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7587418半導体素子の製造方法、及び半導体素子の製造方法において用いられる薬液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法、及び半導体素子の製造方法において用いられる薬液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241113BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20241113BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20241113BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20241113BHJP
   C11D 17/08 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
H01L21/304 622Q
H01L21/308 G
H01L21/308 F
C11D7/32
C11D7/08
C11D17/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020218757
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103863
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和裕
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195628(WO,A1)
【文献】特開2020-097765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0190672(US,A1)
【文献】国際公開第2019/150990(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0354632(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0199500(US,A1)
【文献】特表2022-514611(JP,A)
【文献】特表2020-536138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/308
C11D 7/32
C11D 7/08
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチングを行った後に、前記基板の表面を、第一の薬液に接触させる洗浄処理工程と、
前記第一の薬液に接触させる洗浄処理工程後の前記基板の表面を、第二の薬液に接触させる洗浄処理工程とを含む、半導体素子の製造方法であって、
前記第一の薬液が、ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含み、
前記第二の薬液が、オルト過ヨウ素酸(A2)と塩基性化合物(B2)とを含む、製造方法。
【請求項2】
前記第二の薬液が、前記塩基性化合物(B2)としてアンモニアを含む、請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記第二の薬液のpHが8以上10以下である、請求項1又は2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)が、ヒドロキシルアミン、及びN,N-ジアルキルヒドロキシルアミンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第一の薬液のpHが10以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法において用いられる第一の薬液であって、
ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含む、薬液。
【請求項7】
pHが10以上である、請求項6に記載の薬液。
【請求項8】
前記ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)が、ヒドロキシルアミン、及びN,N-ジアルキルヒドロキシルアミンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項6又は7に記載の薬液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法、及び半導体素子の製造方法において用いられる薬液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、20nm以下の金属ピッチを有する金属配線を形成することが要求されている。この場合、BEOL(Back End of Line)工程では銅を金属配線材料に使用した従来のデュアルダマシン(Dual Damascene)構造には、パターニングのばらつきや、抵抗上昇が限界に近い問題がある。このため、低抵抗金属であるルテニウムを使用したセミダマシン(Semi-damascene)構造が提案されている。
上記セミダマシン構造を形成する際には、基板の表層に形成されたルテニウム層に対して、ドライエッチングが行われる。ドライエッチングを行うと、ルテニウム層の表面やその他の表面露出膜上に、ルテニウムとエッチングガスとの反応生成物(以下、単に「ルテニウム残渣」という場合がある。)が形成されたりする。このため、ドライエッチングにより形成された上記ルテニウム残渣を洗浄除去できる薬液が求められている。また、MOL(Middle End of Line)工程において、タングステンやコバルトを金属配線材料に使用したコンタクト配線では、微細化に伴い抵抗上昇が限界に近く、低抵抗のルテニウムが提案されている。コンタクトを形成するためにルテニウムCMPを行う際には、酸化剤を用いるため、CMPを行うと、ルテニウム層の表面に、酸化剤との反応物が形成されたりする。
【0003】
従来から、ルテニウム残渣の除去に用いられる除去液としては、オルト過ヨウ素酸を含有し、pHが11以上である組成物(特許文献1)、オルト過ヨウ素酸と第四級アンモニウム塩化合物又はアミン化合物とを含む組成物(特許文献2)等が知られている。特許文献1に記載された除去液では、アルカリ性が強いため、ルテニウムのエッチングレートが低く残渣の除去性が不十分である。特許文献2に記載された除去液では、pHが低く、ルテニウム洗浄時に有毒ガスである四酸化ルテニウム(RuO)が発生する懸念がある。また、半導体量産向けのウエハ洗浄装置で使用するのは、部材耐性やパーテイクルの制御の観点から課題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/068183号
