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特許7587435コンクリート切削装置、及び既設覆工コンクリート切削工法
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  • 特許-コンクリート切削装置、及び既設覆工コンクリート切削工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】コンクリート切削装置、及び既設覆工コンクリート切削工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021020046
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122668
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】清水 靖也
(72)【発明者】
【氏名】加古 昌之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広道
(72)【発明者】
【氏名】津福 均
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博文
(72)【発明者】
【氏名】西脇 敬一
(72)【発明者】
【氏名】岩城 圭介
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-038891(JP,A)
【文献】特開2012-207416(JP,A)
【文献】特開平11-173088(JP,A)
【文献】特開2004-324137(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164455(JP,U)
【文献】特開2003-020898(JP,A)
【文献】特開昭61-172998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0050088(US,A1)
【文献】特開平05-010100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供用中のトンネルの内面を覆工する既設覆工コンクリートを切削するコンクリート切削装置であって、
トンネル内部に配置され、通行体が通行可能な通行空間を内側に有するとともに、少なくともトンネル軸方向に移動可能な断面門型状の門型枠体と、
処理液を前記既設覆工コンクリートに向けて高圧で噴出する高圧噴射部と、
前記既設覆工コンクリートの内面に対して前記高圧噴射部を移動可能に支持する支持枠とが備えられ、
前記支持枠は、前記門型枠体に支持される構成であり、
前記支持枠に、
前記門型枠体に対して、トンネル軸方向に移動可能な支持枠移動手段が備えられ、
前記支持枠は、
前記高圧噴射部がトンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールと、
前記高圧噴射部が既設覆工コンクリートの内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールとが備えられ、
前記断面方向ガイドレールは、トンネル内面における略半断面に対応する長さの円弧状で形成されるとともに、
前記断面方向ガイドレールの内側に、前記高圧噴射部の前記処理液の噴射による切削ガラの飛散を防護する防護部が設けられ、
前記防護部の下方に、前記切削ガラを集約するとともに、トンネル軸方向に搬送する搬送装置が設けられ、
前記支持枠、前記高圧噴射部及び前記搬送装置は、前記門型枠体に対してトンネル幅方向の両側に設けられるとともに、
前記搬送装置によって前記トンネル軸方向に搬送される前記切削ガラを前記トンネル幅方向の片側に集める土砂集積装置が備えられた
コンクリート切削装置。
【請求項2】
前記支持枠を前記トンネル内面に対して断面径方向に移動させる径方向移動手段が備えられた
請求項1に記載のコンクリート切削装置。
【請求項3】
前記門型枠体の下端に、トンネル床面にトンネル軸方向に敷設されたレールを転動する車輪が設けられた
請求項1又は請求項2に記載のコンクリート切削装置。
【請求項4】
供用中のトンネルの内面を覆工する既設覆工コンクリートを切削する既設覆工コンクリート切削工法であって、
トンネル内部に配置され、内部に通行体が通行可能な通行空間を内側に有するとともに、少なくともトンネル軸方向に移動可能な断面門型状の門型枠体に設けられた支持枠で移動可能に支持した高圧噴射部から前記既設覆工コンクリートに向けて処理液を高圧で噴出させる既設覆工コンクリートの切削と、
前記支持枠に対する前記高圧噴射部の移動と、前記門型枠体のトンネル軸方向の移動とを繰り返し、
前記支持枠に、
