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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】耐油紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/16 20060101AFI20241113BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
D21H21/16
D21H19/82
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020197171
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085465
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】金原 正青
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172277(JP,A)
【文献】特開2011-184812(JP,A)
【文献】特開2017-048479(JP,A)
【文献】特開2005-082919(JP,A)
【文献】特開2004-019036(JP,A)
【文献】国際公開第2019/160429(WO,A1)
【文献】特開2020-084368(JP,A)
【文献】特開2004-244729(JP,A)
【文献】特開2005-171390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、中間層と、表面層とを含む耐油紙であり、
前記中間層は、前記紙基材の少なくとも一方の表面に設けられ、
前記表面層は、前記中間層の表面のうち、前記紙基材が設けられる側と反対側の表面に設けられ、
前記中間層は、ポリビニルアルコールを含有し、
前記表面層は、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂及びサイズ剤を含有
前記表面層における前記サイズ剤の含有量は、固形分換算で、25~75質量%である、
耐油紙。
【請求項2】
前記サイズ剤は、オレフィン系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、及びアルキルケテンダイマー系サイズ剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の耐油紙。
【請求項3】
前記中間層における前記ポリビニルアルコールの乾燥付着量は、0.2~0.6g/mである、
請求項1又は2に記載の耐油紙。
【請求項4】
前記中間層が、前記紙基材の両面に設けられている、
請求項1又は2に記載の耐油紙。
【請求項5】
前記中間層が前記紙基材の両面に設けられており、
前記両面の前記中間層における前記ポリビニルアルコールの乾燥付着量の総量は、0.4~1.2g/mである、
請求項4に記載の耐油紙。
【請求項6】
前記表面層が、前記中間層を介して前記紙基材の両面に設けられている、
請求項4又は5に記載の耐油紙。
【請求項7】
前記表面層における前記スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の乾燥付着量は、前記紙基材の片面あたり1.2~3.6g/mである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の耐油紙。
【請求項8】
前記耐油紙の、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法における王研式透気度が、2000~80000秒である、
請求項1~のいずれか一項に記載の耐油紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油紙に関する。
【背景技術】
【0002】
耐油紙は、油分や水分を多く含むファーストフードや揚げ物、焼き物といった調理済の食品、チョコレート等の油脂を多く含む食品に対する包装用紙や包装容器、あるいは食品トレイ等の紙製敷物として広く利用されている。
【0003】
一般的に、紙に耐油性を付与する耐油剤としては、フッ素樹脂系耐油剤が汎用されており、例えば、紙基材表面にフッ素樹脂系耐油剤を塗工して耐油層を設けた耐油紙や、紙基材にフッ素樹脂系耐油剤を内添させた耐油紙が知られている。しかし、フッ素樹脂系耐油剤を使用した耐油紙は、燃焼時に発生する耐油剤由来の不活性ガスの取り扱いが困難であり、フッ素樹脂系耐油剤を含まない耐油紙が求められていた。
【0004】
フッ素樹脂系耐油剤を含まない耐油紙として、例えば、特許文献1には、紙基材の少なくとも片面に、下塗り塗工層と上塗り塗工層とを有する耐油紙であって、上記下塗り塗工層は、酸化デンプンと、脂肪酸サイズ剤及びアルキルケテンダイマーの少なくとも1つとを含有し、上記上塗り塗工層は、酸化デンプン及びスチレンブタジエン共重合体の少なくとも1つを含有する耐油紙が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層のアクリル系樹脂を主成分とする耐油層を設けた耐油紙であって、該アクリル系樹脂の重量平均分子量が5万~200万、かつ酸価が50~200mgKOHである耐油紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-119921号公報
【文献】特開2012-067402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デンプンやアクリル系樹脂等の耐油剤を用いる場合、その耐油性の発現のために紙基材にピンホールが生じないように塗膜するので、透気性が不十分となり、包装した食品等から発生した水蒸気が耐油紙から外部に抜けにくくなり、耐油紙を構成するパルプ繊維の結合を緩めてしまう。これにより、耐油性が低下したり、食品の風味や保存性が低下するといった問題が生じる。
【0008】
また、耐油紙の耐油性のレベル(耐油度)は、キット値という指標で評価されている。キット値は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000により測定される。しかし、キット値の測定値が良好である耐油紙であっても、実際にこれを使用すると、耐油性が十分でない場合がある。発明者らがこのような事象について研究したところ、その原因の1つは、耐油紙に包装された食品等を電子レンジで温めなおすと、電子レンジ内で発生する蒸気によって耐油紙のパルプ繊維の結合が緩み、食品に含まれる油成分が耐油紙の表裏面を透過しやすくなるからではないかと考えた。
