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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】空気調和装置の室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20241113BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20241113BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/80
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021079378
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172986
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】三浦 脩
(72)【発明者】
【氏名】西谷 恵介
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】飯星 潤耶
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-96606(JP,A)
【文献】特開2010-133589(JP,A)
【文献】特開2016-8742(JP,A)
【文献】特開2012-17889(JP,A)
【文献】特開2009-139010(JP,A)
【文献】特開2017-3205(JP,A)
【文献】特開2014-88977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う空気調和装置の室内機であって、
室内空気を冷媒と熱交換して、調和空気を生成する熱交換器(31)と、
前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方を行う時に、前記熱交換器における冷媒の蒸発温度を制御する制御部(30)と、
を備え、
前記制御部は、
前記蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする第一制御と、
前記蒸発温度を室内空気の露点温度よりも高くする第二制御と、
を行い、
前記制御部は、前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方を行う時に、負荷が所定以下で、室内湿度と設定湿度との差が小さいため、前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方の高い能力が要求されない低負荷運転が所定時間続くときに、前記第二制御を行い、
前記制御部は、室内に人が不存在のときに、前記第二制御を行う
空気調和装置(1)の室内機(3)。
【請求項2】
冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う空気調和装置の室内機であって、
室内空気を冷媒と熱交換して、調和空気を生成する熱交換器(31)と、
前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方を行う時に、前記熱交換器における冷媒の蒸発温度を制御する制御部(30)と、
を備え、
前記制御部は、
前記蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする第一制御と、
前記蒸発温度を室内空気の露点温度よりも高くする第二制御と、
を行い、
前記制御部は、前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方を行う時に、負荷が所定以下で、室内湿度と設定湿度との差が小さいため、前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方の高い能力が要求されない低負荷運転が所定時間続くときに、前記第二制御を行い、
前記制御部は、室内における不快指数が快適域のときに、前記第二制御を行う
空気調和装置(1)の室内機(3)。
【請求項3】
前記第二制御は、前記蒸発温度の上限値を取り払う制御である、
請求項1または2に記載の空気調和装置の室内機。
【請求項4】
冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う空気調和装置の室内機であって、
室内空気を冷媒と熱交換して、調和空気を生成する熱交換器(31)と、
前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方を行う時に、前記熱交換器における冷媒の蒸発温度を制御する制御部(30)と、
を備え、
前記制御部は、
前記蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする第一制御と、
前記蒸発温度を室内空気の露点温度よりも高くする第二制御と、
を行い、
前記制御部は、前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方を行う時に、負荷が所定以下で、室内湿度と設定湿度との差が小さいため、前記冷房運転及び前記除湿運転の少なくとも一方の高い能力が要求されない低負荷運転が所定時間続くときに、前記第二制御を行い、
前記第二制御は、前記蒸発温度の上限値を取り払う制御である
