(U1)及びシロキサン単位(U2)の両方が挿入されていてもよい。複数のO-Si結合のうち、一部のO-Si結合の間にシロキサン単位(U1)が挿入され、他のO-Si結合の間にシロキサン単位(U2)が挿入されていてもよい。
5 nSi(OR63-n (5)
【0038】
式(5)において、R5は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R6は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基である。nは、0又は1である。
【0039】
式(5)で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びこれらのアルコキシシランのうちの1種又は2種以上が部分加水分解縮合した化合物が挙げられる。
【0040】
オルガノポリシロキサン化合物(S2)は、例えば、特開2013-129809号公報、特開2013-129691号公報などに記載された公知の製造方法によって作製することができる。
【0041】
化合物(C)は、酸性基又は酸無水物基を有する限り、上記のアルコキシシラン化合物(S1)及びオルガノポリシロキサン化合物(S2)に限定されない。化合物(C)は、酸性基又は酸無水物基を有する(メタ)アクリル系オリゴマー(B)を含んでいてもよい。(メタ)アクリル系オリゴマー(B)は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を主成分として含有するとともに、酸性基又は酸無水物基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含有する。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。「主成分」は、ポリマーに重量基準で最も多く含まれる構造単位を意味する。
【0042】
(メタ)アクリル系オリゴマー(B)を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。酸性基を有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル系オリゴマー(B)を構成する他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートのようなエーテル結合を含むアルキル(メタ)アクリレート等が挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。(メタ)アクリル系オリゴマー(B)を構成するモノマーとして、後述する(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマーを用いることもできる。
【0044】
(メタ)アクリル系オリゴマー(B)の重合方法としては、後述する(メタ)アクリル系ポリマー(A)と同様に、溶液重合、乳化重合、塊状重合、乳化重合、熱や活性エネルギー線照射による重合(熱重合、活性エネルギー線重合)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合、活性エネルギー線重合が好ましい。得られる(メタ)アクリル系オリゴマー(B)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0045】
粘着剤層1の耐久性、耐腐食性及びリワーク性を向上させる観点から、粘着剤組成物における化合物(C)の含有量は、後述するベースポリマー100重量部に対して、0.05~10重量部であることが好ましく、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下がさらに好ましく、1重量部以下が特に好ましく、0.6重量部以下が最も好ましい。化合物(C)の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらに好ましく、0.4重量部以上が特に好ましい。
【0046】
化合物(C)の重量平均分子量は、特に限定されず、例えば10000以下であり、好ましくは8000以下であり、より好ましくは5000以下であり、さらに好ましくは3000以下であり、特に好ましくは1500以下である。化合物(C)の重量平均分子量の下限値は、特に限定されず、例えば100である。
【0047】
化合物(C)は、酸性基に由来して、低い酸解離定数pKaを有していてもよい。化合物(C)のpKa(特に第一酸解離定数)は、例えば12以下であり、好ましくは11以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下であり、特に好ましくは5以下である。化合物(C)のpKaの下限値は、特に限定されず、例えば1である。本明細書において、pKaは、25℃の水中における値である。
【0048】
<ポリエーテル化合物(D)>
ポリエーテル化合物(D)は、ポリエーテル骨格を有する化合物である。ポリエーテル骨格は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。ポリエーテル化合物(D)が有するポリエーテル骨格は、例えば、下記式(6)で表されるオキシアルキレン単位(U3)を含む。
【化4】
【0049】
式(6)において、R7は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である。R7の炭素数は、2~6が好ましく、3であることがより好ましい。ポリエーテル化合物(D)は、1種又は2種以上のオキシアルキレン単位(U3)を含んでいてもよい。ポリエーテル化合物(D)は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。オキシアルキレン単位(U3)の具体例としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられる。オキシアルキレン単位(U3)は、材料の製造の容易さ、材料の安定性などの点から、オキシプロピレン基(特に、-CH2CH(CH3)O-)が好ましい。
【0050】
ポリエーテル化合物(D)は、ケイ素原子を含んでいてもよく、ケイ素原子に結合した加水分解性基(h2)をさらに含んでいてもよい。加水分解性基(h2)は、例えば、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を形成することができる。加水分解性基(h2)としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、カルバモイル基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基などが挙げられる。加水分解性基(h2)が炭素原子を有する場合、その炭素数は、例えば10以下であり、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基又はアルケニルオキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。ポリエーテル化合物(D)における加水分解性基(h2)の含有率は、例えば14wt%以下であり、好ましくは13wt%未満であり、より好ましくは10wt%未満である。加水分解性基(h2)の含有率の下限値は、特に限定されず、例えば2.0wt%であり、2.5wt%であってもよく、3.0wt%であってもよい。加水分解性基(h2)の含有率は、場合によっては、2.0wt%以下であってもよい。
【0051】
ケイ素原子に結合した加水分解性基(h2)は、例えば、ポリエーテル化合物(D)の末端に位置する。一例として、ポリエーテル化合物(D)は、少なくとも1つの末端に、下記式(7)で表される反応性シリル基(b)を有する。
-SiR8 a3-a (7)
【0052】
式(7)において、R8は、互いに独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の1価の有機基である。R8は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。ポリエーテル化合物(D)中に、複数のR8が存在する場合、複数のR8は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。Mは、互いに独立して、水酸基又は加水分解性基(h2)である。ポリエーテル化合物(D)中に、複数のMが存在する場合、複数のMは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。aは、0~2の整数である。
【0053】
ポリエーテル化合物(D)は、例えば、1分子あたり少なくとも1個の反応性シリル基(b)をその末端に有する。ポリエーテル化合物(D)が直鎖状である場合、ポリエーテル化合物(D)は、その末端に、1個又は2個の反応性シリル基(b)を有していてもよく、2個の反応性シリル基(b)を有することが好ましい。ポリエーテル化合物(D)が分岐鎖状である場合、ポリエーテル化合物(D)は、主鎖末端又は側鎖末端に、少なくとも1個の反応性シリル基(b)を有する。反応性シリル基(b)の数は、ポリエーテル化合物(D)の末端の数に応じて適宜調整でき、好ましくは2個以上であり、3個以上であってもよい。
【0054】
ポリエーテル化合物(D)は、その分子末端の少なくとも一部に、反応性シリル基(b)を有し、かつその分子中に少なくとも1個、好ましくは1.1~5個、さらに好ましくは1.1~3個の反応性シリル基(b)を有することが好ましい。
【0055】
反応性シリル基(b)は、下記式(8)で表されるアルコキシシリル基(b1)又は下記式(9)で表されるアルコキシシリル基(b2)であることが好ましい。
【化5】
【化6】
【0056】
式(8)及び式(9)において、R9、R10及びR11のそれぞれは、互いに独立して、炭素数1~6の1価の炭化水素基であり、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~6のアルケニル基、炭素数5~6のシクロアルキル基、フェニル基などが挙げられる。式(8)及び式(9)における-OR9、-OR10及び-OR11の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、プロペニルオキシ基、フェノキシ基などが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0057】
ポリエーテル化合物(D)は、反応性シリル基(b)を除き、主鎖が実質的にポリエーテル骨格からなることが好ましい。ただし、ポリエーテル化合物(D)の主鎖は、他の化学構造を少量含んでいてもよい。他の化学構造としては、例えば、オキシアルキレン単位(U3)を形成するための開始剤に由来する化学構造、及びポリエーテル骨格と反応性シリル基(b)との連結基などが挙げられる。ポリエーテル化合物(D)におけるオキシアルキレン単位(U3)の含有率は、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0058】
ポリエーテル化合物(D)は、例えば、下記式(10)で表される。
12 a3-aSi-X-Y-(AO)n-Z (10)
【0059】
式(10)において、R12は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の有機基である。Mは、互いに独立して、水酸基又は加水分解性基(h2)である。aは、0~2の整数である。AOは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のオキシアルキレン基である。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、1~1700である。Xは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルキレン基である。Yは、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、又はカーボネート結合である。Zは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、下記式(11)で表される基、又は下記式(12)で表される基である。
