(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】顔料分散体、及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241113BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241113BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20241113BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/087 331
G03G9/09
G03G9/097 368
G03G9/08 384
(21)【出願番号】P 2020209740
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】白山 和久
(72)【発明者】
【氏名】越智 紅一郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】千本 裕也
(72)【発明者】
【氏名】浜 雅之
(72)【発明者】
【氏名】梶原 久輔
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-002314(JP,A)
【文献】特開2003-335976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、粘結剤及び磨砕剤を
溶融混練する顔料分散工程を有する顔料分散体の製造方法であって、
該顔料は、酸性官能基を表面に5μmol/g以上有し、
該磨砕剤は、塩基性官能基を表面に5μmol/g以上有し、
該磨砕剤は、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウムの群より選ばれる少なくとも1つであり、
該粘結剤は、塩基性官能基を表面
に有する樹脂Aを含有し、
下記測定方法で求められる、該樹脂Aが表面に有する塩基性官能基量が5μmol/g以上であり、
該樹脂Aの該顔料に対する質量比が0.01以上0.30以下である
ことを特徴とする顔料分散体の製造方法。
測定方法:
樹脂A(2g)を1/100規定の塩酸・エタノール溶液中(100ml)に添加し、上澄み液に対して1/100規定の水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて電位差滴定を行い、中和に要する水酸化カリウム量と、当初存在した塩酸量との差分から、樹脂Aが表面に有する塩基性官能基量を求める。
【請求項2】
前記磨砕剤の個数平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項
1に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
前記磨砕剤が炭酸カルシウム、カオリンクレー、タル
クの群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂Aがアミノ基を有するポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
前記顔料分散工程を二軸混練押し出し機で行うことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の顔料分散体の製造方法で得られた顔料分散体を用いてトナー粒子を得ることを含むトナーの製造方法。
【請求項7】
以下の(i)~(iv)の少なくともいずれかの方法で行われる請求項
6に記載のトナーの製造方法。
(i)前記顔料分散体と樹脂とを溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を経て、前記トナー粒子を得る方法。
(ii)前記顔料分散体と樹脂とを有機溶剤に溶解し、得られた樹脂溶液を水系媒体中に分散して造粒し、脱溶剤する工程を経て、前記トナー粒子を得る方法。
(iii)前記顔料分散体と重合性単量体とを混合して、得られた重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して造粒し、該重合性単量体を重合する工程を経て、前記トナー粒子を得る方法。
(iv)前記顔料分散体の微粒子を含有する分散液と前記樹脂を含有する微粒子を含有する分散液とを混合し、該顔料分散体の微粒子と該樹脂を含有する微粒子とを凝集させて凝集体粒子を形成し、該凝集体粒子を加熱し融合する工程を経て、前記トナー粒子を得る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーの製造方法、及び該トナーに用いられる顔料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高い生産性が要求されるようになってきている。高画質を達成するためには、さらなる着色力の拡大が求められており、そのためには顔料の小粒径化が有効である(特許文献1)。そこで、顔料を小粒径化するための方法として、従来、ソルベントソルトミリングが知られている(特許文献2)。粒径の大きい顔料を磨砕剤である水溶性無機塩と粘結剤である水溶性有機溶剤と混練することで顔料を解砕し、小粒径顔料を得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-100008号公報
【文献】特開平3-84067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、単に顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を混練するだけでは、顔料を十分に小径化することが難しい。これは、顔料がある程度小径化すると顔料の凝集化する速度が小径化する速度を上回るために十分に顔料が小さくならなくなるからである。顔料をより小径化するためには小径化する速度を十分に高める必要がある。これを達成することを狙って、より強いせん断応力を印加するために粘結剤の粘度を上げると、顔料と磨砕剤と粘結剤の混合物の粘度が上がるために生産装置の処理能力が低下し、単位時間当たりに処理できる顔料の量が減少する。また、顔料の量を減らし、磨砕剤を増やすと、小径化する速度は上がるが、顔料と磨砕剤と粘結剤の混合物に占める顔料の量が低下するためにこれも単位時間当たりに処理できる顔料の量が減少する。即ち、顔料をより小径化しようとすると生産性が低下するという課題が発生する。また、混練装置の保護の観点からも顔料と磨砕剤と粘結剤の混合物の粘度を上げることは好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、顔料、粘結剤及び磨砕剤を混練する顔料分散工程を有する顔料分散体の製造方法であって、
該顔料は、酸性官能基を5μmol/g以上有し、
該磨砕剤は、塩基性官能基を5μmol/g以上有し、
該粘結剤は、塩基性官能基を5μmol/g以上有する樹脂Aを含有し、
該樹脂Aの該顔料に対する質量比が0.01以上0.30以下である
ことを特徴とする顔料分散体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、高い生産性で顔料が小径化した顔料分散体及びその製造方法、並びに該顔料分散体分散体を用いたトナー及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、数値範囲を表す「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0008】
以下に本発明において好ましい顔料分散体の製造方法を詳述する。
本発明は、顔料、粘結剤及び磨砕剤を混練する顔料分散工程を有する顔料分散体の製造方法であって、
該顔料は、酸性官能基を5μmol/g以上有し、
該磨砕剤は、塩基性官能基を5μmol/g以上有し、
該粘結剤は、塩基性官能基を5μmol/g以上有する樹脂Aを含有し、
該樹脂Aの該顔料に対する質量比が0.01以上0.30以下である
ことを特徴とする顔料分散体の製造方法である。
【0009】
着色力を向上させるために顔料の小粒径化が重要であるが、従来のソルベントソルトミリング法ではより微細化することが難しい。これは、顔料の粒径が微細化するにつれて顔料が凝集しやすくなるため、ある程度まで顔料が小さくなると微細化する速度よりも凝集する速度が上回るためと考えられる。そこで、顔料の微細化速度を上げようとすると、顔料と磨砕剤と粘結剤の混合物の粘度が上がったり、単位混合物中に含まれる顔料の量が低下したりするために生産性が低下する。
【0010】
微細化する速度を高める方法としては、混合物の粘度を上げて、顔料と磨砕剤の会合時の相互作用をより強化する方法と、磨砕剤の量を増やすことで顔料と磨砕剤が会合する頻度を上げて微細化する確率を上げる方法が挙げられる。粘結剤の粘度を上げる場合、顔料と磨砕剤と粘結剤の混合物の粘度が上がることで目的とする混練時のせん断応力を上げることができる。一方、混合物の粘度が上がると、流動性の悪化や生産装置壁面への付着、装置の過負荷により、生産性が悪化する。また、磨砕剤の量を増やすということは相対的に顔料の量が減るため、こちらも生産性が悪化する。本発明者らが鋭意検討を行ったところ、顔料と磨砕剤と粘結剤がある特定の条件の時に顔料と磨砕剤と粘結剤の混合物の粘度を上げることなく顔料をより微細化することに成功した。
