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特許7587424環外アミン置換クマリン化合物およびそれらの蛍光標識としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】環外アミン置換クマリン化合物およびそれらの蛍光標識としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/04 20060101AFI20241113BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20241113BHJP
   C07D 417/04 20060101ALI20241113BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20241113BHJP
   C07H 19/14 20060101ALI20241113BHJP
   C07H 19/10 20060101ALI20241113BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241113BHJP
   G01N 33/58 20060101ALI20241113BHJP
   C12Q 1/6832 20180101ALN20241113BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20241113BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
C07D413/04
C07D417/04
C07D417/14
C07H19/14
C07H19/10
C12N15/11 Z
G01N33/58 A
C12Q1/6832 Z
C12Q1/6869 Z
C12M1/34 Z
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020572446
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020055248
(87)【国際公開番号】W WO2020178162
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】62/812,837
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ ロマノフ
(72)【発明者】
【氏名】キャロル アナスタシ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マッコーリー
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/101974(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/095449(WO,A1)
【文献】特開2013-231165(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060482(WO,A1)
【文献】特開平06-271599(JP,A)
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry,2019年,17,186-194
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,59,2016年, 6070-6085
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、その塩またはメソメリー形態:
【化1】

式中:
Xは、O、S、Se、またはNRであって、Rは、H、C1-6アルキル、またはC6-10アリールであり;
環Aは、3~10員ヘテロシクリルであり;
R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロ、-CN、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、-COHまたは-(CH-COであり;
1、2、3、または4であり;
各Rは、独立して、ハロ、-CN、-CO、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各RおよびRは、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルであり;
およびRは、独立して、H、任意で置換された置換C1-6アルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
mは、0、1、2、3、または4であり;かつ
nは、1である。
【請求項2】
Xが、OまたはSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、NRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが、H、ハロ、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO、-SOH、-SONH、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Rが、H、ハロ、またはC1-6アルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Rが、Hである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、H、ハロ、またはC1-6アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が、Hである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、H、SOH、任意で置換されたアルキル、または任意で-COHもしくは-SOHで置換されたC1-4アルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が、Hまたは-SOHである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、H、-SOH、任意で置換されたアルキル、または任意で-COHもしくは-SOHで置換されたC1-4アルキルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
が、Hまたは-SOHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
環Aが、1つの窒素原子を含む3~7員単一複素環である、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
環Aが、
【化2】
である、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
各Rが、ハロ、-CN、-COH、-SOH、-SONR、または任意で置換されたC1-6アルキルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が、-COH、-SOH、-SONH、または-COH、-SOH,もしくは-SONHで置換されたC1-6アルキルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Xが、O、S、またはNHであり;各R、R、R、およびRが、Hであり;環Aが、
【化3】
でありmが、0または1であり;かつRが、ハロ、-COH、-SOH、-SONH、または-SOHもしくは-SONHで置換されたC1-6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
下記:
【化4】
ならびにそれらの塩およびメソメリー形態からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと結合している、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物で標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記化合物が、式(I)のRを介して前記ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと結合している、請求項20に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
式(I)のRが、-COHまたは-(CH-COHであり、結合が、-COH基を使用してアミドを形成する、請求項21に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
前記化合物が、式(I)のRを介して前記ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと結合している、請求項20に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
式(I)のRが、-COHであり、結合が、-COH基を使用してアミドを形成する、請求項23に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
前記化合物が、リンカー部分を介してピリミジン塩基のC5位または7-デアザプリン塩基のC7位と結合している、請求項2024のいずれか一項に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
前記ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖と共有結合した3’OHブロッキング基をさらに含む、請求項2025のいずれか一項に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
請求項2026のいずれか一項に記載の第1の標識化されたヌクレオチドおよび第2の標識化されたヌクレオチドを含むキット。
【請求項28】
前記第2の標識化されたヌクレオチドが、前記第1の標識化されたヌクレオチドとは異なる化合物で標識化されている、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記第1および第2の標識化されたヌクレオチドが、単一レーザー波長を使用して励起可能である、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
第3のヌクレオチドおよび第4のヌクレオチドをさらに含み、前記第2、第3、および第4のヌクレオチドの各々が、異なる化合物で標識化され、各標識が、他の標識から区別可能な異なる吸収極大を有する、請求項28または29に記載のキット。
【請求項31】
前記キットが、4つのヌクレオチドを含み、前記4つのヌクレオチドの第1が、請求項2026のいずれか一項に記載の標識化されたヌクレオチドであり、前記4つのヌクレオチドの第2が、第2の標識を担持し、第3のヌクレオチドが、第3の標識を担持し、かつ第4のヌクレオチドが、非標識化されたものである、請求項27に記載のキット。
【請求項32】
前記キットが、4つのヌクレオチドを含み、前記4つのヌクレオチドの第1が、請求項2026のいずれか一項に記載の標識化されたヌクレオチドであり、前記4つのヌクレオチドの第2が、第2の標識を担持し、第3のヌクレオチドが、2つの標識の混合物を担持し、かつ第4のヌクレオチドが、非標識化されたものである、請求項27に記載のキット。
【請求項33】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、請求項2026に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、または請求項2732のいずれか一項に記載のキットの、シーケンシング、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、またはタンパク質結合アッセイにおける使用。
【請求項34】
自動化シーケンシング装置上での請求項33に記載の使用であって、前記自動化シーケンシング装置が、異なる波長で作動する2つのレーザーを含む、上記使用。
【請求項35】
シーケンシングアッセイにおいて請求項2026のいずれか一項に記載の標識化されたヌクレオチドを取り込むことを含むシーケンシングの方法。
