(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】表面官能化された炭素質粒子、その製造方法及びその適用
(51)【国際特許分類】
C01B 32/00 20170101AFI20241113BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20241113BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20241113BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C01B32/00
C01B32/05
H01G11/32
H01M4/62 B
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2020573473
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2019067244
(87)【国際公開番号】W WO2020002550
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-07
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520512948
【氏名又は名称】イメルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ セリコラ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル スパール
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269553(JP,A)
【文献】特開2006-104002(JP,A)
【文献】米国特許第04929280(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102502603(CN,A)
【文献】特開昭50-151902(JP,A)
【文献】特表2011-519332(JP,A)
【文献】特開平11-349314(JP,A)
【文献】特開2001-180921(JP,A)
【文献】特表2015-525184(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00
C01B 32/05
H01G 11/32
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面酸化された炭素粒子を調製する方法であって、
a)気密シールされた反応器中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程、
を含み、
プロセスが、
i)得られた粒子のBET比表面積(BET SSA)が100m
2/g~500m
2/gとなるか;及び/又は
ii)得られた粒子のキシレン密度が1.65g/cm
3~2.1g/cm
3となるか;及び/又は
iii)得られた粒子の吸油量(OA)が70~300mL/100gとなるか;及び/又は
iv)得られた粒子の鉛取り込み量が2500ppm~40000ppmとなるか;及び/又は
v)得られた粒子が、580℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)によって5wt%の質量損失を示す
まで行われる
、方法。
【請求項2】
表面酸化された炭素粒子を調製する方法であって、
a)気密シールされた反応器中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程、
を含み、
得られた粒子が、
i)1.0μm~8.0μmのD
50値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
ii)12μm~70μmのD
90値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
iii)0.4μm~1.5μmのD
10値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
iv)0.15より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)0.25より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
を特徴とする
、方法。
【請求項3】
表面酸化された炭素粒子を調製する方法であって、
a)気密シールされた反応器中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程、
を含み、
非黒鉛の炭素質材料が、工程a)において行われる機械力の適用の前に、10wt%~90wt%の黒鉛の炭素材料とともに混合される
、方法。
【請求項4】
表面酸化された炭素粒子を調製する方法であって、
a)気密シールされた反応器中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程、
を含み、
工程b)から得られた粒子が液体中で分散される
、方法。
【請求項5】
i)工程a)における処理時間が10h~60hであるか;及び/又は
ii)工程a)による生成物が、工程b)を行う前に、気密シールされた反応器中で、少なくとも15minの間保持されるか;及び/又は
iii)官能化工程b)が、20vol%より少ない酸素及び/又は酸素含有気体を含む雰囲気に工程a)から得られた粒子を暴露することを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において使用される非黒鉛の炭素質材料が、カーボンブラック、石油コークス、か焼石油コークス、ニードルコークス、コールタールベースのコークス、アンスラサイト、か焼アンスラサイト、ポリマーに由来するチャコール、バイオマス、熱分解性炭素及びそれらの混合物から選択される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
14nmより小さい結晶学的なL
c値;及び
0.6wt%より多い酸素含有量
を有する、非黒鉛である、
表面酸化された炭素質粒子。
【請求項8】
i)0.6wt%より多い酸素含有量(IGA);及び/又は
ii)5.5より小さい、得られた粒子を含む水性分散体のpH;及び/又は
iii)100m
2/g~500m
2/gのBET SSA;及び/又は
iv)1.65g/cm
3~2.1g/cm
3のキシレン密度;及び/又は
v)70~300mL/100gの吸油量(OA);及び/又は
vi)2500ppm~40000ppmの鉛取り込み量;及び/又は
vii)580℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)による5wt%の質量損失
をさらに特徴とする、請求項
7に記載の
表面酸化された炭素質粒子。
【請求項9】
i)1.0μm~8.0μmのD
50値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
ii)12μm~70μmのD
90値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
iii)0.4μm~1.5μmのD
10値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
iv)0.15より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)0.25より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
の粒子サイズ分布(PSD)をさらに特徴とする、請求項
7又は
8に記載の
表面酸化された炭素質粒子。
【請求項10】
請求項
7~
9のいずれか1項に記載の
表面酸化された炭素質粒子と、少なくとも1つの
リグノスルホネート及び/又は硫酸バリウムとを含む組成物。
【請求項11】
鉛酸電池における導電性添加剤としてか、リチウム硫黄電池においてか、触媒担体としてか、電池中の添加剤としてか、ポリマー中の添加剤としてか、ろ過助剤としてか、容量性脱イオン助剤としてか、又は電気化学二重層キャパシタにおいての、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の
表面酸化された炭素質粒子又は請求項
10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
導電性添加剤として請求項
7~
9のいずれか1項に記載の
表面酸化された炭素質粒子又は請求項
10に記載の組成物を含む、電池電極。
【請求項13】
請求項
7~
9のいずれか1項に記載の
表面酸化された炭素質粒子、若しくは請求項
10に記載の組成物によって充填されたポリマー化合物、又は請求項
7~
9のいずれか1項に記載の
表面酸化された炭素質粒子若しくは請求項
10に記載の組成物の、液体における、分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面官能化された炭素質粒子、その調製のための方法、及び例えば種々の用途における導電性添加剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性炭素粒子は充填剤として使用されて、ポリマー、セラミック、コーティング及び電気化学系の電極における導電性を強化する。例えば、炭素導電性添加剤は種々の一次及び二次電池、例えばアルカリ亜鉛/二酸化マンガン電池、亜鉛炭素電池、リチウムの一次及び充電可能電池、ニッケルカドミウム電池、鉛酸電池、及び亜鉛又は鉄などの金属を有するニッケル金属水素化物電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、金属空気電池、燃料電池並びにキャパシタ系において使用される。
【0003】
導電性添加剤は、電気化学セルの電極において適用されて、電気的な電極抵抗を減少させる。炭素質粉末材料は、それらの小さい質量及び酸性又はアルカリ性電解液に対する不活性のため、導電性添加剤としてしばしば選択される。導電性添加剤は電極の電気化学プロセスに寄与せず、このことは高エネルギー密度のセルについて、導電性添加剤の適用量が望ましくは最小化されることを意味する。使用される典型的な炭素導電添加剤は、細かい黒鉛粉末及び導電性カーボンブラック(例えばM.E.Spahr、Lithium-ion Batteries-Science and Technology、M.Yoshio、R.J.Brodd、A.Kozawaら編集、Springer、New York、2009、Chapter 5を参照せよ)である。
【0004】
鉛酸電池の負極への少量の導電性炭素の添加は、例えばハイブリッド電気自動車の使用において適用されるように、電池が高速部分充電状態(HRPSoC)モードで動作するとき、サイクル寿命の改善をもたらす(例えばK.Nakamura、M.Shiomi、K.Takahashi、M.Tsubota、Journal of Power Sources 59(1996)153、M.Shiomi、T.Funato、K.Nakamura、K.Takahashi、M.Tsubota、Journal of Power Sources 64(1997)147及びD.Pavlov、P.Nikolov、T.Rogachev、Journal of Power Sources 196(2011)5155~5167を参照せよ)。鉛酸電池が部分充電状態(PSoC)で動作するとき、硫酸鉛の不可逆形成(「硫酸化効果」)は電池サイクル寿命の有意な減少を引き起こす(例えばD.PavlovのLead-Acid Batteries-Science and Technology、Elsevier 2011、Chapter 1、pp.23~26を参照せよ)。加えて、炭素添加剤を電極構造中に挿入することによってもたらされる増大した電極表面は、ブレーキエネルギーから発生する電気が鉛酸電池に充電されるときに、要求される鉛酸電池の増大した電荷受容性をもたらすことが知られている。増大した電極表面積は、より高い電流レートで電極を充電する能力を説明するスーパーキャパシタ効果をもたらすと考えられる。従って、炭素について要求されるのは、炭素が鉛塩溶液中に浸漬されるときの、高い電気伝導性並びに高い鉛取り込み量である。鉛酸電気化学セルの第一の電気化学充電プロセスの間に、組み込まれた鉛は鉛の堆積のための核を形成する(D.Cericola、M.Spahr、Journal of Power Sources 324(2016)、41~44)。
【0005】
炭素添加剤を使用することに加えて、改造されたグリッド設計、例えば制御弁式鉛酸電池(VRLAB)における硫酸電解液に浸漬されたガラス繊維マット、及び/又は他の方法で改質された電解液組成物を使用して、従来の始動、照明、点火(SLI)鉛酸電池を改善し、それらをより低い充電状態(SOC)における動作モードのために有用なものにすることが当分野において知られている(例えばD.PavlovのLead-Acid Batteries-Science and Technology、Elsevier 2011、Chapter 7を参照)。浅い高速放電操作において、これらの進歩的な鉛酸電池において得られる電池特性は、それらをマイクロ及びマイルドハイブリッド電気自動車のための適した候補とする。
