(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】建物ユニットの柱結合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20241113BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
E04B1/348 K
E04B1/348 H
E04B1/58 507R
(21)【出願番号】P 2020161878
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余田 泰宏
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-114977(JP,A)
【文献】特開2015-180798(JP,A)
【文献】特開平11-172777(JP,A)
【文献】特開2009-062719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に対向して設けられた大梁の上下に対向する対向面に柱を結合して形成された建物ユニットの柱結合構造であって、
前記柱は、上下端
部に、締結具により前記大梁に締結されたエンドプレートを備え、
各前記エンドプレートは、前記柱に溶接により接合された厚板部と、前記厚板部に溶接により接合されて前記大梁に前記締結具により締結された締結用板部と、を備え、
前記厚板部は、要求剛性を備え前記締結用板部よりも厚い板厚を有し、
前記締結用板部は、結合対象の前記大梁の前記対向面に当接し、前記厚板部よりも各大梁に沿う方向の寸法が大きく形成された部分で前記対向面に当接して前記締結具により締結されたベース板部と、前記ベース板部と一体に形成され、前記大梁の側面に沿って設けられた側板部とを備え
、
前記締結用板部は、前記ベース板部と前記側板部とにより略L字断面形状に形成されている建物ユニットの柱結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物ユニットの柱結合構造において、
前記大梁は、ウェブの上下に一体の上フランジと下フランジとを備え、
前記柱を結合する位置の前記大梁の内側に、前記柱からの入力に対する応力を前記大梁全体に伝達するスチフナが取付けられている建物ユニットの柱結合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建物ユニットであって、
前記スチフナは、前記上フランジ、前記下フランジ、前記ウェブとに直接あるいは間接的に結合された板状の複数の縦板を備える建物ユニットの柱結合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の建物ユニットの柱結合構造において、
前記スチフナは、前記エンドプレートが結合される前記対向面の裏側に溶接されて、前記エンドプレートを締結する前記締結具が挿通された添板を備え、前記縦板は、前記添板に溶接されている建物ユニットの柱結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物ユニットの柱結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユニット建物を構築する建物ユニットは、矩形の四隅に起立状態で配置された4本の鋼製の柱の上端部どうしおよび下端部どうしを鋼製の梁材を溶接により結合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、柱と梁との結合において、柱の上端部および下端部の側面に、梁を結合させた、いわゆる柱勝ちという結合とするのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、柱の位置が、建物ユニットの4隅とするのが一般的であり、設計自由度が低い。また、居室の配置などに応じて、柱の位置を任意に設定する場合、梁の長さや形状を、柱を4隅に配置したものと異ならせることになり、一定サイズ、形状の梁を用いる場合と比較して、製造の手間およびコストを要する。