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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】気体伝播評価装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20241113BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241113BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021046577
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022145254
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 正博
(72)【発明者】
【氏名】天野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 睦博
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-198161(JP,A)
【文献】特開2019-178977(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111554409(CN,A)
【文献】吉岡 逸夫,浜野 明千宏,有害危険物質の屋内拡散予測の解析例-EVE SAYFAによる化学・生物テロのシミュレーション,アドバンスシミュレーション Vol.6 Advance Simulation,日本,アドバンスソフト株式会社,2010年12月17日,第6巻,p53-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
F24F 7/00-7/007
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象とする建物に設けられた各部屋の配置を示す配置情報、部屋の間の接続状況を示す接続情報、各部屋の予め定められた気体の漏洩に対する対策ランクを示す対策ランク情報、及び各部屋の前記気体が発生する確率を示す発生確率情報を取得する取得部と、
前記配置情報、前記接続情報、及び前記対策ランク情報を用いて、接続された一の部屋から他の部屋への前記気体が伝播する確率である伝播確率を導出する確率導出部と、
前記配置情報、前記発生確率情報、及び前記伝播確率を用いて、前記気体が発生した部屋から評価対象とする部屋に対する前記気体の伝播リスクを示すリスク情報を導出するリスク導出部と、
を備えた気体伝播評価装置。
【請求項2】
前記対策ランクは、対応する部屋に設けられた扉の気密性、及び対応する部屋と隣接する部屋との間の室間差圧の少なくとも一方を用いて決定される、
請求項1に記載の気体伝播評価装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記評価対象とする部屋を示す評価対象部屋情報を更に取得する、
請求項1又は請求項2に記載の気体伝播評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体伝播評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場では、埃等の微粒子がクリーンルーム内に入り込むのを防止しなければならない。また、薬品工場では、高活性医薬品が他の部屋へ漏れないようにしなければならない。更に、病院では、院内感染を防ぐために、細菌、又はウイルスに汚染された空気が他の部屋へ漏れないようにしなければならない。
【0003】
このように、食品工場、薬品工場、病院等の建物内においては、空気のみならず、各種の気体の漏洩が問題となるため、建物内における気体の漏洩によるリスクを評価する技術が要望されている。
【0004】
従来、建物内における気体の漏洩によるリスクの評価を行うために適用することのできる技術として、次の技術があった。
【0005】
すなわち、特許文献1には、サーバと閲覧端末とが通信ネットワークを介して接続されて構成される室内空気汚染予測システムが開示されている。
【0006】
この室内空気汚染予測システムでは、前記閲覧端末は、室内汚染物質の濃度の計算に必要な条件データを入力する条件入力手段と、前記入力手段により入力された条件データを前記サーバへ送信する条件送信手段と、を備える。また、前記サーバは、前記条件送信手段により送信された条件データを代入して室内汚染物質の濃度の計算が可能な計算式を記憶する計算式記憶手段と、前記条件送信手段により送信された条件データを受信する条件受信手段と、を備える。また、前記サーバは、前記条件受信手段により受信された条件データを、前記計算式記憶手段に記憶されている計算式に代入して、前記室内汚染物質の濃度を計算する計算手段と、前記計算手段により計算された室内汚染物質の濃度を室内空気汚染状況の予測結果として前記閲覧端末へ送信する予測結果送信手段と、を備える。