(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61F 1/12 20060101AFI20241113BHJP
B61D 17/10 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B61F1/12
B61D17/10
(21)【出願番号】P 2021051897
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 十一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 年克
(72)【発明者】
【氏名】中尾 稔
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆文
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】谷山 紀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-005915(JP,A)
【文献】国際公開第96/009198(WO,A1)
【文献】実開昭56-163064(JP,U)
【文献】特開2007-182208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 1/12
B61D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主変換装置及び静止形変換装置が床下機器として台枠に取り付けられ、前記台枠には複数の横梁が設けられる鉄道車両において、
前記主変換装置と前記静止形変換装置
は、車両幅方向の幅が等しく、前記横梁に取り付けるために設けられた取付孔ピッチが等しい筐体を有し、
前記取付孔ピッチは、車両前後方向の距離であること、
前記主変換装置
または前記静止形変換装置を
前記横梁の同じ位置に取り付け可能なこと、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記主変換装置または前記静止形変換装置が取り付けられる前記横梁には、枕木方向に連通する溝を有したレール構造を備えていること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床下機器の取り付け及び配置に関し、効率的な床下機器の配置を行う為に機器の仕様などを共通化する技術である。
【背景技術】
【0002】
日本の鉄道車両は、複数の車両より編成されている。例えば、駆動するための装置の付いた電動車両と、それらを備えない付随車両の2種類に分けることができ、電動車両であれば、台車に2本用意される車軸にモータが備えられる。そして、パンタグラフその他の集電装置と他車両への給電装置とを有し他車両への給電を行うタイプのものと、自車両へも給電を行うタイプのものなど、様々なタイプの車両が用意される。例えば、新幹線などは16両編成であり、それぞれ車両毎に専用設計がなされて製作されている。しかし、高速鉄道も路線によってニーズの異なることが考えられる。こうしたニーズの異なる車両を車両毎に専用設計で製作すると、それなりのコストがかかる。
【0003】
特許文献1には、列車の編成配列に関する技術が開示されている。特許文献1の列車の編成配列は、給電装置を有し前後をモータ付き台車により連接支持される給電車両と、該給電車両の両側に連接され前後をモータ付き台車により連接支持される2つの受電動力車の3車体の連接で1単位となる動力ユニットを、複数連接して備えている。そして、隣接する動力ユニット同士の間にアイドラ車体を連接して、両動力ユニットと共通のモータ付き台車で支持している。こうすることで、中間のモータ付き台車が干渉を起こすこと無く車両編成が可能となる。つまり、3両1単位の列車編成に拘束されることが無くなるため、列車の編成配列の自由度を高めることが可能となる。
【0004】
特許文献2には、鉄道用車上電気機器を搭載した鉄道車両及び鉄道車両の編成列車に関する技術が開示されている。特許文献2の列車は、発電装置を搭載した車両と、架線から電力を得て電力を供給する車両と、駆動装置を搭載した車両と、電力蓄電手段を搭載した車両と、過剰電力消費手段を搭載した車両と、架線から電力を得て電力を供給し、かつ補助で発電装置を床下艤装として搭載した車両などの鉄道車両から編成される。これらの鉄道車両は、運行区間、乗車需要に応じて、これら全てまたは一部を組み合わせてなり、編成内の車両間で電力を融通できる直流電力パスを少なくとも一系統設けて、複数の編成と区割りを少なくとも一系統設けて、複数の編成と分断、併合ができる機能を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-126658号公報
【文献】特開2012-50162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような技術を用いても、車両編成の自由度は高まるとはいえ、例えば短編成化する為には、再度設計を必要とすると考えられる。これは、床下機器の配置などが影響するためである。例えば台枠に設けられる横梁は、機器取り付けに最適化されたピッチで配置されている。よって、短編成化するためには、不要となる機器や必要となる機器を見極め、その機器取り付けの場所を決定して、台枠の設計を行い、他の配線などを決めるといったことが必要となる。その結果、短編成化の為に再設計をした上で、製造をやり直すなどのコストがかかる。