【0006】
黒鉛、膨張黒鉛、活性炭及びカーボンブラックの負極への添加は、主に硫酸化効果の減少によって、鉛酸電池のサイクル寿命の改善をもたらすことが示された。
【0007】
負極における炭素効果のメカニズムを説明するために、複数の仮説が提案されてきた。炭素の広いスペクトルの影響の調査が、文献(P.T.MoseleyのJournal of Power Sources 191(2010)134~138及びD.P.Boden、D.V.Loosemore、M.A.Spence、T.D.WojcinskiらのJournal of Power Sources、195(2010)4470~4493)に要約されている。最近では、新しい新規に組み立てられたセルの第一の充電においてされる電極形成の間の鉛めっきの間に負極に炭素-鉛骨格の形成を可能とするために、炭素が鉛に対して高い親和性を有するべきであることが示された(D.Pavlov、P.Nikolov、T.RogachevらのJournal of Power Sources 196(2011)5155~5167)。この炭素-鉛骨格は表面積を増大させ、加えて、炭素は電極においてさらなるスーパーキャパシタ効果を提供し、これらの事項の両方は増大した電荷受容性のためのあり得る説明を提供する。
【0008】
電気伝導特性に加えて、導電性添加剤はまた、電極の構造及び多孔性に効果を有する。例えば、電極の電解液浸透は、電極の表面及び多孔性によって影響を受ける場合があり、それは電極のイオン抵抗性に影響を有する(例えば、M.E.SpahrのLithium-ion Batteries-Science and Technology、M.Yoshio、R.J.Brodd、A.Kozawaら編集、Springer、New York、2009、Chapter 5を参照せよ)。
【0009】
リチウム硫黄電池の正極は、バインダー材料と混合された硫黄と、1つ又は複数の炭素構成要素とを含有する。炭素は電気伝導性を提供し、加えて、放電生成物の形成によって正極の硫黄含有量が減少するとき、セルの放電の間の電極の寸法安定性を確実にすると考えられる(例えばXiong,Shizhao;Hong,Xiaobin;Xie,Kai;Rong,LixiaらのHuagong Jinzhan(2011)、30(5)、991~996及びYao,Zhen-Dong;Wei,Wei;Wang,Jiu-Lin;Yang,Jun;Nuli,Yan-NaらのWuli Huaxue Xuebao(2011)、27(5)、1005~1016を参照せよ)。
【0010】
さらに、燃料電池のスタック又は金属空気電池に含有される空気電極を有する電気化学セルは、正極の空気電極において炭素質材料を必要とする場合がある。炭素材料は、金属又は金属酸化物の触媒のための担体として作用し、さらに寸法安定性を提供する構造を電極に提供すると考えられる。空気電極において使用するために、炭素担体は空気又は酸素に対する高い耐食性を示すことが要求され、そのような耐食性を示さないことはセル耐久性を限定する(例えばS.Sarangapani、P.Lessner、L.Swette、J. GinerらのProceedings-Electrochemical Society(1992)、92-11(Proc.Workshop Struct.Eff.Electrocatal.Oxygen Electrochem.、1992)、510-22、S.Muller、F.Holzer、H.Aral、O.HaasらのJournal of New Materials for Electrochemical Systems(1999)、2(4)、227~232及び F.Maillard、P.Simonov、E.SavinovaらのCarbon Materials for Catalysis(2009)、429~480を参照せよ)。
【0011】
上に記載されるように、天然又は合成黒鉛、膨張黒鉛、活性炭及びカーボンブラックは、全て導電性添加剤として使用されてきた。
【0012】
黒鉛は結晶性の炭素である。黒鉛の電気伝導性は、黒鉛層に平行なp軌道に共役である非局在化電子を有する6員の炭素環のスタック層からなる結晶性黒鉛構造に基づく。スタックされた平面に平行な電気伝導性は、前記平面に垂直な電気伝導性より約3桁高い。このことは、公知の、電気伝導性の異方性挙動をもたらす(A.W.HullのPhys.Rev.10(1917)661及びW.Primak、L.H.FuchsらのPhys.Rev.95(1)(1954)22)。
【0013】
例えば導電性添加剤としての黒鉛の使用は、その高い圧縮能力などの特性に起因する場合があり、セルの電極密度における改善をもたらす。炭素導電性添加剤は、電極のサイクル安定性、及び低温における充電/放電性能を有意に向上させることができることもまた説明された。
【0014】
典型的には、大きい表面積の黒鉛は、粉砕プロセスにおいて黒鉛の粒子サイズを減少させることによって得られる。粉砕の間の黒鉛生成物の酸化を回避するために、粉砕は不活性気体雰囲気中で行われる場合がある(例えばN.J.Welham、J.S.WilliamsらのCarbon 36(9)(1998)1309~1315、T.S.Ong、H.YangらのCarbon 38(2000)2077~2085及びY.Kuga、M.Shirahige、Y.Ohira、K.AndoらのCarbon 40(2002)695~701を参照せよ)。これらの条件の下で、ダウンサイズされた黒鉛粒子は、緩く結合したアグリゲートを形成する傾向がある。典型的な粉砕プロセスは空気雰囲気において行われ、これらの条件の下で、黒鉛の粉砕は、黒鉛粒子のダウンサイズをもたらす。従来の粉砕プロセスの欠点は、得られた黒鉛材料が、金属ベースの粉砕設備の消耗のために、比較的多くの量の微量金属を含有する場合があることである。金属微量元素は、所望の電気化学プロセスを妨げる電極触媒として作用し、寄生化学又は電気化学の副反応を引き起こし、従ってサイクル安定性を減少させ、セル寿命を減少させる。
【0015】
カーボンブラックは炭素の非晶質形態である。典型的には、カーボンブラック構造は、共有結合によってともに結合されてより大きいアグリゲートを形成する球状非晶質粒子又は準結晶一次粒子から構成される。典型的には、導電性カーボンブラックは、10~50nmのサイズの一次粒子からなり、大きい複合アグリゲートは、しばしば100nmより大きい直径である。静電力によるさらなるアグロメレーションは、同様にカーボンブラックの構造に寄与する。導電性カーボンブラックのアグリゲートは、多孔性電極中に導電性網目構造を形成し、従って臨界炭素濃度において観察されるパーコレーション閾値を超えて電気抵抗を減少させる(J.B.Donnet、R.P.Bansal、M.J.WangらのCarbon Black Science and Technology、2nd ed.、Marcel Dekker Inc.、New York、1993)。カーボンブラックの構造によって作られる、導電性カーボンブラックの大きい内部及び中間アグリゲートボイド容積は、高い吸油量(oil absorption number)をもたらす。典型的には、導電性カーボンブラックは150mL/100gより多い吸油量を有する(ASTM D2414-01によって測定、下で説明される方法を参照せよ)。
【0016】
炭素質材料の別の種類は、活性炭である。活性炭は天然有機生成物、例えばヤシ殻、木製品又はポリマーに由来する、非晶質であり大きい表面積の炭素粉末から構成される。これらの前駆体は、不活性雰囲気下で、700~1600℃の温度で炭化される。炭化に続いて、材料は、蒸気、CO2又は水性塩化亜鉛溶液を昇温された温度で使用する活性化プロセスを受け、このことは炭化された材料のBET表面積を増大させる。活性化プロセスは、表面積において観察された増大の原因と考えられる、いわゆる「ミクロポア」並びにメソポアを形成する(例えばH.Marsh、F.Rodriguez-ReinosoらのActivated Carbon、Elsevier、2006を参照せよ)。
【0017】
例えば導電性添加剤としてのカーボンブラックの使用は、高い液体吸収性などの特性に起因する場合があり、電極におけるより高い電解液浸透をもたらすと考えられる。さらに、鉛酸電池の負極への大きい表面積の炭素構成要素の添加が、増大した電気化学的に利用可能な内部電極面積のために、電荷受容性の顕著な増大をもたらすことが観察され、このことは電極のより「オープンな」構造の結果と考えられる。カーボンブラック添加剤のポジティブな効果のためのさらなる説明は、添加炭素表面の帯電(スーパーキャパシタ効果)が、例えば鉛酸電池の負極及びスーパーキャパシタにおいて所望の特性である増大した電気化学容量をもたらすことができるということである。
【0018】
しかし、炭素添加剤としての大きい表面積の炭素の使用にも関わらず、サイクル寿命、高速における性能及び低温放電に関する幾つかの不利な結果が、鉛酸電池において観察された。観察された効果は、増大した電極表面において起こる電気化学的及び化学的副反応に関連する。大きい表面積の炭素構成要素に関連するさらなる問題は、電極ペーストの形成の間の高い水取り込み性であり、このことは、このような添加剤を含有する電極の製造に負の影響を与える場合がある。
【0019】
さらに、鉛酸電池において充電中に寄生副反応として起こる水性電解液の分解は、負極における水素形成をもたらす。電解液の分解速度は、炭素の大きい表面積によって、及び典型的な金属不純物の存在の下で加速されることが見出された。正極におけるこの反応において形成される酸素もまた、特に、大きい表面積の非晶質炭素によって起こると考えられる酸化性炭素腐食の原因である場合がある。電池の乾燥に至るまでの電解液の分解は、厳しい安全性の問題と考えられる。
【0020】
上に記載された特性から、導電性炭素添加剤は、電極工学、その特性及び電極の製造プロセスに有意な影響を有すると考えられることが分かる。
【0021】
上で説明されるように、黒鉛及び導電性カーボンブラックは、電極における導電性添加剤としてのそれらの使用を考えるとき、多くの補足的な特性を有すると考えられる。小さい表面積及び大きい表面積の炭素(黒鉛及び非晶質/非黒鉛の炭素粉末)の両方が、意図される用途における異なる欠点を有するがポジティブな効果を及ぼすため、前記2つの混合物を使用する試みが以下の文献(例えばM.FernandezのBatteries & Energy Storage(BEST) Spring 2011、81~93及びM.Fernandez、N,Munoz、R.Nuno、F.TrinidadらのProceedings of the 8th International Conference on Lead Acid Batteries、Extended Abstract #6、Lead Acid Battery Department of the Bulgarian Academy of Science、Sofia、Bulgaria、June 7th~10th、2011、p.23~28を参照せよ)において説明された。しかし、これらの混合物は問題を伴う。例えば、負極の製造プロセスにおいて、2つの炭素構成要素の、その一方が酸化鉛ペースト形成において非常に低い体積密度を有する炭素構成要素の、要求される均一な混合が問題となる場合がある。
【0022】
このような問題を克服する努力は従来技術において説明された。例えば、Imerys Graphite & Carbon Switzerlandの国際公開第2013/174536号は、まず黒鉛を不活性条件下で粉砕して、次いで制御された酸化によって粉砕された黒鉛粒子の表面を官能化する、すなわち画定された条件の下で酸素含有雰囲気に暴露するプロセスを説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、特に電極における炭素構成要素として使用されるとき、確実に製造することができ、扱いやすく、優れた物理化学的及び電気化学的特性を有する、さらに別の有利な炭素材料、並びにその調製のための方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示は、非黒鉛のコアを含む新規の表面官能化された炭素質粒子、それらを製造するための方法及び前記粒子についての使用を提供する。それらは、例えば電極材料における炭素の添加剤又は構成要素として使用されるとき、好ましい機械的及び電気化学的特性を示す。
【0025】
従って、本開示は、第一の態様において、表面官能化された炭素粒子を調整する方法に関するものであり、方法は以下の工程:
a)気密シールされたコンテナ中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程
を含む。
【0026】
機械力を適用するための1つの例は、粉砕を含むがそれに限定されず、出発粒子のサイズを所望のサイズに減少及び均一化させる。幾つかの例において、粉砕の際の粒子の表面の活性化は、細かい炭素粒子のアグロメレーション及び酸化性反応体に対する増大した反応性をもたらす。典型的には、官能化工程b)は、工程a)から得られる粒子を、粒子(任意選択でアグロメレートされた形態)が所望の特性を有するまで酸素含有雰囲気に暴露することによって達成される。
【0027】
任意選択で、方法はまた、安定化する量の分散剤が存在する液体(典型的には水若しくは水/アルコール混合物)中で、又はポリマー中で、主にせん断力を適用することによって、官能化工程から得られた表面官能化されたアグロメレート粒子を分散することによる非アグロメレート化された生成物の調製を含んでよい。
