(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】移動可能な光学絞りを有する網膜カメラ
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
A61B3/14
(21)【出願番号】P 2020507601
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 US2018051826
(87)【国際公開番号】W WO2019060467
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-09
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】グリク,エリエゼル
(72)【発明者】
【氏名】カヴーシ,サム
(72)【発明者】
【氏名】クラーマー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトハースト,トッド
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-522488(JP,A)
【文献】特開2008-49165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143528(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0206272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
撮像プロセス中に、網膜の照明のために、眼球の中に第1の経路に沿って光を放射するように構成された光源と、
前記光源からの光を通して前記網膜を照明し、前記眼球により反射された光を集める対物レンズと、
取り込んだ光から画像を作り出す検出器と、
前記反射された光を前記検出器
に向かう第2の経路に沿って方向付けるように構成された一連のレンズと、
前記一連のレンズの間に挟まれて配置され、前記一連のレンズの光軸の垂直面に沿って制御可能に位置決め可能であ
る、光学絞りと、
操作者からの入力を要求することなく自動的に前記垂直面に沿って前記光学絞りを再位置決めするように動作可能である機構と、
前記機構に結合され、前記眼球が前記撮像プロセス中に移動したという判定に応答して、前記撮像装置を動かすことなく前記光学絞りを前記眼球に位置決めするように、前記光学絞りを適応的に再位置決めするように構成されたコントローラと、
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記機構が、サーボモータ、カム機構、ステッピングモータ、空気圧式アクチュエータ、圧電アクチュエータ、ボイスコイル、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
眼球追跡装置をさらに備え、前記コントローラが、
前記眼球追跡装置の出力に基づいて、前記眼球の空間的な調整が、前記撮像プロセス中に前記第2の経路を移動させたかどうかを判定するようにさらに構成されている、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記撮像プロセス中に前記眼球の空間的な調整によって引き起こされた移動量を判定するようにさらに構成されており、
前記光学絞りが前記機構によって再位置決めされる所定の場所が、前記判定された量に対応する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の経路に沿って、赤外光を前記眼球の中に方向付けるように構成された赤外光源をさらに備える、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記眼球の空間的位置を識別するように前記網膜のライブビューを分析することであって、前記網膜の前記ライブビューが、前記眼球によって反射され、前記撮像装置の中に入った赤外光から作り出されることと、
前記眼球の前記空間的位置を識別することに応答して、命令を生成することと、
前記命令を前記機構に送信することであって、前記命令は、前記撮像装置に、前記光学絞りが適応的に再位置決めされる以前に可能であった解像度より高い解像度を有する網膜画像を生成させることができる所定の場所に前記光学絞りを位置決めするように、前記機構を促すことと、
を行うようにさらに構成されている、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記検出器が、フィルム、デジタル電荷結合素子(CCD)、または相補形金属酸化物半導体(CMOS)である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像プロセス中に、眼球移動に応答して、網膜画像品質を回復するための方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の撮像装置によって、眼球の
位置を判定することと、
前
記撮像装置によって、前記判定された
位置に対応す
る、垂直面に沿っ
た所定の場所に、前記眼球を撮像するために検出器への経路に沿って進行する光を集める光学絞りを位置決めすることであって、前記垂直面は実質的に前記経路に垂直であり、前記検出器は取り込んだ光から画像を作り出すことと、
前
記撮像装置によって、前
記撮像装置が撮像している間、前記眼球の
位置をモニタリングすることと、
前記眼球の
位置が変化したという判定に応答して、前
記撮像装置によって、前
記撮像装置を動かすことなく前記光学絞りを前記眼球に位置決めするように、前記眼球の
位置に対応する
、前記垂直面に沿っ
た新規の位置に前記光学絞りを自動的に移動させることと、を含む、方法。
【請求項9】
前
記撮像装置によって、前記検出器に向かって前記光学絞りを通って誘導された光から網膜画像を生成することをさらに含み、
前記光が、前記眼球によって前
記撮像装置の中に反射されている、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記モニタリングが、前記撮像プロセス全体にわたって、連続的または定期的に実行されている、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月21日に出願された「Retinal Cameras Having Movable Optical Stops」と題する米国仮特許出願第62/561,530号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
