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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】モーター駆動制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/18 20160101AFI20241113BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20241113BHJP
   H02P 23/14 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H02P21/18
H02P27/08
H02P23/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020191968
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022022052
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0092421
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】ユ、チャンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンド
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミンス
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-018703(JP,A)
【文献】特開2013-153557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/18
H02P 27/08
H02P 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された電流によって駆動されることによって回転力を発生させる駆動部と、
駆動部に印加される電流を既設定の周期及びデューティーで繰り返しOn/Offしながら提供する電流提供部と、
電流提供部の電流On区間及びOff区間で駆動部の回転位置又は回転速度を推定し、推定された回転位置又は回転速度に基づいて速度指令を追従するように電流提供部を制御する制御器と、を含
前記制御器は、電流供給部の電流Off区間で、以前回転速度、駆動部のダンピング係数、駆動部の回転モーメント係数、駆動部の負荷トルク、及び、回転速度推定周期に基づいて、駆動部の回転速度を推定する、モーター駆動制御システム。
【請求項2】
電流提供部から駆動部に印加される電流又は電圧をセンシングするセンシング部をさらに含み、
制御器は、センシング部でセンシングした電流又は電圧を用いて駆動部に発生する逆起電力を推定し、電流提供部の電流On区間で推定した逆起電力に基づいて駆動部の回転位置又は回転速度を推定することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項3】
制御器は、電流提供部の電流Off区間で駆動部の駆動による回転力が0であると仮定する運動方程式によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項4】
制御器は、電流提供部の電流Off区間で下記の数式を用いて駆動部の回転速度を推定することを特徴とする、請求項3に記載のモーター駆動制御システム。

ここで、ωは現在回転速度、ωn-1は以前回転速度、Bは駆動部のダンピング係数、Jは駆動部の慣性モーメント係数、Tは駆動部の負荷トルク、Δは回転速度推定周期である。
【請求項5】
駆動部の負荷トルクは、下記の数式を用いて駆動部の回転速度に対する2次関数によって推定することを特徴とする、請求項4に記載のモーター駆動制御システム。
ここで、αは2次係数、βは1次係数である。
【請求項6】
駆動部は、空力部又は水力部に装着されたモーターであり、2次係数(α)及び1次係数(β)は空力部又は水力部の圧力によって予めマッピングされるか予め設定されることを特徴とする、請求項5に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項7】
電流提供部は、駆動部への3相(U相、V相及びW相)の電流をパルス幅変調(PWM)制御するインバーターであることを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項8】
制御器は、電流提供部の電流Off区間でパルス幅変調(PWM)周期によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することを特徴とする、請求項7に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項9】
制御器は、速度指令及び推定された回転速度に基づいて電流指令を発生させる速度制御器、及び電流指令及び推定された回転位置に基づいて電流提供部の電圧指令を発生させる電流制御器を含むことを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項10】
電流提供部から回転力を発生させる駆動部に印加される電流を既設定の周期及びデューティーで繰り返しOn/Offしながら提供する段階と、
