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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】配線構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241113BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20241113BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H02G3/04 081
H02G3/22
E04B1/64 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021027926
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129269
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 浩之
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-060812(JP,U)
【文献】特開平10-131471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/22
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に面した構造物の外板を貫通した引出穴を通して配線が配索され、前記外板には、前記引出穴を覆うカバー部材が設けられた配線構造であって、
前記引出穴には、前記配線を前記引出穴から保護するとともに、前記引出穴の水密性を確保する防水配線保護部材が取り付けられ、
前記防水配線保護部材は、両端に開口を備える筒状を成し、筒状の内側の寸法が前記配線を挿通し移動させることが可能な寸法の本体部と、前記本体部の第1の端部において前記引出穴よりも外径方向に張り出し、前記引出穴の外周縁に当接されたフランジ部と、を備え、
前記本体部は、前記引出穴に配置された前記第1の端部から上方に屈曲され、第2の端部の第2の開口を前記第1の端部の第1の開口よりも高い位置に配置するとともに、前記第2の開口の向きを上向きとする方向変換延在部を備え
前記本体部は、前記フランジ部に連続して前記第1の開口と略同軸に延在され、前記引出穴の内周に水密性を確保して当接されたシール部を備え、
前記シール部は、前記本体部の前記方向変換延在部よりも厚肉に形成されている配線構造。
【請求項2】
請求項1に記載の配線構造において、
前記方向変換延在部は、前記第2の端部の開口を、前記カバー部材の上端よりも上方に配置するまで延在されている配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外壁を貫通して配索された配線構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の配線構造は、感知センサに適用されたもので、外壁に取り付けられるカバー部材の内側に、電源供給する電線を接続するセンサ本体が設けられている。このセンサ本体に接続された電線は、外壁に形成された引出穴から建物内に配索されており、引出穴には、筒状の防水配線保護部材(いわゆるブッシング)が設けられている。
【0003】
また、電線としては、銅線をビニル被覆した複数の心線の外側をビニルシースで覆ったものが用いられている。電線は、防水配線保護部材よりも外壁内側ではビニルシースで覆われた状態であり、配線保護部材よりも外壁外側では、ビニルシースを取り除いて、各心線をそれぞれ独立させてコネクタ本体に接続された構造となっている。
【0004】
この従来構造では、電線は、防水配線保護部材を境にビニルシースで覆われた部分と、ビニルシースを剥がして、センサ本体に接続させるために心線の1本1本を独立させており、電線は防水配線保護部材に対して軸方向に移動できない構造となっている。したがって、電気機器を外壁に取り付けた状態では、電線において接続作業を行うのに必要な作業用の長さである余長部分が、カバー部材の内側に折り曲げて収容されている。
【0005】