様々な実施形態は、光学絞りを有する網膜カメラに関する。
【背景技術】
【0003】
眼底写真技術は、網膜の記録を残すため、眼底(すなわち、レンズの反対側の眼球の内部表面)の画像を取り込むことが必要であり、網膜は、視像を、脳により理解され得る電気的なパルスに変換する、眼球内の網膜神経である。眼底には、網膜、視神経円板、斑、中心窩、および後部ポールが含まれ得る。
【0004】
網膜カメラ(「眼底カメラ」とも呼ばれる)は、通常、顕微鏡、および網膜によって反射された光から画像を作り出す取り込み媒体を備える。瞳孔は、網膜に向かって誘導される光の侵入点および出口点の両方の役割を果たすため、網膜は、直接撮像され得る。網膜の写真上で識別され得る構造的な特徴としては、中央および周辺の網膜、視神経円板、および斑が挙げられる。
【0005】
医療専門家(例えば、検眼士、眼科医、視能訓練士)は、網膜画像を使用してある特定の病気の進行、および眼球の状態をモニタリングすることができる。例えば、網膜画像を使用して、糖尿病、加齢性黄斑変性症(AMD)、緑内障、腫瘍などの兆候を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本技術の様々な特徴および特性は、図面と併せて詳細な説明に関する考察から当業者にとってより明らかになるであろう。本技術の実施形態は、例として説明されており、図面の中に限定されておらず、同様の参照は、類似の要素を示し得る。
【0007】
【
図2】瞳面に沿って垂直に眼球を移動させることにより、ある特定の接眼レンズの検出器に対する光線の入射角度(AOI)がどのようにわずかに変化するかを示す。
【
図3】網膜カメラの一般化された側面図を説明する。
【
図4A】光学絞りがシフトする前の、網膜カメラの変調伝達関数(MTF)を示す。
【
図4B】光学絞りがシフトした後の、網膜カメラのMTFを示す。
【
図5A】下向きに1.5ミリメートル(mm)だけシフトした眼球の網膜を撮像しようと試行している網膜カメラを示す。
【
図5B】1.5mmの下向きのシフトが、検出器により形成された画像においてどのくらいのケラレを引き起こすのかを示す。
【
図6A】光学絞りが下向きにシフトして眼球の下向きのシフトを補償した後の網膜カメラを示す。
【
図6B】光学絞りの対応するシフトが、網膜カメラに入射する光線の一部をどのように回復させ、したがって網膜画像品質を改善することができるかを示す。
【
図7】個々に制御可能である複数の画素を有する、画素化された液晶表示(LCD)層を示す。
【
図8】個々に制御可能である複数のLCD層を有する可変透明スタックを示す。
【
図9】被験者が撮像プロセス中に被験者の眼球をシフトさせたときに、網膜画像品質を回復させるためのプロセスを示すフロー図を示す。
【
図10】本明細書に記載された少なくともいくつかの動作が、実施され得る処理システムの一例を説明するブロック図である。
【0008】
これらの図面は、説明のみを目的として様々な実施形態を図示している。当業者であれば、本技術の原理から逸脱することなく、代替の実施形態を採用し得ることは、理解するであろう。したがって、具体的な実施形態が、図面に示されているが、本技術は、様々な変更に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
網膜カメラは、眼底の立位の拡大視野を提供するように設計されている。通常、網膜カメラは、2.5倍の倍率で網膜領域の30~50°をとらえるが、これらの値は、ズームレンズ、補助レンズ、広角レンズなどを使用して変更することができる。
【0010】
図1は、網膜カメラの一例を示す。一般に、被験者は、被験者の顎を顎受け台に載せ、被験者の額をバーに押し当てた状態で、網膜カメラのある場所に着席することになる。次いで、眼撮影者は、目で網膜カメラを位置合わせし(例えば、伸縮式接眼レンズを使用して)、網膜の画像を取り込ませるシャッターボタンを押すことができる。
【0011】
より具体的には、
図1は、光が、マスクされたアパーチャを通って一連のレンズを介してどのように合焦して、対物レンズを通過し、網膜上に到達する環を形成するかを説明する。照明光線は、1つ以上の光源(例えば、発光ダイオード)によって生成され、それらの光源は、電源に電気的に結合される。網膜および対物レンズが位置合わせされると、網膜によって反射された光は、網膜カメラのマスクされたアパーチャにより形成された環内の照光されない孔を通過する。当業者ならば、網膜カメラの光学部品は、眼球に入射する照明光線、および眼球から出ていく撮像光線が、異なる経路に従うという点で、間接検眼鏡の光学部品に類似していることを理解するであろう。
【0012】
眼球から出て行く撮像光線は、最初に伸縮式接眼レンズに向かって誘導され得、その伸縮式接眼レンズは、眼撮影者によって使用されて、照明光線を位置合わせ、合焦などを行う際の補助となる。眼撮影者がシャッターボタンを押すと、第1のミラーは、照明光線の経路を遮断することができ、第2のミラーは、伸縮式接眼レンズの前部に落とすことができ、伸縮式接眼レンズは、撮像光線が取り込み媒体上に再度方向付けされることを可能にする。取り込み媒体の例としては、フィルム、デジタル電荷結合素子(CCD)、および相補型金属酸化物半導体(CMOS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、網膜画像は、色フィルタまたは特殊な色素(例えば、フルオレスセインまたはインドシアニングリーン)を使用して取り込まれる。
【0013】
したがって、眼球および網膜カメラの安定な位置合わせは、高分解能網膜画像を取り込む際に不可欠である。しかし、そのような位置合わせを維持することは、必要とされる精度、および直接的な眼球凝視制御の不足に起因して、難しい場合がある。
【0014】
それゆえに、ここでは、撮像されている間に眼球が移動することができる空間のサイズを増やすために、サイズおよび/または位置を変更することができる光学絞りを有する網膜カメラが導入される(「アイボックス」とも呼ばれる)。「光学絞り」という用語は、網膜カメラに入射する光線がたどる場所を指す。網膜カメラは、網膜により網膜カメラの中に反射されて戻った光線を撮像するため、光学絞りは、網膜カメラの内側に置かれた平面に沿って配列される。
【0015】
