IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7587404光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法
<>
  • 特許-光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法 図1
  • 特許-光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法 図2
  • 特許-光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法 図3
  • 特許-光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20241113BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20241113BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241113BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241113BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20241113BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B1/14
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
G09F9/00 338
B05D1/38
B05D1/32 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020199185
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086908
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 豪彦
(72)【発明者】
【氏名】越智 元気
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-206601(JP,A)
【文献】特開2008-040455(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068128(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0110369(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に非透明層が積層された光学フィルムの製造方法であって、
前記非透明層は貫通孔を有するとともに、その貫通孔内に透明層が形成され、
前記製造方法は、マスク材被覆工程、透明層形成工程、マスク材除去工程および非透明層形成工程を含み、
前記マスク材被覆工程において、前記基材の一方の面を、前記透明層形成用貫通孔が形成されたマスク材で被覆し、
前記マスク材被覆工程後、前記透明層形成工程において、前記透明層形成用貫通孔内に透明層形成用液を塗工し、固化させて前記透明層を形成し、
前記透明層形成工程後、前記マスク材除去工程において、前記マスク材を前記基材から除去し、
前記マスク材除去工程後、前記非透明層形成工程において、前記基材における前記透明層形成された側の面上に非透明層形成用液を塗工して前記非透明層を形成し、
前記透明層がクリアハードコート層であり、
前記透明層の最薄部の厚みと、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚みとが、下記数式(1)の関係を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法。

T2/T1≦3(1)

前記数式(1)において、T1は、前記透明層の最薄部の厚み(μm)であり、T2は、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚み(μm)である。
【請求項2】
前記透明層の長径R1が2.5mm以上である請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記透明層表面の水接触角が85°以上である請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記透明層において、最薄部の厚みと最厚部の厚みとが下記数式(2)の関係を満たす請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。

H1/T1≦3.5 (2)

前記数式(2)において、T1は、前記透明層の最薄部の厚み(μm)であり、H1は、前記透明層の最厚部の厚み(μm)である。
【請求項5】
前記透明層は、波長550nmにおける光透過率が80%以上である請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記非透明層は、波長550nmにおける光透過率が80%未満である請求項1から5のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記非透明層が防眩層である請求項1から6のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記基材および前記マスク材が長尺状であり、
前記基材を搬送しながら、前記マスク材被覆工程、前記透明層形成工程、前記マスク材除去工程および前記非透明層形成工程を連続的に行う請求項1から7のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
基材上に非透明層が積層された光学フィルムであって
前記非透明層は貫通孔を有するとともに、その貫通孔内に透明層が形成され、
前記透明層がクリアハードコート層であり、
前記基材の前記透明層形成面上に、前記非透明層が形成され、
前記透明層の長径R1が、2.5mm以上であり、
前記透明層表面の水接触角が、85°以上であことを特徴とする、光学フィルム
【請求項10】
請求項9記載の光学フィルムを含む光学部材。
【請求項11】
偏光板である請求項10記載の光学部材。
【請求項12】
請求項9記載の光学フィルム、または請求項10もしくは11記載の光学部材を含む画像表示装置。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法により請求項9記載の光学フィルムを製造する工程を含む、請求項10または11記載の光学部材の製造方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法により請求項9記載の光学フィルムを製造する工程を含む、請求項12記載の画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に用いる光学フィルムにおいて、防眩層等の非透明な層を、液の塗工により形成する場合がある(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-109683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、そのような光学フィルムにおいて、防眩層の一部を穴あきにして、その穴の部分に透明なクリアハードコート層を形成する場合がある。しかし、この場合、光学フィルムの製造工程上で、以下のような問題が起こるおそれがある。
【0005】
図4(a)~(b)の工程断面図に、前述のような光学フィルムの製造工程の一例を示す。まず、図4(a)に示すとおり、基材11の一方の面を、マスク材21で被覆する。マスク材21には貫通孔21hが形成されている。つぎに、マスク材21の上からクリアハードコート層形成用液を塗工(塗布)する。そのクリアハードコート層形成用液の固化により、マスク材21の貫通孔21h内に、図4(a)に示すとおりクリアハードコート層(透明層)13が形成される。マスク材21上には、クリアハードコート層形成用液の固化により、不要層13bが形成される。
