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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】空間浮遊映像表示装置および光源装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20241113BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241113BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20241113BHJP
   H04N 13/388 20180101ALI20241113BHJP
【FI】
G02B30/56
B60R11/02 C
B60K35/23
H04N13/388
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020217259
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102491
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0024373(US,A1)
【文献】特開2020-134843(JP,A)
【文献】特開2019-109407(JP,A)
【文献】特開2019-101055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
B60R 11/02
B60K 35/23
H04N 13/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
前記空間浮遊映像を形成する特定偏波の映像光が通過する開口部と、
前記開口部に配置され前記映像光が通過する透明部材と、
映像源としての表示パネルと、
前記映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射光学部材と、
1枚以上の反射ミラーと、
前記映像源と前記再帰反射光学部材とを結んだ空間内に設けられた偏光分離部材と、
を備え、
前記映像源からの特定偏波の映像光について前記偏光分離部材一旦透過させ、
前記偏光分離部材を透過した映像光を前記反射ミラーとして第一の反射ミラーで前記再帰反射光学部材に向けて反射させ、
前記第一の反射ミラーで反射した映像光を前記再帰反射光学部材の前記再帰反射面に設けられた前記位相差板で偏光変換することで前記映像光の一方の偏波を他方の偏波に変換し、
前記変換後の映像光を前記第一の反射ミラーで再度反射させ、
前記第一の反射ミラーで再度反射した映像光を前記偏光分離部材で前記開口部に向けて反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光に基づいて前記開口部の前記透明部材の外側に実像である前記空間浮遊映像を表示し、
前記映像源から前記再帰反射光学部材までの距離を変更する構造によって、前記空間浮遊映像が形成される位置を変更する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記空間浮遊映像と前記偏光分離部材とを結ぶ光路内に、前記反射ミラーとして少なくとも1枚の反射ミラーを有し、
前記少なくとも1枚の反射ミラーを前記光路内で回転させることで、前記空間浮遊映像が形成される位置を変更する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記空間浮遊映像と前記偏光分離部材とを結ぶ光路内に、前記反射ミラーとして少なくとも1枚の反射ミラーを有し、
前記少なくとも1枚の反射ミラーのうち前記空間浮遊映像に最も近接配置された反射ミラーは、前記映像光の特定の偏波を反射し他方の偏波を透過する金属多層膜から形成されている、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記偏光分離部材は、反射型偏光板、あるいは特定偏波を反射させる金属多層膜から形成されている、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記透明部材の少なくとも一面に、吸収型偏光板を有する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記透明部材は、前記映像光が通過する部分が透明体で形成され、前記映像光が通過しない部分が遮光部材で形成されている、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記表示パネルの映像表示面に反射防止膜を有し、
前記表示パネルに設けた吸収型偏光板を有し、
前記吸収型偏光板により前記偏光分離部材から前記表示パネルへ戻る反射光を吸収させる、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項8】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
前記空間浮遊映像を形成する特定偏波の映像光が通過する開口部と、
前記開口部に配置され前記映像光が通過する透明部材と、
映像源としての表示パネルと、
前記映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射光学部材と、
複数枚の反射ミラーと、
前記映像源と前記再帰反射光学部材とを結んだ空間内に設けられた偏光分離部材と、を備え、
前記映像源からの特定偏波の映像光について前記偏光分離部材一旦透過させ、
前記偏光分離部材で透過した映像光を前記反射ミラーのうち第一の反射ミラーで前記再帰反射光学部材に向けて反射させ、
前記第一の反射ミラーで反射した映像光を前記再帰反射光学部材の前記再帰反射面に設けられた前記位相差板で偏光変換することで一方の偏波を他方の偏波に変換し、
前記変換後の映像光を前記第一の反射ミラーで再度反射させ、
前記第一の反射ミラーで再度反射した映像光を前記偏光分離部材で前記開口部へ向けて反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光に基づいて、前記開口部の前記透明部材の外側に実像である前記空間浮遊映像を表示し、
前記映像源から前記再帰反射光学部材までの距離を変更する構造によって、前記空間浮遊映像が形成される位置を変更し、
前記再帰反射光学部材の反射面の面粗さは、前記空間浮遊映像のボケ量と前記映像源の画素サイズとの比率が40%以下となるように設定され、
前記光源装置は、点状または面状の光源と、前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、前記光源からの光を特定方向の偏光に揃える偏光変換手段と、前記映像源に伝搬する反射面を有する導光体と、を有し、
前記映像光を前記光源装置に設けられた反射面の形状と面粗さによって調整し、
前記映像源からの挟角な発散角を有する映像光束を前記再帰反射光学部材で反射させ、
空中に前記空間浮遊映像を形成する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項9】
請求項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記再帰反射光学部材の反射面の面粗さは、160nm以下となるように設定されており、
前記光源装置は、点状または面状の光源と、前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、前記光源からの光を特定方向の偏光に揃える偏光変換手段と、前記映像源に伝搬する反射面を有する導光体と、を有し、
前記導光体は、前記映像源と対向して配置され、内部または表面には前記光源装置からの光を前記映像源に向けて反射させる反射面が設けられ、前記反射面によって前記映像源に光を伝搬し、
前記映像源は、映像信号に合わせて光強度を変調し、
前記映像源からの挟角な発散角を有する映像光束を前記再帰反射光学部材で反射させ、
空中に前記空間浮遊映像を形成する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項10】
請求項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光線発散角が±30度以内となるように、光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置の前記反射面の形状と面粗さによって調整する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項11】
請求項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光線発散角が±15度以内となるように、光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置の前記反射面の形状と面粗さによって調整する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項12】
請求項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光線発散角が、水平発散角と垂直発散角とで異なるように、光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置の前記反射面の形状と面粗さによって調整する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項13】
請求項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記映像源の光入射面と光出射面とに設けられた偏光板の特性により得られるコントラストに、前記偏光変換手段における偏光変換の効率の逆数を乗じたコントラスト性能を有する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項14】
請求項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
反射型偏光板と、
前記再帰反射光学部材の映像光入射面に設けられた前記位相差板と、を備え、
前記反射型偏光板は、前記映像源からの映像光が一旦前記反射型偏光板で反射されて前記再帰反射光学部材に入射するように配置されており、
前記映像光が前記位相差板を2度通過することで前記映像光の偏波が他方の偏波に変換され、変換後の映像光が前記反射型偏光板を通過する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記映像源の光入射面と光出射面とに設けられた2枚の偏光板の特性により得られるコントラストに、前記偏光変換手段における偏光変換の効率の逆数と前記反射型偏光板のクロス透過率の逆数とを乗じたコントラスト性能を有する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項16】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
前記空間浮遊映像を形成する特定偏波の映像光が通過する開口部と、
前記開口部に配置され前記映像光が通過する透明部材と、
映像源としての表示パネルと、
前記映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射光学部材と、
複数枚の反射ミラーと、
前記映像源と前記再帰反射光学部材とを結んだ空間内に設けられた偏光分離部材と、を備え、
前記映像源からの特定偏波の映像光について前記偏光分離部材一旦透過させ、
前記偏光分離部材で透過した映像光を前記反射ミラーのうち第一の反射ミラーで前記再帰反射光学部材に向けて反射させ、
前記第一の反射ミラーで反射した映像光を前記再帰反射光学部材の前記再帰反射面に設けられた前記位相差板で偏光変換することで一方の偏波を他方の偏波に変換し、
前記変換後の映像光を前記第一の反射ミラーで再度反射させ、
前記第一の反射ミラーで再度反射した映像光を前記偏光分離部材で前記開口部へ向けて反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光に基づいて、前記開口部の前記透明部材の外側に実像である前記空間浮遊映像を表示し、
前記映像源からの特定角度を超える発散角を有した映像光が前記再帰反射光学部材に入射することを遮る遮光部材を備え、
前記映像源から前記再帰反射光学部材までの距離を変更する構造によって、前記空間浮遊映像が形成される位置を変更し、