これは、眼球(より具体的には、虹彩)が光学絞りを意味する場合の他のタイプの接眼レンズ(例えば、ヘッドマウントデバイス)とは対照的である。これらの接眼レンズの場合、光学絞りの位置を変化させることによっては、検出器に沿った光線の変位を引き起すことができない。
図2は、瞳面に沿って鉛直方向に眼球を移動させることにより、検出器への光線の入射角度(AOI)がどのようにわずかに変化するかを示す図である。ここでは、第1の光学絞り位置は、最適な眼球場所(すなわち、最も高品質な画像が取り込められ得る場所)を表し、第2の光学絞り位置は、アイボックス内の別の位置を表す。眼球自体は、光学絞りとしての役割を果たすため、被験者は、検出器に沿って光線を鉛直または水平方向に変位させることなく、第1の位置と第2の位置との間で被験者の眼球を移動させることができる。
【0016】
より大きい光学絞りを有する光学系と、瞳孔位置まで移動する、より小さい光学絞りを有する光学系との間には、いくつかの重要な違いがある。例えば、大きい光学絞りは、ある光学系が、小さいf値を有することを確保することになり、f値とは、入射瞳の直径に対する光学系の焦点距離の比である。しかし、これにより、光学系を構築することがより困難に(かつより高価に)なる可能性がある。より小さい光学絞りは、撮像空間内に許容される光量を制限することになる。光学絞りが瞳孔よりも小さい場合、そのときの光は、得られる画像の輝度を低下させてしまう損失となる。したがって、光学絞りを、実質的に瞳孔と同じサイズにすることが望ましい(例えば、倍率を考慮した後に)。瞳孔の移動に対処するため、ここで導入される網膜カメラは、瞳孔とおおよそ同じ直径を依然として維持しながら、光学絞りの位置を調整することができる。
【0017】
各実施形態は、特定の撮像構成、接眼レンズなどを参照しながら説明される場合がある。しかしながら、当業者であれば、本明細書に記載された特徴は、他の撮像構成、接眼レンズなどに同様に適用可能であることを理解するであろう。さらに、本技術は、専用ハードウェア(例えば、回路)、ソフトウェアおよび/もしくはファームウェアを用いて適切にプログラムされたプログラム可能な回路、または専用ハードウェアおよびプログラム可能な回路の組み合わせを使用して、具現化することができる。したがって、各実施形態は、命令を有する機械可読媒体を含むことができ、その命令を使用して、コンピューティングデバイスをプログラムして、眼球の位置を追跡し、光学絞りの位置を変更し、画像データを処理して網膜写真などを生成することを実行することができる。
【0018】
専門用語
本明細書において、「ある実施形態」または「1つの実施形態」への言及は、記載された特定の特徴、機能、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。そのような成句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らず、それらは、必ずしも互いに相互に排他的である代替的な実施形態を指しているとは限らない。
【0019】
文脈上、特段の明示的な要求がない限り、「備える」および「備えている」という単語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきである(すなわち、「を含むが、これらに限定されない」)。「接続される」、「結合される」という用語、またはそれらの任意の変形は、2つ以上の要素間で、直接または間接のどちらかによる任意の接続または結合を含むことを意図されている。結合/接続は、物理的、論理的、またはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、各構成要素は、物理的な接続を共有しないにもかかわらず、互いに電気的にまたは通信可能に結合されてもよい。
【0020】
また、「に基づく」という用語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきである。このため、特段の記述がなければ、「に基づく」という用語は、「少なくとも部分的に基づく」を意味することを意図されている。
【0021】
複数の項目の列挙に言及して使用される場合、単語「または」は、以下の解釈のすべて、すなわち、列挙内の任意の項目、列挙内のすべての項目、および列挙内の任意の組み合わせを網羅することを意図されている。
【0022】
本明細書に記載されたプロセスのいずれにおいても実行されるステップの順番は、代表的なものである。ただし、物理的な可能性に反しない限り、各ステップは、様々な順番および組み合わせで実行されてもよい。例えば、ステップが、本明細書に記載されたプロセスに加えられ、またはそれらのプロセスから削除されてもよい。同様に、ステップは、置き換えられてもよく、また順番を変更されてもよい。このため、任意のプロセスの説明は、状況に応じ将来的に変更可能であることを意図されている。
【0023】
技術の概要
位置合わせは、網膜撮像の最も難しい作業のうちの1つである。例えば、従来の網膜カメラは、通常、眼球、および網膜カメラ内部の撮像構成要素(例えば、レンズ、光学絞り、および検出器)の正確な位置合わせを確保するには、訓練されたオペレータ、頭部位置の適切な固定、および容易ではない機械的制御を必要とする。その結果、従来の網膜カメラのアイボックス寸法は、多くの場合、極めて制約されている。これにより、特に、被験者が、撮像プロセス中に被験者の眼球をシフトし始める場合、眼球と網膜カメラとの適切な位置合わせを困難にしている。
【0024】
小型のアイボックスにより生じる問題に対処するためのいくつかの解決策が提案されている。しかしながら、これらの提案された解決策は、網膜カメラに機械的な複雑さを加える(しかも、このため、コストを増やす)。それゆえに、本発明では、以下を含む、撮像プロセス中にアイボックスを回復させるためのいくつかの様々な技術が、導入される。
被験者が被験者の眼球をシフトするときに、水平方向および/または鉛直方向に移動して網膜画像品質を回復させる機械的な光学絞り。
個々に制御可能である複数の画素を含む画素化された液晶表示(LCD)層を使用して作り出すことができるデジタル光学絞り。
互いに接続されてスタックを形成することができる、複数の画素化されていないLCD層。スタック内部の各LCD層は、他のLCD層からオフセットされてもよい。したがって、網膜カメラの光学絞りは、どのLCD層が、所与の点において時間と共に能動状態であるかを変化させることによって、移動させることができる。
【0025】
これらの技術の各々は、以降、さらに説明されている。
【0026】