前記門型枠体に対して、トンネル軸方向に移動可能な支持枠移動手段が備えられ、
前記支持枠は、
前記高圧噴射部がトンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールと、
前記高圧噴射部が既設覆工コンクリートの内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールとが備えられ、
前記断面方向ガイドレールは、トンネル内面における略半断面に対応する長さの円弧状で形成されるとともに、
前記断面方向ガイドレールの内側に、前記高圧噴射部の前記処理液の噴射による切削ガラの飛散を防護する防護部が設けられ、
前記防護部の下方に、前記切削ガラを集約するとともに、トンネル軸方向に搬送する搬送装置が設けられ、
前記支持枠、前記高圧噴射部及び前記搬送装置は、前記門型枠体に対してトンネル幅方向の両側に設けられるとともに、
前記搬送装置によって前記トンネル軸方向に搬送される前記切削ガラを土砂集積装置によって前記トンネル幅方向の片側に集める
既設覆工コンクリート切削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供用中のトンネルの内面を覆工するコンクリートを切削するコンクリート切削装置、及び既設覆工コンクリート切削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
内面がコンクリートで覆工された供用中のトンネルでは、トンネル構築後長期間が経過し、覆工コンクリートが経年劣化等により、耐力低下や変状が発生しているものがある。このように、覆工コンクリートの耐力低下や変状が発生したトンネルにおいて覆工コンクリートを切削することとなる。
【0003】
例えば、特許文献1には、施工面に設けたガイドレールによって上下方向と左右方向とに、処理液を高圧で噴射する高圧噴射装置を移動可能に構成することが開示されている。この装置により、上下左右に高圧噴射装置を移動させながら施工面を切削することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、施工面の切削が完了すると、施工面に設けたガイドレールを次の施工面に盛り替える必要があり、施工面積が広くなる供用中のトンネルの覆工コンクリートの切削に用いることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-133316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、高圧噴射部で既設覆工コンクリートを効率よく切削できるコンクリート切削装置、及び既設覆工コンクリート切削工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、供用中のトンネルの内面を覆工する既設覆工コンクリートを切削するコンクリート切削装置であって、トンネル内部に配置され、通行体が通行可能な通行空間を内側に有するとともに、少なくともトンネル軸方向に移動可能な断面門型状の門型枠体と、処理液を前記既設覆工コンクリートに向けて高圧で噴出する高圧噴射部と、前記既設覆工コンクリートの内面に対して前記高圧噴射部を移動可能に支持する支持枠とが備えられ、前記支持枠は、前記門型枠体に支持される構成であり、前記支持枠に、前記門型枠体に対して、トンネル軸方向に移動可能な支持枠移動手段が備えられ、前記支持枠は、前記高圧噴射部がトンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールと、前記高圧噴射部が既設覆工コンクリートの内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールとが備えられ、前記断面方向ガイドレールは、トンネル内面における略半断面に対応する長さの円弧状で形成されるとともに、前記断面方向ガイドレールの内側に、前記高圧噴射部の前記処理液の噴射による切削ガラの飛散を防護する防護部が設けられ、前記防護部の下方に、前記切削ガラを集約するとともに、トンネル軸方向に搬送する搬送装置が設けられ、前記支持枠、前記高圧噴射部及び前記搬送装置は、前記門型枠体に対してトンネル幅方向の両側に設けられるとともに、前記搬送装置によって前記トンネル軸方向に搬送される前記切削ガラを前記トンネル幅方向の片側に集める土砂集積装置が備えられたことを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、供用中のトンネルの内面を覆工する既設覆工コンクリートを切削する既設覆工コンクリート切削工法であって、トンネル内部に配置され、内部に通行体が通行可能な通行空間を内側に有するとともに、少なくともトンネル軸方向に移動可能な断面門型状の門型枠体に設けられた支持枠で移動可能に支持した高圧噴射部から