また、従来、引出穴の内周にCD管、PF管と称する合成樹脂可撓電線管を設け、配線をこの電線管に挿通する場合もあるが、この場合も、電線管の内周と配線の外周との間にコーキング材を充填してシールを行うため、引出穴に対して配線を移動させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-97103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来技術では、引出穴に対して電線を移動させることができないため、電線の接続作業用の余長部分を折り曲げてカバー部材に収容する必要がある。このため、電線の折り曲げ部分が断線したり、電線を電気機器と外壁との間に挟んで断線したりして、ショートや漏電が生じるおそれがあった。加えて、電気機器のカバー部材の内部には、電線の余長部分を収容するスペースを確保する必要があり、カバー部材、ひいては電気機器自体の大型化を招いていた。
【0008】
また、電線を配線保護部材に対して移動可能とした場合、電線の余長部分を電気機器に収容する必要はなくなるが、電線と配線保護部材との間に隙間が生じ、この隙間から水が外壁内に浸入するおそれがある。そこで、このような水の浸入を防止するための防水部材が別途必要となり、部品点数増およびコスト増を招いていた。
【0009】
本開示は、上述の従来の課題に着目して成されたもので、防水性能を確保しつつ、部品点数増、コスト増、大型化、断線の発生を抑制可能な配線構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の配線構造は、屋外に面した構造物の外板を貫通した引出穴を通して配線が配索され、前記外板には、前記引出穴を覆うカバー部材が設けられた配線構造である。そして、前記引出穴には、前記配線を前記引出穴から保護するとともに、前記引出穴の水密性を確保する防水配線保護部材が取り付けられている。また、前記防水配線保護部材は、両端に開口を備える筒状を成し、筒状の内側の寸法が前記配線を挿通し移動させることが可能な寸法の本体部と、前記本体部の第1の端部において前記引出穴よりも外径方向に張り出し、前記引出穴の外周縁に当接されたフランジ部と、を備える。さらに、前記本体部は、前記引出穴に配置された前記第1の端部から上方に屈曲され、第2の端部の第2の開口を前記第1の開口よりも高い位置に配置するとともに、前記第2の開口の向きを上向きとする方向変換延在部を備え、前記本体部は、前記フランジ部に連続して前記第1の開口と略同軸に延在され、前記引出穴の内周に水密性を確保して当接されたシール部を備え、前記シール部は、前記本体部の前記方向変換延在部よりも厚肉に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示の配線構造では、引出穴に取り付けた防水配線保護部材の本体部は、この本体部に挿通された配線を移動可能な寸法となっている。したがって、カバー部材を取り付ける際に生じる余長分は、防水配線保護部材の本体部に沿って移動させて外板の内側に戻すことができる。よって、配線の余長部分などを、カバー部材の内側に折り曲げて収容する必要が無く、折り曲げや挟み込みなどを原因とする断線を防止できる。そして、カバー部材には、配線の余長部分を収容するスペースが不要であり、このスペースを確保した場合と比較してカバー部材あるいはそのカバー部材を有する電気機器の小型化を図ることができる。
【0012】
また、防水配線保護部材による水密性は、フランジ部を引出穴の外周縁に当接させて防水配線保護部材と引出穴の内周との間の水密性を確保できる。一方、防水配線保護部材の本体部は、電線を移動可能としているため、水の移動を可能とする隙間を有しているが、本体部の第2の開口は、本体部の第1の端部において外板の外側を向いて開口した第1の開口よりも高い位置に配置されている。したがって、第1の開口に水が浸入した場合、第2の開口が第1の開口と同じ高さや、低い位置に配置されているものと比較して、第2の開口から外板の内側への水の浸入を抑制することができる。よって、防水配線保護部材の他に防水用の部材を追加設定することを抑制でき、部品点数増、コスト増を抑えることが可能である。
また、本体部は、フランジ部に連続して第1の開口と略同軸に延在され、引出穴の内周に水密性を確保して当接されたシール部を備え、シール部は、本体部の方向変換延在部よりも厚肉に形成されている。そのため、引出穴と防水配線保護部材のシール部とを当接させたため、引出穴と防水配線保護部材との間のシール性を、さらに向上できる。加えて、シール部を、方向変換延在部よりも厚肉に形成したため、本体部を全長に亘って同一厚に形成したものよりも、シール部の変形代を確保でき、引出穴との間の水密性をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1の配線構造を示す断面図である。