【0011】
本発明の顔料は、酸性官能基をその表面に5μmol/g以上有し、磨砕剤は、塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有し、粘結剤は、塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有する樹脂Aを含有する。顔料と磨砕剤と粘結剤が上記条件を満たす場合、これらの混合物の粘度を上げることなく、高い生産性を維持しつつ顔料をより微細化することができる。本発明者らは、このメカニズムを次のように推察している。顔料が酸性官能基を有する場合、粘結剤に含まれる塩基性官能基を有する樹脂Aとの間に酸-塩基相互作用が働き、樹脂Aが顔料に吸着し顔料があたかも塩基性基を有するように振る舞うようになる。ここで、磨砕剤が塩基性官能基を有する場合、塩基性基を有するように振る舞う顔料との塩基-塩基の反発作用により、顔料と磨砕剤の間で斥力が発生し、磨砕剤の表面で樹脂Aが吸着した顔料が滑ることで粘度が低減する。よって、顔料をより微細化するために粘度が高い粘結剤を用いたとしても、上記作用が発現することで粘度を上げることなく、即ち生産性を低下することなく顔料をより微細化することができると考える。
【0012】
顔料が酸性官能基をその表面に5μmol/g以上有していない場合、顔料と樹脂Aとの間で酸-塩基相互作用が十分に働かなくなるため、本発明の効果を得ることができない。
また、磨砕剤が塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有していない場合、磨砕剤と顔料の塩基-塩基の反発作用が十分に働かなくなるため、本発明の効果を得ることができない。
さらに、粘結剤が塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有する樹脂Aを含有しない場合、樹脂Aが吸着した顔料が塩基性基を有するように振る舞わなくなるため、本発明の効果を得ることができない。
【0013】
本発明の顔料の酸性官能基、磨砕剤の塩基性官能基、及び樹脂Aの塩基性官能基の測定方法については後述する。
【0014】
本発明の樹脂Aの顔料に対する質量比は0.01以上0.30以下である。樹脂Aの顔料に対する質量比が0.01より小さい場合、顔料に吸着する樹脂Aの量が少なくなり、顔料に樹脂Aが吸着していても、顔料が塩基性基を有するように振る舞わなくなる。その結果、樹脂Aが吸着した顔料と磨砕剤との塩基-塩基の反発作用がほとんど発生しなくなるために、本発明の効果を得ることができない。また、樹脂Aの顔料に対する質量比が0.30より大きい場合、樹脂Aが過剰に存在することで、顔料に吸着しない塩基性の樹脂Aが増える。そのために、樹脂Aが吸着した顔料と磨砕剤の間に働く塩基-塩基の反発作用が弱くなるため、本発明の効果が得られなくなる。
【0015】
本発明の顔料分散体の製造方法は、例えば、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。この中で、二軸混練押し出し機で行うことが顔料の微細化及び生産性の観点から好ましい。
【0016】
本発明のトナー粒子の製造が、以下の(i)~(iv)の少なくともいずれかの方法で行われることが着色力の観点から好ましく、(i)の方法で行われることがより好ましい。
(i)顔料分散体と樹脂とを溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を経て、トナー粒子を得る方法。
(ii)顔料分散体と樹脂とを有機溶剤に溶解し、得られた樹脂溶液を水系媒体中に分散して造粒し、脱溶剤する工程を経て、トナー粒子を得る方法。
(iii)顔料分散体と重合性単量体とを混合して、得られた重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して造粒し、重合性単量体を重合する工程を経て、トナー粒子を得る方法。
(iv)顔料分散体の微粒子を含有する分散液と樹脂を含有する微粒子を含有する分散液とを混合し、顔料分散体の微粒子と樹脂を含有する微粒子とを凝集させて凝集体粒子を形成し、凝集体粒子を加熱し融合する工程を経て、トナー粒子を得る方法。
【0017】
<顔料分散体の製造方法>
次に、本発明の顔料分散体の製造方法の手順について説明するが、これに限定されることはなく、加熱機構を設け、顔料が解砕され、顔料分散体が得られる製造方法であれば特に詳細は問わない。
顔料分散体の製造方法では、顔料と磨砕剤、粘結剤を含む原料を均一に混合したのちに混練を実施することが望ましい。まず、原料を均一に混合する工程として原料混合工程を説明する。原料混合工程では、顔料分散体の原料として、少なくとも顔料、磨砕剤、樹脂A、樹脂A以外の粘結剤成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
さらに、上記で配合し、混合した顔料分散体原料を溶融混練機に投入し、所望の温度で溶融混練することで、溶融混練機内のせん断場で磨砕剤により顔料が解砕され、顔料分散体が得られる。また、この際に顔料と樹脂Aの間で酸-塩基相互作用が働き、顔料と磨砕剤が会合する。溶融混練工程では、前述の通り、例えばニーダー、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。
【0018】
<顔料分散体の原料>
次に、本発明で使用する顔料、磨砕剤、樹脂Aを含む粘結剤を少なくとも含む顔料分散体の原料について説明する。
【0019】
(顔料)
顔料分散体に含有できる顔料としては、酸性官能基をその表面に5μmol/g以上有していればよく、以下のものが挙げられる。
顔料としては、公知の有機顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。
シアン系顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
マゼンタ系顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。
イエロー系顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。
黒色系着色剤としては、カーボンブラック又は、イエロー系顔料、マゼンタ系顔料、及びシアン系顔料を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
酸性官能基としては、スルホン基、カルボキシル基等が挙げられる。これらは顔料の表面に元々存在していてもよく、また、一般的な顔料を表面処理することにより導入してもよい。
顔料は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
顔料の混練前の個数平均粒径は80nm~150nmであり、顔料解砕工程により、解砕され、顔料分散体中に含まれる顔料の個数平均粒径は60nm~80nmであることが、着色力が良化することから好ましい。顔料の個数平均粒径の測定方法は後述の測定方法を用いる。
【0020】
(磨砕剤)
顔料分散体に含有できる磨砕剤としては、塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有していればよく、公知の樹脂粒子、無機塩、無機酸化物、鉱物などが挙げられる。
樹脂粒子としては、アクリル樹脂の粒子などが挙げられる。
無機塩としては、塩化物(塩化ナトリウムなど);炭酸塩(炭酸カルシウムなど);硫酸塩(硫酸バリウムなど)、チタン酸塩(チタン酸ストロンチウムなど)などの粒子が挙げられる。
無機酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニアの粒子などが挙げられる。
鉱物としては、カオリナイト、滑石などが挙げられる。
ここで、本発明の磨砕剤は無機微粒子であると、より顔料を微細化できる点から好ましく、屈折率が樹脂に近い点から炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウムであることがより好ましい。摩砕剤と樹脂の屈折率が近いと摩砕剤と樹脂との界面で光散乱を抑制でき、その結果、顔料分散体の彩度が高まる。
塩基性官能基としてはアミノ基等が挙げられる。塩基性官能基は磨砕剤の表面に元々存在していてもよく、また、一般的な表面処理により導入してもよい。
本発明の磨砕剤の個数平均粒径は0.1μm以上20μm以下であることが顔料の微細化の観点から好ましい。磨砕剤の個数平均粒径の測定方法は後述の測定方法を用いる。
【0021】
(樹脂A)
顔料分散体に含有できる粘結剤に含まれる樹脂Aとしては、塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有していればよく、以下のものが挙げられる。
非晶性樹脂としては、塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有するポリエステル、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミン、又はそれらのハイブリッド樹脂などが例示できる。