【0006】
つぎに、図4(b)に示すとおり、マスク材21を不要層13bとともに基材11から剥離し、除去する。さらに、基材11の、クリアハードコート層13が形成された側の面に、防眩層形成用液を塗工し、固化させて、図示のとおり、防眩層(非透明層)12を形成する。しかし、このとき、クリアハードコート層13表面の凹部が深いと、クリアハードコート層13表面の凹部内に防眩層形成用液が残ってしまうおそれがある。その残った防眩層形成用液が固化すると、図4(b)のとおり、クリアハードコート層13表面に非透明部12dが形成されてしまい、クリアハードコート層13の透明性が損なわれるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、透明層の透明性を損なわない光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の光学フィルムの製造方法は、
基材上に非透明層が積層された光学フィルムの製造方法であって、
前記非透明層は貫通孔を有するとともに、その貫通孔内に透明層が形成され、
前記製造方法は、マスク材被覆工程、透明層形成工程、マスク材除去工程および非透明層形成工程を含み、
前記マスク材被覆工程において、前記基材の一方の面を、前記透明層形成用貫通孔が形成されたマスク材で被覆し、
前記マスク材被覆工程後、前記透明層形成工程において、前記透明層形成用貫通孔内に透明層形成用液を塗工して前記透明層を形成し、
前記透明層形成工程後、前記マスク材除去工程において、前記マスク材を前記基材から除去し、
前記マスク材除去工程後、前記非透明層形成工程において、前記基材の前記透明層形成面上に非透明層形成用液を塗工して前記非透明層を形成し、
前記透明層の最薄部の厚みと、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚みとが、下記数式(1)の関係を満たすことを特徴とする。

T2/T1≦3 (1)

前記数式(1)において、T1は、前記透明層の最薄部の厚み(μm)であり、T2は、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚み(μm)である。
【0009】
本発明の光学フィルムは、前記本発明の光学フィルムの製造方法により製造される光学フィルムである。
【0010】
本発明の光学部材は、本発明の光学フィルムを含む光学部材である。
【0011】
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルム、または本発明の光学部材を含む画像表示装置である。
【0012】
本発明の光学部材の製造方法は、前記本発明の光学フィルムの製造方法により前記本発明の光学フィルムを製造する工程を含む、前記本発明の光学部材の製造方法である。
【0013】
本発明の画像表示装置の製造方法は、前記本発明の光学フィルムの製造方法により前記本発明の光学フィルムを製造する工程を含む、前記本発明の画像表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透明層の透明性を損なわない光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の光学フィルムおよびその製造方法の一例を示す工程断面図である。
図2図2は、図1の製造方法により製造された本発明の光学フィルムの平面図である。
図3図3は、本発明の光学フィルムの製造方法の一例を示す別の工程断面図である。
図4図4は、本発明に関連する光学フィルムの製造方法の一例を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0017】
本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば、前記透明層の長径R1が2.5mm以上であってもよい。
【0018】
本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば、前記透明層表面の水接触角が85°以上であってもよい。
【0019】
本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば、前記透明層において、最薄部の厚みと最厚部の厚みとが下記数式(2)の関係を満たしてもよい。

H1/T1≦3.5 (2)

前記数式(2)において、T1は、前記透明層の最薄部の厚み(μm)であり、H1は、前記透明層の最厚部の厚み(μm)である。
【0020】
本発明の光学フィルムの製造方法において、例えば、前記透明層は、波長550nmにおける光透過率が80%以上または81%以上であってもよい。
【0021】
本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば、前記透明層がクリアハードコート層であってもよい。
【0022】
本発明の光学フィルムの製造方法において、例えば、前記非透明層は、波長550nmにおける光透過率が80%未満または79%以下であってもよい。
【0023】
本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば、前記非透明層が防眩層であってもよい。
【0024】
本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば、
前記基材および前記マスク材が長尺状であり、
前記基材を搬送しながら、前記マスク材被覆工程、前記透明層形成工程、前記マスク材除去工程および前記非透明層形成工程を連続的に行ってもよい。
【0025】
本発明の光学部材は、例えば、偏光板であってもよい。
【0026】
なお、本発明において、「重量」と「質量」とは、特に断らない限り、互いに読み替えてもよいものとする。例えば、「質量部」は「重量部」と読み替えてもよく、「重量部」は「質量部」と読み替えてもよく、「質量%」は「重量%」と読み替えてもよく、「重量%」は「質量%」と読み替えてもよいものとする。
【0027】
[1.光学フィルムの製造方法]
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について、例を挙げて、さらに具体的に説明する。
【0028】
[1-1.光学フィルムの製造方法の概要]
図1(a)~(d)の工程断面図に、本発明の光学フィルムの製造方法の一例を示す。
【0029】
まず、図1(a)に示すとおり、基材11を準備する。基材11は、例えば、樹脂フィルムであってもよい。つぎに、同図に示すとおり、基材11の一方の面を、透明層形成用貫通孔21hが形成されたマスク材21で被覆する(マスク材被覆工程)。その後、マスク材21上に透明層形成用液を塗工(塗布)する。これにより、透明層形成用貫通孔21h内に透明層形成用液を塗工し、さらにそれを固化させ、図1(b)に示すとおり透明層13を形成する(透明層形成工程)。このとき、マスク材21上には、透明層形成用液の固化により、不要層13bが形成される。さらにその後、マスク材21を不要層13bとともに基材11から剥離し、除去する(マスク材除去工程)。さらにその後、基材11の、透明層13が形成された側の面に、防眩層形成用液を塗工し、固化させて、図1(d)に示すとおり、非透明層12を形成する(非透明層形成工程)。このようにして、図1(d)に示す本発明の光学フィルム10を製造することができる。なお、図1(d)では、非透明層12が防眩層であり、非透明層(防眩層)12は、樹脂層12a中に粒子12bが含まれて形成されており、樹脂層12a表面に凹凸が形成されている。ただし、これは例示であり、本発明において、非透明層はこれに限定されない。
【0030】
