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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】波形被覆管及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20241113BHJP
   B29C 48/13 20190101ALI20241113BHJP
   B29C 48/151 20190101ALI20241113BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20241113BHJP
   B29C 48/34 20190101ALI20241113BHJP
   B29C 48/885 20190101ALI20241113BHJP
【FI】
F16L11/11
B29C48/13
B29C48/151
B29C48/32
B29C48/34
B29C48/885
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021026251
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021139500
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020035255
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】市原 幸治
(72)【発明者】
【氏名】中村 晶
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅己
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-210041(JP,A)
【文献】特開昭61-265430(JP,A)
【文献】特開平03-194283(JP,A)
【文献】特開平10-311462(JP,A)
【文献】特開2006-052770(JP,A)
【文献】特開昭53-114869(JP,A)
【文献】特開昭57-177480(JP,A)
【文献】米国特許第09341289(US,B1)
【文献】特開2006-046407(JP,A)
【文献】特開2005-164031(JP,A)
【文献】中国実用新案第207508666(CN,U)
【文献】特開平09-267409(JP,A)
【文献】特開2004-071188(JP,A)
【文献】特開2021-041539(JP,A)
【文献】特開2021-138140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
B29C 48/13-48/885
B29D 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され
前記保持凸部が、パーティングライン位置を含む仮想のパーティング断面に対して管周方向へずれて配置され、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分が、前記パーティング断面を跨いでおり、
各保持凸部における前記管周方向の両側の端面のうち、当該保持凸部の直近のパーティングライン位置に対して遠い側の端面が、前記パーティング断面に対して、該パーティング断面を向く側に90°以下の角度をなしていることを特徴とする波形被覆管。
【請求項2】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
前記保持凸部が、パーティングライン位置を含む仮想のパーティング断面に対して管周方向へずれて配置され、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分が、前記パーティング断面を跨いでおり、
各保持凸部における前記管周方向の両側の端面のうち、当該保持凸部の直近のパーティングライン位置に対して近い側の端面が、前記パーティング断面にほぼ沿っていることを特徴とする波形被覆管。
【請求項3】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
前記保持凸部における前記管周方向の両側の端面どうしが、ほぼ90°の角度をなしていることを特徴とする波形被覆管。
【請求項4】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
前記保持凸部の管軸方向の側面の勾配が、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分の管軸方向の同じ側の管内側面の勾配と同等であることを特徴とする波形被覆管。
【請求項5】
前記谷部分と前記山部との中間高さにおける、前記保持凸部の管軸方向の幅が前記谷部分の管軸方向の幅よりも広いことを特徴とする請求項に記載の波形被覆管。
【請求項6】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
前記保持凸部の管軸方向の側面の勾配が、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分の管軸方向の同じ側の管内側面の勾配よりも急であることを特徴とする波形被覆管。
【請求項7】
前記谷部分と前記山部との中間高さにおける、前記保持凸部の管軸方向の幅が前記谷部分の管軸方向の幅と同等であることを特徴とする請求項に記載の波形被覆管。
【請求項8】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
前記保持凸部における、前記管軸方向の一方側の側面の勾配が、前記管軸方向の他方側の側面の勾配より緩やかであることを特徴とする波形被覆管。
【請求項9】
前記一方側の側面の勾配が、前記他方側の側面の勾配より1度以上緩やかであることを特徴とする請求項に記載の波形被覆管。
【請求項10】
前記一方側の側面の管径方向に対する角度が、5°から20°であることを特徴とする請求項又はに記載の波形被覆管。
【請求項11】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
発泡倍率1.05倍から4倍の単層の発泡樹脂体によって構成されていることを特徴とする波形被覆管。
【請求項12】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置され、
発泡倍率1.2倍から2.5倍の単層の発泡樹脂体によって構成されていることを特徴とする波形被覆管。
【請求項13】
前記発泡樹脂体が、滑剤を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の波形被覆管。
【請求項14】
前記保持凸部が、パーティングライン位置を含む仮想のパーティング断面に対して管周方向へずれて配置され、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分が、前記パーティング断面を跨いでいることを特徴とする請求項3~13の何れか1項に記載の波形被覆管。
【請求項15】
前記パーティング断面を挟んで両側における前記保持凸部の数が互いに異なることを特徴とする請求項1又は2又は14に記載の波形被覆管。
【請求項16】
前記保持凸部における管軸方向と直交する断面が、当該保持凸部の頂部及び管軸を通る中心線に関して対称であることを特徴とする請求項1~15の何れか1項に記載の波形被覆管。
【請求項17】
前記山部の頂部から前記保持凸部の頂部までの保持凸部高さが、前記山部の頂部から前記保持凸部を除く谷部の管内頂部までの谷部高さに対して、1.5倍以上5倍以下であることを特徴とする請求項1~16の何れか1項に記載の波形被覆管。
【請求項18】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置された波形被覆管の製造装置であって、
前記波形被覆管の外面を成形する環状の波付け型面を有する成形型と、前記成形型に前記波形被覆管となる樹脂を管状にして供給する供給部とを備え、