【文献】特開2018-121086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後の基板表面に薬液を接触させることで、上記基板表面に形成されたルテニウム残渣を十分に洗浄除去できる工程を有する、半導体素子の製造方法、及び当該半導体素子の製造方法に好適に用いられる薬液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後の基板表面に対して、オルト過ヨウ素酸を含有する上記ルテニウム除去液で洗浄処理する前に、ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含む洗浄液で洗浄処理することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の第1の態様は、基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後に、上記基板の表面を、第一の薬液に接触させる工程と、
上記第一の薬液に接触させる工程後の上記基板の表面を、第二の薬液に接触させる工程とを含む、半導体素子の製造方法であって、
上記第一の薬液が、ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含み、
上記第二の薬液が、オルト過ヨウ素酸(A2)と塩基性化合物(B2)とを含む、製造方法である。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る半導体素子の製造方法において用いられる第一の薬液であって、
ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含む、薬液である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後の基板表面に、上記第一の薬液を接触させた後に、第二の薬液を接触させることで、上記基板表面に形成されたルテニウム残渣を洗浄除去できる工程を有する、半導体素子の製造方法、及び当該半導体素子の製造方法に好適に用いられる薬液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪半導体素子の製造方法≫
半導体素子の製造方法は、基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後に、上記基板の表面を、第一の薬液に接触させる工程と、
上記第一の薬液に接触させる工程後の上記基板の表面を、第二の薬液に接触させる工程とを含む、半導体素子の製造方法であって、
上記第一の薬液が、ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含み、
上記第二の薬液が、オルト過ヨウ素酸(A2)と塩基性化合物(B2)とを含む、製造方法である。
【0011】
<第一の薬液で洗浄処理を行う工程>
(被処理体)
第一の薬液で洗浄処理を行う工程において、洗浄処理の対象となる被処理体は、基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後の基板である。
【0012】
上記ドライエッチング又は化学機械研磨が行われる基板は、ルテニウム含有層を最表層に有する。基板上にルテニウム含有層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、スパッタリング等の物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、及び原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)等が挙げられる。
上記基板にドライエッチング又は化学機械研磨を行う工程としては特に限定されないが、好ましくは、金属配線材料にルテニウムを使用し、基板上に、セミダマシン法(Semi-damascene法)により金属配線パターンを形成する工程、更にMOLのコンタクト配線を形成する工程、埋め込み電源線(Buried Power rail)を形成する工程が挙げられる。
【0013】
上述したように、上記基板の最表層に位置するルテニウム含有層にドライエッチング又は化学機械研磨を行った後の基板が被処理体である。ドライエッチングでは、エッチングガスとして、例えば、O/Clを使用した場合、エッチング後のRu含有層の表面には、Ru酸化物、Ru塩化物、他の露出膜とエッチングガス反応生成物由来の詳細不明な残渣等が形成され、これらが堆積し、あるいはこれらの層が形成される。また、化学機械研磨では、金属酸化剤粒子を使用するため、CMP後のルテニウム含有層の表面には、Ru酸化物、詳細不明な残渣等が形成され、これらが堆積し、あるいはこれらの層が形成される。半導体素子の製造方法では、被処理体に形成された上記堆積物又は層が除去対象であり、これらの表面が被処理面である。
【0014】
(第一の薬液)
第一の薬液は、ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)と、該ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強いアルカリ化合物(B1)とを含む。
【0015】
ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N,N-ジアルキルヒドロキシルアミンが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0016】
N,N-ジアルキルヒドロキシルアミンは、一般式RNOH(式中、R及びRは各々独立してアルキルを表す。)で示される化合物である。上記式中、RまたはRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
【0017】
N,N-ジアルキルヒドロキシルアミンの例としては、N,N-ジメチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,N-ジプロピルヒドロキシルアミン、N,N-ジブチルヒドロキシルアミンが挙げられる。
【0018】
ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)の含有量は、第一の薬液の全質量に対し、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.3質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0019】