-Y1-X-SiR12 a3-a (11)
-Q{-(OA)n-Y-X-SiR12 a3-am (12)
【0060】
式(11)において、R12、M及びXは、式(10)と同じである。Y1は、単結合、-CO-結合、-CONH-結合又は-COO-結合である。式(12)において、R12、M、X、Y及びnは、式(10)と同じである。OAは、式(10)のAOと同じである。Qは、2価以上の炭素数1~10の炭化水素基である。mは、Qの炭化水素基の価数から1を差し引いた値である。
【0061】
式(10)におけるXは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~10であり、さらに好ましくは3である。
【0062】
式(10)におけるYは、ポリエーテル骨格の末端のオキシアルキレン基のヒドロキシル基と反応して形成される結合であり、好ましくは、エーテル結合又はウレタン結合であり、さらに好ましくはウレタン結合である。
【0063】
Zは、例えば、式(10)で表されるポリエーテル化合物(D)の作製時に用いられるオキシアルキレン重合体を合成するときの開始剤であるヒドロキシ化合物に由来している。Zは、例えば、水素原子又は1価の炭素数1~10の炭化水素基である。このとき、式(10)で表されるポリエーテル化合物(D)は、その末端に、1つの反応性シリル基(b)を有する。Zが水素原子である場合は、ヒドロキシ化合物として、オキシアルキレン重合体と同様の構成単位を用いた場合に相当する。Zが1価の炭素数1~10の炭化水素基である場合は、1つの水酸基を有するヒドロキシ化合物を用いた場合に相当する。
【0064】
一方、Zが式(11)又は式(12)で表される場合、ポリエーテル化合物(D)は、その末端に複数の反応性シリル基(b)を有する。Zが式(11)で表される場合は、ヒドロキシ化合物として、オキシアルキレン重合体と同様の構成単位を用いた場合に相当する。Zが式(12)で表される場合は、オキシアルキレン重合体の構成単位とは異なり、かつ2つの水酸基を有するヒドロキシ化合物を用いた場合に相当する。なお、式(11)のY1は、式(10)のYと同様に、ポリエーテル骨格の末端のオキシアルキレン基のヒドロキシル基と反応して形成される結合である。
【0065】
ポリエーテル化合物(D)は、リワーク性の点から、下記式(13)、式(14)又は式(15)で表されることが好ましい。
0-A2-O-(A1O)n-Z1 (13)
0-A2-NHCOO-(A1O)n-Z2 (14)
3-O-(A1O)n-CH{-CH2-(A1O)n-Z32 (15)
【0066】
式(13)~(15)において、Z0は、式(8)又は式(9)で表されるアルコキシシリル基である。A1Oは、炭素数2~6のオキシアルキレン基であり、好ましくはオキシプロピレン基である。A1Oのオキシアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。nは、A1Oの平均付加モル数を示し、1~1700である。式(13)及び式(14)のA2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、好ましくはプロピレン基である。A2のアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。式(13)のZ1は、水素原子又は-A2-Z0である。式(14)のZ2は、水素原子又は-CONH-A2-Z0である。式(15)のZ3は、水素原子又は-A2-Z0であり、少なくとも1つのZ3が-A2-Z0である。
【0067】
式(14)で表される化合物としては、例えば、下記式(16)で表される化合物が好ましい。
【化7】
【0068】
式(16)において、R9、R10及びR11のそれぞれは、互いに独立して、炭素数1~6の1価の炭化水素基である。nは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、1~1700である。Z21は、水素原子、又は下記式(17)で表されるトリアルコキシシリル基である。
【化8】
【0069】
式(17)において、R9、R10及びR11は、式(16)と同じである。
【0070】
ポリエーテル化合物(D)の数平均分子量は、リワーク性の点から、300~100000であることが好ましい。数平均分子量は、500以上、さらには1000以上、さらには2000以上、さらには3000以上、さらには4000以上、さらには5000以上であることが好ましく、50000以下、さらには40000以下、さらには30000以下、さらには20000以下、さらには10000以下であることが好ましい。上記の式(10)~(16)のn(ポリエーテル骨格におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数)は、例えば、ポリエーテル化合物(D)の数平均分子量が上記の範囲となるように適宜調整される。ポリエーテル化合物(D)の数平均分子量が1000以上の場合、上記のnは、通常、10~1700である。
【0071】
ポリエーテル化合物(D)のMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、3.0以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下が特に好ましい。Mw/Mnが小さいポリエーテル化合物(D)を得るためには、下記の複合金属シアン化物錯体を触媒として用い、開始剤の存在下、環状エーテルを重合させて得られたオキシアルキレン重合体について、その末端を変性して反応性シリル基を導入する方法を利用することが好ましい。
【0072】
ポリエーテル化合物(D)は、例えば、分子末端に官能基を有するオキシアルキレン重合体を原料として用い、その分子末端にアルキレン基等の有機基を介して反応性シリル基を結合させることによって製造することができる。原料として用いるオキシアルキレン重合体としては、触媒及び開始剤の存在下で、環状エーテルを開環重合させて得られた末端に水酸基を有する重合体であることが好ましい。
【0073】
上記開始剤としては、1分子あたり1個以上の活性水素原子を有する化合物、例えば1分子あたり1個以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物などを使用することができる。開始剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらのアルキレンオキシド付加物などのヒドロキシ化合物などを挙げることができる。開始剤は、1種又は2種以上であってもよい。
【0074】
開始剤の存在下で環状エーテルを開環重合させるときには、重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば、水酸化カリウム、カリウムメトキシドなどのカリウム化合物、水酸化セシウムなどのセシウム化合物などのアルカリ金属化合物;複合金属シアン化物錯体;金属ポルフィリン錯体;P=N結合を有する化合物などが例示できる。
【0075】
ポリエーテル化合物(D)におけるポリエーテル骨格(ポリオキシアルキレン鎖)は、炭素数2~6のアルキレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレン単位からなることが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のアルキレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレン単位からなることがより好ましく、プロピレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレン単位からなることが特に好ましい。ポリオキシアルキレン鎖が2種以上のオキシアルキレン単位からなる場合、2種以上のオキシアルキレン単位の並び方は、ブロック状であってもよく、ランダム状であってもよい。
【0076】
上記の式(14)で表されるポリエーテル化合物(D)は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖とヒドロキシ基を有する重合体について、反応性シリル基(b)及びイソシアネート基を有する化合物を用いてウレタン化反応させることにより得ることができる。式(14)で表されるポリエーテル化合物(D)は、不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、例えば、アリルアルコールを開始剤としてアルキレンオキシドを重合して得られたアリル末端ポリオキシプロピレンモノオール、の不飽和基に、ヒドロシラン又はメルカプトシランを付加させて、分子末端に反応性シリル基(b)を導入する方法により得ることもできる。
【0077】
開始剤存在下で環状エーテルを開環重合させて得られた水酸基末端のオキシアルキレン重合体の末端基に反応性シリル基(b)を導入する方法は、特に限定されず、通常、末端基にさらに有機基を介して反応性シリル基を連結させる下記(a)~(c)の方法が好ましい。
【0078】
(a)水酸基を有するオキシアルキレン重合体の末端に不飽和基を導入した後、この不飽和基に反応性シリル基(b)を結合させる方法。
この方法としては、さらに以下の2つの方法(a-1)及び(a-2)が例示できる。(a-1)白金化合物などの触媒の存在下で、上記の不飽和基にヒドロシリル化合物を反応させる、いわゆるヒドロシリル化反応を用いる方法。
(a-2)不飽和基にメルカプトシラン化合物を反応させる方法。
【0079】
(a-2)のメルカプトシラン化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0080】
不飽和基とメルカプト基とを反応させるときには、ラジカル重合開始剤として用いられるラジカル発生剤などの化合物を用いてもよく、所望によりラジカル重合開始剤を用いることなく、放射線や熱によって反応を行ってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えばパーオキシド系、アゾ系及びレドックス系の重合開始剤、並びに金属化合物触媒などが挙げられ、具体的には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、tert-アルキルパーオキシエステル、アセチルパーオキシド及びジイソプロピルパーオキシカーボネートなどが挙げられる。ラジカル重合開始剤を用いて不飽和基とメルカプト基とを反応させる場合の反応条件は、重合開始剤の分解温度(半減期温度)によって異なるが、例えば、20~200℃、好ましくは50~150℃の反応温度で、数時間~数十時間反応を行うことが好ましい。
【0081】
オキシアルキレン重合体の末端に不飽和基を導入する方法としては、オキシアルキレン重合体の末端水酸基と、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合又はカーボネート結合などにより連結しうる官能基、及び不飽和基を有する反応剤をオキシアルキレン重合体と反応させる方法が挙げられる。開始剤存在下で環状エーテルを重合するときに、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和基含有エポキシ化合物を共重合させることによりオキシアルキレン重合体の末端の少なくとも一部に不飽和基を導入する方法も利用できる。
【0082】
ヒドロシリル化反応は、好ましくは60~120℃の温度で行う。一般に、数時間以内の反応時間でヒドロシリル化反応が充分に進行する。
【0083】
(b)末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体と、反応性シリル基(b)を有するイソシアネートシラン化合物とを反応させる方法。