前記再帰反射光学部材の反射面の面粗さは、前記空間浮遊映像のボケ量と前記映像源の画素サイズとの比率が40%以下となるように設定されており、
前記光源装置は、点状または面状の光源と、前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、前記光源からの光を特定方向の偏光に揃える偏光変換手段と、前記映像源に伝搬する反射面を有する導光体と、を有し、
反射型偏光板を備え、
前記導光体は、前記映像源と対向して配置され、内部または表面には前記光源からの光を前記映像源に向けて反射させる反射面が設けられ、前記反射型偏光板で反射した特定の偏光方向の光を、前記導光体の隣り合う前記反射面を繋ぐ面を透過して、前記導光体の前記映像源と接する面とは反対面に設けた反射板で反射させ、前記反射板の上面に配置された位相差板を2度通過させて偏光変換することで前記反射型偏光板を通過する偏波に変換し、変換後の光を、前記導光体を通過させることで前記映像源に伝搬し、
前記映像源は、映像信号に合わせて光強度を変調し、
前記光源装置は、前記光源から前記映像源に入射する光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置に設けられた前記反射面の形状と面粗さによって調整し、
前記映像源からの挟角な発散角を有する映像光束を前記再帰反射光学部材で反射させ、空中に前記空間浮遊映像を形成する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項17】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
前記空間浮遊映像を形成する特定偏波の映像光が通過する開口部と、
前記開口部に配置され前記映像光が通過する透明部材と、
映像源としての表示パネルと、
前記映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射光学部材と、
複数枚の反射ミラーと、
前記映像源と前記再帰反射光学部材とを結んだ空間内に設けられた偏光分離部材と、を備え、
前記映像源からの特定偏波の映像光について前記偏光分離部材一旦透過させ、
前記偏光分離部材で透過した映像光を、前記反射ミラーのうち第一の反射ミラーで前記再帰反射光学部材に向けて反射させ、
前記第一の反射ミラーで反射した映像光を前記再帰反射光学部材の前記再帰反射面に設けられた前記位相差板で偏光変換することで一方の偏波を他方の偏波に変換し、
前記変換後の映像光を前記第一の反射ミラーで再度反射させ、
前記第一の反射ミラーで再度反射した映像光を前記偏光分離部材で前記開口部に向けて反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光に基づいて、前記開口部の前記透明部材の外側に実像である前記空間浮遊映像を表示し、
前記映像源と前記再帰反射光学部材とを結んだ空間内に、前記映像源からの特定角度を超える発散角を有した映像光が前記再帰反射光学部材に入射することを遮る遮光部材を備え、
前記再帰反射光学部材の反射面の面粗さは、前記空間浮遊映像のボケ量と前記映像源の画素サイズとの比率が40%以下となるように設定されており、
前記光源装置は、点状または面状の光源と、前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、前記光源からの光を反射し前記映像源に伝搬する反射面を有する導光体と、前記導光体の他方の面に対向して前記導光体から順に配置される位相差板および反射面と、を有し、
前記導光体の前記反射面は、前記光源からの光を反射させて前記導光体に対向して配置された前記映像源に伝搬するように配置されており、
前記導光体の前記反射面と前記映像源との間に配置された反射型偏光板を備え、
前記反射型偏光板で反射した特定の偏光方向の光を前記導光体の他方の面に対向して近接配置された反射面で反射させ、反射された光を前記導光体と前記反射面との間に配置された前記位相差板を2度通過させることで偏光変換し、変換後の光を、前記反射型偏光板を通過させて前記映像源に特定の偏光方向の光を伝搬し、
前記映像源は、映像信号に合わせて光強度を変調し、
前記光源装置は、前記光源から前記映像源に入射する光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置に設けられた前記反射面の形状と面粗さとによって調整し、
前記映像源からの挟角な発散角を有する映像光束を前記再帰反射光学部材で反射させ、
空中に前記空間浮遊映像を形成する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項18】
請求項16に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光線発散角が±30度以内となるように、光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置に設けられた前記反射面の形状と面粗さとによって調整する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項19】
請求項16に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光線発散角が±10度以内となるように、光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置に設けられた前記反射面の形状と面粗さとによって調整する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項20】
請求項16に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光線発散角が水平発散角と垂直発散角とで異なるように、光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置に設けられた前記反射面の形状と面粗さによって調整する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項21】
請求項16に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光入射面と光出射面とに設けた2枚の偏光板の特性により得られるコントラストに、前記反射型偏光板のクロス透過率の逆数を乗じたコントラスト性能を有する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項22】
請求項16に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記反射型偏光板は、前記映像源からの映像光が前記反射型偏光板で一旦反射して前記再帰反射光学部材に入射するように配置されており、
前記再帰反射光学部材の映像光入射面には前記位相差板を有し、
前記位相差板を2度通過させて前記映像光の偏波を他方の偏波に変換することで前記反射型偏光板を通過させる、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項23】
請求項20に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、前記表示パネルの光入射面と光出射面とに設けられた2枚の偏光板の特性により得られるコントラストに、前記反射型偏光板のクロス透過率の逆数を乗じたコントラスト性能を有する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項24】
請求項1621のいずれか一項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、1つの映像表示素子に対して、前記光源として複数の光源を備える、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項25】
請求項1622のいずれか一項に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記光源装置は、1つの映像表示素子に対して、前記光源として光の出射方向が異なる複数の面発光光源を備える、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項26】
請求項2123のいずれか一項に記載の空間浮遊映像表示装置に用いられる光源装置であって、
発散角が±30度以内である、
光源装置。
【請求項27】
請求項24に記載の空間浮遊映像表示装置に用いられる光源装置であって、
発散角が±10度以内である、
光源装置。
【請求項28】
請求項25に記載の空間浮遊映像表示装置に用いられる光源装置であって、
水平拡散角と垂直拡散角とが異なる、
光源装置。
【請求項29】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
前記空間浮遊映像を形成する特定偏波の映像光が通過する開口部と、
前記開口部に配置され前記映像光が通過する透明部材と、
映像源としての表示パネルと、
前記映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射光学部材と、
反射ミラーと、
前記映像源と前記再帰反射光学部材とを結んだ空間内に設けられた偏光分離部材と、を備え、
前記映像源からの特定偏波の映像光について前記偏光分離部材一旦透過させ、
前記偏光分離部材で透過された映像光を前記反射ミラーで前記再帰反射光学部材に向けて反射させ、
前記反射ミラーで反射した映像光を前記再帰反射光学部材の前記再帰反射面に設けられた前記位相差板で偏光変換することで一方の偏波を他方の偏波に変換し、
前記変換後の映像光を前記偏光分離部材で反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光を前記反射ミラーで前記開口部へ向けて反射させ、
前記反射ミラーで反射した映像光に基づいて、前記開口部の前記透明部材の外側に実像である前記空間浮遊映像を表示し、
前記光源装置は、点状または面状の光源と、前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、前記光源からの光を特定方向の偏光に揃える偏光変換手段と、前記映像源に伝搬する反射面を有する導光体と、を有し、
前記再帰反射光学部材の反射面の面粗さは、前記空間浮遊映像のボケ量と前記映像源の画素サイズとの比率が40%以下となるように設定されており、
前記導光体は、前記映像源と対向して配置され、内部または表面には前記光源からの光を前記映像源に向けて反射させる反射面を有し、前記反射面によって前記映像源に光を伝搬し、
前記映像源は、映像信号に合わせて光強度を変調し、
前記光源から前記映像源に入射する光束の発散角の一部または全部を、前記光源装置に設けられた前記反射面の形状と面粗さによって調整し、
前記映像源からの挟角な発散角を有する映像光束を前記再帰反射光学部材で反射させ、空中に前記空間浮遊映像を形成し、
前記再帰反射光学部材の形状は、前記映像源に対して曲率半径が200mm以上の凹面または凸面形状である、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項30】
請求項17に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記再帰反射光学部材の形状は、前記映像源に対して曲率半径が200mm以下の凹面または凸面形状である、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項31】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
映像源としての表示パネルと、
前記映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
表面に偏光分離部材を設けた透過性プレートと、
位相差板を設けた再帰反射光学部材から成る光学システムと、
反射ミラーと、
それらの構成部材を収納する筐体と、
前記透過性プレートを保持し前記筐体に連結する外枠と、を備え、
前記映像源からの特定偏波の映像光を前記偏光分離部材で反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光を前記再帰反射光学部材で再帰反射させて前記再帰反射光学部材に設けられた前記位相差板により偏光変換し、
前記変換後の映像光を前記偏光分離部材で反射させ、