【0028】
従って、本開示のさらなる態様は、約14nmより小さいか、約12nmより小さいか、又は約10nmより小さい結晶学的なLc値;及び約0.6wt%より多いか、約0.8wt%より多いか、又は約1wt%より多い酸素含有量を特徴とする表面官能化された炭素粒子に関する。上で記載されるように、任意選択で、このような粒子は、より細かい一次炭素粒子のアグロメレートを示してよい。表面官能化された炭素質粒子は、例えば、上に記載されるプロセス及び本明細書において下でさらに説明されるプロセスによって得ることができる。
【0029】
非アグロメレート形態の表面官能化された炭素質粒子の分散体は、本開示のさらに関連する態様である。本開示の別の態様は、表面官能化された炭素質粒子の分散体の、導電性又は潤滑性コーティングとしての使用に関する。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、本発明の表面官能化された炭素粒子で充填されたポリマー化合物、並びに導電性添加剤として本発明の表面官能化された炭素粒子を、及び任意選択で官能化添加剤として他の化合物を、例えば硫酸バリウム及び/又はリグノスルフェートを含む電池電極に関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、表面官能化された炭素質粒子を含む導電性添加剤の提供に向けたものであって、導電性添加剤は種々の用途において、例えば鉛酸電池、リチウム硫黄電池、電気化学二重層キャパシタ、触媒担体及び他のものにおいて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】表面官能化された炭素粒子の材料番号1、6及び7のための未処理の前駆体材料の(2つの異なる解像度における)走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【
図2】表面官能化された炭素粒子の材料番号2及び3のための未処理の前駆体材料の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図3】表面官能化された炭素粒子の材料番号4及び5のための未処理の前駆体材料の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図4】実施例1によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号1の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図5】実施例1によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号2の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図6】実施例1によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号3の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図7】実施例1によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号4の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図8】実施例1によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号5の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図9】実施例2によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号6の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図10】実施例2によって得られた表面官能化された炭素粒子の材料番号7の(2つの異なる解像度における)SEM写真を示す。
【
図11】a)~c)は、実施例1及び2において説明される方法において用いられる表面官能化された炭素粒子の材料1~7のための前駆体材料の走査型透過電子顕微鏡(STEM)写真を示す。
【
図12】a)~g)は、実施例1及び2において説明される方法によって得られる表面官能化された炭素粒子の材料番号1~7のSTEM写真をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、非黒鉛の炭素質粒子材料に機械力を適用する(例えば粉砕)工程、次いで改質された又は新しく形成された粒子の表面の制御された酸化による官能化工程を含む新規の表面官能化された炭素粒子を製造するための方法、並びに前記方法によって得ることができる新規の表面官能化された炭素粒子に関する。本開示の新規の表面官能化された炭素粒子を用いる下流の製品及び方法もまた本明細書に含まれる。
【0034】
新規の表面官能化された炭素質粒子を製造するための方法
第一の態様において、本開示は、表面官能化された炭素粒子を調整する方法に関するものであり、方法は以下の工程:
a)気密シールされたコンテナ中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程
を含む。
【0035】
本文脈において、「機械力を適用する」は、機械的エネルギーが非黒鉛の炭素質出発材料に伝達されて変化した粒子形態を有する粒子を作り出すことを意味し、典型的には、それらの粒子サイズ分布を変化させることを含む。機械力は、衝撃力、摩砕力及びせん断力を含むがそれらに限定されない。機械力の適用の仕方の1つの周知の例は「粉砕」を含み、それは本文脈において広義に解釈されるべきである。従って、それは、周知の機械的器具、例えばボールミル、ローターミル、摩砕ミル及び類似のものを使用する「古典的な」粉砕のみでなく、機械力を粒子に伝えて異なる形態(例えばより小さいサイズ)を有する粒子を発生させることができる他の種類の装置、例えばジェットミル又は流動床ミル/反応器もまた含む。このような流動床反応器は、サイズ改質をもたらす程度に粒子を加速することができるか、又は他の粒子若しくは設備の壁との衝突に際して砕くことができる。
【0036】
用語「機械力を適用する」は炭素質材料の粉砕を含むがそれに限定されないため、粒子形態の非黒鉛の炭素質材料から出発することは必須ではない。従って、非粒子状材料(例えば、非黒鉛の炭素質材料から作られるシート又は他の3次元物)もまた、制御された酸化による続く官能化工程の前に、所望のサイズ分布を有する粒子に変えることができる。しかし、最も都合の良い出発材料はそれでも、本方法において典型的に想定される所望の粒子サイズ分布にあらかじめ近い場合がある結晶形態の非黒鉛の炭素質材料であることは明白である。
【0037】
本明細書において使用されるとき、「制御された酸化」は、方法の第一の工程から得られた粒子を制御条件の下で酸素含有雰囲気に暴露して、それによって炭素粒子の表面の酸化をもたらす計画的かつ故意の工程である。従って、官能化工程b)における制御された酸化は、炭素質粒子の表面において官能化された(すなわち修飾された)炭素質粒子をもたらす。
【0038】
本文脈における制御条件は、工程a)から得られた粒子が、画定された、すなわち制御された温度で、(幾つかのルーチンの実験によってあらかじめ決定されるか、又は粒子の酸化の所望のレベルが達成されるまでのいずれかの)画定された時間、このような酸素含有条件に置かれることを意味する。
【0039】
典型的には、制御された酸化は、空気、水分、酸素、別の酸化性気体及び/又は酸化性液体の存在の下で行うことができる。このような酸化性気体の例は、NOx、オゾン又は二酸化炭素を含むがそれらに限定されず、一方で酸化性液体は、例えば過酸化水素又は硝酸を含んでよい。
【0040】
例えば、制御された酸化の工程は、典型的には酸素含有量が1~50vol%、好ましくは5~30vol%、より好ましくは10~20vol%である、窒素又は別の不活性気体によって希釈された酸素の雰囲気中で行うことができる。典型的には、酸素濃度についての上限は、第一の工程から得られる炭素の反応性に従属する(それは典型的には工程a)についての処理時間に関連する)、すなわち、炭素質材料の超過の熱発生及びバーンオフを回避するために、より反応性の炭素表面を有する炭素粒子はより低い酸素含有量を必要とする。任意選択で、制御された酸化は、適したコンテナ(例えばミキサー、ロータリーキルン又は流動床反応器)中で炭素質粒子を動かして、理想的な仕方で粒子を反応体気体と接触させることによって粒子の均一な官能化を達成することを含む。従って、官能化工程b)の制御された酸化は、大気条件下で工程a)からの材料を単に貯蔵することとは異なる。
【0041】
本開示の特定の実施態様において、制御された酸化は、ミキサー中で材料を撹拌することによって行われる。ミキサーは、材料を、速く、均一で、かつ再現性のある仕方でともに混合するのに有用である強力なバッチミキサーであってよい。ミキサーはまた、例えば固体粒子の高い程度の流動化を可能とし、十分な炭素質粒子の反応気体(又は液体)との接触を促進するパドルバッチミキサー又はデュアルシャフトパドルバッチミキサーであってよい。
【0042】
工程b)についての暴露時間は、選択される酸素含有気体又は液体、及びコンテナ中の温度に応じて、一般に広範に変化させることができる。しかし、適した暴露時間は、上で説明されるように、製品の所望のパラメーターに応じて、当分野における当業者によって容易に決定することができる。工程b)についての酸化性気体及び反応条件の幾つかの適した例は、本明細書において、下で及び実施例において概説される。
【0043】
官能化工程b)は、例えば任意の酸化反応、典型的には発熱反応であり、すなわち工程b)における酸素との接触の間に反応器/コンテナ中の温度は増加する。従って、反応器中の温度は、特に多くの量の酸素を含有する雰囲気(例えば約21vol%の酸素を有する空気)において、(例えば一酸化炭素又は二酸化炭素であっても)ついには炭素質材料のバーンオフを引き起こす可能性があるレベルに増加する場合がある。バーンオフ効果はまた、炭素質材料の表面積によって影響を受け、より大きい表面積は工程b)におけるより発熱性の酸化反応をもたらす。従って、少なくとも、特に炭素質材料の損失を引き起こす有意なバーンオフを回避するのに十分に低い温度に、反応器を冷却又は保持することが必要な場合がある。
【0044】
代わりに又は加えて、工程b)においてより低い酸素含有量を有する気体を使用することは有用であり従って得策である。それゆえに、幾つかの実施態様において、官能化工程b)は、20vol%より少ないか、15vol%より少ないか、10vol%より少ないか、8vol%より少ないか、若しくは6vol%より少ない酸素及び/又は他の酸素含有気体を含む雰囲気に、プロセス工程a)から得られた粒子を暴露することを含む。上に記載されるように、「通常の」空気雰囲気に対する酸素含有量の減少は、より激しくない酸化反応をもたらし、それによって官能化工程b)の間のより少ない温度増加をもたらし、このことはこのような条件の下での炭素質材料のバーンオフを限定することができる。
【0045】
従って、官能化工程b)、すなわち制御された酸化は、幾つかの実施態様において、400℃以下、300℃以下、200℃以下、100℃以下、50℃以下又は30℃以下の温度で行われるか、又は少なくとも開始される。それによって、全くないか又は非常に限定された炭素質材料のバーンオフとなるが、そのほかでは、400~500℃より高い温度における表面修飾プロセスにおいてはバーンオフが観察される。それにも関わらず、先に簡潔に記載されるように、工程a)において生じる炭素粒子の(活性化)表面との酸素含有気体の発熱反応のために、混合物に外部加熱が適用されない場合であっても、(例えば約150℃への、又はより高温への)昇温が、しばしばミキサー中で観察される。
【0046】
液体官能化プロセスの場合において、官能化工程b)の完了の後に、続いて液体から、得られた生成物をろ過して、乾燥させることができる。
【0047】
工程a)から得られた非黒鉛の炭素質粒子の酸化は、工程a)において、炭素表面の機械的活性化のために、空気又は水分を排除した下で、(例えば、必須ではないが場合によっては減圧下又は不活性雰囲気中で、閉じられた(気密の)反応器中のボール又は摩砕ミルにおいて炭素質材料を製粉することによって)周囲温度においてであっても達成することができることが見出された。機械的活性化工程の間、炭素出発材料の形態は、メソポーラスの非晶質形態に変化する。このような形態を有する粒子は、機械的活性化の後に酸化性反応体に暴露されるとき、増加した量の表面酸化物、幾つかの例においては材料の約1wt%よりさらに多くの表面酸化物を許容する。
【0048】
カーボンブラックが出発材料として使用される場合、本明細書において説明される方法を出発材料に受けさせた後、典型的なカーボンブラック構造が消えることが観察された。典型的には、機械的活性化及びメソポロシティの形成は炭素質材料のBET SSAの増加に結び付いている(下の表1及び2を参照せよ)。得られた炭素質材料の大きいBET SSAが望ましい場合、大きいBET SSAを有する炭素前駆体の使用は、必要とされる粉砕時間を減少させることができる。減少した粉砕時間は、材料のコスト並びに粉砕プロセスの間の微量不純物による潜在的な除染のコストを減少させることができる。