空気調和装置(1)の室内機(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気調和装置の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2013-22169号公報)には、負荷の増減に対して蒸発温度をさほど変化させずに除湿を行う空気調和機が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の空気調和機では、室内湿度と設定湿度との差が小さい場合には、過剰な除湿が行わることになるので、効率が低い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る空気調和装置の室内機は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う空気調和装置の室内機であって、熱交換器と、制御部と、を備える。熱交換器は、室内空気を冷媒と熱交換して、調和空気を生成する。制御部は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う時に、熱交換器における冷媒の蒸発温度を制御する。制御部は、第一制御と、第二制御と、を行う。第一制御は、蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする。第二制御は、蒸発温度を室内空気の露点温度よりも高くする。
【0005】
第1観点の空気調和装置の室内機によれば、冷媒の蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする第一制御と、冷媒の蒸発温度を露点温度よりも高くする第二制御とが、切り替え可能に構成される。第一制御を行うことにより、冷房運転または除湿運転の能力を高めることができる。第二制御を行うことにより、冷房運転または除湿運転の能力を低くすることができる。このため、要求される能力に応じて、第一制御と第二制御とを行うことにより、効率を向上することができる。
【0006】
第2観点に係る空気調和装置の室内機は、第1観点の空気調和装置の室内機であって、制御部は、冷房運転または除湿運転の負荷が所定以下の低負荷運転中に、第二制御を行う。
【0007】
低負荷運転中は、室内温度または湿度と、設定温度または湿度との差が小さいため、冷房運転または除湿運転の高い能力が要求されない。このため、低負荷運転中に、少なくとも第二制御を行うことで、過剰な運転を減らすことができる。したがって、本開示は、低負荷運転を行う室内機に好適である。
【0008】
第3観点に係る空気調和装置の室内機は、第2観点の空気調和装置の室内機であって、制御部は、室内に人が不存在のときに、第二制御を行う。
【0009】
第3観点に係る空気調和装置の室内機では、第一制御を行っている時には、熱交換器に結露が生じる。しかし、第二制御を行うと、熱交換器の表面の水分が蒸発して、臭いが生じる要因となる。このため、第二制御では、臭いを含む調和空気が生成される場合がある。
【0010】
しかし、人が不存在のときには、室内の快適性が求められないので、低負荷運転中に第二制御を行うことで、効率を高める室内機を容易に実現できる。
【0011】
第4観点に係る空気調和装置の室内機は、第2観点に係る空気調和装置の室内機であって、制御部は、低負荷運転が所定時間続くときに、第二制御を行う。
【0012】
低負荷運転が所定時間続く場合は、冷房運転または除湿運転の高い能力が要求されない時間が続く状態である。この状態で第二制御を行うことにより、過剰な運転を減らすことができるので、効率を高める室内機を容易に実現できる。
【0013】
第5観点に係る空気調和装置の室内機は、第2観点に係る空気調和装置の室内機であって、制御部は、室内における不快指数が快適域のときに、第二制御を行う。
【0014】
第5観点に係る空気調和装置の室内機では、不快指数が快適域のときには、快適性が少し低下しても問題がない。この状態で第二制御を行うことにより、効率を高める室内機を容易に実現できる。
【0015】
第6観点に係る空気調和装置の室内機は、第1観点から第5観点に係る空気調和装置の室内機であって、第二制御は、蒸発温度の上限値を取り払う制御である。
【0016】
第二制御は、露点温度以下にする蒸発温度の上限値を取り払う制御としている。このため、蒸発温度の上限値が露点温度を超えることに制限されないので、効率を優先する運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
図2】空気調和装置を構成する室内機の外観斜視図である。
図3】室内機の概略側面断面図であって、図2のI-O-I線に沿った断面図である。
図4】空気調和装置の制御ブロック図である。
図5】本開示の一実施形態に係る冷房運転及び除湿運転の制御を説明するための図である。
図6】本開示の一実施形態に係る蒸発温度の制御方法を示すフローチャートである。
図7】変形例に係る冷房運転及び除湿運転の制御を説明するための図である。
図8】変形例に係る蒸発温度の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)空気調和装置の機器構成
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る室内機3が採用された空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、建物等の室内の空調を行う装置である。空気調和装置1は、主として、室外機2と、室内機3と、室外機2と室内機3とを接続する液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5と、を有している。そして、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外機2と室内機3とが液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を介して接続されることによって構成されている。
【0019】
(1-1)室外機
室外機2は、室外(建物の屋上や建物の外壁面近傍等)に設置されている。室外機2は、上記のように、液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を介して室内機3に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外機2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁23と、室外熱交換器24と、膨張弁25と、を有している。
【0020】