【0007】
しかし、短編成化のニーズは、例えば乗客が少ない時間帯に対応、或いは乗客の少ない路線に対応する為であることが多く、再設計などのコストをかけることは合理性に欠けることもある。特許文献2は、そういった部分を考慮して列車の標準化を図ることが提案されているが、編成内の車両間で電力を融通できる手段だけでは、短編成化の為の再設計を避けることが難しいと思われる。そこで出願人は、短編成化の為に車両を共通化すべく、複数のユニットの共通取り付けなどを検討したが、取り付け位置がまちまちであったり、配線の位置などが問題となったりするため、簡単には実現出来ないことが分かった。
【0008】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、鉄道車両の短編成化にあたって車両を標準化する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両は、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)主変換装置及び静止形変換装置が床下機器として台枠に取り付けられ、前記台枠には複数の横梁が設けられる鉄道車両において、前記主変換装置を有するCIユニットと、前記静止形変換装置を有するSCユニットの筐体の共通化を図り、前記CIユニットと前記SCユニットを同じ位置に取り付け可能なこと、を特徴とする。
【0011】
上記(1)に記載の態様によって、鉄道車両の標準化を図ることができる。これは、SCユニットとCIユニットの筐体の共通化を図って、同じ位置に取り付け可能とすることで、鉄道車両の台枠を共通化することができる為である。このことによって、複数種類の車両を統合して1種類の台枠での対応が可能となるため、その都度設計・製造するコストを抑えることが可能となり短編成化に有利となる。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記CIユニットまたは前記SCユニットが取り付けられる前記横梁には、枕木方向に連通する溝を有したレール構造を備えていること、が好ましい。
【0013】
上記(2)に記載の態様によって、CIユニットとSCユニットとの重心が異なる場合にもレール構造を採用することで、必要な位置で固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の、第1先頭車両の床下機器配置図である。
【
図2】本実施形態の、変圧器無車両の床下機器配置図である。
【
図3】本実施形態の、変圧器有車両の床下機器配置図である。
【
図4】本実施形態の、第2先頭車両の床下機器配置図である。
【
図5】本実施形態の、変圧器無車両の第1パターンの部分拡大図である。
【
図6】本実施形態の、変圧器無車両の第2パターンの部分拡大図である。
【
図7】本実施形態の、変圧器無車両の第3パターンの部分拡大図である。
【
図9】本実施形態の、静止形変換装置の平面図である。
【
図10】本実施形態の、3Mタイプの主変圧器の側面図である。
【
図11】本実施形態の、4Mタイプの主変圧器の側面図である。
【
図12】本実施形態の、鉄道車両の編成を説明する模式図であり、(a)には、従来の車両編成を、(b)には、今回整理する車両編成を示している。
【
図13】本実施形態の、車両編成の一例を説明する模式図であり、(a)は16両編成であり、(b)は12両編成、(c)は8両編成となっている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、本実施形態の、第1先頭車両の床下機器配置図を示す。
図2に、変圧器無車両の床下機器配置図を示す。
図3に、変圧器有車両の床下機器配置図を示す。
図4に、第2先頭車両の床下機器配置図を示す。鉄道車両100の車両編成は、第1先頭車両Aと、変圧器無車両Bと、変圧器有車両Cと、第2先頭車両Dを組み合わせてなり、
図1乃至
図4に示すように、それぞれに複数の床下機器を備えている。このうち、変圧器無車両Bは、その中央部分で第1パターンb1、第2パターンb2、第3パターンb3の3つのタイプの機器取り付けが想定される。
【0016】
図5に、変圧器無車両の第1パターンの部分拡大図を示す。
図6に、変圧器無車両の第2パターンの部分拡大図を示す。
図7に、変圧器無車両の第3パターンの部分拡大図を示す。鉄道車両100には、変圧器無車両Bが複数用意されるが、パターンを整理すると
図5乃至
図7に示すような第1パターンb1、第2パターンb2、第3パターンb3のいずれかに分類できる。しかしながら、第1パターンb1、第2パターンb2、第3パターンb3の何れの場合も台枠110に設けられた横梁115のピッチは同じ構成となっている。横梁115には、図示しないボルトレーンが用意されており、図示しない吊下ボルトなどを用いて床下機器の取り付けが可能となっている。
【0017】
第1パターンb1には、主変換装置120と静止形変換装置130、電動空気圧縮機140などが配置されている。配線箱150や換気空調160なども配置されるが、変圧器無車両Bの何れのパターンでも配置される機器に関しては説明を割愛する。第2パターンb2には、主変換装置120と静止形変換装置130、補助空気圧縮機170、パンタ状態監視箱190が配置されている。第3パターンb3には、主変換装置120と補助空気圧縮機170、電動空気圧縮機180、パンタグラフ状態監視箱190が配置されている。