【0049】
さらに、続く官能化プロセスが所望の表面「酸化」の化学現象を起こし、加えて、本明細書において説明される炭素質粒子の活性炭素表面を飽和させると考えられることが見出された。
【0050】
一般に、工程a)及びb)を含むプロセスは、得られた生成物が所望の生成物特性を有し、酸化性反応体との官能化反応が完了する(及び表面が化学的に吸収された酸素で飽和する)まで行われる。例えば、特定の実施態様において、プロセス及び特に官能化工程b)は、得られた粒子の酸素含有量が、(機器気体分析(IGA)によって決定して)約0.6wt%より大きく、約0.8wt%より大きく、約1wt%より大きく又は約1.2w%より大きくなるまで行われる。
【0051】
代わりに又は加えて、プロセスは、前記プロセスから得られる粒子を含む水性分散体のpHが5.5より低く、5.3より低く、5.1より低く若しくは5.0より低くなるまでか、及び/又は得られた粒子を含む水性分散体のpHが、プロセスの工程a)において用いられた出発材料と比較して、少なくとも0.4pH、少なくとも0.6pH単位若しくは少なくとも0.8pH単位減少するまで、行われる。
【0052】
幾つかの実施態様において、代わりに又は加えて、プロセスは、得られた粒子のBET SSAが約100m2/g~約500m2/gとなるまで行われるが、前記のBET SSA値は、特にあらかじめ非常に大きいBET SSAを有する出発材料(例えば特定のカーボンブラック、出発材料と最終の改質された材料の両方が約500m2/gのBET SSAを有する幾つかの例示的な実施態様についての下の表1を参照せよ)については、時にはこれらの値の範囲外であってもよい。
【0053】
代わりに又は加えて、プロセスは、得られた粒子のキシレン密度が約1.65g/cm3~約2.1g/cm3;約1.85g/cm3~約2.00g/cm3;約1.90g/cm3~約2.00g/cm3;又は約1.95g/cm3~約2.00g/cm3となるまで、行われる。特定の実施態様において、プロセスはまた、(代わりに又は加えて)得られた粒子の吸油量(OA)が70~300mL/100gとなるまで、及び/又は材料が約580℃より低いか、若しくは約570℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)によって5wt%の質量損失を示すまで、行うことができる。
【0054】
特定の実施態様において、とりわけ工程a)の間にボールミル又は金属粉砕器具を有する他のミルが用いられる実施態様において、プロセスは、鉛取り込み量が特定の閾値、例えば1000ppmより多いか、又は2000ppmより多い鉛含有量を超えるまで、行うことができる。他方で、多くの実施態様において、鉛取り込み量はまた、特定の上限閾値、例えば50000ppmを超えるべきでない。従って、幾つかの実施態様において、プロセスは、得られた粒子の鉛取り込み量が、粒子の最終鉛含有量が約2500ppm~40000ppmとなるような鉛取り込み量となるまで、行うことができる。しかし、とりわけ非金属粉砕器具及び反応器の裏張りが使用されるとき、鉛取り込み量はより低くてもよい。
【0055】
本明細書において先に記載されるように、典型的には、工程a)において機械力を適用することは、「粉砕」によって達成することができる。利便のために、従って、工程a)はまた、「粉砕工程」ともいうことができるが、それは厳密には粉砕に限定されず、機械的なエネルギーによって非黒鉛の炭素質材料のサイズ及び形態を変えることができる全ての技術を含む。
【0056】
本明細書において説明される工程a)のための設備の適した種類の例は、シールされた(すなわち気密)振動ミル、ロッカーミル、スイングミル、遊星ボールミル、ドラム又はタンブリングミル、ボールミル、摩砕器又は摩砕ミル(水平式及び垂直式)、パール及びビーズミル、並びに他のものを含むがそれらに限定されない。本発明の幾つかの実施態様において、使用されるシールされた反応器は、摩砕ミル又はボールミル、例えば回転ミル、タンブリングミル又は振動ミルである。粉砕媒体は、使用される個々のプラント又は反応器に応じて、形状(例えば球、円筒、シルペブ(cylpebs)、ロッドなど)、サイズ及び材料(例えば鋼、鉄、セラミック、ZrO2、Al2O3など)の点で変化することができる。
【0057】
例えば振動ミルにおいて、ドラムコンテナが振動するとき、ボールの衝突によって衝撃力が発生する。衝撃力が、90%より高い充填度においても効果的に発生することができるため、振動ミルは効果的に働くことが知られている。これは、例えば一般に(回転速度及び充填度に応じて)より高い衝撃力及びせん断力を粉砕される材料に適用する回転ボールミルによる粉砕と比較して、より穏やかな方法である。従って、振動ミルにおいて、所望される生成物はより速く形成され、一方でボール及び粉砕コンパートメントの内壁のより少ない摩損のために、外来粒子汚染物はより少ないままである。従って、金属不純物を有する汚染物は少なく保たれるが、当然、非金属ベースのボール及び内張りを使用することによって完全に排除することができる。
【0058】
従って、本発明のある実施態様によれば、ミルにおいて使用される粉砕媒体は非金属材料、例えばZrO2、Al2O3又はセラミックから作られていてよい。任意選択で、ミルは内側の非金属の内張りを備え、粒子のさらなる金属汚染を防止することができる。
【0059】
加えて、本発明のこの態様の多くの実施態様において、粉砕工程a)は、少なくとも5h、少なくとも10h又は少なくとも15hで、典型的には150h以下、96h以下、84h以下、72h以下又は60h以下の間行われるが、当然、(使用される具体的な設備に応じて)他の粉砕時間もまた適した結果を達成することができる。典型的な粉砕プロセスは、気密シールされたボールミル又は振動ミル中での、理想的には高い純度を有する非黒鉛の炭素質材料の機械的処理を含む。
【0060】
特定の実施態様において、ボールミルの充填度は75%より小さく又は80%より小さくあるべきであり、ミルの回転速度は、ボールがドラムシリンダーの上部に運ばれ、ドラムの底部の黒鉛/ボールのマスに落ちて、処理される粒子へのせん断力に対する衝撃力を最大化するのに十分に高くある必要がある。
【0061】
全体として、当業者は、主な粉砕パラメーターが、大きい表面積若しくは工業的に「許容可能な」時間制限の範囲内を対象とした他の所望される生成物仕様を達成するために再調整しなければならない場合がある、すなわち粉砕時間を減少させるために、炭素材料バッチサイズ、粉砕媒体の種類、サイズ及び形状、ミル充填要素又は(炭素の粉砕媒体に対する)質量比を、必要であれば幾つかのルーチンの実験を行うことによって、選択される設備の具体的な各種類ついて最適化する必要があることを理解する。
【0062】
いずれにしても、幾つかの実施態様において、粉砕工程は、得られた粒子が
i)1.0μm~8.0μm、好ましくは1.0μm~5.0μmのD50値を有する粒子サイズ分布(PSD);
ii)12μm~70μm、好ましくは15μm~40μmのD90値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iii)0.4μm~1.5μm、好ましくは0.5μm~1.2μmのD10値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iv)約0.15より低いか、約0.12より低いか、若しくは約0.10より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)約0.25より高いか、約0.30より高いか、若しくは約0.32より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
を特徴とするまで行われる。
【0063】
上の全ての粒子サイズ(PSD)値は、下の方法のセクションにおいてより詳細に説明される乾燥分散法を使用するレーザー回折によって決定された。従って、D10/D50/D90値は、より細かい一次粒子のアグロメレートされた形態に関連することができる。
【0064】
工程a)における処理時間は設備に明確に依存し、主に得られた粒子の所望の特性によって支配される。しかし、機械力が工程a)において粉砕によって適用される場合、特定の実施態様において、適した粉砕時間は、典型的には約10h~約60h又は約15h~約50hであってよい。
【0065】
特定の実施態様において、粉砕工程は、非黒鉛の出発材料の粒子サイズが、細かい粒子がそれらの活性化(すなわちエネルギーリッチ)表面のために(再)アグロメレートし始めて、より大きい、典型的にはより球状のアグロメレートとなるまで、行われる。従って、実際には、プロセス工程a)はアグロメレートされた形態の新しい合成炭素質(非黒鉛の)粒子を作り出すのに供することができる。続いて、これらの粒子は、制御された酸化の工程b)において官能化される。従って、幾つかの実施態様において、炭素質出発材料は、約0.6wt%より多いか、約0.8wt%より多いか、又は約1wt%よりさらに多い増加した量の表面酸化物を有するメソポーラスの非晶質形態を有する新規の炭素質材料に変換される。カーボンブラックが出発材料として使用される場合、本開示の方法を受けた後、典型的なカーボンブラック構造が消滅することが見出された。
【0066】
工程a)は気密コンテナ中で行われるため、典型的には、とりわけ反応器中の残存酸素が炭素質材料によって速やかに消費されるため、コンテナ/反応器(例えばミル)の真空引き又はさらに不活性気体でのそのパージのいずれも必要ない。典型的には、気体は粒子の表面に速やかに付着するが、しかしとりわけ酸素についての化学反応もまた、機械的エネルギー及び/又は外部加熱の影響の間に生じるより高い温度で起こることができる(多くの場合は一酸化炭素を形成する)。幾つかの実施態様において、反応器/ミル中の酸素の量は、炭素質材料の合計質量に対して0.5wt%より少ない、0.2wt%より少ないか、又は0.05wt%より少ない。
【0067】
時には、工程a)において得られた炭素質粒子を、工程b)を行う前に、気密シールされた反応器中で、少なくとも15min、少なくとも30min又は少なくとも45minの間保持することが有利である場合がある。この保持期間は、工程a)の間の機械力の適用に際する表面の活性化のためと考えられる高い表面エネルギーを有する粉砕されたより細かい炭素質粒子のアグロメレーションを完了するのに供することができる。
【0068】
本明細書において使用されるとき、一般に、用語「非黒鉛の炭素質材料」は黒鉛の特性及び構造、例えば約10nmより低いLc値、約0.3365nmより高いc/2値及び/又は約2.2g/cm3より低いキシレン密度、を欠いた任意の炭素質材料をいう。
【0069】
いずれにしても、本明細書において説明される方法は、任意の非黒鉛の出発材料、例えばカーボンブラック、石油コークス、か焼石油コークス、ニードルコークス、コールタールベースのコークス、アンスラサイト(anthracite)、か焼アンスラサイト、ポリマーに由来するチャコール(charcoal)、バイオマス、熱分解性炭素及びそれらの混合物を用いて行うことができる。
【0070】
本明細書において説明される方法は、主に、非黒鉛の出発材料、例えば先の段落において列挙されたもののために有用であるが、任意選択で、本方法は、非黒鉛の出発材料と混合された幾らかの量の黒鉛材料を含む炭素質材料を用いて行うこともまたできる。非黒鉛の出発材料と混合される適した黒鉛材料は、天然黒鉛、合成黒鉛、黒鉛化コークス、黒鉛化アンスラサイト又はそれらの混合物を含むがそれらに限定されない。
【0071】
従って、特定の実施態様において、本明細書において説明される方法は、非黒鉛の炭素質材料が、工程a)において行われる粉砕の前に又は官能化工程b)の前に、約10wt%~約90wt%、約20wt%~約80wt%又は約10wt%~約50wt%の黒鉛の炭素材料とともに混合された炭素質出発材料組成物を用いて行うことができ、例えば実施例1及び2において調製された材料を参照せよ(表1及び2に列挙された特性)。
【0072】
本明細書において説明される方法によって得ることができる表面官能化(例えば表面酸化)された炭素質粒子は、鉛に対する非常に良好な親和性を示し、鉛の電気化学的な堆積を支持することが見出された。典型的には鉛取り込み量は粒子の表面酸化物含有量と相互に関連がある、すなわちより高い表面酸化物濃度であるほどより高い鉛取り込み量であることが見出された。新規の炭素粒子は、鉛酸電池の負極板の鉛構造中に取り込まれることができ、そこで新規の炭素粒子が硫酸鉛の可逆形成に寄与する。
【0073】
従って、粒子は、車においてスタート/ストップ機能を支持するために使用される高度な鉛酸電池の充電操作モードの高い電流部分状態において操作される鉛酸電池のサイクル安定性を改善することができる添加剤として使用することができる。粒子はまた、ブレーキ操作から発生する電気の貯蔵のために必要である、高度な鉛酸電池の電荷受容性を改善することができる。
【0074】
本明細書において説明される方法から得られる炭素質粒子は、主に、限定はしないが、工程a)の後の一次粒子サイズに応じて、アグロメレートされた又はアグロメレートされていない粒子であってよく、ここで特定のサイズより小さい一次粒子は、粉砕工程a)において生じる高い表面エネルギーのために、アグロメレートされた、典型的にはかなり等方性の粒子を形成する傾向がある。
【0075】