図3は、網膜カメラ300の一般化された側面図を示す。ここで、網膜カメラ300は、一連のレンズ304と検出器306(「取り込み媒体」とも呼ばれる)との間に挟まれた光学絞り302を備える。一般的に、検出器306は、一連のレンズ304に隣接して直接配列されている。網膜カメラ300の他の実施形態は、これらの構成要素のうちのいくつかまたはすべて、ならびにここには図示していない他の構成要素を備えてもよい。例えば、網膜カメラは、1つ以上の光源、光源(複数可)により放射された光を誘導するためのミラー、電源コンポーネント(例えば、バッテリ、または電気プラグなどの機械的な電源インターフェース)、網膜画像などを再表示するための表示スクリーンを備えてもよい。
【0027】
上述したように、いくつかの実施形態では、光学絞り302は、眼球308が移動したときに、移動して眼球308によって反射された追加光を回復させる。ここでは、例えば、眼球308は、最適な光軸から2ミリメートル(mm)下方へシフトし、光学絞り302は、下方へ1ミリメートルシフトしたところである。このような移動によって、眼球308から戻る撮像光線(例えば、
図1の撮像光線)のうちのいっそう多くが一連のレンズ304を通って誘導され、検出器306によって取り込まれることを可能にする。
【0028】
眼球シフトと光学絞りシフトとの間の関係は、実質的に直線的であり得る(例えば、ほぼ2対1)。このような関係によって、眼球308の位置が的確に確立することができる限り、光学絞り302の適切な位置は、容易に確立されることを可能にする。
【0029】
いくつかの実施形態では、光学絞り302は、手動で移動される。例えば、網膜撮影者は、撮像作業中に撮像光線を目で観察し(例えば、伸縮式接眼レンズを介して)、ハンドル(複数可)、ジョイスティック(複数可)などの索引付けを使用して、光学絞り302の位置を変化させてもよい。
【0030】
他の実施形態では、光学絞り302は、網膜撮影者または被験者からの入力を必要とせずに、自動的に移動される。例えば、網膜カメラ300は、サーボモータ(複数可)に命令して、網膜カメラ300上で実行するソフトウェア、または網膜カメラ300に通信可能に結合された別のコンピューティングデバイスによって指定された調整に応答して、光学絞り302の位置を変化させてもよい。独立したサーボモータを使用して、x‐軸(すなわち、水平方向)およびy‐軸(すなわち、鉛直方向)に沿って光学絞り302の位置を変化させてもよい。また、他の機構を使用して、光学絞り302の直線運動を達成してもよく、その機構には、カム(複数可)、ステッピングモータ(複数可)、空気圧式シリンダ(複数可)/アクチュエータ(複数可)、圧電アクチュエータ(複数可)、ボイスコイル(複数可)などが含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態では、移動は、単一軸に沿って引き起こされてもよい。すなわち、光学絞りは、一次元移動に制限されてもよい(例えば、x‐軸またはy‐軸に沿って)。例えば、光学絞りの移動は、湾曲した次元(例えば、円形/楕円形経路、矩形経路、または螺旋形経路)に限定されてもよい。
【0032】
ソフトウェアは、画像処理アルゴリズムを適用して、網膜画像品質の向上/低下の指標となるある特定の特徴(例えば、ケラレ)を識別することができる。例えば、ソフトウェアは、個々の網膜画像上で画像のセグメント化(例えば、Otsuの方法などの閾値選定法、またはK平均法クラスタリングなどの色ベースセグメント化法)を実行して対象となる特徴を分離してもよい。ソフトウェアが高品質を有する網膜画像を識別した後に、ソフトウェアは、サーボモータ(複数可)に光学絞り302の位置を変更させる命令を出力することができる。画像品質は、順応輝度、ケラレが存在するかどうか、変調伝達関数(MTF)品質、作用などの1つ以上の要因に依存し得る。
【0033】
このため、被験者は、眼球308と光学絞り302との位置合わせについて考慮せずに、網膜カメラ300の中をのぞき込むことができる場合がある。逆に、網膜カメラ300は、眼球308の場所を自動的に判定し、したがって、光学絞り302を移動させることができる。より具体的には、網膜カメラ300は、光学絞りを再位置決めするように動作可能である機構(例えば、サーボモータ)と、眼球308が撮像プロセス中に移動したという判定に応答して光学絞りを適応的に再位置決めするように構成されたコントローラと、を備えることができる。例えば、コントローラは、眼球の空間的な調整によって引き起こされた移動量を判定し、次いで機構に、それに従って光学絞りを再位置決めさせることを可能にしてもよい。上述したように、眼球の空間的な調整によって引き起こされた移動量は、光学絞りが再位置決めされる量に関係し得る(例えば、比例し得る)。このため、網膜カメラ300全体または眼球308自体を移動させるのではなく、光学絞り302は、移動して眼球308との位置合わせを確保することができる。いくつかの実施形態では、最適化された調整もまた、例えば、画像品質フィードバックループまたはいくつかの他のフィードバックループに基づいても、行われる。
【0034】
いくつかの異なる機構を使用して、眼球308の場所を検出することができる。例えば、赤外光源(複数可)を配列して、赤外ビーム(複数可)を、網膜カメラ300の可視光照明経路の中に投射してもよい。虹彩は、一般に、赤外光によって照明されたときでも、きつく絞られないため、網膜のライブビューを取り込み、眼球308の位置を確立するために使用することができる。別の例として、虹彩は、ソフトウェア実装検索パターンを使用して検出されてもよい。より具体的には、網膜カメラ300は、異なる位置に置かれた光学絞り302を使って一連の網膜画像を取り込むことができる。光学絞り302の理想的な位置は、網膜が、網膜画像のうちのいずれかの中で検出されるかどうかに基づいて判定されてもよい。眼球場所を検出するための他の機構としては、従来の眼球追跡技術、機械視野を介した瞳孔探索、光検出と測距(LIDAR)、ある特定周波数(例えば、60GHz)における無線周波数(RF)物体検出、角膜単純反射などが挙げられる。
【0035】
光学系(例えば、網膜カメラ)の光学的伝達関数は、様々な空間周波数が光学系によってどのように処理されるかを規定する。変形表現、すなわち変調伝達関数(MTF)は、位相効果を無視するが、それ以外では、多くの場合、OTFと等価である。
【0036】
図4Aは、光学絞り302がシフトする前の、網膜カメラ300のMTFを示し、これに対して、
図4Bは、光学絞り302がシフトした後の、網膜カメラ300のMTFを示す。ここで、x‐軸は、空間周波数を表し、y‐軸は、変調を表す。