また、上下の梁と梁との間の任意の位置に柱を設定したいわゆる梁勝ち構造とした場合、いわゆる柱勝ち構造の従来技術と比較して、柱の構造耐力を確保することが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、柱の位置を任意に設定可能として高い設計自由度とすることと、柱の構造耐力を確保することとが可能な建物ユニットの柱結合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の建物ユニットの柱結合構造は、大梁の上下に対向する対向面に柱を結合して形成され、前記柱は、上下端部の少なくとも一方に、締結具により前記大梁に締結されたエンドプレートを備える。前記エンドプレートは、前記柱に溶接により接合された厚板部と、前記厚板部に溶接により接合されて前記大梁に締結具により締結された締結用板部と、を備える。前記厚板部は、要求剛性を備え前記締結用板部よりも厚い板厚を有する。前記締結用板部は、結合対象の前記大梁の前記対向面に当接し、前記厚板部よりも各大梁に沿う方向の寸法が大きく形成された部分で前記対向面に当接して前記締結具により締結されたベース板部と、前記ベース板部と一体に形成され、前記大梁の側面に沿って設けられた側板部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の建物ユニットの柱結合構造では、柱の位置を任意に設定可能として高い設計自由度をえることができ、かつ、柱の構造耐力を確保することとが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の建物ユニットU1の概略を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態の建物ユニットU2の概略を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態の建物ユニットU3の概略を示す斜視図である。
【
図4】建物ユニットU1の柱構造を示す側面図である。
【
図5】建物ユニットU1の中柱40の上端部の結合構造を示す図であり、(a)はユニット短辺方向から見た側面図、(b)はユニット長辺方向から見た側面図である。
【
図6】建物ユニットU1の中柱40の下端部の結合構造を示す図であり、(a)はユニット短辺方向から見た側面図、(b)はユニット長辺方向から見た側面図である。
【
図7】
図5の矢印S7-S7方向から見た矢視図である。
【
図8】
図6の矢印S8-S8方向から見た矢視図である。
【
図9】
図6の矢印S9-S9方向から見た矢視図である。
【
図10】
図6の矢印S10-S10方向から見た矢視図である。
【
図12】柱340の上端部の結合構造を示す図であり、(a)はユニット短辺方向から見た側面図、(b)はユニット長辺方向から見た側面図である。
【
図13】柱340の下端部の結合構造を示す図であり、(a)はユニット短辺方向から見た側面図、(b)はユニット長辺方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態)
実施の形態の建物ユニットの柱結合構造は、
図1~
図3に示す建物ユニットU1、U2、U3に適用されている。
【0010】
(建物ユニットの概略)
これらの建物ユニットU1~U3は、不図示のユニット建物を構築するのに用られる。すなわち、これらの建物ユニットU1~U3およびこれ以外の建物ユニット(不図示)を水平方向や上下方向に任意に結合させて、ユニット建物(不図示)を構築することができる。
【0011】
ここで、まず、
図1に示す建物ユニットU1について説明する。建物ユニットU1は、屋根大梁10と、床大梁20と、柱30、中柱40とを備える。なお、図において、矢印LSの方向である建物ユニットU1の水平方向の長辺に沿う方向をユニット長辺方向、矢印SSの方向である建物ユニットU1の水平方向の短辺に沿う方向をユニット短辺方向、矢印UPの方向を上方、矢印DNの方向を下方とする。
【0012】
屋根大梁10および床大梁20は、断面が略コ字状のC形鋼により形成されている。すなわち、屋根大梁10は、
図5(b)に示すように、ウェブ12の上下に下フランジ11、上フランジ13が設けられた略コの字断面形状に形成されている。また、床大梁20も、
図6(b)に示すように、ウェブ22の上下に下フランジ21、上フランジ23が設けられた略コの字断面形状に形成されている。
【0013】
また、柱30は、四角筒状の鋼板により形成されている。これらの両大梁10,20および柱30の構造は、特許文献1に記載のものと同様である。すなわち、柱30が建物ユニットU1の四隅に配置され、各柱30の上端部および下端部と各大梁10,20とが、補強プレート31を介在させて溶接により結合されている。