図2】実施の形態1の配線構造における電気機器における電線の接続部分を示す背面図である。
図3】実施の形態1の配線構造に用いた防水配線保護部材を示すもので、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態1の配線構造の構成を説明する。
実施の形態1の配線構造は、図1に示す建物の外壁などの壁WOの外板10の外側面10aに設けた電気機器20に接続する電線30の配線の構造であり、特に、既設の壁WOの外板10に、後付けで電気機器20を取り付ける場合に適用する構造である。
【0015】
ここで、電気機器20としては、屋外コンセントや外灯や防犯カメラや防犯センサなどを用いることができる。また、電気機器20は、図2に示すように電線30を接続する機器本体21および後述する引出穴11を、樹脂製箱状のカバー部材22で覆った構造となっている。
【0016】
壁WOの外板10には、引出穴11が貫通して形成されており、電線30が引出穴11を通って、壁内空間ISから壁外空間OSへ引き出されている。
【0017】
電気機器20は、引出穴11が形成された位置の外板10の外側面10aに取り付けられている。この電気機器20の取り付けは、電気機器20のカバー部材22に形成されたねじ穴(不図示)に挿通させた木ねじ24を、外板10からその裏面に設置された受合板23に締め付けて固定することで成されている。なお、受合板23には、電線30を挿通させるための挿通穴23aが引出穴11と略同軸に設けられている。
【0018】
電線30は、例えば、VVFケーブル(Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type cable)と称されるもので、本実施の形態1では、ビニル被覆された3本の心線31a,31b,31c(図2参照)を、塩化ビニルなどの樹脂製のシース32により覆った平形のものである。
【0019】
なお、以下の説明において、これら3本の心線31a,31b,31cをまとめて称する場合や、特定のものを指さない場合は、単に、心線31と称する。
また、この電線30は、いわゆる単相2線式のもので、図2に示す心線31a,31bは電源供給用のもので、心線31cが接地用のものである。
【0020】
電線30は、図1に示すように、壁内空間ISに配索される部分は、シース32により覆われて3本の心線31a,31b,31cがひとまとめとなっている。そして、電気機器20に接続する部分の近傍では、機器本体21の各電極に接続するためにシース32が取り除かれて心線31a,31b,31cが独立して配索されている。なお、電線30の各心線31は、1.6~2.6mm程度の大きさであり、例えば、電源供給用の心線31a,31bは、2.6mm程度の大きさのものを用い、接地用の心線31cは、1.6mm程度の大きさのものを用いるものとする。
【0021】
引出穴11には、電線30を保護するとともに、引出穴11をシールする防水配線保護部材40が設けられている。
【0022】
防水配線保護部材40は、ゴムや弾性樹脂などの弾性材により形成され、内径が一定の筒状の本体部41と、本体部41の第1の端部に形成されたフランジ部42とを備える。図3に示すように、本体部41は、第1の端部に第1の開口41aを備え、第2の端部に第2の開口41bを備える。フランジ部42は、第1の端部において外径方向に張り出され、本体部41の外径および引出穴11の内径よりも大径に形成されている。
【0023】
さらに、本体部41は、方向変換延在部41cとシール部41dとを備える。
【0024】
シール部41dは、フランジ部42を図1に示すように外板10の外側面10aにおいて引出穴11の外周縁に当接させたときに、引出穴11および挿通穴23aの内周に圧接されて引出穴11および挿通穴23aと防水配線保護部材40との間をシールする。
【0025】
すなわち、引出穴11において、引出穴11と防水配線保護部材40のシールは、フランジ部42を外板10の外側面10aにおいて引出穴11の外周縁に当接させることで、引出穴11の内周への水の浸入を防止する。
【0026】