前記既設覆工コンクリートに向けて処理液を高圧で噴出させる既設覆工コンクリートの切削と、前記支持枠に対する前記高圧噴射部の移動と、前記門型枠体のトンネル軸方向の移動とを繰り返し、前記支持枠に、前記門型枠体に対して、トンネル軸方向に移動可能な支持枠移動手段が備えられ、前記支持枠は、前記高圧噴射部がトンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールと、前記高圧噴射部が既設覆工コンクリートの内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールとが備えられ、前記断面方向ガイドレールは、トンネル内面における略半断面に対応する長さの円弧状で形成されるとともに、前記断面方向ガイドレールの内側に、前記高圧噴射部の前記処理液の噴射による切削ガラの飛散を防護する防護部が設けられ、前記防護部の下方に、前記切削ガラを集約するとともに、トンネル軸方向に搬送する搬送装置が設けられ、前記支持枠、前記高圧噴射部及び前記搬送装置は、前記門型枠体に対してトンネル幅方向の両側に設けられるとともに、前記搬送装置によって前記トンネル軸方向に搬送される前記切削ガラを土砂集積装置によって前記トンネル幅方向の片側に集めることを特徴とする。
【0009】
上述の前記高圧噴射部がトンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールは、軸方向ガイドレールに対して直接高圧噴射部がトンネル軸方向に移動してもよいし、断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールを介して高圧噴射部がトンネル軸方向に移動してもよい。
【0010】
また、前記高圧噴射部が既設覆工コンクリートの内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールは、断面方向ガイドレールに対して直接高圧噴射部が断面方向に移動してもよいし、トンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールを介して高圧噴射部が断面方向に移動してもよい。
なお、搬送装置は、ベルトコンベアや圧送装置などを用いることができる。
【0011】
この発明により、既設覆工コンクリートを効率よく切削することができる。
詳述すると、トンネル内部に配置された門型枠体で支持する支持枠に対して高圧噴射部を移動させることができ、移動可能範囲の切削が完了すると、門型枠体を少なくともトンネル軸方向に移動するだけで、支持枠を盛り替えることなく、次の移動可能範囲の既設覆工コンクリートを切削することができる。したがって、高圧噴射部で既設覆工コンクリートを効率よく切削することができる。
【0012】
また、門型枠体の内側には通行体が通行可能な通行空間が設けられるため、供用中のトンネルの既設覆工コンクリートを切削する場合であっても、通行空間に車両などの通行体を通行させながら施工することができる。換言すると、供用中のトンネルであっても、通行止めにすることなく、既設覆工コンクリートを切削して改修することができる。
【0013】
また、前記支持枠に、前記門型枠体に対して、トンネル軸方向に移動可能な支持枠移動手段が備えられているため、既設覆工コンクリートをさらに効率よく切削することができる。
【0014】
詳述すると、前記門型枠体に対して、前記支持枠をトンネル軸方向に移動可能な支持枠移動手段が備えられているため、支持枠で支持した状態の高圧噴射部で移動可能範囲の切削が完了すると、門型枠体を移動しなくても、門型枠体に対して支持枠を移動するだけで、支持枠を盛り替えることなく、次の移動可能範囲の既設覆工コンクリートを効率よく切削することができる。
【0015】
また、前記支持枠は、前記高圧噴射部がトンネル軸方向に走行可能な軸方向ガイドレールと、前記高圧噴射部が既設覆工コンクリートの内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレールとが備えられているため、高圧噴射部をトンネル軸方向及び断面方向の両方向に移動させて、既設覆工コンクリートの内面に沿って高圧噴射部を移動させて、効率よく既設覆工コンクリートを切削することができる。
【0016】
また、前記断面方向ガイドレールは、トンネル内面における略半断面に対応する長さの円弧状で形成されるとともに、前記支持枠と前記高圧噴射部とは、前記門型枠体に対してトンネル幅方向の両側に設けられているため、例えば、馬蹄形断面や略三芯円形断面のトンネル内面の既設覆工コンクリートを効率よく切削することができる。
【0017】
また、前記断面方向ガイドレールの内側に、前記高圧噴射部の前記処理液の噴射による切削ガラの飛散を防護する防護部が設けられているため、前記処理液の噴射によって切削した既設覆工コンクリートの切削ガラの内側への飛散を防止することができる。