そして、前記閲覧端末は、前記予測結果送信手段により送信された予測結果を受信する予測結果受信手段と、前記予測結果受信手段により受信された予測結果を表示する予測結果表示手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-30567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、汚染されている空気等の気体が一の部屋から他の部屋へ伝播するリスクを評価することができない、という問題点があった。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、汚染されている気体が一の部屋から他の部屋へ伝播するリスクを評価することができる気体伝播評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る気体伝播評価装置は、評価対象とする建物に設けられた各部屋の配置を示す配置情報、部屋の間の接続状況を示す接続情報、各部屋の予め定められた気体の漏洩に対する対策ランクを示す対策ランク情報、及び各部屋の前記気体が発生する確率を示す発生確率情報を取得する取得部と、前記配置情報、前記接続情報、及び前記対策ランク情報を用いて、接続された一の部屋から他の部屋への前記気体が伝播する確率である伝播確率を導出する確率導出部と、前記配置情報、前記発生確率情報、及び前記伝播確率を用いて、前記気体が発生した部屋から評価対象とする部屋に対する前記気体の伝播リスクを示すリスク情報を導出するリスク導出部と、を備える。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る気体伝播評価装置によれば、評価対象とする建物に設けられた各部屋の配置を示す配置情報、部屋の間の接続状況を示す接続情報、各部屋の予め定められた気体の漏洩に対する対策ランクを示す対策ランク情報、及び各部屋の当該気体が発生する確率を示す発生確率情報を取得し、配置情報、接続情報、及び対策ランク情報を用いて、接続された一の部屋から他の部屋への上記気体が伝播する確率である伝播確率を導出し、配置情報、発生確率情報、及び伝播確率を用いて、上記気体が発生した部屋から評価対象とする部屋に対する当該気体の伝播リスクを示すリスク情報を導出することで、汚染されている気体が一の部屋から他の部屋へ伝播するリスクを評価することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る気体伝播評価装置は、請求項1に記載の気体伝播評価装置であって、前記対策ランクが、対応する部屋に設けられた扉の気密性、及び対応する部屋と隣接する部屋との間の室間差圧の少なくとも一方を用いて決定されるものである。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る気体伝播評価装置によれば、対策ランクを、対応する部屋に設けられた扉の気密性、及び対応する部屋と隣接する部屋との間の室間差圧の少なくとも一方を用いて決定されるものとすることで、上記扉の気密性及び上記室間差圧の少なくとも一方を考慮したリスク情報を導出することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る気体伝播評価装置は、請求項1又は請求項2に記載の気体伝播評価装置であって、前記取得部が、前記評価対象とする部屋を示す評価対象部屋情報を更に取得するものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る気体伝播評価装置によれば、評価対象とする部屋を示す評価対象部屋情報を更に取得することで、評価対象とする部屋を特定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、汚染されている気体が一の部屋から他の部屋へ伝播するリスクを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る気体伝播評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る気体伝播評価装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る対策ランク情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図4】実施形態に係る汚染伝播確率情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図5】実施形態に係る気体伝播評価処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る部屋配置情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図7】実施形態に係る対策状況入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図8】実施形態に係る気体伝播評価処理の説明に供する図であり、各部屋の配置及び対策ランクの一例を示す模式図である。
図9】実施形態に係る気体伝播評価処理の説明に供する図であり、各部屋間の汚染伝播確率の行列の一例を示す模式図である。