イソシアネートシラン化合物としては、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、1-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、1-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、1-イソシアネートメチルジメチルモノメトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジエトキシシラン、1-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、1-イソシアネートプロピルジメチルモノメトキシシラン、1-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルモノメトキシシラン及び3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアネートシラン系化合物が例示できる。この中で、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジメトキシシランがさらに好ましく、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0084】
オキシアルキレン重合体とイソシアネートシラン化合物との反応は、オキシアルキレン重合体の水酸基(OH)に対するイソシアネートシラン化合物のイソシアネート基(NCO)のモル比がNCO/OH=0.80~1.05となるようにして行うことが好ましい。この方法は、製造工程数が少ないため工程時間を大幅に短縮でき、製造工程途中で副生する不純物も少ないため、精製等の煩雑な操作も不要である。さらに好ましいNCO基とOH基とのモル比は、NCO/OH=0.85~1.00である。NCOの比率が低い場合、残存したOH基と反応性シリル基との反応等が生じるため、貯蔵安定性が低下することがある。この場合、新たにイソシアネートシラン化合物又はモノイソシアネート化合物と反応させ、過剰のOH基を消費することによって、所定のシリル化率に調整することが好ましい。
【0085】
オキシアルキレン重合体の水酸基を上記のイソシアネートシラン化合物と反応させるときには、公知のウレタン化反応触媒を用いてもよい。ウレタン化反応触媒の使用の有無及び使用量によって反応温度及び反応が完結するまでに要する反応時間が異なるが、オキシアルキレン重合体とイソシアネートシラン化合物との反応は、例えば20~200℃、好ましくは50~150℃の温度で数時間を行うことが好ましい。
【0086】
(c)分子末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体に対して、イソシアネート基過剰の条件でポリイソシアネート化合物を反応させて、末端の少なくとも一部にイソシアネート基を有するオキシアルキレン重合体を製造し、さらに当該イソシアネート基に対して、官能基を有するケイ素化合物を反応させる方法。
ケイ素化合物の官能基は、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの活性水素含有基である。ケイ素化合物としては、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノシラン系化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトシラン系化合物を例示できる。オキシアルキレン重合体と、上記のケイ素化合物とを反応させるときには、公知のウレタン化反応触媒を用いてもよい。ウレタン化反応触媒の使用の有無及び使用量によって反応温度及び反応が完結するまでに要する反応時間は異なるが、上記の反応は、例えば20~200℃、好ましくは50~150℃の温度で数時間反応を行うことが好ましい。
【0087】
ポリエーテル化合物(D)の具体例としては、カネカ社製のMSポリマーS203、S303、S810;SILYL EST250、EST280;SAT10、SAT200、SAT220、SAT350、SAT400、旭硝子社製のEXCESTAR S2410、S2420、S3430などが挙げられる。
【0088】
粘着剤組成物におけるポリエーテル化合物(D)の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して0.001~20重量部が好ましい。この含有量が0.001重量部以上であることによって、粘着剤層1のリワーク性が十分に向上する傾向がある。ポリエーテル化合物(D)の含有量は、0.01重量部以上が好ましく、さらには0.02重量部以上、さらには0.1重量部以上、さらには0.5重量部以上であることが好ましい。ポリエーテル化合物(D)の含有量が20重量部以下である場合、粘着剤層1は、十分な耐湿性を有し、信頼性試験などで剥がれが生じにくい。ポリエーテル化合物(D)の含有量は、10重量部以下が好ましく、さらには5重量部以下、さらには3重量部以下であることが好ましい。ポリエーテル化合物(D)の含有量は、1重量部以下、さらには0.5重量部以下であってもよい。
【0089】
<粘着剤>
粘着剤組成物に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。粘着剤としては、光学的透明性に優れ、適切な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性を有し、耐候性、耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0090】
アクリル系粘着剤を含む粘着剤組成物は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を主成分として含有する。
【0091】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主骨格を形成するためのアルキル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル基の炭素数は、特に限定されず、例えば1~18である。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は組み合わせて使用できる。アルキル基の平均炭素数は3~9であることが好ましい。
【0092】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、芳香環含有(メタ)アクリレート、アミド基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー及びヒドロキシル基含有モノマーからなる群より選ばれる1つ以上の共重合モノマーが挙げられる。共重合モノマーは、単独で又は組み合わせて使用できる。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマーなどの共重合モノマーに起因した酸性基を有することが好ましい。酸性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、プレヒート後の粘着剤層1のリワーク性を維持することに適している。
【0093】
芳香環含有(メタ)アクリレートは、その構造中に芳香環構造を含み、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物である。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などが挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリレートは、偏光フィルム2などの光学フィルムの収縮により、粘着剤層1に応力が掛かった際に発生する位相差を調整する効果があり、光学フィルムの収縮により発生する光漏れを抑制することができる。
【0094】
芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレートなどのベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレートなどのビフェニル環を有するものなどが挙げられる。これらの中でも、粘着剤層1の粘着特性や耐久性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0095】
アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジンなどのN-アクリロイル複素環モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタムなどのN-ビニル基含有ラクタム系モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、粘着剤層1の導電層に対する耐久性を向上させる観点から、N-ビニル基含有ラクタム系モノマーが好ましい。
【0096】
カルボキシル基含有モノマーは、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。これらの中でも、共重合性、価格、及び粘着剤層1の粘着特性を向上させる観点から、アクリル酸が好ましい。
【0097】
ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、粘着剤層1の耐久性を向上させる観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0098】
共重合モノマーは、架橋剤との反応点になる。カルボキシル基含有モノマー、及びヒドロキシル基含有モノマーは、分子間架橋剤との反応性に富むため、粘着剤層1の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。カルボキシル基含有モノマーは、耐久性とリワーク性を両立させる点で好ましく、ヒドロキシル基含有モノマーは、リワーク性を向上させる点で好ましい。
【0099】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する全モノマー成分に対するアルキル(メタ)アクリレートの比率は、粘着剤層1の接着性を向上させる観点から、50重量%以上であることが好ましい。
【0100】
モノマー成分として、芳香環含有(メタ)アクリレートを使用する場合、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する全モノマー成分に対する芳香環含有(メタ)アクリレートの比率は、粘着剤層1の耐久性を向上させる観点から、3~25重量%であることが好ましく、22重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。この比率は、8重量%以上がより好ましく、12重量%以上がさらに好ましい。芳香環含有(メタ)アクリレートの共重合率を上記の範囲に調整することによって、光学フィルムの収縮による光漏れを抑制し、粘着剤層1のリワーク性を向上できる傾向がある。
【0101】
モノマー成分として、ヒドロキシル基含有モノマーを使用する場合、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する全モノマー成分に対するヒドロキシル基含有モノマーの比率は、粘着剤層1の粘着特性、耐久性を向上させる観点から、0.01~10重量%であることが好ましく、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましい。この比率は、0.03重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーの共重合率を上記の範囲に調整することによって、粘着剤層1において、粘着剤を十分に架橋させつつ、粘着剤が硬くなることを抑制でき、これにより、粘着剤層1の耐久性を向上できる傾向がある。
【0102】
モノマー成分としては、アルキル(メタ)アクリレート、及び上記の共重合モノマー以外にも、粘着剤層1の接着性、耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基又はビニル基などの不飽和二重結合を含む重合性官能基を有する他の共重合モノマーを用いることができる。他の共重合モノマーは、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0103】