電流提供部の電流On区間及びOff区間で駆動部の回転位置又は回転速度を推定する段階と、
推定された回転位置又は回転速度に基づいて速度指令を追従するように電流提供部を制御する段階と、を含
前記回転位置又は前記回転速度を推定する段階は、電流供給部の電流Off区間で、以前回転速度、駆動部のダンピング係数、駆動部の回転モーメント係数、駆動部の負荷トルク、及び、回転速度推定周期に基づいて、駆動部の回転速度を推定することを含む、モーター駆動制御方法。
【請求項11】
回転位置又は回転速度を推定する段階に先立ち、電流提供部の電流On区間又は電流Off区間であるかを確認する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項12】
前記確認段階で、電流提供部の電流Off区間と確認された場合、回転位置又は回転速度を推定する段階では、駆動部の駆動による回転力が0であると仮定する運動方程式によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することを特徴とする、請求項11に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項13】
駆動部は空力部又は水力部に装着されたモーターであり、
回転位置又は回転速度を推定する段階では、以前に推定された駆動部の回転速度に基づいて駆動部が空力部又は水力部から印加される負荷トルクを用いて駆動部の回転位置又は回転速度を推定することを特徴とする、請求項12に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項14】
駆動部に印加される電流を繰り返しOn/Offしながら提供する段階では、インバーターが駆動部への3相(U相、V相及びW相)の電流をパルス幅変調(PWM)制御することを特徴とする、請求項10に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項15】
回転位置又は回転速度を推定する段階では、電流提供部の電流Off区間でパルス幅変調(PWM)周期によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することを特徴とする、請求項14に記載のモーター駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーター駆動制御システム及び方法に関するもので、より詳しくはモーターに印加される電流のOn/Off制御の際にモーターの位置及び速度を推定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、高温、登坂運転のように燃料電池スタックが高出力で運転される場合のように冷却性能が落ちる運転条件で燃料電池スタックの運転温度が上昇して供給燃料の湿度低下が発生し、これにより燃料電池スタックが乾燥(dry)して同じ電流でのスタック運転電圧が降下する。このような場合、スタック電圧の降下によって燃料電池スタックの発熱量が増加して燃料電池運転温度がもっと上昇することになる悪循環が発生することができる。
【0003】
このような燃料電池運転温度が上昇する悪循環を防止するために、最近車両用燃料電池システムにおいては、空気極(カソード(cathode))に供給する空気の圧力を上昇させて空気極側の相対湿度を高める制御技術を適用している。よって、燃料電池スタックの空気極側に空気を供給する空気圧縮機の圧縮比をもっと高める必要がある。
【0004】
燃料電池スタックの空気極側に供給される空気の圧縮比をもっと増加させなければならない必要性のため、空気圧縮機の圧縮比をもっと高めながら最大圧力運転点で最大効率点が現れるように空気圧縮機を設計することになる。このような設計は、高流量、高圧縮比の区間では圧縮機の効率が上昇するが、相対的に低流量の区間で効率が低下する問題が発生する。これにより、車両が都心で運転するとき、主運転領域である低流量区間で空気圧縮機の消費電力が増加して車両の燃費に悪影響を及ぼすことになった。
【0005】
より具体的に、従来に使われた常圧型空気ブロワーに比べて空気圧縮比をもっと向上させた加圧型空気圧縮機は内蔵されたモーターの駆動速度をもっと拡大しなければならないから、低流量区間と高流量区間との間のモーターの駆動速度差が増加して空気圧縮機自体の効率改善が不利な欠点がある。すなわち、加圧型空気圧縮機は、モーターの回転速度増加によって高速運転領域で十分な電圧マージンを確保するためにモーターインダクタンスを減少させるようになり、このようなモーターインダクタンスの減少によって3相リップル電流が増加してモーター/インバーターの効率が減少するものである。特に、相対的に小さい出力を要求する低流量区間では3相電流が小さく、電流リップルの増加によって効率減少の効果が著しく現れる。すなわち、3相リップル電流は2次成分であり、モータートルクに寄与することができなく、モータートルクの小さい低流量区間で3相正弦波電流成分に比べて3相リップル電流量が相対的に大きく現れるから、高出力区間に比べてモーター/インバーターの効率が減少する。
【0006】
