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  • 特許-反転装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】反転装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20241113BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
B25J15/08 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020174298
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065678
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-121630(JP,U)
【文献】特開平04-244393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持可能な把持部と、この把持部を90度旋回自在な旋回部と、この旋回部および前記把持部を垂直方向へ昇降自在な移動部とをそれぞれ具備した第1ロボットおよび第2ロボットを備えて成り、前記第1ロボットにより取り出した前記ワークを第2ロボットにより受け取り表裏反転させる反転装置において、
前記把持部は、平行かつ対向に配置された一対のチャック爪と、このチャック爪を互いに接近離させる一対の可動部とを備えて成り、
前記第1ロボットの把持部は、前記可動部に配置され当該可動部の可動方向に対し直交方向へ摺動するガイド部材と、前記チャック爪を固定したガイド部材の摺動方向にフローティングさせて成るフローティング機構とを備え、
前記フローティング機構は、前記ガイド部材の摺動方向に沿って伸縮するよう配されたプランジャであり、このプランジャは、1つのチャック爪に対して2つ対向配置されて成り、
前記第2ロボットの把持部は、これに搭載した可動部を前記ガイド部材の摺動方向と平行に可動するよう配して成ることを特徴とする反転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを表裏反転させ次工程へ受け渡し可能な反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の反転装置は、特許文献1に示すように、所定位置から位置決めして把持し取り出したワークを時計方向へ90度旋回可能な第1ロボットと、この第1ロボットで把持したワークを受け取り後、反時計方向へ90度旋回して次工程へ払い出す第2ロボットとから構成される。
【0003】
前記第1ロボットおよび第2ロボットは、ほぼ同様の構成であり前記ワークを把持する把持部と、この把持部を90度旋回可能な旋回部と、この旋回部を昇降自在な昇降部と、この昇降部を水平方向へ移動自在な移動部とを備えて成る。なお、前記第1ロボットの把持部は、ワークに嵌まり込むテーパ面を備えた位置決め部材を具備している。
【0004】
前記第1ロボットは、前記移動部の作動により把持部をワーク上空へ位置させ、昇降部を作動させることで、当該把持部をワークの加工面(以下、表面という)に当接させて当該ワークを抱え込むように把持する。この時、前記位置決め部材は、ワークに設けられた穴に係合するので、第1ロボットは、当該ワークを位置ズレさせること無く把持する。また、この後、第1ロボットの前記昇降部が作動するので、当該ワークが垂直方向に持ち上げられる。さらに、第1ロボットの旋回部が作動して、前記ワークが時計方向へ90度旋回する。これにより、前記第1ロボットに把持されているワークは、把持前の姿勢から90度向きを変え、第2ロボットに受け渡し可能な姿勢となる。また、この時、第2ロボットの把持部は、前記ワークの背面に向くよう反時計方向へ90度旋回した状態となっており、第1ロボット側へ向き当該ワークを受け取る姿勢となっている。
【0005】
前記第1ロボットは、この移動部の作動により前記ワークを前述の第1ロボットの把持部へ向かい移動させる。これにより、第1ロボットに把持されている前記ワークが当該第2ロボットの把持部へ入り込み、当該ワークの背面が前記把持部に当接する。また、この第2ロボットの把持部に当接した状態で、当該第2ロボットの把持部が作動するので、前記ワークが第1ロボットおよび第2ロボットの2台によって把持される状態となる。
【0006】
ここで、前記第1ロボットの把持部が復動して前記ワークを第2ロボットのみに把持させた状態とした後、当該第2ロボットの移動部を作動して前記第2ロボットを1ロボットから離反する方向へ移動させる。また、この後、第2ロボットは、その旋回部を作動させて把持したワークを時計方向へ90度旋回させて当該ワークの背面を上に向け次工程へ移載する。これにより、従来の反転装置は、2台のロボットを用いてワークを直接受け渡す構成のため、これら2台のロボットの間に当該ワークを180度反転させる別ユニットを設置する必要が無く、別ユニットへのワークの載置および取り出しが不要となり作業時間を短縮できるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-038652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の反転装置は、テーパ面を備える位置決め部材をワークへ押し当てるので、当該ワークに過剰な負荷を掛け易く、電子基板のような低強度のワークを扱えないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワークを把持可能な把持部と、この把持部を90度旋回自在な旋回部と、この旋回部および前記把持部を垂直方向へ昇降自在な移動部とをそれぞれ具備した第1ロボットおよび第2ロボットを備えて成り、前記第1ロボットにより取り出した前記ワークを第2ロボットにより受け取り表裏反転させる反転装置において、前記把持部は、平行に配置された一対のチャック爪と、このチャック爪を互いに接近離させる一対の可動部とを備えて成り、前記第1ロボットの把持部は、前記可動部に配置され当該可動部の可動方向に対し直交方向へ摺動するガイド部材と、前記チャック爪を固定したガイド部材の摺動方向にフローティングさせて成るフローティング機構とを備えて成り、前記第2ロボットの把持部は、これに搭載した可動部を前記ガイド部材の摺動方向と平行に可動するよう配して成ることを特徴とする。