【0018】
また、前記防護部の下方に、前記切削ガラを集約するとともに、トンネル軸方向に搬送する搬送装置が設けられているため、切削ガラを効率よく回収し、トンネル外部に搬出することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記支持枠を前記トンネル内面に対して断面径方向に移動させる径方向移動手段が備えられてもよい。
この発明により、既設覆工コンクリートに対して高圧噴射部を適切な位置に配置することができる。
【0020】
また、径方向移動手段で支持枠をトンネル内面から離間する方向に移動させることで、トンネル内面と支持枠との間隔を空けることができ、門型枠体をトンネル軸方向に容易に移動させることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記門型枠体の下端に、トンネル床面にトンネル軸方向に敷設されたレールを転動する車輪が設けられてもよい。
この発明により、門型枠体を容易にトンネル軸方向に移動させることができる。したがって、高圧噴射部で既設覆工コンクリートを効率よく切削することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、高圧噴射部で既設覆工コンクリートを効率よく切削できるコンクリート切削装置、及び既設覆工コンクリート切削工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】既設覆工切削工程のフローチャート。
図2】コンクリート切削ユニットの概略説明図。
図3】コンクリート切削ユニットの断面説明図。
図4】既設覆工切削部の断面図。
図5】既設覆工切削部の側面図。
図6】切削部台車の一部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
既設トンネル1の既設覆工コンクリート3を切削するコンクリート切削ユニット10の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1は既設覆工切削工程のフローチャートを示している。
【0025】
図2はコンクリート切削ユニット10の前段部分(先行部台車100、切削部台車200、)の側面図を図示している。
図3はコンクリート切削ユニット10の断面説明図を示している。詳しくは、図3(a)は隔壁部20の断面図を示し、図3(b)は先行部台車100の断面図を示している。
【0026】
図4は切削部台車200の断面図を示し、図5は切削部台車200の側面図を示し、図6は、先行側F且つ幅方向右側WRからの切削部台車200の一部斜視図を示している。
なお、図3及び図4に示す断面図は、トンネル軸方向Lにおいて施工方向の手前側から先行側に向かって見た方向を図示している。
【0027】
また、既設トンネル1の延長方向であるトンネル軸方向Lにおいて施工方向の手前側を手前側Bとし、施工箇所に対して未施工箇所の方向を先行側Fとしている。また、トンネル断面の幅方向をトンネル幅方向Wとし、トンネル幅方向Wのうち先行側Fに向って右側を幅方向右側WRとし、先行側Fに向って左側を幅方向左側WLとしている。
【0028】
コンクリート切削対象となる既設トンネル1は、通行車両5が通行する供用中の道路トンネルであり、底部に路盤2を有する略三芯円形断面で構成されている。そして、路盤2より上部の円形部分の内面には、所定厚みの覆工コンクリート3(以下において、既設覆工コンクリート3という)が巻き立てられている。
【0029】
なお、既設トンネル1は、道路トンネルでなくても、列車が通行する鉄道トンネルや人が通る人道トンネル、水道などのインフラ設備が配置されるトンネルなどであってもよい。
また、既設トンネル1の断面形状は、上述の断面形状でなくても、例えば、馬蹄形や矩形などの適宜の断面形状であってもよい。
さらに、既設覆工コンクリート3は、吹き付けコンクリート、鉄筋コンクリート、あるいは無筋コンクリートなどであってもよい。
【0030】
このようにトンネル内面を覆工する既設覆工コンクリート3は、トンネル構築後長期間が経過し、覆工コンクリートが経年劣化等により、耐力低下や変状が発生しているものがある。本明細書で説明するトンネル改修工法は、コンクリート切削ユニット10を用い、上述のように耐力低下や変状が発生した既設覆工コンクリート3の内側表面を切削し、所定の性能を有するコンクリートを打設して、既設覆工コンクリート3の代わりに新たな覆工コンクリート4(図4参照)でトンネル内面を覆工するものである。
【0031】
そのために用いるコンクリート切削ユニット10は、先行側Fの端部に隔壁部20を有する先行部台車100、切削部台車200、及び適宜の台車が、トンネル軸方向Lに沿って、先行側Fから手前側Bに向かってこの順で配置されている。