【0009】
このように、実用レベルにおいて高い耐油性と高い透気性を併せ持つことができる耐油紙はいまだ開発されておらず、この点について改善の余地があるのが実情である。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、高い耐油性と高い透気性とを併せ持つ耐油紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、紙基材と、中間層と、表面層とを含む耐油紙であり、中間層は、紙基材の少なくとも一方の表面に設けられ、表面層は、中間層の紙基材が設けられる側と反対側の表面に設けられ、中間層は、ポリビニルアルコールを含有し、表面層は、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂及びサイズ剤を含有する構成とすることに知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0013】
(1)
紙基材と、中間層と、表面層とを含む耐油紙であり、前記中間層は、前記紙基材の少なくとも一方の表面に設けられ、前記表面層は、前記中間層の表面のうち、前記紙基材が設けられる側と反対側の表面に設けられ、前記中間層は、ポリビニルアルコールを含有し、前記表面層は、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂及びサイズ剤を含有する、耐油紙である。
(2)
前記サイズ剤は、オレフィン系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、及びアルキルケテンダイマー系サイズ剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、(1)に記載の耐油紙である。
(3)
前記中間層における前記ポリビニルアルコールの乾燥付着量は、0.2~0.6g/mである、(1)又は(2)に記載の耐油紙である。
(4)
前記中間層が、前記紙基材の両面に設けられている、(1)又は(2)に記載の耐油紙である。
(5)
前記中間層が前記紙基材の両面に設けられており、前記両面の前記中間層における前記ポリビニルアルコールの乾燥付着量の総量は、0.4~1.2g/mである、(4)に記載の耐油紙である。
(6)
前記表面層が、前記中間層を介して前記紙基材の両面に設けられている、(4)又は(5)に記載の耐油紙である。
(7)
前記表面層における前記スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の乾燥付着量は、前記紙基材の片面あたり1.2~3.6g/mである、(1)~(6)のいずれかに記載の耐油紙である。
(8)
前記表面層における前記サイズ剤の含有量は、固形分換算で、25~75質量%である、(1)~(7)のいずれかに記載の耐油紙である。
(9)
前記耐油紙の、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法における王研式透気度が、2000~80000秒である、(1)~(8)のいずれかに記載の耐油紙である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い耐油性と高い透気性とを併せ持つ耐油紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る耐油紙の断面模式図である。
図2図2は、第2実施形態に係る耐油紙の断面模式図である。
図3図3は、第3実施形態に係る耐油紙の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0017】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
また、本明細書中、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリル及びアクリルを包含するものとする。例えば、(メタ)アクリルは、メタクリル、アクリル、又はその両方を意味するものである。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る耐油紙の断面模式図である。
【0020】
本実施形態に係る耐油紙1は、紙基材10と、中間層20と、表面層30と、を含む耐油紙1であり、中間層20は、紙基材10の少なくとも一方の表面に設けられ、表面層30は、中間層20の表面のうち、紙基材10の中間層20が設けられる側と反対側の表面に設けられ、中間層20は、ポリビニルアルコールを含有し、表面層30は、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂及びサイズ剤を含有する。すなわち、耐油紙1は、紙基材10、中間層20、表面層30をこの順で積層された構成を有している。例えば、耐油紙1を食品の包装袋等に使用する場合、表面層30は、収納する食品と接する層であり、耐油紙1が包装袋に加工される場合は、その内面となる。
【0021】
本実施形態によれば、高い耐油性と高い透気性とを併せ持つ耐油紙とすることができる。特に、その好適な態様としては、耐油紙1がフッ素系樹脂を実質的に含まない耐油紙であっても、このように高い耐油性と高い透気性を発揮することができる。よって、耐油紙1は、油分や水分を多く含むファーストフードや揚げ物、焼き物といった調理済の食品、チョコレート等の油脂を多く含む食品に対する包装用紙や包装容器、あるいは食品トレイ等の紙製敷物等として好適に使用できる。さらには、非フッ素樹脂系の耐油紙1として好適に使用できる。
【0022】
以下、各構成部材について説明する。
【0023】
(中間層)
【0024】
中間層20を設けることにより、製造時に表面層30となる塗工液を紙基材10の表面に均一に留まるようにコントロールし、表面層30が低付着量であっても、十分な耐油性を発揮させることができる。また、表面層30及び中間層20の合計付着量を少なくすることで、耐油紙1の風合いを通常の紙に近づけることができる。また、耐油紙1の中間層20はポリビニルアルコールを含有する。中間層20にポリビニルアルコールを含有させることにより、耐油紙に優れた耐油性及び透湿性を与えることができる。