前記偏光分離部材で反射した映像光を前記反射ミラーで反射させ、
前記反射ミラーで反射した映像光を、前記透過性プレートを透過させ、
前記透過性プレートを透過した映像光に基づいて、前記空間浮遊映像を形成し、
前記空間浮遊映像の観視者が前記空間浮遊映像を観視する場合に、前記空間浮遊映像の一部または全部が前記外枠の一部または全部に掛かるように、前記光学システムが前記筐体内に配置されている、
空間浮遊映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電車や航空機等(「乗り物」とも言う)の運転者に空間浮遊映像を表示する空間浮遊映像表示装置の技術に関し、その空間浮遊映像の画像を運転者に実像として観察できるようにした光学系を用いた空間浮遊映像表示装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物のフロントガラスやコンバイナに映像光を投写して虚像を形成し、例えば自動車のルート情報や渋滞情報などの交通情報や、燃料残量や冷却水温度等の自動車情報を表示する映像表示装置として、所謂、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up-Display)装置が知られている。特開2015-194707号公報(特許文献1)には、HUD装置の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-194707号公報
【文献】特許第4788882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の映像表示装置においては、運転者が虚像を観視できる領域を拡大することが望まれる一方、虚像が高解像度で視認性が高いことも重要な性能要因である。また、HUDは、運転者の視点移動を少なくするために虚像の成立する位置を運転者視点からより遠方とし、運転者が視認している実景に虚像を重ねる拡張現実(AR)表示ができるものがある。このようなHUDは、虚像の発生位置を遠方にし、かつ高倍率化の実現のためには、装置やシステムのセットが大型化する課題がある。
【0005】
さらに、上述したHUD装置は、液晶ディスプレイ等の映像表示装置に表示された映像を、凹面ミラー(凸レンズの作用を持つ)を含む光学系を用いて、運転者に拡大像として虚像を提供する。図2に示すように、自動車のフロントガラス6は、本体垂直方向の曲率半径Rvと水平方向の曲率半径Rhとが異なり、一般には、Rh>Rvの関係にある。このため、図22に示す従来のHUDにおいては、反射面としてフロントガラス6を捉えると、その反射面は凹面ミラー401のトロイダル面となる。このため、従来のHUDでは、凹面ミラー401の形状は、フロントガラス6の形状による虚像倍率を補正するように設計される。すなわち、凹面ミラー401の形状は、フロントガラス6の垂直方向の曲率半径Rhと水平方向の曲率半径Rvとの違いを補正するように、水平方向と垂直方向で異なる平均曲率半径とされる。
【0006】
以上述べたように、最終反射面としてフロントガラスを用いるために、デザイン性を重視する自動車などの乗り物では、以下の課題がある。すなわち、(1)量産直前までデザイン変更が発生し、設計仕様が決まりにくい。(2)それぞれの自動車のデザインが異なるため、同一仕様のHUD装置を他の車種に展開することが難しい。この展開の難しさから、HUDの市場拡大の足かせになっていた。また、フロントガラスを通じて、HUD装置内に対し、特定の角度で入射した太陽光などの外光が、凹面ミラー401で集光し、液晶表示パネル404に入射する場合がある。その場合、液晶表示パネル404の出射側偏光板にダメージが生じないように、凹面ミラー401の反射特性の最適化や、特定偏波を反射する光学素子403を設ける等の対策が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を考慮して、好適な空間浮遊映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。一実施の形態の空間浮遊映像表示装置は、映像源(映像表示装置)としての液晶表示パネルと、映像源に特定の偏光方向の光を供給する光源装置とを備える。光源装置は、点状または面状の光源と、光源からの光の発散角を低減する光学手段と、映像源に伝搬する反射面を有する導光体と、を備える。導光体は、映像源と対向して配置され、内部または表面には光源からの光を映像源に向けて反射させる反射面を有し、映像源に光を伝搬する。映像源は、映像信号に合わせて光強度を変調する。光源装置は、光源から映像源に入射する光束の発散角の一部または全部を、光源装置に設けられた反射面の形状と面粗さによって制御する。空間浮遊映像表示装置は、映像源からの挟角な発散角を有する映像光束を再帰反射光学部材で反射させ、空中に空間浮遊映像を形成する。空間浮遊映像表示装置は、空間浮遊映像のコントラスト性能を改善するために光源からの光を特定方向の偏光に揃える偏光変換手段を設けてもよい。
【0009】
更に、空間浮遊映像のゴースト像発生を低減するために、上述したように、映像源からの映像光は、挟角な発散特性を持つとともに、映像源と再帰反射光学部材との間に不要な光を遮光する遮光部材を備え、外光が再帰反射光学部材に入射しないように光学系の配置を考慮することで、ゴーストの発生を軽減する。空間浮遊映像のボケ量を軽減するために、再帰反射光学部材の反射面の表面粗さを単位長さ当たり所定の数値以下に低減することで、空間浮遊映像のボケ量を軽減して視認性を向上する。また、空間浮遊映像表示装置は、映像源と再帰反射光学部材との距離を変更できる機構を設けることで、空間浮遊映像の表示の位置を変更できるようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によれば、好適な空間浮遊映像表示装置を提供することができる。上記以外の課題、構成および効果等については[発明を実施するための形態]において示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の使用形態の一例を示す図である。
図2】空間浮遊映像装置を搭載した自動車の上面図、およびフロントガラスの曲率半径の違いを説明する説明図である。
図3】空間浮遊映像表示装置を自動車に設置した場合の主要部構成の第1の実施例を示す図である。
図4】空間浮遊映像表示装置を自動車に設置した場合の主要部構成の第2の実施例を示す図である。
図5】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の原理を説明するための主要部構成と再帰反射光学部構成の一例を示す図である。
図6】空間浮遊映像表示装置の課題を示す図である。
図7】再帰反射光学部材の表面粗さと再帰反射像のボケ量の関係を表す特性図である。
図8】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施例を示す図である。
図9】一実施例に係る表示装置の構成を示す構成図である。
図10】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図11】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図12】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図13】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図14】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図15】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図16】表示装置の拡散特性を説明するための説明図である。
図17】表示装置の拡散特性を説明するための説明図である。
図18】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図19】一実施例に係る光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図20】偏光成分の違いによる光線入射角度に対するガラスの反射特性を示す特性図である。
図21】太陽光の分光放射照度を示す特性図である。
図22】従来(比較例)のHUDを自動車に設置した場合の主要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<従来の空間浮遊映像表示装置>
従来の空間浮遊映像表示装置では、高解像度なカラー表示映像源としての有機ELパネルや液晶表示パネルを、再帰反射光学部材と組み合わせる。この空間浮遊映像表示装置では、図6に示すように映像光源である液晶パネルから出射される映像光の拡散特性が広角で再帰反射光学部材が6面体であるために、正規な映像光6001によって生じる反射光6002の他に、再帰反射光学部材2aに斜めから入射する映像光6003によって発生する反射光6004が原因でゴースト像が発生し、空間浮遊映像の画質を損ねていた。従来技術例として示した再帰反射光学部材は6面体であるために、正規な空間浮遊映像R1の他に、第1ゴースト像G1から第6ゴースト像G6(図示せず)まで複数のゴースト像が発生する。このため、観視者以外にも同一の空間浮遊映像であるゴースト像が観視され、空間浮遊映像の見かけ上の解像度が大幅に低下するなどの大きな課題があった。なおここでは、図6に示す6面体による反射によって再帰反射を実現する構造の例を示した。これに限らず、再帰反射を起こす少なくとも2回以上の反射により再帰反射像を得る光学部材において、同様の理由でゴースト像が発生する課題がある。以上反射面が突起形状の6面体について説明したが周囲に対して凹面形状の反射面による6面体としても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0013】
また、後述する狭角な指向特性を有する表示装置からの映像光を再帰反射光学部材によって反射させ、それにより空間浮遊映像を得る構成がある。発明者の実験によれば、それにより得られた空間浮遊映像は、上述したゴースト像の他に、図7に示したように、液晶表示パネルの画素ごとにボケが視認された。
【0014】
<空間浮遊映像表示装置の概要>
図1は、本発明の空間浮遊映像表示装置を車載用途に用いる場合の優位性を説明するための概略構成図である。ここでは、その一例として、特に、自動車のフロントガラス6を使用しないで空間浮遊映像を得る空間浮遊映像表示装置1000について説明する。空間浮遊映像表示装置1000は、運転者の視線に対応するアイポイント8(後に詳述する)において自車両の内部空間に空間浮遊映像220を得る。これにより、自車両の前方に疑似的に虚像V1を形成したことと同様の視覚効果が得られる。発明者は実験によりそのことを確認した。以下詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、アイポイント8から空間浮遊映像220を観視した場合には、従来のHUDで被投影部材6(本実施例ではフロントガラスの内面。車両内の運転者に向いた面。)にて反射された虚像V1を見ている場合と同様に、運転者が視認している実景に空間浮遊映像220(対応する虚像V1)を重ねることができる。空間浮遊映像220として表示する情報としては、例えば、車両情報や、監視カメラやアラウンドビュアーなどのカメラ(図示せず)で撮影した前景情報や、始動前の車両周辺の景観や、速度計、エンジンの回転計、エネルギー残量表示などの情報が挙げられる。
【0016】
また、本実施例では、空間浮遊映像表示装置1000は、情報に対応する映像を表示して対応する映像光を投射する映像表示装置4と、映像表示装置4に表示された映像を反射させ空間浮遊映像220を形成する再帰反射光学部材2100(言い換えると再帰反射光学素子)とを備える。再帰反射光学部材2100は、空間的に移動可能な構造として(図中では上下移動可能として表示)、上下に移動させることで、空間浮遊映像220が形成される位置を移動(図中では上下移動)させることができる。この結果、運転者がアイボックス(アイポイント8が含まれる所定の空間をいう)から観視する空間浮遊映像220が形成される位置を、上下に移動することで、伏角θeが変化する。これにより、従来のHUDにおいて虚像の表示位置を変化させることと同等の効果が得られる。また、運転者の視線(アイポイント8)の移動を例えば車両内のモニターカメラ(図示せず)で検出することで、この視線の動きに合わせて、この空間浮遊映像220の表示位置を上下左右に移動させることもできる。