結晶性樹脂としては、塩基性官能基をその表面に5μmol/g以上有するポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、ポリビニル、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが好ましい。塩基性官能基としてはアミノ基等が挙げられる。塩基性官能基は、樹脂の合成過程で変性させて導入させてもよいし、樹脂に高分子反応により導入してもよい。
【0022】
(樹脂A以外の粘結剤成分)
顔料分散体に含有できる樹脂A以外の粘結剤成分としては、トナーの色味と帯電維持性に影響が少ない物質であれば特に問わない。その中でもトナーを構成する材料であることが好ましく、例えば、トナー結着樹脂である非晶性樹脂や結晶性樹脂、熱可塑性エラストマーや定着時のホットオフセット抑制に用いられる離型剤や低温定着性向上に用いられる可塑剤である低分子結晶化合物などが挙げられる。
【0023】
非晶性樹脂としては、トナーに用いられる一般的な樹脂であれば特に限定されず、ポリエステル、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はそれらのハイブリッド樹脂などが例示できる。この中でも、帯電維持性、低温定着性が良好なポリエステル、スチレン-アクリル酸共重合体、及びそのハイブリッド樹脂を用いることが良い。
【0024】
結晶性樹脂としては、トナーに用いられる一般的な樹脂であれば特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、ポリビニル、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。この中でも、低温定着性が良好なポリエステルであることが好ましい。
【0025】
樹脂A以外の粘結剤成分としての非晶性樹脂及び結晶性樹脂は、塩基性官能基を有さないか、塩基性官能基を有していたとしてもその表面における塩基性官能基の含有量は5μmol/g未満である。
【0026】
熱可塑性エラストマーとしては、トナーに用いられる一般的な樹脂であれば特に限定されず、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを使用することができる。結晶性部分の融点制御の観点から、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0027】
低分子結晶化合物としては、トナーに用いられる一般的な材料であれば良い。特に、離型剤として用いる低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものがより好ましい。
【0028】
また、ステアリン酸やベヘン酸などの結晶性を有する長鎖アルキルカルボン酸や1-ドコサノールや、1-オクタコサノールなどの結晶性を有する長鎖アルキルアルコールも同様により好ましい。
【0029】
<トナーの原料>
次に、本発明で使用するトナーに用いる結着樹脂及びその他の原料について説明する。
【0030】
(結着樹脂)
電子写真画像形成用のトナーに用いられる結着樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができ、ポリエステル、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。この中でも、低温定着性を良好にするという観点から非晶性ポリエステルが用いられ、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、重量平均分子量が1000~10,000程度の低分子量ポリエステルと重量平均分子量が10,000~100,000程度の高分子量ポリエステルを併用することが知られている。
【0031】
(離型剤)
必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤を用いてもよい。そのような離型剤としては、低分子量ポリオレフィン類、シリコーンワックス、脂肪酸アミド類、エステルワックス類、カルナバワックス、炭化水素系ワックスなどが一般的に例示できる。
【0032】
<トナーの製造方法>
顔料解砕工程で得られた顔料分散体を用いて作られるトナーの製造方法としては、混練粉砕法、溶解懸濁法、懸濁重合法、及び乳化凝集法が挙げられる。いずれか単独の製造方法でトナーを製造しても良いし、組み合わせてトナーを製造しても良い。例えば、混練粉砕法や溶解懸濁法で得られたトナー粒子に乳化凝集法でシェルを形成する方法などが挙げられる。
【0033】
以下、混練粉砕法、溶解懸濁法、懸濁重合法、及び乳化凝集法における、トナーの製造方法について具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
<混練粉砕法>
混練粉砕法では、先ず、トナーの構成材料である顔料分散体及び結着樹脂、並びに、必要に応じて添加される離型剤、着色剤及びその他の添加剤を十分混合し、加熱ロールやニーダーなどの公知の熱混練機を用いて溶融混練する(混練工程)。その後、所望のトナー粒径になるまで機械的に粉砕し(粉砕工程)、所望の粒度分布になるように分級を行い(分級工程)、トナーを製造する。
【0034】
(混練工程)
トナーの構成材料の溶融混練は、加熱ロールやニーダーなどの公知の熱混練機を用いて行うことができる。混練工程前に、トナーの構成材料が混合機を用いて事前に十分混合されていることが好ましい。
混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
熱混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリィミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
【0035】
(粉砕工程)
粉砕工程とは、混練工程で得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却した後、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、及び回転型機械ミル等の公知の粉砕機で、所望のトナー粒径になるまで、機械的に粉砕する工程である。粉砕効率の観点から、粉砕機としては、流動層式ジェットミルを用いることが望ましい。
粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などが挙げられる。
【0036】
(分級工程)
分級工程とは、粉砕工程で得られた粉砕物を分級し、所望の粒度分布を有するトナーを得る工程である。
分級に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、及び篩式分級機等の公知の装置を使用することができる。具体的には、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
【0037】
上記工程を経て作製したトナーには、必要に応じて、シリカ、アルミナ、チタニア、及び炭酸カルシウム等の無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル、及びシリコーン樹脂等の樹脂微粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加してもよい。これらの無機微粒子や樹脂微粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等としての外添剤として機能する。
【0038】
<溶解懸濁法>
溶解懸濁法とは顔料分散体、樹脂成分及び必要に応じて離型剤等を有機溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液又は分散液を水等の貧溶媒中に、トナー粒子の大きさ程度に分散させ、その状態で有機溶媒を留去してトナー粒子を製造する方法である。
溶解懸濁法では樹脂溶解工程、造粒工程、脱溶剤工程、洗浄乾燥工程を経てトナーが製造される。
【0039】
(樹脂溶解工程)
樹脂溶解工程は、例えば、有機溶媒に顔料分散体及び、樹脂としてスチレン-アクリル酸共重合体を加熱溶解させ樹脂組成物を調製する工程である。必要に応じて、その他の樹脂、可塑剤、着色剤及び離形剤などを溶解又は分散させてもよい。なお、分散させる際に、顔料分散剤や離型剤分散剤を添加しても良い。
使用される有機溶媒は顔料分散体中の粘結剤及び樹脂を溶解する有機溶媒であれば任意の溶媒を使用できる。具体的には、トルエン及びキシレンなどが挙げられる。
有機溶媒の使用量には制限がないが、樹脂組成物が水系媒体中に分散し造粒できる粘度となる量であればよい。具体的には、顔料分散体、スチレン-アクリル酸共重合体、必要に応じてその他の樹脂、可塑剤及び着色剤などを含む樹脂組成物と有機溶媒の質量比が10/90~50/50であることが造粒性及びトナーの生産効率の観点から好ましい。
一方、顔料分散体中の顔料及び磨砕剤、必要に応じて添加される着色剤や離型剤は有機溶媒に溶解している必要はなく、分散していてもよい。着色剤や離型剤を分散状態で使用する場合は、ビーズミルなどの分散機を使用して分散させることが好ましい。