【0025】
中間層20に用いられるポリビニルアルコールとしては、例えば、無変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールが挙げられ、それぞれ、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコールのタイプが挙げられる。変性ポリビニルアルコールとしては、α-オレフィン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、メルカプト変性ポリビニルアルコール等が使用できる。
【0026】
ポリビニルアルコールのけん化度は、中間層20の表面に塗布される表面層用塗工液(表面層30を構成する塗工液)が紙基材10まで透過させない程度のバリア性を発揮させるという観点から、けん化前に存在していたエステル基に対するけん化されたエステル基のモル比で表われるけん化度が、80~100%であることが好ましい。また、耐油紙製袋の内側に食品由来の水蒸気をこもらせないよう適度な透気性を付与する観点から、けん化度は、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、98%以上であることがより更に好ましい。
【0027】
ポリビニルアルコールの重合度は、塗工性とバリア性の観点から、200~8000の範囲であることが好ましい。重合度の下限は、300以上であることがより好ましく、400以上であることが更に好ましく、500以上であることがより更に好ましい。また、重合度の上限は、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましく、1800以下であることがより更に好ましい。
【0028】
中間層20のバリア性及び耐油紙の透気性を一層向上させる観点から、中間層20はポリビニルアルコールのみからなることが好ましい。ここでいう「のみ」とは、当該成分以外のものを積極的に添加又は混合しないことを意味し、不可避的に含有又は混合されることを除外するものではないこの場合、塗工手段に適した濃度粘度に調整するべく、ポリビニルアルコールを水で希釈して使用することができる。なお、中間層20には、本実施形態の効果を損なわない範囲内であれば、さらに、分散剤、消泡剤、着色剤等のその他の添加剤を必要に応じて適宜選択して使用することもできる。
【0029】
中間層20におけるポリビニルアルコールの乾燥付着量は、0.2~0.6g/mであることが好ましい。ここでいう乾燥付着量には、例えば、中間層20が紙基材10の片面にのみ設けられた場合、紙基材10の片面あたりの乾燥付着量である。また、例えば、中間層20及び中間層40が紙基材10の両面に同面積で設けられた場合(例えば、図2参照)、中間層20及び中間層40の合計の乾燥付着量の1/2倍の乾燥付着量である。この乾燥付着量の下限は、0.25g/m以上であることがより好ましく、0.3g/m以上であることが更に好ましい。また、この乾燥付着量の上限は、0.55g/m以下であることがより好ましく、0.5g/m以下であることが更に好ましい。
【0030】
(表面層)
【0031】
表面層30は、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂及びサイズ剤を含有する。バリア性の高いスチレン-(メタ)アクリル樹脂と、サイズ剤とを併用することで、耐油性と透湿性の両方を高いレベルで維持することに資する。スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-メタクリル樹脂、又はその両方を意味する。
【0032】
油分や水分を多く含むファーストフードや揚げ物、焼き物といった調理済の食品、チョコレート等の油脂を多く含む食品に対する包装用紙や包装容器、あるいは食品トレイ等の紙製敷物として使用する場合、電子レンジによって温めをする。このような実用環境下において、耐油紙の耐油性と透気性を実用レベルに維持することができないといった問題がある。
【0033】
本発明者らが、この問題について研究したところ、造膜性の高いスチレン-(メタ)アクリル共重合体樹脂を紙基材10の表面にコートによってパルプ繊維同士を結着すると紙の耐油性は向上するが、電子レンジ内で発生する水蒸気まで閉じ込めてしまい、食品の風味や食感を低下させていた。スチレン-(メタ)アクリル共重合体樹脂のコート量を下げると電子レンジで発生する水蒸気によって紙基材10の繊維が緩んでしまい、耐油紙の耐油性が不十分となっていた。そこで、スチレン-(メタ)アクリル共重合体樹脂の造膜性を制御することにより、このような不具合が解消できていないのではないかと考えた。かかる考えに基づき、更に鋭意研究した結果、意外にも、中間層20にポリビニルアルコールを配合した上で、かつ、表面層30にスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂だけでなくサイズ剤も併用することで、表面層のバリア性を低下させずに透湿性を向上させることができた。これにより、実用環境下における耐油性と透気性、更には透湿性を高いレベルで維持できるものと考えられる(ただし、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
【0034】
スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂は、バリア性が高く、耐水性に優れる。また、中間層20の耐油性に対して向上効果をもたらす。スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂としては、特に限定はなく、公知の物を使用することができる。
【0035】
スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の構成モノマーとしては、例えば、少なくともスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとを含む共重合体が挙げられる。また、共重合樹脂のモノマー組成を満たす限りにおいて、必要によりスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の構成モノマー成分と共重合可能なその他のモノマーを併用することができる。スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂における、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーの構成モノマー中の割合は、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以上であることがより更に好ましく、実質的にこれら2つのモノマーのみの共重合体であることが一層更に好ましい。ここでいう「実質的に」とは、いわゆる不可避的に含有又は混合される成分を除外するものではないことをいう。