さらに、シール部41dの外周を、引出穴11の内周に圧接させることで、水が引出穴11の内周に沿って浸入するのを防止する。そこで、シール部41dは、引出穴11および挿通穴23aに接触圧を有して接触するよう、引出穴11および挿通穴23aの内径よりも僅かに大径に形成されている。そして、シール部41dは、弾性率を低くし変形代を確保できるように、本体部41の他の部位である後述の方向変換延在部41cよりも厚肉に形成され、方向変換延在部41cよりも外径寸法が大径に形成されている。具体的には、本実施の形態1では、方向変換延在部41cの肉厚を2.5mm程度としているのに対し、シール部41dの肉厚を3.5mm程度とし、シール部41dの外径は方向変換延在部41cの外径よりも2mm程度大径に形成されている。
【0027】
方向変換延在部41cは、図1に示すように第1の開口41aを略水平方向に向けたときに、本体部41の第2の端部の第2の開口41bを上向きとするよう略1/4の円弧状に屈曲されている。さらに、方向変換延在部41cは、第2の開口41bを、第1の開口41aよりも高い位置であり、しかも、カバー部材22の上端よりも高低差LLだけ高い位置に配置可能とするよう上方に延在されている。
【0028】
また、本体部41は、電線30を筒に沿って円滑に移動可能な内径寸法(例えば、内径15mm程度)に形成されている。なお、上記したように電線30の各心線31は、1.6~2.6mm程度の大きさである。よって、本体部41の内径は、電線30の外周との間に十分に隙間を確保でき、電線30が、シース32を切除して心線31がバラバラになっていても、また、本体部41が図示のように湾曲形状になっていても、電線30を本体部41の内側に沿って円滑に移動させることが可能となっている。なお、この内径寸法は、本体部41および電線30の外皮の材質や、両者の大きさに応じ、所望の移動の円滑性が得られるように任意に決定することができるものであり、本体部41と電線30との一方あるいは両方の材質として潤滑性を有したものを用いた場合は、電線30の外径に対する本体部41の内径の寸法差を、より小さくすることも可能である。
【0029】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の作用として、壁WOに電気機器20を取り付ける手順を説明する。なお、外板10には、電気機器20の取り付ける作業を行う前に、予め受合板23が取り付けられているとともに、引出穴11および挿通穴23aが形成されているものとする。
【0030】
まず、壁WOの内側に配索した電線30を引出穴11から引き出し、防水配線保護部材40の本体部41に第2の開口41bから差し込み、第1の開口41aから引き出す。そして、電線30の先端部のシース32を切除し、さらに、各心線31の被覆を剥がし、各心線31を図2に示すように、電気機器20の機器本体21に接続させる。
【0031】
次に、防水配線保護部材40の本体部41を、引出穴11に第2の端部(開口41b)の側から挿入し、第2の開口41bを上方に向けるようにして本体部41の全長を引出穴11に引き込んでフランジ部42を、引出穴11の周縁の外板10の外側面10aに当接させる。このとき、防水配線保護部材40は、図1に示すように、シール部41dが、引出穴11および挿通穴23aの内周に圧接状態となり、引出穴11の内周は防水配線保護部材40によりシールされ、水密性を確保できる。また、シール部41dは、厚肉に形成されているため、弾性変形しやすく、引出穴11と干渉して防水配線保護部材40自体の破損を防止できるとともに、引出穴11の内周に密着して水密性をより確実に確保できる。なお、防水配線保護部材40は、予め引出穴11に取り付けておいてもよい。
【0032】
次に、電気機器20を外板10に取り付けるために、電気機器20のカバー部材22を図1に示すように外板10の外側面10aに当接させる。このとき、電気機器20を外板10に近付けるのに伴い、電線30を防水配線保護部材40の本体部41に沿って移動させて壁内空間ISに戻す。
【0033】
この場合、防水配線保護部材40の本体部41の内径は、電線30の太さと比較して十分に大きな寸法であるため、電線30は円滑に本体部41に沿って移動させることができる。
【0034】
そして、電気機器20のカバー部材22を外板10の外側面10aに当接させたら、木ねじ24をカバー部材22のねじ穴(不図示)に挿通させて外板10および受合板23に締め付けて電気機器20を外板10に固定する。
【0035】