図10】実施形態に係る気体伝播評価処理の説明に供する図であり、各部屋間の汚染伝播確率を示す隣接行列の一例を示す模式図である。
図11】実施形態に係る汚染発生確率入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図12】実施形態に係る気体伝播評価処理の説明に供する図であり、各部屋における汚染空気の発生確率の行列の一例を示す模式図である。
図13】実施形態に係る評価対象部屋指定画面の一例を示す正面図である。
図14】実施形態に係る評価結果画面の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明を、病院内における各部屋における汚染された空気の漏洩の伝播リスクを評価する形態に適用した場合について説明するが、これに限るものではない。例えば、本発明は、薬品工場における高活性医薬品の漏洩や、食品工場のクリーンルームへの埃等の微粒子の漏洩等の伝播リスクを評価する形態に適用してもよい。
【0019】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る気体伝播評価装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る気体伝播評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係る気体伝播評価装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、気体伝播評価装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る気体伝播評価装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0021】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、気体伝播評価プログラム13Aが記憶されている。気体伝播評価プログラム13Aは、気体伝播評価プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの気体伝播評価プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、気体伝播評価プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、気体伝播評価プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0022】
また、記憶部13には、対策ランク情報データベース13B、汚染伝播確率情報データベース13C等の各種データベースが記憶される。対策ランク情報データベース13B、汚染伝播確率情報データベース13Cについては、詳細を後述する。
【0023】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る気体伝播評価装置10の機能的な構成について説明する。図2に示すように、気体伝播評価装置10は、取得部11A、確率導出部11B、及びリスク導出部11Cを含む。気体伝播評価装置10のCPU11が気体伝播評価プログラム13Aを実行することで、取得部11A、確率導出部11B、及びリスク導出部11Cとして機能する。
【0024】
本実施形態に係る取得部11Aは、評価対象とする建物(本実施形態では、病院)に設けられた各部屋の配置を示す配置情報、部屋の間の接続状況を示す接続情報、及び各部屋の予め定められた気体(本実施形態では、汚染された空気)の漏洩に対する対策ランクを示す対策ランク情報を取得する。また、取得部11Aは、各部屋の上記気体が発生する確率を示す発生確率情報を取得する。
【0025】
なお、本実施形態では、上記対策ランクが、対応する部屋に設けられた扉の気密性、及び対応する部屋と隣接する部屋との間の室間差圧の双方を用いて決定されるものとしているが、これに限るものではない。例えば、上記扉の気密性及び上記室間差圧の何れか一方のみを用いて上記対策ランクを決定する形態としてもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る確率導出部11Bは、配置情報、接続情報、及び対策ランク情報を用いて、接続された一の部屋から他の部屋への上記気体が伝播する確率である伝播確率を導出する。
【0027】
そして、本実施形態に係るリスク導出部11Cは、配置情報、発生確率情報、及び伝播確率を用いて、上記気体が発生した部屋から評価対象とする部屋に対する当該気体の伝播リスクを示すリスク情報を導出する。
【0028】
なお、本実施形態に係る取得部11Aは、評価対象とする部屋を示す評価対象部屋情報を更に取得する。従って、本実施形態に係る気体伝播評価装置10は、評価対象とする部屋を特定することができる。
【0029】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る対策ランク情報データベース13Bについて説明する。図3は、本実施形態に係る対策ランク情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0030】