【0037】
MTFに示された各線は、異なるフィールド角度を表す。最も小さいフィールド角度(すなわち、最適な光軸に最も近い角度)に対応する線は、通常、最も高い変調値を有し、これに対して、最も大きいフィールド角度(すなわち、最適な光軸から最も遠い角度)に対応する線は、通常、最も低い変調値を有することになる。光学絞り302をシフトさせることによって、眼球308により網膜カメラ300の中に反射された追加光を回復させることによって網膜画像品質を改善する。ここで、例えば、最適な光軸から最も遠くに離れた大きいフィールド角度に対応する線は、最も多く回復される。これは、
図4Bに示されている増加した変調値、およびさらに大きい定義の両方から明らかである。
【0038】
図5Aは、下向きに1.5mmだけシフトした眼球508の網膜を撮像しようと試行している網膜カメラ500を示す。網膜カメラ500は、一連のレンズ504と検出器506との間に挟まれた光学絞り502を備えることができる。上述したように、網膜によって網膜カメラ500の中に反射されて戻った光線は、光学絞り502および検出器506に向かって一連のレンズ504を通って導入されることになる。しかしながら、眼球508が、光軸に対して水平方向または鉛直方向にシフトし、光学絞り502がその元の場所にとどまる場合、光線は、検出器506に沿ってずらされることになる。前述の別の方法の場合、あたかも眼球508がその元の位置で撮像されたかのように、光線がもはや同じ場所にある検出器506上に落ちないような様式で、光線は、一連のレンズ504を通って導入されることになる。
【0039】
眼球508の位置の小さいシフトにより、画像品質の顕著な変化を作り出することができる。
図5Bは、例えば、1.5mmの下向きのシフトが、検出器506により形成された画像内でどのようにケラレを引き起こすのかを示す。ケラレは、一般に、画像の中央と比較して周辺部の輝度または彩度の低下を指す。ここで、例えば、ケラレは、画像の周辺部に沿った色および明暗比の変化において、明かである(例えば、
図6Bの画像と比較して)。
【0040】
図6Aは、光学絞り502が下向きにシフトして眼球508の下向きのシフトを補償した後の網膜カメラ500を示す。上述したように、光学絞り502の移動は、眼球508の移動に比例し得る。実際のところ、眼球シフトと光学絞りシフトとの間の関係は、実質的に直線的であり得る(例えば、ほぼ2対1)。したがって、光学絞り502は、ほぼ0.75mmだけ下向きにシフトし、眼球508を1.5mmだけ下向きに補償することができる。
【0041】
このような光学絞り502による移動により、眼球508がシフトしたときに、網膜カメラ500が、網膜画像品質を回復させることを可能にする。眼球508が最適な光軸に沿って撮像されたとき、眼球508によって網膜カメラ500の中に反射されて戻った光線は、1つ以上の所定の場所にある検出器508上に落ちることになる。眼球シフトに基づいて光学絞り502を移動させることにより、光線が、他の場所で生じるよりも所定の場所(複数可)により近い検出器506の上に落ちることを可能にする。
図6Bは、光学絞り502の対応するシフトが、網膜カメラ500に入射する光線の一部をどのように回復させ、したがって網膜画像品質をどのように改善することができるかを示す。
【0042】
図7は、個々に制御可能である複数の画素を有する、画素化された液晶表示(LCD)層700を示す。LCD層700は、そのLCD層の透明度を変化させるために各画素に個別に電圧を印加することができる電源コンポーネント702に電気的に結合され得る。このような様式で電圧を供給することにより、電源コンポーネント702が、LCD層700内のどの画素(複数可)が時間の経過と共に所与の点において能動状態であるかを変化させることによって、光学絞りをデジタル処理で作り出すことを可能にする。このような動作は、LCD層700の内部または近くに配列された1つ以上の偏光層(「偏光子」とも呼ばれる)によって容易にすることができる。
【0043】
画素の透明度を変化させることにより、光が、LCD層700の対応するセグメントを通過することを可能にすることになる。例えば、1つ以上の画素を含むLCD層700のセグメントは、光学絞りとして使用されるときには、実質的に透明に見えてもよい。LCD層700の残りは、部分的または全体的に不透明に見えてもよい。光学絞りを移動させるために、電源コンポーネント702は、実質的に透明な画素が実質的に不透明になること、および/または実質的に不透明な画素が実質的に透明になることを可能にする電圧を印加することができる。
【0044】
ここで、LCD層700は、円として示されている。ただし、当業者であれば、LCD層700の外側の境界が、別の幾何学的形状を形成してもよいことを理解するであろう。例えば、網膜カメラの構成、眼球の予測された移動、デジタル処理で作り出された光学絞りの設計などに基づいた他の形状(例えば、正方形、長方形、または楕円形)が、望ましい。
【0045】
さらに、LCD層700は、任意の数の画素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、LCD層700は、数十または数百の画素を含む。そのような実施形態では、光学絞りは、複数の画素(例えば、4×4の画素セグメント)によって画定されてもよい。他の実施形態では、LCD層700は、より少ない数の画素を含むが、それらの画素のサイズは、多くの場合、より大きい。例えば、LCD層700は、4つ、6つ、または8つの個別に制御される画素を含んでもよい。このような実施形態では、光学絞りは、単一の画素によって画定されてもよい。
【0046】
プラズマディスプレイパネル(PDP)などの、画素化された表示技術の他の形態もまた、使用されてもよいことに留意されたい。このため、LCD層700は、逆に、いくつかの異なる方法でその様相を変化させることができる「可変透明層」とすることができる。
【0047】
例えば、可変透明層は、電圧がポリマー分散液晶(PDLC)技術により印加されたとき、その不透明度を変化させてもよい。電圧を使用して、ポリマーマトリックス内に配設された液晶の位置および配向を変化させて、ある程度の光を可変透明層に通過させることができる。このような実施形態では、可変透明層は、ランダム配列された液晶を含むポリマーマトリックスの各側面上に導電性膜(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))を含むことができる。電源コンポーネント702が、導電性膜に電圧を印加したとき、ポリマーマトリックス内の液晶は、整列するようになり、そして可変透明層は、実質的または全体的に透明になる。ただし、電源コンポーネント702が、電圧を印加することを止めると、液晶は、散乱し、そして可変透明層は、実質的に不透明または半透明になる。