また、高速回転のために空気圧縮機のモーター回転にはエアホイルベアリングが適用されるが、このエアホイルベアリングは、リフト状態を維持するために、一定速度以上の回転が要求される。よって、エアホイルベアリングがリフト状態を維持するための基準速度以下でモーターを連続駆動する場合、エアホイルベアリングがモーター回転軸との摩擦によって焼損される問題が発生する。よって、このようなエアホイルベアリングの焼損を防止するために、空気圧縮機は最小駆動速度の制限を置いている。よって、燃料電池を低出力で運転しなければならない場合にも最小駆動速度以上に空気圧縮機を駆動させて不必要な空気の過給が発生して燃料電池システム自体の効率も減少することになる。
【0007】
従来技術によれば、低出力運転区間で空気圧縮機のPWM制御を繰り返しOn/Offするように駆動することによって空気圧縮機の駆動効率を向上させる手法が用いられた。特に、空気圧縮機に含まれたモーターにはホールセンサーのような位置センサーが適用され、モーターの駆動がOffになった状態でもモーターの回転速度及び回転位置を把握することができるので、モーターのOn/Off駆動が可能であった。
【0008】
しかし、モーターから位置センサーが除去されたセンサーレスモーターの場合、モーターに印加される電流を制御するにあたり、逆起電力を推定してモーターの回転速度及び位置を推定する。ただ、このようなセンサーレスモーターの場合、PWM制御のOff区間では電流及びこれによる逆起電力の推定ができなくてモーターの回転速度及び回転位置を把握することができない問題があった。これにより、モーターに印加される電流の過多なオシレーション現象及びモーターの制御が不安定になる問題があった。
【0009】
前記背景技術として説明した事項は本発明の背景に対する理解促進を目的とするだけであり、当該技術分野で通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に相当することを認めるものとして受け入れるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許公開第10-2014-0073735A号公報
【文献】韓国特許公開第10-2015-0026265A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するために提案されたもので、モーターの電流をOn/Offするように印加する制御において、電流Off区間でもモーターの回転速度又は回転位置を推定する制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するための本発明によるモーター駆動制御システムは、印加された電流によって駆動されることによって回転力を発生させる駆動部と、駆動部に印加される電流を既設定の周期及びデューティーで繰り返しOn/Offしながら提供する電流提供部と、電流提供部の電流On区間及びOff区間で駆動部の回転位置又は回転速度を推定し、推定された回転位置又は回転速度に基づいて速度指令を追従するように電流提供部を制御する制御器とを含む。
【0013】
電流提供部から駆動部に印加される電流又は電圧をセンシングするセンシング部をさらに含み、制御器は、センシング部でセンシングした電流又は電圧を用いて駆動部に発生する逆起電力を推定し、電流提供部の電流On区間で推定した逆起電力に基づいて駆動部の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0014】
制御器は、電流提供部の電流Off区間で駆動部の駆動による回転力が0であると仮定する運動方程式によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0015】
制御器は、電流提供部の電流Off区間で下記の数式を用いて駆動部の回転速度を推定することができる。
【数1】
【0016】
ここで、ωは現在回転速度、ωn-1は以前回転速度、Bは駆動部10のダンピング係数、Jは駆動部10の慣性モーメント係数、Tは駆動部10の負荷トルク、Δは回転速度推定周期である。
【0017】
駆動部の負荷トルクは、下記の数式を用いて駆動部の回転速度に対する2次関数によって推定することができる。
【数2】
【0018】
ここで、αは2次係数、βは1次係数である。
【0019】
駆動部は、空力部又は水力部に装着されたモーターであり、2次係数(α)及び1次係数(β)は空力部又は水力部の圧力によって予めマッピングされるか予め設定されることができる。
【0020】
電流提供部は、駆動部への3相(U相、V相及びW相)の電流をパルス幅変調(PWM)制御するインバーターであってもよい。
【0021】
制御器は、電流提供部の電流Off区間でパルス幅変調(PWM)周期によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0022】
制御器は、速度指令及び推定された回転速度に基づいて電流指令を発生させる速度制御器、及び電流指令及び推定された回転位置に基づいて電流提供部の電圧指令を発生させる電流制御器を含むことができる。
【0023】
前記の目的を達成するための本発明によるモーター駆動制御方法は、電流提供部から回転力を発生させる駆動部に印加される電流を既設定の周期及びデューティーで繰り返しOn/Offしながら提供する段階と、電流提供部の電流On区間及びOff区間で駆動部の回転位置又は回転速度を推定する段階と、推定された回転位置又は回転速度に基づいて速度指令を追従するように電流提供部を制御する段階とを含む。
【0024】
前記モーター駆動制御方法は、回転位置又は回転速度を推定する段階に先立ち、電流提供部の電流On区間又は電流Off区間であるかを確認する段階をさらに含むことができる。