他の共重合モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール系(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルアクリレートなどの(メタ)アクリレートモノマー;3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどのケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどが挙げられる。
【0104】
さらに、他の共重合モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーが挙げられる。
【0105】
モノマー成分として、他の共重合モノマーを使用する場合、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する全モノマー成分に対する他の共重合モノマーの比率は、10重量%以下であることが好ましく、7重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0106】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造方法>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、溶液重合、電子線やUVなどの放射線重合、塊状重合、乳化重合などの各種ラジカル重合などの公知の重合方法によって作製できる。得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれでもよい。
【0107】
溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。溶液重合は、例えば、窒素などの不活性ガス気流下で重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0108】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは、特に限定されず適宜選択して使用することができる。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件などにより制御可能である。そのため、重合開始剤及び連鎖移動剤については、その組成に応じてその使用量が適宜調整される。
【0109】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA-057)などのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
重合開始剤は、単独で又は組み合わせて使用できるが、全体としての使用量は、モノマー成分100重量部に対して、0.005~1重量部程度であることが好ましく、0.01~0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0111】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての使用量は、モノマー成分100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0112】
乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。乳化剤は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0113】
反応性を有する乳化剤としては、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤が挙げられる。この乳化剤の具体例は、アクアロンHS-10、HS-20、KH-10、BC-05、BC-10、BC-20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(ADEKA社製)などがある。反応性を有する乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれ、耐水性を向上させるため好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して0.3~5重量部が好ましく、重合安定性や機械的安定性から0.5~1重量部がより好ましい。
【0114】
放射線重合では、モノマー成分に対して、電子線、UVなどの放射線を照射することにより重合し、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造する。放射線重合を電子線で行う場合、モノマー成分に光重合開始剤を含有させることは特に必要ではない。放射線重合をUVで行う場合には、重合時間を短くすることができる利点などから、モノマー成分に光重合開始剤を含有させてもよい。光重合開始剤は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0115】
光重合開示剤としては、光重合を開始するものであれば特に制限されず、通常用いられる光重合開始剤を用いることができる。光重合開示剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、α-ケトール系、光活性オキシム系、ベンゾイン系、ベンジル系、ベンゾフェノン系、ケタール系、チオキサントン系などを用いることができる。光重合開始剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、0.05~1.5重量部であり、好ましくは0.1~1重量部である。光重合開示剤は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0116】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、通常、100万~250万である。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、120万~200万であることが好ましい。重量平均分子量が100万以上であることが、耐熱性の点で好ましい。重量平均分子量が250万以下であると、粘着剤が硬くなりにくく、剥がれが発生しにくい傾向がある。分子量分布を意味する重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、1.8~10であることが好ましく、1.8~7であることがより好ましく、1.8~5であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が10以下であることが、耐久性の点で好ましい。重量平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値から求められる。
【0117】
<シランカップリング剤>
粘着剤組成物は、化合物(C)及びポリエーテル化合物(D)以外に、シランカップリング剤(E)をさらに含んでいてもよい。シランカップリング剤(E)は、例えば、酸性基及び酸無水物基以外の反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基は、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、スチリル基、アセトアセチル基、ウレイド基、チオウレア基、(メタ)アクリル基及び複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。シランカップリング剤(E)は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0118】
シランカップリング剤(E)としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0119】
シランカップリング剤(E)として、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するもの(オリゴマー型シランカップリング剤)を用いることもできる。オリゴマー型シランカップリング剤の具体例としては、信越化学社製のエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤、商品名「X-41-1053」、「X-41-1059A」、「X-41-1056」、「X-40-2651」などが挙げられる。オリゴマー型シランカップリング剤は、揮発しにくく、アルコキシシリル基を複数有することから、粘着剤層1の耐久性を効果的に向上させることができるため好ましい。
【0120】
粘着剤組成物がシランカップリング剤(E)を含む場合、粘着剤組成物におけるシランカップリング剤(E)の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.001~5重量部であることが好ましく、1重量部以下がより好ましく、0.6重量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤(E)の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上がより好ましく、0.05重量部以上がさらに好ましく、0.1重量部以上が特に好ましい。シランカップリング剤(E)の含有量を適切に調節することによって、粘着剤層1の耐久性を向上できる傾向がある。
【0121】
粘着剤組成物がシランカップリング剤(E)を含む場合、化合物(C)とシランカップリング剤(E)の重量比(化合物(C)/シランカップリング剤(E))は、粘着剤層1の耐久性を向上させる観点から、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましく、50以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。
【0122】
<架橋剤>
粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含んでいてもよい。架橋剤としては、有機系架橋剤、多官能性金属キレートなどを用いることができる。有機系架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤などが挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属原子が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Tiなどが挙げられる。共有結合又は配位結合する有機化合物は、例えば酸素原子などを含み、好ましくはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物などが挙げられる。架橋剤は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0123】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤及び/又は過酸化物系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤と過酸化物系架橋剤を併用することがより好ましい。
【0124】
イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤又は数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を少なくとも2つ有する化合物を用いることができる。例えば、一般にウレタン化反応に用いられる公知の脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが用いられる。
【0125】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0126】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0127】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソソアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0128】