【0040】
(造粒工程)
造粒工程は、樹脂溶解工程で得られた樹脂組成物を水系媒体に所定のトナー粒径になるように分散剤を用いて分散させて、分散体(造粒物)を調製する工程である。水系媒体は、主に水が用いられる。また、水系媒体は、1価の金属塩を1質量%以上30質量%以下含有することが好ましい。1価の金属塩を含有していることにより、樹脂組成物中の有機溶媒が水系媒体中へ拡散することが抑制され、トナーの粒度分布が良好になり易い。
1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化カリウムが例示でき、これらのうち、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。
また、水系媒体と樹脂組成物の混合比(質量比)は、水系媒体/樹脂組成物が90/10~50/50が好ましい。
【0041】
分散剤は特に限定されないが、有機系分散剤として、陽イオンタイプ、陰イオンタイプ及びノニオンタイプの界面活性剤が用いられ、陰イオンタイプのものが好ましい。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。一方、無機系分散剤としてリン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、酸化チタン及びシリカ粉末などが挙げられる。
中でも無機系分散剤のリン酸三カルシウムが、造粒性及びその安定性、さらには得られるトナーの特性に対する悪影響が極めて少ないために好ましい。
分散剤の添加量は造粒物の粒径に応じて決定され、分散剤の添加量が増加すれば粒径が小さくなる。そのために、所望の粒径によって分散剤の添加量は異なるが、樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下が好ましい。0.1質量部以上であると粗粉が発生しにくく、15質量%以下であると不必要な微細粒子が発生しにくい。
【0042】
また、水系媒体中で樹脂組成物の分散体を調製する際は、高速剪断下で行われることが好ましい。水系媒体中に分散された樹脂組成物の分散体は、体積平均粒径が10μm以下に造粒されることが好ましく、4~9μm程度に造粒されることがより好ましい。
高速剪断を与える装置としては各種の高速分散機や超音波分散機が挙げられえる。
一方、分散体の体積平均粒径は、コールター法による粒度分布解析装置(商品名:コールターマルチサイザーIII、ベックマン・コールター社製)などで測定ができる。
【0043】
(脱溶剤工程)
脱溶剤工程は、造粒工程で得られた分散体から有機溶媒を除去する工程である。有機溶媒の除去は分散体を撹拌しながら、行うことが好ましい。また、必要に応じて加熱、減圧をすることで有機溶媒の除去速度を制御することもできる。
【0044】
(洗浄乾燥工程)
脱溶剤工程の後に、水等で複数回洗浄し、分散体をろ過及び乾燥する洗浄乾燥工程を実施してもよい。また、分散剤にリン酸三カルシウムなどの酸性条件で溶解する分散剤を使用した場合は、塩酸などで洗浄後に水洗することが好ましい。洗浄を行うことで造粒のために使用した分散剤を除去し、トナー特性を向上させることができる。
洗浄後、ろ過乾燥を行うことでトナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。あるいは、トナー粒子に必要に応じてシリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム等の無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加して、トナーを得てもよい。これらの無機微粒子や樹脂粒子は、帯電助剤、流動性助剤、クリーニング助剤等の外添剤として機能する。
【0045】
<懸濁重合法>
先ず、重合性単量体に、顔料分散体及びその他必要な成分(例えば、離型剤、架橋剤、荷電制御剤、連鎖移動剤、可塑剤、顔料分散剤、離型剤分散剤)を、溶解或いは分散させて重合性単量体組成物を調製する。調製の際には、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いることができる。次いで、重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて懸濁させて造粒を行う。重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で重合開始剤を加えることもできる。その後、懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の液滴粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら重合反応を行うことでトナー粒子が形成される。その後、懸濁液を冷却し、必要に応じて洗浄を行い、種々の方法によって乾燥、分級を行うことでトナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。あるいは、トナー粒子に必要に応じてシリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム等の無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加して、トナーを得てもよい。これらの無機微粒子や樹脂粒子は、帯電助剤、流動性助剤、クリーニング助剤等としての外添剤として機能する。
【0046】
<乳化凝集法>
乳化凝集法とは、目的の粒径に対して、十分に小さい樹脂微粒子分散液を前もって準備し、その樹脂微粒子を水系媒体中で凝集することによりトナー粒子を製造する製造方法である。
乳化凝集法では、樹脂微粒子分散液の調製工程、凝集工程、融合工程、冷却工程、洗浄工程、及び乾燥工程を経てトナーが製造される。以下、乳化凝集法を用いたトナーの製造方法を具体的に記載するが、これに限定されるわけではない。
【0047】
(樹脂微粒子分散液の調製工程)
乳化凝集法においては、始めに樹脂微粒子を準備する。樹脂微粒子は公知の方法で製造できるが、以下の方法で作製することが好ましい。
まず、樹脂を有機溶媒に溶解し、均一な溶解液を形成する。樹脂としては、例えば、ポリエステルが挙げられる。その後、必要に応じて塩基性化合物及び界面活性剤を添加する。さらに、この溶解液に水系媒体を添加し微粒子を形成させる。そして、溶剤を除去し樹脂微粒子が分散された樹脂微粒子分散液を得る。
より具体的には、樹脂を有機溶媒に加熱溶解し、必要に応じて界面活性剤や塩基を加える。続いて、ホモジナイザーなどによりせん断を付与しながら水系媒体をゆっくり添加することで、又は、水系媒体を添加後にホモジナイザーなどによりせん断を付与することで樹脂微粒子を形成させる。その後、加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂微粒子分散液を作製する。
【0048】
有機溶媒に溶解させる際の樹脂の濃度は、10質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上50質量%以下がより好ましい。有機溶媒は、ポリエステルを溶解できるものであればどのようなものでも使用可能であるが、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどの樹脂に対する溶解度の高い溶媒が好ましい。
界面活性剤は、特に限定されるものでは無い。例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系の非イオン系界面活性剤が挙げられる。
塩基は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基やトリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノールなどの有機塩基が挙げられる。塩基は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がより好ましい。メジアン径が上記の範囲内である場合、所望の粒径を有するトナー粒子が得られやすくなる。なお、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布計(商品名:ナノトラックUPA-EX150、日機装製)を使用することで測定可能である。
【0049】
また、顔料分散体の分散液を作製することが好ましい。顔料分散体の分散液としては、樹脂と顔料分散体からなる微粒子分散液を作製してもよいし、顔料分散体単独の微粒子分散液(乳化液)を作製してもよい。樹脂と顔料分散体とを混合して微粒子分散液を作製する場合は、上記樹脂微粒子分散液を調製する際に樹脂を有機溶媒に溶解する際に顔料分散体を添加することで、樹脂と顔料分散体からなる微粒子分散液が得られる。単独で微粒子分散液(乳化液)を作製する場合は、顔料分散体と界面活性剤と水系媒体を混合した後、顔料分散体中の粘結剤が溶融する温度まで昇温し、ホモジナイザーなどによりせん断を付与した後、冷却することで、顔料分散体が水系媒体に分散した顔料分散体の分散液が得られる。
【0050】
(凝集工程)