本発明において、前記「非透明層」は、例えば、波長550nmにおける光透過率が80%未満である層をいう。前記非透明層は、波長550nmにおける光透過率が、例えば、79%以下、78%以下、77%以下、76%以下、または75%以下であってもよく、例えば、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、または5%以上であってもよい。
【0031】
本発明において、前記非透明層は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり防眩層でもよいし、保護層、光拡散層、表面コーティング層、ハードコート層等であってもよい。前記防眩層は、例えば、防眩性ハードコート層であってもよい。
【0032】
本発明において、前記「透明層」は、例えば、波長550nmにおける光透過率が80%以上である層をいう。本発明において、前記透明層は、波長550nmにおける光透過率が、例えば、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、または85%以上であってもよく、その上限は特に限定されないが、例えば100%以下であり、例えば、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、または95%以下であってもよい。
【0033】
本発明において、前記透明層は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりクリアハードコート層でもよいし、保護層、表面コーティング層、ハードコート層等であってもよい。前記透明層は、例えば、画像表示装置のカメラホール用の透明層であってもよいし、レンズ等の透明層等であってもよい。
【0034】
本発明において、光透過率の測定方法は特に限定されないが、例えば、後述の実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0035】
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、前述のとおり、前記透明層の最薄部の厚みと、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚みとが、下記数式(1)の関係を満たすことを特徴とする。

T2/T1≦3 (1)

前記数式(1)において、T1は、前記透明層の最薄部の厚み(μm)であり、T2は、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚み(μm)である。なお、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の「最小厚み」は、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最薄部の厚みをいう。
【0036】
なお、本発明において、「最薄部」は、厚みが最も小さい部分をいい、「最厚部」は、厚みが最も大きい部分をいう。また、本発明において、厚みの測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述の実施例に記載の測定方法により測定できる。
【0037】
図3(a)および(b)の工程断面図に、本発明の光学フィルムの製造方法の一例を示す。図3(a)は、前記マスク材被覆工程および前記透明層形成工程実施後の状態であり、図1(b)と同じ状態を示す。図示のとおり、この製造方法では、透明層13の最薄部の厚みT1(μm)と、透明層形成用貫通孔21h外周におけるマスク材21の最小厚みT2(μm)とが、T2/T1≦3(前記数式(1))の関係を満たす。
【0038】
前述の図4(a)は、T2/T1が3を超える例である。T2/T1が3を超えると、前述のとおり、透明層13表面の凹部が深くなるため、その凹部内に非透明部12dが形成されてしまい、透明層13の透明性が損なわれるおそれがある。一方、本発明によれば、T2/T1が3以下であることにより、そのような課題を解決し、透明層の透明性が損なれていない光学フィルムを提供することができる。なお、本発明において、透明層の透明性の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述の実施例に記載の測定方法により測定できる。
【0039】
また、本発明の光学フィルムの製造方法において、前記マスク材の厚みは、特に限定されないが、例えば、50μm以下、47μm以下、44μm以下、41μm以下、または38μm以下であってもよく、例えば、2μm以上、5μm以上、8μm以上、11μm以上、または14μm以上であってもよい。例えば、下記[1]~[5]の観点から、なるべく厚みが小さい(薄い)マスク材を用いることが好ましい。

[1]薄いマスク材を使用することで、マスク材の穴あけ(貫通孔形成)の加工精度が向上しやすくなり、それにより、透明層端部の寸法および形状の精度(均一度)が向上しやすくなる。
[2]薄いマスク材を、使用することで、色々な形の穴あけ加工が行いやすくなる。
[3]マスク材が薄いと、穴あけの際にバリが発生しにくく、基材との張り合わせの際に気泡が入りにくい。
[4]薄いマスク材を使用することで、透明層の凹部の深さが抑えられるため、透明層を透過して画像を見た際のゆがみを抑えることができる。
[5]薄いマスク材を使用することで、透明層部分の膜厚が想定より厚くなるのを防ぐことができる。
【0040】
本発明の光学フィルムの製造方法において、T2/T1は、前記数式(1)の関係を満たすこと以外は、特に限定されない。T2/T1の下限値は、特に限定されないが、0を超える数値であり、例えば、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、または1.5以上であってもよい。T2/T1の上限値は、前述のとおり3以下であり、例えば、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、または2.5以下であってもよい。
【0041】
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、前述のとおり、前記透明層において、最薄部の厚みT1(μm)と最厚部の厚みH1(μm)とがH1/T1≦3.5(前記数式(2))の関係を満たしていてもよい。図3(b)に、そのような例を示す。なお、図3(b)においては、図示の簡潔のために、非透明層12は、表面が平坦であり粒子等を含まないように図示している。
【0042】
H1/T1が3.5以下であることにより、透明層の凹部の深さが抑えられるため、透明層の凹部に非透明層形成用液が残って非透明部が形成される現象を、さらに抑制することができる。また、透明層の凹部の深さが抑えられることにより、透明層を透過して画像を見た際のゆがみを抑えることができる。あらに、透明層の凹部の深さが抑えられることにより、例えば、透明層の耐擦傷性が向上する。H1/T1の下限値は、特に限定されないが、1以上であり、例えば、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、または2.0以上であってもよい。H1/T1の上限値は、前述のとおり3.5以下であり、例えば、3.4以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、または3.0以下であってもよい。
【0043】
なお、前記透明層の最薄部の厚みは、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上、1.2μm以上、1.4μm以上、1.6μm以上、または1.8μm以上であってもよく、例えば、30μm以下、28μm以下、26μm以下、24μm以下、または22μm以下であってもよい。前記透明層の最厚部の厚みは、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上、1.2μm以上、1.4μm以上、1.6μm以上、または1.8μm以上であってもよく、例えば、50μm以下、48μm以下、46μm以下、44μm以下、または42μm以下であってもよい。