イソシアネート系架橋剤としては、上記ジイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体など)、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたウレタン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、アルファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0129】
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、東ソー社製の商品名「ミリオネートMT」、「ミリオネートMTL」、「ミリオネートMR-200」、「ミリオネートMR-400」、「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネートHX」、三井化学社製の商品名「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートD-140N」、「タケネートD-160N」、「タケネートD-165N」、「タケネートD-170HN」、「タケネートD-178N」、「タケネート500」、「タケネート600」などが挙げられる。
【0130】
イソシアネート系架橋剤としては、芳香族ポリイソシアネート及びその変性体である芳香族ポリイソシアネート系化合物、脂肪族ポリイソシアネート及びその変性体である脂肪族ポリイソシアネート系化合物が好ましい。芳香族ポリイソシアネート系化合物は、架橋速度とポットライフのバランスがよく好適に用いられる。芳香族ポリイソシアネート系化合物としては、特に、トリレンジイソソアネート及びその変性体が好ましい。
【0131】
過酸化物としては、加熱又は光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー(A))の架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0132】
過酸化物としては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などが挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが挙げられる。
【0133】
過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、例えば、日本油脂社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0134】
粘着剤組成物に架橋剤を配合する場合、架橋剤の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~3重量部が好ましく、0.02~2重量部がより好ましく、0.03~1重量部がさらに好ましい。架橋剤の配合量が0.01重量部以上である場合、粘着剤層1が十分に架橋され、耐久性や粘着特性が向上する傾向がある。一方、架橋剤の配合量が3重量部以下である場合、粘着剤層1が硬くなり、耐久性が低下することを抑制できる傾向がある。
【0135】
粘着剤組成物にイソシアネート系架橋剤を配合する場合、イソシアネート系架橋剤の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して0.01~2重量部であることが好ましく、0.02~2重量部であることがより好ましく、0.05~1.5重量部であることがさらに好ましい。イソシアネート系架橋剤の配合量が上記の範囲である場合、粘着剤層1の凝集力が向上し、耐久性試験での剥離が抑制される傾向がある。
【0136】
粘着剤組成物に過酸化物を配合する場合、過酸化物の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して0.01~2重量部であることが好ましく、0.04~1.5重量部であることがより好ましく、0.05~1重量部であることがさらに好ましい。過酸化物の配合量が上記の範囲である場合、粘着剤層1の加工性、架橋安定性などを容易に調整できる。
【0137】
<他の成分>
粘着剤組成物は、イオン性化合物をさらに含んでいてもよい。イオン性化合物としては、特に限定されず、本分野において用いられるものを好適に用いることができる。イオン性化合物としては、例えば、特開2015-4861号公報に記載されているものを挙げることができ、それらの中でも、(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)リチウムがより好ましい。イオン性化合物の配合量は、特に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲とすることができるが、例えば、ベースポリマー100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましく、1重量部以下が特に好ましい。
【0138】
粘着剤組成物は、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、例えば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。さらに、制御できる範囲内で、還元剤を加えたレドックス系を採用してもよい。これら添加剤は、ベースポリマー100重量部に対して5重量部以下、さらには3重量部以下、さらには1重量部以下の範囲で用いることが好ましい。
【0139】
<粘着剤層の製造方法>
粘着剤組成物から粘着剤層1を形成するときには、粘着剤組成物に対する架橋剤全体の添加量を調整するとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮することが好ましい。
【0140】
使用する架橋剤によって、架橋処理温度や架橋処理時間は、適宜調整が可能である。架橋処理温度は、170℃以下であることが好ましい。かかる架橋処理は、粘着剤層1の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常、0.2~20分間程度であり、0.5~10分間程度であることが好ましい。
【0141】
粘着剤層1の形成方法は、特に限定されず、各種基材上に粘着剤組成物を塗布し、熱オーブンなどの乾燥器により乾燥して溶剤などを揮散させ、必要に応じて架橋処理を施して粘着剤層1を形成し、偏光フィルム2上に当該粘着剤層1を転写する方法であってもよく、偏光フィルム2上に直接粘着剤組成物を塗布して、粘着剤層1を形成する方法であってもよい。
【0142】
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、離型フィルム、透明樹脂フィルム基材などの各種基材を挙げることができる。
【0143】
基材や偏光フィルム2への粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ファウンテンコーター、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0144】
上記の乾燥条件(温度、時間)は、特に限定されず、粘着剤組成物の組成、濃度などにより適宜設定することができるが、例えば、80~170℃程度、好ましくは90~200℃で、1~60分間、好ましくは2~30分間である。乾燥後、必要に応じて架橋処理を施すことができるが、その条件は上述のとおりである。
【0145】
粘着剤層1の厚さ(乾燥後)は、例えば、5~100μmであることが好ましく、7~70μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。粘着剤層1の厚さが5μm以上であれば、被着体に対する密着性が向上し、加湿条件下で十分な耐久性を有する傾向がある。一方、粘着剤層の厚さが100μm以下である場合、粘着剤層1を形成する際の粘着剤組成物の乾燥時に十分に乾燥でき、気泡の残存や粘着剤層1の厚みムラの発生を抑制でき、外観上の問題が生じにくい傾向がある。
【0146】
離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体などを挙げることができる。離型フィルムとしては、表面平滑性に優れる点から樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0147】
離型フィルムの厚さは、通常5~200μmであり、好ましくは5~100μm程度である。離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系などの離型剤、シリカ粉などによる離型処理及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。特に、離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜行うことにより、粘着剤層1からの剥離性をより高めることができる。
【0148】
透明樹脂フィルム基材としては、特に制限されないが、透明性を有する各種の樹脂フィルムが用いられる。当該樹脂フィルムは1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。フィルム基材の厚さは、15~200μmであることが好ましい。
【0149】
[偏光フィルム]
偏光フィルム2は、偏光子及び透明保護フィルムを含む積層体である。透明保護フィルムは、例えば、層状の偏光子の主面(最も広い面積を有する表面)に接して配置されている。偏光子は、2つの透明保護フィルムの間に配置されていてもよい。
【0150】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの;ポリビニルアルコールの脱水処理物、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好ましく、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子がより好ましい。偏光子の厚さは、特に制限されないが、一般的に5~80μm程度である。
【0151】
ポリビニルアルコール系フィルムでは、高温環境下で、ポリビニルアルコールが脱水反応によりポリエン化することによって、フィルムの光学特性が低下することがある。ポリエン化は、偏光フィルム2の水分量が多い場合に顕著に生じる傾向がある。そのため、偏光子として、ポリビニルアルコール系フィルムを用いる場合、偏光フィルム2の水分量をあらかじめ減少させるためのプレヒートが特に重要である。
【0152】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じて、ホウ酸、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含むヨウ化カリウムなどの水溶液にポリビニルアルコールを浸漬することもできる。さらに、必要に応じて、染色前に、ポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することによって、ポリビニルアルコール系フィルムの表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの発生を抑制する効果もある。ポリビニルアルコール系フィルムの延伸は、ヨウ素で染色した後に行ってもよく、染色しながら行ってもよく、ヨウ素で染色する前に行ってもよい。延伸は、ホウ酸、ヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中で行ってもよい。
【0153】
偏光子としては、厚さが10μm以下の薄型偏光子を用いることもできる。薄型化の観点から言えば、偏光子の厚さは、1~7μmであることが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルム2の薄型化を図れる点で好ましい。