【0032】
この順で配置されたコンクリート切削ユニット10に対して、トンネル内部1aにおける幅方向右側WRには、切削部台車200で既設覆工コンクリート3を切削した切削ガラを先行側Fに向かって搬送する右搬送ベルトコンベア40と、幅方向左側WLには、切削部台車200で切削した切削ガラを搬送する左搬送ベルトコンベア50が配置されている。
【0033】
なお、右搬送ベルトコンベア40は、トンネル軸方向Lに複数台を直列配置して、切削部台車200から先行部台車100の先行側Fまでの範囲で配置されている。これに対し、左搬送ベルトコンベア50は、トンネル軸方向Lに複数台を直列配置して、切削部台車200から隔壁部20を越えてさらに先行側Fまで延びる範囲で配置されている。そして、左搬送ベルトコンベア50の先端から、排出された切削ガラを、先行側Fに向かって排出するように構成している。
【0034】
先行部台車100、及び切削部台車200は、防護台車30を備えている。
防護台車30は、通行車両5が通行できる通行空間30Xを内部に形成する正面視門型状であり、下端には、路盤2に仮設置したレール2a(図4参照)の上を転動する車輪31を設けている。
【0035】
正面視門型状に形成された防護台車30は、門型の枠体を、所定間隔を隔てて配置するとともに複数の梁部材で連結した所定の骨組構造を有するとともに、外表面は鋼板で覆われている。なお、図6では、鋼板を透過させ、内部の骨組構造を破線で図示している。
そして、先行部台車100、及び切削部台車200における防護台車30同士は、連結部32で連結されている。
【0036】
先行部台車100は、及び図3(b)に示すように、防護台車30の先行側Fに、切削ガラをトンネル幅方向Wの片側に集める土砂集積装置110を備えている。
土砂集積装置110は、幅方向右側WRに配置された右搬送ベルトコンベア40で搬送された切削ガラを、幅方向左側WLに配置された左搬送ベルトコンベア50に集約するための装置である。
【0037】
土砂集積装置110は、幅方向右側WRから上部に向けて切削ガラを搬送するスキップエレバータ120と、幅方向左側WLの上部から下部に配置された左搬送ベルトコンベア50に向かって排出する排出シュート130とで構成している。
【0038】
スキップエレバータ120は、右搬送ベルトコンベア40の先端から搬出された切削ガラを受けるバケット121と、防護台車30の右側下方から上部左側まで延びるレール122と、レール122に沿ってバケット121を駆動する駆動装置123とを備えている。
【0039】
排出シュート130は、スキップエレバータ120で防護台車30の左側の上部まで移動したバケット121から切削ガラを受ける投入口131と、投入口131から投入された切削ガラを左搬送ベルトコンベア50に向かって排出する排出口132とを有している。
【0040】
このように構成された土砂集積装置110は、防護台車30の幅方向右側WRに配置された右搬送ベルトコンベア40で搬送された切削ガラをバケット121で受け、レール122に沿ってバケット121を駆動装置123の駆動により防護台車30の上部左側まで搬送する。
【0041】
防護台車30の上部左側まで搬送されたバケット121から切削ガラを投入口131に投入すると、投入された切削ガラは排出シュート130の内部を落下し、排出口132から左搬送ベルトコンベア50に向かって排出される。これにより、幅方向右側WRの右搬送ベルトコンベア40で搬送した切削ガラを幅方向左側WLの左搬送ベルトコンベア50に集約することができる。
【0042】
このように、防護台車30の先行側Fに土砂集積装置110が設けられた先行部台車100の先行側Fには、コンクリート切削ユニット10より先行側Fを仕切る隔壁部20が設けられている。
隔壁部20は、及び図3(a)に示すように、先行部台車100を構成する防護台車30の上半の外側と既設トンネル1の既設覆工コンクリート3の内面とをトンネル軸方向Lに遮る壁面21と、壁面21の外周縁に沿って既設覆工コンクリート3の内面との間に配置された隔壁バルーン22と、壁面21の下側において、防護台車30のトンネル幅方向W外側に配置された通行面23とを備えている。
【0043】
隔壁バルーン22は、内部に導入する空気量により拡縮可能に構成されており、施工時には空気を導入して膨出させて既設覆工コンクリート3の内面に密着させ、トンネル内部1aをトンネル軸方向Lに遮る。これに対し、コンクリート切削ユニット10の移動時には、内部の空気を排出して縮小させて、既設覆工コンクリート3の内面と壁面21の外縁との間に間隔を設けて、コンクリート切削ユニット10の移動に支障のないように構成することができる。
【0044】
このように、先行部台車100の先行側Fの端部に設けられた隔壁部20によってトンネル内部1aをトンネル軸方向Lに遮っており、トンネル内部1aにおいて隔壁部20より手前側Bが施工範囲となる。