前記成形型が、互いに合わさって前記波付け型面を形成する波付け割型の対を含み、
前記波付け型面における前記保持凸部を成形する突出型部が、前記波付け割型の周方向の両端部どうしの合わせ目を避けて設けられており、
前記突出型部における前記周方向の両側の端面のうち、当該突出型部の直近の合わせ目に対して遠い側の端面が、前記合わせ目を含む仮想の割面に対して、該割面を向く側に90°以下の角度をなしていることを特徴とする波形被覆管の製造装置。
【請求項19】
前記環状の波付け型面の軸線と直交する前記突出型部の断面が、当該突出型部における頂部及び前記軸線を通る中心線に関して対称であることを特徴とする請求項18に記載の製造装置。
【請求項20】
前記突出型部の前記両側の端面のうち、当該突出型部の直近の合わせ目に対して近い側の端面が、前記割面とほぼ平行であることを特徴とする請求項18又は19に記載の製造装置。
【請求項21】
前記突出型部の前記両側の端面どうしが、互いにほぼ90°の角度をなしていることを特徴とする請求項1820の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項22】
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置された波形被覆管の製造装置であって、
前記波形被覆管の外面を成形する環状の波付け型面を有する成形型と、前記成形型に前記波形被覆管となる樹脂を管状にして供給する供給部とを備え、
前記成形型が、互いに合わさって前記波付け型面を形成する波付け割型の対を含み、
前記波付け型面における前記保持凸部を成形する突出型部が、前記波付け割型の周方向の両端部どうしの合わせ目を避けて設けられており、
前記成形型が、2つの環状軌道上にそれぞれ循環移動可能に並べられた複数の波付け割型を備え、
前記2つの環状軌道は、前記環状の波付け型面の軸線に沿う1の軌道部分を互いに共有しており、
前記軌道部分上を移動するときの前記2つの環状軌道の対をなす波付け割型どうしが互いに合わさることによって前記環状の波付け型面を構成し、
前記軌道部分の上流端に前記供給部が接続され、
前記軌道部分の下流端においては、前記対をなす波付け割型どうしが各々の環状軌道に沿って回転しながら離れるようになっており、
前記突出型部における、前記軌道部分の上流側を向く側面の勾配が、下流側を向く側面の勾配より緩やかであることを特徴とする波形被覆管の製造装置。
【請求項23】
前記上流側を向く側面の勾配が、前記下流側を向く側面の勾配より1度以上緩やかであることを特徴とする請求項22に記載の製造装置。
【請求項24】
前記上流側を向く側面の前記軸線と直交する面に対する角度が、5°から20°であることを特徴とする請求項22又は23に記載の製造装置。
【請求項25】
前記突出型部が、前記対をなす波付け割型の少なくとも1つに設けられていることを特徴とする請求項1824の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項26】
前記波付け割型の対における、一方の波付け割型に設けられた突出型部の数と、他方の波付け割型に設けられた突出型部の数とが互いに異なることを特徴とする請求項1825の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項27】
前記波付け型面における、凹状の山型部の底部から前記突出型部の頂部までの突出型高さが、前記山型部の底部から凸状の谷型部の頂部までの谷型高さの1.5倍以上5倍以下であることを特徴とする請求項1826の何れか1項に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管及びその製造方法に関し、特に、内管が給水・給湯用であり、これを被覆するのに適した波形被覆管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水給湯用の可撓管(内管)を保護する可撓性の被覆管として、大径の山部と小径の谷部が交互に配置された波形被覆管は、公知であり、例えばさや管ヘッダー工法等で広く用いられている。柔軟で伸縮し易いタイプの波形被覆管も登場している。しかし、水栓の急閉等による水撃のバタつき音を抑制するための対策が必要である。その対策として、内管に消音テープ等の緩衝材を巻き付ける方法があるが、コストの面で不利である。また、傷防止機能だけでなく保温性も求められている。
【0003】
特許文献1には、合成樹脂製の内管を形成して硬化させた後、その外周面上で波形被覆管を成形することによって、内管及び波形被覆管からなる複合管を製造する方法が開示されている。当該方法によれば、先に成形した内管を、押出ノズルの中心の内管送出口から軸線に沿って送り出して波形管成形部に導入する。波形管成形部は、2つの長円形の環状軌道上に並べられた多数個の半割筒状の波付け割型を備えている。これら波付け割型が2つの環状軌道にそれぞれ沿って循環移動しながら、前記軸線に沿う共通の軌道部分上を移動する期間中、対をなす波付け割型どうしが互いに合わさって、閉じた環状の波付け型面が形成される。該環状の波付け型面の中心軸に沿って前記内管が挿し入れられる。かつ2層の樹脂材料が、押出し口から筒状に共押し出しされて、環状の波付け型面の内部に導入されるとともに、バキュームによって拡径させて波付け型面に密着され、波形に成形されることによって波形被覆管となる。
【0004】
特許文献2の波形被覆管においては、管軸方向に一定個置きの小径谷部が、他の環状の谷部よりも全周にわたって管軸へ向かって突出されて内管の外周面に接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-226144号公報
【文献】特開2010-210041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲特許文献1の方法によって製造された複合管においては、波形被覆管の大径部と内管との間はもちろんのこと、小径部と内管との間にも全周にわたって隙間が形成されている。当該隙間は、押出しノズルの内管送出口と押出し口とを仕切る環状壁(内筒)の厚さや、波形状にするためのバキューム等による拡径に起因して形成されたものであり、製造工程上、不可避的なものと言える。このような隙間があると、内管の内部を通る流体の圧力(内圧)、流量、温度などが急変したとき、内管がばたつくなどして、ウォーターハンマー(水撃)音や熱伸縮音が発生しやすい。
前掲特許文献2の波形被覆管においては、小径谷部を全周にわたって他の谷部より小径にする必要があるため、成形の際に、該小径谷部となる樹脂が、一対の波付け割型の合わせ目に噛み込むことになり、成形困難である。
本発明は、かかる事情に鑑み、内管のバタツキによる音鳴りを抑制するとともに、確実に成形可能で保温性をも確保できる波形被覆管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
可撓性の内管を被覆する可撓性の波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された複数の環状の山部及び複数の環状の谷部を備え、
少なくとも一部の谷部には、複数の保持凸部が、それぞれ管軸へ向かって突出されるように形成されており、これら保持凸部が、互いに管周方向に離間して配置されていることを特徴とする。つまり、保持凸部が、管周方向に不連続であることを特徴とする。
当該波形被覆管によれば、保持凸部を内管に近接又は接触させて内管を保持することによって、内管のバタツキを抑えて音鳴りを抑制できる。保持凸部は管周方向に連続していないから成形を容易化できる。かつ、保持凸部ひいては波形被覆管と内管との接触面積を小さくして、熱伝導を低減することで保温性を確保できる。
【0008】
前記保持凸部が、パーティングライン位置を含む仮想のパーティング断面に対して管周方向へずれて配置され、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分が、前記パーティング断面を跨いでいることが好ましい。