【0154】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、国際公開第2010/100917号、特許第4751481号公報、特開2012-073563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これらの薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程とを含む製法により得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が延伸用樹脂基材に支持されているため、PVA系樹脂層が薄くても、延伸による破断などの不具合を抑制することができる。
【0155】
積層体の状態で延伸する工程と染色する工程とを含む製法の中でも、高倍率に延伸でき、偏光性能を向上できる点で、国際公開第2010/100917号、特許第4751481号、特開2012-073563号公報に記載された、ホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法が好ましく、特に特許第4751481号公報や特開2012-073563号公報に記載されたホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法が好ましい。
【0156】
偏光子の片面又は両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロースなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルムの材料は、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂であってもよい。偏光フィルム2が2つの透明保護フィルムを有する場合、2つの透明保護フィルムの材料は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、偏光子の一方の主面に対して、接着剤を介して、熱可塑性樹脂で構成された透明保護フィルムが貼り合わされ、偏光子の他方の主面に対して、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂で構成された透明保護フィルムが貼り合わされていてもよい。透明保護フィルムは、任意の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有率は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有率が50重量%以上である場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現できる傾向がある。
【0157】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄膜性などの点より10~200μm程度である。
【0158】
偏光フィルム2に含まれる少なくとも1つの透明保護フィルムの透湿度は、300g/m2・24h以上であることが好ましく、500g/m2・24h以上がより好ましく、800g/m2・24h以上がさらに好ましい。透明保護フィルムの透湿度が高い場合、プレヒートによって偏光フィルム2の水分量を容易に減少させることができる。一方、透明保護フィルムの透湿度が過度に高いと、偏光フィルム2の加湿耐久性が低下する場合がある。そのため、透明保護フィルムの透湿度は、1600g/m2・24h以下であることが好ましく、1300g/m2・24h以下であることがより好ましい。なお、透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定される値であり、40℃、90%の相対湿度差で、面積1m2の試料を24時間で透過する水蒸気の重量である。
【0159】
偏光子と透明保護フィルムとは通常、水系接着剤などを介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステルなどを例示できる。上記の接着剤以外の他の接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤などが挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。接着剤は、金属化合物フィラーを含んでいてもよい。
【0160】
偏光フィルム2では、透明保護フィルムに代えて、位相差フィルムなどを偏光子上に形成することもできる。透明保護フィルム上には、さらに別の透明保護フィルムを設けること、位相差フィルムなどを設けることなどもできる。
【0161】
透明保護フィルムについて、偏光子と接着している表面と対向する表面には、ハードコート層が設けられていてもよく、反射防止、スティッキング防止、拡散、アンチグレアなどを目的とした処理を施すこともできる。
【0162】
[他の部材]
粘着剤層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム2以外の他の光学フィルムをさらに備えていてもよい。他の光学フィルムとしては、例えば、反射板、反透過板、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム等の液晶表示装置に用いられるフィルムが挙げられる。位相差フィルムは、例えば、1/2波長板、1/4波長板等を含む。粘着剤層付き偏光フィルム10は、これらの1種又は2種以上の他の光学フィルムを備えていてもよい。
【0163】
粘着剤層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム2と粘着剤層1との間に位置するアンカー層をさらに備えていてもよい。アンカー層を形成する材料は、特に限定されず、例えば、各種ポリマー類、金属酸化物のゾル、シリカゾルなどが挙げられる。これらの中でも、特にポリマー類が好ましく用いられる。ポリマー類の使用形態は、溶剤可溶型、水分散型、水溶解型のいずれであってもよい。
【0164】
上記のポリマー類としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
【0165】
粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層1が露出する場合、実用に供されるまで離型フィルム(セパレーター)で粘着剤層1を保護してもよい。離型フィルムとしては、前述のものを挙げることができる。粘着剤層1の作製にあたって、基材として離型フィルムを用いた場合、離型フィルム上の粘着剤層1と偏光フィルム2とを貼り合せることによって、当該離型フィルムを、粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層1の離型フィルムとして用いることができ、工程面における簡略化が可能である。
【0166】
[粘着剤層の特性]
次に、粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層1が、導電層に貼り付けられた場合であっても、プレヒート後のリワーク性を維持できるとともに、高温環境下での耐久性を有する理由について、考えられるメカニズムとともに説明する。
【0167】
粘着剤組成物から粘着剤層1を形成した後、粘着剤層1において、化合物(C)の酸無水物基は、空気中の水分により加水分解されることによって酸性基に変化する。一方、ITOなどの金属酸化物を含む導電層の表面には、水酸基だけでなく、水酸基が水酸化物イオンとして脱離することによって生じた金属カチオンが存在する。図2に示すように、粘着剤層1により粘着剤層付き偏光フィルム10を導電層3に貼り付けた場合、化合物(C)の酸性基は、導電層3の表面近傍に存在する水酸化物イオンとの中和反応により脱プロトン化する。これにより生成したアニオンは、導電層3の表面の金属カチオンとイオン結合を形成する。すなわち、化合物(C)の酸性基と導電層3との間で酸塩基反応が生じる。これにより、導電層3の表面上に化合物(C)が偏析し、粘着剤層1において、化合物(C)を含む第1層11が形成されると推定される。
【0168】
第1層11が形成された後、第1層11の表面上には、ポリエーテル化合物(D)が偏析する傾向がある。そのため、粘着剤層1において、第1層11の上に、ポリエーテル化合物(D)を含む第2層12が形成される。なお、粘着剤層1が化合物(C)を含まない場合、ポリエーテル化合物(D)は、導電層3の表面上にはほとんど偏析しない。そのため、第1層11は、ポリエーテル化合物(D)が容易に偏析するように、導電層3の表面を改質する表面改質層とみなすことができる。
【0169】
このように、粘着剤層1により粘着剤層付き偏光フィルム10を導電層3に貼り付けることによって、粘着剤層1では、第1層11及び第2層12が形成されると推定される。第1層11及び第2層12が形成されることによって、粘着剤層1では、例えば、粘着剤を主に含む第3層13がさらに形成される。第1層11、第2層12及び第3層13は、積層方向にこの順で並んでいる。
【0170】
プレヒートが行われる前において、第1層11及び第2層12は、第3層13に比べて凝集力が小さい。そのため、プレヒートが行われる前では、第1層11又は第2層12での凝集破壊により、導電層3から粘着剤層付き偏光フィルム10を容易に剥離することができる。
【0171】
例えば70℃~95℃程度の温度でプレヒートが行われた場合、化合物(C)の反応などにより、第1層11の凝集力が大きく増加する傾向がある。第1層11の凝集力の増加は、化合物(C)が加水分解性基(h1)を含む場合に特に顕著である。一方、第2層12の凝集力は、第1層11に比べて増加しにくい。そのため、プレヒートが行われた後では、第2層12、又は、第1層11と第2層12との界面での凝集破壊により、導電層3から粘着剤層付き偏光フィルム10を容易に剥離することができる。すなわち、第2層12は、プレヒート後において、粘着剤層1のリワーク性を担保する層として機能する。
【0172】
さらに、95℃より高い温度の環境下に粘着剤層1が配置された場合、ポリエーテル化合物(D)の反応などにより、第2層12の凝集力が大きく増加する傾向がある。第2層12の凝集力の増加は、ポリエーテル化合物(D)が加水分解性基(h2)を含む場合に特に顕著である。これにより、粘着剤層1と導電層3との接着力が大きく増加し、粘着剤層1の耐久性が向上する傾向がある。
【0173】
本発明は、その別の側面から、
粘着剤組成物から形成された粘着剤層1であって、
粘着剤組成物は、酸性基又は酸無水物基を有する化合物(C)とポリエーテル化合物(D)とを含み、
試験1により求めた接着力P85が10.0N/25mm以下であり、かつ、試験2により求めた接着力P105が10.0N/25mmより大きい、粘着剤層1を提供する。
【0174】
(画像表示パネルの実施形態)
図3に示すように、本実施形態の画像表示パネル100は、粘着剤層付き偏光フィルム10、導電層3及び透明基板4を備えている。導電層3及び透明基板4は、例えば、液晶セル20を構成する部材である。すなわち、画像表示パネル100は、粘着剤層付き偏光フィルム10及び液晶セル20を備える液晶表示パネルである。ただし、画像表示パネル100は、液晶セル20に代えて、有機ELセルを備えていてもよい。画像表示パネル100において、粘着剤層付き偏光フィルム10は、例えば、液晶セル20よりも視認側に位置する。
【0175】
粘着剤層付き偏光フィルム10、導電層3及び透明基板4は、例えば、積層方向にこの順で並んでおり、粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層1が導電層3と直接接している。言い換えると、粘着剤層付き偏光フィルム10が粘着剤層1により導電層3に貼り付けられている。導電層3は、例えば、透明基板4と直接接している。導電層3と透明基板4との間には、必要に応じて、アンダーコート層、オリゴマー防止層などの他の層が配置されていてもよい。
【0176】
[粘着剤層]
上述のとおり、粘着剤層1により粘着剤層付き偏光フィルム10を導電層3に貼り付けた場合、粘着剤層1において、第1層11、第2層12及び第3層13が形成される。導電層3、第1層11、第2層12及び第3層13が積層方向にこの順で並んでおり、第2層12と偏光フィルム2との間に、第3層13が位置する。
【0177】
第1層11は、例えば、化合物(C)又はその反応物(R1)を含む。化合物(C)が加水分解性基(h1)を含む場合、反応物(R1)は、例えば、複数の化合物(C)の加水分解縮合物、又は、化合物(C)と導電層3の表面の水酸基との反応物である。第1層11は、化合物(C)又はその反応物(R1)を主成分として含んでいてもよい。