【0025】
前記確認段階で、電流提供部の電流Off区間と確認された場合、回転位置又は回転速度を推定する段階では、駆動部の駆動による回転力が0であると仮定する運動方程式によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0026】
駆動部は空力部又は水力部に装着されたモーターであり、回転位置又は回転速度を推定する段階では、以前に推定された駆動部の回転速度に基づいて駆動部が空力部又は水力部から印加される負荷トルクを用いて駆動部の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0027】
駆動部に印加される電流を繰り返しOn/Offしながら提供する段階では、インバーターが駆動部への3相(U相、V相及びW相)の電流をパルス幅変調(PWM)制御することができる。
【0028】
回転位置又は回転速度を推定する段階では、電流提供部の電流Off区間でパルス幅変調(PWM)周期によって駆動部の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のモーター駆動制御システム及び方法によれば、モーターの回転速度及び回転位置をセンシングするセンサーなしでもモーターの電流Off区間でモーターの回転速度及び回転位置を推定することができる効果を有する。
【0030】
また、これにより、モーターの製造費用を節減するとともにモーター動作効率を改善し、モーター制御の安全性が向上する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施例によるモーター駆動制御システムの構成図である。
図2a】本発明の一実施例によって推定した回転速度及び回転位置のグラフである。
図2b】本発明の一実施例によって推定した回転速度及び回転位置のグラフである。
図3】本発明の一実施例による駆動部が含まれた燃料電池用空気供給系の構成図である。
図4】本発明の一実施例による駆動部の回転速度別負荷トルクのグラフである。
図5】本発明の一実施例による1次係数及び2次係数のグラフである。
図6】本発明の一実施例によるモーター駆動制御方法のフローチャートである。
図7】従来技術及び本発明による速度指令を追従するモーターの回転速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書又は出願に開示されている本発明の実施例についての特定の構造的又は機能的説明は単に本発明による実施例を説明するための目的で例示したもので、本発明による実施例は多様な形態に実施されることができ、本明細書又は出願で説明した実施例に限定されるものと解釈されてはいけない。
【0033】
本発明による実施例は多様な変更を加えることができ、さまざまな形態を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、本明細書又は出願に詳細に説明する。しかし、これは本発明の概念による実施例を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むものと理解されなければならない。
【0034】
第1及び/又は第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使われることができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはいけない。前記用語は一構成要素を他の構成要素と区別する目的のみで、例えば本発明の概念による権利範囲から逸脱しない範疇内で第1構成要素は第2構成要素と名付けることができ、同様に第2構成要素は第1構成要素とも名付けることができる。
【0035】
ある構成要素が他の構成要素に“連結されている”とか“接続されている”とかと言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されるかあるいは接続されることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されなければならないであろう。一方、ある構成要素が他の構成要素に“直接連結されている”とか“直接接続されている”とかと言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならない。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち“~の間に”と“すぐ~の間に”又は“~に隣り合う”と“~に直接隣り合う”なども同様に解釈されなければならない。
【0036】
本明細書で使用した用語は単に特定の実施例を説明するために使用したもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に他に指示しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、“含む”又は“有する”などの用語は開示した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組合せが存在することを指示しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組合せなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0037】