アルカリ化合物(B1)とは、上記ヒドロキシルアミン又はその誘導体(A1)よりも塩基性の強い化合物である。上記成分(A1)よりも塩基性の強い化合物とは、上記成分(A1)と水のみからなる水溶液のpHをアルカリ側へシフトさせる性質を有することを意味する。
【0020】
アルカリ化合物(B1)としては、上記性質を有するかぎり特に限定されず、有機アルカリ性化合物、及び無機アルカリ性化合物のいずれも用いることができる。
有機アルカリ化合物としては、有機第四級アンモニウム水酸化物等の四級アンモニウム塩;アルカノールアミン;第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アミジン類等のアルカノールアミン以外のその他の有機アミン類;が好適な例として挙げられる。
【0021】
有機第四級アンモニウム水酸化物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0022】
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、Nメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミンが挙げられる。
【0023】
その他の有機アミン類としては、例えば、ジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【0024】
無機アルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む無機化合物及びその塩が挙げられる。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む無機化合物及びその塩の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムが挙げられる。
【0025】
アルカリ化合物(B1)の含有量は、第一の薬液の全質量に対し、0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0026】
第一の薬液のpHは特に限定されないが、ルテニウム残渣の除去性が向上する観点から、例えば、20℃で、10以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましい。
【0027】
(他の成分)
第一の薬液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、水、界面活性剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤が挙げられる。
【0028】
第一の薬液は、溶媒として水を含むことが好ましい。水としては、蒸留水、イオン交換水、及び超純水等の浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水がより好ましい。
水の含有量は特に限定されないが、第一の薬液の全質量に対し、20質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。また、上限値は、特に限定はないが、99.95質量%未満が好ましく、99.9質量%以下がより好ましい。
【0029】
第一の薬液は、上述した化合物(A1)、化合物(B1)、必要に応じて他の成分を公知の方法で混合して得られる。
【0030】
第一の薬液で洗浄処理を行う工程では、上記被処理体の表面を第一の薬液に接触させる。ここで、上記被処理体の表面とは、被処理体の上記被処理面のことである。上記被処理体の表面を第一の薬液に接触させる方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、スプレー法、浸漬法、液盛り法等が例示されるが、これらに限定されない。
スプレー法では、例えば、被処理体を所定の方向に搬送もしくは回転させ、搬送又は回転される被処理体に向けて上記第一の薬液を噴射して、被処理体の被処理面に上記第一の薬液を接触させる。
浸漬法では、上記第一の薬液に被処理体を浸漬して、被処理体に上記第一の薬液を接触させる。
液盛り法では、被処理体に上記第一の薬液を盛って、被処理体と上記第一の薬液とを接触させる。
これらの洗浄処理方法は、被処理体の構造や材料等に応じて適宜選択することができる。スプレー法、又は液盛り法の場合、被処理体への前記エッチング液の供給量は、被処理体における被処理面が、上記エッチング液で十分に濡れる量であればよい。
【0031】
洗浄処理温度は特に限定されないが、例えば、23℃以上85℃以下が好ましく、30℃以上70℃以下がより好ましい。また、洗浄処理時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上30分以下が好ましく、1分以上10分以下がより好ましい。
【0032】
<第二の薬液で洗浄処理を行う工程>
(第二の薬液)
第二の薬液は、オルト過ヨウ素酸(A2)と塩基性化合物(B2)とを含む。
【0033】
ルテニウムは、4つの酸素原子と結合することで、四酸化ルテニウム(RuO)に変化する。オルト過ヨウ素酸(A2)(HIO)は、ルテニウムを酸化するための酸素原子を放出する酸化剤である。オルト過ヨウ素酸(A2)の酸化還元電位は、ルテニウムを酸化するために十分に高い。このため、オルト過ヨウ素酸(A2)を含む第二の薬液は、ルテニウムを効率良く酸化させ、酸化により生じるRuOを良好に溶解させることができる。
【0034】
オルト過ヨウ素酸(A2)の含有量は、第二の薬液の全質量に対し、0.01~8質量%が例示され、0.02~7質量%が好ましく、0.03~5質量%がより好ましい。オルト過ヨウ素酸の含有量が上記範囲内であると、ルテニウムに対するエッチングレートがより向上する。
【0035】
塩基性化合物(B2)としては、有機塩基性化合物、及び無機塩基性化合物のいずれも用いることができる。
有機塩基性化合物としては、有機第四級アンモニウム水酸化物等の四級アンモニウム塩、アミンオキシド、第三級アミンが好適な例として挙げられる。
【0036】
有機第四級アンモニウム水酸化物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0037】
アミンオキシドとしては、例えば、トリメチルアミンN-オキシド、トリエチルアミンN-オキシド、4-メチルモルホリンN-オキシド、ピリジンN-オキシドが挙げられる。
【0038】
第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、4-メチルモルホリン、N,N-ジメチルアニリンが挙げられる。
【0039】
無機塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む無機化合物及びその塩が挙げられる。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む無機化合物及びその塩の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムが挙げられる。