【0017】
本実施例では、空間浮遊映像220が形成される位置を、車両のダッシュボードの上面(図示せず)よりも高い位置とする。そのため、本実施例では、映像表示装置4と再帰反射光学部材2100との光路上に設けた反射ミラー(言い換えると折り返しミラー)2110によって、映像表示装置4からの映像光を一旦折り返すことで、映像表示装置4から再帰反射光学部材2100までの光学距離を長くした構成である。この構成で、再帰反射光学部材2100で反射後に得られる空間浮遊映像220の位置を、運転者からみて遠方の位置の虚像に対応付けられた、図中では上下方向でより高い位置にすることができる。
【0018】
<空間浮遊映像表示装置の例1>
以下、図3を用いて、本願発明の車載用途の空間浮遊映像表示装置の第一の例について説明する。なお、この実施例では空間浮遊映像表示装置1000がダッシュボード48に内蔵されている。空間浮遊映像表示装置1000は、映像表示装置4、再帰反射光学部材2100等を備える。映像表示装置4としては、光源装置10から供給された光を映像信号に合わせて変調し特定の偏波の光として出射する液晶表示パネルを用いる。この液晶表示パネルで変調された特定の偏波(ここではS偏波)の映像は、S偏波の光を透過しP偏光の光を反射させるビームスプリッタまたは反射型偏光板2140を透過して、反射ミラー2110に入射し、空間浮遊映像表示装置1000の底面に配置された再帰反射光学部材2100により反射されて、空間浮遊映像220を形成する。再帰反射光学部材2100の映像光入射面には、λ/4板15が設けられている。S偏波の映像光は、再帰反射光学部材2100に入射して反射することで、λ/4板215を2度通過し、これによりP偏光に変換される。そのP偏光の映像光は、反射ミラー2110で光路を折り返し、ビームスプリッタまたは反射型偏光板2140で反射され、空間浮遊映像表示装置1000の上部に設けられた反射ミラー2120で反射される。その映像光は、ダッシュボード48に設けられた開口部41から出射し、図示する位置(車両内でフロントガラス6よりも前の位置)に空間浮遊映像220を得ることができる。この時得られる空間浮遊映像の結像位置は、反射ミラー2120と視点を結ぶ線分上に形成され、ミラー上端部より上部に結像することで従来技術のAR-HUDと同様に運転者が運転中に監視する実景に実像として映像を重ねることができる。この時、従来のHUDとは異なりウィンドガラスを光学系として使用しないため自動車のデザインによりウィンドガラスの曲率半径や傾きが変化しても影響を受けることがなく異なる車種への展開性が優れた空間浮遊映像表示装置となる。
【0019】
反射ミラー2120は、金属反射膜をコートまたはステッパで成膜した反射膜や、特定の偏波を選択的に反射するビームスプリッタ、または反射型偏光板を用いることができる。これにより以下の作用を有する。フロントガラス6から入射する太陽光等の外光の成分は、入射角度が大きい場合には、図20に示すように、S偏波の光の反射率が高い。そのため、車内にはP偏光成分が入射する。反射ミラー2120は、このP偏光成分を選択的に反射する。そのため、反射ミラー2120の後段(図中での下側)の光学部品(空間浮遊映像表示装置1000の筐体内にある各部品、映像表示装置4(液晶表示パネル),ビームスプリッタまたは反射型偏光板2140,再帰反射光学部材2100等)に外光が入射することが無い。これにより、その光学部品や映像表示装置4(液晶表示パネル)および液晶表示パネルの映像光出射側に配置された偏光板(図示せず)等の信頼性を損なうことが無い。
【0020】
さらに、反射ミラー2120は、図21に示す太陽光の分光放射エネルギーのうち、温度上昇に寄与する800nm以上の波長の光と紫外線を反射する特性であれば、さらに良い。また、この実施例でも、図1で示した例と同様に、再帰反射光学部材2100を図面中の上下方向に移動可能な構造とすることで、空間浮遊映像220が形成される位置を上下に移動することができる。この結果、運転者のアイポイント8から見える空間浮遊映像220の俯角が変化し、運転者が視認している実景に対して疑似的にその空間浮遊映像220の映像表示距離と大きさを変化させることができる。更に、この実施例でも、運転者の視線を感知するためのカメラ(図示せず)を設け、運転者の視線を追尾することで、視線位置に合わせて空間浮遊映像220の表示位置を連動させてもよい。また、この時に空間浮遊映像220として表示する映像は、運転者が見ている実景にマッチしたアラート情報などとすることで、運転中の注意喚起を実現すると良い。また、図3に示す例において、装置の光路上の最終の位置に配置された反射ミラー2120を除いた構成とした場合、映像光の一部または全部がフロントガラス6を通過して、フロントガラス6内面に、または、車外のフロントガラス6上方の位置に、空間浮遊映像60を表示することが可能となる。
【0021】
<空間浮遊映像表示装置の例2>
以下、図4を用いて、本願発明の車載用途の空間浮遊映像表示装置の第二の例について説明する。第一の例と同様に、第二の例での映像表示装置4としては、光源装置10から供給された光を映像信号に合わせて変調し特定の偏波の光として出射する液晶表示パネルを用いる。液晶表示パネルで変調された特定の偏波(ここではS偏波)の映像は、S偏波の光を透過しP偏光の光を反射させるビームスプリッタまたは反射型偏光板2140を透過して、再帰反射光学部材2100により反射され、空間浮遊映像220を形成する。再帰反射光学部材2100の映像光入射面には、λ/4板215が設けられている。S偏波の映像光は、再帰反射光学部材2100に入射して反射されることで、λ/4板を2度通過し、P偏光に変換される。P偏光の映像光は、ビームスプリッタまたは反射型偏光板2140で反射され、上部に設けられた反射ミラー2120で反射され、ダッシュボード48に設けられた開口部41から出射する。これにより、所定の位置に空間浮遊映像220を得ることができる。この時得られる空間浮遊映像の結像位置は、反射ミラー2120と視点を結ぶ線分上に形成され、ミラー上端部より上部に結像することで従来技術のHUDと同様に運転者が運転中に監視する実景の一部に実像として映像を重ねることができる。この時、従来のHUDとは異なりウィンドガラスを光学系として使用しないため自動車のデザインによりウィンドガラスの曲率半径や傾きが変化しても影響を受けることがなく異なる車種への展開性が優れた空間浮遊映像表示装置となる。
【0022】
反射ミラー2120は、第一の例と同様のものを用いることができる。これにより、反射ミラー2120は、前述(図20)のように車内に入射するP偏光成分を選択的に反射する。そのため、反射ミラー2120の後段の光学部品には外光が入射せず、光学部品や液晶表示パネル4等の信頼性を損なうことが無い。さらに、反射ミラー2120の特性は、第一の例と同様(図21)の特性であればさらに良い。また、図1で示した例と同様に、再帰反射光学部材2100を図面中の上下方向に移動可能な構造とする。これにより、空間浮遊映像220が形成される位置を、上下に移動することができる。この結果、運転者のアイポイント8から見える空間浮遊映像220の俯角が変化し、運転者が視認している実景に対して疑似的に空間浮遊映像220の映像表示距離と大きさを変化させることができる。
【0023】
以上述べた実施例によれば、例えば、ダッシュボード48上の開口部41の延長線(例えば反射ミラー2120で反射された光の路上)上に、高解像度な映像を、空間浮遊した状態で見える空間浮遊映像220として表示可能となる。このとき、実施例では、空間浮遊映像表示装置1000の開口部41から出射する映像光の発散角を小さく、即ち鋭角とし、さらに特定の偏波に揃える構成とする。これにより、再帰反射光学部材2100に対して正規の反射光だけを効率良く反射させる。このため、実施例によれば、光の利用効率が高く、従来の再帰反射方式で課題となっていた前述の主空間浮遊映像の他に発生するゴースト像を抑えることができ、鮮明な空間浮遊映像を得ることができる。また本実施例の光源(光源装置10)を含む構成により、消費電力を大幅に低減可能な、新規で利用性に優れた空間浮遊映像表示装置を提供することができる。また、上述したように、車両のフロントガラス6を介して、車両内部または外部において視認可能である、いわゆる、一方向性の空間浮遊映像の表示が可能な車両用空間浮遊映像表示装置を提供できる。
【0024】
図5を用いて、本実施例に係る空間浮遊映像表示装置の構成をより具体的に説明する。図5(A)に示すように、ガラス等の透明な部材100の斜め方向(図示のように透明な部材100の平面の方向およびそれに垂直な方向に対し斜めになるように角度を持つ所定の方向。光軸5001の方向。)には、特定偏波の映像光を挟角に発散させる表示装置1を備える。表示装置1は、映像源であり映像光を出射する液晶表示パネル11と、挟角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13(言い換えるとバックライト)とを備えている。
【0025】
表示装置1からの特定偏波の映像光は、透明な部材100に設けた特定偏波の映像光を選択的に反射する膜を有する偏光分離部材101によって反射され、反射光が光軸5002の方向で再帰反射光学部材2に入射する。図中では、偏光分離部材101はシート状に形成され、透明な部材100の面に粘着されている。再帰反射光学部材2の映像光入射面には、λ/4板21が設けられている。映像光は、再帰反射光学部材2への入射のときと出射のときとで2回、λ/4板21を通過させられることで、特定偏波から他方の偏波へ偏光変換される。ここで、特定偏波の映像光を選択的に反射する偏光分離部材101は、偏光変換された他方の偏波の偏光を透過する性質を有する。よって、光軸5002の方向で、偏光変換後の特定偏波の映像光は、偏光分離部材101を透過する。偏光分離部材101を透過した映像光は、光軸5003の方向で、透明部材100の外側の所定の位置に、実像である空間浮遊映像220を形成する。
【0026】
なお、空間浮遊映像220を形成する光は、再帰反射光学部材2から空間浮遊映像220の光学像へ収束する光線の集合であり、これらの光線は、空間浮遊映像220の光学像を通過後も直進する。よって、空間浮遊映像220は、一般的なプロジェクタなどでスクリーン上に形成される拡散映像光とは異なり、高い指向性を有する映像である。よって、図5の構成では、矢印Aの方向からユーザ(対応するアイポイント)が空間浮遊映像220を視認する場合には、空間浮遊映像220は好適な明るい映像として視認されるが、矢印Aとは異なる矢印Bの方向から他の人物が視認する場合には、空間浮遊映像220は映像として一切視認することはできない。この高い指向性の特性は、運転者(方向Aに対応したアイポイントの位置を持つユーザ)のみが必要な映像情報を表示するシステムや、その運転者に正対する車外の他の人物(方向Bに対応するアイポイントを持つ人)や車内の他の位置にいる人物には秘匿したい秘匿性の高い映像を表示するシステム等に採用する場合に、非常に好適である。
【0027】
なお、再帰反射光学部材2の性能によっては、反射後の映像光の偏光軸が不揃いになる場合がある。この場合、偏光軸が不揃いになった一部の映像光は、上述した偏光分離部材101で反射されて表示装置1に戻る。この光が、表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で再反射し、前述のようなゴースト像を発生させて、空間浮遊映像220の画質を低下させる可能性がある。そこで、本実施例では、表示装置1の映像表示面に吸収型偏光板12が設けられている。表示装置1から出射する映像光は、吸収型偏光板12を透過させ、偏光分離部材101から戻ってくる反射光は、吸収型偏光板12で吸収させる。これにより、上記再反射等を抑制でき、空間浮遊映像220のゴースト像による画質低下を防止することができる。
【0028】
上述した偏光分離部材101は、例えば反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜などで形成されたものを適用できる。
【0029】
次に、図5(B)に、代表的な再帰反射光学部材2として、今回の検討に用いた日本カ-バイト工業株式会社製の再帰反射光学部材の表面形状を示す。この再帰反射光学部材は、面内において規則的に配列された6角柱を有する。規則的に配列された6角柱の内部に入射した光線は、6角柱の壁面と底面で反射されて再帰反射光として、入射光に対応した方向に出射して、図5(A)に示す空間浮遊映像220の正規像R1(所定の位置に形成される像)を形成する。再帰反射光学部材は、図中の6角柱を空気に接する面となるように底面に反射面を設け、反射面の上部に6角コーナー面を形成し、6面体と6角柱を中空とし、残りの部分に樹脂を充填した構成としても、同様の効果が得られる。