【0045】
切削部台車200は、防護台車30とコンクリート切削装置210とを備えている。
コンクリート切削装置210は、防護台車30の側部と上部とに沿って配置され、防護台車30に対してトンネル軸方向Lに走行可能な走行レール220と、走行レール220に支持された移動枠230と、走行レール220に対して移動枠230をトンネル幅方向Wに拡縮可能に連結する連結ジャッキ240と、移動枠230に設けられたウォータージェット250と、移動枠230に設けられたウォータージェット250よりも防護台車30の側に配置された防護部260とを備えている。
【0046】
走行レール220は、防護台車30の側部と上部とに沿うように、トンネル軸方向L方から見て略への字状に形成されるとともにトンネル軸方向Lに所定間隔を隔てて配置されている。各走行レール220の防護台車30側には、図4の拡大図に示すように、防護台車30の外表面を転動する駆動輪221を複数備えている。
【0047】
移動枠230は、既設覆工コンクリート3の内面に対応する円弧状の断面方向ガイドレール231と、トンネル軸方向Lに伸び、ウォータージェット250を取付ける軸方向ガイドレール232と、軸方向ガイドレール232を断面方向ガイドレール231に沿って駆動する駆動部233とを備えている。なお、図6では、駆動部233の図示を省略している。
【0048】
断面方向ガイドレール231は、既設覆工コンクリート3の内面における上天部を除く半断面に対応する長さの円弧状で形成されている。
また、軸方向ガイドレール232は、駆動部233によって、断面方向ガイドレール231に沿って移動可能に構成されている。
【0049】
連結ジャッキ240は、走行レール220に対して移動枠230をトンネル幅方向Wに拡縮可能に連結するジャッキであり、具体的には、連結ジャッキ240は、走行レール220と断面方向ガイドレール231とを連結している。
【0050】
ウォータージェット250は、軸方向ガイドレール232に対して、長手方向に移動可能に取付けられ、既設覆工コンクリート3に向かって処理液を高圧で噴射して、噴射した高圧の処理液で既設覆工コンクリート3を切削することができる。なお、処理液としては、水でもよいし、適正な粘性に調整できる混合剤等を混合した液であってもよい。
【0051】
防護部260は、移動枠230の外側(防護台車30の側)に貼り付けられ、ウォータージェット250で切削した切削ガラが内側に飛散することを防止するためのシート状の防護部材であり、下方に切削ガラを集約する搬送装置261を備えている。
【0052】
なお、搬送装置261は、右搬送ベルトコンベア40や左搬送ベルトコンベア50の上方に配置されている。また、防護部260は移動枠230に固定されているため、連結ジャッキ240の伸縮によって、移動枠230とともに移動する。
【0053】
このように構成されたコンクリート切削装置210は、連結ジャッキ240を伸長して、移動枠230に支持されたウォータージェット250を既設覆工コンクリート3の内面に対して所定の位置に配置し(図4における左側で図示するコンクリート切削装置210の状態)、ウォータージェット250から高圧の処理液を噴出させて既設覆工コンクリート3を切削する。
【0054】
このとき、ウォータージェット250を軸方向ガイドレール232に沿ってトンネル軸方向Lに移動するとともに、駆動部233によって軸方向ガイドレール232を断面方向ガイドレール231に沿って移動させることで、断面方向ガイドレール231で囲まれた移動可能範囲に対向する既設覆工コンクリート3を切削することができる。
なお、切削部台車200におけるウォータージェット250によって、既設覆工コンクリート3の内面側が切削され、露出する面を切削内面1bとする。
【0055】
なお、このとき、ウォータージェット250によって切削された切削ガラは、防護部260によって防護台車30側に飛散することを防止できるとともに搬送装置261で集約して右搬送ベルトコンベア40や左搬送ベルトコンベア50で搬出することができる。
【0056】
そして、断面方向ガイドレール231で囲まれた移動可能範囲に対向する既設覆工コンクリート3の切削が完了すると、連結ジャッキ240を短縮して移動枠230及び防護部260を既設覆工コンクリート3の内面から離した状態(図4における右側で図示するコンクリート切削装置210の状態)で、駆動輪221で防護台車30の外表面を走行して、防護台車30に対して走行レール220を既設覆工コンクリート3が未切削である箇所に向かってトンネル軸方向Lに移動する。
【0057】
切削部台車200の移動によって、移動枠230及び防護部260もトンネル軸方向Lに移動する。そして、上述のサイクルを繰り返して、切削部台車200の防護台車30が配置された範囲の既設覆工コンクリート3を切削する。
【0058】