【請求項36】
前記標識化されたヌクレオチドを検出することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記シーケンシングアッセイが、自動化シーケンシング装置上で実施され、前記自動化シーケンシング装置が、異なる波長で作動する2つの光源を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
式(I):
【化5】
の化合物を合成する方法であって、式(II)の化合物を、任意で置換された式(III)の環状アミンと反応させる工程:
【化6】
〔式(I)、(II)、および(III)中:
Xは、O、S、Se、またはNRであって、Rは、H、C1-6アルキル、またはC6-10アリールであり;
環Aは、3~10員ヘテロシクリルであり;
R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロ、-CN、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、-COHまたは-(CH-COであり;
1、2、3、または4であり;
各Rは、独立して、ハロ、-CN、-CO、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各RおよびRは、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルであり;
およびRは、独立して、H、任意で置換された置換C1-6アルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
mは、0、1、2、3、または4であり;かつ
nは、1である。〕
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先出願の参照による組込み)
本出願は、2019年3月1日に出願された米国仮出願第62/812,837号に対する優先権の利益を主張し、これは参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
(分野)
本開示は、環外アミン置換クマリン誘導体およびそれらの蛍光マーカーとしての使用に関する。特に、これらの化合物は、核酸シーケンシング用途におけるヌクレオチドのための蛍光標識として使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
いくつかの刊行物および特許文献が、この開示が関係する技術常識をより完全に記載するために本出願中で参照される。これらの刊行物および文献の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
蛍光標識を有する核酸の非放射性検出は、分子生物学における重要な技術である。組換えDNA技術で用いられる多くの手順は、以前は、例えば32Pで放射性標識されたヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用に依存していた。放射性化合物は、核酸および他の目的の分子の高感度検出を可能にする。しかしながら、放射性同位元素の使用には、費用、制限された貯蔵寿命、不十分な感度、およびより重要なことに安全性の考慮といった、深刻な制限が存在する。放射性標識の必要性を除去することで、安全上のリスクならびに試薬の廃棄等に関連した環境への影響およびコストの両方を減少させる。非放射性蛍光検出に適した方法として、非限定的な例として、自動化DNAシーケンシング、ハイブリダイゼーション法、ポリメラーゼ連鎖反応産物のリアルタイム検出、およびイムノアッセイが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの用途のために、多重のスペクトル的に区別可能な蛍光標識を用いて、複数の空間的に重複する分析物の独立した検出を達成することが望ましい。このようなマルチプレックス法では、反応容器の個数を減少させ得、実験プロトコルを簡素化し、用途特異的な試薬キットの産生を容易にする。マルチカラー自動化DNAシーケンシングシステムでは、例えば、マルチプレックス蛍光検出により、単一の電気泳動レーンにおいて多重のヌクレオチド塩基の分析が可能になり、単色法よりもスループットが増加し、レーン間の電気泳動移動度の変動に関連した不確実性が減少する。
【0006】
しかしながら、マルチプレックス蛍光検出は問題になり得、適切な蛍光標識の選択を制約する多数の重要な要因が存在する。最初に、所定の用途において適切に解像された吸収スペクトルおよび発光スペクトルを持つ色素化合物を発見することは難しくなり得る。また、数種の蛍光色素を一緒に使用する場合、色素の吸収帯が通常は広範に分離しているため、同時励起により区別可能なスペクトル領域において生成する蛍光シグナルが複雑になり得、そのため、2種の色素でさえも、相当な蛍光励起効率を達成することは困難である。多くの励起方法は、レーザーのような高出力光源を使用するため、色素はそのような励起に耐えるのに十分な光安定性を有しなければならない。分子生物学の方法にとって特に重要な最終考慮事項は、蛍光色素が、例えば、DNA合成溶媒および試薬、バッファー、ポリメラーゼ酵素、およびリガーゼ酵素といった試薬化学とどの程度適合性でなければならないかである。
【0007】
シーケンシング技術が進歩するにつれて、上記のすべての制約を満たし、特に固相シーケンシング等といったハイスループット分子法に適した、さらなる蛍光色素化合物、それらの核酸コンジュゲート、および多重の色素セットの必要性が生じてきている。
【0008】
適した蛍光強度、形状、蛍光の波長極大といった蛍光特性が向上した蛍光色素分子は、核酸シーケンシングの速度および正確性を向上させることができる。大部分の色素の蛍光強度はそのような条件下では著しく低いため、水ベースの生物学的バッファー中でおよび高温で測定を行う場合、強い蛍光シグナルが特に重要である。そして、色素が結合した塩基の性質もまた、蛍光極大、蛍光強度、および他のスペクトル色素特性に影響を与える。核酸塩基と蛍光色素との間の配列特異的相互作用は、蛍光色素の特定の設計により仕立てることができる。蛍光色素の構造の最適化は、ヌクレオチド取込みの効率を向上させ、シーケンシングエラーのレベルを減少させ、核酸シーケンシングにおける試薬の使用量を減らし、それゆえコストを減らすことができる。
【0009】
いくつかの光学的および技術的開発は、大きく向上した画像品質へとすでに導いているが、終局的には乏しい光学解像度により制限されていた。概して、光学顕微鏡の光学解像能は、使用される光の波長の約半分の間隔で配置されたオブジェクトに制限される。しかして、実際には、光学顕微鏡で解像できるのは、かなり離れた場所(少なくとも200~350nm)にあるオブジェクトだけである。画像の解像度を向上させ、単位表面積あたりの解像可能なオブジェクトの数を増やす1つの方法は、より短い波長の励起光を使用することである。例えば、同じ光学系で光の波長をΔλ~100nm短縮すると、解像度がより良好となり(約Δ50nm/(約15%))、歪みの少ない画像が記録され、オブジェクトの密度が認識可能面積は約35%増加する。
【0010】
特定の核酸シーケンシング法では、レーザー光を用いて色素標識化ヌクレオチドを励起および検出する。これらの機器は、660nmで励起可能な適切な色素とともに、赤色レーザーといったより長波長の光を使用する。有用な解像度を維持しつつより集密に詰まった核酸シーケンシングクラスターを検出するために、より短波長の青色光源(450-460nm)を使用し得る。この場合、光学解像能は、より長波長の赤色蛍光色素の発光波長ではなく、むしろ次点で最長の波長の光源、例えば532nmでの「緑色レーザー」により励起可能な色素の発光により制限されるであろう。したがって、シーケンシング用途の蛍光検出に使用するための青色色素標識が必要である。
【0011】
青色色素化学および関連するレーザー技術は、例えば、DVDおよびBlu-ray(登録商標)ディスク用の色素を生成するために改良されてきているが、これらの化合物は、バイオ標識化には適さず、バイオマーカーとして使用することができない。
【0012】
残念ながら、ヌクレオチド標識に適した強い蛍光を発する市販の青色色素は、まだ非常にまれである。本明細書に記載されているのは、青色光励起下での強い蛍光を伴うヌクレオチド標識に適した新規な蛍光化合物である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(概要)
本開示は、環外アミン置換クマリン誘導体に関する。それらの化合物は、特に核酸シーケンシング用途におけるヌクレオチド標識化のための蛍光標識として有用となり得る。いくつかの態様では、色素は、短波長光、最適には450~460nmの波長の光を吸収し、450~460nmの波長を有する青色波長励起源が使用される状況において特に有利である。青色波長励起により、蛍光発光の波長が短くなるため、単位面積あたりのより高密度の特徴の検出および解像度が可能になる。このような色素をヌクレオチドとのコンジュゲートで使用すると、核酸シーケンシング法の最中に得られるシーケンシング読取りの長さ、強度、精度、および品質に向上を見ることができる。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物またはその塩に関する:
【化1】
式中、Xは、O、S、Se、またはNRであって、Rは、H、C1-6アルキルまたはC6-10アリールであり;
環Aは、3~10員ヘテロシクリルであり;
R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロ、-CN、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、ハロ、-CN、-COH、-(CH-CO、-(CH-C(O)NR、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたC1-6アルキル、任意で置換されたC2-6アルケニル、任意で置換されたC2-6アルキニル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであるか、あるいは2つのRは、オキソ(=O)を形成し;pおよびqは、各々、1、2、3、または4であり;
各Rは、独立して、ハロ、-CN、-CO、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各RおよびRは、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルであり;
各R、R、RおよびRは、独立して、H、任意で置換された置換C1-6アルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
mは、0、1、2、3、または4であり;かつnは、0、1、2、3、4または5である。
いくつかの態様では、mまたはnの少なくとも1つは、0ではない。いくつかのさらなる態様では、R、R、R、およびRの各々がHである場合、mまたはnの少なくとも1つは、0ではない。R、R、R、およびRの各々がHであり、mが0である場合、nは、1、2、3、4、または5である。R、R、R、およびRの各々がHであり、nが0である場合、mは、1、2、3、または4である。いくつかの態様では、mが1であり;Rが-COHであり;R、R、R、Rの各々がHであり;環Aが
【化2】
である場合; Xは、O、Se、またはNRである。
【0015】
いくつかの他の実施形態では、本開示の化合物は、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、リガンド、粒子、細胞、半固体表面(例、ゲル)、または固体表面といった基質部分とコンジュゲートされる。コンジュゲーションは、カルボキシル基(-COH)を介して実施してもよく、当該分野で公知の方法を使用して、部分(ヌクレオチド等)上のアミノもしくはヒドロキシル基またはそれに結合したリンカーと反応させて、アミドまたはエステルを形成することができる。
【0016】
本開示のいくつかの他の態様は、例えば、基質部分への共有結合を可能にするリンカー基を含む色素化合物に関する。連結は、R基のいずれかを含む、色素の任意の位置で実施してもよい。いくつかの実施形態では、連結は、式(I)のRを介してまたはRを介して実施してもよい。
【0017】
本開示のいくつかのさらなる態様は、下記式により定義されるヌクレオシドまたはヌクレオチド化合物を提供する:

N-L-Dye

式中、Nは、ヌクレオチドであり;
Lは、任意付加のリンカー部分であり;かつ
Dyeは、本開示による蛍光化合物である。
【0018】
本明細書に記載のいくつかの追加の実施形態は、式(I)の化合物で標識された部分、とりわけヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに関する。
【0019】
いくつかの追加の開示は、本開示の色素化合物を使用するシーケンシングの方法を提供する。
【0020】
さらなる態様によれば、本開示はまた、種々の免疫学的アッセイ、オリゴヌクレオチドまたは核酸標識において、または合成によるDNAシーケンシングのために使用され得る色素化合物(遊離またはコンジュゲート形態)を含むキットを提供する。さらに別の態様では、本開示は、自動化された機器プラットフォーム上での合成によるシーケンシングのサイクルに特に適した色素「セット」を含むキットを提供する。いくつかの局面にあるのは、少なくとも1つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識化ヌクレオチドである、1以上のヌクレオチドを含むキットである。
【0021】
本開示のさらなる態様は、環外アミン置換クマリン色素およびそのような色素で標識されたヌクレオチドといった部分を含む、本開示の化合物の化学的製剤である。
【0022】
さらなる態様にあるのは、シーケンシングアッセイにおいてポリヌクレオチドに本明細書に記載の標識化ヌクレオチドを組み込むこと、および組み込まれた標識化ヌクレオチドを検出することを含む、シーケンシングの方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、2チャネルシーケンシング分析における本明細書に記載の色素I-4で標識された完全官能化Aヌクレオチドの有用性を示す散布図である。
図2図2は、2チャネルシーケンシング分析における本明細書に記載の色素I-5で標識された完全官能化Aヌクレオチドの有用性を示す散布図である。
図3図3は、2チャネルシーケンシング分析における本明細書に記載の色素I-6で標識された完全官能化Aヌクレオチドの有用性を示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本開示は、蛍光検出および合成によるシーケンシング(sequencing by synthesis)の方法に特に適した環外アミン置換クマリン化合物を提供する。本明細書に記載の実施形態は、式(I)の構造の色素およびそれらの誘導体、それらの塩およびメソメリー形態に関する。
【化3】
【0025】
いくつかの態様では、Xは、Oである。いくつかの態様では、Xは、Sである。いくつかの態様では、Xは、Seである。いくつかの態様では、Xは、NRであり、Rは、H、C1-6アルキル、またはC6-10アリールであり、一態様では、Rは、Hである。いくつかのさらなる実施形態では、mが1であり;Rが-COHであり;R、R、R、Rの各々がHであり;環Aが
【化4】
である場合;Xは、O、Se、またはNRである。いくつかのさらなる実施形態では、nが0であり;環Aが
【化5】
であり;R、R、R、Rの各々がHであり;XがOである場合;mは、1、2、3、または4である。いくつかの態様では、nが0の場合、mは1、2、3、または4であり、少なくとも1つのRは、-COHである。いくつかの他の態様では、nが1でありかつRが-COHである場合、mは0であるか、あるいは、Rは-COHではない。
【0026】
いくつかの態様では、Rは、H、ハロ、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO、-SOH、-SONH、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールである。一態様では、Rは、Hである。別の態様では、Rは、ハロである。いくつかの態様では、Rは、任意で置換されたC1-6アルキルである。いくつかの態様では、Rは、-COHである。いくつかの態様では、Rは、-SOHである。いくつかの態様では、Rは、-SONRであって、RおよびRは、独立してHまたは任意で置換されたC1-6アルキルである。一態様では、Rは、-SONHである。いくつかの態様では、Rは、-CNではない。
【0027】
いくつかの態様では、Rは、Hである。いくつかの態様では、Rは、ハロである。いくつかの態様では、Rは、-CNである。いくつかの態様では、Rは、はC1-6アルキルである。いくつかの態様では、Rは、-SONRであって、RおよびRは、独立してHまたは任意で置換されたC1-6アルキルである。一態様では、Rは、-SONHである。いくつかの態様では、Rは、-CNではない。
【0028】
いくつかの態様では、Rは、Hである。いくつかの態様では、Rは、ハロである。いくつかの態様では、Rは、-SOHである。いくつかの態様では、Rは、任意で置換されたアルキル、例えば、C1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、-COHまたは-SOHで任意で置換されたC1-4アルキルである。
【0029】
いくつかの態様では、Rは、Hである。いくつかの態様では、Rは、-SOHである。いくつかの態様では、Rは、任意で置換されたアルキル、例えばC1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、-COHまたは-SOHで任意で置換されたC1-4アルキルである。
【0030】
いくつかの態様では、環Aは、3~7員単一複素環である。いくつかのさらなる実施形態では、3~7員単一複素環は、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む。いくつかのさらなる実施形態では、3~7員単一複素環は、1つの窒素原子を含む。いくつかの態様では、環Aは、
【化6】
である。そのような一実施形態では、環Aは、
【化7】
である。いくつかの態様では、環Aは、
【化8】
である。そのような一実施形態では、環Aは、
【化9】
である。いくつかの態様では、環Aは、
【化10】
である。そのような一実施形態では、環Aは、
【化11】
である。本明細書に記載の環Aのいくつかの態様では、nは、0である。本明細書に記載の環Aのいくつかの態様では、nは、1である。本明細書に記載の環Aのいくつかの態様では、nは、2または3である。いくつかの態様では、各Rは、独立して、-COH、-SOH、-COHもしくは-SOHで任意で置換されたC1-4アルキル、-(CH-CO、または任意で置換されたC1-6アルキルである。いくつかの態様では、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。他の態様では、R、は置換されたC1-4アルキルである。いくつかの態様では、Rは、-COHもしくは-SOHで置換されたC1-4アルキルまたはC2-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、nは、1であり、かつRは-COHまたは-(CH-COである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、HまたはC1-4アルキルである。
【0031】
式(I)の
【化12】
部分のベンゼン環は、Rとして示される置換基によって、任意の1つ、2つ、3つ、または4つの位置で任意で置換される。mがゼロの場合、ベンゼン環は、非置換である。mが1より大きい場合、各Rは、同じでも異なっていてもよい。いくつかの態様では、mは、0である。他の態様では、mは、1である。他の態様では、mは、2である。いくつかの態様では、mは、1、2、または3であり、かつ各Rは、独立して、ハロ、-CN、-CO、アミノ、-OH、-SOH、-SONR、または任意で置換されたC1-6アルキルであって、Rは、HまたはC1-4アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、-COH、-SOH、-SONH、または-COH、-SOH、もしくは-SONHで置換されたC1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、-(CHCOOHであって、xは、2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、R、R、R、Rの各々がHであり;nが0であり;mが1である場合;
【化13】
は、以下の位置で置換される:
【化14】
。一実施形態では、Rは、-COHである。
【0032】
式(I)の化合物の特別な例としては、Xが、O、SまたはNHであり;
各R、R、R、およびRが、Hであり;環Aが、
【化15】
であり;nが、0または1であり;Rが、-COHまたは-(CH-COであり;pが、1、2、3、または4であり;Rが、HまたはC1-6アルキルであり;mが、0または1であり;かつRが、ハロ、-CO、-SOH、-SONR、またはSOHもしくは-SONRで置換されたC1-6アルキルであるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方または両方は、HまたはC1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、HまたはC1-4アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、mが0である場合、nは、1であり;または、nが0である場合、mは、1である。一実施形態では、mおよびnの両方は、1である。いくつかのさらなる実施形態では、mが1である場合、
【化16】
は、以下の位置で置換される:
【化17】
。一実施形態では、Rは、-COHである。別の実施形態では、Rは、クロロといったハロ、または-SOHである。なお別の実施形態では、Rは、-SONRであって、RおよびRの少なくとも一方または両方が、HまたはC1-6アルキルである。
【0033】
式(I)の化合物の特別な例としては、Xが、O、SまたはNHであり;各R、R、R、およびRが、Hであり;環Aが、
【化18】
であり;nが、0または1であり;Rが、-COHまたは-(CH-COであり;pが、1、2、3、または4であり;Rcが、HまたはC1-6アルキルであり;mが、0または1であり;R5が、ハロ、-CO、-SOH、SONR、または-SOHもしくは-SONRで置換されたC1-6アルキルであるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方または両方は、HまたはC1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、HまたはC1-4アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、mが0である場合、nは、1であり;または、nが0である場合、mは、1である。一実施形態では、mおよびnの両方は、1である。いくつかのさらなる実施形態では、mが1である場合、
【化19】
は、以下の位置で置換される:
【化20】
。一実施形態では、Rは、-COHである。別の実施形態では、Rは、クロロといったハロ、または-SOHである。なお別の実施形態では、Rは、-SONRであって、RおよびRの少なくとも一方または両方が、HまたはC1-6アルキルである。
【0034】
式(I)の化合物の特別な例としては、Xが、O、SまたはNHであり;各R、R、R、およびRが、Hであり;環Aが、
【化21】
であり;nが、0または1であり;Rが、-COHまたは-(CH-COであり;pが、1、2、3、または4であり;Rが、HまたはC1-6アルキルであり;mが、0または1であり;Rが、ハロ、-CO、-SOH、-SONR、または-SOHもしくは-SONRで置換されたC1-6アルキルであるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方または両方は、HまたはC1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、HまたはC1-4アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では、mが0である場合、nは、1であり;または、nが0である場合、mは、1である。一実施形態では、mおよびnの両方は、1である。いくつかのさらなる実施形態では、mが1である場合、
【化22】
は、以下の位置で置換される:
【化23】
。一実施形態では、Rは、-COHである。別の実施形態では、Rは、クロロといったハロ、または-SOHである。なお別の実施形態では、Rは、-SONRであって、RおよびRの少なくとも一方または両方が、HまたはC1-6アルキルである。
【0035】
環外アミン置換クマリン色素の特定の例としては、以下:
【化24-1】
【化24-2】
、ならびにそれらの塩およびメソメリー形態が挙げられる。
【0036】
とりわけ有用な化合物は、本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、カルボキシまたはアルキル-カルボキシ基を介して本明細書に開示される色素化合物に結合して、アミドまたはアルキル-アミドを形成し得る。例えば、本明細書に開示される色素化合物は、式(I)のRまたはRを介してヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合している。いくつかの実施形態では、式(I)のRは、-COHまたは-(CH-COHであり、結合は、-COH基を使用してアミドを形成する。いくつかの実施形態では、式(I)のRは-COHであり、結合は、-COH基を使用してアミドを形成する。標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、リンカー部分を介して、ピリミジン塩基のC5位置または7-デアザプリン塩基のC7位置に結合された標識を有し得る。
【0037】
標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドはまた、ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖に共有結合したブロッキング基を有し得る。ブロッキング基は、リボースまたはデオキシリボース糖の任意の位置に結合し得る。特別な実施形態では、ブロッキング基は、ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖の3’OH位置にある。
【0038】
本明細書で提供されるのは、2以上のヌクレオチドを含むキットであり、少なくとも1つのヌクレオチドは、本開示の化合物で標識されたヌクレオチドである。キットは、2以上の標識化ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドは、2以上の蛍光標識で標識されてもよい。2以上の標識は、単一の励起源を使用して励起されてもよく、単一の励起源は、レーザーであってもよい。例えば、2以上の標識の励起バンドは、スペクトルの重なり領域での励起が両方の標識に蛍光を発するように、少なくとも部分的に重なり得る。特別な実施形態では、2以上の標識からの発光は、発光を光学的に区別することにより標識の少なくとも1つの存在を決定することができるように、スペクトルの異なる領域で発生するであろう。
【0039】
キットは、4つの標識化ヌクレオチドを含み得、4つのヌクレオチドのうちの第1のものは、本明細書に開示されるような化合物で標識される。このようなキットでは、4つのヌクレオチドの各々を、他の3つのヌクレオチドの標識と同じまたは異なる化合物で標識することができる。したがって、1以上の化合物は、化合物が他の化合物と区別できるように、明確な吸光度極大および/または発光極大を有することができる。例えば、各化合物は、各化合物が他の3つの化合物と区別できるように、別個の極大吸光度および/または発光極大を有することができる。極大以外の吸収スペクトルおよび/または発光スペクトルの部分は異なる可能性があり、これらの違いを利用して化合物を区別することができることが理解されよう。キットは、2つ以上の化合物が明確な極大吸光度を有するようなものであり得る。本発明の化合物は、典型的には、500nm未満の領域の光を吸収する。
【0040】
本明細書に記載の化合物、ヌクレオチド、またはキットは、生物学的システム(例、そのプロセスまたは構成要素を含む)を検出、測定、または識別するために使用してもよい。化合物、ヌクレオチドまたはキットを使用することができる例示的な技術としては、シーケンシング、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、細胞アッセイ(例、細胞結合または細胞機能分析)、またはタンパク質アッセイ(例、タンパク質結合アッセイまたはタンパク質活性アッセイ)が挙げられる。自動シーケンシング機器といった、特定の技術を実行するための自動機器で使用することができる。シーケンシング機器は、異なる波長で動作する2つのレーザーを含んでもよい。
【0041】
本明細書に開示されるのは、本開示の化合物を合成する方法である。本開示による色素は、種々の異なる適切な出発材料から合成することができる。例えば、式(I)の化合物は、式(II)の化合物を、任意で置換された式(III)の環状アミンと反応させることにより調製してもよい:
【化25】
式中、変数X、R、R、R、R、R、R、環A、m、およびnの各々が、本明細書中で定義される。反応は、有機溶媒中、周囲温度または高温で行ってもよい。
【0042】
(定義)
本書で使用されるセクションの見出しは、組織化的な目的のみであり、説明されている主題を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0043】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本教示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の種々の実施形態に対して種々の修正および変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に記載の種々の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内の他の修正および変形をカバーすることが意図される。