【0030】
一方、図6に示したように、表示装置1からの映像光のうちで、再帰反射光学部材に斜めに入射した映像光によっては、正規像R1とは別にゴースト像が形成される。本発明の空間浮遊映像表示装置は、表示装置1に表示した映像に基づいて実像である空間浮遊映像を表示する。この空間浮遊映像の解像度は、液晶表示パネル11の解像度の他に、図5(B)で示す再帰反射光学部材2(6角柱)の外形DとピッチPに大きく依存する。例えば、7インチのWUXGA(1920×1200画素)液晶表示パネルを用いる場合には、1画素(1トリプレット)が約80μmであっても、例えば再帰反射光学部材2(6角柱)の直径Dが240μmでピッチPが300μmであれば、空間浮遊映像の1画素は300μm相当となる。このため、空間浮遊映像の実効的な解像度は、1/3程度に低下する。
【0031】
そこで、空間浮遊映像の解像度を表示装置1の解像度と同等にするためには、再帰反射光学部材2(6角柱)の直径DとピッチPを液晶表示パネル11の1画素に近づけることが望まれる。他方、再帰反射光学部材2と液晶表示パネル11の画素とによるモアレの発生を抑えるために、それぞれのピッチ比を1画素の整数倍から外して設計すると良い。また、形状は、再帰反射光学部材2のいずれの一辺も液晶表示パネル11の1画素のいずれの一辺とも重ならないように配置すると良い。
【0032】
さらに、図6に示すように、再帰反射光学部材2に斜め方向から外光6000が入ると、再帰反射光学部材2の表面(6角柱2a,2b,2c等)で反射し、様々な方向にゴースト像を発生させ、空間浮遊映像の画質を大幅に低下させる。発明者は、空間浮遊映像の画質と視認性を向上するために許容できる空間浮遊映像の像のボケlと画素サイズLとの関係を実験により求めた。その際、発明者は、画素ピッチ40μmの液晶表示パネルと、本実施例の狭発散角(例えば発散角が15°)の特性を持つ光源装置とを組み合わせた表示装置1を作成して、その関係を求めた。
【0033】
視認性が悪化するボケ量lは、画素サイズの40%以下が望ましく、15%以下であれば、ほとんど目立たないことが分かった。このときのボケ量lが許容量となる反射面の面粗さ(図6での再帰面の表面粗さ6010)は、測定距離40μmの範囲において平均粗さが160nm以下であり、より目立たないボケ量lとなるには、その反射面の面粗さは120nm以下が望ましいことが分かった。このため、前述した再帰反射光学部材の表面粗さを軽減するとともに、反射面を形成する反射膜とその保護膜とを含めた面粗さを、上述した値以下とすることが望まれる。
【0034】
一方、再帰反射光学部材を低価格で製造するためには、ロールプレス法を用いて成形すると良い。具体的には、再帰部(図6での6角柱)を整列させてフィルム上に賦形する方法である。この方法では、賦形する形状の逆形状をロール表面に形成し、固定用のベース材の上に紫外線硬化樹脂を塗布し、ロール間を通過させることで、必要な形状を賦形し、紫外線を照射して硬化させることで、所望形状の再帰反射光学部材2を得る。
【0035】
図5に示した本実施例の表示装置1は、液晶表示パネル11と、後に詳細に説明する挟角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とにより、上述した再帰反射光学部材2に対して斜め(図6)から映像光が入射する可能性を小さくすることができる。これにより、ゴースト像が発生したとしても輝度が低いという構造的に優れた装置となる。
【0036】
<空間浮遊映像表示装置の例3>
図8は、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の例を示す。表示装置1は、映像表示素子としての液晶表示パネル11と、挟角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを有して構成される。液晶表示パネル11は、画面サイズが3インチ程度の小型のものから80インチを超える大型なものまでの範囲内で選択された液晶表示パネルで構成される。液晶表示パネル11からの映像光は、例えばP偏光とした場合、P偏光を透過する偏光分離部材101を透過し、再帰反射光学部材2に向かう。再帰反射光学部材2の光入射面にはλ/4板21が設けられ、映像光を2度通過させることで偏光変換し、特定偏波(P偏波)を他方の偏波(S偏波)に変換する。その他方の偏波(S偏波)は、偏光分離部材101で反射され、透明な部材100の外側に、反射ミラー300を設けた場合には、破線で示すように実像の立体像3を表示する。P偏波を実線、S偏波を破線で示す。
【0037】
また、反射ミラー300を回転させることができる構成とする。反射ミラー300を回転させることにより、この立体像3の向きと位置を調整することができる。
【0038】
また、反射ミラー300を除いた形態とした場合では、図面に垂直な方向(透明な部材100の平面の方向)に、実像の平面像3bを表示する。
【0039】
また、偏光分離部材101を回転させることができる構成とする。偏光分離部材101を回転させることで、平面像3bの向きと位置を調整することができる。
【0040】
透明な部材100の外光入射窓には、吸収型の偏光板12が設けられている。この吸収型の偏光板12により、P波の外光成分や照明光を吸収する。再帰反射光学部材2で映像光が再帰反射する際に一部の映像光は偏光軸が不揃いになる場合がある。その場合の映像光は、偏光分離部材101を透過して表示装置1に戻る。この光が再度、表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で反射し、ゴースト像を発生させ、空間浮遊映像の画質を著しく低下させる。そこで、本実施例では、表示装置1の映像表示面に、吸収型偏光板12が設けられている。表示装置1に戻ってきた映像光を吸収型偏光板12で吸収させることで、空間浮遊映像のゴースト像による画質低下が防止される。
【0041】
さらに、再帰反射光学部材2に外光が入射した場合には、強力なゴースト像を発生させるおそれがある。そのため、この実施例では、透明な部材100の内面で外光入射窓の吸収型偏光板12以外の箇所に設けられた遮光部材25によって、外光の入射を妨げる構成とする。偏光分離部材101は、反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜を成膜した透明部材などで形成される。
【0042】
また、偏光分離部材101と液晶表示パネル11との間に、空間浮遊映像を形成する正規映像光以外の斜め映像光を遮光する遮光部材(図示せず)を併設してもよい。また、再帰反射光学部材2と偏光分離部材101との間にも、正規映像光以外の斜め映像光を遮光する遮光部材(図示せず)を併設してもよい。更に、上述したように外光が直接再帰反射光学部材2に入射しないように遮光部材25も併設し、ゴースト像を発生させる斜め光を遮光する。発明者は、この結果、ゴースト像の発生が抑えられることを実験により確認した。
【0043】
<反射型偏光板>
本実施例のグリッド構造の反射型偏光板は、偏光軸に対して垂直方向からの光についての特性は低下する。このため、偏光軸に沿った仕様が望ましく、液晶表示パネル11からの出射映像光を挟角で出射可能な本実施例の光源(光源装置13)が理想的な光源となる。また、水平方向の特性も同様に斜めからの光については特性低下がある。以上の特性を考慮して、以下、液晶表示パネルからの出射映像光をより挟角に出射可能な光源を液晶表示パネルのバックライトとして使用する、本実施例の構成例について説明する。これにより、高コントラストな空間浮遊映像が提供可能となる。
【0044】
<表示装置>
次に、本実施例の表示装置1について図面を用いて説明する。本実施例の表示装置1は、映像表示素子(液晶表示パネル)11と共に、その光源を構成する光源装置13を備えており、図9では、光源装置13を映像表示素子(液晶表示パネル)11と共に展開斜視図として示している。
【0045】
この映像表示素子(液晶表示パネル)11は、図9に矢印(出射光束)30で示すように、バックライト装置である光源装置13からの光により、挟角な拡散特性を有する、即ち、指向性(言い換えると直進性)が強く、かつ、偏光面を一方向に揃えたレーザ光に似た特性の照明光束を得て、入力される映像信号に応じて変調をかけた映像光を出射する。そして、その映像光を、再帰反射光学部材2により反射させ、ウィンドガラスを透過させて、実像である空間浮遊映像を形成する(図1参照)。また、本実施例の表示装置1は、図9では、表示装置1を構成する液晶表示パネル11と、更に、光源装置13からの出射光束の指向特性を制御する光方向変換パネル54、および、必要に応じて挟角拡散板(図示せず)を備えて構成されている。即ち、液晶表示パネル11の両面には偏光板が設けられ、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調して出射する(図9の矢印(出射光束)30を参照)構成となっている。これにより、本実施例の表示装置1は、所望の映像を指向性(直進性)の高い特定偏波の光として、光方向変換パネル54を介して、再帰反射光学部材2に向けて投写し、再帰反射光学部材2で反射後、車両(空間)の内部/外部の観視者の眼に向けて透過して空間浮遊映像を形成する。なお、上述した光方向変換パネル54の表面には保護カバーを設けてもよい。
【0046】
本実施例では、光源装置13からの出射光束30の利用効率を向上させ、消費電力を大幅に低減するために、光源装置13と液晶表示パネル11を含んで構成される表示装置1において、以下の構成とすることができる。すなわち、表示装置1は、光源装置13からの光(図9の矢印(出射光束)30を参照)を、再帰反射光学部材2に向けて投写し、再帰反射光学部材2で反射後、ウィンドガラスの表面に設けた透明シート(図示せず)により、空間浮遊映像を所望の位置に形成するよう指向性を制御することもできる。具体的には、この透明シートは、フレネルレンズやリニアフレネルレンズ等の光学部品によって高い指向性を付与したまま空間浮遊映像の結像位置を制御する。このことによれば、表示装置1からの映像光は、レーザ光のようにウィンドガラスの外側(例えば歩道)にいる観察者に対して高い指向性(直進性)で効率良く届くこととなる。その結果、高品位な空間浮遊映像を高解像度で表示すると共に、光源装置13のLED(Light Emitting Diode)素子201を含む表示装置1による消費電力を著しく低減することが可能となる。
【0047】
<表示装置の例1>
図9には、表示装置1の具体的な構成の一例を示す。図10では、図9の光源装置13の上に液晶表示パネル11と光方向変換パネル54を配置している。この光源装置13は、例えば、プラスチックなどにより形成され、その内部にLED素子201、導光体203を収納して構成されている。導光体203の端面には、図10等にも示したように、それぞれのLED素子201からの発散光を略平行光束に変換するために、受光部に対して対面に向かって徐々に断面積が大きくなる形状を有し、内部を伝搬する際に複数回全反射することで発散角が徐々に小さくなるような作用を有するレンズ形状を設けている。その導光体203の上面には、表示装置1を構成する液晶表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置13のケースのひとつの側面(本例では左側の端面)には、半導体光源であるLED素子201や、そのLED素子201の制御回路を実装したLED基板202が取り付けられている。それと共に、LED基板202の外側面には、LED素子201および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンクが取り付けられてもよい。
【0048】
また、光源装置13のケースの上面に取り付けられる液晶表示パネル11のフレーム(図示せず)には、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネル11と、更に、当該液晶表示パネル11に電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)(図示せず)などが取り付けられて構成される。即ち、液晶表示素子である液晶表示パネル11は、固体光源であるLED素子201と共に、電子装置を構成する制御回路(図示せず)からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。この時、生成される映像光は、拡散角度が狭く特定の偏波成分のみとなるため、映像信号により駆動された面発光レーザ映像源に近い、従来に無い新しい表示装置が得られることとなる。なお、現状では、レーザ装置により、上述した表示装置1で得られる画像と同等のサイズのレーザ光束を得ることは、技術的にも安全上からも不可能である。そこで、本実施例では、例えば、LED素子を備えた一般的な光源からの光束から、上述した面発光レーザ映像光に近い光を得る。