図3に示すように、本実施形態に係る対策ランク情報データベース13Bは、対策、及び対策ランクの各情報が関連付けられて記憶されている。
【0031】
上記対策は、本実施形態に係る気体伝播評価装置10で想定している、評価対象とする建物(以下「対象建物」という。)に設けられた各部屋における、接続されている部屋に対する、汚染された空気の漏洩に対する対策を示す情報である。また、上記対策ランクは、対応する対策のランクを示す情報である。
【0032】
なお、ここでいう「接続されている部屋」とは、汚染された空気の行き来がある部屋を意味する。例えば、扉やダクト等で繋がっている部屋であれば、「接続されている部屋」となる。このため、隣り合っている部屋は勿論のこと、隣り合っていない離れた部屋についてもダクト等で繋がっている場合は「接続されている部屋」となる。以下、当該接続されている部屋を、「接続部屋」ともいう。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、上記対策として、エアタイトドアの設置(上述した「扉の気密性」に相当。)及び室間差圧の2種類の対策を適用しているが、これに限るものではない。例えば、上述したように、エアタイトドアの設置及び室間差圧のうちの何れか一方のみの対策を適用する形態としてもよいし、これらの対策に加えて、他の汚染された空気の漏洩対策を適用する形態としてもよい。また、図3に示すように、本実施形態では、上記対策ランクとして、対策が充実しているものから順にR1~R5の5段階のランクを適用しているが、これに限るものではない。例えば、2段階~4段階や、6段階以上の段階数のランクを適用する形態としてもよい。
【0034】
図3に示す例では、例えば、エアタイトドアを設置し、かつ、室間差圧が所定差圧以上である室間差圧(大)の場合の対策ランクとしてR1が設定されていることが示されている。
【0035】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る汚染伝播確率情報データベース13Cについて説明する。図4は、本実施形態に係る汚染伝播確率情報データベース13Cの構成の一例を示す模式図である。
【0036】
図4に示すように、本実施形態に係る汚染伝播確率情報データベース13Cは、対策ランク、及び汚染伝播確率の各情報が関連付けられて記憶されている。
【0037】
上記対策ランクは、対策ランク情報データベース13Bの対策ランクと同一の情報であり、上記汚染伝播確率は、接続部屋の間に対して、対応する対策ランクの対策が行われている場合における、当該接続部屋の間で汚染した空気が伝播する確率を示す情報である。
【0038】
図4に示す例では、対策ランクがR1である対策を行った接続部屋の間の汚染伝播確率が5%であることが示されている。
【0039】
次に、図5図14を参照して、本実施形態に係る気体伝播評価装置10の作用を説明する。図5は、本実施形態に係る気体伝播評価処理の一例を示すフローチャートである。
【0040】
ユーザによって気体伝播評価プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に、気体伝播評価装置10のCPU11が当該気体伝播評価プログラム13Aを実行することにより、図5に示す気体伝播評価処理が実行される。なお、ここでは、錯綜を回避するために、対策ランク情報データベース13B及び汚染伝播確率情報データベース13Cが構築済みである場合について説明する。
【0041】
図5のステップ100で、CPU11は、対策ランク情報データベース13Bから全ての情報(以下、「対策ランク情報」という。)を読み出し、汚染伝播確率情報データベース13Cから全ての情報(以下、「汚染伝播確率情報」という。)を読み出す。
【0042】
ステップ102で、CPU11は、予め定められた構成とされた部屋配置情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ104で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0043】
図6には、本実施形態に係る部屋配置情報入力画面の一例が示されている。図6に示すように、本実施形態に係る部屋配置情報入力画面では、対象建物における各部屋の配置の状況(以下、「部屋配置状況」という。)の入力を促すメッセージが表示される。また、この部屋配置情報入力画面では、部屋配置状況を示す情報を入力するための入力領域15Aが表示される。図6に示す例では、対象建物(本実施形態では、病院)における部屋Aから部屋Iまでの9つの部屋の配置を示す情報が入力された状態の一例が示されている。なお、図6に示すように、本実施形態では、部屋配置情報入力画面において、接続部屋ではない部屋(接続されていない部屋)の間もユーザが入力するものとされており、図6に示す例では、当該接続されていない部屋の間が「×」で表されている。ここでユーザにより入力された部屋の配置を示す情報が上述した配置情報に相当し、接続されていない部屋の間を示す情報が上述した接続情報の一部に相当する。
【0044】