【0048】
別の例として、可変透明層は、電圧がエレクトロクロミズムを経由して印加されたとき、その様相を暗くすることができる。エレクトロクロミズムによって、バースト電圧の使用により可逆的変化を起こすいくつかの材料が、エレクトロクロミック材料内の電気化学的酸化還元反応を引き起こすことを可能にする。このような実施形態では、可変透明層は、第1の導電性酸化物層、エレクトロクロミック層(例えば、タングステン酸化物(WO3))、イオン導体層、イオン貯蔵層(例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2))、および第2の導電性酸化物層を含む。導電性酸化物層は、インジウム錫酸化物(ITO)などの光学的に透明であり、導電性のある材料の薄膜であってもよい。導電性酸化物層はまた、透明な導電性酸化物(TCO)、導電性ポリマー、金属グリッド、カーボンナノチューブ、グラフェン、極薄金属薄膜、またはこれらのうちのいくつかの組み合わせからもなり得る。イオン導体層は、液体電極または固体(例えば、無機または有機)電極を含むことができる。このような実施形態では、電源コンポーネント702(導電性酸化物層に結合されている)は、導電性酸化物層のいずれかに電圧を選択的に印加することができ、その導電性酸化物層は、イオン貯蔵層からエレクトロクロミック層中にイオンを駆動し、逆の場合も同様である。イオンが浸透したエレクトロクロミック層は、光を反射することができ、それによって、可変透明層が少なくとも部分的に不透明に見えることを可能にする。
【0049】
エレクトロクロミックおよびPDLC技術は、説明を目的として選択された。また、光透過特性の変更を可能にする他の技術を使用して、フォトクロミック、サーモクロミック、懸濁粒子、およびマイクロブラインド技術などの同じ(または同様の)効果を達成することもできる。
【0050】
図8は、個々に制御可能である複数のLCD層800を有する可変透明スタック804を示す。
図7に示すように、単一の透明なLCD層が、当該層を画素化する周期的なパターンを有することができる。例えば、基板(例えば、ITO)は、個別に制御可能である画素のグリッドを用いてパターニングされてもよい。しかしながら、
図7の画素化されたLCD層700とは異なり、可変透明スタック804内に含まれる複数のLCD層800の各LCD層は、通常、画素化されていない。ここでは、例えば、基板(例えば、ITO)は、幾何学的形状(例えば、円)にパターニングされて、各LCD層を形成している。しかし、各LCD層800を画素化するのではなく、各LCD層は、逆に、電源コンポーネント802に個別に接続されている(例えば、個別のリード線を使用して)。これにより、各LED層が他のLED層(複数可)から独立して制御され得ることを確実にしている。
【0051】
複数のLCD層800は、互いに接続されて可変透明スタック804を形成することができる。
図8に示すように、可変透明スタック804内の各LCD層は、他のLCD層からオフセットされてもよい。いくつかの実施形態では、LCD層800のうちの各々は、少なくとも1つの他のLCD層と部分的に重なり合っている。網膜カメラの光学絞りは、どのLCD層が時間の経過と共に所与の点において能動状態であるかを変化させることによって、移動され得る。このため、可変透明スタック804内のLCD層800は、撮像される眼球の位置に応じて、オンまたはオフされてもよい。
【0052】
可変透明スタック804は、任意の数のLED層800を含んでもよい。例えば、各実施形態は、4個、6個、8個、または10個のLED層を含んでもよい。さらに、可変透明スタック804内のLED層800は、同じサイズおよび/もしくは形状、または異なるサイズおよび/もしくは形状のものであってもよい。
【0053】
可変透明スタック804の外側の境界は、光学絞りの可能な位置を制限している。LCD層800の配列(および、したがって、可変透明スタック804の外側の境界)は、レンズ(例えば、
図3のレンズ304)の数量、タイプ、または配置、予想された眼球場所などを含む、全体としての網膜カメラの光学設計に影響を及ぼす要因に基づいてもよい。
【0054】
可変透明スタック804は、複数のLCD層800、および他の層(例えば、光学的に透明な接着層)を含むことができる。例えば、光学的に透明な接合層を使用して、LCD層800を互いに束ねてもよい。各接合層は、接着剤(例えば、アクリル系接着剤、またはシリコン系接着剤)を含むことができる。さらに、各接合層は、実質的にまたは完全に透明(例えば、光透過率99%超)であることが望ましい。接合層はまた、ガラス、ITO、ポリエチレン(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などを含む様々な基板に対して良好な接着性を示すこともできる。
【0055】
図3の光学絞り302を含む光学絞りユニット、
図8の可変透明スタック804、または
図7のLCD層700は、眼撮像装置内で使用するために適合され得る。例えば、いくつかの実施形態では、光学絞りユニットは、眼撮像装置内に取り付けるように設計されたユニット筐体を含む。他の構成コンポーネント(例えば、
図7の電源コンポーネント702、または
図8の電源コンポーネント802)もまた、ユニット筐体内に搭載されてもよい。さらに、光学絞りユニットは、眼撮像装置のコントローラからのコマンドを受信し、次いでそのコマンドに基づいて印加する電圧を選択するように構成された通信インターフェースを含んでもよい。その電圧により、サーボモータ(複数可)が、
図3の光学絞り302、透明になる
図7のLCD層700内のある特定の画素(複数可)、または透明になる
図8の可変透明スタック804内のある特定の層(複数可)を移動させることを可能にすることができる。
【0056】
図9は、被験者が、撮像プロセスに被験者の眼球をシフトしたときに、網膜画像品質を回復させるためのプロセス900のフロー図を示す。最初に、被験者は、網膜カメラの対物レンズの直前に眼球を据える(ステップ901)。被験者は、通常、被験者の顎を顎受け台内に載せ、被験者の額をバーに押し当てた状態で、網膜カメラの近くに着席することになる。
【0057】