【0044】
また、本発明の光学フィルムの製造方法において、前述のとおり、前記透明層の長径R1が2.5mm以上であってもよい。なお、本発明において、「長径」は、径が最も長くなる部分の直径をいう。例えば、円であれば直径が長径となり、楕円であれば長軸の長さが長径となり、矩形であれば対角線の長さが長径となる。前記透明層の径が大きいほど、非透明層形成用液が透明層の凹部内に残りにくくなり、透明層の透明性が損なわれにくい(部分クリア化しやすい)傾向がある。透明層の透明性が損なわれないことで、前記透明層を透過して画像を見た際のぼやけを抑えることができる。前記透明層の長径R1は、例えば、2.6mm以上、2.7mm以上、2.8mm以上、2.9mm以上、または3.0mm以上であってもよく、例えば、100mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、または60mm以下であってもよい。
【0045】
また、本発明の光学フィルムの製造方法において、前述のとおり、前記透明層表面の水接触角が85°以上であってもよい。水接触角が大きいことは、疎水性が高いことを意味する。前記透明層表面の疎水性が高いと、非透明層形成用液を弾きやすいため、前記透明層表面に非透明層形成用液が付着しにくい。非透明層形成用液が付着しにくいことで、前記透明層表面に対する比透明部の形成を抑えることができる。このため、前記透明層を透過して画像を見た際のぼやけを抑えることができる。また、前記透明層が非透明層形成用液を弾きやすい(非透明層形成用液が付着しにくい)ことにより、使用できる非透明層形成用液の種類が多くなり、非透明層の特性を任意に変更できるようになる。前記透明層表面の水接触角は、例えば、85°以上、86°以上、87°以上、88°以上、または89°以上であってもよく、例えば、115°以下、114°以下、113°以下、112111°以下、または110°以下であってもよい。なお、本発明において、水接触角の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述の実施例に記載した測定方法により測定できる。
【0046】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法の各工程について、例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、以下においては、主に、前記非透明層が防眩層であり、製造される本発明の光学フィルムが防眩性フィルムである例について説明する。しかし、前述のとおり、本発明は、これに限定されない。なお、以下において、防眩性フィルムである本発明の光学フィルムを「本発明の防眩性フィルム」と言う場合がある。
【0047】
[1-2.マスク材被覆工程]
まず、前記基材の一方の面を、前記透明層形成用貫通孔が形成されたマスク材で被覆する(マスク材被覆工程)。
【0048】
前記基材は、特に制限されないが、例えば光透過性基材であってもよく、具体的には、例えば、透明プラスチックフィルム基材等が挙げられる。前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008-90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材が挙げられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の光学フィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板もしくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、例えば、前記非透明層が、保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、本発明の光学フィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0049】
本発明において、前記基材の厚みは、特に制限されないが、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、例えば、10~500μm、20~300μm、または30~200μmの範囲である。前記基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30~1.80または1.40~1.70の範囲である。
【0050】
なお、本発明において、「屈折率」は、特に断らない限り、波長550nmの屈折率をいう。また、本発明において、屈折率の測定方法は、特に限定されないが、粒子等の微細な物質の屈折率の場合は、例えば、ベッケ法を用いて測定できる。ベッケ法とは、スライドガラス上で標準屈折液に測定試料を分散させ、顕微鏡で観察した際に、試料の輪郭が消えるか、またはぼやけるときの標準屈折液の屈折率をその試料の屈折率とする測定法である。また、ベッケ法で屈折率を測定できない測定対象物(例えば、防眩性フィルム、防眩層、または防眩層を構成する樹脂等)の屈折率の測定方法は、特に限定されないが、例えば、一般的な屈折計(屈折率測定用の機器)を用いて測定できる。前記屈折計も特に限定されないが、例えば、アッベ屈折計等が挙げられる。前記アッベ屈折計としては、例えば、株式会社アタゴ製の多波長アッベ屈折計DR-M2/1550(商品名)が挙げられる。
【0051】
本発明の光学フィルムの製造方法および本発明の光学フィルムにおいて、例えば、前記基材に含まれる樹脂が、アクリル樹脂を含んでいてもよい。また、例えば、前記基材が、アクリルフィルムであってもよい。
【0052】
前記マスク材は、特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、COP(シクロオレフィン)フィルム等であってもよい。前記マスク材の厚みについては、例えば、前述のとおりである。
【0053】
前記基材の一方の面を前記マスク材で被覆するにあたり、例えば、前記マスク材と前記基材の一方の面とを粘着剤等で貼り合せてもよい。前記粘着剤は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエチレン系粘着剤、ポリプロピレン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤等が挙げられる。後のマスク除去工程において、前記マスク材を前記基材から除去する必要があるため、前記粘着剤は、被接着体の再剥離が可能なものである必要がある。前記粘着剤の塗布厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、または5μm以上であってもよく、例えば、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、または6μm以下であってもよい。また、例えば、粘着剤を用いず、前記マスク材を単に前記基材の一方の面上に重ねあわせるのみでもよい。
【0054】
[1-3.透明層形成工程]
前記マスク材被覆工程後、前記透明層形成用貫通孔内に透明層形成用液を塗工して前記透明層を形成する(透明層形成工程)。
【0055】
透明層形成用液は、特に限定されないが、例えば、一般的なクリアハードコート層の形成用液と同様でもよい。前記透明層形成用液は、例えば、加熱または光照射等により重合(硬化)可能なモノマーを、溶媒に溶解させたものであってもよい。前記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、多官能アクリレート、単官能アクリレート等が挙げられ、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記モノマーの含有率は、特に限定されないが、例えば、前記透明層形成溶液における固形分(前記溶媒以外の成分)全体の1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、または5質量%以上であってもよく、例えば、60質量%以下、59質量%以下、58質量%以下、57質量%以下、または56質量%以下であってもよい。また、前記モノマーに代えて、またはこれに加え、例えば、加熱または光照射等により重合(硬化)可能な任意の物質を用いてもよい。前記加熱または光照射等により重合(硬化)可能な物質は、例えば、ウレタンアクリレート等のプレポリマーであってもよい。