【0014】
なお、建物ユニットU1において長辺側に位置して対向する一対の屋根大梁10,10に、複数の天井根太51が架け渡されて結合されている。また、建物ユニットU1において長辺側に位置して対向する一対の床大梁20,20に、複数の床小梁52が架け渡されて結合されている。
【0015】
(中柱の結合構造)
次に、中柱40の上端部および下端部と、建物ユニットU1の屋根大梁10および床大梁20との結合構造について説明する。
【0016】
中柱40は、建物ユニットU1の一対の長辺の一方の中間部に位置して、屋根大梁10と床大梁20との間に起立状態で設けられた、いわゆる「梁勝ち」の状態で設けられた柱である。よって、各大梁10,20の間で、任意の位置に設置することが可能である。なお、このような中柱40は、例えば、屋根に太陽光発電パネルを設置したり、積雪が多い地域に設置する場合などの補強用に追加設定する場合に用いることができる。
【0017】
この中柱40は、鋼板製の薄型角パイプにより形成され、
図7、
図8に示すように、断面が略長方形の筒状に形成されているとともに、短辺をユニット長辺方向(矢印LSに沿う方向)に沿わせて配置されている。また、中柱40の長辺側の長さは、各大梁10,20の幅寸法よりも大きな寸法であり、かつ、柱30よりも小断面積のものが用いられている。
【0018】
そして、中柱40は、鉛直方向の荷重だけでなく水平方向の荷重(地震力、風圧力)を負担する機能(構造耐力)が付与されている。中柱40は、このような構造耐力を付与するために、後述する上下エンドプレート41,42と上下スチフナ60,70を備えるもので、以下に、これら上下エンドプレート41,42と上下スチフナ60,70について説明する。
【0019】
<エンドプレートの構成>
まず、上エンドプレート41および下エンドプレート42について、
図4~
図6に基づいて説明する。
【0020】
(上エンドプレートの構成)
図4に示すように、上エンドプレート41は、中柱40の上端部に設けられ、下エンドプレート42は、中柱40の下端部に設けられている。
【0021】
上エンドプレート41は、
図5に示すように、下側から厚板部411と締結用板部412とを備える。なお、厚板部411と締結用板部412とは、相互に溶接により接合され、厚板部411は、中柱40に溶接されている。
【0022】
厚板部411は、締結用板部412の2倍程度の板厚(例えば、9mm程度)を有する長方形の鋼板により形成され、中柱40の上端に溶接により結合されている。なお、厚板部411は、ユニット長辺方向の寸法が、
図5(a)に示すように、中柱40のユニット長辺方向の寸法よりも大きく、かつ、後述する上スチフナ60の一対の縦板62のユニット長辺方向の間隔の寸法よりも大きな寸法に形成されている。そして、厚板部411は、ユニット短辺方向の寸法が、
図5(b)に示すように、中柱40のユニット短辺方向の寸法よりも僅かに大きな寸法に形成されている。
【0023】
締結用板部412は、厚板部411の略1/2程度の板厚(例えば、4.5mm)の鋼板により、
図5(b)に示すように、ベース板部412aと側板部412bとにより略L字断面形状に形成されている。そして、締結用板部412は、ベース板部412aの下面が厚板部411の下面に溶接により接合されている。
【0024】
また、締結用板部412は、少なくとも、ベース板部412aのユニット長辺方向の寸法が、
図5(a)に示すように、中柱40のユニット長辺方向の寸法よりも大きく、かつ、後述する下スチフナ70の添板71のユニット長辺方向の寸法と略同じ寸法に形成されている。なお、本実施の形態では、側板部412bのユニット長辺方向寸法も、ベース板部412aと同寸法に形成されているが、後述する必要な靭性に応じて、ベース板部412aと異なる寸法に形成することができる。
【0025】
一方、締結用板部412は、ユニット短辺方向の寸法が、
図5(b)に示すように、中柱40のユニット短辺方向の寸法よりも僅かに大きな寸法に形成されている。そして、締結用板部412の側板部412bは、その上下方向の寸法が、ウェブ12の高さの1/3程度の寸法に形成されている。
【0026】
さらに、締結用板部412には、中柱40を屋根大梁10に締結するための締結具としてのボルト101を挿通するための一対の挿通穴413が形成されている。