なお、図6に示す部屋の配置の例では、廊下に接続する3つの部屋を想定しているが、簡略化のために、廊下を互いに気圧差のある3つの部屋A、部屋D、部屋Gとして想定している。また、部屋B、部屋C、部屋Fと部屋Eとを病室とし、汚染された空気が発生するものと想定する。部屋H、部屋Iは医療従事者の控室を想定しており、汚染された空気は発生しないものと想定する。以下では、以上の想定のもと、図6に示した配置の部屋を対象として例示を行う。
【0045】
一例として図6に示す部屋配置情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を介して、部屋配置状況を示す情報、及び接続されていない部屋の間を示す情報を入力領域15Aに入力した後に、終了ボタン15Eを指定する。これに応じて、ステップ104が肯定判定となって、ステップ106に移行する。
【0046】
ステップ106で、CPU11は、予め定められた構成とされた対策状況入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ108で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0047】
図7には、本実施形態に係る対策状況入力画面の一例が示されている。図7に示すように、本実施形態に係る対策状況入力画面では、対象建物における接続部屋の間の対策の状況の入力を促すメッセージが表示される。また、この対策状況入力画面では、接続部屋の間の対策の状況を示す情報を入力するための入力領域15Bが表示される。なお、図7に示す対策状況入力画面における接続部屋の組み合わせは、上述した部屋配置情報入力画面において入力された部屋配置状況を示す情報から得ることができる。
【0048】
一例として図7に示す対策状況入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を介して、接続部屋の間の対策の状況を示す情報を入力領域15Bに入力した後に、終了ボタン15Eを指定する。これに応じて、ステップ108が肯定判定となって、ステップ110に移行する。ここでユーザにより入力された接続部屋の間の対策の状況を示す情報が上述した接続情報の他部に相当する。
【0049】
ここで、CPU11は、読み出した対策ランク情報から、対策状況入力画面において入力された各接続部屋の間の対策の状況を示す情報に合致する対策ランクを特定することで、各接続部屋の間の対策ランクを特定することができる。この結果、CPU11は、一例として図8に模式的に示すように、対象建物における各部屋の配置及び各接続部屋の間の対策ランクを示す情報を取得することができる。ここで取得された対策ランクを示す情報が、取得部11Aが取得する対策ランク情報に相当する。
【0050】
ステップ110で、CPU11は、読み出した汚染伝播確率情報における、対応する対策ランクに対応する汚染伝播確率を特定することで、一例として図9に示すように、各接続部屋の間の汚染伝播確率の行列を導出する。ここで導出された各接続部屋の間の汚染伝播確率が、上述した伝播確率に相当する。
【0051】
ステップ112で、CPU11は、部屋配置状況を示す情報、及びステップ110の処理によって得られた各接続部屋の間の汚染伝播確率の行列を用いて、当該汚染伝播確率に対応した隣接行列を導出する。なお、ここでいう「隣接行列」とは、部屋数をNとするとき、N×Nの正方行列であり、一例として図10に示すように、接続部屋の間に対応する要素は汚染伝播確率の数値を適用する一方、それ以外は0(零)を適用したものである。
【0052】
ステップ114で、CPU11は、予め定められた構成とされた汚染発生確率入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ116で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0053】
図11には、本実施形態に係る汚染発生確率入力画面の一例が示されている。図11に示すように、本実施形態に係る汚染発生確率入力画面では、対象建物の各部屋における汚染された空気が発生する確率の入力を促すメッセージが表示されると共に、当該各部屋の汚染された空気の発生確率を入力するための入力領域15Cが表示される。
【0054】
一例として図11に示す汚染発生確率入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を介して、対象建物の各部屋の汚染された空気の発生確率を、対応する入力領域に入力した後に、終了ボタン15Eを指定する。これに応じて、ステップ116が肯定判定となって、ステップ118に移行する。ここでユーザにより入力された各部屋の汚染された空気の発生確率が、上述した発生確率情報に相当する。
【0055】
ステップ114~ステップ116の処理により、CPU11は、一例として図12に模式的に示すように、各部屋における汚染された空気の発生確率の行列を取得することができる。
【0056】
ステップ118で、CPU11は、一例として図8に示した各部屋の配置及び対策ランクの各情報を用いて、予め定められた構成とされた評価対象部屋指定画面を表示するように表示部15を制御する。ステップ120で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0057】