次いで、網膜カメラは、網膜カメラにより撮像される眼球の場所を判定することができる(ステップ902)。上述したように、いくつかの異なる機構を使用して、眼球(および、より具体的には虹彩)の場所を確立することができる。例えば、赤外光源(複数可)は、赤外ビーム(複数可)を、網膜カメラの可視光照明経路の中に投射するように構成されてもよい。虹彩は、一般に、赤外光によって照明されたときであっても、きつく絞られないため、網膜のライブビューを取り込み、眼球の位置を確立するために使用することができる。別の例として、網膜カメラは、異なる位置に配置された網膜絞りを使って網膜画像を取り込むことができる。画像処理アルゴリズム(複数可)は、網膜画像に適用されて、網膜が網膜画像のいずれにも取り込まれたかどうか判定することができる。
【0058】
眼球の場所を判定した後、網膜カメラは、光学絞りの位置を設定することができる(ステップ903)。光学絞りの位置は、手動でまたは自動的に設定することができる。例えば、網膜撮影者は、網膜カメラにより生成された撮像光線を目で観察し(例えば、伸縮式接眼レンズを介して)、ハンドル(複数可)、ジョイスティック(複数可)などの索引付けを使用して、光学絞りの位置を変化させてもよい。別の例として、網膜カメラは、サーボモータ(複数可)に命令して、網膜カメラ上で実行するソフトウェア、または網膜カメラに通信可能に結合された別のコンピューティングデバイスによって指定された調整に応答して、光学絞りの位置を変化させてもよい。
【0059】
次いで、網膜カメラは、眼球により網膜カメラの中に反射された光線から網膜画像を生成することができる(ステップ904)。このような動作は、網膜画像を取り込むことが可能なシャッターボタンを押す網膜撮影者によって促すことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、網膜カメラは、眼球の位置を連続的または定期的にモニタリングする(ステップ905)。網膜カメラは、最初に眼球の場所を判定するために使用された同じ追跡機構、または異なる追跡機構を使用してもよい。例えば、網膜カメラは、高分解能追跡機構を使用して、眼球の位置を連続的にモニタリングすることができ、その結果、わずかな変動(例えば、1mm未満の変動)も、一貫して検出することができる。
【0061】
眼球の位置が変化したという判定に応答して、網膜カメラは、光学絞りの位置を変更することができる(ステップ906)。光学絞りは、網膜撮影者または被験者からの入力を必要とせずに自動的に移動することができる。例えば、網膜カメラは、サーボモータ(複数可)にもう一度命令して、網膜カメラ上で実行するソフトウェア、または網膜カメラに通信可能に結合された別のコンピューティングデバイスによって指定された調整に応答して、光学絞りの位置を変化させてもよい。このため、被験者は、眼球と光学絞りとの位置合わせについて考慮せずに網膜カメラの中をのぞき込んでもよい。逆に、網膜カメラは、眼球の場所を自動的に判定してもよく、したがって、光学絞りを移動させてもよい。
【0062】
物理的な可能性に反しない限り、上述されたステップは、様々な順番および組み合わせで実行されてもよいことが、想定される。例えば、網膜カメラは、光学絞りの位置が変更されるたびに、眼球により網膜カメラの中に反射された光線から網膜画像を自動的に生成してもよい。また、他のステップも、いくつかの実施形態では、含まれてもよい。
【0063】
処理システム
図10は、本明細書に記載された少なくともいくつかの動作が、実施され得る処理システム1000の一例を説明するブロック図である。例えば、処理システム1000のいくつかの構成要素は、網膜カメラ(例えば、
図3の網膜カメラ300)の上位装置として働いてもよく、これに対して、処理システム1000の他の構成要素は、網膜カメラに通信可能に結合されているコンピューティングデバイスの上位装置として働いてもよい。コンピューティングデバイスは、有線チャネルまたは無線チャネルを介して網膜カメラに接続されてもよい。
【0064】
処理システム1000は、1つ以上の中央処理装置(「プロセッサ」)1002、メインメモリ1006、不揮発性メモリ1010、ネットワークアダプタ1012(例えば、ネットワークインターフェース)、ビデオディスプレイ1018、入力/出力装置1020、制御装置1022(例えば、キーボードおよびポインティングデバイス)、記憶媒体1026を含む駆動装置1024、およびバス1016に通信可能に接続された信号発生装置1030を含んでもよい。バス1016は、適切なブリッジ、アダプタ、またはコントローラにより接続されている1つ以上の物理的なバスおよび/またはポイントツーポイント接続を表す捨象として示されている。それゆえに、バス1016は、システムバス、周辺機器相互接続(PCI)バスもしくはPCIエクスプレスバス、ハイパートランスポートもしくは業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、小型コンピュータ用周辺機器インターフェース(SCSI)バス、ユニバーサルシリアルバス(USB)、IIC(I2C)バス、または電気電子技術者協会(IEEE)標準規格1394バス(「ファイヤーワイヤ」とも呼ばれる)を含んでもよい。
【0065】
処理システム1000は、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、移動電話、ゲーム機(例えば、ソニープレイステーション(登録商標)またはマイクロソフトXボックス(登録商標))、音楽プレーヤー(例えば、アップルアイポッドタッチ(登録商標))、ウェアラブル電子デバイス(例えば、腕時計またはフィットネスバンド)、ネットワーク接続(「スマート」)デバイス(例えば、テレビまたはホームアシスタントデバイス)、仮想/拡張現実システム(例えば、オキュラスリフト(登録商標)またはマイクロソフトホロレンズ(登録商標))などのヘッドマウントディスプレイ)、または処理システム1000により取得される機能(複数可)を指定する一組の命令(逐次またはそれ以外)を実行することができる別の電子デバイスのアーキテクチャと同様のコンピュータプロセッサアーキテクチャを共有することができる。
【0066】