【0027】
なお、厚板部411の板厚と、締結用板部412のベース板部412aの板厚とを足し合わせた寸法は、
図5(a)に示す天井CEの高さよりも低くならない寸法に形成されている。すなわち、厚板部411の下面の位置が、天井根太51の下面の位置よりも高い位置に配置されているように、ベース板部412aの板厚および厚板部411の板厚が設定されている。
【0028】
(下エンドプレートの構成)
下エンドプレート42は、
図6に示すように、厚板部421と締結用板部422とを備える。なお、下エンドプレート42は、上エンドプレート41と上下方向で対称に形成されている。そして、下エンドプレート42の厚板部421および締結用板部422は、上エンドプレート41の厚板部411および締結用板部412と同様の鋼板により形成され、相互に溶接により接合され、厚板部421は、中柱40に溶接により接合されている。
【0029】
また、締結用板部422は、ベース板部422aと側板部422bとにより形成されている。そして、締結用板部422のベース板部422aには、ボルト101を挿通するための挿通穴423が形成されている。
【0030】
なお、厚板部421の板厚と、締結用板部422のベース板部422aの板厚とを足し合わせた寸法は、
図6(a)に示す床FLの高さよりも高くならない寸法に形成されている。すなわち、厚板部421の上面の位置が、床小梁52の上面の位置よりも低い位置に配置されているように、ベース板部422aの板厚および厚板部421の板厚が設定されている。
【0031】
<上下スチフナの構成>
図4に示すように、中柱40の上エンドプレート41および下エンドプレート42が結合された屋根大梁10および床大梁20の内側には、上スチフナ60および下スチフナ70が設けられている。
【0032】
以下に、上スチフナ60および下スチフナ70の構成について説明する。
【0033】
上スチフナ60は、
図5に示すように、添板61と縦板62,62とを備える。
【0034】
添板61は、板厚が上エンドプレート41の厚板部411よりも厚い(例えば、14mm程度)の鋼板により形成され、屋根大梁10の下フランジ11の上面に溶接により接合されている。そして、添板61は、ユニット長辺方向の寸法が、
図5(a)に示すように、上エンドプレート41の締結用板部412と略同一の寸法で、ユニット短辺方向の寸法が、
図5(b)に示すように、床大梁20の4/5程度の寸法に形成されている。
【0035】
また、添板61および下フランジ11には、ボルト101を挿通するための一対の挿通穴611、111が形成されている。なお、締結用板部412に形成された挿通穴413は、添板61および下フランジ11に形成された挿通穴611,111と同軸に配置される。
【0036】
一対の縦板62,62は、それぞれ鋼板により形成され、表裏面をユニット長辺方向に向けて、添板61の上面と、屋根大梁10のウェブ12の内側面および上フランジ13の下面に溶接により接合されている。また、縦板62,62どうしのユニット長辺方向の間隔は、
図5(a)に示すように、上エンドプレート41の厚板部411の同方向の寸法よりも僅かに小さな寸法に設定されている。
【0037】
なお、
図6に示すように、中柱40を設置する箇所において、天井根太51は、上スチフナ60の縦板62と縦板62との間に配置されて、屋根大梁10のウェブ12に突き当てられた状態で、屋根大梁10に固定されている。
【0038】
下スチフナ70は、上スチフナ60と同様に、添板71と一対の縦板72,72とを備える。
【0039】
添板71は、溶接により、
図6に示すように、床大梁20の上フランジ23の下面に接合されている。そして、添板71および上フランジ23には、ボルト101を挿通するための一対の挿通穴711,231が形成されている。なお、締結用板部422に形成された挿通穴423は、添板71および上フランジ23に形成された挿通穴711,231と同軸に配置されている。
【0040】
一対の縦板72,72は、添板71の下面と、床大梁20のウェブ22の内側面および下フランジ21の上面とに溶接により接合されている。そして、一対の縦板72,72どうしのユニット長辺方向の間隔は、
図6(a)に示すように、下エンドプレート42の厚板部421の同方向の寸法よりも僅かに小さな寸法に設定されている。なお、縦板72は、その上下方向の寸法が、屋根大梁10と床大梁20との上下方向の寸法の相違に応じ、上スチフナ60の縦板62の上下方向寸法よりも短い寸法に形成されている。