他に定義しない限り、技術的な又は科学的な用語を含めてここで使う全ての用語は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味である。一般的に使われる辞書に定義されているもののような用語は関連技術の文脈上有する意味と一致する意味と解釈されなければならなく、本明細書で明白に定義しない限り、理想的な又は過度に形式的な意味と解釈されない。
【0038】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を説明することによって本発明を詳細に説明する。各図に提示した同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0039】
図1は本発明の一実施例によるモーター駆動制御システムの構成図、図2は本発明の一実施例によって推定した回転速度及び回転位置のグラフである。
【0040】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施例によるモーター駆動制御システムは、印加された電流によって駆動することによって回転力を発生させる駆動部10と、駆動部10に印加される電流を既設定の周期及びデューティーで繰り返しOn/Offしながら提供する電流提供部20と、電流提供部20の電流On区間及びOff区間で駆動部10の回転位置又は回転速度を推定し、推定された回転位置又は回転速度に基づいて速度指令を追従するように電流提供部20を制御する制御器30と、を含む。
【0041】
本発明の例示的な実施例による制御器30は、車両の多様な構成要素の動作を制御するように構成されたアルゴリズム又は前記アルゴリズムを再生するソフトウェア命令語についてのデータを保存するように構成された非揮発性メモリ(図示せず)及び該当メモリに保存されたデータを使って以下に説明する動作を遂行するように構成されたプロセッサ(図示せず)から具現されることができる。ここで、メモリ及びプロセッサは個別チップから具現されることができる。代案として、メモリ及びプロセッサは互いに統合された単一チップから具現されることができる。プロセッサは一つ以上のプロセッサの形態を有することができる。
【0042】
駆動部10は電流提供部20から印加された電流によって駆動されるモーターであり、駆動の際に回転力を発生させることができる。すなわち、モーターの駆動の際、出力軸で電気的回転トルクが発生することができる。
【0043】
電流提供部20は、駆動部10の低速回転区間で電流をOn/Off制御することができる。これにより、駆動部10を駆動する駆動効率を向上させることができる。電流をOn/Off制御する周期及びデューティーは予め設定されることができ、例えば速度指令によって予め設定されることができる。
【0044】
周期及びデューティーは駆動部10を駆動する消費電力が最小になる値であり、予め設定されることができる。すなわち、電流提供部20から駆動部10への駆動電流を繰り返しOn/Off制御する場合、繰り返しOn/Off制御の周期及びデューティーは、電流提供部20のスイッチング損失及び3相電流リップルによる損失などを含めて駆動部10の駆動速度別消費電力が最小になる値に決定されることができる。該当値は実験などによって算出することができ、駆動速度別消費電力はマップに予め設定されて保存されることができる。
【0045】
他の実施例として、駆動部10の高速回転区間では電流提供部20が持続的に電流を印加することもできる。
【0046】
制御器30は、電流提供部20の電流印加を制御することができる。特に、上位の別途制御器30から入力された速度指令を追従するように電流提供部20を制御することができる。また、制御器30は、駆動部10の回転位置又は回転速度に基づいて電流提供部20の電流印加を制御することができる。
【0047】
ここで、駆動部10の回転位置又は回転速度は駆動部10の出力軸又はローターの回転位置又は回転速度を意味することができる。
【0048】
制御器30は、電流提供部20の電流On区間及びOff区間で駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。後述するように、電流On区間とOff区間でそれぞれ異なる方法で駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0049】
従来技術では、ホールセンサー又はエンコーダーなどを用いて駆動部10の回転位置又は回転速度を直接センシングした。しかし、本発明は、このようなセンサーを含まないか、このようなセンサーが誤作動した場合でも、駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0050】
これにより、モーターの回転速度及び回転位置をセンシングするセンサーなしでもモーターの電流Off区間でモーターの回転速度及び回転位置を推定することができる効果を有する。また、これにより、モーターの製造費用を節減するとともにモーターの動作効率を改善し、モーター制御の安全性が向上する効果を有する。
【0051】
本発明の一実施例によるモーター駆動制御システムは、電流提供部20から駆動部10に印加される電流をセンシングするセンシング部40をさらに含む。制御器30は、センシング部40でセンシングした電流を用いて駆動部10で発生する逆起電力を推定し、電流提供部20の電流On区間(PWM buffer enableがTrueである区間)で推定した逆起電力に基づいて駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0052】