【0044】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。用語「含んでいる(including)」ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んだ(included)」といった他の形式の使用は、限定的ではない。用語「有している(having)」ならびに「有する(have)」、「有する(has)」、「有した(had)」といった他の形式の使用は、限定的ではない。本明細書で使用されているように、クレームの移行句(transitional phrase)中であっても本体部(body)中であっても、用語「含む(comprise(s))」および「含んでいる(comprising)」は、オープンエンド化された意味を有すると解釈されるべきである。即ち、上記の用語は、句「少なくとも有している(having at least)」または「少なくとも含んでいる(including at least)」と同義的に解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈で使用される場合、用語「含んでいる(comprising)」は、プロセスが少なくとも記載されたステップを含むが、追加のステップを含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、またはデバイスの文脈で使用される場合、用語「含んでいる(comprising)」は、化合物、組成物、またはデバイスが少なくとも記載された特徴または成分を含むが、追加の特徴または成分もまた含んでもよいことを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「共有結合した(covalently attached)」または「共有結合した(covalently bonded)」は、原子間での電子対の共有を特徴とする化学結合の形成を指す。例えば、共有結合されたポリマーコーティングは、他の手段、例えば、接着または静電相互作用を介した表面への結合と比較して、基板の官能化された表面と化学結合を形成するポリマーコーティングを指す。表面に共有結合しているポリマーは、共有結合に加えて手段を介して結合することもできることが理解されよう。
【0046】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、元素の周期表の列7の放射線安定性原子のいずれか1つ、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和した(すなわち、二重結合または三重結合を含まない)直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有してもよい(本明細書中に現れる場合は常に、「1~20」といった数値範囲は、指定された範囲内の各整数を指す;例えば、「1~20個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等で、20個までの炭素原子からなってもよいが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アルキル」の出現もカバーする)。アルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中型アルキルであってもよい。アルキル基はまた、1~6個の炭素原子を有するより低級のアルキルであり得た。アルキル基は、「C1-4アルキル」または同様の呼称として指定してもよい。ほんの一例として、「C1-6アルキル」は、アルキル鎖に1~6個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群から選択されることを示す。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、Rが上記で定義されるアルキルである式-ORを指し、例えば「C1-9アルコキシ」であり、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、1以上の二重結合を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アルケニル」の出現もカバーする。アルケニル基はまた、2から9個の炭素原子を有する中型アルケニルであってもよい。アルケニル基はまた、2~6個の炭素原子を有するより低級のアルケニルであってもよい。アルケニル基は、「C2-6アルケニル」または同様の呼称として指定してもよい。ほんの一例として、「C2-6アルケニル」は、アルケニル鎖に2~6個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルケニル鎖がエテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2,-ジエニル、およびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群から選択されることを示す。典型的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、1以上の三重結合を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アルキニル」の出現もカバーする。アルキニル基はまた、2~9個の炭素原子を有する中型アルキニルであってもよい。アルキニル基はまた、2~6個の炭素原子を有するより低級のアルキニルであり得た。アルキニル基は、「C2-6アルキニル」または同様の呼称として指定してもよい。ほんの一例として、「C2-6アルキニル」は、アルキニル鎖に2~6個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキニル鎖がエチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イル、および2-ブチニルからなる群から選択されることを示す。典型的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」は、1つ以上のヘテロ原子、すなわち、鎖骨格に窒素、酸素および硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアルキル」の出現もカバーする。ヘテロアルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中型ヘテロアルキルであってもよい。ヘテロアルキル基はまた、1~6個の炭素原子を有するより低級のヘテロアルキルであり得た。ヘテロアルキル基は、「C1-6ヘテロアルキル」または同様の呼称として指定してもよい。ヘテロアルキル基は、1以上のヘテロ原子を含み得る。ほんの一例として、「C4-6ヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル鎖に4~6個の炭素原子、さらには鎖の主鎖に1以上のヘテロ原子が存在することを示す。
【0052】
用語「芳香族」は、共役π電子系を有する環または環系を指し、炭素環式芳香族(例、フェニル)および複素環式芳香族基(例、ピリジン)の両方が挙げられる。この用語は、環系全体が芳香族であるという条件で、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する原子の対を共有する環)基を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、環骨格に炭素のみを含む芳香族環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系の場合、系内のすべての環は芳香族である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アリール」という用語の出現もカバーする。いくつかの実施形態では、アリール基は、6から10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6-10アリール」、「CまたはC10アリール」、または同様の呼称として指定され得る。アリール基の例としては、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、アズレニル、およびアントラセニルが挙げられる。
【0054】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、「C7-14アラルキル」といった、置換基としてアルキレン基を介して結合されたアリール基であり、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、およびナフチルアルキルが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの場合では、アルキレン基は、より低級のアルキレン基(すなわち、C1-6アルキレン基)である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1以上のヘテロ原子、すなわち、環骨格中の窒素、酸素および硫黄が挙げられるがこれらに限定されない、炭素以外の元素を含む芳香族環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系内の各環は、芳香族である。ヘテロアリール基は、5~18個の環員数(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、環骨格を構成する原子の数)を有してもよいが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアリール」の出現もカバーする。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5~10の環員数または5~7個の環員数を有する。ヘテロアリール基は、「5-7員のヘテロアリール」、「5-10員のヘテロアリール」、または同様の呼称として指定してもよい。ヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、およびベンゾチエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」は、置換基として、アルキレン基を介して結合されたヘテロアリール基である。例としては、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、アルキレン基は、より低級のアルキレン基(すなわち、C1-6アルキレン基)である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル」は、環系骨格に炭素原子のみを含む非芳香族環状環または環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2つ以上の環は、融合、架橋、またはスピロ接続された様式で一緒に結合されてもよい。環系の少なくとも1つの環が芳香族でない限り、カルボシクリルは、任意の程度の飽和度を有してもよい。したがって、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子を有してもよいが、本定義は、数値範囲が指定されていない「カルボシクリル」という用語の出現もカバーする。カルボシクリル基はまた、3~10個の炭素原子を有する中型カルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基はまた、3~6個の炭素原子を有するカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基は、「C3-6カルボシクリル」または同様の呼称として指定してもよい。カルボシクリル環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクル[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全に飽和したカルボシクリル環または環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」は、環骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を含む非芳香族環状環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、融合、架橋、またはスピロ結合の方法で一緒に結合してもよい。ヘテロシクリルは、環系の少なくとも1つの環が芳香族でない限り、任意の程度の飽和度を有してもよい。ヘテロ原子は、環系の非芳香族環または芳香族環のいずれかに存在してもよい。ヘテロシクリル基は、3~20の環員数(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロシクリル」の出現もカバーする。ヘテロシクリル基はまた、3~10の環員数を有する中型ヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基はまた、3~6の環員数を有するヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基は、「3-6員ヘテロシクリル」または同様の呼称として指定してもよい。好ましい6員単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、N、またはSの1つから3つまで選択され、好ましい5員単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、N、またはSの1つまたは2つのヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロイオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリジニル、およびテトラヒドロキノリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
「O-カルボキシ」基とは、Rが、水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-OC(=O)R」基を指す。
【0061】
「C-カルボキシ」基とは、Rが、水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルからなる群から選択される「C(=O)OR」基を指す。非限定的な例には、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)が含まれる。
【0062】
「スルホニル」基とは、Rが、水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される「-SOR」基を指す。
【0063】
「スルフィノ」基とは、「-S(=O)OH」基を指す。
【0064】
「S-スルホンアミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-SONR」基を指す。
【0065】
「N-スルホンアミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-N(R)SO」基を指す。
【0066】
「C-アミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-C(=O)NR」基を指す。
【0067】
「N-アミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-N(R)C(=O)R」基を指す。
【0068】
「アミノ」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-NR」基を指す。非限定的な例には、遊離アミノ(すなわち、-NH)が含まれる。
【0069】
「アミノアルキル」基とは、アルキレン基を介して接続されたアミノ基を指す。
【0070】
「アルコキシアルキル」基とは、「C2-8アルコキシアルキル」等といった、アルキレン基を介して結合したアルコキシ基を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、置換基は、1以上の水素原子が別の原子または基と交換された非置換の親基に由来する。特に明記しない限り、基が「置換された」と見なされる場合、その基は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cヘテロアルキル、C-Cカルボシクリル(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、C-C-カルボシクリル-C-C-アルキル(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、3-10員ヘテロシクリル(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、3-10員ヘテロシクリル-C-C-アルキル(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、アリール(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、アリール(C-C)アルキル(任意でハロで置換、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシ)、5-10員ヘテロアリール(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、5-10員ヘテロアリール(C-C)アルキル(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、ハロ、-CN、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシ(C-C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C-C)アルキル(例、-CF3)、ハロ(C-C)アルコキシ(例、-OCF)、C-Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C-C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、-SOH、スルフィノ、-OSOアルキル、およびオキソ(=O)から独立して選択される1以上の置換基で置換されていることを意味する。基が「任意で置換された」と記載されている場合はいつでも、その基を、上記の置換基で置換することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、置換アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は、ハロ、-CN、SO 、-SOH、-SR、-OR、-NR、オキソ、-CONR、-SONR、-COOH、および-COORからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され、R、R、およびRが、各々独立して、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールから選択される。