凝集工程とは、樹脂と顔料分散体からなる微粒子分散液、又は樹脂微粒子分散液と顔料分散体の分散液に、必要に応じて離型剤微粒子分散液などを混合することで、混合液を調製し、混合液中に含まれる粒子を凝集し、凝集体粒子を形成させる工程である。凝集体粒子を形成させる方法としては、例えば凝集剤を混合液中に添加・混合し、温度を上げたり、機械的動力等を適宜加えたりする方法が好適に例示できる。
上記の離型剤微粒子分散液は、上記の離型剤を分散させて調製される。離型剤微粒子は公知の方法で分散されるが、例えば、離型剤と水系媒体を混合し、離型剤が溶融する温度まで昇温し、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を用いてせん断した後、冷却して水系媒体に分散した離型剤分散液が得られる。また、必要に応じて分散安定性を付与する界面活性剤や高分子分散剤を添加することができる。
【0051】
凝集工程で使用する凝集剤としては、例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩;ポリ塩化アルミなどの多価金属塩が挙げられる。凝集工程の粒径制御性の観点から塩化カルシウムや硫酸マグネシウムなどの2価の金属塩が好ましい。
凝集剤の添加・混合は、室温(25℃)~75℃の温度範囲で行うことが好ましい。この温度条件下で混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
凝集工程で形成される凝集体粒子の平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナー粒子の平均粒径と同じ程度になるように体積平均粒径4.0μm以上7.0μm以下に制御するとよい。制御は、例えば、凝集剤等の添加・混合時の温度と攪拌混合の条件を適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。なお、凝集体粒子の粒度分布はコールター法による粒度分布解析装置(商品名:コールターマルチサイザーIII、ベックマン・コールター社製)にて測定できる。
【0052】
(融合工程)
融合工程とは、凝集体粒子を、樹脂のガラス転移温度以上に加熱し融合することで、凝集体粒子表面を平滑化した粒子を製造する工程である。一次融合工程に入る前に、粒子間の融着を防ぐため、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜投入することができる。
キレート剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩等のアルカリ金属塩、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトリロトリアセテート(NTA)塩、COOH及びOHの両方の官能性を含む多くの水溶性ポリマー類(高分子電解質)が挙げられる。
加熱の温度としては、凝集体に含まれる樹脂のガラス転移温度以上で、樹脂が熱分解する温度未満であればよい。加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、加熱・融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分~10時間である。
【0053】
(冷却工程)
冷却工程とは、融合工程で得られた粒子を含む水系媒体の温度を、樹脂のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程である。冷却をガラス転移温度より低い温度まで行うことで、粗大粒子の発生を抑制できる。具体的な冷却速度は0.1~50℃/分である。
【0054】
(洗浄工程)
上記の工程を経て作製した粒子を、洗浄、ろ過、繰り返すことにより粒子中の不純物を除去することができる。具体的にはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩などのキレート剤を含有した水溶液を用いて粒子を洗浄し、さらにイオン交換水で洗浄することが好ましい。イオン交換水での洗浄はろ過を複数回繰り返すことによりトナー粒子中の金属塩や界面活性剤などを除くことができる。ろ過の回数は3~20回が製造効率の点から好ましく、3~10回がより好ましい。
【0055】
(乾燥工程)
上記の工程で得た粒子の乾燥を行い、トナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子は、そのままトナーとして用いてもよい。必要に応じて、外添剤を添加してトナーとしてもよい。外添剤は、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム等の無機粒体や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子などが挙げられる。これらは、例えば乾燥状態で剪断力を印加して添加することができる。これらの無機粒体や樹脂粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等の外添剤として機能する。
【0056】
トナー及び原料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<顔料の表面酸性基量の測定>
顔料(2g)を1/100規定の水酸化カリウム・エタノール溶液中(100ml)に添加する。次に、電位差自動滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業株式会社製)を用いて、上澄み液を1/100規定の塩酸・エタノール溶液を用いて電位差滴定を行い、中和に要した塩酸量と、当初存在した水酸化カリウム量との差分から、顔料の表面酸性基量を求める。
【0057】
<磨砕剤の表面塩基性基量の測定>
磨砕剤(2g)を1/100規定の酢酸水溶液中(100ml)に添加する。次に、電位差自動滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業株式会社製)を用いて、上澄み液を1/100規定の水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて電位差滴定を行い、中和に要した水酸化カリウム量と、当初存在した酢酸量との差分から、磨砕剤の表面塩基性基量を求める。
【0058】
<樹脂Aの表面塩基性基量の測定>
樹脂A(2g)を1/100規定の塩酸・エタノール溶液中(100ml)に添加する。次に、電位差自動滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業株式会社製)を用いて、上澄み液を1/100規定の水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて電位差滴定を行い、中和に要した水酸化カリウム量と、当初存在した塩酸量との差分から、樹脂Aの塩基性基量を求める。
本発明において、前述の逆滴定法により、水酸化カリウムより酸性であるのが顔料の酸性官能基、酢酸より塩基性であるのが磨砕剤の塩基性官能基、塩酸より塩基性であるのが樹脂の塩基性官能基である。
【0059】
<顔料及び磨砕剤の個数平均粒径の測定>
顔料及び磨砕剤の一次粒子の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(商品名:JEM2800、日本電子製)を用いて測定する。
まず、測定サンプルの調製を行う。顔料又は磨砕剤約5mgに対し、分散可能な界面活性剤が添加されたイオン交換水1mlを加え、超音波分散機(超音波洗浄機)で5分間分散させる。次に、TEM用の支持膜付きマイクログリッド(150メッシュ)に上記分散液を1滴たらし、乾燥させることで測定サンプルを準備した。
次に、透過型電子顕微鏡(TEM)により、加速電圧200kVの条件のもと、視野中の顔料又は磨砕剤が十分に測長できる倍率(例えば20k~100k倍)にて画像を取得し、ランダムに100個の顔料又は磨砕剤の一次粒子の粒径を測定して個数平均粒径を求める。一次粒子の粒径の測定は手動、又は計測ツールを用いても良い。
【0060】
顔料解砕工程後の顔料分散体中に含まれる顔料の個数平均粒径を測定する場合は、顔料分散体から顔料を抽出する必要がある。以下に、一例として、顔料の個数平均粒径の測定方法を示す。
顔料分散体中の粘結剤を溶剤で溶解させるため、粘結剤の種類により、溶剤を選択し、スイングロールミキサーなどを用いて粘結剤を溶融させる。例えば、粘結剤が非晶性ポリエステル樹脂であれば、テトラヒドロフランやメチルエチルケトンなどを用いることができる。その後、ろ過、洗浄することで顔料分散体から粘結剤を分離し、顔料と磨砕剤の混合物を抽出する。抽出した顔料と磨砕剤の混合物を上記の方法と同様にして観察し、顔料と磨砕剤を形状から顔料のみを抽出し、手動又は計測ツールで個数平均粒径を測定した。
【0061】
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置(商品名:Q2000、TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30℃以上180℃以下の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度、180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃以上100℃以下の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、DSC曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、樹脂のガラス転移温度(Tg:℃)とする。