センシング部40は電流センサーであり、電流提供部20から駆動部10に印加される電流をセンシングすることができる。特に、後述するように、センシング部40は電流提供部20から印加する3相の電流をセンシングすることができ、その中で2相以上の電流をセンシングすることができる。
【0053】
制御器30は、電流提供部20の電流On区間で駆動部10の逆起電力を推定し、推定した逆起電力に基づいて駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0054】
一実施例で、モーターが高速回転する区間ではモーターの回転の際に各相の固定子コイルで発生する逆起電力を抽出し、相逆起電力のゼロ交差(Zero Crossing、以下ZCという)点を用いて回転子の位置情報及び各相電流の転換時点を推定することができる。
【0055】
3相(U相、V相、W相)端子の電圧を測定して逆起電力を獲得し、中性点は逆起電力の平均値から算出し、中性点と逆起電力が交差するZC点を獲得する。
【0056】
ZC点はBLDC電動機の電気的1回転(360°)当たり6回が発生するので、60°の間隔で位置を検出する根拠となるから、ZC点を用いて位置を検出するアルゴリズムをZCアルゴリズムと言う。
【0057】
他の実施例で、モーターが低速回転する区間で、制御部は、モーターの速度が既設定の基準速度以下の場合、電流提供部(インバーター)20を制御してモーターにゼロ(0)ベクターを印加することができる。
【0058】
制御部は、ゼロベクターの印加の際に発生した電流を用いてモーター回転子の位置を推定することができる。ここで、制御部は、ゼロベクター印加の後、センシング部40でセンシングした電流の位相値を用いてモーター回転子の位置を推定することができる。すなわち、制御部は、センシングした電流の位相に対応するモーター回転子の位置を推定することができる。
【0059】
制御器30は、電流提供部20の電流Off区間(PWM buffer enableがFalseである区間)で駆動部10の駆動による回転力が0であると仮定する運動方程式によって駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0060】
具体的に、制御器30は、電流提供部20の電流Off区間で、下記の数式を用いて駆動部10の回転速度を推定することができる。
【数3】
【0061】
ここで、ωは現在回転速度、ωn-1は以前回転速度、Bは駆動部10のダンピング係数、Jは駆動部10の慣性モーメント係数、Tは駆動部10の負荷トルク、Δは回転速度推定周期である。
【0062】
より具体的に、駆動部10の回転速度は下記の運動方程式を満たすことができる。
【数4】
【0063】
ここで、Tは駆動部10の電気的回転トルク(回転力)であり、電流Off区間では駆動部10のトルクが0であるので、Tは0と仮定することができる。
【数5】
【0064】
これをωに対する式に整理すれば以下の通りである。
【数6】
【0065】
図3は本発明の一実施例による駆動部10を含む燃料電池用空気供給系の構成図、図4は本発明の一実施例による駆動部10の回転速度別負荷トルクのグラフ、図5は本発明の一実施例による1次係数及び2次係数のグラフである。
【0066】
図3図5をさらに参照すると、駆動部10の負荷トルクは下記の数式を用いて駆動部10の回転速度に対する2次関数によって推定することができる。
【数7】
【0067】
ここで、αは2次係数、βは1次係数である。
【0068】
特に、駆動部10は、空力部又は水力部に装着されたモーターであり、2次係数(α)及び1次係数(β)は空力部又は水力部の圧力によって予めマッピングされるか予め設定されることができる。
【0069】
一実施例で、図3に示すように、駆動部10は燃料電池50に空気を供給する空気供給系に含まれた空気圧縮機のモーターであってもよい。駆動部10は、出力軸が空気中に位置して駆動されることによって空気を圧縮するように回転することができる。
【0070】
空気供給系は圧力調節バルブ60を含み、圧力調節バルブ60の開度調節によって、燃料電池50に供給される空気の圧力を調節することができる。空気の圧力が可変することにより、駆動部10の回転速度に対する負荷トルクの係数(α、β)が可変することができる。
【0071】
負荷トルクの係数(α、β)は負荷モデルによって適切な値を選定しなければならないチューニング係数である。駆動部10である空気圧縮機の仕様が決定され、空気圧縮機の出口端圧力範囲が決定されれば、空気圧縮機から供給される圧力によってα係数とβ係数をチューニングして適用することができる。
【0072】
他の実施例で、駆動部10は燃料電池50を冷却させる冷却水を循環させる冷却水ポンプのモーターであってもよい。駆動部10は出力軸が冷却水中に位置して駆動されることにより、冷却水を循環させることができる。
【0073】
電流提供部20は、駆動部10への3相(U相、V相及びW相)の電流をパルス幅変調(PWM)制御するインバーターであってもよい。
【0074】
制御器30は、電流提供部20の電流Off区間でパルス幅変調(PWM)周期によって駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる。
【0075】