前記パーティングライン位置及びパーティング断面は、成形型の一対の波付け割型の合わせ目と対応する。管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部(すなわち保持凸部を除く谷部)が、前記合わせ目を跨ぐ。保持凸部は前記合わせ目から成形型の周方向にずれた位置に形成される。したがって、成形時に保持凸部が合わせ目に噛み込むことが無い。これによって、波形被覆管を確実に成形でき、噛み込みによるバリやへこみを防止できる。
好ましくは、前記パーティング断面は、波形被覆管の管軸を通る。
前記パーティングライン位置には必ずしもパーティングラインが現れている必要はない。成形条件によっては、パーティングラインが形成されないことも有り得る。
【0009】
各保持凸部における前記管周方向の両側の端面のうち、当該保持凸部の直近のパーティングライン位置に対して遠い側の端面が、前記パーティング断面に対して、該パーティング断面を向く側に90°以下の角度をなしていることが好ましい。
これによって、成形型による成形後の脱型時に保持凸部がアンダーカットになるのを防止でき、脱型を容易化できる。
【0010】
各保持凸部における前記管周方向の両側の端面のうち、当該保持凸部の直近のパーティングライン位置に対して近い側の端面が、前記パーティング断面にほぼ沿っていることが好ましい。
これによって、脱型を一層容易化できる。
【0011】
前記パーティング断面を挟んで両側における前記保持凸部の数は、好ましくは同数であるが、互いに異なっていてもよい。
【0012】
前記保持凸部における管軸方向と直交する断面が、当該保持凸部の頂部及び管軸を通る中心線に関して対称であることが好ましい。
これによって、保持凸部における管周方向の強度に偏りが生じないようにでき、内管をより安定的に保持できる。
【0013】
前記保持凸部における前記管周方向の両側の端面どうしが、ほぼ90°の角度をなしていることが好ましい。
これによって、保持凸部が管周方向へ折れにくくなり、内管をしっかりと保持できる。かつ、内管と保持凸部との接触面積を小さくして保温性を確保できる。
【0014】
前記保持凸部の管軸方向の側面の勾配が、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分の管軸方向の同じ側の管内側面の勾配と同等であることが好ましい。
これによって、保持凸部を管軸方向に幅広にして折れにくくできる。
【0015】
前記谷部分と前記山部との中間高さにおける、前記保持凸部の管軸方向の幅が前記谷部分の管軸方向の幅よりも広いことが好ましい。
これによって、保持凸部を管軸方向に幅広にして管軸方向へ折れにくくでき、内管をしっかりと保持できる。また、波形被覆管を外部から見ると、保持凸部に対応する凹部が谷部分より大きく窪んで山部にまで及ぶことで、山部の一部分が欠けて見える。これによって、保持凸部の位置を外部から容易に確認できる。したがって、例えば、継手接続等のために波形被覆管を切断するとき、保持凸部を避けて切断しやすくなる。
【0016】
前記保持凸部の管軸方向の側面の勾配が、前記一部の谷部における管周方向に隣接する保持凸部どうし間の谷部分の管軸方向の同じ側の管内側面の勾配よりも急であってもよい。これによって、保持凸部の管軸方向の幅を前記谷部分の管軸方向の幅と同程度にできる。
【0017】
前記谷部分と前記山部との中間高さにおける、前記保持凸部の管軸方向の幅が前記谷部分の管軸方向の幅と同等であることが好ましい。これによって、保持凸部の管軸方向の幅を小さくして、内管との接触面積を狭くすることによって、保温性を確保できる。
【0018】
前記保持凸部における、前記管軸方向の一方側の側面の勾配が、前記管軸方向の他方側の側面の勾配より緩やかであることが好ましい。
当該波形被覆管用の成形型は、2つの環状軌道上に環状に並べられた波付け割型が各環状軌道に沿って移動されるとともに、これら2つの環状軌道が共有する1の軌道部分上で、対となる波付け割型どうしが合わさって環状の波付け型面を構成する構造であることが好ましい。前記保持凸部の一方側の側面は、前記軌道部分における波形被覆管の送り方向の上流側の側面であることが好ましい。これによって、各波付け割型が環状軌道の下流側折り返しの半円軌道部分に沿って回転されながら脱型される際に、保持凸部における前記一方側(好ましくは上流側)の側面が、前記波付け割型における保持凸部用の突出型部と干渉して変形されるのを防止できる。
【0019】
前記一方側の側面の勾配が、前記他方側の側面の勾配より1度以上緩やかであることが好ましい。
これによって、保持凸部における前記一方側(好ましくは上流側)の側面の変形を確実に防止できる。
【0020】
前記一方側の側面の管径方向に対する角度が、5°から20°であることが好ましい。
これによって、保持凸部における前記一方側(好ましくは上流側)の側面の変形を確実に防止できる。
【0021】
前記山部の頂部から前記保持凸部の頂部までの保持凸部高さが、前記山部の頂部から前記保持凸部を除く谷部の管内頂部までの谷部高さに対して、1.5倍以上5倍以下であることが好ましい。
これによって、保持凸部によって内管を確実に保持できるとともに、波形被覆管と内管との間に空気層が確実に形成されるようにすることによって保温性を確実に確保できる。
【0022】
前記波形被覆管が、発泡倍率1.05倍から4倍の単層の発泡樹脂体によって構成されていることが好ましい。
前記波形被覆管が、発泡倍率1.2倍から2.5倍の単層の発泡樹脂体によって構成されていることが、より好ましい。
これによって、内管のバタつきによる音鳴りを確実に抑制できるとともに、保温性を向上できる。
【0023】
前記発泡樹脂体が、滑剤を含むことが好ましい。
これによって、内管と波形被覆管との間の摩擦抵抗を低減できる。波形被覆管の製造時においては、成形型からの脱型を容易化できる。
【0024】
本発明装置は、前記波形被覆管の製造装置であって、
前記波形被覆管の外面を成形する環状の波付け型面を有する成形型と、前記成形型に前記波形被覆管となる樹脂を管状にして供給する供給部とを備え、
前記成形型が、互いに合わさって前記波付け型面を形成する波付け割型の対を含み、
前記波付け型面における前記保持凸部を成形する突出型部が、前記波付け割型の周方向の両端部どうしの合わせ目を避けて設けられていることを特徴とする。
これによって、成形時に保持凸部となる樹脂部分が波付け割型の合わせ目に噛み込むことが無く、確実に成形でき、噛み込みによるバリやへこみを防止できる。
【0025】
前記突出型部における前記周方向の両側の端面のうち、当該突出型部の直近の合わせ目に対して遠い側の端面が、前記合わせ目を含む仮想の割面に対して、該割面を向く側に90°以下の角度をなしていることが好ましい。
これによって、成形型からの脱型時に保持凸部がアンダーカットになるのを防止できる。
【0026】
前記環状の波付け型面の軸線と直交する前記突出型部の断面が、当該突出型部における頂部及び前記軸線を通る中心線に関して対称であることが好ましい。
これによって、突出型部で成形された保持凸部の管周方向の強度に偏りが生じないようにでき、保持凸部によって内管を安定的に保持できる。
【0027】
前記突出型部の前記両側の端面のうち、当該突出型部の直近の合わせ目に対して近い側の端面が、前記割面とほぼ平行であることが好ましい。
これによって、保持凸部がアンダーカットになるのを防止でき、脱型を容易化できる。
【0028】
前記突出型部の前記両側の端面どうしが、互いにほぼ90°の角度をなしていることが好ましい。
これによって、保持凸部の両側の端面どうしの角度をほぼ90°にでき、保持凸部の座屈(折れ)を確実に防止できる。
【0029】
前記突出型部が、前記対をなす波付け割型の少なくとも1つに設けられていることが好ましい。
前記波付け割型の対における、一方の波付け割型に設けられた突出型部の数と、他方の波付け割型に設けられた突出型部の数とが互いに異なっていてもよい。
【0030】
前記成形型が、2つの環状軌道上にそれぞれ循環移動可能に並べられた複数の波付け割型を備え、
前記2つの環状軌道は、前記環状の波付け型面の軸線に沿う1の軌道部分を互いに共有しており、
前記軌道部分上を移動するときの前記2つの環状軌道の対をなす波付け割型どうしが互いに合わさることによって前記環状の波付け型面を構成し、
前記軌道部分の上流端に前記供給部が接続され、