【0036】
スチレン系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-エチルスチレン、α-ブチルスチレン、4-メトキシスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、3-エトキシプロピルアクリレート、3-エトキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールのモノアクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0038】
スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の重量平均分子量は、10000~5000000であることが好ましい。この重量平均分子量の下限は、50000以上であることがより好ましく、200000以上であることが更に好ましい。また、この重量平均分子量の上限は、2000000以下であることがより好ましく、800000以下であることが更に好ましい。このような範囲内であると、耐油性と透気性のバランスを一層高いレベルで両立させることができる。
【0039】
また、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂のガラス転移点は、-50~100℃であることが好ましい。このガラス転移点の下限は、-30℃以上であることがより好ましく、-20℃以上であることが更に好ましい。また、このガラス転移点の上限は、30℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。上記の範囲内であると耐油性が優れる。
【0040】
表面層30におけるスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の乾燥付着量は、紙基材10の片面あたり1.2~3.6g/mであることであることが好ましい。この乾燥付着量の下限は、1.5g/m以上であることがより好ましく、2.0g/m以上であることが更に好ましい。また、この乾燥付着量の上限は、3.0g/m以下であることがより好ましく、2.5g/m以下であることが更に好ましい。スチレン-(メタ)アクリル共重合体樹脂の乾燥付着量がこの範囲であれば、耐油度及び実用耐油性をより高いレベルで維持したまま、電子レンジ等で食品加熱を行っても結露を発生させにくくなる。
【0041】
サイズ剤は、表面層30に十分なレベルの耐油性を付与させることができる。サイズ剤としては、例えば、オレフィン系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、アクリル系サイズ剤、ポリアクリルアミド系サイズ剤、スチレン-マレイン酸系サイズ剤、アクリル系共重合体系サイズ剤、アクリルエマルジョン系サイズ剤、オレフィン-マレイン酸樹脂系サイズ剤、ウレタン系サイズ剤、AKD(アルキルケテンダイマー)・ASA(アルケニル無水コハク酸)系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等が挙げられる。これらの中でも、オレフィン系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、及びアルキルケテンダイマー系サイズ剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。そして、サイズ剤のイオン性は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれでもよいが、アニオン系が好ましい。
【0042】
表面層30におけるサイズ剤の含有量は、固形分換算で、25~75質量%であることが好ましい。この含有量の下限は、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。また、この含有量の上限は、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0043】
表面層30におけるスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂に対するサイズ剤の含有比率(サイズ剤/スチレン-(メタ)アクリル共重合)は、特に限定されないが、例えば、25~75質量%であることが好ましい。この比の下限は、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましくい。また、この比の上限は、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
表面層30には、本実施形態の効果を損なわない範囲内であれば、さらに、分散剤、消泡剤、着色剤等の他の添加剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。また、フッ素系樹脂を含有しないことが好ましい。
【0045】
本実施形態によれば、表面層30は、単層であってもよいし、2層以上の複数層であってもよい。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、中間層20及び表面層30以外に、その他の機能層(例えば、印刷層、印刷受理層、製袋加工のための接着剤層)等を設けてもよい。例えば、表面層30の表面上に、印刷層、カバー層等の機能層を設けることもできる。例えば、食品の包装袋として使用する場合、食品と接する内側面には印刷層を設けず、外側面に印刷層を設けることができる。
【0047】
(紙基材)
【0048】
紙基材10は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができ、例えば、晒又は未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、ライナー、セミグラシン紙、グラシン紙、片艶紙、パーチメント紙板紙、白板紙等を挙げることができる。これらの中でも、耐油性の観点からグラシン紙であることが好ましい。