【0018】
変圧器無車両Bでは、床下機器のうち、主変換装置120は静止形変換装置130とほぼ同じ大きさで重心を考慮して設計されており、変圧器無車両Bには主変換装置120が必ず配置される。
図8に、主変換装置の平面図を示す。主変換装置120は、交流型電車の走行のための主回路制御装置であり、パワーモジュールにSiC素子を採用することで小型化を実現したものを採用している。各回路がユニット化されて長方形の筐体に収められた主変換装置120は、その周囲に取り付け用のリブ121が設けられており、リブ121に設けられた孔はピッチAに設定されている。また、主変換装置120の長手方向は幅Bに収められている。
【0019】
図9に、静止形変換装置の平面図を示す。静止形変換装置130もまた、主変換装置120と同じ大きさの筐体に収められており、長手方向は幅Bに収められ、周囲に設けられたリブ131には取り付け用の孔があり、その孔はピッチAに設定されている。このように、主変換装置120と静止形変換装置130が同じ大きさの筐体に収めることを実現している。これが、共通の台枠110を用いることを実現できた理由でもある。
【0020】
変圧器有車両Cでは、
図3に示すように主変圧器210が備えられている。この主変圧器210は、1ユニットあたり4両に電力を供給する4M車と3両に電力を供給する3M車の2つのタイプが存在する。この主変圧器210は必要に応じて選択される必要がある。
図10に、3Mタイプの主変圧器の側面図を示す。
図11に、4Mタイプの主変圧器の側面図を示す。3Mタイプの主変圧器210は便宜的に210Aとし、4Mタイプの主変圧器210は便宜的に210Bとしている。
【0021】
この3M主変圧器210Aに備える第1端子板215Aと第2端子板216Aは、4M主変圧器210Bに備える第1端子板215Bと第2端子板216Bと同じ位置に端子が配置されており、第2端子板216Aに比べて第2端子板216Bの接続部分の数が少ないという違いがある。3M主変圧器210Aと4M主変圧器210Bでは、細部の違いはあるが第1端子板215Aと第2端子板216A及び第1端子板215Bと第2端子板216Bの位置関係などは共通化している。
【0022】
本実施形態の鉄道車両100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0023】
まず、本実施形態の鉄道車両100は、短編成化を見据えて車両の標準化を図り、低コスト化を実現できる。これは、主変換装置120及び静止形変換装置130が床下機器として台枠110に取り付けられ、台枠110には複数の横梁115が設けられる鉄道車両100において、主変換装置120と静止形変換装置130の筐体の共通化を図り、主変換装置120と静止形変換装置130を同じ位置に取り付け可能なこと、を特徴とするからである。
【0024】
図12に、鉄道車両の編成を説明する模式図を示している。(a)には従来の車両編成について示され、(b)には今回整理する鉄道車両編成について示している。
図13に、車両編成の一例を模式図に示す。(a)は16両編成であり、(b)は12両編成、(c)は8両編成となっている。なお、
図12及び
図13はあくまで説明を行う為のイメージである。鉄道車両100を短編成化するためには、再設計を行って全車作り替えるということも可能ではあるが、その為にはコストがかかる。
【0025】
そこで、本発明のように車両の標準化を図ることで、床下機器の載せ替えだけで対応が可能となる。具体的には、
図12(a)に示すように、共通する先頭車両Aと先頭車両Dの他に、パターンB1、パターンB2、パターンB3という変圧器無しの3種類と、パターンC1、パターンC2、パターンC3という変圧器ありの3種類とに分類される。
【0026】
そして、
図12(b)に示すように、先頭車両Aと先頭車両Dに変圧器無車両Bと変圧器有車両Cの4タイプの台枠110に分類することができる。変圧器無車両Bは、
図2に示すように3パターンが考えられるが、台枠110は共通して使う事ができる。つまり、
図13に示すように16両編成、12両編成、8両編成と、もともと16両編成の構成であっても、設計変更無しで12両編成や8両編成に短編成化することが可能となる。
【0027】
基本的には、図示しないパンタグラフが設けられる車両に変圧器有車両Cが配置されて、それ以外の車両は変圧器無車両B、そして先頭車両Aと先頭車両Dを加えることで車両が編成できる。つまり、床下機器の取り付け共通化を図ることによる鉄道車両100の標準化を図ることで、高速鉄道などを短編成化するにあたって、再設計や再製作などの手間を省き、コストを大幅に抑えることが可能となる。なお、
図13は編成の一例であるので、これに限定されるものではない。
【0028】
以上、本発明に係る鉄道車両に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では編成の例を示しているが、これに限定されるものではないし、床下機器の配置も一例に過ぎない。
【符号の説明】
【0029】
100 鉄道車両
110 台枠
120 主変換装置
130 静止形変換装置
140 電動空気圧縮機
150 配線箱
160 換気空調
170 補助空気圧縮機
180 電動空気圧縮機
190 パンタグラフ状態監視箱
210 主変圧器