なお、本実施形態において、図5に示すように、コンクリート切削装置210は、防護台車30のトンネル幅方向Wの両側に配置されるとともに、図3に示すようにトンネル軸方向Lに所定間隔を隔てて2台配置されているが、トンネル軸方向Lに1台配置してもよい。
【0059】
その他の適宜台車としては、先行部台車100や切削部台車200に搭載した装置を駆動させるための設備を防護台車30に搭載した設備台車や、切削内面1bにシートを貼付ける作業を行うシート台車、あるいはセントル台車などがあり、これらを連結してトンネル改修装置を構成してもよい。
【0060】
図4及び図5で示す切削部台車200におけるコンクリート切削装置210によって既設覆工コンクリート3をトンネル内部1aの側から切削する工程である既設覆工コンクリート切削工について以下で説明する。
なお、図4に図示する断面図において左側半分は既設トンネル1の切削横断面における既設覆工コンクリート3がすでに切削された状態を図示しており、右側半分は既設覆工コンクリート3をこれから切削する状態を図示している。
【0061】
詳しくは、図1に示すように、既設覆工コンクリート切削工は上述したように、軸方向ガイドレール232に沿ってウォータージェット250をトンネル軸方向Lに移動しながら既設覆工コンクリート3を切削するとともに、軸方向ガイドレール232を駆動部233によって断面方向ガイドレール231に沿って移動させて、断面方向ガイドレール231で囲まれた移動可能範囲に対向する既設覆工コンクリート3を切削する(ステップs1)。そして、断面方向ガイドレール231で囲まれた移動可能範囲に対向する既設覆工コンクリート3を切削が完了するまでこれを繰り返す(ステップs3)。
【0062】
断面方向ガイドレール231で囲まれた移動可能範囲に対向する既設覆工コンクリート3を切削が完了するとともに(ステップs2:Yes)、切削部台車200で切削する範囲の切削が完了していなければ、つまり、防護台車30に対する移動枠230の移動が完了していなければ(ステップs3:No)、連結ジャッキ240を介して移動枠230を支持する走行レール220の駆動輪221を回転駆動し、防護台車30の外表面に沿ってトンネル軸方向Lに移動させる(ステップs4)。
【0063】
これを繰り返し、切削部台車200で切削する範囲の切削が完了すると、つまり防護台車30に対する移動枠230の移動が完了すると(ステップs3:Yes)、既設覆工コンクリート切削工は完了する。
【0064】
上述したように、既設トンネル1の内面を覆工する既設覆工コンクリート3を切削する切削部台車200は、トンネル内部1aに配置され、通行車両5が通行可能な通行空間30Xを内側に有するとともに、少なくともトンネル軸方向Lに移動可能な断面門型状の防護台車30と、処理液を既設覆工コンクリート3に向けて高圧で噴出するウォータージェット250と、ウォータージェット250を移動可能に支持する移動枠230とが備えられ、移動枠230は、防護台車30に支持される構成であるため、既設覆工コンクリート3を効率よく切削することができる。
【0065】
詳述すると、トンネル内部1aに配置された防護台車30で支持する移動枠230に対してウォータージェット250を移動させることができ、移動可能範囲の切削が完了すると、防護台車30をトンネル軸方向Lに移動するだけで、移動枠230を盛り替えることなく、次の移動可能範囲の既設覆工コンクリート3を切削することができる。したがって、ウォータージェット250で既設覆工コンクリート3を効率よく切削することができる。
【0066】
また、防護台車30の内側には通行車両5が通行可能な通行空間30Xが設けられるため、既設トンネル1の既設覆工コンクリート3を切削する場合であっても、通行空間30Xに車両などの通行車両5を通行させながら施工することができる。換言すると、既設トンネル1であっても、通行止めにすることなく、既設覆工コンクリート3を切削して改修することができる。
【0067】
なお、コンクリート切削装置210を用いた既設覆工コンクリート切削工を行うトンネル改修工法は、ボトルネックになりやすい既設覆工コンクリート3の切削を効率よく行い、効率のよいトンネル改修を行うことができる。
また、移動枠230に、防護台車30に対して、トンネル軸方向Lに移動可能な走行レール220の駆動輪221が備えられているため、既設覆工コンクリート3をさらに効率よく切削することができる。
【0068】
詳述すると、防護台車30に対して、移動枠230をトンネル軸方向Lに移動可能な走行レール220の駆動輪221が備えられているため、移動枠230で支持した状態のウォータージェット250で移動可能範囲の切削が完了すると、防護台車30を移動しなくても、防護台車30に対して移動枠230を移動するだけで、移動枠230を盛り替えることなく、次の移動可能範囲の既設覆工コンクリート3を効率よく切削することができる。