工程b)(制御された酸化による官能化)から得られる炭素質粒子は、典型的には乾燥形態で得られる(液体酸化剤が使用されない限り、その場合材料は乾燥させることができる)。次いで、本明細書において下でより詳細に説明されるように、乾燥粒子は多くの下流用途において使用することができる。
【0076】
幾つかの実施態様において、しかし、方法は追加の工程を含み、工程b)からの粒子は次いで液体、例えば水、アルコール又はそれらの混合物(環境的な理由のために水又は水エタノール混合物が好ましい)中で分散される。任意選択で、懸濁液は、1つ又は複数の分散剤、例えばBASF AGから入手可能であるPluronic PE 6800(登録商標)などのPEO-PPO-PEOブロックコポリマーをさらに含んでよい。代わりの分散剤は、例えばAkzoNobelのMorwet EFW(登録商標)などのスルホン酸のようなイオン性分散剤、SasolのEmuldac AS 25(登録商標)などのアルコールポリエトキシレートのような非イオン性分散剤、例えばDow ChemicalのTergitol 15-S-9(登録商標)などのアルキルポリエーテル、n-アルキルポリエチレン酸化物、ポリエチレングリコール、イソ-アルキルポリエチレン酸化物若しくはポリエチレングリコール又は顔料分散体の分野における当業者にとって公知である任意の他の分散剤、及び/又は1つ若しくは複数のポリマーバインダー化合物、例えばポリアクリレート、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム、アクリルブタジエンゴム、ポリビニルアセテート又はポリビニルクロライドである。
【0077】
新規の表面官能化された炭素質粒子
本開示のさらなる態様は、約14nmより小さいか、約12nmより小さいか、又は約10nmより小さい結晶学的なLc値;及び約0.6wt%より多いか、約0.8wt%より多いか、又は約1wt%より多い酸素含有量を有する表面官能化された炭素粒子に関する。
【0078】
方法を説明するときに先にあらかじめ記載されるように、新規の炭素質粒子は、それらの限定された結晶子サイズLcに関して、非黒鉛の炭素質粒子と特性評価することができる。しかし、特定の実施態様において、新規の炭素質材料はまた、工程a)又は工程b)の前の非黒鉛粒子と黒鉛粒子との混合から得られる材料を含んでいてよい。これらの場合、特定の例において、とりわけ多量の黒鉛粒子を含む混合物から作られる材料については、結晶学的なLc値は約14nmより小さい閾値を超える場合がある。好ましくは、しかし、このような材料は、先の段落において提示されるように、14nmより小さいか、12nmより小さいか、又は10nmより小さい全体の結晶学的なLc値を同様に特徴とする。
【0079】
幾つかの実施態様において、本発明による表面官能化された炭素粒子は、本開示において説明される方法によって得ることができる。
【0080】
上で記載されるように、一般に、表面官能化された炭素質粒子は、炭素表面に化学吸着された酸素基の増加した濃度を特徴とし、従って、本明細書においてそれは「表面酸化物」といわれる場合がある。従って、表面官能化された炭素質粒子の酸素含有量は、方法のセクションにおいて下で提示される方法に従って測定するとき、少なくとも約0.60wt%、少なくとも0.70wt%、少なくとも約0.80wt%、少なくとも約0.85wt%、少なくとも約0.90wt%、少なくとも約1.0wt%又は少なくとも約1.20wt%であり、典型的には約5wt%以下又は4wt%以下である。実施例のセクションにおける表1から分かるように、全ての出発材料は(多くは十分に)0.60wt%より低い酸素含有量を有していた。粒子の表面の酸素基の幾らかは効果的にはカルボキシル基であるため、多くの実施態様において、表面官能化された炭素質粒子が酸性のpH、すなわち7.0より低い、多くはさらに約5.5より低いpHを有することは驚くべきことではない。
【0081】
理論によって結び付けられることを望むものではないが、「表面酸化物」の濃度は、鉛に対する粒子の親和性にとりわけ関連すると考えられる。このことは、例えば鉛酸電池の負極における導電性添加剤として表面官能化された炭素質粒子を使用するときに、特に重要である。さらに、特定の炭素形態と「表面酸化物」の高い濃度との組み合わせは、優れた鉛電極板特性をもたらすと考えられる。
【0082】
幾つかの例において、本開示による表面官能化された炭素質粒子は、以下のパラメーター:
i)約100m2/gより大きいか、約110m2/gより大きいか、若しくは約120m2/gより大きいBET表面積、任意選択で約100m2/g~約500m2/gの、約110m2/g~約400m2/gの若しくは約120m2/g~約350m2/gのBET SSA;
ii)約2mL/gより小さいか、若しくは約1.8mL/gより小さい粒内ポア容積;
iii)約3mL/gより小さいか、若しくは約2.5mL/gより小さい合計ポア容積;
iv)約1000ppmより多いか、約2000ppmより多いか、約2500ppmより多いか、若しくは約2800ppmより多い鉛取り込み量;
v)約5.5より低い、約5.3より低い、約5.1より低い若しくは約5.0より低い、粒子を含む水性分散体のpH;
vi)約580℃より低い若しくは約570℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)による5wt%の質量損失;及び/又は
vii)約500mL/100gより少ない、約400mL/100gより少ない、約300mL/100gより少ない、約250mL/100gより少ない、約70~約300mL/100gの、若しくは約70~約260mL/100gの吸油量(OA、Marcol)
のうちいずれかを(単独で又は任意の組み合わせで)さらに特徴としていてよい。
【0083】
表面官能化された炭素質材料の特有の形態のために、典型的には、吸油量は、同等のポア容積及びBET SSAを有する他の炭素材料、例えばカーボンブラック、コークス又は活性炭より有意に低い。
【0084】
幾つかの実施態様において、表面官能化された炭素質粒子は、代わりに又は加えて、
i)約1.0μm~約8.0μm、任意選択で約1.0μm~約5.0μmのD50値を有する粒子サイズ分布(PSD);
ii)約12μm~約70μm、任意選択で約15μm~約40μmのD90値を有する粒子サイズ分布(PSD);及び/又は
iii)約0.4μm~約1.5μm、任意選択で約0.5μm~約1.2μmのD10値を有する粒子サイズ分布(PSD);
の粒子サイズ分布(PSD、乾燥分散法を使用するレーザー回折によって測定された)をさらに特徴としていてよい。
【0085】
さらに、幾つかの例において、表面官能化された炭素質粒子は、
約0.15より低いか、約0.12より低いか、若しくは約0.10より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
約0.25より高いか、約0.30より高いか、若しくは約0.32より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
をさらに特徴としていてよい。
【0086】
上の追加のパラメーターのうち任意のものは、単独で又はそれらのパラメーターの別の1つ又は複数と組み合わせて使用することができ、本明細書において説明される新規の表面官能化された炭素質粒子を画定すると理解される。
【0087】
特定の実施態様において、新規の表面官能化された炭素質粒子は、サブミクロンの非アグロメレート粒子がともに付着してアグロメレートミクロ構造を形成するアグロメレート形態で存在する。これらのアグロメレート(ミクロ構造)は、例えばリチウム硫黄電池中の硫黄カソードにおける使用について、良好な機械的安定性を有する「ホスト」として作用することが見出された。
【0088】
粉砕工程a)は、アグロメレートされた、かなり等方性である粒子の形成をしばしばもたらすため、多くの例において、新規の表面官能化された炭素質材料のスコット(Scott)密度が典型的にはかなり高くなることは驚くべきことではない。従って、多くの実施態様において、炭素質材料のスコット密度は0.15~0.5g/cm3又は0.20~0.45g/cm3となり、その密度は、典型的には、(改質されていない)出発材料と比較してかなり高い。
【0089】
幾つかの実施態様について、表面官能化された炭素質粒子は、500ppmより低いか、400ppmより低いか、300ppmより低いか、200ppmより低いか、又は160ppmより低い鉄(Fe)含有量の値をさらに特徴としていてよい。幾つかの実施態様において、特に非金属粉砕媒体、例えばZrO2、Al2O3又はセラミック材料から作られる粉砕媒体が粉砕工程において使用される実施態様において、表面官能化された炭素質粒子は50ppmより少ないか、10ppmより少ないか、又は5ppmより少ないFe含有量の値をさらに特徴としていてよい。
【0090】
結晶構造に関連して、特定の実施態様において、表面官能化された炭素質粒子は(ラマン分光法によって測定するとき)1~10nm、3~8nm又は4~6nmの結晶子サイズLaを有する。
【0091】
表面官能化された炭素質粒子の結晶学的なc/2値は、方法(すなわち粉砕及び官能化工程)によって比較的影響を受けないことが見出された。従って、c/2値は、出発材料のc/2値によってほぼ決定されるが、本明細書において説明される処理工程を受けた際のc/2値は、典型的には出発材料と比較して若干増加することが観察された(下の表1を参照せよ)。典型的には、粒子は非黒鉛の材料から出発して作られるため、c/2値はほとんどが、0.3400nmより高いか、0.3450nmより高いか、又はさらに0.3500nmより高くなる。
【0092】
表面官能化された炭素質粒子で充填されたポリマー化合物
本明細書によって説明される表面官能化された炭素粒子で充填されたポリマー化合物は本発明の別の態様であり、良好な機械特性とともに、優れた電気的及び熱的伝導性を示す。ポリマーの例は、以下に限定するものではないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチルエーテルケトン及びエラストマー、例えば合成又は天然ゴムであってよい。典型的な押出プロセスが十分なせん断応力を適用して、アグロメレートを、次いでポリマー中で安定化される一次(又は少なくともより細かい)粒子に分散させることが観察されたため、多くの場合において、表面官能化された炭素質粒子は、充填されたポリマー化合物を調製するために直接、すなわちアグロメレートとして使用できることが分かった。
【0093】
電池電極における添加剤としての表面官能化された炭素質粒子の使用
本明細書において説明される表面官能化された炭素質粒子は優れた電気化学的特性を示すため、導電性添加剤として表面官能化された炭素粒子を含む電池電極は、本発明のさらなる態様を示す。一次粒子のサブミクロンの粒子サイズのために、本発明の炭素粒子は、特にサブミクロンサイズの電極材料を含有する電極において、好ましい特性を示す。
【0094】
幾つかの実施態様において、加えて、電池電極材料は硫酸バリウムを含んでよく、硫酸バリウムは、それ自体が硫酸鉛の沈殿のための(化学的に不活性な)サイトとして作用することによって、電極材料の表面への薄い不導体膜としての硫酸鉛の堆積を妨げることが知られている。典型的には、硫酸バリウムは約1μmの平均粒子サイズで使用されるが、1μmよりわずかに大きい粒子サイズであっても機能することができる。
【0095】
このような実施態様において、硫酸バリウムは、電極の合計質量の約0.2~約2wt%、好ましくは0.5~1.5wt%又は0.7~1.3wt%、最も好ましくは約1wt%の量で添加される(例えばBoden、J.Power Sources 73(1998)、pp.89~92を参照せよ)。
【0096】
加えて又は代わりに、このような電池電極は、表面官能化された炭素質粒子及び場合によっては硫酸バリウムに加えて、さらなる添加剤としてリグノスルホネートもまた含有していてよい。リグノスルホネートは複合の芳香族ポリエーテルであり、それらの両親媒性の性質のために鉛粒子のフロキュレーションを妨げることが知られていて、大きい疎水性有機部分が鉛粒子の表面に吸着し、一方で親水性非有機構成要素が水性電解液層と接触し、それによって粒子が合体又はさらに沈殿することを妨げる(例えばBoden、J.Power Sources 73(1998)、pp.89~92を再度参照せよ)。
【0097】
このような実施態様において、典型的には、リグノスルホネートは、電極の合計質量の約0.1~約1.5wt%、好ましくは0.3~1.0wt%、最も好ましくは約0.75wt%の量で添加される。
【0098】
一般に、炭素、硫酸バリウム及びリグノスルフェートは添加剤として使用され、合わせて「増量剤」といわれる。従って、本発明のさらなる実施態様は、表面官能化された炭素質粒子の、1つ又は複数のリグノスルホネート及び/又は硫酸バリウムとの混合物に関する。このような混合物は、例えば鉛酸電池の負極のための添加剤として使用することができる。
【0099】
鉛酸電池における、表面官能化された炭素質粒子と、任意選択で硫酸バリウム及び/又はリグノスルフェートとを含有する電池電極の使用は、本発明のさらに別の態様である。本明細書において説明される表面官能化された炭素質粒子は鉛をめっきするために適していて、それは表面官能化された炭素質粒子の高いメソポア含有量及び表面「酸化物」基の化学反応のためと考えられる。さらに、類似の表面積を有する他の炭素と比較して、鉛酸電池における、酸化性腐食及び電解質の分解に対するより良好な抵抗が、本明細書において説明される炭素質粒子についてさらに観察された。加えて、表面酸化物表面基の増加した濃度は、より極性のある炭素表面、それによる炭素の親水性の増加をもたらす。水性媒体における炭素質表面のこの改善された濡れ性は、炭素質が、典型的な黒鉛又はカーボンブラックと比較してより容易に鉛酸化物及び他の負極構成要素の水性ペースト中に混ざるため、負極のマスの製造プロセスにおける利点をもたらす。