【0062】
<トナー粒子の体積平均粒径(D3)の測定方法>
トナー粒子の体積平均粒径(D3)は、50μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0063】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を1μm以上30μm以下に設定する。
【0064】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵した電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)で準備したビーカーを超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)でビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)で準備した丸底ビーカーに、前記(5)で調製したトナーを分散した電解質水溶液をピペットを用いて滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、体積平均粒径(D3)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が体積平均粒径(D3)である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部及び%は特に断りのない限り全て質量基準である。
【0066】
<顔料分散体1の製造>
顔料 35部
(シアン顔料:Pigment Blue 15:3、体積平均粒径102nm、酸性官能基含有量:10μmol/g)
磨砕剤 35部
(軽質炭酸カルシウム、個数平均粒径0.4μm、塩基性官能基含有量:10μmol/g)
樹脂A以外の粘結剤 28部
(樹脂B:ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸がモル比で100:50:50の重合体であるポリエステル、ガラス転移温度(Tg)が70℃)
樹脂A1 2部
(商品名:SOLPLUS L300、日本ルーブリゾール社製、塩基性官能基含有量:10μmol/g)
上記材料をヘンシェルミキサー(商品名:FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(商品名:PCM-30型、株式会社池貝製)にて190℃で混練した。この時、二軸混練機のモーターが過負荷にならないようにしながらフィード量が最大となるように調整した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて体積平均粒径100μm以下に粗解砕し、顔料分散体Aの粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は62nmであった。また、1時間当たりの生産量は30kgであった。
【0067】
<顔料分散体2の製造>
スチレン 75.9部
n-ブチルアクリレート 24.1部
上記材料を温度計、撹拌器、リフラックスコンデンサー及び窒素ガス導入管を具備した四口フラスコに入れ、触媒量のAIBNを入れ、四口フラスコに窒素ガスを通し撹拌しながら徐々に昇温し、70℃で12時間反応し、スチレンアクリル樹脂(樹脂C)を得た。
樹脂Bに代えて樹脂Cを用いた以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体2の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は67nmであった。また、1時間当たりの生産量は29kgであった。
【0068】
<顔料分散体3~12、17の製造>
表1に示す顔料、磨砕剤、樹脂A1、樹脂A以外の粘結剤成分を用い、表1に示す条件で混練して得られた顔料分散体3~12、17中の顔料の個数平均粒径と1時間当たりの生産量を表1に示す。
【0069】
<顔料分散体13の製造>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
100部
イソフタル酸 50部
テレフタル酸 50部
2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を7kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
続いて、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、ヘキサメチレンジイソシアネート(8部)を加え、常圧下にて100℃で3時間反応させた。
その後、tert-ブチルカテコール(0.1部)を加え、反応槽内の圧力を7kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ガラス転移温度(Tg)が76℃のポリエステルである樹脂A2を得た。樹脂A2の塩基性官能基含有量は5μmol/gであった。
樹脂A1に代えて樹脂A2を用いた以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体13の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は77nmであった。また、1時間当たりの生産量は15kgであった。
【0070】
<顔料分散体14の製造>
フュームドシリカ(シリカ原体:球形)100部を90%のメタノール水10部、及びへキサメチレンジシラザン10部をヘキサン10,000部に溶解させた液に徐々に入れて反応させ、溶剤及び副生成物を除去してシリカ粒子Iを得た。溶剤及び副生成物の除去はpH値が11.0になるように除去時間の調整を行った。得られたシリカ粒子Iの一次粒子の個数平均粒径は0.4μm、塩基性官能基含有量は5μmol/gであった。
磨砕剤としてシリカ粒子Iを用いた以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体14の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は79nmであった。また、1時間当たりの生産量は16kgであった。
【0071】
<顔料分散体15の製造>
顔料をロジン処理された顔料(シアン顔料:Pigment Blue 15:3、体積平均粒径102nm、酸性官能基含有量:5μmol/g)とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体15の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は78nmであった。また、1時間当たりの生産量は16kgであった。
【0072】
<顔料分散体16の製造>
樹脂Aを用いない以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体16の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は82nmであった。また、1時間当たりの生産量は7kgであった。
【0073】
<顔料分散体18の製造>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
100部
イソフタル酸 50部
テレフタル酸 50部
2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。さらに、反応槽内の圧力を7kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。その後、tert-ブチルカテコール(0.1部)を加え、反応槽内の圧力を7kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ガラス転移温度(Tg)が71℃のポリエステルである樹脂Dを得た。樹脂Dの塩基性官能基含有量は0μmol/gであった。
樹脂A1に代えて樹脂Dを用いた以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体18の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は84nmであった。また、1時間当たりの生産量は7kgであった。
【0074】
<顔料分散体19の製造>
ジメチルシリコーンオイル(温度25℃における動粘度:50cSt)20部をヘキサン10,000部で希釈した溶液に、フュームドシリカ(シリカ原体:球形)100部を徐々に添加し、温度130℃で反応させた後に溶剤を除去した。その後、ピン式解砕装置を用いて解砕処理したものを、90%のメタノール水10部、及びへキサメチレンジシラザン10部をヘキサン10,000部に溶解させた液に入れて反応させ、溶剤及び副生成物を除去してシリカ粒子IIを得た。得られたシリカ粒子IIの一次粒子の個数平均粒径は0.4μm、塩基性官能基含有量は0μmol/gであった。