【0178】
第2層12は、例えば、ポリエーテル化合物(D)又はその反応物(R2)を含む。ポリエーテル化合物(D)が加水分解性基(h2)を含む場合、反応物(R2)は、例えば、複数のポリエーテル化合物(D)の加水分解縮合物である。第2層12は、ポリエーテル化合物(D)又はその反応物(R2)を主成分として含んでいてもよい。
【0179】
第3層13は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)などのベースポリマー、又はその反応物(R3)を含む。粘着剤層1を形成する粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、反応物(R3)は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の架橋物である。第3層13は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)又はその反応物(R3)を主成分として含んでいてもよい。
【0180】
なお、粘着剤層1が第1層11、第2層12及び第3層13を有することは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法によって確認してもよい。例えば、粘着剤層1を形成するための粘着剤組成物を準備する。この粘着剤組成物を導電層3に塗布し、乾燥後の厚さが1μm程度になる塗布膜を作製する。塗布膜を乾燥させることによって得られた膜について、その表面から当該膜の厚さ方向にかけて、TOF-SIMSによる分析を行う。これにより、粘着剤層1が第1層11、第2層12及び第3層13を有することを確認できる。
【0181】
[導電層]
導電層3は、金属酸化物を含む限り、特に限定されない。金属酸化物としては、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む酸化物が挙げられる。導電層3は、金属酸化物だけでなく、必要に応じて、上記の群に示された金属をさらに含んでいてもよい。導電層3の材料は、例えば、酸化インジウムスズ、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。酸化インジウムスズは、酸化スズを含有する酸化インジウムを意味し、インジウム-スズ複合酸化物やITOと呼ばれる。導電層3は、ITOを含むことが好ましく、実質的にITOからなることがより好ましい。
【0182】
導電層3に含まれるITOにおいて、酸化インジウムの含有率は、80~99重量%であることが好ましい。ITOにおける酸化スズの含有率は、1~20重量%であることが好ましい。ITOは、結晶性を有していてもよく、非結晶性(アモルファス)であってもよい。
【0183】
導電層3の厚さは、特に限定されず、10nm以上が好ましく、15~40nmであることがより好ましく、20~30nmであることがさらに好ましい。
【0184】
導電層3の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、導電層3は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって作製することができる。これらの方法は、必要とする導電層3の膜厚に応じて適宜選択できる。
【0185】
[透明基板]
透明基板4としては、透明な基板であればよく、その材料は特に限定されない。透明基板4としては、例えば、ガラス、透明樹脂フィルム基材を挙げることができる。透明樹脂フィルム基材としては、上述のものを挙げることができる。
【0186】
[液晶セル]
液晶セル20は、例えば、導電層3及び透明基板4以外に、液晶層5及び透明基板6をさらに備える。液晶セル20において、導電層3、透明基板4、液晶層5及び透明基板6が積層方向にこの順で並んでいる。
【0187】
液晶層5としては、特に限定されず、例えば、TN型、STN型、π型、VA型、IPS型などのタイプを任意に用いることができる。透明基板6は、透明な基板であればよく、その材料は特に限定されない。透明基板6としては、例えば、ガラス、透明樹脂フィルム基材を挙げることができる。透明樹脂フィルム基材としては、上述のものを挙げることができる。
【0188】
[他の部材]
画像表示パネル100は、粘着剤層付き偏光フィルム10及び液晶セル20以外に、位相差フィルム、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの光学フィルムをさらに備えていてもよい。
【0189】
[画像表示パネルの製造方法]
画像表示パネル100の製造方法は、特に限定されず、例えば、粘着剤層付き偏光フィルム10を導電層3に貼り付けた状態で、粘着剤層1について、70℃~95℃で第1加熱処理を行うこと、を含む。
【0190】
第1加熱処理は、偏光フィルム2の水分量を減少させるためのプレヒートに相当する。第1加熱処理の温度は、80℃~95℃であることが好ましい。第1加熱処理の時間は、特に限定されず、例えば1時間~5時間であり、好ましくは3時間~5時間である。
【0191】
第1加熱処理後の偏光フィルム2の水分量は、特に限定されず、例えば7g/m2以下である。偏光フィルム2の水分量の測定は、特許文献1に記載された方法を利用できる。
【0192】
画像表示パネル100の製造方法は、第1加熱処理の後に、粘着剤層1について、95℃より高い温度で第2加熱処理を行うこと、をさらに含んでいてもよい。第2加熱処理により、粘着剤層1の接着力が大きく増加し、粘着剤層1の耐久性が向上する傾向がある。第2加熱処理の温度は、100℃~150℃であってもよい。第2加熱処理の時間は、特に限定されず、例えば1時間~1000時間であり、好ましくは24時間以上である。
【0193】
(画像表示パネルの変形例)
画像表示パネル100は、2つの粘着剤層付き偏光フィルム10を備えていてもよい。図4に示すとおり、本変形例にかかる画像表示パネル110は、2つの粘着剤層付き偏光フィルム10a及び10bを備えている。粘着剤層付き偏光フィルム10bを除き、画像表示パネル110の構造は、画像表示パネル100の構造と同じである。したがって、画像表示パネル100と変形例の画像表示パネル110とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。
【0194】
粘着剤層付き偏光フィルム10bは、粘着剤層1bにより、液晶セル20の透明基板6に貼り付けられている。画像表示パネル110において、液晶セル20は、粘着剤層付き偏光フィルム10a及び10bの間に位置し、粘着剤層付き偏光フィルム10bよりも視認側に位置する。
【0195】
粘着剤層付き偏光フィルム10bが備える粘着剤層1b及び偏光フィルム2bは、それぞれ、粘着剤層付き偏光フィルム10aが備える粘着剤層1a及び偏光フィルム2aと同じであってもよく、異なっていてもよい。粘着剤層1b及び偏光フィルム2bは、本分野において従来用いられているものであってもよい。
【0196】
(画像表示装置の実施形態)
本実施形態の画像表示装置は、例えば、画像表示パネル100及び照明システムを備えている。画像表示装置では、画像表示パネル100に代えて、画像表示パネル110も使用可能である。画像表示装置において、画像表示パネル100は、例えば、照明システムよりも視認側に配置されている。照明システムは、例えば、バックライト又は反射板を有し、画像表示パネル100に光を照射する。
【0197】
画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などを挙げることができる。これらの画像表示装置は、家電用途、車載用途、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)用途などに用いることができ、車載用途に用いることが特に好ましい。
【実施例
【0198】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、以下では、特にことわりのない場合、「%」は「重量%」を示し、「部」は「重量部」を示し、「厚さ」は「物理膜厚」を示す。特にことわりのない場合、室内の温度及び湿度は、23℃、65%RHである。
【0199】
(アクリル系ポリマー(A1))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)100重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)0.075重量部、アクリル酸(AA)5重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、モノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って6時間重合反応を行った。これにより、重量平均分子量240万、Mw/Mn=4.5のアクリル系ポリマー(A1)の溶液を調製した。
【0200】
(アクリル系ポリマー(A2))
使用するモノマーを表1のように変更したことを除き、アクリル系ポリマー(A1)と同じ方法で、アクリル系ポリマー(A2)の溶液をそれぞれ調製した。
【0201】
(アクリル系オリゴマー(B1))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)85重量部、アクリル酸(AA)15重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、トルエン100重量部、並びに、α-チオグリセロール3.5重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して十分に窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って4時間重合反応を行い、アクリル系オリゴマー(B1)の溶液を調製した。アクリル系オリゴマー(B1)の重量平均分子量は6700であった。
【0202】
(アクリル系オリゴマー(B2))
使用するモノマーを表1のように変更したことを除き、アクリル系オリゴマー(B1)と同じ方法でアクリル系オリゴマー(B2)を調製した。
【0203】
【表1】
【0204】
表1中の略称は以下のとおりである。
BA:n-ブチルアクリレート
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
PEA:フェノキシエチルアクリレート
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
MEA:2-メトキシエチルアクリレート
【0205】
(化合物(C1))
特開2013-129809号公報の実施例1に記載された方法に準じて、化合物(C1)を作製した。化合物(C1)は、オルガノポリシロキサン化合物であり、上述したシロキサン単位(U1)及び(U2)を含んでいた。シロキサン単位(U1)において、Xは、プロピルコハク酸無水物基であり、R4は、メチル基であった。シロキサン単位(U2)において、2つのR4は、いずれもメトキシ基であった。化合物(C1)におけるシロキサン単位(U1)の含有率は、27mol%であった。化合物(C1)におけるシロキサン単位(U2)の含有率は、73mol%であった。化合物(C1)の重量平均分子量は、1000程度であった。
【0206】
(偏光フィルム)
[HC付TACフィルム]
まず、ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC社製、商品名:ユニディック17-806、固形分濃度:80%)を準備した。次に、この樹脂溶液の固形分100部に対して、光重合開始剤(BASF社製、商品名:IRGACURE907)5部、及びレベリング剤(DIC社製、商品名:GRANDIC PC4100)0.1部を樹脂溶液に添加した。次に、得られた溶液の固形分濃度が36%となるように、当該溶液にシクロペンタノンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを45:55の比率で加えることによって、ハードコート層を形成するための材料を作製した。次に、硬化後のハードコート層の厚さが7μmになるように、この材料をTACフィルム(富士フィルム社製のTJ40UL、原料:トリアセチルセルロース系ポリマー、厚さ:40μm)の上に塗布して塗膜を形成した。次に、塗膜を90℃で1分間乾燥し、さらに高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射することによって、塗膜を硬化させ、ハードコート層(HC)を形成した。これにより、HC付TACフィルムを作製した。