前記軌道部分の下流端においては、前記対をなす波付け割型どうしが各々の環状軌道に沿って回転しながら離れるようになっており、
前記突出型部における、前記軌道部分の上流側を向く側面の勾配が、下流側を向く側面の勾配より緩やかであることが好ましい。
これによって、例えば、各波付け割型が環状軌道の下流側折り返しの半円軌道部分に沿って回転されながら脱型される際に、保持凸部における前記上流側の側面が、前記波付け割型における保持凸部用の突出型部と干渉して変形されるのを防止できる。
【0031】
前記上流側を向く側面の勾配が、前記下流側を向く側面の勾配より1度以上緩やかであることが好ましい。
これによって、保持凸部における前記一方側(好ましくは上流側)の側面の変形を確実に防止できる。
【0032】
前記上流側を向く側面の前記軸線と直交する面に対する角度が、5°から20°であることが好ましい。
これによって、保持凸部における前記一方側(好ましくは上流側)の側面の変形を確実に防止できる。
【0033】
前記波付け型面における、凹状の山型部の底部から前記突出型部の頂部までの突出型高さが、前記山型部の底部から凸状の谷型部の頂部までの谷型高さの1.5倍以上5倍以下であることが好ましい。
これによって、保持凸部によって内管を確実に保持できるとともに、波形被覆管と内管との間に空気層が確実に形成されるようにすることによって保温性を確実に確保できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、波付け割型の合わせ目への樹脂の噛み込みを防止して、波形被覆管を確実に成形できる。かつ波形被覆管の保持凸部によって内管を保持することで、内管のバタツキを抑えて音鳴りを抑制することができる。さらに、波形被覆管と内管との間に空気断熱層を形成できるとともに、保持凸部と内管との接触面積を小さくすることによって、保温性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る波形被覆管を含む複合管を、その一部を図2のI-I線に沿う断面にして示す側面図である。
図2図2は、図1のII-II線における、前記複合管の正面断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線における、前記複合管の正面断面図である。
図4図4は、前記複合管の製造装置の一例を示す平面図である。
図5図5は、前記複合管製造装置の共有軌道部分及びその周辺部の平面断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線における、前記複合管製造装置の成形型の正面断面図である。
図7図7は、前記成形型を少し開いた状態で示す正面断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る複合管の正面断面図である。
図9図9は、前記第2実施形態に係る成形型を閉じた状態で示す正面断面図である。
図10図10は、本発明の第3実施形態に係る複合管の正面断面図である。
図11図11は、前記第3実施形態に係る成形型を閉じた状態で示す正面断面図である。
図12図12は、本発明の第4実施形態に係る複合管の正面断面図である。
図13図13は、前記第4実施形態に係る成形型を閉じた状態で示す正面断面図である。
図14図14は、本発明の第5実施形態に係る複合管の正面断面図である。
図15図15は、前記第5実施形態に係る成形型を閉じた状態で示す正面断面図である。
図16図16は、本発明の第6実施形態に係る複合管の正面断面図である。
図17図17は、前記第6実施形態に係る成形型を閉じた状態で示す正面断面図である。
図18図18は、本発明の第7実施形態に係る複合管の正面断面図である。
図19図19は、前記第7実施形態に係る成形型を閉じた状態で示す正面断面図である。
図20図20は、本発明の第8実施形態に係る複合管を、一部を断面して示す側面図である。
図21図21は、本発明の第9実施形態に係る複合管を、一部を断面して示す側面図である。
図22図22は、前記第9実施形態に係る複合管製造装置の共有軌道部分の下流部分の平面断面図である。
図23図23は、前記第9実施形態に係る波形被覆管の保持凸部の変形態様を示す側面断面図である。
図24図24(a)は、前記第9実施形態に係る波形被覆管の保持凸部の変形態様を示す側面断面図である。図24(b)は、前記第9実施形態に係る波形被覆管の保持凸部の変形態様を示す側面断面図である。
図25図25は、波形被覆管の変形態様を示す正面断面図である。
図26図26は、波形被覆管の変形態様を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図7)>
図1図3は、本発明の第1実施形態に係る複合管1を示したものである。複合管1は、内管9と、その外側の波形被覆管10(コルゲート管)を備えている。複合管1は、例えば給水・給湯用の配管として利用される。
【0037】
内管9の内部が、水、湯などの流体が通る流体通路となる。内管9は、全長にわたって一定の円形断面に形成され、かつ可撓性を有している。内管9の材質としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリブテン、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂が挙げられる。内管9が、これら合成樹脂の何れか1つを主成分として含んでいてもよく、複数の合成樹脂を含んでいてもよい。
内管9が複数の樹脂層を含み、これら樹脂層が内管9の径方向に積層されていてもよい。
内管9が、金属強化多層構造などの金属を含む複合樹脂管であってもよい。
内管9の材質として、上記は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、特に制限はない。
【0038】
内管9は、波形被覆管10の内部に挿通されている。内管9の外周が波形被覆管10によって被覆されている。内管9及び波形被覆管10の中心軸線は、互いに共通の軸線(管軸L)上に略配置されている。
【0039】
波形被覆管10は、可撓性の樹脂によって構成され、好ましくは単層の発泡樹脂体によって構成されている。前記発泡樹脂体の発泡倍率は、音鳴り抑制及び保温性の観点から好ましくは1.05倍から4倍であり、より好ましくは1.2倍から2.5倍である。波形被覆管10の樹脂材質は、好ましくはポリエチレンを主成分(50wt%以上)とし、50wt%未満のポリプロピレンを含む。柔軟性の観点からは、波形被覆管10の主成分のポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。さらに好ましくは、離型容易性などのために、波形被覆管10は滑剤を含む。前記発泡樹脂体に対する滑剤の含有量は、好ましくは1wt%以下である。
波形被覆管10の材質として、上記は例示であり、可撓性、内管9に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、波形被覆管10の材質として特に制限はない。
【0040】
図1に示すように、波形被覆管10は、複数の環状の山部11(大径部)及び複数の環状の谷部12(小径部)を有し、波形断面になっている。山部11と谷部12とが管軸方向に交互に一定の配置ピッチで形成されている。図2に示すように、山部11は、波形被覆管10の外部から見て環状の凸部となり、内部から見ると環状の凹部となっている。谷部12は、波形被覆管10の外部から見て環状の凹部となり、内部から見ると環状の凸部となっている。谷部12は、山部11より薄肉であり、かつ管軸Lに沿う幅W12が山部11の管軸Lに沿う幅W11より小さい(W12<W11)。これによって、波形被覆管10を伸縮させたり曲げたりする際は、谷部12が山部11よりも変形されやすい。
山部11と谷部12との中間高さH10における、山部11の管軸Lに沿う幅W11は、例えばW11=2mm~4mm程度であり、谷部12の幅W12は、例えばW=0.5mm~1.5mm程度である。
【0041】