【0069】
また、移動枠230は、ウォータージェット250がトンネル軸方向Lに走行可能な軸方向ガイドレール232と、ウォータージェット250が既設覆工コンクリート3の内面に沿って断面方向に走行可能な断面方向ガイドレール231とが備えられているため、ウォータージェット250をトンネル軸方向L及び断面方向の両方向に移動させて、既設覆工コンクリート3の内面に沿ってウォータージェット250を移動させて、効率よく既設覆工コンクリート3を切削することができる。
【0070】
また、断面方向ガイドレール231は、トンネル内面における上天部を除く半断面に対応する長さの円弧状で形成されるとともに、移動枠230とウォータージェット250とは、防護台車30に対してトンネル幅方向Wの両側に設けられているため、略三芯円形断面のトンネル内面の既設覆工コンクリート3を効率よく切削することができる。
【0071】
また、断面方向ガイドレール231の内側に、ウォータージェット250の処理液の噴射による切削ガラの飛散を防護する防護部260が設けられているため、処理液の噴射によって切削した既設覆工コンクリート3の切削ガラの内側への飛散を防止することができる。
【0072】
また、防護部260の下方に、切削ガラを集約するとともに、トンネル軸方向Lに搬送する右搬送ベルトコンベア40及び左搬送ベルトコンベア50が設けられているため、切削ガラを効率よく回収し、トンネル外部に搬出することができる。
【0073】
また、移動枠230をトンネル内面に対して断面径方向に移動させる連結ジャッキ240が備えられているため、既設覆工コンクリート3に対してウォータージェット250を適切な位置に配置することができる。
【0074】
また、連結ジャッキ240で移動枠230をトンネル内面から離間する方向に移動させることで、トンネル内面と移動枠230との間隔を空けることができ、防護台車30をトンネル軸方向Lに容易に移動させることができる。
【0075】
また、防護台車30の下端に、路盤2にトンネル軸方向Lに敷設されたレール2aを転動する車輪31が設けられているため、防護台車30を容易にトンネル軸方向Lに移動させることができる。したがって、ウォータージェット250で既設覆工コンクリート3を効率よく切削することができる。
【0076】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本発明の供用中のトンネルは既設トンネル1に対応し、
以下同様に、
既設覆工コンクリートは既設覆工コンクリート3に対応し、
コンクリート切削装置はコンクリート切削装置210に対応し、
トンネル内部はトンネル内部1aに対応し、
通行体は通行車両5に対応し、
通行空間は通行空間30Xに対応し、
トンネル軸方向はトンネル軸方向Lに対応し、
門型枠体は防護台車30に対応し、
高圧噴射部はウォータージェット250に対応し、
支持枠は移動枠230に対応し、
支持枠移動手段は走行レール220の駆動輪221に対応し、
軸方向ガイドレールは軸方向ガイドレール232に対応し、
断面方向ガイドレールは断面方向ガイドレール231に対応し、
防護部は防護部260に対応し、
搬送装置は右搬送ベルトコンベア40及び左搬送ベルトコンベア50に対応し、
径方向移動手段は連結ジャッキ240に対応し、
レールはレール2aに対応し、
車輪は車輪31に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0077】
例えば、上述の説明では、ウォータージェット250がトンネル軸方向Lに移動可能な軸方向ガイドレール232が駆動部233によって断面方向ガイドレール231に沿って移動可能に構成したが、断面方向ガイドレール231が、軸方向ガイドレール232に沿って移動可能に構成され、ウォータージェット250が断面方向ガイドレール231に沿って移動可能に構成してもよい。
【0078】
また、上述の説明では、既設覆工コンクリート3の上天部分を切削しなかったが、断面方向ガイドレール231を上天部分に向かって延伸させて、既設覆工コンクリート3の上天部分までを切削できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…既設トンネル
1a…トンネル内部
2a…レール
3…既設覆工コンクリート
5…通行車両
30…防護台車
30x…通行空間
31…車輪
40…右搬送ベルトコンベア
50…左搬送ベルトコンベア
210…コンクリート切削装置
220…走行レール
221…駆動輪
230…移動枠
231…断面方向ガイドレール
232…軸方向ガイドレール
240…連結ジャッキ
250…ウォータージェット
260…防護部
L…トンネル軸方向
W…トンネル幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6