【0056】
また、前記透明層形成用液は、例えば、防汚材を含んでいてもよい。前記透明層形成用液が防汚材を含むことで、さらに、前記透明層表面に非透明層形成用液が付着しにくくなり、前記透明層の透明性を損なうことを抑えることができる。前記防汚剤は、特に限定されないが、例えば、フッ素系防汚剤、シリコーン系防汚剤等が挙げられ、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KY-1203」、共栄社化学株式会社製の商品名「LE-303」、DIC株式会社製の商品名「PC4100」等が挙げられる。前記防汚剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記透明層形成溶液における固形分(前記溶媒以外の成分)全体の0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、または0.5質量%以上であってもよく、例えば、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、または12質量%以下であってもよい。
【0057】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t-ブチルアルコール(TBA)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、およびアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0058】
前記透明層形成用液の塗工厚みは、特に限定されないが、例えば、前記透明層の厚みが前記範囲内となるように適宜設定すればよい。
【0059】
また、前記マスク材上に塗布されて固化した前記透明層形成用液(図1および3では不要層13b)は、不要となり、後に、前記マスク材とともに除去されることになる。したがって、前記透明層形成用液の塗工時には、前記透明層形成用貫通孔内以外に前記透明層形成用液を極力塗工しないように、前記透明層形成用液の吐出位置を調整することが好ましい。これにより、前記透明層形成用液の無駄を抑制し、前記透明層形成用液の使用量を削減することができる。
【0060】
前記透明層形成用液の塗工後、例えば、前記透明層形成用液を乾燥および硬化させることにより、前記透明層を形成してもよい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0061】
前記透明層形成用液の乾燥温度は、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0062】
前記透明層形成用液の乾燥により形成された塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される透明層の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm以下であれば、形成される透明層の着色を防止することができる。
【0063】
[1-4.マスク材除去工程]
前記透明層形成工程後、前記マスク材を前記基材から除去する(マスク材除去工程)。この方法は特に限定されないが、例えば、前記マスク材を前記基材から剥離することで、前記基材から除去すればよい。
【0064】
[1-5.非透明層形成工程]
前記マスク材除去工程後、前記基材の前記透明層形成面上に非透明層形成用液を塗工して前記非透明層を形成する(非透明層形成工程)。以下においては、主に、前記非透明層が防眩層である場合について説明するが、前述のとおり、本発明において、前記非透明層は、防眩層のみに限定されず、任意である。
【0065】
前記非透明層形成工程は、例えば、前記基材の前記透明層形成面上に非透明層形成用液(塗工液)を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含んでいてもよい。また、前記非透明層形成工程は、例えば、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。前記硬化は、例えば、前記乾燥の後に行なうことができるが、これに限定されない。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。
【0066】
前記非透明層形成用液は、例えば、非透明層形成用樹脂と、溶媒とを含んでいてもよい。前記非透明層形成用液は、例えば、前記非透明層形成用樹脂、フィラー、チキソトロピー付与剤および前記溶媒を含む非透明層形成用液であってもよい。
【0067】
前記非透明層層形成用樹脂(以下、単に「樹脂」ということがある。)は、特に限定されず、例えば、1種類の樹脂のみを用いてもよいし、2種類以上の樹脂を併用してもよい。前記樹脂は、例えば、アクリレート樹脂(アクリル樹脂ともいう)を含んでいてもよく、また、例えば、ウレタンアクリレート樹脂を含んでいてもよい。前記樹脂は、例えば、硬化型ウレタンアクリレート樹脂および多官能アクリレートの共重合物であってもよい。
【0068】
前記樹脂は、前記アクリレート樹脂等に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0069】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等が挙げられる。これらは、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0070】
前記樹脂として、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、非透明層の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等も挙げられる。これらは、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0071】
前記樹脂の屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.48以上、1.49以上、1.50以上、または1.51以上でもよく、例えば、1.60以下、1.59以下、1.58以下、または1.57以下でもよい。
【0072】
前記フィラーは、例えば、無機粒子または有機粒子であってもよく、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記無機粒子としては、例えば、シリカゲル、シリコーン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム粒子等により形成された粒子が挙げられる。前記有機粒子としては、例えば、樹脂により形成された粒子が挙げられ、前記樹脂としては、例えば、Pst(ポリスチレン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、Pst(ポリスチレン)とPMMA(ポリメタクリル酸メチル)との共重合体、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化エチレン樹脂等が挙げられる。前記粒子の粒子径、屈折率等は、特に限定されず、例えば、一般的な防眩層と同様またはそれに準じてもよい。
【0073】
また、前記非透明層形成用液は、チキソトロピー付与剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、チキソトロピー付与剤を含む方が、チキソ性を示しやすいため好ましい。また、前記非透明層形成用液が前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記粒子の沈降を防止する効果(チキソトロピー効果)が得られる。さらに、前記チキソトロピー付与剤自体のせん断凝集により、防眩層(非透明層)の表面形状を、さらに広い範囲で自在に制御することも可能である。