このように、電線30の接続作業用に引き出した余長部分は壁内空間ISに戻すため、外板10と電気機器20との間やカバー部材22の内部などの狭い空間に折り曲げて収容する必要が無い。よって、電線30を折り曲げたり、電気機器20と外板10との間に挟み込んだりすることがなく、断線などの通電性の悪化によるショートや漏電を防止できる。また、カバー部材22に、電線を収容するスペースを確保する必要が無く、このスペースを確保した場合と比較して、カバー部材22および電気機器20の小型化を図ることができる。
【0036】
また、図1のように電気機器20を外板10に固定した状態で、防水配線保護部材40の本体部41を介して、カバー部材22の内側(壁外空間OS)と、壁内空間ISとが連通された状態となっている。
【0037】
しかしながら、カバー部材22の内側に浸入した水が第1の開口41aに達しても、第2の開口41bは第1の開口41aよりも高い位置に配置されているため、カバー部材22に浸入した水が壁内空間ISに達することはない。
【0038】
さらに、カバー部材22の内側に浸入した水の水位がカバー部材22の内側の上端に達し水頭圧が作用した場合でも、第2の開口41bは、カバー部材22の上端に対して高低差LLを確保しているため、第2の開口41bから壁内空間ISに漏れることはない。
【0039】
このように、防水配線保護部材40の本体部41の内周と電線30との間に、電線30を円滑に移動させるための隙間が存在していても、壁内空間ISへの水の浸入を確実に防止することができる。よって、防水配線保護部材40の他に、シール用の部材を追加する必要が無く、部品点数増、コスト増を抑えることが可能である。
【0040】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の配線構造の効果を列挙する。
(1)実施の形態1の配線構造は、壁外空間OSに面した構造物としての壁WOの外板10を貫通した引出穴11を通して配線としての電線30が配索され、外板10には、引出穴11を覆うカバー部材22を備えた電気機器20が設けられた配線構造である。
【0041】
そして、引出穴11には、電線30を引出穴11から保護するとともに、引出穴11の水密性を確保する防水配線保護部材40が取り付けられている。防水配線保護部材40は、両端に第1の開口41aおよび第2の開口41bを備える筒状を成し、筒状の内側の寸法が電線30を挿通し移動させることが可能な寸法の本体部41と、本体部41の第1の端部において引出穴11よりも外径方向に張り出し、引出穴11の外周縁に当接されたフランジ部42と、を備える。さらに、本体部41は、引出穴11に配置された第1の端部から上方に屈曲され、第2の端部の第2の開口41bを第1の開口41aよりも高い位置に配置するとともに、第2の開口41bの向きを上向きとする方向変換延在部41cを備える。
【0042】
したがって、電線30を電気機器20に接続させる際に引き出した作業用の余長部分は、電気機器20のカバー部材22を外板10に取り付ける際には、防水配線保護部材40の本体部41に沿って移動させて壁内空間ISに配置することができる。よって、電線30の接続作業用の余長部分を、外板10と電気機器20との間で折り曲げて収容する必要が無く、電線30を折り曲げたり、外板10と電気機器20との間に挟み込んだりすることによる断線、破損によりショート、漏電などの不具合の発生を防止できるとともに、カバー部材22に電線30の余長部分を収容するスペースを確保することによるカバー部材22および電気機器20の大型化を抑制できる。
【0043】
また、引出穴11を介した壁外空間OSから壁内空間ISへの水の浸入は、防水配線保護部材40により防止できる。すなわち、フランジ部42を外板10の外側面10aの引出穴11の外周縁部に当接させたことで、外板10の壁外空間OS側から引出穴11への水の浸入を防止できる。
【0044】
一方、防水配線保護部材40の本体部41の内側を通っての水の浸入は、第1の開口41aと第2の開口41bとの高低差により防止することができる。すなわち、壁内空間ISに開口した第2の開口41bは、壁外空間OSに開口した第1の開口41aよりも高い位置に配置されている。したがって、第1の開口41aに浸入した水が、第2の開口41bから壁内空間ISに浸入するのを防止できる。
【0045】
このように、防水配線保護部材40の本体部41は、電線30を移動可能な寸法でありながら、水密性を確保できる。よって、防水配線保護部材40の他に防水用の部材を追加設定することを抑制し、部品点数増、コスト増を抑えることが可能である。