磨砕剤としてシリカ粒子IIを用いた以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体19の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は82nmであった。また、1時間当たりの生産量は8kgであった。
【0075】
<顔料分散体20の製造>
顔料をアミン処理された顔料(シアン顔料:Pigment Blue 15:3、体積平均粒径102nm、酸性官能基含有量:3μmol/g)とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体20の粗砕物を得た。得られた顔料分散体中の顔料の個数平均粒径は83nmであった。また、1時間当たりの生産量は9kgであった。
【0076】
【表1】
表1中、PB15:3はPigment Blue 15:3を示す。
【0077】
<トナー1の製造例>
・樹脂B 77.7部
(ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸がモル比で100:50:50の重合体であるポリエステル、ガラス転移温度(Tg)が70℃)
・顔料分散体1 14.3部
・合成ワックスi 8.0部
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
上記材料をヘンシェルミキサー(商品名:FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(商品名:PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて体積平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(商品名:T-250、ターボ工業(株)製)にて目的粒径となるように回転数やパス回数を調整して微粉砕した。さらに回転型分級機(商品名:200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機の運転条件は、目的粒径及び粒度分布が得られるように回転数を調整して分級を行った。得られたトナー粒子100部に、BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子1.8部を添加し、ヘンシェルミキサー(商品名:FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、トナー1を得た。表2にトナー1の体積平均粒径を示す。
【0078】
<トナー2の製造例>
顔料分散体1を60部、溶媒としてトルエン150部、ガラスビーズ(直径1mm)130部を混合し、アトライター(日本コークス工業(株)製)で3時間分散させ、顔料分散体分散液を得た。
次に、水浴にセットしたビーカーにリン酸三ナトリウム12水和物(和光純薬製)を11.7部とイオン交換水1200部を加えて、リン酸三ナトリウム12水和物を溶解した。続いて、水浴の温度を60℃まで上げた。60℃に到達後、5.15部の塩化カルシウム(キシダ化学製)をイオン交換水100部に溶解した水溶液を添加した。添加後30分間撹拌を行い、リン酸三カルシウムを含有する水系媒体を得た。
・非晶性ポリエステルI 75.7部
・顔料分散体分散液 50部
・合成ワックスi 10部
・トルエン 350部
上記材料を混合し、撹拌しながら80℃まで昇温して、各材料を溶解及び分散させて、樹脂組成物を作製した。
一方、上記リン酸三カルシウムを含有する水系媒体600部を、クレアミックス(エム・テクニック社製)で撹拌を行いながら、80℃に加熱した。リン酸三カルシウムを含有する水系媒体に樹脂組成物を添加し、撹拌翼を用いて10000rpmで10分間撹拌を行うことで分散液を得た。得られた分散液を、攪拌を行いながら80℃で5時間継続することでトルエンを除去した。その後、25℃まで10分間で冷却しトナー粒子の水系分散体を得た。
得られたトナー粒子の水系分散液を撹拌しながら、希塩酸を添加した。pH1.5で2時間撹拌し、リン酸三カルシウムを溶解した後に、濾過器で固液分離し、トナー粒子を得た。
これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。この操作をリン酸三カルシウムが十分に除去されるまで繰り返し行い、得られたトナー粒子を乾燥機で十分に乾燥した。得られたトナー粒子100部に、BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子1.8部を添加し、ヘンシェルミキサー(商品名:FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、トナー2を得た。表2に物性を示す。
【0079】
<トナー3の製造例>
・スチレン 47.6部
・n-ブチルアクリレート 15.1部
・顔料分散体2 14.3部
・合成ワックスi 20.0部
・非晶性ポリエステルI 3.0部
上記原料からなる混合物を調製した。混合物をアトライター(日本コークス社製)に投入し、直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原料分散液を得た。
一方、高速撹拌装置としてのホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イオン交換水735.0部とリン酸三ナトリウム(12水和物)16.0部を添加し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、イオン交換水65.0部に塩化カルシウム(2水和物)9.0部を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌した。そこに、10%塩酸を加えてpHを6.0に調整し、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
続いて、原料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(商品名:パーブチルPV、日油社製)8.0部を添加して60℃を保持しながら100rpmで5分間撹拌した後、上記の12000rpmで撹拌している水系媒体中に投入した。60℃を保持しながら高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで10時間重合反応を行った。その後、反応容器から還流冷却管を外し、反応液を95℃に昇温した後、95℃を保持しながら150rpmで5時間撹拌することで、トナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液を150rpmで撹拌しながら20℃まで冷却した後、撹拌を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて分散安定剤を溶解させた。固形分をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100部に、BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子1.8部を添加し、ヘンシェルミキサー(商品名:FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、トナー3を得た。表2に物性を示す。
【0080】
<トナー4の製造例>
・非晶性樹脂微粒子の製造
テトラヒドロフラン(和光純薬製) 200部
非晶性ポリエステルI 120部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 0.6部
上記の原料を混合後、12時間攪拌し、樹脂を溶解した。
次いで、N,N-ジメチルアミノエタノール2.7部を加え、超高速攪拌装置(商品名:T.K.ロボミックス、(株)プライミクス製)を用いて4000rpmで攪拌した。さらに、イオン交換水359.4部を約6時間かけて添加し、樹脂微粒子を析出させた。その後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフランを除去し、非晶性樹脂微粒子の分散液(樹脂濃度25wt%)を得た。
・顔料分散体微粒子の製造
テトラヒドロフラン(和光純薬製) 200部
顔料分散体1 42.9部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 1.5部
上記の原料を混合後、12時間撹拌し、顔料分散体中の粘結剤を溶解した。
次いで、N,N-ジメチルアミノエタノール0.3部とイオン交換水255.6部を加え、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス((株)プライミクス製)を用いて4000rpmで攪拌した。
さらに、高圧衝撃式分散機(商品名:ナノマイザー、吉田機械興業製)を用いて約1時間分散させた。その後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフランを除去し、顔料分散体を水中分散させてなる顔料分散体微粒子の分散液(顔料分散体濃度14.3wt%)を調製した。