【0073】
本明細書に記載の化合物は、いくつかのメソメリー形態として表すことができる。単一の構造が描かれている場合、関連するメソメリー形式のいずれかが、意図される。本明細書に記載のクマリン化合物は、単一の構造によって表されるが、関連するメソメリー形態のいずれかとして等しく示すことができる。式(I)についての例示的なメソメリー構造を以下に示す:
【化26】
【0074】
本明細書に記載の化合物の単一のメソメリー形態が示される各例において、代替のメソメリー形態が、等しく企図される。
【0075】
当業者によって理解されるように、本明細書に記載の化合物は、イオン化された形態、例えば、-CO-または-SO-で存在し得る。化合物が正または負に帯電した置換基、例えばSO を含む場合、それはまた、化合物が全体として中性であるように、負または正に帯電した対イオンを含み得る。他の態様では、化合物は、対イオンが共役酸または塩基によって提供される塩の形態で存在し得る。
【0076】
特定のラジカル命名規則は、文脈に応じて、モノラジカルまたはジラジカルのいずれかを含むことができることを理解されたい。例えば、置換基が分子の残りの部分への2つの結合点を必要とする場合、置換基はジラジカルであることが理解される。例えば、2つの結合点を必要とするアルキルとして識別される置換基には、-CH-、-CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のジラジカルが含まれる。他のラジカル命名規則は、ラジカルが「アルキレン」や「アルケニレン」等のジラジカルであることを明確に示す。
【0077】
2つの「隣接する(adjacent)」R基が「それらが結合している原子と一緒に」環を形成すると言われるとき、それは原子の集合単位、介在結合、および2つのR基が、記載された環であることを意味する。例えば、以下のサブ構造が存在し:
【化27】
かつRおよびRが水素およびアルキルからなる群から選択されるものとして定義されるか、またはRおよびRがそれらが結合している原子とともにアリールまたはカルボシクリルを形成するものとして定義される場合、RおよびRは、水素またはアルキルから選択され得るか、あるいは、当該サブ構造は、以下の構造を有し:
【化28】
式中、Aは、描かれた二重結合を含むアリール環またはカルボシクリルである。
【0078】
(標識化ヌクレオチド)
本開示の一態様によれば、基質部分への結合に適した色素化合物、とりわけ基質部分への結合を可能にするリンカー基を含む色素化合物が提供される。基質部分は、本開示の色素をコンジュゲートさせることができる事実上任意の分子または物質であり得、非限定的な例としては、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、リガンド、粒子、固体表面、有機および無機ポリマー、染色体、核、生細胞、およびそれらの組合わせまたは集合が挙げられ得る。色素は、疎水性引力、イオン性引力、共有結合等のさまざまな手段により、オプションのリンカーによってコンジュゲートさせることができる。いくつかの態様では、色素は、共有結合によって基質にコンジュゲートされる。より具体的には、共有結合はリンカー基によるものである。場合によっては、そのような標識化ヌクレオチドは「修飾ヌクレオチド」とも呼ばれる。
【0079】
本開示はさらに、本明細書に記載の1以上の色素で標識されたヌクレオシドおよびヌクレオチドのコンジュゲート(修飾ヌクレオチド)を提供する。標識化ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、非限定的な例として、PCR増幅、等温増幅、固相増幅、ポリヌクレオチドシーケンシング(例、固相シーケンシング)、ニック翻訳反応等といった、酵素合成により形成されたポリヌクレオチドを標識するために有用である。
【0080】
生体分子への結合は、式(I)の化合物のR、R、R、R、R、R、またはX位置を介してもよい。いくつかの態様では、接続は、式(I)のRまたはRグループを介する。いくつかの実施形態では、置換基は、カルボキシルまたは置換アルキル、例えば、-COHで置換されたアルキル、またはカルボキシル基の活性化形態、例えば、生体分子のアミノまたはヒドロキシル基への結合に使用され得るアミドまたはエステルである。本明細書で使用される用語「活性化エステル」は、穏やかな条件下で、例えば、アミノ基を含む化合物と反応することが可能なカルボキシル基誘導体を指す。活性化エステルの非限定的な例としては、p-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニルおよびスクシンイミドエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態では、色素化合物は、ヌクレオチド塩基を介してオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドに共有結合され得る。例えば、標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、リンカー部分を介して、ピリミジン塩基のC5位置または7-デアザプリン塩基のC7位置に結合された標識を有し得る。標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドはまた、ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖に共有結合した3’-OHブロッキング基を有し得る。
【0082】
本明細書に記載されるような新規な蛍光色素の特定の有用な用途は、生体分子、例えば、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを標識することである。本出願のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるような新規な蛍光化合物で標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに関する。
【0083】
(リンカー)
本明細書に開示される色素化合物は、基質または別の分子への化合物の共有結合のための置換基位置の1つに反応性リンカー基を含んでもよい。反応性連結基は、結合(例、共有または非共有結合)、とりわけ共有結合を形成することが可能な部分である。特別な実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーであってもよい。用語「切断可能なリンカー」の使用は、リンカー全体が除去される必要があることを意味するものではない。切断部位は、リンカーの一部が切断後に色素および/または基質部分に結合したままであることを保証するリンカー上の位置に配置することができる。切断可能なリンカーは、非限定的な例として、求電子的に切断可能なリンカー、求核的に切断可能なリンカー、光切断可能なリンカー、還元的条件下(例えば、ジスルフィドまたはアジド含有リンカー)、酸化的条件下で切断可能であり、安全キャッチリンカーの使用を介して切断可能であり、排除メカニズムによって切断可能であるものであってもよい。切断可能なリンカーを使用して色素化合物を基質部分に結合させることにより、必要に応じて、検出後に標識を除去することができるようになり、下流ステップでの干渉シグナルを回避することができる。
【0084】
有用なリンカー基は、PCT公開番号国際公開第2004/018493号(参照により本明細書に組み込まれる)に見出され得、その例としては、遷移金属および少なくとも部分的に水溶性の配位子から形成された水溶性ホスフィンまたは水溶性遷移金属触媒を使用して切断され得るリンカーが挙げられる。水溶液中で、後者は少なくとも部分的に水溶性の遷移金属錯体を形成する。そのような切断可能なリンカーを使用して、ヌクレオチドの塩基を、本明細書に記載の色素といった標識に接続することができる。
【0085】
特別なリンカーとしては、以下の式の部分を含むものといった、PCT公開番号国際公開2004/018493号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが含まれる:
【化29】
(式中、Xは、O、S、NHおよびNQを含む基から選択され、Qは、C1-10置換または非置換アルキル基であり、Yは、O、S、NHおよびN(アリル)を含む群から選択され、Tは、水素またはC-C10置換または非置換アルキル基であり、かつ*は、部分がヌクレオチドまたはヌクレオシドの残りの部分に接続されている場所を示す)。いくつかの態様では、リンカーは、ヌクレオチドの塩基を、例えば、本明細書に記載の色素化合物といった、標識に接続する。
【0086】
リンカーの追加の例としては、以下の式の部分を含むものといった、米国公開番号2016/0040225および2019/0017111(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが含まれる:
【化30】
本明細書に示されるリンカー部分は、ヌクレオチド/ヌクレオシドと標識との間のリンカー構造全体または部分を含んでもよい。
【0087】
特別な実施形態では、蛍光色素(フルオロフォア)とグアニン塩基との間のリンカーの長さは、例えば、ポリエチレングリコールスペーサー基を導入することによって変更することができ、それにより、グアニン塩基と当該分野で公知の他のリンケージを介して結合した同じフルオロフォアと比較して蛍光強度を増加させる。例示的なリンカーおよびそれらの特性は、PCT公開番号国際公開第2007020457号(参照により本明細書に組み込まれる)に示される。リンカーの設計、特にそれらの長さの増加により、DNA等のポリヌクレオチドに組み込まれたときにグアノシンヌクレオチドのグアニン塩基に結合したフルオロフォアの輝度を向上させることができる。したがって、色素がグアニン含有ヌクレオチドに結合した蛍光色素標識の検出を必要とする分析方法で使用する場合、リンカーが、国際公開第2007/020457号に記載されているように式-((CHO)-のスペーサー基であって、式中nが2と50との間の整数であるものを含むと、有利である。
【0088】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、糖または核酸塩基上の部位で標識され得る。当該分野で公知のように、「ヌクレオチド」は、窒素塩基、糖、および1以上のリン酸基からなる。RNAでは、糖は、リボースであり、DNAでは、デオキシリボース、すなわちリボースに存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素塩基は、プリンまたはピリミジンの誘導体である。プリンは、アデニン(A)およびグアニン(G)であり、ピリミジンは、シトシン(C)およびチミン(T)、またはRNAの文脈では、ウラシル(U)である。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合する。ヌクレオチドは、ヌクレオシドのリン酸エステルでもあり、糖のC-3またはC-5に結合したヒドロキシル基でエステル化が起こる。ヌクレオチドは通常、一、二、または三リン酸である。
【0089】
「ヌクレオシド」は構造的にヌクレオチドに類似するが、リン酸部分が欠落している。ヌクレオシド類似体の例は、標識が塩基に連結し、糖分子に結合したリン酸基が存在しないものであったであろう。
【0090】
塩基は通常プリンまたはピリミジンと呼ばれるが、当業者は、ヌクレオチドまたはヌクレオシドがWatson-Crick塩基対形成を受ける能力を変化させない誘導体および類似体が利用可能であることを理解するであろう。「誘導体」または「類似体」は、コア構造が親化合物と同じであるか、またはそれに非常に類似しているが、例えば、異なるまたは追加の側鎖といった、誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオシドを別の分子に結合させることを可能にする、化学的または物理的修飾を有する化合物または分子を意味する。例えば、塩基は、デアザプリンであってもよい。特別な実施形態では、誘導体は、Watson-Crickペアリングを受けることが可能であるべきである。「誘導体」および「類似体」はまた、例えば、修飾された塩基部分および/または修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチドまたはヌクレオシド誘導体を含む。そのような誘導体および類似体は、例えば、Scheit,Nucleotide analogs(John Wiley&Son,1980)およびUhlman et al.,Chemical Reviews 90:543-584,1990で考察されている。ヌクレオチド類似体はまた、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、ホスホラニリデート、ホスホルアミデート結合等を含む修飾ホスホジエステル結合を含み得る。
【0091】
色素は、例えばリンカーを介して、ヌクレオチド塩基上の任意の位置に結合させることができる。特別な実施形態では、Watson-Crick塩基対形成は、得られた類似体に対して依然として実施することができる。特定の核酸塩基標識部位としては、ピリミジン塩基のC5位置または7-デアザプリン塩基のC7位置が挙げられる。上記のように、リンカー基を使用して、色素をヌクレオシドまたはヌクレオチドに共有結合させ得る。
【0092】
特別な実施形態では、標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、酵素的に組み込まれ、酵素的に伸長可能であり得る。したがって、リンカー部分は、化合物が核酸複製酵素によるヌクレオチドの全体的な結合および認識を著しく妨害しないように、ヌクレオチドを化合物に接続するのに十分な長さであり得る。したがって、リンカーはスペーサーユニットを含むこともできる。スペーサーは、例えば、切断部位または標識からヌクレオチド塩基を離す。
【0093】
本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、以下の式を有してもよい:
【化31】
式中、Dyeは、色素化合物であり;Bは、例えば、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、グアニンといった、核酸塩基であり;Lは、存在しても存在しなくてもよい任意のリンカー基であり;R’は、H、一リン酸、二リン酸、三リン酸、チオリン酸、リン酸エステル類似体、反応性リン含有基に結合した-O-、またはブロッキング基によって保護された-O-であり得;R’’は、H、OH、ホスホルアミダイト、または3’-OHブロッキング基であり、R’’’は、HまたはOHである。R’’がホスホルアミダイトである場合、R’は、酸で切断可能なヒドロキシル保護基であり、自動合成条件下でのその後のモノマーカップリングを可能にする。
【0094】
特別な実施形態では、ブロッキング基は、色素化合物とは別個であり、独立しており、すなわち、それに結合していない。あるいは、色素は、3’-OHブロッキング基の全部または一部を含み得る。したがって、R’’は、色素化合物を含んでもよく含まなくてもよい3’-OHブロッキング基であり得る。
【0095】
さらに別の代替の実施形態では、ペントース糖の3’炭素上にブロッキング基はなく、例えば、塩基に結合した色素(または色素およびリンカー構築物)は、さらなるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズまたは構造であり得る。したがって、ブロックは、色素が糖の3’位置に結合しているかどうかに関係なく、立体障害が原因である場合もあり得、サイズ、電荷、および構造の組み合わせが原因である場合もあり得る。
【0096】
さらに別の代替の実施形態では、ブロッキング基は、ペントース糖の2’または4’炭素上に存在し、さらなるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズまたは構造であり得る。
【0097】
ブロッキング基を使用すると、修飾ヌクレオチドが組み込まれたときに伸長を停止するといったことにより、重合を制御することが可能になる。ブロッキング効果が可逆的である場合、例えば、化学的条件の変更または化学的ブロックの除去による非限定的な例として、伸長を特定の時点で停止し、その後継続させることができる。
【0098】
別の特別な実施形態では、3’-OHブロッキング基は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2004/018497号および国際公開第2014/139569号に開示された部分を含むであろう。例えば、ブロッキング基は、アジドメチル(-CH)または置換アジドメチル(例、-CH(CHF)NまたはCH(CHF)N)、またはアリルであり得る。
【0099】
特別な実施形態では、リンカー(色素とヌクレオチドの間)およびブロッキング基は両方とも存在し、かつ別個の部分である。特別な実施形態では、リンカーおよびブロッキング基は両方とも、実質的に同様の条件下で切断可能である。したがって、色素化合物とブロッキング基の両方を除去するために必要な処理は1回だけであるため、脱保護および非ブロック化プロセスはより効率的であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、リンカーおよびブロッキング基は、同様の条件下で切断可能である必要はなく、代わりに、別個の条件下で個別に切断可能である。
【0100】
本開示はまた、色素化合物を組み込んだポリヌクレオチドを包含する。そのようなポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合で結合されたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから各々構成されるDNAまたはRNAであってもよい。ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチド、本明細書に記載の標識化ヌクレオチド以外の非天然に存在する(または修飾)ヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせを、本明細書に記載の少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば、色素化合物で標識)と組み合わせて含んでもよい。本開示によるポリヌクレオチドはまた、非天然骨格結合および/または非ヌクレオチド化学修飾を含んでもよい。リボヌクレオチドおよび少なくとも1つの標識化ヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチドの混合物からなるキメラ構造もまた企図される。
【0101】
本明細書に記載される非限定的な例示的な標識化ヌクレオチドとしては、以下が挙げられる:
【化32】