【0041】
また、床小梁52は、
図6(a)(b)に示すように、ユニット長辺方向で、縦板72,72の間に配置され、長手方向の両端部が、床大梁20に溶接により固定された固定ブラケット53に溶接により結合されている。
【0042】
(中柱の結合構造)
上述した中柱40は、上エンドプレート41および下エンドプレート42を、屋根大梁10の下フランジ11および床大梁20の上フランジ23に、ボルト101およびナット102により締結して固定されている。
【0043】
すなわち、上エンドプレート41は、
図5(a)(b)に示すように、屋根大梁10の下フランジ11の下面に当接させた状態で、ボルト101を、締結用板部412の下方から、下フランジ11およびスチフナ60の添板61の挿通穴を挿通させ、添板61の上方からナット102をボルト101に締結することで固定されている。
【0044】
一方、下エンドプレート42は、
図6(a)(b)に示すように、床大梁20の上フランジ23の上面に当接させた状態で、ボルト101を、締結用板部422の上方から、上フランジ23および下スチフナ70の添板71の挿通穴に挿通させて、添板71の下方からナット102をボルト101に締結して固定されている。
【0045】
(中柱の作用)
建物ユニットU1に設けられた中柱40は、鉛直荷重だけでなく、水平荷重(地震力、風圧力)を負担可能である。すなわち、中柱40は、上下端部を、屋根大梁10および床大梁20に対して、厚板の鋼板により形成された厚板部411,421を含む上エンドプレート41および下エンドプレート42を介して結合されている。さらに、屋根大梁10および床大梁20には、中柱40を結合する部位に、添板61、71を備える上スチフナ60および下スチフナ70が設けられている。加えて、各エンドプレート41,42の締結用板部412,422は、L字断面形状に形成されて、屋根大梁10および床大梁20のウェブ12,22に接合されている。
【0046】
したがって、各エンドプレート41,42は、厚板部411,421により剛性を確保でき、L字の締結用板部412,422により靭性(変形能力)を確保できる。すなわち、中柱40は、厚板部411,421を備える各エンドプレート41,42から各大梁10,20に、鉛直荷重を伝達できる。また、各エンドプレート41,42のL字断面形状の締結用板部412,422により水平方向の変形を許容する靭性を確保できる。
【0047】
さらに、両スチフナ60,70は、縦板62,72により、中柱40からの構造上の応力を開断面形状(C型鋼)の各大梁10,20の全体に伝達することができる。そして、両スチフナ60,70は、厚板の添板61,71により、開断面形状(C型鋼)の大梁10,20の下フランジ11および上フランジ23を補強し、中柱40の結合部を強固にし、水平方向の荷重を負担することができる。
【0048】
よって、中柱40は、両大梁10,20に対して、溶接を用いずに結合した構造であるが、限られたスペースで剛性を確保しつつ靭性(変形能力)を確保できる。
【0049】
(実施の形態の効果)
以下に、実施の形態の効果を列挙する。
(1)実施の形態の建物ユニットの柱結合構造は、上下の屋根大梁10、床大梁20の上下方向に対向する対向面に中柱40を結合して形成された建物ユニットU1の柱結合構造である。中柱40は、ボルト101およびナット102により屋根大梁10、床大梁20に締結された上下エンドプレート41,42を備える。
【0050】
各エンドプレート41,42は、中柱40に溶接により接合された厚板部411,421と、厚板部411,421に溶接により接合されて各大梁10,20にボルト101およびナット102により締結された締結用板部412,422と、を備える。厚板部411,421は、要求剛性を備え締結用板部412,422よりも厚い板厚を備える。締結用板部412,422は、結合対象の各大梁10,20の対向面を有する下フランジ11、上フランジ23に当接し、厚板部411,421よりも各大梁10,20に沿う方向の寸法が大きく形成された部分でボルト101、ナット102により下フランジ11、上フランジ23に締結されたベース板部412a,422aと、ベース板部412a,422aと一体に形成され、各大梁10,20の側面のウェブ12,22に沿って設けられた側板部412b,422bとを備える。