【0049】
続いて、光源装置13のケース内に収納されている光学系の構成について、図10と共に、図11を参照しながら詳細に説明する。図10および図11は断面図であるため、光源を構成する複数のLED素子201が1つだけ示されている。これらの複数のLED素子201からの光は、導光体203の受光端面203aの形状により、略コリメート光に変換される。このため、導光体203端面の受光部とLED素子201は、所定の位置関係を保って取り付けられている。なお、この導光体203は、各々、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、この導光体203端部のLED受光面は、例えば、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有し、その外周面の頂部では、その頂部の中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有し、その導光体203の受光端面203aの平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でもよい)を有するものである(図示せず。後述の図13等と同様)。なお、LED素子201を取り付ける導光体の受光部の外形形状は、円錐形状の外周面を形成する放物面形状を成し、LED素子201から周辺方向に出射する光をその外周面の内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0050】
他方、LED素子201は、その回路基板であるLED基板202の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板202は、LEDコリメータである受光端面203aに対して、その表面上のLED素子201が、それぞれ、前述した凹部の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0051】
かかる構成によれば、導光体203の受光端面203aの形状によって、LED素子201から放射される光を略平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0052】
以上述べたように、図9等の光源装置13は、導光体203の端面に設けた受光部である受光端面203aに、光源であるLED素子201を複数並べた光源ユニットを取り付けて構成されている。これにより、LED素子201からの発散光束を導光体203端面の受光端面203aのレンズ形状によって略平行光として、矢印で示すように(図面に平行な方向)、導光体203内部を導光し、光束方向変換手段204によって、導光体203に対して略平行に配置された液晶表示パネル11に向かって(図面から手前に垂直な方向)出射する。導光体203内部または表面の形状によって、この光束方向変換手段204の分布(言い換えると密度)を最適化することで、液晶表示パネル11に入射する光束の均一性を制御することができる。上述した光束方向変換手段204は、導光体203表面の形状や、導光体203内部に例えば屈折率の異なる部分を設けることで、導光体203内を伝搬した光束を、導光体203に対して略平行に配置された液晶表示パネル11に向かって(図面から手前に垂直な方向)出射する。このとき、液晶表示パネル11を画面中央に正対し画面対角寸法と同じ位置に視点を置いた状態で画面中央と画面周辺部の輝度を比較した場合の相対輝度比が20%以上あれば、実用上問題無く、30%を超えていれば、更に優れた特性となる。
【0053】
なお、図11は、図10と同様に、上述した導光体203とLED素子201を含む光源装置13において、偏光変換する本実施例の光源(光源装置13)の構成とその作用を説明するための断面配置図である。図11において、光源装置13は、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板206、レンチキュラーレンズなどから構成されている。その光源装置13の上面には、映像表示素子として、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える液晶表示パネル11が取り付けられている。
【0054】
また、表示装置1は、以下の構成としてもよい。図10で、光源装置13に対応した液晶表示パネル11の光源光入射面(図面での下面)には、フィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設ける。光源装置13は、LED素子201から出射した自然光束210のうち、片側の偏波(例えばP波)212を選択的に反射させ、導光体203の一方(図面での下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル11に向かうようにする。そこで、反射シート205と導光体203の間、もしくは導光体203と反射型偏光板49の間に、位相差板であるλ/4板を設ける。この構成で、光を反射シート205で反射させ、λ/4板を2回通過させることで、反射光束をP偏光からS偏光に変換し、映像光としての光源光の利用効率を向上する。液晶表示パネル11で映像信号により光強度を変調された映像光束(図10の矢印213)は、図1に示したように、再帰反射光学部材2100に入射して、反射後に、反射ミラー2110、および反射ミラー2120を経由して、フロントガラス6の内部である車内の空間、または車外の空間に、実像である空間浮遊映像を得る。
【0055】
また、表示装置1は、以下の構成としてもよい。図11で、光源装置13に対応した液晶表示パネル11の光源光入射面(図面での下面)には、フィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設ける。光源装置13は、LED素子201から出射した自然光束210のうち、片側の偏波(例えばS波)211を選択的に反射させ、導光体203の一方(図面での下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル11に向かうようにする。反射シート205と導光体203の間、もしくは導光体203と反射型偏光板49の間に、位相差板であるλ/4板を設ける。この構成で、光を反射シート205で反射させ、λ/4板を2回通過させることで、反射光束をS偏光からP偏光に変換し、映像光として光源光の利用効率を向上する。液晶表示パネル11で映像信号により光強度変調された映像光束(図11の矢印214)は、図1に示したように、再帰反射光学部材2100に入射して、反射後に、反射ミラー2110、および反射ミラー2120を経由して、フロントガラス6の内部である車内の空間、または車外の空間に、実像である空間浮遊映像を得る。
【0056】
図10および図11に示す光源装置13においては、対応する液晶表示パネル11の光入射面に設けた偏光板の作用の他に、反射型偏光板で片側の偏光成分を反射するため、理論上得られるコントラスト比は、反射型偏光板のクロス透過率の逆数と液晶表示パネルに付帯した2枚の偏光板により得られるクロス透過率の逆数とを乗じたものとなる。これにより、高いコントラスト性能が得られる。実際には、表示画像のコントラスト性能が10倍以上向上することを、発明者は実験により確認した。この結果、自発光型の有機ELに比較しても遜色ない高品位な映像が得られた。
【0057】
<表示装置の例2>
続いて、図12を用いて、表示装置1の具体的な構成の他の例を説明する。この表示装置1の光源装置は、LED14からの自然光(P偏波とS偏波が混在)の発散光束を、LEDコリメータ18により略平行光束(図面での上下の方向)に変換し、反射型導光体304により、液晶表示パネル11に向けて(図面での左右の方向)反射する。この反射型導光体304での反射光は、液晶表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された波長板206と反射型偏光板49に入射する。反射型偏光板49で特定の偏波(例えばS偏波)が反射され、波長板206で位相が変換され、反射型導光体304の反射面に戻り、反射され、再び波長板206を通過して反射型偏光板49を透過する偏波(例えばP偏波)に変換される。
【0058】
この結果、LED14からの自然光は、特定の偏波(例えばP偏波)に揃えられ、液晶表示パネル11に入射し、映像信号に合わせて輝度変調されパネル面に映像を表示する。図12では、前述の例と同様に、光源を構成する複数のLED14(ただし図12では縦断面のため1個のみ図示)が示されており、これらのLED14はLEDコリメータ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、前述の例と同様に、このLEDコリメータ18は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その外周面の頂部では、その頂部の中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、そのLEDコリメータ18の平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でもよい)を有している。なお、LEDコリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LED14から周辺方向に出射する光をその外周面の内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0059】
以上の構成は、図18に示した表示装置1の光源装置と同様の構成である。更に、図18に示したLEDコリメータ18により略平行光に変換された光は、反射型導光体304で反射し、反射型偏光板49の作用により特定の偏波の光が透過させられ、反射した他方の偏波の光は、再度、反射型導光体304を透過して、液晶表示パネル11と接しない反射型導光体304の他方の面に設けた反射板271で反射する。このとき、その光は、反射板271と液晶表示パネル11の間に配置した位相差板であるλ/4板270を2度通過することで偏光変換され、再び反射型導光体304を透過して、反対面に設けた反射型偏光板49を透過して、偏光方向を揃えて液晶表示パネル11に入射される。この結果、この構成では、光源の光を全て利用できるので、光の利用効率が2倍になる。
【0060】
液晶表示パネルからの出射光は、従来のTVセットでは、図16に示すように、画面水平方向(図16(A)ではX軸で表示)と画面垂直方向(図16(A)ではY軸で表示)ともに同様な拡散特性を持っている。これに対して、本実施例の液晶表示パネルからの出射光束の拡散特性は、例えば図17の例1に示すように、輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が13度とすることで、従来の62度に対して1/5となる。同様に垂直方向の視野角は、上下不均等として上側の視野角を下側の視野角に対して1/3程度に抑えるように、反射型導光体304の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、本実施例では、従来の液晶TVに比べ、観視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は50倍以上となる。なお図17でのX,Y方向は図16(A)と同様である。
【0061】
更に、図17の例2に示す視野角特性とすれば、輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が5度とすることで、従来の62度に対して1/12となる。同様に垂直方向の視野角は、上下均等として視野角を従来に対して1/12程度に抑えるように、反射型導光体304の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、本実施例では、従来の液晶TVに比べ、観視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は100倍以上となる。
【0062】