【0049】
紙基材10を構成するパルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、合成繊維パルプ等を挙げることができる。木材パルプとしては、例えば、針葉樹や広葉樹の化学パルプや機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、例えば、ケナフパルプ、バガスパルプ、ラグパルプ、リネンパルプ、麻パルプ、楮パルプ、三椏パルプ、雁皮パルプ、藁パルプ、竹パルプ等が挙げられる。古紙パルプとしては、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、色上古紙、新聞古紙、ケント古紙、上白古紙、コート古紙、複写古紙、損紙古紙等が挙げられる。合成繊維パルプとしては、例えば、レーヨン樹脂、ビニロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリバラフェニレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプを含有することが好ましい。
【0051】
紙基材10には、本実施形態の効果を損なわない範囲内であれば、例えば、サイズ剤(アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系等)、紙力増強剤(デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン等)、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、pH調製剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等のその他の添加剤を、必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0052】
紙基材10の坪量は、20~150g/mであることが好ましい。この坪量の下限は、25g/m以上であることがより好ましく、30g/m以上であることが更に好ましく、35g/m以上であることがより更に好ましい。また、この坪量の上限は、80g/m以下であることがより好ましく、70g/m以下であることが更に好ましく、60g/m以下であることがより更に好ましい。この坪量は、JIS P 8124:2011の坪量の試験方法に基づいて測定した数値である。坪量の下限値がこのような範囲内であると、耐油紙の強度が一層向上し、坪量の上限値がこのような範囲内であると、コスト高となることがない。
【0053】
また、紙基材10の厚さは、20~150μmであることが好ましい。この厚さの下限は、25μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、35μm以上であることがより更に好ましい。また、この厚さの上限は、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることがより更に好ましい。
【0054】
紙基材10の製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプを所定の質量比で水に分散し、これを叩解機で所定の叩解度に叩解したパルプスラリーを得る。次いで、得られたパルプスラリーに、所望により添加剤等を添加する。調製したスラリーを長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の公知の抄紙機を使用して抄紙し、紙基材10を得ることができる。また、抄紙方式は、特に限定されず、酸性抄紙又は中性抄紙のいずれも選択できる。
【0055】
中間層20を形成させる方法としては、紙基材10の抄紙後に塗布及び/又は含浸させる外添法が好ましい。例えば、中間層20形成用塗工液を固形分濃度0.01~30質量%の水分散液とし、紙基材10の片面又は表裏両面に、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、サイズプレスコーター等の塗工機を用いて中間層20を形成することができる。中間層20の成分を紙基材10の表層付近に局在化させやすいことから、エアナイフコーター又はサイズプレスコーターが好ましい。
【0056】
表面層30を形成させる方法としては、中間層20と同様、外添法が好ましく、例えば、表面層30形成用塗工液を固形分濃度0.01~10質量%の水分散液とし、少なくとも中間層20を有する面に、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、サイズプレスコーター等の塗工機を用いて表面層30を形成することができる。均一な塗工膜を形成し易くなることから、バーコーター又はエアナイフコーターが好ましい。
【0057】
また、塗工後には、マシンカレンダー、熱カレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を用いて、耐油紙にカレンダー加工をしてもよい。
【0058】
耐油紙1の紙厚は、20~150μmであることが好ましい。この厚さの下限は、30μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることが更に好ましく、40μm以上であることがより更に好ましい。また、この厚さの上限は、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、70μm以下であることがより更に好ましい。このような範囲内であると、食品包装用の基材として使用するのに、十分な強度と耐油性を付与することができる。
【0059】
(耐油度)
表面層30の表面を測定面とした耐油紙の耐油度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000に準じて測定したキット値で、5以上であることが好ましい。本実施形態の構成を有する耐油紙1のキット値が5以上であれば、標準的な環境下で使用される耐油紙として十分な耐油性(特に実用耐油性)を発揮することができる。
【0060】
(実用耐油性)
本実施形態において実用耐油性とは、実際に使用される食用油を耐油紙の表面層に滴下したときに、表面層から内部に浸透して現れる油ジミの生じにくさをいう。実用耐油性の具体的な評価方法は、後述する実施例に記載されたとおりである。