すなわち、制御器30の回転速度推定周期(Δ)はパルス幅変調(PWM)周期と同一に設定されることができる。
【0076】
制御器30は、速度指令及び推定された回転速度に基づいて電流指令を発生させる速度制御器31及び電流指令及び推定された回転位置に基づいて電流提供部20の電圧指令を発生させる電流制御器32を含むことができる。
【0077】
速度制御器31は、上位制御器30から入力された速度指令を追従するように電流指令(Id*、Iq*)を発生させ、推定された回転速度のフィードバックを受けるフィードバック制御を遂行することができる。
【0078】
電流制御器32は、速度制御器31から入力された電流指令(Id*、Iq*)に基づいて電流提供部20の電圧指令(Vd*、Vq*)を発生させ、推定された回転位置に基づいて電圧指令(Vd*、Vq*)を発生させることができる。追加として、電流制御器32はセンシング部40でセンシングした電流のフィードバックを受けるフィードバック制御を遂行することができる。
【0079】
電流制御器32と電流提供部20との間には座標変換器をさらに備えることができる。電流制御器32は、速度制御器31から同期座標系の電流目標値(Id*、Iq*)を受け、同期座標系の電流目標値(Vd*、Vq*)を座標変換器に伝達し、座標変換器は同期座標系の電流目標値を3相電流目標値(U相、V相、W相)に換算して電流提供部20に提供することができる。
【0080】
電流提供部20は、受けた3相電流目標値(U相、V相、W相)に基づいて3相スイッチング回路のPWM出力デューティーを介して駆動部10に3相の駆動電流を提供することができる。
【0081】
図6は本発明の一実施例によるモーター駆動制御方法のフローチャートである。
【0082】
図6をさらに参照すると、本発明の一実施例によるモーター駆動制御方法は、電流提供部20から回転力を発生させる駆動部10に印加される電流を既設定の周期及びデューティーで繰り返しOn/Offしながら提供する段階(S100)と、電流提供部20の電流On区間及びOff区間で駆動部10の回転位置又は回転速度を推定する段階(S300、S400)と、推定された回転位置又は回転速度に基づいて速度指令を追従するように電流提供部20を制御する段階(S400)とを含む。
【0083】
回転位置又は回転速度を推定する段階(S300)に先立ち、電流提供部20の電流On区間であるか又は電流Off区間であるかを確認する段階(S200)をさらに含むことができる。
【0084】
確認段階(S200)で、電流提供部20の電流Off区間と確認された場合、回転位置又は回転速度を推定する段階(S300、S400)では、駆動部10の駆動による回転力が0であると仮定する運動方程式によって駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる(S300)。
【0085】
確認段階(S200)で、電流提供部20の電流On区間と確認された場合、回転位置又は回転速度を推定する段階(S300、S400)では、センシング部40でセンシングされた電流又は電圧を用いて駆動部10で発生する逆起電力を推定し、電流提供部20の電流On区間で推定した逆起電力に基づいて駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる(S400)。
【0086】
駆動部10は空力部又は水力部に装着されたモーターであり、回転位置又は回転速度を推定する段階(S300、S400)では、以前に推定された駆動部10の回転速度に基づき、駆動部10が空力部又は水力部から印加される負荷トルクを用いて駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる(S400)。
【0087】
駆動部10に印加される電流を繰り返しOn/Offしながら提供する段階(S100)では、インバーターが駆動部10への3相(U相、V相及びW相)の電流をパルス幅変調(PWM)制御することができる。
【0088】
回転位置又は回転速度を推定する段階(S300、S400)では、電流提供部20の電流Off区間でパルス幅変調(PWM)周期によって駆動部10の回転位置又は回転速度を推定することができる(S400)。
【0089】
図7は従来技術及び本発明による速度指令を追従するモーターの回転速度を示すグラフである。特に、図7aは従来技術による速度指令を追従するモーターの回転速度を示すグラフ、図7bは本発明による速度指令を追従するモーターの回転速度を示すグラフである。
【0090】
図7a及び図7bを参照すると、従来技術によれば、定速区間でもモーターの回転速度が揺れる現象を確認することができ、特に速度指令を追従する過渡区間でモーターの回転速度がひどく揺れる現象を確認することができる。
【0091】
これに対し、本発明による場合、モーターの回転速度が安定的に速度指令を追従する現象を確認することができる。
【0092】
本発明を特定の実施例に基づいて図示して説明したが、以下の特許請求範囲によって決定される本発明の技術的思想を逸脱しない範疇内で本発明が多様に改良及び変化されることができるというのは当該分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0093】
10 駆動部
20 電流提供部
30 制御器
40 センシング部
50 燃料電池
60 圧力調節バルブ
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7