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機構である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機モータ22によって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。また、ここでは、圧縮機モータ22は、インバータ等により回転数(周波数)制御が可能になっており、これにより、圧縮機21の容量を制御できる。
【0021】
四路切換弁23は、冷房運転又は除湿運転と暖房運転との切換時に、冷媒の流れの方向を切り換えるための弁である。四路切換弁23は、冷房運転又は除湿運転時には、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器24のガス側とを接続するとともに、ガス冷媒連絡管5を介して室内熱交換器31(後述)のガス側と圧縮機21の吸入側とを接続する(図1における四路切換弁23の実線を参照)。また、四路切換弁23は、暖房運転時には、ガス冷媒連絡管5を介して圧縮機21の吐出側と室内熱交換器31のガス側とを接続するとともに、室外熱交換器24のガス側と圧縮機21の吸入側とを接続する(図1における四路切換弁23の破線を参照)。
【0022】
室外熱交換器24は、冷房運転又は除湿運転時には冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器24は、その液側が膨張弁25に接続されており、ガス側が四路切換弁23に接続されている。
【0023】
膨張弁25は、冷房運転又は除湿運転時には室外熱交換器24において放熱した高圧の液冷媒を室内熱交換器31に送る前に減圧し、暖房運転時には室内熱交換器31において放熱した高圧の液冷媒を室外熱交換器24に送る前に減圧することができる膨張機構である。ここでは、膨張弁25として、開度制御が可能な電動膨張弁が使用されている。
【0024】
また、室外機2には、室外機2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器24に室外空気を供給した後に、室外機2外に排出するための室外ファン26が設けられている。このため、室外熱交換器24は、室外空気を冷却源又は加熱源として冷媒を放熱や蒸発させる。室外ファン26は、室外ファンモータ27によって回転駆動される。
【0025】
また、室外機2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外機2には、圧縮機21の吸入圧力を検出する吸入圧力センサ28a、圧縮機21の吸入温度を検出する吸入温度センサ28b、圧縮機21の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ29a、及び圧縮機21の吐出温度を検出する吐出温度センサ29bが設けられている。
【0026】
(1-2)冷媒連絡管
冷媒連絡管4、5は、空気調和装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。液冷媒連絡管4の一端は、室外機2の膨張弁25側に接続され、液冷媒連絡管4の他端は、室内機3の室内熱交換器31の液側に接続されている。ガス冷媒連絡管5の一端は、室外機2の四路切換弁23側に接続され、ガス冷媒連絡管5の他端は、室内機3の室内熱交換器31のガス側に接続されている。
【0027】
(1-3)室内機
室内機3は、室内(建物内)に設置されている。室内機3は、上記のように、液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を介して室外機2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。図1図3に示すように、室内機3は、主として、ケーシング41と、開閉部材49と、室内熱交換器31と、室内ファン32と、を有している。ここでは、室内機3として、天井埋込型と呼ばれる型式の室内機が採用されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、ケーシング41は、内部に構成機器を収納する。ケーシング41は、ケーシング本体41aと、ケーシング本体41aの下側に配置された化粧パネル42とから構成されている。ケーシング本体41aは、図2に示すように、天井Uに形成された開口に挿入されて配置されている。そして、化粧パネル42は、天井Uの開口に嵌め込まれるように配置されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、ケーシング本体41aは、平面視が長辺と短辺とが交互に形成された略8角形状の箱状体であり、その下面が開口している。ケーシング本体41aは、長辺と短辺とが交互に連続して形成された略8角形状の天板43と、天板43の周縁部から下方に延びる側板44とを有している。
【0030】
化粧パネル42は、ケーシング41の下面を構成し、平面視が略多角形状(ここでは、略4角形状)の板状体であり、主として、ケーシング本体41aの下端部に固定されたパネル本体42aから構成されている。パネル本体42aは、その略中央に室内空気を吸入する吸入口45と、室内に調和空気を吹き出す吹出口46とを有している。
【0031】
吸入口45は、略4角形状の開口である。吸入口45には、吸入グリル47と、吸入口45から吸入される空気中の塵埃を除去するための吸入フィルタ48とが設けられている。
【0032】
吹出口46は、平面視において、吸入口45の周囲を囲むように形成されている。吹出口46は、パネル本体42aの4角形の各辺に沿うように形成された複数(ここでは、4つ)の辺部吹出口46aと、パネル本体42aの角部に形成された複数(ここでは、4つ)の角部吹出口46bと、を有している。
【0033】
複数の開閉部材49は、複数の吹出口46を開閉する。開閉部材49が吹出口46を開放している状態では、吹出口46から調和空気が吹き出される。開閉部材49が吹出口46を閉じている状態では、吹出口46から調和空気が吹き出されない。なお、開閉部材49は、吹出口46の全体を閉じることと、吹出口46の一部を閉じることと、吹出口46の全体を開けることとが可能である。また、開閉部材49は、吹出口46から室内に吹き出される調和空気の風向を変更することも可能である。