なお、前記フローティング機構は、前記ガイド部材の摺動方向に沿って伸縮するよう配されたプランジャであり、このプランジャは、1つのチャック爪に対して2つ対向配置されて成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る反転装置は、可動部の可動方向に対して直交方向へ摺動可能なチャック爪を第1ロボットに具備しているので、第1ロボットに把持した当該ワークを第2ロボットにより把持する際、第1ロボットのチャック爪が第2ロボットのチャック爪の動きに合わせて摺動する。つまり、第1ロボットの把持部に把持された状態のワークが第2ロボットのチャック爪の一方に接触して押圧されても、この一方のチャック爪の動きに合わせて第1ロボットのチャック爪が摺動して当該ワークに過大な負荷を与えずに済むという利点がある。
【0011】
また、本発明に係る反転装置は、1つのチャック爪に対して2つ対向配置したプランジャを備えるので、プランジャの取付位置を調整することでチャック爪の位置を任意に設定できる。これにより、ワークの形状や重量などに応じて最適なチャック爪の位置を設定できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る反転装置の第1ロボットおよび第2ロボットを示す斜視図である。
図2図1の反転装置を示す側面図である。
図3】本発明に係る反転装置の第1ロボットの動作を説明するための斜視図である。
図4】本発明に係る反転装置の第1ロボットによって取り出されるワークを事前に配置可能な治具を示す平面図である。
図5】本発明に係る反転装置の第1ロボットに搭載する把持部を示す説明図であり、(a)は斜視図。(b)は(a)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る反転装置は、ワークWを表裏反転させるものであり、図1ないし図5に基づいて説明する。本発明に係る反転装置1は、前記ワークWを所定位置から取り出す第1ロボット80と、この第1ロボット80に把持したワークWを受け取り次工程へ払い出す第2ロボット90とから構成されている。
【0014】
前記ワークWは、図4等に示すように板状を成しており、これを囲い込んで収納する収納部5に1つずつ平置きされている。なお、ワークWの長辺側の対向する面を左右面とし、短辺側の対向する面を上下面として以下説明する。
【0015】
前記収納部5は、前記ワークWを平置き可能なように、ワークWの左右面および上下面に何れも干渉しないように形成した当該ワークWの外形よりも大きな面積の凹部6aを備えて成る。また、この凹部6aは、ここに収納したワークWの左右面側にそれぞれ幅広になるよう成形された切欠き部6b,6cを備えて成る。
【0016】
前記第1ロボット80(第2ロボット90)は、ワークWを把持する把持部10a(10b)と、この把持部10a(10b)を90度旋回自在に支持して成る旋回部20a(20b)と、この旋回部20a(20b)を昇降自在な移動部30a(30b)とを具備して成る。
【0017】
前記第1ロボット80に搭載の把持部10aは、その長手方向に沿って摺動自在な一対の可動部11a,11bと、この可動部11a,11bに取り付けられ当該可動部11a,11bの摺動方向に対して直交方向へ移動自在なガイド部材12a,12bと、このガイド部材12a,12bにそれぞれ取り付けられた一対のチャック爪13a,13bとを備えて成る。
【0018】
一方、前記第2ロボット90に搭載の把持部10bは、その長手方向に沿って摺動自在な一対の可動部11a,11bと、この可動部11a,11bにそれぞれ取り付けられた一対のチャック爪13a,13bとを備えて成る。
【0019】
前記可動部11a,11bは、図示しない圧縮エアの供給により互いに接近離可能に構成されており、これに連結したチャック爪13a,13bとともに移動するよう構成されている。これにより、チャック爪13a,13bは、前記ワークWの左右面あるいは上下面を把持することができる。
【0020】
また、前記第1ロボット80に搭載の把持部10aは、前記チャック爪13a,13bをガイド部材12a,12bの摺動方向に沿って移動自在にフローティング状態で保つフローティング機構を備えて成る。
【0021】
前記フローティング機構は、一対のチャック爪13a,13bに係合する4つのプランジャ35a,35b,35c(35d)であり、1つのチャック爪13aに対して2つのプランジャ35a,35bが対向配置されて成る。前記プランジャ35a,35b(35c,35d)は、全ねじの一端から突出し軸方向に常時付勢され摺動自在な当接部を備えて成り、前記可動部11a,11b(11a,11b)にそれぞれナットにより固定されている。また、前記チャック爪13a(13b)は、これに外力が加わり前記プランジャ35a,35b(35c,35d)の前記当接部の伸縮差を生じるので、ワークWを把持する方向に対して直交方向へ容易に移動してフローティングする状態に保たれている。
【0022】