図3に示すように、少なくとも一部(第1)の谷部12Aには、複数の保持凸部13が形成されている。保持凸部13は、谷部12Aから管軸L(径方向内側)へ向かって突出されている。保持凸部13における管軸Lと直交する断面は、両裾部分が直線状をなす概略扇形状に形成されている。保持凸部13における管軸Lを向く頂部13pは、円弧状をなして、内管9とほぼ接している。頂部13pの管軸方向(図3の紙面と直交する方向)に沿う幅は、谷部幅W12より小さい。
【0042】
1の谷部12Aにおける複数の保持凸部13は、互いに管周方向に離間して配置されている。本実施形態では、管周方向に等間隔置きに4つの保持凸部13が配置されている。図1に示すように、保持凸部13を有する谷部12Aは、波形被覆管10の管軸方向に一定間隔置きに配置されている。谷部12A以外の第2の谷部12B及び山部11には、保持凸部13が形成されていない、したがって、保持凸部13は、波形被覆管10の管周方向及び管軸方向に不連続になっている。
なお、波形被覆管10のすべての谷部12が、保持凸部13を有する第1の谷部12Aであってもよい。
【0043】
図2及び図3に示すように、保持凸部13は、それ以外の谷部12(すなわち第1の谷部12Aにおける周方向に隣り合う保持凸部13どうし間の谷部分14及び第2の谷部12B)よりも管軸L側(径方向内側)へ突出されている。図1に示すように、波形被覆管10における谷部12Aの外周面には、保持凸部13に対応する凹部16が形成されている。
【0044】
図1に示すように、山部11の頂部から保持凸部13の頂部13pまでの保持凸部高さH13は、山部11の頂部から保持凸部以外の谷部12(第1谷部12Aの谷部分14及び第2谷部12B)の管内頂部12p(管軸Lに最も近い部分)までの谷部高さH12に対して、好ましくは1.5倍以上5倍以下である(H13=1.5×H12~5×H12)。より好ましくは、保持凸部高さH13は、谷部高さH12の3倍程度である(H13=3×H12)。
【0045】
図3に示すように、保持凸部13は、波形被覆管10のパーティングライン位置15を含む仮想のパーティング断面PLに対して管周方向へずれて配置されている。谷部分14が、パーティング断面PL上に配置されて、パーティングライン位置15を跨いでいる。パーティング断面PLは、後記波形被覆管製造装置3の一対の波付け割型32の合わせ目38と対応し、パーティング断面PLは、合わせ目38を含む仮想の割面PL38と対応する(図6)。パーティングライン位置15には、合わせ目38によるパーティングラインが形成され得る。
なお、パーティングライン位置15には必ずしもパーティングラインが現れている必要はなく、成形条件によっては、パーティングラインが形成されないことも有り得る。
【0046】
図3に示すように、各保持凸部13における管周方向の両側の端面13e,13fのうち、当該保持凸部13の直近のパーティングライン位置15に対して遠い側の端面13fは、パーティング断面PLに対して90°の角度をなしている。パーティングライン位置15に近い側の端面13eは、パーティング断面PLと平行(角度0°)になっている。
【0047】
ここで、保持凸部13の端面13e,13fは、該保持凸部13が谷部分14と連なるR部13rと頂部13pとの間の、管軸方向から見て略直線状になった表面部分を言う。これら端面13e,13fどうしは、ほぼ90°の角度をなしている。図3に示すように、保持凸部13における管軸方向と直交する断面は、当該保持凸部13における頂部13p及び管軸Lを通る中心線L13cに関して対称である。
【0048】
図1に示すように、波形被覆管10の内面における、保持凸部13の管軸方向の側面13aの勾配は、谷部分14における管軸方向の同じ側の管内側面14aの勾配と同等である。谷部分14と山部11との中間高さH10における、保持凸部13の管軸方向の幅W13は、谷部分14の管軸方向の幅W14(=W12)よりも広く、かつ山部11のピッチP11より狭い(W14<W13<P11)。
【0049】
図1に示すように、波形被覆管10と内管9との間には、通気隙間18が形成されている。通気隙間18は、複合管1の管軸方向の全域にわたって途切れることなく連続している。通気隙間18が空気断熱層となることによって、複合管1の保温性が向上する。
【0050】
図4は、波形被覆管10ひいては複合管1を製造する装置3を示したものである。波形被覆管製造装置(複合管製造装置)3は、供給部4と、波形管成形部30とを備えている。詳細な図示は省略するが、供給部4は、波形被覆管10の原料となる樹脂19を受け入れるホッパー、樹脂19を加熱溶融するヒータ、発泡剤の添加部、滑剤の添加部、樹脂19と発泡剤及び滑剤を混錬して押し出すスクリュー等の押出し部4a、並びに環状の押出ノズル20を含む。
【0051】
図5に示すように、押出ノズル20は、中心穴からなる内管送出口21と、押出し口22を含む。内管送出口21の内周径は、内管9の外周径より大きい。押出し口22は、内管送出口21を囲むように環状になっている。押出し口22の上流端に押出し部4aが接続されている。押出し口22の環状の下流端が、押出ノズル20の先端面に開口されている。
【0052】
図4に示すように、押出ノズル20の押出し方向の下流側(図4において右側)に波形管成形部30(コルゲーター)が配置されている。波形管成形部30は、2つ(複数)の長円形の環状軌道31と、環状軌道31ごとの複数個の半割筒状の波付け割型32を備えている。環状軌道31は、水平に配置されているが、これに限らず、垂直に配置されていてもよく、斜めに配置されていてもよい。これら2つの環状軌道31は、互いに1つの軌道部分31aを共有している。軌道部分31aは、押出ノズル20の軸線(押出し方向)を真っ直ぐに延長した軸線Lに沿う直線状になっている。軌道部分31aの上流端(図4において左端)には、押出ノズル20が臨むことによって、供給部4が接続されている。
【0053】
図4に示すように、各環状軌道31上に複数の波付け割型32が環状に並べられている。図示は省略するが、モーター、ギア、あるいはチェーン、スプロケットなどを含む移動機構によって、波付け割型32が、対応する環状軌道31上を循環移動される。2つの環状軌道31の波付け割型32の動きは互いに同期される。
【0054】
図4及び図5に示すように、2つの環状軌道31の波付け割型32は、軌道部分31a上において互いに対をなす。これら波付け割型32の対が、軌道部分31a上を移動する期間中、互いに合わさることによって、閉じた筒状の成形型33となる。複数の成形型33が軸線L上に一列に並べられている。軸線Lは、軌道部分31a上における成形型33の中心軸線を構成している。図6に示すように、成形型33の180度離れた2箇所には、波付け割型32の周方向の両端部どうしの合わせ目38が形成されている。
対をなす波付け割型32どうしは、軌道部分31aの上流端(図4において左端)及び下流端(図4において右端)において、互いに水平方向(図4において上下)に接近離間されるようになっているが、互いに垂直方向に接近離間されるようになっていてもよく、水平又は垂直方向に対して斜め方向に接近離間されるようになっていてもよい。
【0055】
図5に示すように、各波付け割型32ひいては成形型33の内周面は、波付け型面39を構成している。波付け型面39は、山型部34及び谷型部35を含む。これら型部34,35が軸線Lに沿って交互に配置されている。図5及び図6に示すように、山型部34は、径方向外側へ凹むとともに成形型33の全周にわたる凹環状に形成されている。山型部34の内周径は、押出し口22の外周径より大きい。谷型部35は、山型部34より径方向内側(軸線L側)へ突出する凸環状に形成されている。
【0056】
図5に示すように、一部(第1)の谷型部35Aには、保持凸部13を成形するための突出型部36が設けられている。突出型部36における軸線Lと直交する断面は、端面36e,36fが直線状かつ頂部36pが円弧状の概略扇形状に形成されている。突出型部36の断面は、突出型部36の頂部36pを通る中心線LC36に関して対称である。
【0057】
突出型部36は、谷型部35Aにおける突出型部36以外の部分及び他(第2)の谷型部35Bより径方向内側へ突出されている。山型部34の底部から突出型部36の頂部36pまでの突出型高さH36は、山型部34の底部から谷型部35Aの頂部までの谷型高さH35の好ましくは1.5倍以上5倍以下である(H36=1.5×H35~5×H35)。より好ましくは、突出型高さH36は、谷型高さH35の3倍程度である(H36=3×H35)。