式中、Lは、リンカーを表し、Rは、上記の糖残基を表す。
【0102】
いくつかの実施形態では、非限定的な例示的な蛍光色素コンジュゲートは、下記に示される:
【化33】

【0103】
(キット)
本開示はまた、修飾ヌクレオシドおよび/または色素で標識されたヌクレオチドを含むキットを提供する。そのようなキットは、概して、少なくとも1つのさらなる成分と共に、本明細書に記載の色素で標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含むであろう。さらなる構成要素は、本明細書に記載の方法または以下の実施例のセクションに記載の方法で特定される1以上の構成要素であってもよい。本開示のキットに組み合わせることができる構成要素のいくつかの非限定的な例を以下に記載する。
【0104】
特別な実施形態では、キットは、修飾または非修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドとともに、本明細書に記載の色素で標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含むことができる。例えば、本開示による色素で標識された修飾ヌクレオチドは、非標識または天然ヌクレオチドと組み合わせて、および/または蛍光標識化ヌクレオチドまたはそれらの任意の組合せと組み合わせて供給され得る。したがって、キットは、本開示に従って色素で標識された修飾ヌクレオチド、および他の、例えば、先行技術の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドの組合せは、別個の個々の成分(例、容器またはチューブごとに1つのヌクレオチドタイプ)として、またはヌクレオチド混合物(例、同じ容器またはチューブ内で混合された2つ以上のヌクレオチド)として提供され得る。
【0105】
キットが、色素化合物で標識された複数、とりわけ2つ、または3つ、またはより特別には4つの修飾ヌクレオチドを含む場合、異なるヌクレオチドは、異なる色素化合物で標識されてもよく、あるいは1つは、色素化合物なしの、暗黒であってもよい。異なるヌクレオチドが異なる色素化合物で標識されている場合、色素化合物がスペクトル的に区別可能な蛍光色素であることがキットの特徴である。本明細書で使用される場合、用語「スペクトル的に区別可能な蛍光色素」は、2つ以上のそのような色素が1つのサンプルに存在する場合に、蛍光検出装置(例えば、市販のキャピラリーベースのDNAシーケンシングプラットフォーム)によって識別できる波長で蛍光エネルギーを放出する蛍光色素を指す。蛍光色素化合物で標識された2つの修飾ヌクレオチドがキットの形で提供される場合、スペクトル的に区別可能な蛍光色素が、例えば同じレーザーによって、同じ波長で励起され得ることが、いくつかの実施形態の特徴である。蛍光色素化合物で標識された4つの修飾ヌクレオチドがキットの形で提供される場合、スペクトル的に区別可能な蛍光色素の2つが両方ともある波長で励起され、他の2つのスペクトル的に区別可能な色素が両方とも別の波長で励起されることが、いくつかの実施形態の特徴である。特定の励起波長は、488nmおよび532nmである。
【0106】
一実施形態では、キットは、本開示の化合物で標識された修飾ヌクレオチドおよび第2の色素で標識された第2の修飾ヌクレオチドを含むものであって、色素が、少なくとも10nm、特に20nmから50nmの極大吸光度の差を有する。より具体的には、2つの色素化合物は、15~40nmのストークスシフトを有し、「ストークスシフト」は、ピーク吸収波長とピーク発光波長との間の距離である。
【0107】
さらなる実施形態では、キットは、蛍光色素で標識された2つの他の修飾ヌクレオチドをさらに含むことができ、色素が、532nmで同じレーザーによって励起される。色素は、少なくとも10nm、とりわけ20nm~50nmの極大吸光度の差を有し得る。より特別には、2つの色素化合物は、20~40nmの間のストークスシフトを有し得る。本開示の色素とスペクトル的に区別可能であり、上記の基準を満たす特定の色素は、米国特許第5,268,486号(例えば、Cy3)もしくは国際公開第0226891号(Alexa 532;Molecular Probes A20106)に記載されるようなポリメチン類似体、または米国特許第6,924,372号に開示される非対称ポリメチンであり、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。代替色素としては、ローダミン類似体、例えば、テトラメチルローダミンおよびその類似体が挙げられる。
【0108】
代替の実施形態では、本開示のキットは、同じ塩基が2つの異なる化合物で標識されているヌクレオチドを含んでもよい。第1のヌクレオチドは、本開示の化合物で標識してもよい。第2のヌクレオチドは、スペクトル的に異なる化合物、例えば600nm未満で吸収する「緑」の色素で標識してもよい。第3のヌクレオチドは、本開示の化合物とスペクトル的に異なる化合物との混合物として標識してもよく、第4のヌクレオチドは、「暗」であり標識を含まなくてもよい。したがって、簡単に言えば、ヌクレオチド1-4は、「青」、「緑」、「青/緑」、および暗と標識してもよい。機器をさらに簡素化するために、4つのヌクレオチドを単一のレーザーで励起された2つの色素で標識することができ、したがって、ヌクレオチド1-4の標識は、「青1」、「青2」、「青1/青2」、および暗であってもよい。
【0109】
ヌクレオチドは、本開示の2つの色素を含んでもよい。キットは、本開示の色素で標識された2つ以上のヌクレオチドを含んでもよい。キットは、520nm~560nmの領域で吸収する色素でヌクレオチドが標識されている別のヌクレオチドを含んでもよい。キットは、非標識化ヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0110】
キットは、異なる色素化合物で標識された異なるヌクレオチドを有する構成に関して本明細書で例示されるが、キットは、同じ色素化合物を有する2、3、4またはそれ以上の異なるヌクレオチドを含み得ることが理解されるであろう。
【0111】
特別な実施形態では、キットは、修飾ヌクレオチドのポリヌクレオチドへの取込みを触媒することができるポリメラーゼ酵素を含んでもよい。そのようなキットに含まれる他の構成要素としては、緩衝液等が挙げられ得る。本開示に従って色素で標識された修飾ヌクレオチド、および異なるヌクレオチドの混合物を含む他の任意のヌクレオチド成分は、使用前に希釈される濃縮形態でキットに提供されてもよい。そのような実施形態では、適切な希釈緩衝液も含まれてもよい。この場合も、本明細書に記載の方法で特定された1以上の構成要素を、本開示のキットに含めてもよい。
【0112】
(シーケンシングの方法)
本開示による色素化合物を含む修飾ヌクレオチド(またはヌクレオシド)は、それ自体で、またはより大きな分子構造またはコンジュゲートに組み込まれているかもしくは関連しているかにかかわらず、ヌクレオチドまたはヌクレオシドに結合した蛍光標識の検出を含む方法等の任意の分析方法で使用してもよい。この文脈において、用語「ポリヌクレオチドに組み込まれる」は、5’リン酸がホスホジエステル結合で第2の(修飾または非修飾)ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基に結合し、それ自体がより長いポリヌクレオチド鎖の一部を形成し得ることを意味し得る。本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの3’末端は、ホスホジエステル結合において、さらなる(修飾または非修飾)ヌクレオチドの5’リン酸に結合されていてもされなくてもよい。したがって、1つの非限定的な実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチド中に組み込まれた修飾ヌクレオチドを検出する方法を提供し、以下を含む:(a)本開示の少なくとも1つの修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチド中に組み込むこと、および(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した色素化合物からの蛍光シグナルを検出することによってポリヌクレオチドに組み込まれた修飾ヌクレオチドを検出すること。
【0113】
この方法は、以下を含み得る:本開示による1つ以上の修飾ヌクレオチドが、ポリヌクレオチドに組み込まれる、合成ステップ(a)および、ポリヌクレオチドに組み込まれる1つ以上の修飾ヌクレオチドが、それらの蛍光を検出または定量的に測定することによって検出される、検出ステップ(b)。
【0114】
本出願のいくつかの実施形態は、以下を含むシーケンシングの方法に向けられる:(a)本明細書に記載の少なくとも1つの標識化ヌクレオチドをポリヌクレオチドに組み込こと、および(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した新規な蛍光色素からの蛍光シグナルを検出することによってポリヌクレオチドに組み込まれた標識化ヌクレオチドを検出すること。
【0115】
一実施形態では、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、ポリメラーゼ酵素の作用によって合成段階でポリヌクレオチドに組み込まれる。しかしながら、例えば、化学的オリゴヌクレオチド合成または標識オリゴヌクレオチドの非標識オリゴヌクレオチドへのライゲーション等の、修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに結合する他の方法を使用することができる。したがって、用語「組み込んでいる(incorporating)」は、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関して使用される場合、化学的方法ならびに酵素的方法によるポリヌクレオチド合成を包含することができる。
【0116】
特異的な実施形態では、合成ステップは、実行され、また、テンプレートポリヌクレオチド鎖を、本開示の蛍光標識された修飾ヌクレオチドを含む反応混合物とインキュベートすることを任意で含み得る。テンプレートポリヌクレオチド鎖にアニールされたポリヌクレオチド鎖上の遊離の3’ヒドロキシル基と修飾ヌクレオチド上の5’リン酸基との間のホスホジエステル結合の形成を可能にする条件下で、ポリメラーゼを提供することもできる。したがって、合成ステップは、テンプレート鎖へのヌクレオチドの相補的塩基対形成によって指示されるようなポリヌクレオチド鎖の形成を含み得る。
【0117】
方法のすべての実施形態では、検出ステップは、標識化ヌクレオチドが組み込まれるポリヌクレオチド鎖がテンプレート鎖にアニールされている間、または2つの鎖が分離される変性ステップの後に実行されてもよい。さらなるステップ、例えば、化学的または酵素的反応ステップまたは精製ステップが、合成ステップと検出ステップとの間に含まれてもよい。とりわけ、標識化ヌクレオチドを組み込んでいる標的鎖は、単離または精製され、次いでさらに処理されるか、またはその後の分析で使用されてもよい。例として、合成工程において本明細書に記載されるように修飾ヌクレオチドで標識された標的ポリヌクレオチドは、引き続き、標識されたプローブまたはプライマーとして使用されてもよい。他の実施形態では、本明細書に記載の合成ステップの生成物は、さらなる反応ステップの対象となってもよく、そして必要に応じて、これらの後続のステップの生成物は、精製または単離されてもよい。
【0118】
合成ステップに適した条件は、標準的な分子生物学の手法に精通した者には周知である。一実施形態では、合成ステップは、適切なポリメラーゼ酵素の存在下でテンプレート鎖に相補的な伸長標的鎖を形成するために、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドを含むヌクレオチド前駆体を使用する標準的なプライマー伸長反応に類似してもよい。他の実施形態では、合成ステップ自体が増幅反応の一部を形成し、標的およびテンプレートポリヌクレオチド鎖のコピーに由来するアニールされた相補鎖からなる標識された二本鎖増幅産物を生成してもよい。他の例示的な合成ステップとしては、ニックトランスレーション、鎖置換重合、ランダムプライミングDNA標識等が挙げられる。合成ステップに特に有用なポリメラーゼ酵素は、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの取り込みを触媒することができるものである。種々の天然または修飾されたポリメラーゼを使用することができる。例として、熱安定性ポリメラーゼは、熱サイクル条件を使用して実施される合成反応に使用することができるが、熱安定性ポリメラーゼは、等温プライマー伸長反応には望ましくはなり得ない。本開示に従って修飾ヌクレオチドを組み込むことができる適切な熱安定性ポリメラーゼとしては、国際公開第2005/024010号または国際公開第06120433号に記載されているものが挙げられ、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。37℃といった低温で行われる合成反応では、ポリメラーゼ酵素は必ずしも熱安定性ポリメラーゼである必要はなく、それゆえ、ポリメラーゼの選択は、反応温度、pH、鎖置換活性等の多くの要因に依存するであろう。
【0119】
特定の非限定的な実施形態では、本開示は、核酸シーケンシング、再シーケンシング、全ゲノムシーケンシング、一塩基多型スコアリング、ポリヌクレオチド中に組み込まれる場合に本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドの検出を含む他の任意の用途の方法を包含する。蛍光色素を含む修飾ヌクレオチドで標識されたポリヌクレオチドの使用に利益をもたらす他の種々の用途のいずれも、本明細書に記載の色素を有する修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを使用することができる。
【0120】
特別な実施形態では、本開示は、合成によるポリヌクレオチドシーケンシング反応における本開示による色素化合物を含む修飾ヌクレオチドの使用を提供する。合成によるシーケンシングは、一般に、ポリメラーゼまたはリガーゼを使用して、5’から3’方向に成長するポリヌクレオチド鎖に1以上のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを順次付加して、テンプレート核酸に相補的な伸長ポリヌクレオチド鎖を形成してシーケンシングすることを含む。追加されたヌクレオチドの1つまたは複数に存在する塩基の同一性は、検出または「イメージング」ステップにて決定することができる。追加された塩基の同一性は、各ヌクレオチド取り込みステップの後に決定してもよい。次いで、テンプレートの配列は、従来のWatson-Crick塩基対規則を使用して推測してもよい。一塩基の同一性を決定するために本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドの使用は、例えば、一塩基多型のスコアリングにおいて有用であってもよく、そのような一塩基伸長反応は、本開示の範囲内である。
【0121】
本開示の一実施形態では、