具体的には、対向配置したプランジャ35a,35b(35c,35d)は、これらに付勢されたチャック爪13a(13b)に外力が加わり例えば一方のプランジャ35a(35c)の当接部を押し込む方向に作用すれば、当該外力に抗してプランジャ35b(35d)の当接部が伸長する。したがって、前記把持部10aのチャック爪13a(13b)は、可動部11a(11b)の摺動方向に対して直交方向へ摺動して前記外力に対してバランスを保つ位置へと移動することができる。
【0023】
なお、前記第2ロボット90に搭載の把持部10bは、第1ロボット80に搭載の把持部10aとは異なり、前記ガイド部材12a,12bおよび前記フローティング機構を具備していない。また、この把持部10bは、図1および図2に示すように、前記把持部10aのワークWを把持する方向に対して直交方向に可動するよう前記チャック爪13a,13bを配置して成る。つまり、前記第1ロボット80および第2ロボット90は、互いに直交方向へ接近離する一対のチャック爪13a,13bを備えているので、前記第1ロボット80によりワークWの左右面を把持して、当該ワークWの上下面を第2ロボット90で把持することができる。このように、2台のロボット(80,90)によってワークWの4面を把持して、ワークWを第1ロボット80から第2ロボット90へ受け渡すことを可能にする。
【0024】
次に本発明に係る反転装置1の作用について図1ないし図5に基づき説明する。まず、ワークWは、収納部5の凹部6a内に毎回収納されるが、この収納が作業者により投入されるものであると、図4に示すように凹部6aに対して偏ったり、傾いたりした姿勢になり易く、毎回収納された状態のワークWの姿勢が定まり難い。
【0025】
前記第1ロボット80は、互いに離反させ開いた状態のチャック爪13a,13bを収納部5の上空に待機している。前記チャック爪13a,13bは、移動部30aの作動によって下降して、図4の二点鎖線で示す切欠き部6b,6c内へ侵入する。また、この後、チャック爪13a,13bは、開いた状態から閉じる方向へほぼ同一の速度で可動を始める。
【0026】
この時、ワークWは、図4に示すように、図面上で凹部6aに対して左下側へ偏り右斜め上に傾いているので、閉じる方向へ可動するチャック爪13aとワークWの左側面とがまず接触する。この後、当該ワークWは、前記チャック爪13aによって切欠き部6c側へ押し寄せられるので、その傾きが整えられるとともに当該ワークWの右側面とチャック爪13bとが接触する。ここで、チャック爪13a,13bは、ワークWを狭持するものの、予め図面左側へ偏っていたワークWを狭持しているので、当該チャック爪13a,13bに対しても左側へ寄り気味に把持されることになりバランスの悪い状態でワークWを把持している。
【0027】
次に、前記ワークWを狭持したチャック爪13a,13bは、移動部30aの複動によって上昇をはじめ、図3に示すように所定位置に留まる。ここで、旋回部20aが作動するので、把持部10aが90度旋回してワークWが図1および図2に示すように先ほどまで収納部5の下方に位置していた裏面を第2ロボット90へ向けられる。これにより、ワークWの上下面は、第2ロボット90の開いた状態のチャック爪13a,13bの間に位置する。
【0028】
前記第2ロボット90の把持部10bは、これに搭載したチャック爪13a,13bを互いに閉じる方向へ可動させる。この時、図2に示すように、第1ロボット90に把持されたワークWの上下面と、第2ロボット90のチャック爪13a,13bとの距離は等しくないので、当該距離の短い方に位置するチャック爪13bが当該ワークWの上面に早く接触する。
【0029】
また、第2ロボット90のチャック爪13a,13bは、前述のようにワークWに片当たりしても引き続き閉じる方向に可動するが、前記フローティング機構の作用により第1ロボット80のチャック爪13a,13bとワークWとが一体に下方へ移動できる。
【0030】
この後、第2ロボット90のチャック爪13a,13bの閉じる方向への動作を終えると、第1ロボット80によりワークWの左右面が狭持されつつ、第2ロボット90により前記ワークWの上下面が狭持される。
【0031】
このように、本発明に係る反転装置1は、第1ロボット80にフローティング機構を具備するので、偏って把持されたワークWであっても、当該ワークWに過剰な負荷を与えることなく2台のロボット(80,90)により円滑に受け渡し可能である。
【0032】
上述したようにワークWが第1ロボット80および第2ロボット90によって把持されると、前記第1ロボット80は、把持部10aのチャック爪13a,13bを開く方向へ可動して、旋回部20aを元の状態へ復帰させるため90度旋回する。
【0033】
続いて、第2ロボット90は、これに把持したワークWの前記裏面を上方へ向くように旋回部20bを作動させた後、その移動部30bを作動して、これに搭載した把持部10bおよび当該把持部10bに把持したワークWを所定の位置まで下降させる。
【0034】
ここで、第2ロボット90のチャック爪13a,13bは、開く方向に作動するので、ワークWが第1ロボット80に取り出される前の状態から表裏反転されて払い出される。
【0035】
また、このように本発明に係る反転装置1は、第1ロボット80のチャック爪13a,13bをフローティング状態に保つため、第2ロボット90のチャック爪13a,13bによる把持位置を基準にしたワークWの受け渡しを可能にし、収納部5におけるワークWの正確な位置決めを不要にできるという利点もある。
【符号の説明】
【0036】
1 … 反転装置
10a,10b … 把持部
11a,11b … 可動部
12a,12b … ガイド部材
13a,13b … チャック爪
20a,20b … 旋回部
30a,30b … 移動部
35a,35b … プランジャ
80 … 第1ロボット
90 … 第2ロボット
W … ワーク
図1
図2
図3
図4
図5