【0058】
図6に示すように、4つの突出型部36が、成形型33の周方向に間隔を置いて、好ましくは等間隔置きに配置されている。突出型部36は、成形型33の周方向に非連続である。
【0059】
図6に示すように、谷型部35Aにおける隣接する突出型部36どうしの間の部分は、引込型部37を構成している。引込型部37は、突出型部36より径方向外側へ引っ込んでいる。図6及び図7に示すように、引込型部37は、波付け割型32どうしの合わせ目38を跨ぐように配置されている。突出型部36は、合わせ目38から波付け型面39の周方向にずれており、半割筒状の各波付け割型32の周方向の中間部に配置されている。
【0060】
具体的には、各波付け割型32の周方向のちょうど中央部を挟んで両側の45°の角度にそれぞれ突出型部36が配置されている。対をなす2つの波付け割型22の各々に2つの突出型部36が設けられている。言い換えると、対をなす一方の波付け割型32に設けられた突出型部の数と、他方の波付け割型32に設けられた突出型部の数とが互いに同数である。
【0061】
各突出型部36における管周方向の両側の端面36e,36fのうち、当該突出型部36の直近の合わせ目38に対して遠い側の端面36fは、合わせ目38を含む仮想の平面(以下「割面PL38」)に対して直交している。合わせ目38に近い側の端面13eは、割面PL38とほぼ平行である。これら両側の端面13e,13fどうしは互いにほぼ90°の角度をなしている。
【0062】
図5の二点鎖線にて示すように、波付け割型32ひいては成形型33は、突出型部36が無い型ブロック32aと、突出型部36付きの型ブロック32bを組み合わせることによって構成されていてもよい。この場合、成形型33の作製の容易化のために、型ブロック32bひいては突出型部36が、各成形型33の端部に配置されていることが好ましい。
なお、隣の成形型33との間に樹脂19Aが巻き込まれるのを防止する観点からは、突出型部36が、各成形型33の中間部に配置されていてもよい。
【0063】
図5に示すように、さらに波形管成形部30には、吸引機構50が付加されている。吸引機構50は、多数の吸引穴52と、吸引路53を含む。吸引穴52は、波付け型面39に分散して配置されている。これら吸引穴52から吸引路53が延びて真空ポンプ51に連なっている。吸引路53には開閉バルブ54が設けられている。
【0064】
複合管1は、次のようにして製造される。
予め、内管9を成形して硬化させたり入手したりするなどして、用意しておく。
該内管9を、複合管製造装置3の押出ノズル20に導入し、内管送出口21から波形管成形部30へ向けて送り出す。内管9は、波形管成形部30の成形型33の内部に導入されて、軸線Lに沿って送り方向の下流側(図5において右側)へ送られる。
内管送出口21の内周面と内管9の外周面との間には、環状の気体供給路1dが形成される。気体供給路1dの上流端(図5において左方)は大気に解放されている。なお、気体供給路1dの上流端にコンプレッサやポンプなどの気体圧送装置を接続し、押出ノズル20から波形管形成部30に向けて空気などの気体を送り込むようにしてもよい。
【0065】
併行して、樹脂供給部4において、樹脂19を加熱溶融し、かつ発泡剤等を所定量添加することによって所定の発泡倍率(好ましくは1.05倍から4倍)で発泡されるようにする。該樹脂19を押出ノズル20に供給し、押出し口22から波形管成形部30へ向けて押し出す。
押出し時の樹脂19Aは、押出し口22と実質的に同じ内周径及び外周径の管状になっている。管状の樹脂19Aは、内管9を囲む被覆層となる。
【0066】
波形管成形部30においては、波付け割型32が環状軌道31に沿って循環されている。押出し口22の近傍において、対応する波付け割型32どうしが接近して合わさることで、筒状の成形型33が形成される。
該成形型3の内部に管状の樹脂19Aが導入される。突出型部36が波付け割型32どうしの合わせ目38からずれており、合わせ目38における波付け型面39の内接円径が比較的大きくなっているために、樹脂19Aが合わせ目38に噛み込むのを防止できる。
【0067】
続いて、吸引機構50によって、波形管成形部30の吸引穴52からバキュームする。これによって、管状の樹脂19Aが成形型33の波付け型面39に密着され、波形断面の波形被覆管10に成形される。波形被覆管10と内管9との間には通気隙間18が形成され、該通気隙間18が気体供給路1dと連なる。これによって、前記バキュームに伴って、外気(空気)が気体供給路1dから通気隙間18の全域に供給される。この結果、樹脂19Aを波付け型面39に確実に吸い付けることができ、波形被覆管10を確実に成形することができる。
【0068】
山型部34によって山部11が成形される。谷型部35によって谷部12が成形される。第1の谷型部35Aによって、第1の谷部12Aが成形され、第2の谷型部35Bによって第2の谷部12Bが成形される。更に、谷型部35Aにおいては、引込型部37によって谷部分14が形成されるとともに、突出型部36によって保持凸部13が成形される。突出型部36ひいては保持凸部13は、管周方向に断続的に配置されており、全周にわたって連続していないから、成形を容易化できる。
【0069】
かつ、谷部分14が波付け割型32どうしの合わせ目38を跨ぐ。保持凸部13は合わせ目38を避けて形成される。したがって、前述したように、樹脂19Aが合わせ目38に噛み込むことがない。特に、保持凸部13となる樹脂部分が合わせ目38に噛み込むことがない。これによって、樹脂の噛み込みによるバリやへこみを防止でき、波形被覆管10の成形を良好かつ確実に行うことができる。波形被覆管10における合わせ目38と対応する位置15には、パーティングラインが形成され得る。成形型33における合わせ目38を含む割面PL38は、波形被覆管10のパーティング断面PLと一致する。
【0070】
成形型33が軌道部分31aに沿って押出し口22から遠ざかるように移動されるのに伴って、該成形型33の内部の波形被覆管10ひいては複合管1が同方向へ移動される。
軌道部分31aの下流端(図4において右端)においては、図4及び図5の白抜き矢印線に示すように、成形型33の対をなす波付け割型32どうしが、互いの対向方向とは反対方向(割面PL38と直交する離型方向)へ平行移動するとともに、各々の環状軌道31の下流側折り返しの半円軌道部分31bに沿って回転しながら離間される。これによって、波形被覆管10が成形型33から離型される。このとき、突出型部36を含む谷型部35がアンダーカットになることはない。特に、突出型部36における端面36e,36fが割面PL38と直交する離型方向に対してアンダーカットになることがないため、容易に離型できる。樹脂19Aに滑剤を含ませておくことで、離型時の摩擦抵抗を低減でき、離型を容易化できる。
離型後の複合管1は、波形管成形部30から軸線Lに沿って送り方向の下流側(図4において右側)へ送り出される。
【0071】
このようにして作製された複合管1においては、波形被覆管10の各保持凸部13の頂部13pが、内管9の外周面に近接又は接触することによって、内管9を管軸Lからずれないように保持できる。これによって、内管9が内圧や温度の急変によってばたつくのを抑えることができる。また、内管9の内部に水などの流体を流したとき、さや鳴り音等の音鳴りが発生するのを抑制又は防止できる。さらに、パーティングライン位置15にバリが形成されるのを防止することで、バリによる音鳴りを確実に防止できる。
異音防止等のために、波形被覆管10と内管9の間に発泡樹脂中間層や消音テープを介在させる必要が無く、コスト高になるのを防止できる。
【0072】
保持凸部13は中心線L13Cに関して対称な断面形状であるから強度に偏りが生じないようにできる。また、両端面13e,13fどうしが90°の角度をなしているため、保持凸部13を管周方向へ折れにくくすることができる。さらに、管軸方向における保持凸部13の幅W13を谷部分14の幅W14よりも大きくすることで、保持凸部13を管軸方向へ折れにくくすることができる。これによって、保持凸部13の座屈を抑制でき、内管9を一層安定的に保持できる。
【0073】