【0100】
この態様のさらなる実施態様において、表面官能化された炭素質粒子を含有する電池電極は、リチウム硫黄電池の正極として使用することができる。表面官能化された炭素質粒子のミクロ構造のために、表面官能化された炭素質粒子は、正極における電気化学的に活性な構成要素として作用する硫黄のためのホストとして作用することができる。表面官能化された炭素質粒子のミクロ構造中に吸収された硫黄を含有する正極は、優れた機械的安定性及び酸化性腐食に対する抵抗を示すことが見出された。
【0101】
本発明のさらに別の実施態様において、本明細書において説明される電池電極は、電気化学二重層キャパシタとして使用することができる。幾つかの実施態様において、電気化学二重層キャパシタは、7F/gより大きいか、6F/gより大きいか、又は5.5F/gより大きい平均キャパシタンスを有する。
【0102】
触媒担体としての表面官能化された炭素質粒子の使用
炭素担体としての本明細書において画定される表面官能化された炭素粒子の使用は、本発明の別の態様を示す。例えば燃料電池及び金属空気電池において使用される空気電極における骨格又は炭素担体として使用されるとき、金属触媒又は金属酸化物触媒は、非晶質炭素表面で細かく分散されていてよい。表面の酸化物及びポアは、炭素表面で細かく分散された触媒を安定化するアンカーポイント(anchor point)として機能すると考えられ、このことは調製及び操作の間の任意の分離効果を抑制すると考えられる。金属触媒の高度で均一な分散は、典型的な黒鉛粉末においては達成することができず、このことは、少なくとも部分的には、本明細書において説明される炭素質粒子によって示される先に記載される表面形態が無いためであると考えられる。
【0103】
表面官能化された炭素質粒子の分散体
本明細書において説明される表面官能化された炭素粒子の、液体中の、任意選択でコロイド状炭素分散体の形成を助ける分散剤が存在する分散体は、本発明の別の態様を示す。これらの分散体は、主にせん断力の形態のエネルギーを適用することによって官能化工程から得られた(典型的にはアグロメレートされた)粒子を分裂させる工程、及び液体極性媒体中で、例えば水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール)又はそれらの混合物中で分散剤を使用することによって一次粒子を安定化させる工程を含むプロセスによって得ることができる。
【0104】
従って、分散プロセスは、本発明のこの態様のさらなる実施態様を示す。例えば、この分散プロセスは摩砕ミル中で行われる。炭素質粒子の極性のある表面形態は水又は極性溶媒での湿潤プロセスを促進し、コロイド状炭素分散体の調製を助けることは明らかである。従って、別の関連する態様は、せん断力を適用して粒子を非アグロメレート化することによって、分散剤の存在下で、液体中の分散体を形成するための、本明細書において説明される表面官能化された炭素粒子の使用に関する。使用することができる適した分散剤の例は、既に上で参照したものを含むが、それらに限定されない。
【0105】
例えば、本明細書において上で説明された分散体は導電性コーティングのためのベースとして使用することができる。
【0106】
測定方法
本明細書において特定されるパーセンテージ(%)の値は、他に具体的にされない限り、質量%である。
【0107】
具体的なBET表面積、DFTミクロポア及びメソポア容積及び面積
方法は、77Kにおけるp/p0=0.04~0.30の範囲の液体窒素の吸収等温式の表示に基づく。窒素気体吸着は、Micromeritics Tristar装置で行われる。Brunauer、Emmet及びTellerによって提案される指示に従って(Adsorption of Gases in Multimolecular Layers、J.Am.Chem.Soc.、1938、60、309~319)、単層容量を決定することができる。窒素分子の断面積に基づいて、サンプルの単層容量及び質量、次いで具体的な表面を計算することができる。77Kで、p/p0 10-5-1の圧力で測定された(Micromeritics ASAP2020装置を用いて行われた)等温線は、DFT計算によって測定及び処理して、ポアサイズ分布、ミクロ及びマイクロポアの容積及び面積を評価する。
参照:Ravikovitch,P.、Vishnyakov,A.、Russo,R.、Neimark,A.、Langmuir 16(2000)2311~2320;Jagiello,J.、Thommes,M、Carbon 42(2004)1227~1232
【0108】
粒子サイズ分布(PSD)
干渉性光線中の粒子の存在は回折を引き起こす。回折パターンの広がりは粒子サイズに関連する。低出力レーザーからの平行な光線が、水中に懸濁されたサンプルを含有するセルをライトアップする。セルを離れる光線は、光学系によってフォーカスされる。次いで、系の焦点面における光エネルギーの分布が解析される。光学検知器によって提供される電気信号が、計算機によって粒子サイズ分布に変換される。方法は、サイズクラスの個別の数に対する粒子の合計の容積の割合をもたらし、その割合は容量的な粒子サイズ分布(PSD)を形成する。典型的には粒子サイズ分布は、値D10、D50及びD90によって定義され、ここで、粒子数の10vol%はD10値より小さいサイズを有し、粒子数の50vol%はD50値より小さいサイズを有し、粒子数の90vol%はD90値より小さいサイズを有する。測定は、乾燥型測定セルを用いて、Sympatec Helosシステムで行われた。
【0109】
粗い黒鉛の粒子サイズ分布は、振動ふるい又はエアジェットふるいを使用するふるい分析によって決定される。粒子サイズ分布は、適用されるふるいのメッシュサイズより大きい粒子サイズを有する材料の量によって決定される。
【0110】
熱質量分析(TGA)
任意の炭素質材料の質量損失の割合の決定は、従来の熱質量分析設備(TGA)を使用することによって行われる。約20~30mgのサンプルを測定のために使用した。熱質量分析装置中の雰囲気は空気であって、10mL/minの流速を有し、10℃/minの加熱速度で1200℃にされる。
【0111】
酸素含有量
固体サンプル中の酸素質量分率は、不活性気体融解又は固体キャリア気体熱引き抜き(IGA)の原理を使用して評価される。サンプルを黒鉛るつぼ中に配置し、電極炉中に挿入する。るつぼをインパルス炉の上部電極と下部電極との間に保持される。不活性気体(H又はAr)でパージして(2500℃より高く)温度を増加させた後、高電流をるつぼに流す。炉中で発生した気体は、流動不活性気体流中に開放される。次いで、気体流は、測定のために、適した赤外検出器(非分散型赤外(NDIR)によってCOとしてO)又は熱伝導度検出器(熱伝導度検出器(TCD)によってN及びH)へ送られる。機器の校正は公知の参照材料を使用して行われる。
【0112】
pH値
1.5gの炭素のサンプルを、数滴のアセトン及び超音波処理を用いて、50mLの蒸留水中に分散させる。校正されたpHメーターの電極をスラリー中に配置する。2minの安定化時間の後、スラリーを撹拌して、pH値を最も近い0.05単位で記録する。
参照:ASTM D1512-95(method B))
【0113】
キシレン密度
キシレン密度は、キシレンの置換によって得られる。約2.5g(0.1mgの精度)の粉末をピクノメーター中で秤量する。真空下でキシレンを加える。通常圧力における数時間の滞留時間の後、ピクノメーターを充填し、条件を調節し、秤量する。密度は、黒鉛の質量と置換されたキシレンの容積との比を表す。値はg/cm3で表記する。
参照
ISO 8004 Carbonaceous materials for the production of aluminium-calcined coke and calcined carbon products.Determination of the density in xylene by a pyknometric method
ISO 9088 Carbonaceous materials used for the production of aluminium-Cathode blocks and prebaked anodes-Determination of the density in xylene by a pyknometric method
DIN 51901 (”Prufung von Kohlenstoffmaterialien-Bestimmung der Dichte nach dem Xylolverfahren”)
ASTM D5004 (Standard Test Method for Real Density of Calcined Petroleum Coke by Xylene Displacement)
【0114】
タップ密度
100gの乾燥黒鉛粉末をメスシリンダー中に注意深く注ぎ入れる。次いで、シリンダーを、オフセンターのシャフトベースのタッピングマシンに固定し、1500ストロークを行う。容積が読まれ、タップ密度が計算される。
参照:DIN-ISO 787-11
【0115】
スコット密度
乾燥炭素粉末をスコット容積計に通し、次いで、16.39cm3(1in3)の容器中に捕集し、0.1mgの精度で秤量する。スコット密度は、質量と容積との比から計算される。
参照:ASTM B 329-98(2003)
【0116】
吸油量
吸油試験は、液体の吸収の観点で、黒鉛及び黒鉛型材料の一般的な挙動を決定する手法である。緩速ろ紙を、13.5nmの内径と底部のふるい(18メッシュ)とを有する遠心分離金属チューブ中に配置する。ろ紙を濡らすために、0.5gのパラフィン油をチューブ中に充填し、521g(1g=9.81m/s2、Sigma 6-10遠心分離器において1500rpmに相当する)で30minの間、遠心分離する。湿潤手順の後、チューブを表労使、0.5gの黒鉛粉末を加える。1.5gのパラフィン油で黒鉛をカバーし、521gで90minの間、遠心分離する。遠心分離の後、チューブを秤量する。100gの黒鉛粉末当たりの吸油量は、質量増加に基づいて計算される。
【0117】
金属濃度(炭素サンプル中の鉄及び鉛について)
この分析は、SDAR OES同時発光分析装置によって行う。振動ミルを用いて80μmの最大粒子サイズに製粉された炭素粉末をタブレットに詰める。サンプルを、分析装置のアルゴン雰囲気下で励起スタンドに配置する。次いで、十分に自動化された分析を開始することができる。
参照:(i)K.Slickers Automatic Emission Spectroscopy Bruhl Druck und Presshaus
Giessen(D)(1992)、(ii)M.Wissler und P.Gebhardt Protokoll der29.Sitzung des
Unterausschusses Feststoffe im Arbeitskreis Kohlenstoff der Deutschen Keramischen Gesellschaft(12./13.Dez 1984)
【0118】
結晶子サイズLa
結晶子サイズLaは式:
La[オングストローム(Å)]=C×(IG/ID)
を使用してラマン測定から計算され、式中、定数Cは、波長514.5nm及び632.8nmを有するレーザーについてそれぞれ44[Å]及び58[Å]の値を有し、IG及びIDは、それぞれ1580cm-1及び1320cm-1におけるG-及びD-バンドのラマン吸収ピークの強度である。
【0119】
ラマン分析は、632.8nmのHeNe LASERを用いて、HORIBA ScientificのLabRAM-ARAMIS Micro-Raman Spectrometerを使用して行った。
【0120】
結晶子サイズLc
結晶子サイズLcは、(002)及び(004)X線回折プロファイルの解析によって決定する。本発明について、Iwashitaによって提案される方法(N.Iwashita、C.Rae Park、H.Fujimoto、M.Shiraishi及びM.InagakiのCarbon 42、701~714(2004))が使用される。Iwashitaによって提案されるアルゴリズムは、炭素材料について特に開発されている。サンプル及び参照物の最大半量におけるラインプロファイルの幅を測定する。補正関数によって、純粋な回折プロファイルの幅を決定することができる。次いで、Scherrerの式(P.Scherrer、Gottinger-Nachrichten 2(1918)p.98)を適用することによって結晶子サイズを計算する。
【0121】
層間間隔c/2
層間間隔c/2はX線回折によって決定する。(002)回折プロファイルのピーク最大値の角度位置を決定し、Braggの式を適用することによって層間間隔を計算する。炭素サンプルをケイ素標準試料と混合する。ポリグリコールとエタノールとの混合物を添加して非常に高粘度のスラリーを得る。次いで、約150μmの薄い層をガラスプレートに適用し、乾燥させる。Cu Kα X線ビームを使用する。
参照:Klug及びAlexander、X-Ray diffraction Procedures John Wiley and Sons Inc.、New York London(1967)