図13には、本実施形態に係る評価対象部屋指定画面の一例が示されている。図13に示すように、本実施形態に係る評価対象部屋指定画面では、汚染された空気の伝播リスクの評価対象とする部屋(以下、「評価対象部屋」ともいう。)の指定を促すメッセージが表示される。また、この評価対象部屋指定画面では、一例として図8に示した各部屋の配置及び対策ランクを示す平面図が表示される。
【0058】
一例として図13に示す評価対象部屋指定画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を介して、汚染された空気の伝播リスクの評価対象とする部屋を指定した後に、終了ボタン15Eを指定する。これに応じて、ステップ120が肯定判定となって、ステップ122に移行する。なお、図13では、ユーザによって部屋Aが指定された状態が示されている。
【0059】
ステップ122で、CPU11は、以上の処理によって得られた各種値を用いて、以下に示すように、評価対象部屋に対する汚染された空気の伝播リスクに関する情報を導出する。なお、ここでいう「伝播リスク」とは、汚染が伝播し得る全経路に対する汚染した空気の発生確率と汚染伝播確率を考慮して、評価対象とする部屋に汚染した空気が伝播する可能性を確率で評価した指標を意味する。
【0060】
本実施形態に係る気体伝播評価装置10では、次の4段階の手順によって上記伝播リスクに関する情報を導出する。
【0061】
1.手順a:汚染された空気が発生する可能性がある部屋から、評価対象部屋までの全経路を探索する。
【0062】
2.手順b:手順aで得られた経路に対する重複箇所を判定し、経路を集約する。なお、ここでいう「経路の重複」とは、汚染された空気が伝播し得る経路のうち、一部が同じ経路となっている状態のことである。また、ここでいう「経路の集約」とは、経路の重複がある場合に、その確率の演算を纏めた上で計算することである。
【0063】
3.手順c:手順bで整理された経路毎に、汚染された空気の発生確率と経路の途中の部屋間の汚染伝播確率を乗じることで、評価対象部屋までの汚染伝播確率を算定する。
【0064】
4.手順d:手順bで得られた経路毎の汚染伝播確率から、全経路の汚染伝播確率を算定する。この確率が評価対象の部屋における汚染空気の伝播リスクの値となる。
【0065】
以下、図4図9図12に例示した各種値を用いて、評価対象部屋を部屋Aとした場合の汚染された空気の伝播リスクに関する情報の具体的な演算の例を示す。
【0066】
1.手順a:経路の探索
経路の探索には最短経路探索等の工夫がなされることが多いが、リスク評価においては、漏れなく全経路を探索することが重要となるため、本実施形態に係る気体伝播評価装置10においては特に工夫することなく、総当たりで経路を探索する。
【0067】
図12に示した汚染空気の発生確率の場合、汚染された空気が発生し得る可能性がある部屋は、部屋B、部屋C、部屋E、部屋Fである。
【0068】
部屋Bから部屋Aへの経路は、部屋B→部屋Aの1通りのみである。また、部屋Cから部屋Aへの経路は、部屋C→部屋B→部屋Aの1通りのみである。また、部屋Eから部屋Aへの経路は、部屋E→部屋D→部屋Aの1通りのみである。更に、部屋Fから部屋Aへの経路は、部屋F→部屋C→部屋B→部屋Aの1通りのみである。
【0069】
2.手順b:経路に対する重複箇所の判定と経路の集約
汚染された空気の部屋Aへの経路は、部屋B→部屋A、部屋C→部屋B→部屋A、部屋E→部屋D→部屋A、及び部屋F→部屋C→部屋B→部屋Aの4通りであるが、このうち部屋E→部屋D→部屋Aを除く3通りにおいて、部屋C若しくは部屋Bが重複している。
【0070】
そこで、部屋C若しくは部屋Bの重複を考慮し、部屋E→部屋D→部屋A、及び部屋F→部屋C→部屋B→部屋Aの2通りに集約する。
【0071】
3.手順c:経路ごとの評価対象部屋までの汚染伝播確率の算定
部屋E→部屋D→部屋Aの経路に関する汚染伝播確率は次のように算定する。
【0072】
・部屋Eでの発生確率:図12に示す発生確率の行列より0.1
・部屋Eから部屋Dへの汚染伝播確率:図10に示す汚染伝播確率より0.05
・部屋Dから部屋Aへの汚染伝播確率:図10に示す汚染伝播確率より0.2
・部屋E→部屋D→部屋Aの経路での汚染伝播確率:0.1×0.05×0.2=0.001
【0073】
一方、部屋F→部屋C→部屋B→部屋Aの経路に関する汚染伝播確率は次のように算定する。
【0074】
・部屋Fでの発生確率:図12に示す発生確率の行列より0.5
・部屋Fから部屋Cへの汚染伝播確率:図10に示す汚染伝播確率より0.05
・部屋Cでの発生確率:図12に示す発生確率の行列より0.3
・部屋Cにおいて汚染された空気が発生も伝播もしない確率:(1-0.5×0.05)×(1-0.3)=0.975×0.7=0.6825
・部屋Cにおいて汚染された空気が発生または伝播する確率:1-0.6825=0.3175
・部屋Cから部屋Bへの汚染伝播確率:図10に示す汚染伝播確率より0.05
・部屋Bでの発生確率:図12に示す発生確率の行列より0.2
・部屋Bにおいて汚染された空気が発生も伝播もしない確率:(1-0.3175×0.05)×(1-0.2)=0.984125×0.8=0.7873