また、波形被覆管10を外部から見ると、保持凸部13に対応する凹部16が谷部分14より大きく窪んで山部11にまで及び、山部11の一部分が欠けて見えることで、保持凸部13の位置を外部から容易に確認できる。したがって、継手接続等のために波形被覆管10を切断するとき、保持凸部13を避けて切断するのが容易である。保持凸部13の管軸方向の幅W13が谷部分14の幅W14より広いから、目視や手触りで保持凸部13の位置を容易に知ることができる。波形被覆管10を管軸方向に縮めるときは、保持凸部13を握ってしまうことがないようにすることができ、力をあまりかけなくてよくなる。内管9を波形被覆管10に差し込むときは、保持凸部13に内管9が引っ掛かり得るが、引っ掛かる位置がわかるし、保持凸部13の付近を持ちながら内管9を位置決めしつつ挿し込めるから、引っ掛かりを抑えることができる。
【0074】
波形被覆管10は発泡倍率が好ましくは1.05倍から4倍、より好ましくは1.2倍から2.5倍の単層の発泡樹脂体によって構成されているため、内管9のバタつきによる音鳴りを確実に抑制できるとともに、保温性を向上できる。
加えて、波形被覆管10と内管9との間の通気隙間18によって断熱層が形成されているため、複合管1の保温性を確保できる。
保持凸部高さH13を谷部高さH12の1.5倍以上5倍以下とすることによって、内管9を確実に保持できるとともに、通気隙間18が確実に形成されるようにでき、保温性を確実に確保できる。
保持凸部13の頂部13pが内管9とスポット的に接触することによって、内管9と保持凸部13ひいては波形被覆管10との接触面積を小さくできる。したがって、内管9と波形被覆管10との間の熱伝導を抑制でき、保温性を一層高めることができる。
波形被覆管10に滑剤を含ませることによって、内管9と波形被覆管10との間の摩擦抵抗を低減でき、これによって、継手接続などのために波形被覆管10端部を縮めて内管9の端部を露出させたり、複合管1を引き回したりする作業を容易化できる。
【0075】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図8図9)>
図8に示すように、第2実施形態に係る波形被覆管10Bにおいては、管軸と直交する保持凸部13の断面が、概略台形状になっている。保持凸部13の頂部13pは、内管9の外周に沿うように円弧凹面状に凹んでいる。該頂部13pの凹みは、成形型33B(図9)によって形成されたものでもよく、内管9によって形成されたものであってもよい。頂部13pの凹みに内管9の外周が嵌ることによって、内管9をしっかりと保持できる。
【0076】
保持凸部13におけるパーティングライン位置15に近い側の端面13eは、頂部13pへ向かって仮想のパーティング断面PLに近づくように、パーティング断面PLに対して斜めになっている。パーティングライン位置15から遠い側の端面13fが、パーティング断面PLに対して、該パーティング断面PLを向く側に90°以下の角度をなし、好ましくはパーティング断面PLとほぼ直交している点は、第1実施形態と同様である。
【0077】
図9に示すように、第2実施形態に係る成形型33Bにおいては、管軸と直交する突出型部36の断面が、概略台形状になっている。突出型部36の頂部36pは、内管9の外周に沿う円弧凹面状になっている。突出型部36における合わせ目38に近い側の端面36eは、頂部36pへ向かって仮想の割面PL38に近づくように、割面PL38に対して斜めになっている。合わせ目38から遠い側の端面36fが、割面PL38に対して、該割面PL38を向く側に90°以下の角度をなし、好ましくは割面PL38とほぼ直交している点は、第1実施形態と同様である。
成形型33Bにおいては、突出型部36が離型時のアンダーカットになることがなく、成形容易性を確保できる。
【0078】
<第3実施形態(図10図11)>
図10に示すように、第3実施形態に係る波形被覆管10Cにおいては、一対(2つ)の保持凸部13が、谷部12Aの周方向の互いに180°離れた位置に配置されている。保持凸部13の断面形状は、第1実施形態と同様に、頂部13pが円弧状の概略扇形状に形成されている。保持凸部13の両端面13gは、仮想のパーティング断面PLに対して、45°の角度をなしている。保持凸部13の数を最小限とすることによって、内管9との接触面積を減らして保温性を確保できる。
【0079】
図11に示すように、第3実施形態に係る成形型33Cにおいては、半円状の各波付け割型32の中央部に1つの突出型部36が設けられている。対をなす波付け割型32の突出型部36どうしが、成形型33Cの周方向に180°離れて対峙している。突出型部36の断面形状は、両端面36gが直線状かつ頂部36pが円弧状の概略扇形状に形成されている。突出型部36の両端面36gは、割面PL38に対して、45°の角度をなしている。成形型33Cにおいては、突出型部36が離型時のアンダーカットになることがなく、成形容易性を確保できる。
【0080】
<第4実施形態(図12図13)>
図12に示すように、第4実施形態に係る波形被覆管10Dにおいては、仮想のパーティング断面PLを挟んで両側の保持凸部13の数が互いに異なっている。詳しくは、谷部12Aにおけるパーティング断面PLを挟んで一方(図12において左側)の半周部分には、2つの保持凸部13が互いに90°離れて配置されている。谷部12Aにおける他方(図12において右側)の半周部分には、周方向の中央部に1つの保持凸部13が配置されている。これら保持凸部13の断面形状は、第1実施形態と同様に、両端面が直線状かつ頂部13pが円弧状の概略扇形状に形成されている。
【0081】
前記一方(図12において左側)の2つの保持凸部13における互いに対向する端面13fは、パーティング断面PLに対して直交し、互いに反対側の端面13eは、パーティング断面PLと平行になっている。前記他方(図12において右側)の半周部分における保持凸部13の両端面13gは、仮想のパーティング断面PLに対して45°の角度をなしている。
なお、波形被覆管10Dの管軸方向(図12の紙面直交方向)に隣接する谷部12Aにおける保持凸部13の配置又は数が互いに異なっていてもよい。例えば、前記隣接する谷部12Aにおける保持凸部13の配置が、互いに180°反転されていてもよい。
【0082】
図13に示すように、第4実施形態に係る成形型33Dにおいては、対をなす波付け割型32の突出型部36の数が互いに異なっている。一方(図13において左側)の波付け割型32には、2つの突出型部36が互いに90°離れて配置されている。他方(図13において右側)の波付け割型32には、周方向の中央部に1つの突出型部36が配置されている。これら突出型部36の断面形状は、第1実施形態と同様に、頂部36pが円弧状の概略扇形状に形成されている。
【0083】
前記一方(図13において左側)の波付け割型32における2つの突出型部36の互いに対向する端面36fは、割面PL38に対して直交し、互いに反対側の端面36eは、割面PL38と平行になっている。前記他方(図13において右側)の波付け割型32における突出型部36の両端面36gは、割面PL38に対して45°の角度をなしている。成形型33Dにおいては、突出型部36が離型時のアンダーカットになることがなく、成形容易性を確保できる。
なお、突出型部36は、成形型33における対をなす波付け割型32の少なくとも1つに設けられていればよい。環状軌道31上の隣接する波付け割型32どうしの突出型部36の数が互いに異なっていてもよい。
【0084】
<第5実施形態(図14図15)>
図14に示すように、第5実施形態に係る波形被覆管10Eにおいては、保持凸部13の頂部13pが、仮想のパーティング断面PLと平行な直線状に形成されて、保持凸部13の全域にわたって延びている。頂部13pの両端部が、谷部12Aと直接に連なっている。言い換えると、保持凸部13の両端面13gが、互いに180°の角度をなすことによって一直線上に配置されている。各端面13gとパーティング断面PLとの角度は0°である。一対の保持凸部13の間に内管9が挟まれている。これによって、内管9を安定的に保持できる。
【0085】