テンプレートポリヌクレオチドの配列は、組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を通じてシーケンシングされるテンプレートポリヌクレオチドに相補的な新生鎖への1以上のヌクレオチドの取込みを検出することにより決定される。テンプレートポリヌクレオチドのシーケンシングは、適切なプライマーでプライミングすることができ(またはヘアピンの一部としてプライマーを含むヘアピンコンストラクトとして調製することができ)、
発生期の鎖は、ポリメラーゼ触媒反応においてプライマーの3’末端にヌクレオチドを付加することによって段階的に伸長される。
【0122】
特別な実施形態では、異なるヌクレオチド三リン酸(A、T、GおよびC)の各々は、固有のフルオロフォアで標識されてもよく、そしてまた、制御されない重合を防ぐために3’位置にブロッキング基を含む。あるいは、4つのヌクレオチドの1つが非標識(暗)であってもよい。ポリメラーゼ酵素は、テンプレートポリヌクレオチドに相補的な新生鎖にヌクレオチドを組み込み、ブロッキング基はヌクレオチドのさらなる取込みを防ぐ。組み込まれなかったヌクレオチドは洗い流すことができ、組み込まれた各ヌクレオチドからの蛍光シグナルは、レーザー励起および適切な発光フィルターを使用する電荷結合素子等といった、適切な手段によって光学的に「読み取る」ことができる。次いで、3’-ブロッキング基および蛍光色素化合物を除去(脱保護)して(同時にまたは順次)、ヌクレオチドをさらに組み込むために新生鎖を露出させることができる。典型的には、組み込まれたヌクレオチドの同一性は、各組み込みステップの後に決定されるが、これは厳密には必須ではない。同様に、米国特許第5,302,509号(参照により本明細書に組み込まれる)は、固体支持体上に固定化されたポリヌクレオチドをシーケンシングする方法を開示する。
【0123】
上に例示したように、この方法は、DNAポリメラーゼの存在下で、固定化されたポリヌクレオチドに相補的な成長鎖への蛍光標識された3’ブロックヌクレオチドA、G、C、およびTの組み込みを利用する。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに相補的な塩基を組み込むが、3’ブロッキング基によってそれ以上の付加が妨げられる。次いで、組み込まれたヌクレオチドの標識を決定し、化学的切断によってブロッキング基を除去して、さらなる重合を起こさせることができる。合成によるシーケンシング反応においてシーケンシングされる核酸テンプレートは、シーケンシングすることが望まれる任意のポリヌクレオチドであってもよい。シーケンシング反応のための核酸テンプレートは、典型的には、シーケンシング反応においてさらなるヌクレオチドを付加するためのプライマーまたは開始点として機能する遊離の3’ヒドロキシル基を有する二本鎖領域を含むであろう。シーケンシングされるテンプレートの領域は、相補鎖上のこの遊離の3’ヒドロキシル基を突出するであろう。シーケンシングされるテンプレートの突出領域は一本鎖であってもよいが、シーケンシングされるテンプレート鎖に相補的な鎖に「ニックが存在する」ことを条件として、二本鎖であり、シーケンシング反応の開始のための遊離の3’OH基を提供する。そのような実施形態では、シーケンシングは、鎖置換によって進行し得る。特別な実施形態では、遊離の3’ヒドロキシル基を有するプライマーは、シーケンシングされるテンプレートの一本鎖領域にハイブリダイズする別個の成分(例、短いオリゴヌクレオチド)として添加されてもよい。あるいは、シーケンシングされるプライマーおよびテンプレート鎖は各々、例えばヘアピンループ構造等の分子内二重鎖を形成することが可能な部分的に自己相補的な核酸鎖の一部を形成してもよい。ヘアピンポリヌクレオチドおよびそれらを固体支持体に結合させ得る方法は、PCT公開番号国際公開第0157248号および国際公開第2005/047301号に開示されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。ヌクレオチドは、成長するプライマーに連続的に添加することができ、その結果、5’から3’方向にポリヌクレオチド鎖が合成される。追加された塩基の性質は、とりわけ、必ずしもではないが、各ヌクレオチド追加後に決定され得、したがって、核酸テンプレートの配列情報を提供する。したがって、ヌクレオチドは、ヌクレオチドの5’リン酸基とのホスホジエステル結合の形成を介して、ヌクレオチドを核酸鎖の遊離3’ヒドロキシル基に結合することによって、核酸鎖(またはポリヌクレオチド)に組み込まれる。
【0124】
シーケンシングされる核酸テンプレートは、DNAまたはRNA、あるいはデオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドからなるハイブリッド分子でさえあってもよい。核酸テンプレートは、これらがシーケンシング反応におけるテンプレートのコピーを妨げないという条件で、天然に存在するおよび/または天然に存在しないヌクレオチドおよび天然または非天然の骨格結合を含んでもよい。
【0125】
特別な実施形態では、シーケンシングされる核酸テンプレートは、当該分野で公知の任意の適切な結合方法を介して、例えば共有結合を介して、固体支持体に結合されてもよい。特別な実施形態では、テンプレートポリヌクレオチドは、固体支持体(例、シリカベースの支持体)に直接結合されてもよい。しかしながら、本開示の他の実施形態では、固体支持体の表面は、テンプレートポリヌクレオチドの直接共有結合を可能にするか、またはそれ自体が固体支持体と非共有結合し得るヒドロゲルまたは高分子電解質多層を介してテンプレートポリヌクレオチドを固定化するように何らかの方法で改変され得る。
【0126】
ポリヌクレオチドがシリカベースの支持体に直接結合しているアレイは、例えば、国際公開第00006770号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているアレイであり、ポリヌクレオチドは、ガラス上のペンダントエポキシド基と内部アミノ基との間の反応によってガラス支持体上に固定化される。ポリヌクレオチドについて。さらに、ポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2005/047301号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、硫黄ベースの求核試薬と固体支持体との反応によって固体支持体に結合させることができる。固体支持テンプレートポリヌクレオチドの一層さらなる別の例は、例えば、国際公開第00/31148号、国際公開第01/01143号、国際公開第02/12566号、国際公開第03/014392号、米国特許第6,465,178号および国際公開第00/53812号(これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、テンプレートポリヌクレオチドがシリカベースまたは他の固体支持体上に支持されたヒドロゲルに結合している場合である。
【0127】
テンプレートポリヌクレオチドを固定化することができる特定の表面は、ポリアクリルアミドヒドロゲルである。ポリアクリルアミドヒドロゲルは、上記で引用された参考文献および参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2005/065814号に記載されている。使用し得る特定のヒドロゲルとしては、国際公開第2005/065814号および米国公開番号第2014/0079923号に記載のものが挙げられる。一実施形態では、ヒドロゲルは、PAZAM(ポリ(N-(5-アジドアセタミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド))である。
【0128】
DNAテンプレート分子は、例えば、米国特許第5,419,096号に記載されているように、ビーズまたは微粒子に結合させることができる。米国特許第6,172,218号(参照により本明細書に組み込まれる)。ビーズまたは微粒子への結合は、シーケンス用途に有用であり得る。ビーズライブラリーは、各ビーズに異なるDNA配列が含まれている場合に調製することができる。それらを作成するための例示的なライブラリーおよび方法は、Nature,437,376-380(2005);Science,309,5741,1728-1732(2005)に記載され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のヌクレオチドを使用するそのようなビーズのアレイのシーケンシングは、本開示の範囲内である。
【0129】
シーケンシングされるテンプレートは、固体支持体上の「アレイ」の一部を形成してもよく、その場合、アレイは任意の便利な形態をとってもよい。したがって、本開示の方法は、単一分子アレイ、クラスター化アレイ、およびビーズアレイを含む、すべてのタイプの高密度アレイに適用可能である。本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、固体支持体への核酸分子の固定化によって形成されたものを含むがこれらに限定されない、本質的に任意のタイプのアレイ上のテンプレートをシーケンシングするために使用してもよい。
【0130】
しかしながら、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、クラスター化されたアレイのシーケンシングの文脈において特に有利である。クラスター化されたアレイでは、アレイ上の別個の領域(しばしば部位または特徴と呼ばれる)は、多重のポリヌクレオチドテンプレート分子を含む。概して、多重のポリヌクレオチド分子は、光学的手段によって個別に解像可能ではなく、代わりにアンサンブルとして検出される。アレイがどのように形成されるかに応じて、アレイ上の各部位は、1つの個々のポリヌクレオチド分子の多重のコピー(例、部位が特定の一本鎖または二本鎖核酸種に対して均質である)、または少数の異なるポリヌクレオチド分子の多重のコピー(例、2つの異なる核酸種の複数のコピー)を含んでもよい。核酸分子のクラスター化されたアレイは、当技術分野で一般に知られている技術を使用して生成してもよい。例として、各々が本明細書に組み込まれる国際公開第98/44151号および国際公開第00/18957号には、固定化された核酸分子のクラスターまたは「コロニー」から構成されるアレイを形成するために、テンプレートおよび増幅産物の両方が固体支持体上に固定化されたままである核酸の増幅方法が記載される。これらの方法に従って調製されたクラスター化アレイ上に存在する核酸分子は、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを使用してシーケンシングするための適切なテンプレートである。
【0131】
本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドはまた、単一分子アレイ上のテンプレートのシーケンシングにおいて有用である。本明細書で使用される用語「単一分子アレイ」または「SMA」は、固体支持体上に分布(または配列)されたポリヌクレオチド分子の集団を指し、集団の他のすべてからの任意の個々のポリヌクレオチドの間隔は、個々のポリヌクレオチド分子を個別に分離することが可能である。したがって、固体支持体の表面に固定化された標的核酸分子は、いくつかの実施形態では、光学的手段によって解像することができる可能性がある。これは、各々が1つのポリヌクレオチドを表す1以上の別個の信号が、使用される特定のイメージングデバイスの解像可能な領域内で発生することを意味する。
【0132】
アレイ上の隣接するポリヌクレオチド分子間の間隔が少なくとも100nm、より具体的には少なくとも250nm、さらにより具体的には少なくとも300nm、さらにより具体的には少なくとも350nmである単一分子検出を達成し得る。したがって、各分子は、単一分子の蛍光点として個別に解像および検出可能であり、前記単一分子の蛍光点からの蛍光もまた、単一ステップの光退色を示す。
【0133】
用語「個別に解像される」および「個別の解像」は、視覚化されたときに、アレイ上の1つの分子をその隣接する分子から区別することが可能であることを指定するために本明細書で使用される。アレイ上の個々の分子間の分離は、部分的には、個々の分子を解像するために使用される特定の技術によって決定される。単一分子アレイの一般的な特徴は、公開された出願国際公開第00/06770号および国際公開第01/57248号を参照することによって理解され、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の修飾ヌクレオチドの1つの使用は、合成によるシーケンシング反応であるが、修飾ヌクレオチドの有用性は、そのような方法に限定されない。実際、ヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を必要とする任意のシーケンシング方法論において有利に使用し得る。
【0134】
特に、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、自動蛍光シーケンシングプロトコル、とりわけSangerおよび同僚の連鎖停止シーケンシング法に基づく蛍光色素ターミネーターサイクルシーケンシングにおいて使用してもよい。このような方法は、一般に酵素とサイクルシーケンシングを使用して、蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドをプライマー伸長シーケンシング反応に組み込む。いわゆるSangerシーケンシング法および関連するプロトコル(Sanger型)は、標識されたジデオキシヌクレオチドによるランダム化された連鎖停止を利用する。
【0135】
したがって、本開示はまた、3’および2’位置の両方にヒドロキシル基を欠くジデオキシヌクレオチドである色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを含み、そのような修飾ジデオキシヌクレオチドは、Sanger型シーケンシング法等での使用に適している。
【0136】
3’ブロッキング基を組み込んだ本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、認識されるであろうように、サンガー法および関連するプロトコルにおいても有用である可能性があり、なぜなら修飾ジデオキシヌクレオチドを使用することによって達成される同じ効果は、3’-OHブロッキング基を有する修飾ヌクレオチドを使用することによって達成され得る:両方とも後続のヌクレオチドの取り込みを防ぐからである。本開示による、かつ3’ブロッキング基を有するヌクレオチドがSanger型シーケンシング法で使用される場合、ヌクレオチドに結合した色素化合物または検出可能な標識は、切断可能なリンカーを介して接続される必要がないことが理解されよう、なぜなら、各例において、本開示の標識化ヌクレオチドが組み込まれる場合;その後ヌクレオチドを組み込む必要がないため、ヌクレオチドから標識を除去する必要がないからである。
【実施例
【0137】
追加の実施形態は、以下の実施例にさらに詳細に開示されており、これらは、特許請求の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0138】
〔例1:化合物I-1:7-(3-カルボキシアゼチジニル-1)-3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン〕
【化34】