【0046】
したがって、引出穴11における防水性能を確保しつつ、部品点数増、コスト増、大型化、断線の発生を抑制可能である。
【0047】
(2)実施の形態1の配線構造では、方向変換延在部41cは、第2の開口41bを、カバー部材22の上端よりも高低差LLだけ上方に配置するまで延在されている。
【0048】
したがって、カバー部材22の内側囲浸入した水の水位が、仮に、カバー部材22の上端迄上昇したとしても、その時の、本体部41における水頭が第2の開口41bを超えることがなく、より確実に防水することができる。
【0049】
(3)実施の形態1の配線構造では、本体部41は、フランジ部42に連続して第1の開口41aと略同軸に延在され、引出穴11の内周に水密性を確保して当接されたシール部41dを備える。そして、シール部41dは、本体部41の方向変換延在部41cよりも厚肉に形成されている。
【0050】
したがって、引出穴11と防水配線保護部材40のシール部41dとを当接させたため、引出穴11と防水配線保護部材40との間のシール性を、さらに向上できる。加えて、シール部41dを、方向変換延在部41cよりも厚肉に形成したため、本体部41を全長に亘って同一厚に形成したものよりも、シール部41dの変形代を確保でき、引出穴11との間の水密性をさらに向上できる。
【0051】
(4)実施の形態1の 配線構造に用いる防水配線保護部材40は、両端に開口41a,41bを備える筒状の本体部41と、本体部41の第1の端部において本体部41の外周から外径方向に張り出したフランジ部42と、を備える。そして、本体部41は、フランジ部42に連続して第1の端部の第1の開口41aと略同軸方向に延在されたシール部41dと、シール部41dに連続して延在され、本体部41の第2の端部の第2の開口41bの向きを第1の開口41aの向きに対して略直交方向に向かせるとともに、第2の開口41bを第1の開口41aから略直交方向に離間させた方向変換延在部41cと、を備える。
【0052】
したがって、引出穴11の内径に応じたシール部41dを有した防水配線保護部材40を用いて、上記(1)の効果を奏する配線構造を提供することができる。また、第2の開口41bをカバー部材22の上端よりも上方に配置可能な長さの本体部41を備えた防水配線保護部材40を用いることで、上記(2)の効果を奏する配線構造を提供することができる。
【0053】
以上、図面を参照して、本開示の配線構造の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0054】
例えば、実施の形態では、外板を有した構造物として建物を示したが、構造物としてはこれに限定されるものではなく、外板が屋外に面した構造物であれば塀、門などの建物以外の構造物にも適用することができる。
【0055】
また、実施の形態では、電線としてVVFケーブルを示したが、これに限定されず、VVRケーブル(Vinyl insulated Vinyl sheathed Round-type cable)、EM-EEFケーブル(Eco Material-polyethylene insulated polyethylene sheathed Flat-Type cable)、CVケーブル(Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath cable)ケーブルなどの他のケーブルを適用可能である。
【0056】
また、実施の形態では、配線として電線を示したが、これに限定されない。例えば、配線として、電線以外のLANケーブルや、屋外に設置した機器(例えば、給湯器など)に屋内から配索する遠隔操作用の信号を伝達する配線などにも適用することができる。
【0057】
また、実施の形態では、カバー部材として電気機器のカバー部材を示したが、これに限定されない。例えば、上述のようなLANケーブルや遠隔操作用の信号を伝達する配線などに適用した場合、カバー部材として、単に、引出穴を覆うカバー部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 外板
10a 外側面
11 引出穴
20 電気機器
22 カバー部材
30 電線(配線)
40 防水配線保護部材
41 本体部
41a 第1の開口
41b 第2の開口
41c 方向変換延在部
41d シール部
42 フランジ部
IS 壁内空間
LL 高低差
OS 壁外空間
WO 壁
図1
図2
図3