【0040】
塩基性化合物(B2)の含有量は、第二の薬液の全質量に対し、0.002質量%以上10質量%以下が好ましく、0.005質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0041】
第二の薬液のpHは特に限定されないが、例えば、20℃で、8以上10以下であることが好ましく、8.5以上10以下であることがより好ましい。
【0042】
(他の成分)
第二の薬液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、水、界面活性剤、第三級アルコールが挙げられる。
【0043】
第二の薬液は、溶媒として水を含むことが好ましい。水としては、蒸留水、イオン交換水、及び超純水等の浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水がより好ましい。
水の含有量は特に限定されないが、第二の薬液の全質量に対し、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。また、上限値は、特に限定はないが、99.95質量%未満が好ましく、99.9質量%以下がより好ましい。
【0044】
第二の薬液は、上述した化合物(A2)、化合物(B2)、必要に応じて他の成分を公知の方法で混合して得られる。
【0045】
第二の薬液で洗浄処理を行う工程では、上記第一の薬液に接触させる工程後の上記基板の表面を第二の薬液に接触させる。上記基板の表面を第二の薬液に接触させる方法は、特に限定されず、上記第一の薬液について説明した方法と同様の方法を用いることができる。
【0046】
洗浄処理温度は特に限定されないが、例えば、15℃以上60℃以下が好ましく、20℃以上50℃以下がより好ましい。また、洗浄処理時間は特に限定されないが、例えば、5秒以上10分以下が好ましく、10秒以上3分以下がより好ましい。
【実施例
【0047】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0048】
[実施例1~4及び比較例1~17]
(薬液の調製)
下記表1に記載の薬液S1~S16を調製した。薬液S2~S16は、いずれも水溶液である。また、薬液S10~S14及びS16は、それぞれ2種類の薬液成分を表1に示す濃度で含有する混合液であることを示す。また、表1には各薬液のpHも記載している。
【0049】
【表1】
【0050】
なお、表1で用いられている略称は下記のとおりである。
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
AEEA:アミノエチルエタノールアミン
MEA:モノエタノールアミン
DEHA:ジエチルヒドロキシルアミン
【0051】
(試験基板の作製)
ICP方式のドライエッチング装置を使用して、スパッタリングにより成膜したPVD-Ru基板(Ruの膜厚:50nm)の表面を、下記条件にてドライエッチングを行い、Ruを3nmエッチングした。ドライエッチング後のRu基板を1.5×2cm角に切断し、試験基板を作製した。
ドライエッチング装置:NE-550E(ULVAC社)
ガスの種類:O/Cl
ガス流量:O/Cl=46sccm/4sccm
エッチング温度:23℃
エッチング時間:15秒
【0052】
(比較例1~15の洗浄処理試験)
上記各薬液S1~S15をビーカーに入れ、各試験基板を各薬液に浸漬させ、各薬液を300rpmで攪拌しながら、下記表2に記載の処理温度及び処理時間で洗浄処理を行った。
なお、比較例1~15では、1種の薬液を用いて洗浄処理を行うものである。表2において、「第一の薬液による洗浄」欄と「第二の薬液による洗浄」欄のうち、前者に、比較例1~14で用いた薬液の種類、処理温度、処理時間を記載し、後者に、比較例15で用いた薬液の種類、処理温度、処理時間を記載した。
【0053】
(実施例1~4、比較例16~17の洗浄処理試験)
上記各薬液S4~S5、S10~S12、S16をビーカーに入れ、各試験基板を各薬液に浸漬させ、各薬液を300rpmで攪拌しながら、表2に記載の処理温度及び処理時間で第一の薬液による洗浄処理、水洗処理を行った。次いで、上記薬液S15を各ビーカーに入れ、上記洗浄処理後の各試験基板を、各薬液S15に浸漬させ、各薬液S15を300rpmで攪拌しながら、表2に記載の処理温度及び処理時間で第二の薬液による洗浄処理を行った。
【0054】
(ルテニウム表面の塩素除去率の測定)
上記洗浄処理試験後の各基板を水洗し、窒素気流により乾燥した。乾燥後の基板の表面について、X線光電子分光分析(XPS分析)を行い、Cl由来のピーク面積を求めた。上記洗浄処理試験前の試験基板についても、Cl由来のピーク面積を求め、下記式をもとに塩素除去率を求めた。
塩素除去率(%)=((洗浄処理試験前のピーク面積-洗浄処理試験後のピーク面積/洗浄処理試験前のピーク面積))×100
【0055】
塩素除去率に応じて、下記A~Eの5段階で塩素除去性を評価した。結果を表2に示す。
A:75%以上~100%
B:50%以上75%未満
C:25%以上50%未満
D:10%以上25%未満
E:10%未満
【0056】
(Ruのエッチング量の測定)
上記洗浄処理試験後に乾燥した上記基板について、蛍光X線分析によりRuの膜厚を測定した。上記洗浄処理試験前の試験基板についても、Ruの膜厚を求めた。洗浄処理試験前後のRuの膜厚から、Ruのエッチング量(Å)を算出した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
1種の薬液を用いて洗浄処理を行った比較例1~15では、塩素除去率が最大でも比較例15の50%未満しかなかった。Ruのエッチング量についても、最大で比較例15の
2Åしかなかった。これらの結果から、比較例1~15では、試験基板のRuの表面に形成されたエッチング残渣等の除去性が不十分であることを示す。また、比較例16及び17では、比較例15と同じ薬液S15で洗浄処理を行う前洗浄処理として、それぞれ薬液S4及びS5を用いて洗浄処理を行った。しかし、いずれも塩素除去性は不十分であった。
一方、比較例16において、薬液S4の代わりに薬液S10~12、S16のいずれかで前洗浄処理を行うと、実施例1~4に示されるように、塩素除去率が最小でも50%以上となり、Ruのエッチング量が最小でも7Åと増大した。
これらの実験結果から、オルト過ヨウ素酸(A2)と塩基性化合物(B2)を含む第二の薬液で洗浄処理する前に、前洗浄処理としてヒドロキシルアミン(A1)とアルカリ化合物(B1)を含む第一の薬液で洗浄処理すると、残渣除去性に優れることが分かる。