【0122】
鉛取り込み量
1M水性Pb(NO3)2中の炭素質材料の10wt%の分散体を24h撹拌する。次いで、それをろ過し、残留炭素を蒸留水で繰り返し洗浄し、次いで乾燥する。BET表面積及びPb含有量を、上で説明される方法による乾燥炭素について測定する。
【0123】
SEM像
走査型電子顕微鏡(Zeiss Sigma)による画像を、10000倍及び50000倍で(参照Polaroid 545)、1kVの加速電圧及び2~3mmの作動距離で、インレンズ検出器を用いて撮影し、100000倍で(参照Polaroid 545)、30kVの加速電圧及び5.5mm~6mmの作動距離で、STEM検出器を用いて撮影した。
【0124】
水銀圧入多孔度測定
方法は、水銀中に浸漬されたサンプルに適用する圧力に対する水銀の量の測定に基づく。適用する圧力に基づいて、水銀の表面張力、水銀と固体表面との接触角及びポアサイズを計算することができる。実験は、Micromeritics Autopore V機を使用して0.5~4000barの圧力にわたって、(約0.1~0.3gの)サンプルについて行った。データ処理について、130°の接触角及び485×10-3N/mの表面張力を使用した。
【0125】
粉末の導電性、圧縮性及び圧縮仕事
粉末サンプルをダイス中でプレスし、同時にダイスのピストン及びアンビルによってサンプルに電流を流す。ダイスのボディーは絶縁している。サンプルを圧縮する間に、圧力、力、サンプル厚さ及び電圧を測定する。比抵抗を以下:
【数1】
のように計算し、式中、ρ
1(P)は圧力の関数としての比抵抗、Aはサンプルの断面積、iは適用する電流、V(P)は生じた圧力差、t(P)はサンプルの厚さである。比較の目的で、ρ
1(P)を以下:
【数2】
のように計算されるサンプル密度の関数として報告し、式中、ρ
2(P)はサンプルの密度であり、mはその質量である。圧縮についての機械的仕事は、
【数3】
のように計算され、式中、Eは圧縮の機械的仕事、pは圧力、Sは断面積、hは厚さである(N.Probst、E.GriveiらのCarbon 40(2002)201~205)。
【0126】
混合物の粉末導電性
炭素と別の材料との混合物の抵抗を、上の方法によって測定する。異なる混合物についての4.5kNcm-2の圧力における抵抗を炭素濃度の関数としてプロットする。
【0127】
本発明はまた、以下の番号付けされた項目を参照して説明することができる。
項目1.表面官能化された炭素粒子を調製する方法であって、
a)気密シールされた反応器中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程
を含む方法。
項目2.プロセスが、
i)得られた粒子の酸素含有量(IGA)が約0.8wt%より多く、好ましくは約1wt%より多くなるか;
ii)得られた粒子を含む水性分散体のpHが5.5より小さく、5.3より小さく若しくは5.0より小さくなるか;及び/又は
iii)得られた粒子を含む水性分散体のpHが少なくとも0.4pH、少なくとも0.6pH単位若しくは少なくとも0.8pH単位減少する
まで行われる、項目1に記載の方法。
項目3.プロセスが、得られた粒子のBET SSAが約100m2/g~約500m2/gとなるまで行われる、項目1又は2に記載の方法。
項目4.プロセスが、
i)得られた粒子のキシレン密度が約1.65g/cm3~約2.1g/cm3、約1.85g/cm3~約2.00g/cm3又は約1.95g/cm3~約2.00g/cm3となるか;
ii)得られた粒子の吸油量(OA)が70~300mL/100gとなるか;
iii)得られた粒子の鉛取り込み量が2500ppm~40000ppmとなるか;及び/又は
iv)得られた粒子が、約580℃より低いか、若しくは約570℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)によって5wt%の質量損失を示す
まで行われる、項目1~3のいずれか1項目に記載の方法。
項目5.得られた粒子が、
i)1.0μm~8.0μm、好ましくは1.0μm~5.0μmのD50値を有する粒子サイズ分布(PSD);
ii)12μm~70μm、好ましくは15μm~40μmのD90値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iii)0.4μm~1.5μm、好ましくは0.5μm~1.2μmのD10値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iv)約0.15より低いか、約0.12より低いか、若しくは約0.10より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)約0.25より高いか、約0.30より高いか、若しくは約0.32より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
を特徴とする、項目1~4のいずれか1項目に記載の方法。
項目6.工程a)における処理時間が約10h~60h又は約15h~約50hである、項目1~5のいずれか1項目に記載の方法。
項目7.工程a)による生成物が、工程b)を行う前に、気密シールされた反応器中で、少なくとも15min、少なくとも30min又は少なくとも45minの間保持される、項目1~6のいずれか1項目に記載の方法。
項目8.制御された酸化が、空気、水分、酸素、別の酸化性気体及び/又は酸化性液体の存在の下で行われ、酸化性気体がNOx、オゾン又は二酸化炭素であり、酸化性液体が過酸化水素又は硝酸である、項目1~7のいずれか1項目に記載の方法。
項目9.官能化工程b)が、20vol%より少ないか、15vol%より少ないか、又は10vol%より少ない酸素及び/又は酸素含有気体を含む雰囲気に、工程a)から得られた粒子を暴露することを含む、項目1~8のいずれか1項目に記載の方法。
項目10.工程a)において使用される非黒鉛の炭素質材料が、カーボンブラック、石油コークス、か焼石油コークス、ニードルコークス、コールタールベースのコークス、アンスラサイト、か焼アンスラサイト、ポリマーに由来するチャコール、バイオマス、熱分解性炭素、それらの混合物から選択される、項目1~9のいずれか1項目に記載の方法。
項目11.非黒鉛の炭素質材料が、工程a)において行われる機械力の適用の前に、約10wt%~約90wt%又は約20wt%~約80wt%の黒鉛の炭素材料とともに混合される、項目1~10のいずれか1項目に記載の方法。
項目12.黒鉛の炭素材料が天然黒鉛、合成黒鉛、黒鉛化コークス又は黒鉛化アンスラサイトから選択され、任意選択で、黒鉛の炭素材料が約1mmより小さいD50を有する粒子サイズを特徴とする、項目11に記載の方法。
項目13.工程b)から得られた粒子が液体中で、任意選択で分散剤又はポリマー化合物の存在の下で分散される、項目1~12のいずれか1項目に記載の方法。
項目14.項目1~13のいずれか1項目に記載の方法によって得ることができる、表面官能化された炭素質粒子。
項目15.
約14nmより小さいか、約12nmより小さいか、又は約10nmより小さい結晶学的なLc値;及び
約0.6wt%より多いか、約0.8wt%より多いか、又は約1wt%より多い酸素含有量
を有する表面官能化された炭素質粒子。
項目16.
i)約100m2/gより大きいBET表面積;
ii)約500mL/100gより少ないか、約400mL/100gより少ないか、若しくは約300mL/100gより少ない吸油量(OA);
iii)約2mL/gより小さいか、若しくは約1.8mL/gより小さい粒内ポア容積;
iv)約3mL/gより小さいか、若しくは約2.5mL/gより小さい合計ポア容積;及び/又は
v)約2800ppmより多い鉛取り込み量
をさらに特徴とする、項目15に記載の表面官能化された炭素質粒子。
項目17.
i)約0.6wt%より多いか、若しくは約0.8wt%より多い、好ましくは約1wt%より多い酸素含有量(IGA);
ii)5.5より小さいか、5.3より小さいか、5.1より小さいか、若しくは5.0より小さい、得られた粒子を含む水性分散体のpH;及び/又は
iii)約100m2/g~約500m2/gのBET SSA
をさらに特徴とする、項目15又は16に記載の表面官能化された炭素質粒子。
項目18.
i)約1.65g/cm3~約2.1g/cm3、約1.85g/cm3~約2.00g/cm3若しくは約1.95g/cm3~約2.00g/cm3のキシレン密度;
ii)約70~約300mL/100gの吸油量(OA);
iii)約2500ppm~約40000ppmの鉛取り込み量;及び/又は
iv)約580℃より低いか、若しくは約570℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)による5wt%の質量損失
をさらに特徴とする、項目15~17のいずれか1項目に記載の表面官能化された炭素質粒子。
項目19.
i)1.0μm~8.0μm、任意選択で1.0μm~5.0μmのD50値を有する粒子サイズ分布(PSD);
ii)12μm~70μm、任意選択で15μm~40μmのD90値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iii)0.4μm~1.5μm、任意選択で0.5μm~1.2μmのD10値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iv)約0.15より低いか、約0.12より低いか、若しくは約0.10より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)約0.25より高いか、約0.30より高いか、若しくは約0.32より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
をさらに特徴とする、項目15~18のいずれか1項目に記載の表面官能化された炭素質粒子。
項目20.項目15~19のいずれか1項目において画定される表面官能化された炭素質粒子と、少なくとも1つのリグノスルホネート及び/又は硫酸バリウムとを含む組成物。
項目21.鉛酸電池における導電性添加剤としてか、リチウム硫黄電池においてか、触媒担体としてか、電池中の添加剤としてか、ポリマー中の添加剤としてか、ろ過助剤としてか、容量性脱イオン助剤としてか、又は任意選択で5.5F/gより高い、6F/gより高い、6.5F/gより高い若しくは7.0F/gより高い平均キャパシタンスを有する電気化学二重層キャパシタにおいての、項目15~19のいずれか1項目において画定される表面官能化された炭素質粒子又は項目20に記載の組成物の使用。
項目22.導電性添加剤として項目15~19のいずれか1項目において画定される表面官能化された炭素質粒子又は項目20において画定される組成物を含む電池電極。
項目23.電極の合計の質量の約0.2~約2wt%の量の硫酸バリウムをさらに含むか、及び/又は電極の合計の質量の約0.1~約1.5wt%の量の少なくとも1つのリグノスルホネートをさらに含む、項目22に記載の電池電極。
項目24.鉛酸電池又はリチウム硫黄電池における、項目22又は項目23に記載の電池電極の使用。
項目25.項目15~19のいずれか1項目において画定される表面官能化された炭素質粒子によってか、又は項目20において画定される組成物によって充填されたポリマー化合物。
項目26.項目15~19のいずれか1項目において画定される表面官能化された炭素質粒子又は項目20において画定される組成物の、液体における、任意選択で分散剤及び/又はポリマーの存在下での分散体。
【0128】
ここまで、本発明の種々の態様を一般的な用語で説明したが、当分野の当業者にとって、本発明の趣旨及び範囲を外れることなく、多くの変更及び軽微な変化が可能であることは明らかである。ここから、例示のために、以下の実施例と関連して、幾つかの実施態様を説明する。
【実施例】
【0129】
実施例1:表面官能化された炭素質粒子の調製のための方法
下の表1に示す特徴を有する炭素質材料(前駆体)を、約30mmの直径を有し合計の質量が50kgである鋼のボールで約25%の容積を充填した40~50Lのチャンバー容積を有するドラムミル中に装填した。装填した炭素質材料の量は、約25の粉砕媒体/炭素質材料の質量比に対応する。ドラムミルを窒素で充填し、気密シールした。次いで、(乾燥)粉砕プロセスをドラムミルの気密粉砕チャンバー中で行った。
【0130】
粉砕プロセスを終了させた後、粉砕された材料を、少なくとも約0.5hの間、シールした(気密)粉砕チャンバー中に置き、次いで官能化プロセスのために強力なバッチミキサー(Eirich、ドイツ、8Lのバッチサイズ)中に移した。材料を、空気と接触させて、最小で1hの間、加熱せずに(すなわち室温から出発するが、発熱反応のために混合物が昇温する)、穏やかに撹拌して、結果として表1の特徴の表面官能化された炭素粒子を得た。
表1-炭素質出発材料及び実施例1によって調製された表面官能化された炭素質粒子の物理的特徴
【表1-1】
【表1-2】
【0131】
実施例2:炭素/黒鉛混合の表面官能化された炭素質粒子の調製のための方法
下の表2に示される特徴を有するカーボンブラック材料を合成黒鉛、TIMREX(登録商標)KS 500と混合して(黒鉛/カーボンブラックの質量比で、それぞれ60/40(材料7)及び80/20(材料8))、約30mmの直径を有し合計の質量が50kgである鋼のボールで約25%の容積を充填した40~50Lのチャンバー容積を有するドラムミル中に装填した。合成黒鉛についての典型的な値を下の表2Aに示す。装填した炭素質材料の量は、約25の粉砕媒体/炭素質材料の質量比に対応する。ドラムミルを窒素で充填し、気密シールした。次いで、(乾燥)粉砕プロセスをドラムミルの気密粉砕チャンバー中で行った。