以上述べたように、視野角を挟角とすることで、観視方向に向かう光束量を集中できるので、光の利用効率が大幅に向上する。この結果、実施例によれば、従来のTV用の液晶表示パネルを使用しても、光源装置の光拡散特性を制御することで、同様な消費電力で大幅な輝度向上が実現可能であり、屋外に向けての表示装置とすることができる。
【0063】
実施例の基本構成としては、図3及び図4に示すように、光源装置10により挟角な指向特性の光束を液晶表示パネル4に入射させ、映像信号に合わせて輝度変調することで、液晶表示パネル4の画面上に表示した映像情報を、再帰反射光学部材2100で反射させて得られた空間浮遊映像220を、室内または室外に表示する。
【0064】
<光源装置の例1>
続いて、ケース内に収納されている光源装置等の光学系の構成例について、図13と共に、図14(A)および(B)を参照しながら、詳細に説明する。
【0065】
図13および図14には、光源を構成するLED14(14a,14b)が示されており、これらのLED14はLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、このLEDコリメータ15は、図14(B)にも示すように、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その外周面156の頂部では、その頂部の中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、そのLEDコリメータ15の平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面156は、LED14(14a,14b)から周辺方向に出射する光をその外周面の放物面156の内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0066】
また、LED14(14a,14b)は、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED14が、それぞれ、LEDコリメータ15の凹部153の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0067】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED14(14aまたは14b)から放射される光のうち、特に、そのLED14の中央部分から上方(図面での右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157,154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面156によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED14(14aまたは14b)により発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0068】
なお、図13でLEDコリメータ15の光の出射側には偏光変換素子21が設けられている。この偏光変換素子21は、図14(A)からも明らかなように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材とを組み合わせ、LEDコリメータ15からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列して構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、偏光ビームスプリッタ(PBS膜と記載する)2111と反射膜2121とが設けられている。また、偏光変換素子21へ入射してPBS膜2111を透過した光が出射する出射面には、λ/2位相板213が備えられている。
【0069】
この偏光変換素子21の出射面には、更に、図14(A)にも示す矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED14(14aまたは14b)から出射された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射し、合成拡散ブロック16の出射側のテクスチャー161により拡散された後、導光体17に到る。
【0070】
導光体17は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形(図14(B)参照)の棒状に形成された部材である。そして、導光体17は、図13からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1の拡散板18aを介して対向する導光体光入射部(導光体光入射面を含む)171と、斜面を形成する導光体光反射部(導光体光反射面を含む)172と、第2の拡散板18bを介して、液晶表示素子である液晶表示パネル11と対向する導光体光出射部(導光体光出射面を含む)173とを備えている。
【0071】
この導光体17の導光体光反射部(面)172には、その一部拡大図である図13にも示すように、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。そして、反射面172a(図面では右上がりの線分)は、図面中において一点鎖線で示す水平面(図面での左右方向)に対して角度αn(n:自然数であり、本例では、例えば、1~130である)を形成している。その一例として、ここでは、角度αnを43度以下(ただし、0度以上)に設定している。
【0072】
導光体入射部(面)171は、光源側に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。これによれば、合成拡散ブロック16の出射面からの平行光は、第1の拡散板18aを介して拡散されて導光体入射部(面)171に入射し、図面からも明らかなように、導光体入射部(面)171により上方に僅かに屈曲(言い換えると偏向)しながら、導光体光反射部(面)172に達する。その光は、導光体光反射部(面)172で反射して、図面での上方の導光体光出射部173の上方に設けた液晶表示パネル11に到る。
【0073】
以上に詳述した表示装置1によれば、光利用効率やその均一な照明特性をより向上すると同時に、モジュール化されたS偏光波の光源装置を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。なお、上記の説明では、偏光変換素子21をLEDコリメータ15の後に取り付けるものとして説明したが、本発明はそれに限定されず、偏光変換素子21を液晶表示パネル11に到る光路中に設けることによっても、同様の作用・効果が得られる。
【0074】
なお、導光体光反射部(面)172には、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されており、照明光束は、各々の反射面172a上で全反射されて上方に向かう。更には、導光体光出射部(面)173に挟角拡散板を設け、照明光束は、略平行な拡散光束として、指向特性を制御する光方向変換パネル54に入射し、指向特性が制御されて、図13のように斜め方向から液晶表示パネル11へ入射する。本実施例では、光方向変換パネル54を導光体出射面173と液晶表示パネル11の間に設けたが、これに限定されず、光方向変換パネル54を液晶表示パネル11の出射面に設けても、同様の効果が得られる。
【0075】
<光源装置の例2>
光源装置13等の光学系の構成についての他の例を図15に示す。図15は、図13に示した例と同様に、光源を構成する複数(本例では2個)のLED14(14a,14b)が示されている。これらのLED14は、LEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、図13に示した例と同様に、このLEDコリメータ15は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その外周面156の頂部では、その頂部の中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、そのLEDコリメータ15の平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でもよい)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面156は、LED14から周辺方向に出射する光をその放物面156の内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0076】
また、LED14(14a,14b)は、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED14(14aまたは14b)が、それぞれ、凹部153の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0077】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED14(14aまたは14b)から放射される光のうち、特に、LEDの中央部分から上方(図面での右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157,154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面156によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED14(14aまたは14b)により発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0078】
なお、図15(A)で、LEDコリメータ15の光の出射側には、第一の拡散板18aを介して、導光体170が設けられている。導光体170は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形の棒状に形成された部材である。そして、導光体170は、図15(A)からも明らかなように、拡散ブロック16の出射面に第1の拡散板18aを介して対向する導光体170の導光体入射部(面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(面)172と、反射式偏光板200を介して液晶表示素子である液晶表示パネル11と対向する導光体光出射部(面)173とを備えている。
【0079】
この反射型偏光板200は、例えばP偏光を反射、S偏光を透過させる特性を有する物が選択される。そうすれば、この反射型偏光板200は、光源であるLEDから発した自然光のうち、P偏光を反射し、図15(B)に示した導光体光反射部172に設けたλ/4板5002を通過して反射面5001で反射し、再びλ/4板5002を通過することでS偏光に変換される。これにより、液晶表示パネル11に入射する光束は、全てS偏光に統一される。
【0080】
同様に、反射型偏光板200として、S偏光を反射、P偏光を透過させる特性を有する物が選択されてもよい。そうすれば、この反射型偏光板200は、光源であるLEDから発した自然光のうち、S偏光を反射し、図15(B)に示した導光体光反射部172に設けたλ/4板5002を通過して反射面5001で反射し、再びλ/4板5002を通過することでP偏光に変換される。これにより、液晶表示パネル52に入射する光束は、全てP偏光に統一される。以上述べた構成でも、偏光変換が実現できる。
【0081】
<光源装置の例3>
光源装置等の光学系の構成についての他の例を、図12を用いて説明する。この例では、図12に示すように、LED14からの自然光(P偏光とS偏光が混在)の発散光束をコリメータレンズ18により略平行光束に変換し、反射型導光体304により液晶表示パネル11に向けて反射する。反射光は、液晶表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された反射型偏光板206に入射する。反射型偏光板206では特定の偏波(例えばS偏波)が反射され、反射光は反射型導光体304の反射面を繋ぐ面を透過し、反射型導光体304の反対面に面して配置された反射板271で反射され、位相板であるλ/4波長板270を2度透過することで、偏光変換される。その偏光変換された光(例えばP偏波)は、反射型導光体304と反射型偏光板206を透過して、液晶表示パネル11に入射し、映像光に変調される。このとき、特定偏波と偏光変換された偏波面を合わせることで、光の利用効率が通常の2倍となり、反射型偏光板206の偏光度(言い換えると消光比)もシステム全体の消光比に乗せられる。よって、本実施例の光源装置を用いることで、空間浮遊映像表示装置のコントラスト比が大幅に向上する。