【0061】
(結露の抑制性)
本実施形態において結露の抑制性とは、耐油紙が高湿度に曝された場合の耐油性の程度を示す。例えば、耐油紙を用いて作られた袋の中にフライドポテト等の食品を入れ、電子レンジで食品を温め直した場合に、食品から発生する水蒸気が結露することにより耐油紙のパルプの結合が緩んでしまい、食品の油分が袋の外側に漏れ出やすくなる。すなわち、袋内から外に水蒸気を適度に透過させる結露の抑制性の高い耐油紙が、油分の通しにくさに優れるといえる。結露の抑制性の具体的な評価方法は、後述する実施例に記載されたとおりである。
【0062】
(透気度)
表面層30の表面を測定面とした耐油紙1の透気度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度で、2000~100000秒以下であることが好ましい。この上限値は、より好ましくは80000秒以下であり、更に好ましくは70000秒以下であり、より更に好ましくは60000秒以下である。また、この下限値は、より好ましくは3000秒以上であり、更に好ましくは5000秒以上であり、より更に好ましくは10000秒以上である。本実施形態によれば、王研式透気度を上記の上限値以下とできるため、実用レベルに耐え得る程度に、耐油紙の透気性が高く、かつ、食品の風味や保存性の低下を効果的に防止することができる。
【0063】
図2は、第2実施形態に係る耐油紙の断面模式図である。
【0064】
本実施形態に係る耐油紙2は、中間層20,40が、紙基材10の両面に設けられている点で、図1に示す耐油紙1と相違する。このように、本実施形態によれば、紙基材10の両面に中間層20(例えば、食品等の包装袋とする場合、食品を包み込む内面側)と中間層40(例えば、食品等の包装袋とする場合、外面側)を設けてもよい。この中間層40は、上述した中間層20の形成方法と同様の方法によって形成することができる。
【0065】
中間層20,40が紙基材10の両面に設けられている場合、紙基材10の両面の中間層20,40におけるポリビニルアルコールの乾燥付着量の総量は、0.4~1.2g/mであることが好ましい。この乾燥付着量の総量とは、1mの紙基材10の全体のポリビニルアルコールの乾燥付着量であり、その両面の乾燥付着量をいう。すなわち、紙基材10の場合、中間層20のポリビニルアルコールの乾燥付着量と、中間層40のポリビニルアルコールの乾燥付着量の合計をいう。この総量の下限は、0.45g/m以上であることがより好ましく、0.55g/m以上であることが更に好ましく、0.6g/m以上であることがより更に好ましい。また、この総量の上限は、1.1g/m以下であることがより好ましく、1.0g/m以下であることが更に好ましく、0.9g/m以下であることがより更に好ましい。
【0066】
図3は、第3実施形態に係る耐油紙の断面模式図である。
【0067】
本実施形態に係る耐油紙3は、中間層20,40が紙基材10の両面に設けられており、さらに表面層30,50も紙基材の両面に設けられている点で、図1に示す耐油紙1と相違する。すなわち、耐油紙3は、図2に示す耐油紙2の中間層40の表面に、表面層50が更に設けられた態様である。
【0068】
このように、本実施形態では、中間層20,40を介して紙基材10の両面に表面層30,50を設けてもよい。例えば、食品等の包装袋とする場合、表面層30が食品を包み込む内面側となり、表面層50が外面側となる。表面層50は、上述した表面層30の形成方法と同様の方法によって形成することができる。表面層50は、表面層30と材料及び寸法形状等が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【実施例
【0069】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、%及び部は、特に断りのない限り、質量%及び質量部を表す。
【0070】
<実施例1>
【0071】
(紙基材10の作製)
【0072】
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)25質量%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)75質量%とからなるパルプを、ショッパーリグラー法による叩解度が55°SRとなるように叩解処理し、パルプスラリーの濃度が約2.7質量%となるように水に分散して、パルプスラリーを得た。
【0073】
このパルプスラリー中のパルプ100質量部に対して、サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:サイズパインN-775)を2.0質量部、デンプン(ジー・エス・エルジャパン社製、商品名:ジェルトロン245)を1.0質量部、湿潤紙力剤(星光PMC社製、商品名:紙力WS-4020)を1.3質量部、硫酸アルミニウム(朝日化学工業社製、液体硫酸バンド)を4.0質量部添加し、長網多筒式抄紙機を用いて厚さ60μm及び坪量40g/mのグラシン紙を抄紙し、紙基材10とした。
【0074】
(中間層20,40の形成)
【0075】
得られた紙基材10の表裏両面に、サイズプレスにて、変性ポリビニルアルコール(PVA、三菱ケミカル社製、商品名:ゴーセノールT-350、けん化度93~95mol%)を4.0質量部、及び水を96.0質量部含有する中間層用の塗工液(中間層用塗工液)を、紙基材10の両面併せて塗布量(ウェット付着量)の総量が20g/mとなるように、紙基材10に塗布した。この両面併せたポリビニルアルコールの乾燥付着量(ドライ付着量)の総量は、0.8g/m(片面の乾燥付着量は0.4g/m)であった。
【0076】
(表面層30の形成)
【0077】
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、商品名:AQUENCE EPIX BC-900F)を12質量部、サイズ剤としてオレフィン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロンLM-25S)を12質量部、及び水を76質量部含有する表面層用の塗工液(表面層用塗工液)を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、図2に示す構成を有する耐油紙2(サンプル)を得た。
【0078】