図15に示すように、第5実施形態に係る成形型33Eにおいては、突出型部36の頂部36pが、割面PL38と平行な直線状に形成されて、突出型部36の全域にわたって延びている。頂部36pの両端部が、谷型部35Aと直接に連なっている。言い換えると、突出型部36の両端面36gが、互いに180°の角度をなすことによって一直線上に配置されている。各端面36gと割面PL38との角度は0°である。成形型33Eにおいては、突出型部36が離型時のアンダーカットになることがなく、成形容易性を確保できる。
【0086】
<第6実施形態(図16図17)>
図16に示すように、第6実施形態に係る波形被覆管10Fにおいては、保持凸部13の断面形状が鋭角三角形状になっている。谷部12Aにおける保持凸部13の配置及び数は、第1実施形態と同様である。各保持凸部13は、仮想のパーティング断面PLと直交する向きに沿って谷部12Aから内管9へ向かって突出されている。両端面13e,13fは、それぞれパーティング断面PLに対して、該パーティング断面PLを向く側に90°から0°の角度をなし、頂部13pへ向かうにしたがって接近されている。先細になった頂部13pが、内管9とほぼ接している。これによって、保持凸部13と内管13の接触面積を極小にでき、保温性を確保できる。
【0087】
図17に示すように、第6実施形態に係る成形型33Fにおいては、突出型部36の断面形状が鋭角三角形状になっている。谷型部35Aにおける突出型部36の配置及び数は、第1実施形態と同様である。各突出型部36は、割面PL38と直交する向きに沿って谷型部35Aから突出されている。突出型部36の両端面36e,36fは、それぞれ割面PL38に対して、該割面PL38を向く側に90°から0°の角度をなしている。成形型33Fにおいては、突出型部36が離型時のアンダーカットになることがなく、成形容易性を確保できる。
【0088】
<第7実施形態(図18図19)>
図18に示すように、第7実施形態に係る波形被覆管10Gにおいては、保持凸部13の断面形状がU字形状になっている。谷部12Aにおける保持凸部13の配置及び数は、第1実施形態と同様である。各保持凸部13が、仮想のパーティング断面PLと直交する向きに沿って谷部12Aから内管9へ向かって突出されている。両端面13e,13fは、互いに平行をなし、かつパーティング断面PLに対して直交している。半円状断面の頂部13pが、内管9とほぼ接している。これによって、保持凸部13と内管13の接触面積を小さくでき、保温性を確保できる。
【0089】
図19に示すように、第7実施形態に係る成形型33Gにおいては、突出型部36が割面PL38と直交する向きに沿って谷型部35Aから突出されている。突出型部36の両端面36e,36fは、それぞれ割面PL38に対して90°の角度をなしている。頂部36pは、半円状断面になっている。成形型33Gにおいては、突出型部36が離型時のアンダーカットになることがなく、成形容易性を確保できる。
【0090】
<第8実施形態(図20)>
図20に示すように、第8実施形態に係る波形被覆管10Hにおいては、保持凸部13の管軸方向の側面13aの勾配が、谷部分14における同じ側の管内側面14aの勾配よりも急になっている。山部11と谷部12の中間高さH10における、保持凸部13の管軸方向の幅W13は、谷部分14の管軸方向の幅W14と同等である(W13=W14)。波形被覆管10Hによれば、保持凸部13によって外面に現れる凹部16が、山部11まで及ばないようにでき、山部11の欠けを防止できる。
【0091】
<第9実施形態(図21図22)>
図21に示すように、第9実施形態に係る波形被覆管10Iにおいては、保持凸部13の管軸Lに沿う断面形状が、該保持凸部13の頂部13pを通る管径に沿う中心線L13Iに関して非対象になっている。詳しくは、保持凸部13における、管軸方向の一方側(図21において左側)の側面13bの勾配が、管軸方向の他方側(図21において右側)の側面13dの勾配より緩やかになっている。
【0092】
ここで、保持凸部13の側面13b,13dは、該保持凸部13が山部11又は谷部分14と連なるR部13qと頂部13pとの間の、管軸Lに沿う断面が略直線状になった表面部分を言う。R部13qは、円弧状断面であるが、これに限らず、図23に示すように、側面13b,13dよりもさらに緩やかな勾配の直線状断面になっていてもよい。頂部13pは、円弧状断面であるが、これに限らず、図24(a)に示すように、保持凸部13の突出方向と交差(直交)する平坦面であってもよく、図24(b)に示すように、側面13b,13dどうしが直接的に交差することで頂部13pが鋭角に尖っていてもよい。
【0093】
好ましくは、緩勾配側面13bの勾配は、急勾配側面13dの勾配より1°以上緩やかになっている。好ましくは、中心線L13I(管径方向)に対する緩勾配側面13bの角度は、5°から20°である。
【0094】
図22に示すように、第9実施形態に係る成形型33Iの突出型部36においては、軌道部分31aの送り方向の上流側を向く側面36bの勾配が、下流側を向く側面36dの勾配より緩やかになっている。好ましくは、緩勾配側面36bの勾配は、急勾配側面36dの勾配より1°以上緩やかになっている。好ましくは、成形型33Iの径方向に対する緩勾配側面36bの角度は、5°から20°である。
【0095】
図22に示すように、突出型部36の上流側を向く緩勾配側面36bによって、保持凸部13の緩勾配側面13bが成形される。下流側を向く急勾配側面36dによって、急勾配側面13dが成形される。突出型部36の上流側の側面36bひいては保持凸部13の側面13bを緩勾配にすることによって、下流側折り返しの半円軌道部分31bに沿って脱型される際、保持凸部13の上流側の側面13bが突出型部36と干渉して凹むように変形されるのを防止できる。
【0096】
図22において二点鎖線にて示すように、仮に、保持凸部13の上流側の側面13bが下流側の側面13dと同じ勾配であったとすると、波付け割型32が脱型のために環状軌道31の下流側の半円部に沿って回転されるとき、突出型部36が保持凸部13の上流側の側面13bに当たりやすくなる。
【0097】
本発明は、前記実施形態に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の形態を採用できる。
例えば、本発明に係る波形被覆管は円形断面に限らない。図25に示すように、波形被覆管10Jが、楕円状の断面形状であってもよい。図26に示すように、波形被覆管10Kが、四角形の断面形状であってもよい。
前記複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第8実施形態(図20)又は第9実施形態(図21)の保持凸部13における管軸Lと直交する断面形状は、第1~第7実施形態(図1図19)の何れかの断面形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば給水給湯管に適用できる。
【符号の説明】
【0099】
管軸
13c 中心線
13I 中心線
LC36 中心線
PL パーティング断面
PL38 割面
10 中間高さ
1 複合管
3 複合管製造装置(波型被覆管製造装置)
4 供給部
4a 押出部
9 内管
10 波形被覆管
10B~10K 波形被覆管
11 山部
12 谷部
12A 一部の谷部
12B 一部以外の谷部
12p 管内頂部
13 保持凸部
13a 側面
13b 一方側(上流側)の緩勾配の側面
13d 他方側(下流側)の急勾配の側面 右
13e 近い側の端面
13f 遠い側の端面
13g 端面
13p 頂部
13r,13q R部
14 谷部分
14a 管内側面
15 パーティングライン位置
19 原料樹脂
19A 管状の樹脂
20 押出ノズル
31 環状軌道
31a 共有の軌道部分
31b 下流側折り返しの半円軌道部分
32 波付け割型
33 成形型
34 山型部
35 谷型部
35A 一部(第1)の谷型部
35B 他(第2)の谷型部
36 突出型部
36b 上流側の側面
36d 下流側の側面
36e 近い側の端面
36f 遠い側の端面
36g 端面
36p 頂部
37 引込型部
38 合わせ目
39 波付け型面
50 吸引機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図25
図26