【0074】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、本発明の防眩性フィルムを得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率を適宜選択してもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t-ブチルアルコール(TBA)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、およびアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、チキソトロピー付与剤(例えば増粘剤)を溶解させるために、前記炭化水素溶媒(例えばトルエン)を含むことが好ましい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。また、前記溶媒は、例えば、トルエンを含むとともに、さらに、酢酸エチル、酢酸ブチル、IPA、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、およびTBAからなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0075】
基材として、例えば、アクリルフィルムを用いる場合は、アクリルフィルム(アクリル樹脂)に対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含む溶媒でもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、およびアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。
【0076】
基材として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を用いる場合は、TACに対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどを挙げることができる。
【0077】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤を含有する場合において防眩層形成材料(非透明層形成用液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0078】
前記非透明層形成用液には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、非透明層(例えば防眩層)表面に防汚性が求められる場合、または、後述のように反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層が非透明層上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。本発明では、例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで非透明層形成用液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。この場合、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0079】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01~5重量部の範囲である。
【0080】
前記非透明層形成用液には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0081】
前記非透明層形成用液には、例えば、特開2008-88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0082】
前記非透明層形成用液を前記基材上に塗工して塗膜を形成する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0083】
つぎに、前述のとおり、前記塗膜を乾燥および硬化させ、非透明層(例えば防眩層)を形成する。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0084】
前記非透明層形成用液の乾燥温度は、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0085】
前記塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される非透明層の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm以下であれば、形成される非透明層の着色を防止することができる。
【0086】
[1-6.連続製法等]
本発明の光学フィルムの製造方法は、連続製法とすることが可能である。すなわち、本発明の光学フィルムの製造方法は、前述のとおり、前記基材および前記マスク材が長尺状であり、前記基材を搬送しながら、前記マスク材被覆工程、前記透明層形成工程、前記マスク材除去工程および前記非透明層形成工程を連続的に行う製造方法であってもよい。より具体的には、例えば、前記長尺状の基材および前記長尺状のマスク材が、それぞれロール状であり、ロールから前記基材および前記マスク材を繰り出しながら本発明の光学フィルムの製造方法を実施してもよい。このような方法を、例えば、ロールtoロール法ということがある。
【0087】
前記マスク材被覆工程においては、例えば、幅方向およびロール流れ方向にそれぞれ複数の穴が開いているマスク材をロールから繰り出しながら、基材ロール原反に貼り合せてもよい。
【0088】
前記透明層形成工程においては、前記マスク材を貼り合せた(前記マスク材で被覆された)前記基材を搬送しながら、前記マスク材の前記透明層形成用貫通孔内に透明層形成用液を塗工して前記透明層を形成してもよい。このとき、前述のとおり、前記マスク材上に塗布されて固化した前記透明層形成用液(図1および3では不要層13b)は、不要となり、後に、前記マスク材とともに除去されることになる。したがって、前記透明層形成用液の塗工時には、前記透明層形成用貫通孔内以外に前記透明層形成用液を極力塗工しないように、前記透明層形成用液の液吐出部の位置を調整することが好ましい。これにより、前記透明層形成用液の無駄を抑制し、前記透明層形成用液の使用量を削減することができる。
【0089】
前記マスク材除去工程および前記非透明層形成工程も、前記基材を搬送しながら連続的に行うことができる。このようにして、前記マスク材被覆工程、前記透明層形成工程、前記マスク材除去工程および前記非透明層形成工程の全てを、一度で連続的に行い、基材上に前記透明層および前記非透明層が形成された長尺状のフィルムを製造することができる。その長尺状のフィルムを目的のサイズにカットすることで、目的とする本発明の光学フィルムを複数製造することができる。このように、例えば、本発明の光学フィルムの製造方法においてロールtoロール法を用いることで、本発明の光学フィルムを効率よく、低コストで製造可能である。
【0090】
以上のようにして、本発明の光学フィルムの製造方法を実施し、本発明の光学フィルムを製造することができる。ただし、本発明の光学フィルムの製造方法は、これに限定されない。例えば、本発明の光学フィルムの製造方法は、前記マスク材被覆工程、前記透明層形成工程、前記マスク材除去工程および前記非透明層形成工程以外の工程を、適宜含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、非透明層上に他の層を形成してもよいし、形成しなくてもよい。前記他の層は、特に限定されないが、例えば、低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等であってもよい。前記他の層の形成方法も特に限定されず、例えば、一般的な低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等の形成方法と同様またはそれに準じた方法で行うことができる。