【0207】
[アクリルフィルム]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn-ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温した。還流が開始したところで、重合開始剤として5.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC-7、化薬アクゾ社製)を添加すると同時に、10.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下、約105~120℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0208】
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(PhoslexA-18、堺化学工業製)を加え、還流下、約90~120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で、2.0kg/hの処理速度で導入した。この押出機内では、さらなる環化縮合反応とともに脱揮が進行した。これにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
【0209】
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が133,000であり、メルトフローレートが6.5g/10minであり、ガラス転移温度が131℃であった。
【0210】
得られたペレットと、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂(トーヨーASAS20、東洋スチレン社製)とを、質量比90/10で、単軸押出機(スクリュー30mmφ)を用いて混練押出することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
【0211】
50mmφ単軸押出機を用いて、このペレットを400mm幅のコートハンガータイプTダイから溶融押出することによって、厚さ120μmのフィルムを作製した。作製したフィルムについて、2軸延伸装置を用いて、150℃の温度条件下、縦2.0倍及び横2.0倍に延伸することにより、厚さ30μmの延伸フィルム(アクリルフィルム)を得た。この延伸フィルムの光学特性を測定したところ、全光線透過率が93%であり、面内位相差Δndが0.8nmであり、厚み方向位相差Rthが1.5nmであった。
【0212】
次に、以下の方法によって偏光フィルムを作製した。まず、速度比が互いに異なる複数のロールの間において、厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを濃度0.3%のヨウ素溶液(温度30℃)中で1分間染色しながら、延伸倍率が3倍になるように延伸した。次に、得られた延伸フィルムをホウ酸の濃度が4%であり、ヨウ化カリウムの濃度が10%である水溶液(温度60℃)中に0.5分間浸漬しながら、総延伸倍率が6倍になるように延伸した。次に、延伸フィルムを濃度1.5%のヨウ化カリウムを含む水溶液(温度30℃)中に10秒間浸漬することによって洗浄した。次に、延伸フィルムを50℃で4分間乾燥させることによって、厚さ18μmの偏光子を得た。得られた偏光子の一方の主面に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、けん化処理した上記のHC付TACフィルムを貼り合わせた。このとき、トリアセチルセルロースフィルムがハードコート層よりも偏光子側に位置していた。偏光子の他方の主面には、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、上述したアクリルフィルムを貼り合わせた。これにより、偏光フィルムを得た。
【0213】
(実施例1)
アクリル系ポリマー(A1)の溶液の固形分100部に対して、化合物(C1)0.4部、ポリエーテル化合物(D)(カネカ社製のサイリルSAT10)0.4部、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム0.5部、イソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)1部、及びベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。サイリルSAT10は、上記式(13)で表される化合物であり、A1が-CH2CH(CH3)-であり、A2が-C36-であり、Z1が-C36-Z0であり、反応性シリル基(Z0-)がジメトキシメチルシリル基である。サイリルSAT10の数平均分子量は、5000である。
【0214】
次に、得られたアクリル系粘着剤組成物の溶液をシリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF38)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布した。塗布膜について、155℃で1分間乾燥を行うことによって、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。次に、偏光フィルムのアクリルフィルム側に、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写することによって、実施例1の粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0215】
(実施例2~12、比較例1~3)
アクリル系粘着剤組成物の組成を表2に示すように変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例2~12、比較例1~3の粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0216】
[評価]
<アクリル系ポリマー及びアクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)>
得られたアクリル系ポリマー及びアクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0217】
<接着力>
作製した粘着剤層の接着力P0、P85及びP105は、上述の試験1~3により実施した。ITO層付きガラスは、厚さ7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、商品名「EG-XG」)にITO層を形成することによって作製した。ITO層は、スパッタリング法によって作製した。ITO層において、Sn原子の重量とIn原子の重量との合計値に対するSn原子の重量の比率(Sn比率)は、3wt%であった。ITO層については、原子間力顕微鏡(AFM、Bruker製、Dimension3100+NanoscopeV)を用いて、下記の測定条件でその表面を分析した。その結果、ITO層の平均面粗さRaが0.2nmであり、二乗平均粗さRqが0.3nmであり、最大高さRmaxが2.6nmであった。試験片をITO層から引きはがす操作は、引張試験機(オートグラフSHIMAZU AG-1 1OKN)を用いて行った。
(AFM測定条件)
・測定モード:タッピングモード
・カンチレバー:Si単結晶
・測定領域:10μm角
【0218】
<初期のリワーク性>
接着力の測定に使用したITO層付きガラスを用いて、以下の方法によりリワーク試験を行った。まず、粘着剤層付き偏光フィルムを縦230mm×横120mmの短冊状に切り出して試験片とした。次に、ITO層付きガラスのITO層の表面に試験片を粘着剤層により貼り付けた。ITO層への試験片の貼り付けは、ラミネーターを用いて行った。試験片を貼り付けた後、50℃及び5気圧(絶対圧)のオートクレーブ内に15分収容してITO層と粘着剤層との接合を均質化させ、粘着剤層をITO層に密着させた。次に、人の手によりITO層付きガラスから試験片を剥離した。上記手順でリワーク試験を3回繰り返し実施し、下記基準で、粘着剤層の初期のリワーク性を評価した。
(評価基準)
A:3枚とも糊残りやフィルムの破断がなく、良好に剥離可能であった。
B:3枚のうちの一部は、剥離によりフィルムが破断したが、再度の剥離によって剥がせた。
C:3枚とも剥離によりフィルムが破断したが、再度の剥離によって剥がせた。
D:3枚とも糊残りが生じた、又は何度剥離を試みてもフィルムが破断して剥がせなかった。
【0219】
<プレヒート後のリワーク性>
リワーク試験において、オートクレーブ内でITO層と粘着剤層との接合を均質化させた後に、85℃の大気圧雰囲気下で5時間加熱処理を行ったこと、及び、加熱処理の後に試験片を室温の雰囲気に放置し、試験片の温度を室温まで低下させたことを除き、上記のリワーク性の評価と同じ方法によって、粘着剤層のプレヒート後のリワーク性を評価した。
【0220】
<耐久性>
接着力の測定に使用したITO層付きガラスを用いて、以下の方法により耐久性試験を行った。まず、粘着剤層付き偏光フィルムを縦300mm×横220mmの短冊状に切り出して試験片とした。次に、ITO層付きガラスのITO層の表面に試験片を粘着剤層により貼り付けた。ITO層への試験片の貼り付けは、ラミネーターを用いて行った。試験片を貼り付けた後、50℃及び0.5MPaのオートクレーブ内に15分収容してITO層と粘着剤層との接合を均質化させ、粘着剤層をITO層に密着させた。次に、試験片について、105℃の大気圧雰囲気下で500時間加熱処理を行った。偏光フィルムとITO層との間の粘着剤層の外観を目視により観察し、下記基準で、粘着剤層の耐久性を評価した。
(評価基準)
A:発泡、剥がれなどの外観上の変化が全くなし。
B:端部に剥がれ、又は発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
C:端部に著しい剥がれがあり、実用上問題あり。
【0221】
【表2】
【0222】
表2中の略称は以下のとおりである。
A1:アクリル系ポリマー(A1)
A2:アクリル系ポリマー(A2)
B1:アクリル系オリゴマー(B1)
B2:アクリル系オリゴマー(B2)
C1:化合物(C1)
X-12-967C:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製)
SAT10:サイリルSAT10(カネカ社製)
X-41-1056:エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤(信越化学工業社製)
【0223】
表2からわかるとおり、本実施形態の粘着剤層付き偏光フィルムの粘着剤層は、導電層に貼り付けられた場合であっても、プレヒート後のリワーク性が維持されるとともに、高温環境下での耐久性を有していた。なお、化合物(C)が存在しない比較例2及び3では、接着力P0及びP85を測定する条件において、ポリエーテル化合物(D)であるサイリルSAT10がITO層の表面上にほとんど偏析しなかった一方、接着力P105を測定する条件において、サイリルSAT10がITO層の表面上に偏析したと推定される。これにより、比較例2及び3では、接着力P105が接着力P85よりも低く、105℃での加熱処理後の耐久性が低い結果になったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED)などの画像表示装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0225】
1 粘着剤層
2 偏光フィルム
3 導電層
4 透明基板
10 粘着剤層付き偏光フィルム
11 第1層
12 第2層
13 第3層
20 液晶セル
100,110 画像表示パネル
図1
図2
図3
図4