【0051】
したがって、中柱40は、上下エンドプレート41,42を各大梁10,20にボルト101、ナット102で締結して建物ユニットU1の両大梁10,20の間の任意の位置に設置することができる。よって、高い設計自由度を得ることができる。
【0052】
そして、各エンドプレート41,42は、厚板部411,421により中柱40の剛性を確保することができる。さらに、締結用板部412,422をL字断面状として、各フランジ11,23の対向面(下面、上面)と、ウェブ12,22の側面に沿って設けたため、地震や風圧による水平荷重に対する変形能力(靭性)を確保して、これらの水平荷重を負担することができる。よって、中柱40として求められる構造耐力を確保することができる。
【0053】
(2)実施の形態の建物ユニットの柱結合構造では、中柱40を結合する位置の各大梁10,20の内側に、中柱40から各フランジ11,23への入力に対する応力を各大梁10,20の全体に伝達する上下スチフナ60,70が取付けられている。
【0054】
したがって、各大梁10,20において中柱40の設置箇所では、中柱40からの入力に対する各大梁10,20の応力を向上し高い剛性を確保できる。
【0055】
(3)実施の形態の建物ユニットの柱結合構造では、上下スチフナ60,70は、上フランジ13,23、下フランジ11,21、ウェブ12,22に直接あるいは間接的に結合された板状の複数の縦板62,62,72,72を備える。
【0056】
したがって、中柱40から各大梁10,20は、へ入力される鉛直荷重を、複数の縦板62,62,72,72から各大梁10,20に伝達し負担可能となり、垂直荷重に対する剛性を確保できる。
【0057】
(4)実施の形態の建物ユニットの柱結合構造では、上下スチフナ60,70は、上下エンドプレート41,42の結合面としての下フランジ11、上フランジ23の裏側に溶接されて各エンドプレート41,42を締結するボルト101が挿通された添板61,71を備え、縦板62,72は、添板61,71に溶接されている。
【0058】
したがって、添板61,71により各大梁10,20における中柱40の結合箇所の剛性を確保でき、上下スチフナ60,70は、中柱40からの鉛直荷重のみならず水平荷重の負担も可能となる。
【0059】
(建物ユニットU2の説明)
次に、
図2に示す建物ユニットU2について説明する。
建物ユニットU2は、両大梁10,20に結合された全ての柱240が、建物ユニットU1において示した中柱40と同様の構造のものを用いているが、中柱40とは、いくつかの相違点を有する。以下に、相違点について説明する。
【0060】
柱240は、薄型角パイプの横断面における長辺および短辺の向きを、建物ユニットU1で示した中柱40と90度異ならせている。すなわち、柱240では、それぞれ、長辺を各大梁10,20の延在方向に沿わせる向きで設置されている。したがって、柱240は、水平面で各大梁10,20の延在方向に直交する方向であるユニット内外方向で、各梁10,20の幅内に収まる寸法となっている。よって、上下エンドプレート41,42にあっても、厚板部411,421およびベース板部412a,422aのユニット内外方向の幅寸法は、各大梁10,20の下フランジ11、上フランジ23の幅寸法内に収まる寸法に形成されている。
【0061】
したがって、上下の各大梁10,20に跨る壁を設けた場合に、柱240による柱型が、いっそう突出しないようにすることができる。
【0062】
なお、この建物ユニットU2の屋根大梁10および床大梁20において、柱240の結合箇所に設けられている上下スチフナ60.70は、建物ユニットU1の上下スチフナ60,70と同様のものである。
【0063】
また、建物ユニットU2では、屋根大梁10および床大梁20は、C型鋼の開口をユニット外方に向けて設けられている。そこで、天井根太51および床小梁52は、各大梁10,20のウェブ12,22に直接、溶接により接合されている。
【0064】
この建物ユニットU2においても、上記(1)~(4)の効果を得ることができる。
【0065】
(スチフナの変形例の説明)
次に、上下スチフナ60,70の変形例について説明する。柱が、水平荷重を負担する必要がない箇所には、両スチフナ60,70において添板61,71の設置は省略することができる。
【0066】
図11、
図12、