<実施例2>
【0079】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0080】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0081】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、商品名:AQUENCE EPIX BC-900F)を12質量部、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:SKS-L20)を12質量部、及び水を76質量部含有する表面層用塗工液を塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、図2に示す構成を有する耐油紙2(サンプル)を得た。
【0082】
<実施例3>
【0083】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0084】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0085】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、商品名:AQUENCE EPIX BC-900F)を12質量部、サイズ剤としてロジン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:サイズパインN-775)を12質量部、及び水を76質量部含有する表面層用塗工液を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、図2に示す構成を有する耐油紙2(サンプル)を得た。
【0086】
<実施例4>
【0087】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0088】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0089】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、商品名:AQUENCE EPIX BC-900F)を9質量部、サイズ剤としてオレフィン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロンLM-25S)を15質量部、及び水を76質量部含有する表面層用塗工液を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、図2に示す構成を有する耐油紙2(サンプル)を得た。
【0090】
<実施例5>
【0091】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0092】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0093】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、商品名:AQUENCE EPIX BC-900F)を15質量部、サイズ剤としてオレフィン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロンLM-25S)を9質量部、及び水を76質量部含有する表面層用塗工液を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、図2に示す構成を有する耐油紙2(サンプル)を得た。
【0094】
<実施例6>
【0095】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0096】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0097】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、商品名:AQUENCE EPIX BC-900F)を8質量部,サイズ剤としてオレフィン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロンLM-25S)を8質量部、及び水を84質量部含有する表面層用塗工液を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、3.2g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、図2に示す構成を有する耐油紙2(サンプル)を得た。
【0098】
<比較例1>
【0099】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0100】
(表面層30の形成)
得られた紙基材10にサイズプレスを行わず、紙基材10の表面に直接表面層30を形成させた。具体的には、実施例1で使用した表面層用塗工液を用意した。そして、中間層20,40を設けることなく、表面層用塗工液の塗布量が20g/mとなるように紙基材10の片面に塗布して、表面層30を形成させた。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂及びサイズ剤の乾燥付着量の合計は、4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、耐油紙(サンプル)を得た。
【0101】
<比較例2>
【0102】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0103】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0104】
(表面層30の形成)
続いて、サイズ剤を添加しない表面層用塗工液を処方した以外は実施例1と同じ方法で、表面層用塗工液を、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合樹脂の乾燥付着量は4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、耐油紙(サンプル)を得た。
【0105】
<比較例3>