【0082】
この結果、本実施例では、LED14からの自然光は、特定の偏波(例えばP偏波)に揃えられる。前述の例と同様に、本実施例では、光源を構成する複数のLED14が設けられており(ただし図12では縦断面のため1個のみ図示)、これらのLED14は、LEDコリメータ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このLEDコリメータ18は、前述と同様に、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その外周面の頂部では、中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、LEDコリメータ18の平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でもよい)を有している。なお、LEDコリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LED14から周辺方向に出射する光をその放物面の内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0083】
また、LED14は、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ18に対して、その表面上のLED14が、それぞれ、LEDコリメータ18の凹部の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0084】
かかる構成によれば、LEDコリメータ18によって、LED14から放射される光のうち、特に、その中央部分から放射される光は、LEDコリメータ18の外形を形成する2つの凸レンズ面により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ18によれば、LED14により発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0085】
<光源装置の例4>
更に、光源装置等の光学系の構成についての他の例を、図18を用いて説明する。図18で、LEDコリメータ18の光の出射側には、拡散特性を変換する光学シート(言い換えると拡散シート、拡散フィルム)207を2枚用いて、LEDコリメータ18からの光をこれらの2枚の光学シート207の間に入射させる。この光学シート207は、面を構成する図面での垂直方向(上下方向。画面内垂直方向)と水平方向(前後方向。画面内水平方向)の拡散特性を変換する。この光学シート207は、1枚で構成する場合には、そのシートの表面と裏面の微細形状によって、垂直方向と水平方向の拡散特性を制御する。また、光学シート(拡散シート)を複数枚使用して作用を分担してもよい。光学シート207の表面形状と裏面形状により、LEDコリメータ18からの光の画面垂直方向の拡散角を光学シート(拡散シート)207の反射面の垂直面の幅に合わせ、水平方向については液晶表示パネル11から出射する光束の面密度が均一になるように、LED14の数量と光学素子(光学シート207)からの発散角を設計パラメータとして最適設計すると良い。つまり、本実施例では、前述の導光体304の代わりに、1枚以上の光学シート(拡散シート)207の表面形状により、拡散特性を制御する。本実施例では、偏光変換は、前述した光源装置の例3と同様の方法で行われる。これに対し、LEDコリメータ18と光学シート207の間に偏光変換素子21を設けて、偏光変換を行った後、光学シート207に光源光を入射させてもよい。
【0086】
前述した反射型偏光板206は、例えばS偏光を反射、P偏光を透過させる特性を有する物を選択する。そうすれば、光源であるLED14から発した自然光のうち、反射型偏光板206でS偏光を反射し、位相差板270を通過して、反射面271で反射し、再び位相差板270を通過することでP偏光に変換され、液晶表示パネル11に入射する。この位相差板270の厚さは、位相差板270への光線の入射角度により最適値を選ぶ必要があり、λ/16からλ/4の範囲に最適値が存在する。
【0087】
<光源装置の例5>
光源装置の光学系の構成についての他の例を、図19を用いて説明する。本実施例では、光源装置13は、図19(C)に示すように、LEDコリメータ18の光の出射側には偏光変換素子501を備え、偏光変換素子501によって、LED素子(LED14)からの自然光を特定の偏波に揃えて、拡散特性を制御する光学素子81に入射する。そして、光学素子81では、入射光について、図19(C)での垂直方向(上下方向)と水平方向(前後方向)の拡散特性を制御することで、反射型導光体200の反射面に向けての配光特性を最適なものとする。反射型導光体200の表面には、図19(B)に示すように、凹凸パターン502を設け、光学素子81からの入射光を、反射型導光体200の対向面に配置される映像表示装置(図示せず)に向けて反射し、所望の拡散特性を得る。光源のLED素子(LED14)とLEDコリメータ18の配置精度は、光源の効率に大きく影響する。そのため、通常、光軸精度は50μm程度の精度が必要となる。そのため、発明者は、LED14の発熱によるLEDコリメータ18の膨張により取り付け精度が低下する課題への対策として、以下の構成とした。すなわち、本実施例では、図19(A)および(B)のように、いくつかのLED素子(LED14)とLEDコリメータ18を一体とした光源ユニット503の構造として、単独または複数(本例では3個)の光源ユニット503を光源装置に用いることで、上記取り付け精度の低下を軽減した。
【0088】
図19(A)(B)(C)に示した実施例では、反射型導光体200の長辺方向(図面での左右方向)の両端部には、それぞれ、光LED素子とLEDコリメータ18を一体化した光源ユニット503が複数(合計6個)、組み込まれている。本実施例では、反射型導光体200の左右の片側毎に画面内垂直方向(図19(B)での上下方向)で3個ずつの光源ユニット503が組み込まれている。これにより、光源装置13の輝度均一化を実現している。反射型導光体200の反射面(図19(B)で凹凸パターン502が形成された面)には、光源ユニット503に略平行の凹凸パターン502が複数形成されている。凹凸パターン502の凹凸が形成される断面は図19(C)での面であり、凹凸パターン502の凹凸の繰り返しの方向は図19(B)での左右方向であり、一つの凹凸の延在の方向は図19(B)での上下方向である。一つの凹凸パターン502においても、その表面には多面体を形成する。これにより、映像表示装置に入射する光量を高精度に制御することができる。本実施例では、反射型導光体200の反射面の形状を凹凸パターン502として説明したが、これに限らず、三角面、波形面などの形状が規則的または不規則的に配列されたパターンとして、そのパターン面形状により反射型導光体200から映像表示装置に向けた配光パターンを制御する構成とすればよい。また、図19(A)のように、反射型導光体200の側面(光源ユニット503が設けられていない方の側面)には、LEDコリメータ18で制御された光が光源装置13から外部に漏れないように遮光壁504を設け、LED素子(LED14)は外側に設けた金属製の基盤505により放熱性を高めた設計とするとよい。
【0089】
<レンチキュラーレンズ>
以下、表示装置1からの出射光の拡散特性を制御するレンチキュラーレンズによる作用について説明する。レンチキュラーレンズは、レンズ形状を最適化することで、上述した表示装置1から出射されてウィンドガラス(図1)を透過または反射して効率良く空間浮遊映像を得ることが可能となる。即ち、本実施例では、表示装置1からの映像光に対し、2枚のレンチキュラーレンズを組み合わせ、または、マイクロレンズアレイをマトリックス状に配置して拡散特性を制御するシートを設けた構成とすることで、画面内のX軸およびY軸の方向(図17)において、映像光の輝度(言い換えると相対輝度)を、その反射角度(垂直方向を0度)に応じて制御することができる。本実施例では、このようなレンチキュラーレンズにより、従来に比較し、図17(B)に示すように、垂直方向(Y軸方向)の輝度特性を急峻にし、更に上下方向(Y軸の正負方向)の指向特性のバランスを変化させることで、反射や拡散による光の輝度(相対輝度)を高める。これにより、本実施例では、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(言い換えると直進性が高く)、かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、従来技術を用いた場合に再帰反射光学部材で発生していたゴースト像を抑え、効率良く観視者の眼に再帰反射による空間浮遊映像が届くように制御することができる。
【0090】
また上述した光源装置により、図17(A),(B)に示した一般的な液晶表示パネルからの出射光拡散特性(図中では「従来」と表記)に対して、X軸方向およびY軸方向ともに大幅に挟角な指向特性とすることで、特定方向に対して平行に近い映像光束を出射する特定偏波の光を出射する表示装置が実現できる。
【0091】
図16には、本実施例で採用するレンチキュラーレンズの特性の一例を示している。この例では、特に、図16(A)のX方向(垂直方向)における特性を示している。図16(B)で、特性Oは、光の出射方向のピークが垂直方向(0度)から上方に30度付近の角度であり、上下に対称な輝度特性を示している。また、特性Aや特性Bは、更に、30度付近においてピーク輝度の上方の映像光を集光して輝度(相対輝度)を高めた特性の例を示している。このため、これらの特性Aや特性Bでは、30度を超えた角度において、特性Oに比較して、急激に光の輝度(相対輝度)が低減する。
【0092】
即ち、上述したレンチキュラーレンズを含んだ光学系によれば、表示装置1からの映像光束を再帰反射光学部材2に入射させる際、光源装置13で挟角に揃えられた映像光の出射角度や視野角を制御でき再帰反射光学部材2の設置の自由度を大幅に向上できる。その結果、ウィンドガラスを反射または透過して所望の位置に結像する空間浮遊映像の結像位置の関係の自由度を大幅に向上できる。この結果、拡散角度が狭く(直進性が高く)、かつ特定の偏波成分のみの光として効率良く室外または室内の観視者の眼に届くようにすることが可能となる。このことによれば、表示装置1からの映像光の強度(対応する輝度)が低減しても、観視者は映像光を正確に認識して情報を得ることができる。換言すれば、表示装置1の出力を小さくすることにより、消費電力の低い表示装置を実現することが可能となる。
【0093】
本実施例によれば、従来のHUD装置に代えて、映像をフロントガラスに反射させることなく、車内、特にフロントガラスと運転者に挟まれた空間に、必要な映像を空間浮遊映像として表示することができる空間浮遊映像表示装置を提供できる。これにより、車体のデザインが異なる車種間でも展開可能な空間浮遊映像表示装置を提供できる。
【0094】
また、本実施例によれば、従来技術のHUDに対して、設置上の障害要因となっていたフロントガラスの形状や傾きが異なる車種間での展開が可能で、視認性の高い空間浮遊映像を表示することができる空間浮遊表示装置を実現できる。
【0095】
以上、種々の実施例について詳述したが、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために装置全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…表示装置、2…再帰反射光学部材、3…立体像、4…映像表示装置、10…光源装置、11…液晶表示パネル、21…偏光変換素子、6…フロントガラス、8…アイポイント、100…透過性プレート、1000…空間浮遊映像表示装置、101…偏光分離部材、12…吸収型偏光板、13…光源装置、41…開口部、110…筐体、203…導光体、2140…反射型偏光板、205,271…反射シート、206,270…位相差板、3,3b…空間浮遊映像、301…空間浮遊映像のゴースト像、2100…再帰反射光学部材、300,2110,2120…反射ミラー、60,220…空間浮遊映像(空間浮遊像)、G1,G2,G3,G4,G6…空間浮遊映像のゴースト像、R1…空間浮遊映像、401…凹面ミラー、403…光学素子、404…映像表示装置(液晶表示パネル)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図22