3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.32g、1mmol)および3-カルボキシアゼチジン(0.2g、2mmol)を丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に加えた。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4mmol)を加えた。120℃で7時間撹拌し、室温で1時間静置した後、混合物を水(15mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.25g(63%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値396.05。実測値m/z:(+)397(M+1);(-)395(M-1)
【0139】
〔例2:化合物I-2:7-(3-カルボキシアゼチジン-1-イル)-3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン〕
【化35】

3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.56g、2mmol)および3-カルボキシアゼチジン(0.3g、3mmol)を、丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に加える。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4mmol)を加えた。125℃で9時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を水(10mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.41g(56%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値362.09。実測値m/z:(+)363(M+1)
【0140】
〔例3.化合物I-3:7-(3-カルボキシアゼチジン-1-イル)-3-(ベンズイミダゾール-2-イル)クマリン〕
【化36】
【0141】
3-(ベンズイミダゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(FC-2、0.56g、2mmol、1eq.)および3-カルボキシアゼチジン(AC-C4、0.3g、3mmol、1.5eq)を、丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に加えた。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4ミリモル)を加えた。混合物を120℃で9時間撹拌する。3-カルボキシアゼチジン(0.3g、3ミリモル)およびDIPEA(0.26g、2ミリモル)の追加部分を加えた。120℃でさらに3時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を水(10mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.26g(36%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値361.11。実測値m/z:(+)362(M+1);(-)360(M-1)
【0142】
〔例4.化合物I-4:7-(3-カルボキシアゼチジン-1-イル)-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン〕
【化37】

3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.30g、1mmol)および3-カルボキシアゼチジン(0.2g、2mmol)を、丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に加えた。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4ミリモル)を加えた。120℃で8時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を水(10mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集する。収量0.28g(75%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値378.07。実測値m/z:(+)379(M+1);(-)377(M-1)
【0143】
〔例5.化合物I-5:7-(3-カルボキシピロリジン-イル-1)-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン〕
【化38】

3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.30g、1mmol)および3-カルボキシピロリジン(0.23g、2mmol)を、丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に加えた。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4ミリモル)を加えた。120℃で6時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を水(20mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.31g(80%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値392.08。実測値m/z:(+)393(M+1);(-)391(M-1)
【0144】
〔例6.化合物I-6:7-(4-カルボキシピペリジン-1-イル)-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン〕
【化39】

3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.30g、1mmol)およびイソニペコチン酸(0.26g、2mmol)を、丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に加えた。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4ミリモル)を加えた。120℃で6時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を水(20mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.34g(83%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値406.10実測値m/z:(+)407(M+1);(-)405(M-1)
【0145】
〔例7.化合物I-7:7-(3-カルボキシアゼチジン-1-イル)-3-(6-スルホ-ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン〕
【化40】

7-(3-カルボキシアゼチジン-1-イル)-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン(0.38g、1ミリモル)を約-5℃で20%発煙硫酸(0.5mL)に加えた。混合物を冷却しながら数時間、次いで室温で3時間撹拌した。80℃で1時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を無水ジエチルエーテル(10mL)で希釈し、一晩撹拌した。結果として得られた沈殿物を吸引濾過により収集する。生成物をHPLCにより精製した。収量0.1g(22%)。 生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値458.02。実測値m/z:(+)459(M+1)
【0146】
〔例8.化合物I-8:7-(3-カルボキシアゼチジン-1-イル)-3-(6-スルファミド-ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン〕
【化41】

3-(6-スルファミド-ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.36g、1mmol)および3-カルボキシアゼチジン(0.3g、3mmol)を、丸底フラスコ中で無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に添加する。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4ミリモル)を加えた。125℃で9時間撹拌し、室温で1時間静置した後、反応混合物を水(10mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.26g(60%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値441.06。実測値m/z:(+)442(M+1)
【0147】
〔例9.蛍光強度の比較〕
例示的色素溶液の蛍光強度(極大励起波長450nmで)を、同じスペクトル領域の標準色素と比較した。結果を表1に示し、蛍光ベースの分析用途のための例示的色素の顕著な利点を示す。
【表1】
【0148】
〔例10.完全に機能的なヌクレオチドコンジュゲートの合成のための一般的手順〕
本明細書に開示されるクマリン蛍光色素を、適切なアミノ置換アデニン(A)およびシトシン(C)ヌクレオチド誘導体A-LN3-NHまたはC-LN3-NHとカップリングした:
【化42】

【0149】
以下のアデニン例示的スキームに従って、適切な試薬で色素のカルボキシル基を活性化した後:
【化43】

【0150】
アデニンカップリングのための一般的な製品を、下記に示す:
【化44】


ffA-LN3-Dyeは、LN3リンカーを持ち、本明細書に開示されるクマリン色素で標識された完全に官能化されたAヌクレオチドを指す。各構造のR基は、コンジュゲーション後のクマリン色素部分を指す。
【0151】
色素(10μmol)を5mL丸底フラスコの中へ入れて乾燥させ、無水ジメチルホルムアミド(DMF、1mL)に溶解してから、溶媒をin vacuoで蒸留除去する。この手順を2回繰り返す。乾燥した色素を無水N,N-ジメチルアセトアミド(DMA、0.2mL)に室温で溶解する。N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、1.5eq.、15μmol、4.5mg)を色素溶液に加え、次いでDIPEA(3eq.、30μmol、3.8mg、5.2μL)をマイクロピペットを介してこの溶液に添加する。反応フラスコを窒素ガス下で密閉する。反応の進行を、TLC(溶離液アセトニトリル-水1:9)およびHPLCによりモニターする。一方、適切なアミノ置換ヌクレオチド誘導体(A-LN3-NH、20mM、1.5eq、15μmol、0.75mL)の溶液をin vacuoで濃縮し、水(20μL)に再溶解する。DMA中の活性化色素の溶液を、N-LN3-NHの溶液が入っているフラスコに移す。より多くのDIPEA(3eq、30μmol、3.8mg、5.2μL)をトリエチルアミン(1μL)と一緒に加える。カップリングの進行を、TLC、HPLC、LCMSにより1時間ごとにモニターする。反応が完了したら、トリエチルアミン重炭酸緩衝液(TEAB、0.05M~3mL)をピペットを介して反応混合物に加える。完全に官能化されたヌクレオチドの最初の精製を、クエンチされた反応混合物をDEAE-Sephadex(登録商標)カラムに通して、残りの未反応色素の大部分を除去することにより実施する。例えば、Sephadexを、空の25g Biotageカートリッジ、溶媒系TEAB/MeCNに注ぐ。セファデックスカラムからの溶液を、in vacuoで濃縮する。残りの材料を、20μmナイロンフィルターでろ過する前に、最小量の水とアセトニトリルに再溶解する。ろ過した溶液を、分取HPLCで精製する。調製した化合物の組成を、LCMSで確認する。
【0152】
シトシンカップリングの一般的な生成物は、上記と同様の手順に従って、下記に示すとおりである。
【化45】


ffC-LN3-色素は、LN3リンカーを持ち、本明細書に開示されているクマリン色素で標識された完全に官能化されたCヌクレオチドを指す。各構造のR基は、コンジュゲーション後のクマリン色素部分を指す。
【0153】
〔例11.式(I)の化合物のアミド誘導体の調製〕
本明細書に記載のいくつかの追加の実施形態は、式(I)の化合物のアミド誘導体およびそれを調製する方法に関連し、方法は、カルボン酸活性化を介して式(Ia)の化合物を式(Ia’)の化合物に変換すること:
【化46】


および式(Ia’)の化合物を式(Am)の第一級または第二級アミンと反応させて、式(Ib)のアミド誘導体に到達することを含む:
【化47】


式中、変数X、R、R、R、R、R、およびnは、本明細書中で定義され;R’は、カルボキシル活性化剤(N-ヒドロキシスクシンイミド、ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノール、HOBt、BOP、PyBOP、DCC等といったもの)の残留部分であり;RおよびRの各々は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、3-10員ヘテロシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルである。
【0154】
〔式(Ib)の化合物を調製するための一般的な手順〕
式(Ia)の適切な色素(0.001モル)を適切な無水有機溶媒(DMF、1.5mL)に溶解する。この溶液に、TSTU、BOP、PyBOP等のカルボキシル活性化試薬を添加する。この反応混合物を室温で約20分間撹拌し、次に適切なアミン誘導体を加える。反応混合物を一晩撹拌し、濾過し、過剰の活性化試薬を水中の0.1MTEAB溶液でクエンチする。溶媒を真空で蒸発させ、残留物をTEAB溶液に再溶解し、HPLCで精製する。
【0155】
〔例12.2チャネルシーケンス用途〕
シーケンシング用途で本明細書に記載されている新規な色素で標識されたAヌクレオチドの効率は、2チャネル検出法で実証された。本明細書に記載の2チャネル法に関して、核酸は、米国特許出願第2013/0079232号に記載されている方法およびシステムを利用してシーケンシングすることができ、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
2チャネル検出において、核酸は、第1のチャネルで検出される第1のヌクレオチド型、第2のチャネルで検出される第2のヌクレオチド型、両方で検出される第3のヌクレオチド型、第1および第2のチャネル、ならびにどちらのチャネルでも検出されないか、または最小限しか検出されない標識がない4番目のヌクレオチド型を提供することによってシーケンシングすることができる。散布図は、実験のRTA2.0.93分析によって生成した。図1図3に示される散布図は、26回のサイクルランの各々のサイクル5でのものであった。
【0157】
図1は、以下:A-I-4(0.5μM)、A-NR550S0(1.5μM)、C-NR440(2μM)、ダークG(2μM)、およびT-AF550POPOS0(2μM)をPol812と取込みバッファー中に含む完全官能化ヌクレオチド(ffN)混合物の散布図を示す。青の露出(チャネル1)500ms、緑の露出(チャネル2)1000ms;Scanning mix中でスキャンされた)。
【0158】
図2は、以下:A-I-5(1μM)、A-NR550S0(1μM)、C-NR440(2μM)、ダークG(2μM)およびT-AF550POPOS0(2μM)をPol812と取込みバッファー中に含む完全官能化ヌクレオチド(ffN)混合物の散布図を示す。青の露出(チャネル1)500ms、緑の露出(チャネル2)1000ms;Scanning mix中でスキャンされた。
【0159】
図3は、以下:A-I-6(1μM)、A-NR550S0(1μM)、C-NR440(2μM)、ダークG(2μM)およびT-AF550POPOS0(2μM)をPol812と取込みバッファー中に含む完全官能化ヌクレオチド(ffN)混合物の散布図を示す。青の露出(チャネル1)500ms、緑の露出(チャネル2)1000ms;Scanning mix中でスキャンされた。
【0160】
図1~3の各々において、「G」ヌクレオチドは非標識化であり、左下の雲(「ダークG」)として示される。本明細書に記載の新規な色素によって標識された「A」ヌクレオチドと緑色色素(NR550S0)との混合物からの信号は、それぞれ図1~3に右上の雲として示される。色素AF550POPOS0で標識された「T」ヌクレオチド由来のシグナルは左上の雲で示され、色素NR440で標識された「C」ヌクレオチド由来のシグナルは右下の雲で示される。X軸は、一方の(青)チャネルの信号強度を示し、Y軸は、もう一方の(緑)チャネルの信号強度を示す。NR440、AF550POPOS0、およびNR550S0の化学構造は、それぞれPCT公開番号国際公開第2018060482A1号、国際公開第2017051201A1号、および国際公開第2014135221A1号に開示され、これらはすべて参照により組み込まれる。
【0161】
図1~3は各々、本明細書に記載の新規な色素で標識された完全に機能的なA-ヌクレオチドコンジュゲートが十分なシグナル強度および優れた雲分離を提供することを示す。
図1
図2
図3