メインメモリ1006、不揮発性メモリ1010、および記憶媒体1026(「機械可読媒体」とも呼ばれる)は、単一の媒体であるように示されているが、「機械可読媒体」および「記憶媒体」という用語は、1つ以上の組の命令1028を格納する単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型/分散型データベース、および/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含むものと解釈されるべきである。また、「機械可読媒体」および「記憶媒体」という用語は、処理システム1000による実行のための一組の命令を格納し、符号化し、または移送することができる任意の媒体を含むものと解釈されるべきである。
【0067】
一般に、本発明の実施形態を実施するために実行されるルーチンは、オペレーティングシステムもしくは具体的なアプリケーション、構成要素、プログラム、オブジェクト、モジュール、または命令手順(集合的に、「コンピュータプログラム」と呼ばれる)の一部として実施されてもよい。コンピュータプログラムは、通常、コンピューティングデバイス内の様々なメモリおよび記憶装置に、いろいろな時に設定される1つ以上の命令(例えば、命令1004、1008、1028)を含む。命令(複数可)は、1つ以上のプロセッサ1002によって読み込まれ、そして実行されたとき、処理システム1000に、本開示の様々な態様に関係する要素を実行するための動作を実行させる。
【0068】
さらに、各実施形態は、完全に機能するコンピューティングデバイスという文脈で説明されてきたが、当業者であれば、様々な実施形態が、様々な形態のプログラム製品として分散されることができることを認識するであろう。本開示は、特定のタイプの機械またはコンピュータ可読媒体が実際にその分散をもたらすために使用される場合であっても、適用する。
【0069】
さらに、機械可読記憶媒体、機械可読媒体、またはコンピュータ可読媒体の例には、揮発性および不揮発性メモリデバイス1010などの記録可能媒体、フロッピーおよび他の取外し可能ディスク、ハードディスクドライブ、光ディスク(例えば、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD))、ならびにデジタル式およびアナログ式通信リンクなどの伝送型媒体が含まれる。
【0070】
ネットワークアダプタ1012によって、処理システム1000が、処理システム1000および外部エンティティによりサポートされている任意の通信プロトコルを介して、処理システム1000の外部にあるエンティティを有するネットワーク1014内のデータを調停することを可能にする。ネットワークアダプタ1012には、1つ以上のネットワークアダプタカード、無線ネットワークインターフェースカード、ルータ、アクセスポイント、無線ルータ、スイッチ、マルチレイヤスイッチ、プロトコルコンバータ、ゲートウェイ、ブリッジ、ブリッジルータ、ハブ、デジタルメディア受信機、および/または中継器が含まれ得る。
【0071】
ネットワークアダプタ1012は、コンピュータネットワーク内のデータにアクセス/代理するための許可を制御および/または管理し、ならびに異なる機械および/またはアプリケーションとの間の信用レベルの変化を追跡するファイアウォールを含み得る。ファイアウォールは、機械のうちの特定の組とアプリケーションとの間、機械と機械との間、および/またはアプリケーションとアプリケーションとの間で、予め決められたアクセス権の組を強制する(例えば、トラフィックの流れ、およびこれらのエンティティ間で共有するリソースを調整する)ことができる、ハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素の任意の組み合わせを有する任意の数のモジュールとすることができる。ファイアウォールは、個人、機械、および/もしくはアプリケーション、ならびに許認可権が成り立つ環境によって、対象のアクセス権および動作権を含む許認可を列挙しているアクセス制御リストへのアクセスをさらに管理および/または有してもよい。
【0072】
ここに導入された技術は、プログラム可能な回路(例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ)、ソフトウェアおよび/もしくはファームウェア、専用固定配線(すなわち、プログラム不可能な)回路、またはそのような形態の組み合わせによって実施することができる。専用回路は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの形態とすることができる。
【0073】
摘要
特許請求の範囲の主題に関する様々な実施形態の前述の記載は、例示および説明を目的として提供されてきた。開示された厳密な形態として特許請求の範囲の主題を網羅すること、またはこれに限定することを意図されていない。多くの変更および変形が、当業者ならば、明らかであろう。各実施形態は、本発明の原理、および本発明の実用的な用途を最も良好に説明するために、選択および記載されたものであり、それによって、当業者が、特許請求の範囲の主題、様々な実施形態、および想定される特定の使用に好適である様々な変更を理解することが可能になる。
【0074】
発明の詳細な説明には、特定の実施形態、および最も良好と思われる態様について記載されているが、発明の詳細な説明がどんなに詳しく見えても、その技術は、数多くの方法で実現することができる。実施形態は、それらの実施態様の詳細の中で、大幅に変更してもよいが、依然として明細書により包含されている。様々な実施形態のある特定の特徴または態様を説明したときに使用された特定の用語は、その用語が関連付けられている技術の任意の特定の特性、特徴、または態様に限定されるように、当該用語が本明細書で再定義されているという意味に解釈されるべきではない。一般に、以下の特許請求の範囲で使用されている用語は、それらの用語が本明細書において特段明示的に定義されていない限り、本技術を明細書中に開示された特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではない。したがって、本技術の実際の範囲は、開示された実施形態はもちろんのこと、当該実施形態を実現または実施するすべての等価的な方法を包含する。
【0075】
本明細書で使用された言語は、読みやすさおよび教育的目的のために主として選択されている。主題を詳細に描写したり、または線で描くことは、選択されていなかったかもしれない。それゆえに、本技術の範囲は、この発明の詳細な説明によっては限定されず、本明細書に基づく用途で生じる任意の特許請求の範囲によって限定されることを意図されている。したがって、本開示の様々な実施形態は、例示的であり、以下の特許請求の範囲に記載されているように、本技術の範囲について、限定されないことを意図されている。