【0132】
粉砕プロセスを終了させた後、粉砕された材料を、少なくとも約0.5hの間、シールした(気密)粉砕チャンバー中に置き、次いで官能化プロセスのために強力なバッチミキサー(Eirich、ドイツ、8Lのバッチサイズ)中に移した。材料を、空気と接触させて、最小で1hの間、加熱せずに(すなわち室温から出発するが、発熱反応のために混合物が昇温する)、穏やかに撹拌して、結果として表2の特徴の表面官能化された炭素粒子を得た。
表2A-材料番号6及び7のための前駆体黒鉛材料TIMREX KS 500前駆体の物理的特徴
【表2】
表2B-炭素質出発材料及び実施例2によって調製された表面官能化された炭素質粒子の物理的特徴
【表3-1】
【表3-2】
【0133】
実施例3:炭素質材料の付加的な特徴(抵抗及び圧縮性)
実施例1及び2において説明されるように調製した炭素質材料を、それらの電気抵抗及びそれらの圧縮性に関してさらに特性評価した。結果を下の表3に要約する。
表3-炭素質出発材料と、実施例1及び2によって調製された表面官能化された炭素質粒子との抵抗及び圧縮性
【表4】
【0134】
上の表1に示すように、とりわけ、材料1についてのBET SSAは、わずか64m2/gの前駆体カーボンブラック材料(CB1)のBET SSAから、291m2/gに増加し;鉛取り込み量は700ppmから6000ppmに増加し;IGA酸素含有量(wt%)は0.085%から2.8%に有意に増加した。
【0135】
材料2及び3について、とりわけ、BET SSAは、わずか3m2/gの前駆体コークス材料の非常に低いBET SSAに対して有意に増加し;鉛取り込み量もまた、前駆体コークスの25ppmと比較して有意に増加し;IGA酸素含有量(wt%)は、前駆体コークスの0.028%に対して有意に増加した。
【0136】
材料4及び5について、とりわけ、BET SSAは、前駆体カーボンブラック(CB2)材料についてのBET SSAと類似であるが;IGA酸素含有量(wt%)は、前駆体カーボンブラック(CB2)の0.53%に対して増加し;内部ポア容積(<12μm)は、前駆体CB2材料の3.04mL/gより有意に低かった。
【0137】
上の表2Bに示すように、とりわけ、材料6及び7(出発材料としてはカーボンブラックと黒鉛との混合物)についてのBET SSAは、前駆体カーボンブラック材料(CB1)のBET SSA(わずか64m2/g)及び前駆体黒鉛材料のBET SSA(1.6m2/g)より有意に高く;鉛取り込み量は、前駆体CB1の700ppmから有意に増加し;IGA酸素%もまた、前駆体CB1のIGA酸素%から有意に増加した。
【0138】
上の表3に示すように、とりわけ、材料1についての、4及び20kN/cm2における抵抗は、わずか0.052及び0.019の前駆体カーボンブラック材料(CB1)についての抵抗に対して、それぞれわずかに増加した。
【0139】
さらに、材料2及び3についての、4及び20kN/cm2における抵抗は、わずか0.045及び0.023の前駆体コークス材料についての抵抗に対して、それぞれわずかに増加した。
【0140】
さらに、材料6及び7についての、20kN/cm2における抵抗は、わずか0.019の前駆体CB1材料についての抵抗に対して、わずかに増加した。
【0141】
さらに、4kN/cm2以上の圧縮圧力における密度は、カーボンブラックに由来する材料についてはわずかに増加したが、コークスに由来する材料についてはわずかに減少した。
【0142】
処理は元のカーボンブラック構造を破壊又は改質すると考えられるため、表3における100kg・cmの機械的仕事で測定した密度から分かるように、処理したカーボンブラックに由来する材料の圧縮性は、カーボンブラック前駆体と比較して増加した。
【0143】
前駆体材料に対して増加した、材料1~7の表面における酸素含有基の含有量(それらの増加したIGA酸素%によって示唆される)は、観察された鉛に対する高い親和性の要因と考えられ、このことは鉛の増大した電気化学的堆積をもたらすと期待される。
【0144】
従って、炭素材料、例えば材料1~7は、特に鉛酸電池の負極板の鉛構造中に効果的に取り込まれることができる。他の工業的な鉛酸電池の用途と同様に、特に自動車においてスタート/ストップ機能を支持するために使用される高度な鉛酸電池の充電操作モードの高い電流部分状態において操作されるとき、これらの炭素材料は、添加剤として、鉛酸電池のサイクル安定性を改善することができる。加えて、増大したBET表面積を有する炭素、例えば材料1~7は、ブレーキ操作によって発生する電気の貯蔵のために必要である、高度な鉛酸電池の電荷受容性もまた改善する。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
表面官能化された炭素粒子を調製する方法であって、
a)気密シールされた反応器中で、非黒鉛の炭素質材料に機械力を適用する工程;及び
b)得られた改質炭素粒子を制御された酸化によって官能化する工程
を含み、任意選択で、プロセスが
i)得られた粒子の酸素含有量(IGA)が約0.8wt%より多く、好ましくは約1wt%より多くなるか;
ii)得られた粒子を含む水性分散体のpHが5.5より低く、5.3より低く若しくは5.0より低くなるか;及び/又は
iii)得られた粒子を含む水性分散体のpHが少なくとも0.4pH、少なくとも0.6pH単位若しくは少なくとも0.8pH単位減少する
まで行われる方法。
(付記2)
プロセスが、
i)得られた粒子のBET比表面積(BET SSA)が約100m
2
/g~約500m
2
/gとなるか;
ii)得られた粒子のキシレン密度が約1.65g/cm
3
~約2.1g/cm
3
、約1.85g/cm
3
~約2.00g/cm
3
若しくは約1.95g/cm
3
~約2.00g/cm
3
となるか;
iii)得られた粒子の吸油量(OA)が70~300mL/100gとなるか;
iv)得られた粒子の鉛取り込み量が2500ppm~40000ppmとなるか;及び/又は
v)得られた粒子が、約580℃より低いか、若しくは約570℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)によって5wt%の質量損失を示す
まで行われる、付記1に記載の方法。
(付記3)
得られた粒子が、
i)1.0μm~8.0μm、好ましくは1.0μm~5.0μmのD
50
値を有する粒子サイズ分布(PSD);
ii)12μm~70μm、好ましくは15μm~40μmのD
90
値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iii)0.4μm~1.5μm、好ましくは0.5μm~1.2μmのD
10
値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iv)約0.15より低いか、約0.12より低いか、若しくは約0.10より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)約0.25より高いか、約0.30より高いか、若しくは約0.32より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
を特徴とする、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
i)工程a)における処理時間が約10h~60h若しくは約15h~約50hであるか;
ii)工程a)による生成物が、工程b)を行う前に、気密シールされた反応器中で、少なくとも15min、少なくとも30min若しくは少なくとも45minの間保持されるか;及び/又は
iii)官能化工程b)が、20vol%より少ないか、15vol%より少ないか、又は10vol%より少ない酸素及び/又は酸素含有気体を含む雰囲気に工程a)から得られた粒子を暴露することを含み、任意選択で、工程b)における制御された酸化が、空気、水分、酸素、別の酸化性気体及び/又は酸化性液体の存在下で行われ、酸化性気体がNO
x
、オゾン又は二酸化炭素であり、酸化性液体が過酸化水素又は硝酸である、付記1~3のいずれか1項に記載の方法。
(付記5)
工程a)において使用される非黒鉛の炭素質材料が、カーボンブラック、石油コークス、か焼石油コークス、ニードルコークス、コールタールベースのコークス、アンスラサイト、か焼アンスラサイト、ポリマーに由来するチャコール、バイオマス、熱分解性炭素及びそれらの混合物から選択される、付記1~4のいずれか1項に記載の方法。
(付記6)
非黒鉛の炭素質材料が、工程a)において行われる機械力の適用の前に、約10wt%~約90wt%又は約20wt%~約80wt%の黒鉛の炭素材料とともに混合され;任意選択で、黒鉛の炭素材料が天然黒鉛、合成黒鉛、黒鉛化コークス又は黒鉛化アンスラサイトから選択され、任意選択で、黒鉛の炭素材料が約1mmより小さいD
50
を有する粒子サイズを特徴とする、付記1~10のいずれか1項に記載の方法。
(付記7)
工程b)から得られた粒子が液体中で、任意選択で分散剤又はポリマー化合物の存在の下で分散される、付記1~6のいずれか1項に記載の方法。
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、表面官能化された炭素質粒子。
(付記9)
約14nmより小さいか、約12nmより小さいか、又は約10nmより小さい結晶学的なL
c
値;及び
約0.6wt%より多いか、約0.8wt%より多いか、又は約1wt%より多い酸素含有量
を有し、任意選択で、
i)約100m
2
/gより大きいBET表面積;
ii)約500mL/100gより少ないか、約400mL/100gより少ないか、若しくは約300mL/100gより少ない吸油量(OA);
iii)約2mL/gより小さいか、若しくは約1.8mL/gより小さい粒内ポア容積;
iv)約3mL/gより小さいか、若しくは約2.5mL/gより小さい合計ポア容積;及び/又は
v)約2800ppmより多い鉛取り込み量
をさらに特徴とする、表面官能化された炭素質粒子。
(付記10)
i)約0.6wt%より多いか、若しくは約0.8wt%より多い、好ましくは約1wt%より多い酸素含有量(IGA);
ii)5.5より小さいか、5.3より小さいか、5.1より小さいか、若しくは5.0より小さい、得られた粒子を含む水性分散体のpH;
iii)約100m
2
/g~500m
2
/gのBET SSA;
iv)約1.65g/cm
3
~約2.1g/cm
3
、約1.85g/cm
3
~約2.00g/cm
3
若しくは約1.95g/cm
3
~約2.00g/cm
3
のキシレン密度;
v)約70~約300mL/100gの吸油量(OA);
vi)約2500ppm~約40000ppmの鉛取り込み量;及び/又は
vii)約580℃より低いか、若しくは約570℃より低いオンセット温度での熱質量分析(TGA)による5wt%の質量損失
をさらに特徴とする、付記9に記載の表面官能化された炭素質粒子。
(付記11)
i)1.0μm~8.0μm、任意選択で1.0μm~5.0μmのD
50
値を有する粒子サイズ分布(PSD);
ii)12μm~70μm、任意選択で15μm~40μmのD
90
値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iii)0.4μm~1.5μm、任意選択で0.5μm~1.2μmのD
10
値を有する粒子サイズ分布(PSD);
iv)約0.15より低いか、約0.12より低いか、若しくは約0.10より低いDFTメソポア面積/BET SSAの比;及び/又は
v)約0.25より高いか、約0.30より高いか、若しくは約0.32より高いDFTミクロポア面積/BET SSAの比
の粒子サイズ分布(PSD)をさらに特徴とする、付記9又は10に記載の表面官能化された炭素質粒子。
(付記12)
付記8~11のいずれか1項に記載の表面官能化された炭素質粒子と、少なくとも1つのリグノスルホン酸及び/又は硫酸バリウムとを含む組成物。
(付記13)
鉛酸電池における導電性添加剤としてか、リチウム硫黄電池においてか、触媒担体としてか、電池中の添加剤としてか、ポリマー中の添加剤としてか、ろ過助剤としてか、容量性脱イオン助剤としてか、又は任意選択で5.5F/gより大きい、6F/gより大きい、6.5F/gより大きい若しくは7.0F/gより大きい平均キャパシタンスを有する電気化学二重層キャパシタにおいての、付記8~11のいずれか1項に記載の表面官能化された炭素質粒子又は付記12に記載の組成物の使用。
(付記14)
導電性添加剤として付記8~11のいずれか1項に記載の表面官能化された炭素質粒子又は付記12に記載の組成物を含む電池電極であって、任意選択で、電極の合計質量の約0.2~約2wt%の量の硫酸バリウムをさらに含むか、及び/又は電極の合計質量の約0.1~約1.5wt%の量の少なくとも1つのリグノスルホン酸をさらに含む、電池電極。
(付記15)
付記8~11のいずれか1項に記載の表面官能化された炭素質粒子、若しくは付記12に記載の組成物によって充填されたポリマー化合物、又は付記8~11のいずれか1項に記載の表面官能化された炭素質粒子若しくは付記12に記載の組成物の、液体における、任意選択で分散剤及び/若しくはポリマーの存在下での分散体。