・部屋Bにおいて汚染された空気が発生または伝播する確率:1-0.7873=0.2127
・部屋Bから部屋Aへの汚染伝播確率:図10に示す汚染伝播確率より0.2
・部屋F→部屋C→部屋B→部屋Aの経路での汚染伝播確率:0.2127×0.2=0.04254
【0075】
4.手順d:評価対象部屋の汚染された空気の伝播リスクの評価
・部屋E→部屋D→部屋Aの経路での汚染伝播確率:0.1×0.05×0.2=0.001
【0076】
・部屋F→部屋C→部屋B→部屋Aの経路での汚染伝播確率:0.2127×0.2=0.04254
【0077】
以上より、部屋Aの汚染伝播確率は次のようになり、この汚染伝播確率の値が、部屋Aの汚染された空気の伝播リスクを示す情報(上述したリスク情報に相当。)となる。
【0078】
1-(1-0.001)×(1-0.04254)=1-0.956503=0.043497≒0.043=4.3%
【0079】
ステップ124で、CPU11は、以上の処理によって得られた評価対象部屋についての汚染された空気の伝播リスクを示す情報を用いて、予め定められた構成とされた評価結果画面を表示するように表示部15を制御する。ステップ126で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0080】
図14には、本実施形態に係る評価結果画面の一例が示されている。図14に示すように、本実施形態に係る評価結果画面では、評価対象部屋についての汚染された空気の伝播リスクを示す情報(本実施形態では、汚染伝播確率)が表示される。従って、ユーザは、評価結果画面を参照することで、評価対象部屋における伝播リスクを把握することができる。
【0081】
一例として図14に示す評価結果画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示されている評価結果を把握した後に、終了ボタン15Eを指定する。これに応じて、ステップ126が肯定判定となって、本気体伝播評価処理が終了する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、評価対象とする建物に設けられた各部屋の配置を示す配置情報、部屋の間の接続状況を示す接続情報、各部屋の予め定められた気体の漏洩に対する対策ランクを示す対策ランク情報、及び各部屋の上記気体が発生する確率を示す発生確率情報を取得する取得部11Aと、配置情報、接続情報、及び対策ランク情報を用いて、接続された一の部屋から他の部屋への上記気体が伝播する確率である伝播確率を導出する確率導出部11Bと、配置情報、発生確率情報、及び伝播確率を用いて、上記気体が発生した部屋から評価対象とする部屋に対する当該気体の伝播リスクを示すリスク情報を導出するリスク導出部11Cと、を備えている。従って、汚染されている気体が一の部屋から他の部屋へ伝播するリスクを評価することができる
【0083】
また、本実施形態によれば、対策ランクとして、対応する部屋に設けられた扉の気密性、及び対応する部屋と隣接する部屋との間の室間差圧の双方を用いて決定されるものとしている。従って、上記扉の気密性及び上記室間差圧の双方を考慮したリスク情報を導出することができる。
【0084】
更に、本実施形態によれば、評価対象とする部屋を示す評価対象部屋情報を更に取得している。従って、評価対象とする部屋を特定することができる。
【0085】
なお、上記実施形態では、建物における1階分の部屋のみを対象として汚染空気の伝播リスクを評価する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、建物における複数階に渡る部屋を対象として汚染空気の伝播リスクを評価する形態としてもよい。
【0086】
また、上記実施形態で適用した各種データベースの構成は一例であり、例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0087】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、確率導出部11B、及びリスク導出部11Cの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0088】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0089】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0090】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 気体伝播評価装置
11 CPU
11A 取得部
11B 確率導出部
11C リスク導出部
12 メモリ
13 記憶部
13A 気体伝播評価プログラム
13B 対策ランク情報データベース
13C 汚染伝播確率情報データベース
14 入力部
15 表示部
15A 入力領域
15B 入力領域
15C 入力領域
15E 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
図1
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