【0106】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0107】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0108】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、スチレン-ブタジエン共重合樹脂(日本エイアンドエル社製、商品名:ラテックスSN-309R)を12質量部、サイズ剤としてオレフィン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロンLM-25S)を12質量部、及び水を76質量部含有する表面層用塗工液を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-ブタジエン共重合樹脂とサイズ剤の乾燥付着量の合計は4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、耐油紙(サンプル)を得た。
【0109】
<比較例4>
【0110】
(紙基材10の作製)
パルプスラリーの処方において、サイズ剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして紙基材10を得た。
【0111】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0112】
(表面層30の形成)
比較例3で使用した表面層用塗工液を用意し、これを比較例3と同じ方法で紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-ブタジエン共重合樹脂とサイズ剤の乾燥付着量の合計は4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、耐油紙(サンプル)を得た。
【0113】
<比較例5>
【0114】
(紙基材10の作製)
比較例4と同様にして、紙基材10を得た。
【0115】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0116】
(表面層30の形成)
続いて、サイズ剤を添加しない表面層用塗工液を処方した以外は比較例4と同じ方法で表面層用塗工液を準備し、これを紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際のスチレン-ブタジエン共重合樹脂の乾燥付着量は4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、耐油紙(サンプル)を得た。
【0117】
<比較例6>
【0118】
(紙基材10の作製)
実施例1と同様にして、紙基材10を得た。
【0119】
(中間層20,40の形成)
実施例1と同様にして、紙基材10の両面に中間層20,40を設けた。
【0120】
(表面層30の形成)
続いて、抄紙機のエアーナイフにて、樹脂(表1の「樹脂(a)」参照)を添加せず、サイズ剤としてオレフィン系サイズ剤(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロンLM-25S)を24質量部、及び水を76質量部含有する表面層用塗工液を、塗布量が20g/mとなるように、紙基材10の中間層20の一方の面に塗布した。この際の樹脂とサイズ剤の乾燥付着量の合計は4.8g/mであった。その後、紙の厚みが55μmとなるようにカレンダー処理を行い、耐油紙(サンプル)を得た。
【0121】
<評価方法>
【0122】
得られた各耐油紙について、以下に示す方法に準拠して各物性の評価を行った。
【0123】
(透気度)
表面層30の表面を測定面とした耐油紙の透気度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に準じて王研式透気度を測定した。
【0124】
(透湿度)
JIS Z 0208:1976に準じて、透湿度を測定した。
【0125】
(耐油度)
表面層30の表面を測定面とした耐油紙の耐油度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000に準じて測定した。
【0126】
(実用耐油性)
得られた各耐油紙の表面を測定面とし、食用油(日清オイリオ社製、商品名「キャノーラ油」)を測定面に滴下し、室温で30分経過後に、測定面に食用油が浸透した痕跡を目視確認した。
〇:測定面をふき取った後でも、食用油が浸透した痕跡が確認されなかった。
×:測定面に食用油が浸透した痕跡(油ジミ)が確認された。
【0127】
(結露の抑制性)
・袋の作製
得られた各耐油紙をマチ無しの袋状に加工した。袋のサイズが横120mm×縦90mmとなるようにし、袋の上端のみ開口している形として左右両端を糊付けした。
・湿気を付加する条件及び判定基準
製袋後の紙サンプルに、油で調理後のポテトフライ70gを袋に投入した。電子レンジにて500W、30秒間加熱処理を行った。加熱処理後の袋の内面に、油滴又は水滴からなる液滴の付着状況を観察し、30分間室温保管を行った後、この液滴が消失していた場合、袋内に発生した液滴は水滴であり、水蒸気透過性が悪かったと判断した。また、液滴が残存していた場合、袋内に発生した液滴は油分であり、水蒸気透過性に問題がなかったと判断した。
○:袋内に水滴が付着していなかった。
×:袋内に水滴が付着していた。
【0128】
各実施例及び各比較例の製造条件及び評価結果を、表1及び表2に示す。なお、表中の中間層の「乾燥付着量(両面)」とは、紙基材10の中間層20及び中間層40両層の合計の乾燥付着量である。そして、中間層20又は中間層40の片面の乾燥付着量は、この値の1/2倍となる。例えば、表1中の中間層の「乾燥付着量(両面)」が0.8g/mである場合、中間層20及び中間層40の両層の合計の乾燥付着量が0.8g/mであり、中間層又は中間層40の片面の乾燥付着量は0.4g/mである。なお、表中の表面層の「トータル((a)+(b))乾燥付着量」とは、樹脂(a)とサイズ剤(b)の乾燥付着量の合計である。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
以上より、本実施例によれば、高い耐油性と高い透気性とを併せ持つ耐油紙を提供することが少なくとも確認された。さらに、本実施例のように、フッ素系樹脂を含まない非フッ素系樹脂系の耐油紙であっても、このように優れた効果を得ることができることも確認された。
【符号の説明】
【0132】
1,2,3:耐油紙
10:紙基材
20,40:中間層
30,50:表面層
図1
図2
図3