【0034】
本実施形態では、複数の吹出口46aのそれぞれに、開閉部材49が設けられる。換言すると、1つの開閉部材49は、1つの吹出口46aを開閉する。ここでは、4つの開閉部材49のそれぞれは、4つの辺部吹出口46aに設けられている。一方、角部吹出口46bには、開閉部材49が設けられていない。
【0035】
開閉部材49は、辺部吹出口46aの長手方向に沿って細長く延びる板状の部材である。開閉部材49は、長手方向の軸周りに回動されて吹出口46を開閉できるように構成されている。また、開閉部材49は、長手方向の軸周りに回動されて上下方向の風向角度を可変できるように構成されている。
【0036】
ケーシング本体41aの内部には、主として、室内熱交換器31と、室内ファン32とが配置されている。
【0037】
室内熱交換器31は、室内空気を冷媒と熱交換して、調和空気を生成する。室内熱交換器31は、冷房運転又は除湿運転時には冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、その液側が液冷媒連絡管4に接続されており、ガス側がガス冷媒連絡管5に接続されている。
【0038】
室内熱交換器31は、平面視における室内ファン32の周囲を囲むように曲げられて配置された熱交換器である。室内熱交換器31は、室内ファン32によってケーシング本体41a内に吸入される室内空気と冷媒との熱交換を行う。また、室内熱交換器31の下側には、室内熱交換器31によって室内空気中の水分が凝縮されて生じるドレン水を受けるためのドレンパン31aが配置されている。ドレンパン31aは、ケーシング本体41aの下部に装着されている。
【0039】
室内ファン32は、化粧パネル42の吸入口45を通じてケーシング本体41a内に室内空気を吸入して化粧パネル42の吹出口46を通じてケーシング本体41a内から室内に吹き出すファンである。このため、室内熱交換器31は、室内空気を冷却源又は加熱源として冷媒を放熱や蒸発させる。ここでは、室内ファン32として、下方から室内空気を吸入し、平面視における外周側に向かって吹き出す遠心ファンが使用されている。室内ファン32は、ケーシング本体41aの天板43の中央に設けられた室内ファンモータ33によって回転駆動される。また、ここでは、室内ファンモータ33は、インバータ等により回転数(周波数)制御が可能になっており、これにより、室内ファン32の風量を制御できる。
【0040】
具体的には、室内ファン32の風量として、最大風量の風量H、風量Hよりも小さい中程度の風量の風量M、風量Mよりも小さく小風量の風量L、及び、風量Lよりも小さい最小風量の風量LL、の4つが準備されている。ここで、風量LLは、居住者がリモコン60(後述)によって設定することができない風量である。
【0041】
また、室内機3には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内機3には、室内機3内に吸入される室内空気の温度(室内温度Tr)及び湿度(室内湿度Hr)を検出する室内温度センサ34及び室内湿度センサ35が設けられている。ここでは、室内温度センサ34及び室内湿度センサ35は、吸入口45の近傍に配置される。
【0042】
また、室内機3には、室内における人の存在する位置を検知する人検知センサ36が設けられている。ここでは、人検知センサ36として、1つ又は複数の赤外線受光素子を有する赤外線センサが使用されており、化粧パネル42の角部に設けられている。なお、人検知センサ36は、化粧パネル42の角部に設けられていなくてもよく、室内機3の別の部分に設けられていてもよく、また、室内機3ではなく、室内のどこかに設けられていてもよい。
【0043】
(2)空気調和装置の制御構成
図4に示すように、空気調和装置1は、構成機器の運転制御を行うために、室外制御部20と室内制御部30とリモコン60とが伝送線や通信線を介して接続された制御装置6を有している。室外制御部20は、室外機2に設けられている。室内制御部30は、室内機3に設けられている。リモコン60は、室内に設けられている。なお、ここでは、室外制御部20、室内制御部30及びリモコン60が伝送線や通信線を介して有線接続されているが、無線接続されていてもよい。
【0044】
なお、空気調和装置1の室外制御部20、室内制御部30及びリモコン60の制御部は、各種演算及び処理を行い、例えば、CPUなどの演算処理装置により実現される。
【0045】
(2-1)室外制御部
室外制御部20は、上記のように、室外機2に設けられており、主として、室外CPU20aと、室外伝送部20bと、室外記憶部20cと、を有している。室外制御部20は、吸入圧力センサ28a、吸入温度センサ28b、吐出圧力センサ29a、及び吐出温度センサ29bの検出信号を受けることができるように構成されている。
【0046】
室外CPU20aは、室外伝送部20b及び室外記憶部20cに接続されている。室外伝送部20bは、室内制御部30との間で制御データ等の伝送を行う。室外記憶部20cは、制御データ等を記憶する。そして、室外CPU20aは、室外伝送部20b及び室外記憶部20cを介して、制御データ等の伝送及び読み書きを行いつつ、室外機2に設けられた構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、膨張弁25、室外ファン26等の運転制御を行う。
【0047】
(2-2)室内制御部
室内制御部30は、上記のように、室内機3に設けられており、主として、室内CPU30aと、室内伝送部30bと、室内記憶部30cと、室内通信部30dと、を有している。室内制御部30は、室内温度センサ34、室内湿度センサ35及び人検知センサ36の検出信号を受けることができるように構成されている。
【0048】