図13は、各大梁10,20において柱340の設置位置に設ける上スチフナ360、下スチフナ370として、添板61,71を省略し、一対の縦板362,362および縦板372,372により形成されたものを用いた例を示す。なお、縦板362は、屋根大梁10の下フランジ11、ウェブ12、上フランジ13の内側面に溶接により接合されている。また、縦板372は、床大梁20の下フランジ21、ウェブ22、上フランジ23の内側面に溶接により接合されている。
【0067】
このように、柱340が水平荷重を負担しない場合、両スチフナ360,370の構成を簡略化して、部品点数、製造の手間、重量を削減することができる。
【0068】
(建物ユニットU3の説明)
次に、
図3に示す建物ユニットU3について説明する。この建物ユニットU3は、ユニット内が、居室RMと車庫GAに分けられている。
【0069】
したがって、床大梁320,320は、ユニット長辺方向の寸法が建物ユニットU3の同方向の全長の半分程度の寸法に形成されている。そして、床大梁320,320の切断側の先端部どうしに床梁321が連結されている。
【0070】
また、床梁321の真上の位置には、長辺側の屋根大梁10,10に架け渡された中間梁310が設けられている。したがって、中間梁310と床梁321とに跨って不図示の中間壁を設けることができる。なお、この中間壁の内部に、柱240を設けることも可能である。
【0071】
建物ユニットU3の四隅に設けられた柱240および柱440のうち、柱240は、建物ユニットU2に使用したものと同じであるので説明を省略する。
【0072】
また、柱440は、脚部を下方に延長し、下エンドプレート542を、基礎200に結合している。なお、下エンドプレート542は、建物ユニットU1、U2に設けたものと同様のものを用いてもよいし、図示のように、1枚の厚板により形成したものを用いてもよい。なお、柱440において、他の構成は、柱240と同様とする。
【0073】
この建物ユニットU3の柱240,440にあっても、上記のように、任意の位置に設置することが可能であり、高い設計自由度を得ることができる。また、各エンドプレート41,42により柱240,440として求められる構造耐力を確保することができる。
【0074】
また、各スチフナ60,70を設定することにより、各大梁10,20において柱240,440の設置箇所では、中柱40からの入力に対する各大梁10,20の応力を向上し結合剛性を確保できる効果を得ることができる。
【0075】
以上、図面を参照して、本開示の建物ユニットの柱結合構造の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0076】
例えば、建物ユニットに設ける柱の数や位置は任意であり、実施の形態で示した数、位置に限定されるものではない。また、エンドプレートの厚板部、締結用板部、各スチフナの添板や縦板の板厚や寸法は、実施の形態で示したものに限定されず、必要に応じ任意に設定することができる。
【0077】
また、実施の形態では、建物ユニットU3で示したように、厚板部と締結用板部とを備えたエンドプレートによる結合は、少なくとも、柱の上下の一方であってもよい。また、大梁としては、床大梁と屋根大梁とを示したが、複数階建ての建物を構築する建物ユニットに適用する場合、上側の大梁として天井大梁を用いることができる。さらに、実施の形態では、締結部材としてボルトとナットを示したが、ねじの締め付けによりエンドプレートを固定可能なものであれば、ボルトおよびナットに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
10 屋根大梁
11 下フランジ
12 ウェブ
13 上フランジ
20 床大梁
21 下フランジ
22 ウェブ
23 上フランジ
40 中柱
41 上エンドプレート
42 下エンドプレート
60 上スチフナ
61 添板
62 縦板
70 下スチフナ
71 添板
72 縦板
101 ボルト(締結具)
102 ナット(締結具)
240 柱
320 床大梁
340 柱
360 上スチフナ
362 縦板
370 下スチフナ
372 縦板
411 厚板部
412 締結用板部
412a ベース板部
412b 側板部
413 挿通穴
421 厚板部
422 締結用板部
422a ベース板部
422b 側板部
423 挿通穴
111 挿通穴
231 挿通穴
611 挿通穴
711 挿通穴
U1 建物ユニット
U2 建物ユニット
U3 建物ユニット