【0091】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、例えば、非液状の防眩層形成材料を用いずに、一般的な防眩性フィルムの製造方法と同様に塗工液(非透明層形成用液)を用いて、防眩層(非透明層)を形成することもできる。このため、本発明の光学フィルムには、例えば、一般的な防眩性フィルムと同じ防眩層(非透明層)を適用することが可能であり、これにより、一般的な防眩性フィルムと同じ外観を実現することができる。非液状の防眩層形成材料を用いて防眩層を形成した場合、画面表示の黒さ(黒締り)が十分に実現されずに白ボケしてしまうおそれがある。しかし、本発明の光学フィルムの製造方法によれば、液状の防眩層形成材料を(非透明層形成用液)を用いて防眩層を使用できるため、このような問題を解決できる。また、本発明の光学フィルムの製造方法において、非透明層形成用液は特に限定されないため、どのような光学特性の防眩層および防眩性フィルムにも対応可能である。
【0092】
[2.光学フィルム、光学部材および画像表示装置]
本発明の光学フィルムは、特に限定されず、例えば、防眩性フィルムでもよいし、保護フィルム、光拡散フィルム、ハードコートフィルム等であってもよい。前記防眩性フィルムは、例えば、防眩性ハードコートフィルムであってもよい。
【0093】
本発明の光学フィルムにおいて、前記透明層は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりクリアハードコート層でもよいし、保護層、表面コーティング層、ハードコート層等であってもよい。前記透明層は、例えば、画像表示装置のカメラホール用の透明層であってもよいし、レンズ等の透明層等であってもよい。前記非透明層は、例えば、前述のとおり防眩層でもよいし、保護層、光拡散層、表面コーティング層、ハードコート層等であってもよい。前記防眩層は、例えば、防眩性ハードコート層であってもよい。
【0094】
本発明の光学部材は、特に限定されないが、例えば、偏光板であってもよい。前記偏光板も、特に限定されないが、例えば、本発明の防眩性フィルムおよび偏光子を含んでいてもよいし、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。前記偏光板の各構成要素は、例えば、接着剤または粘着剤等により貼り合わせられていてもよい。
【0095】
本発明の画像表示装置も特に限定されず、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、プラズマ表示装置等が挙げられる。
【0096】
本発明の画像表示装置の構成は、特に限定されず、例えば、一般的な画像表示装置と同様の構成であってもよい。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0097】
本発明の画像表示装置の用途は、特に限定されず、任意の用途に使用可能である。その用途としては、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器、スマートグラス、VR機器等が挙げられる。本発明の画像表示装置は、例えば、カメラ機能を有する画像表示装置であってもよい。その場合、例えば、前述のとおり、本発明の光学フィルムにおける前記透明層が、画像表示装置のカメラホール用の透明層であってもよい。本発明によれば、前述のとおり、透明層の透明性を損なわずに光学フィルムを提供することができるので、例えば、カメラ画像の画質を損なわずに画像表示装置を提供することが可能である。
【実施例
【0098】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。
【0099】
なお、以下の実施例および比較例において、物質の部数は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0100】
[測定方法(光透過率)]
以下の実施例および比較例において、光透過率は、以下のようにして測定した。顕微分光システム(商品名LvmicroZ2、LambdaVision社製)を用い、5倍の対物レンズ、および100μm径のピンホールユニットを用いて、気温23度、湿度50%の測定条件で、波長550nmでの光透過率を測定した。
【0101】
[測定方法(厚み)]
以下の実施例および比較例において、厚み(膜厚)は、三次元表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所)を用いて温度23℃、湿度30%RHの雰囲気下で測定した。なお、この測定器は触針式の測定器であり、測定用サンプル表面を針でなぞることで膜厚および段差を測定できる。透明層(以下の実施例および比較例ではクリアハードコート層。以下「クリアHC」または「HC」と言う場合がある。)の厚み測定においては、透明層形成工程およびマスク材除去工程後、非透明層(以下の実施例および比較例では防眩層。以下「AG」と言う場合がある。)形成工程前の測定用サンプルをガラスに貼り付けた状態で測定した。具体的には、基材からマスク材を剥離(除去)した後に、基材部分からHC部分をなぞり、基材表面とクリアHC部分の膜厚差を測定した。なお、完成品の光学フィルム(以下の実施例および比較例では防眩性フィルム。)においてHC厚みを測定する場合は、光学フィルムの断面をSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)により観察することで、同様にHC厚みを測定することができるとともに、基材およびAGの厚みも測定することができる。また、以下の実施例および比較例において、前記測定器を用いた測定条件は、下記のとおりとした。

測定速度:500μm/s
触針先端R:0.5μmR
測定圧力:100μN
【0102】
[測定方法(水接触角)]
以下の実施例および比較例において、HCの水接触角は、以下のようにして測定した。すなわち、まず、水接触角測定装置(商品名「DM700」、協和界面化学社製)を用いて、液滴法により、温度23℃、湿度30%RHの雰囲気下で、クリアHC中心部に約2.8μLの水滴を滴下した。そして、滴下から1秒後の被着体表面と滴下水滴端部の接線からなる角度を測定し、「水接触角(°)」とした。
【0103】
[測定方法(透明性)]
以下の実施例および比較例において、HCの透明性(クリア度)は、以下のようにして測定し、評価した。すなわち、レーザー顕微鏡(商品名「VK-X1000/1100」、キーエンス社製)を用いて、温度23℃、湿度30%RHの雰囲気下で、測定用サンプルを観察し、透明性(クリア度)を評価した。前記測定用サンプルとしては、非透明層形成工程後の防眩性フィルムを使用した。前記測定用サンプルの観察は、5倍拡大レンズを用いて行い、HC部分に500μm以上の大きさのAG硬化物(非透明部)が全くないものを〇、500μm以上1mm以下のAG硬化物が1個以上観察されるものを△、1mm以上の大きさのAG硬化物が観察されるものを×とした。
【0104】
[実施例1]
以下のようにして、本発明の光学フィルムの製造方法を実施し、本発明の光学フィルムを製造した。
【0105】
[1.マスク材被覆工程]
TAC基材(商品名「KC8UA」、コニカミノルタ株式会社製、厚み80μm)の一方の面に、透明層形成用貫通孔(円形、直径2.5mm)が形成されたマスク材(PETフィルム、厚み9μm)を貼付した。このマスク材は、厚み4μmPETフィルムの一方の面に厚み5μmの粘着剤層が形成されたマスク材である。このマスク材の厚み(9μm)は、PETフィルムと粘着剤層とを合わせた厚みである。なお、このマスク材は、厚みが均一であったため、透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚みT2(μm)は、前記マスク材全体の厚み(9μm)に等しい。前記マスク材の最小厚みT2(μm)の測定が必要な場合は、前述の三次元表面粗さ測定器またはSEM等により測定できる。