・離型剤微粒子の製造
合成ワックスi 20.0部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 1.0部
イオン交換水 79.0部
上記の原料を攪拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック製)へ循環しながらローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断攪拌部位にて、ローター回転数19000rpm、スクリーン回転数19000rpmの条件にて攪拌し、60分間分散処理した。
その後、ローター回転数1000rpm、スクリーン回転数0rpm、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、離型剤微粒子の分散液(離型剤濃度20wt%)
を得た。
【0081】
上記で調製した非晶性樹脂微粒子の分散液、顔料分散体微粒子の分散液、及び離型剤微粒子の分散液を用いてトナーを製造する方法を以下に例示する。
・非晶性樹脂微粒子の分散液 302.8部
・顔料分散体微粒子の分散液 100部
・離型剤微粒子の分散液 50部
・イオン交換水 400部
上記の各分散液を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した後、ここに98部のイオン交換水に対し、硫酸マグネシウム2部を溶解させた水溶液を添加し、ホモジナイザー(商品名:ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて5000rpmで10分間分散した。
その後、加熱用ウォーターバス中でフラスコを加熱しながら撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるように回転数を適宜調節しながら58℃まで加熱した。58℃で1時間保持し、凝集粒子を得た。凝集粒子を含む分散液に、380部のイオン交換水に対し、クエン酸三ナトリウム20部を溶解させた水溶液を追加した後、95℃まで加熱した。95℃で2時間保持した後、撹拌を維持したまま25℃まで冷却することで、トナー粒子分散液を得た。
【0082】
<トナー5~22の製造例>
表2に示す材料、製造方法に変更した以外は、トナー1と同様に製造し、トナー5~22を得た。表2に物性を示す。
【0083】
【0084】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 62.7部
MnCO3 29.5部
Mg(OH)2 6.8部
SrCO3 1.0部
上記のフェライト原料を秤量し、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合し混合物を得た。
・工程2(仮焼成工程):
得られた混合物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)0.257(MgO)0.117(SrO)0,007(Fe2O3)0.393
・工程3(粉砕工程):
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した。その後、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕物)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(大川原化工機製)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0085】
<樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8部
メチルメタクリレートモノマー 0.2部
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4部
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3部
メチルエチルケトン 31.3部
上記の原料を還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、2.0部のアゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂1を得た。
次いで、30部の樹脂1を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0086】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 3.3部
トルエン 66.4部
カーボンブラックRegal330(キャボット製) 0.3部
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)
上記の原料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散した。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過し、被覆樹脂溶液1を得た。
【0087】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、磁性コア粒子1及び被覆樹脂溶液1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して樹脂成分として2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0088】
<二成分系現像剤1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1と8.0部のトナー1をV型混合機(商品名:V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0089】
<二成分系現像剤2~22の製造例>
トナー1をトナー2~22に変更した以外は、二成分系現像剤1の製造例と同様に製造し、二成分系現像剤2~22を得た。
<実施例1>
【0090】
以下に示すように、トナー1の製造に用いた顔料分散体1の評価及び二成分系現像剤1に用いたトナー1の着色力の評価を行った。
【0091】
<顔料粒径の評価方法>
顔料分散体1の顔料粒径を先述の顔料の個数平均粒径の測定方法を用いて測定を行った。
(評価基準)
A:70nm未満
B:70nm以上、80nm未満
C:80nm以上、90nm未満
D:90nm以上、100nm未満
E:100nm以上
本発明では、D以上を顔料が微細化できたとし、Eを顔料が微細化できていないと判断した。
【0092】
<顔料分散体の生産性の評価方法>
顔料分散体1の製造時に、混練装置のモーターが過負荷にならないようフィード量が最大となるように製造した際の1時間当たりの生産量から評価を行った。
(評価基準)
A:25kg/h以上
B:20kg/h以上、25kg/h未満
C:15kg/h以上、20kg/h未満
D:10kg/h以上、15kg/h未満
E:10kg/h未満
本発明では、D以上を生産性が問題ないレベルとし、Eを許容できないと判断した。
【0093】
<トナーの着色力の評価方法>
画像形成装置として、フルカラー複写機(商品名:imageRUNNER(商標)ADVANCE C5255、キヤノン製)の改造機を用い、シアンステーションの現像器に二成分系現像剤1を投入して、評価を行った。
評価環境は、常温常湿環境下(23℃、50%RH)とし、評価紙は、コピー用普通紙(商品名:GFC-081、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売、A4、坪量81.4g/m2)を用いた。まず、上記の評価環境において、紙上のトナー乗り量を変化させて、画像濃度と、紙上のトナー載り量との関係を調べた。次いで、FFH画像(ベタ部)の画像濃度が1.40になるように調整し、画像濃度が1.40になる際の、トナー載り量を求めた。FFH画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hを1階調目(白地部)、FFHを256階調目(ベタ部)とする。画像濃度は、X-Riteカラー反射濃度計(商品名:500シリーズ、X-Rite社製)を使用して測定した。トナー載り量(mg/cm2)から、下記の基準でトナーの着色力を評価した。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
A:0.35未満
B:0.35以上、0.45未満
C:0.45以上、0.55未満
D:0.55以上、0.65未満
E:0.65以上
本発明では、D以上を問題ないレベルとし、Eを許容できないと判断した。
【0094】
<実施例2乃至17、及び比較例1乃至5>
使用した二成分系現像剤を表3に示すように変えた以外は、実施例1と同様に二成分系現像剤に用いたトナーの着色力の評価及びトナーの製造に用いた顔料分散体評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0095】