【0106】
[2.透明層形成工程]
下記成分(1)~(4)を準備し、全てを混合して透明層形成用液を調製した。この透明層形成用液の固形分濃度(下記溶媒(4)以外の成分の含有率)は、50質量%であった。

(1)ナノシリカ入り多官能アクリレート(商品名「NC035」、荒川化学工業株式会社製)67質量部
(2)多官能アクリレート(商品名「バインダーA」、荒川化学工業株式会社製)33質量部
(3)防汚剤(商品名「KY-1203」,信越化学工業株式会社製)2質量部
(4)希釈溶媒:酢酸ブチル
【0107】
前記「1.マスク材被覆工程」後のTAC基材の、マスク材(PETフィルム)で被覆された側の面に、前記成分(1)~(4)を全て混合した前記透明層形成用液を塗工し、その後、60℃のオーブンで60秒間乾燥させて塗膜を形成させた。さらにその後、前記塗膜に対し、高圧水銀ランプで、波長365nmの紫外線を、積算照射光量が300mJ/cmとなるように照射し、前記塗膜を硬化させた。これにより、前記透明層形成用貫通孔内の前記塗膜を硬化させて透明層(HC)を形成させた。なお、このHC層の中心部(最薄部)の厚みを、前述の測定方法により測定したところ、7μmであった。
【0108】
[3.マスク材除去工程]
前記「2.透明層形成工程」後に、前記マスク材(PETフィルム)を、その上に形成された不要層(前記透明層形成用液の乾燥塗膜が硬化したもの)とともに剥離し、前記TAC基材から除去した。
【0109】
[4.非透明層形成工程]
下記成分(11)~(17)を準備し、全てを混合して非透明層形成用液を調製した。この非透明層形成用液の固形分濃度(下記溶媒(17)以外の成分の含有率)は、45質量%であった。

(11)ナノシリカ入り多官能アクリレート(商品名「NC035」、荒川化学工業株式会社製)67質量部
(12)多官能アクリレート(商品名「バインダーA」、荒川化学工業株式会社製)33質量部
(13)ポリメチルメタクリレート粒子(商品名「テクポリマー」,平均粒子径3μm,屈折率1.525,積水化成品工業社製)10質量部
(14)チキソトロピー付与剤(商品名「ルーセンタイトSAN」,有機粘土である合成スメクタイト,コープケミカル社製)1.5質量部
(15)光重合開始剤(商品名「OMNIRAD907」,BASF社製)3質量部
(16)レベリング剤(商品名「LE303」,共栄社化学社製)0.15質量部
(17)希釈溶媒:トルエン
【0110】
前記「3.マスク材除去工程」後の前記TAC基材の、透明層(HC)が形成された側の面に、前記成分(11)~(17)を全て混合した前記非透明層形成用液を塗工し、その後、60℃のオーブンで60秒間乾燥させて塗膜を形成させた。さらにその後、前記塗膜に対し、高圧水銀ランプで、波長365nmの紫外線を、積算照射光量が300mJ/cmとなるように照射し、前記塗膜を硬化させた。これにより、前記塗膜を硬化させて非透明層(AG)を形成させた。なお、この非透明層(AG)の全ヘイズ値を測定したところ、40%であった。
【0111】
[実施例2~14、比較例1~4]
製造条件を下記表1~3のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルム(本発明の光学フィルム)を製造した。
【0112】
下記表1~3において、基材は全て実施例1と同じTAC基材(厚み80μm)であり、「KC8UA」は、前述のとおり、コニカミノルタ株式会社の商品名である。
【0113】
下記表1~3において、「HC防汚剤」は、透明層(HC)形成用液中の防汚剤を意味する。下記表1~3中の防汚剤の「KY-1203」は、前述のとおり信越化学工業株式会社の商品名であり、「LE-303」は、協栄社化学株式会社の商品名である。実施例2~14および比較例1~4における透明層形成用液の組成は、防汚剤として実施例1の「KY-1203」に代えて表中の防汚剤を用いたこと以外は、実施例1と同じであった。
【0114】
下記表1~3において、「AG液」は、非透明層(AG)形成用液を意味する。下記表1~3中の「シリカ有」は、実施例1と同一組成の非透明層形成用液を用いたことを意味する。「シリカ無」は、実施例1の成分(11)ナノシリカ入り多官能アクリレート67質量部および成分(12)多官能アクリレート33質量部に代えて、成分(12)多官能アクリレート100質量部を用いた(すなわち、成分(11)を用いずに同質量の成分(12)に変更した)こと以外は実施例1と同一組成の非透明層形成用液を用いたことを意味する。
【0115】
下記表1~3において、「マスク材厚み(T2)」は、各実施例および比較例において用いたマスク材(PETフィルム)の厚みT2(μm)を意味する。なお、各実施例および比較例に置いて用いたマスク材は、いずれも、全体にわたって厚みが均一であった。このため、マスク材全体の厚みを、透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚みT2(μm)に等しいとみなした。
【0116】
下記表1~3において、「HC中心膜厚(T1)」は、前述の測定方法により測定した透明層(HC)中心部(最薄部)の厚みT1(μm)を意味する。
【0117】
下記表1~3において、「HC水接触角」は、前述の測定方法により測定した透明層(HC)の水接触角を表す。
【0118】
下記表1~3において、「HC形状」は、透明層(HC)の形状および寸法を表す。この形状および寸法は、マスク材に形成されていた透明層形成用貫通孔の形状および寸法と、ほぼ等しい。「○」は、透明層が円形であったことを表す。「□」は、透明層が正方形であったことを表す。「△」は、透明層が正三角形であったことを表す。「径」および数値は、透明層の長径R1(mm)を表す。「辺」および数値は、透明層の1辺の長さ(mm)を表す。なお、正三角形の1辺の長さは、長径に等しい。
【0119】
下記表1~3において、「HC透明性評価」は、前述の測定方法により測定および評価した透明層(HC)の透明性(クリア度)の評価結果を表す。また、「クリア部透過率」は、前述の測定方法により測定した透明層(HC)の光透過率を表す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
前記表1~3に示したとおり、実施例1~14は、いずれも、前記透明層形成用貫通孔外周における前記マスク材の最小厚みT2(μm)と、前記透明層の最薄部の厚みT1(μm)との比の値T2/T1が、3以下であった。その結果、実施例1~14は、いずれも、前記透明層(HC)の透明性(クリア度)の評価結果が、○または△であり、透明性が損なわれていないことが確認された。これに対し、比較例1~4は、いずれも、T2/T1が3を超えていた。その結果、比較例1~4は、いずれも、前記透明層(HC)の透明性(クリア度)の評価結果が×であり、透明性が損なわれていた。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上、説明したとおり、本発明によれば、透明層の透明性を損なわない光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学部材、画像表示装置、光学部材の製造方法および画像表示装置の製造方法を提供することができる。本発明は、例えば、カメラホールを有する画像表示装置用の用途に適し、例えば、カメラ画像の画質を損なわずに画像表示装置を提供することが可能である。ただし、本発明は、この用途に限定されず、広範な用途に使用可能である。
【符号の説明】
【0125】
10 光学フィルム
11 基材
12 非透明層
12a 樹脂層
12b 粒子
12d 非透明部
13 透明層
13b 不要層
21 マスク材
21h 透明層形成用貫通孔
図1
図2
図3
図4