室内CPU30aは、室内伝送部30b、室内記憶部30c及び室内通信部30dに接続されている。室内伝送部30bは、室外制御部20との間で制御データ等の伝送を行う。室内記憶部30cは、制御データ等を記憶する。室内通信部30dは、リモコン60との間で制御データ等の送受信を行う。そして、室内CPU30aは、室内伝送部30b、室内記憶部30c及び室内通信部30dを介して、制御データ等の伝送、読み書き及び送受信を行いつつ、室内機3に設けられた構成機器としての室内ファン32、開閉部材49等の運転制御を行う。
【0049】
(2-3)リモコン
リモコン60は、上記のように、室内に設けられており、主として、リモコンCPU61と、リモコン記憶部62と、リモコン通信部63と、リモコン操作部64と、リモコン表示部65と、を有している。
【0050】
リモコンCPU61は、リモコン記憶部62、リモコン通信部63、リモコン操作部64及びリモコン表示部65に接続されている。リモコン記憶部62は、制御データ等を記憶する。リモコン通信部63は、室内通信部30dとの間で制御データ等の送受信を行う。リモコン操作部64は、居住者からの制御指令等の入力を受け付ける。リモコン表示部65は、運転表示等を行う。そして、リモコンCPU61は、リモコン操作部64を介して運転指令や制御指令等の入力を受け付けて、リモコン記憶部62に制御データ等の読み書きを行い、リモコン表示部65に運転状態や制御状態の表示等を行いつつ、リモコン通信部63を介して、室内制御部30に制御指令等を行う。
【0051】
このように、空気調和装置1は、構成機器の運転制御を行う制御装置6を有している。そして、制御装置6は、吸入圧力センサ28a、吸入温度センサ28b、吐出圧力センサ29a、及び吐出温度センサ29b、室内温度センサ34、室内湿度センサ35及び人検知センサ36の検出信号等に基づいて構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、膨張弁25、室外ファン26、室内ファン32、開閉部材49等の制御を行い、冷房運転、除湿運転、暖房運転等の空調運転及び各種制御を行うことができるように構成されている。
【0052】
(3)運転動作
次に、空気調和装置1の運転動作について説明する。本実施形態の空気調和装置1は、空調運転として、暖房運転、冷房運転、及び、除湿運転を行う。
【0053】
(3-1)暖房運転
暖房運転は、リモコン操作部64を介して暖房運転の指令を受け付けた制御装置6が、室外機2及び室内機3の構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、膨張弁25、室外ファン26、室内ファン32、開閉部材49等を運転制御することによって行われる。
【0054】
暖房運転においては、室外熱交換器24が冷媒の蒸発器として機能し、かつ、室内熱交換器31が冷媒の放熱器として機能する状態(図1の四路切換弁23の破線で示される状態)になるように、四路切換弁23が切り換えられる。
【0055】
このような状態の冷媒回路10において、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23及びガス冷媒連絡管5を通じて、室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31に送られた高圧の冷媒は、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って放熱する。これにより、室内空気は加熱されて室内に吹き出される。室内熱交換器31において放熱した高圧の冷媒は、液冷媒連絡管4を通じて、膨張弁25に送られて、冷凍サイクルにおける低圧まで減圧される。膨張弁25において減圧された低圧の冷媒は、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた低圧の冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン26によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器24において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。このように、暖房運転においては、制御装置6によって、冷媒回路10に封入された冷媒が圧縮機21、室内熱交換器31、膨張弁25、室外熱交換器24の順に循環する動作がなされる。
【0056】
暖房運転時には、制御装置6は、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度Tcが、所定の目標凝縮温度Tcsに近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。圧縮機21の容量制御はモータ22の回転数(周波数)制御により行われる。
【0057】
所定の目標凝縮温度は、例えば、室内温度センサ34で検出される室内温度Trと、居住者がリモコン60のリモコン操作部64から入力することによって設定される設定温度Trsとの温度差により決まる。
【0058】
冷媒の凝縮温度Tcは、吐出圧力センサ29aで検出された吐出圧力を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる。冷媒の凝縮温度Tcとは、暖房運転時において、圧縮機21の吐出側から室内熱交換器31を経由して膨張弁25に流入するまでの間を流れる高圧の冷媒を代表する圧力(冷媒回路10における冷媒の凝縮圧力)を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる温度、又は、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器31における冷媒の飽和温度を意味する。このため、室内熱交換器31に温度センサを設ける場合には、この温度センサによって検出される冷媒の温度を冷媒の凝縮温度Tcとしてもよい。
【0059】
(3-2)冷房運転
冷房運転は、リモコン操作部64を介して冷房運転の指令を受け付けた制御装置6が、室外機2及び室内機3の構成機器として圧縮機21、四路切換弁23、膨張弁25、室外ファン26、室内ファン32、開閉部材49等を運転制御することによって行われる。
【0060】
冷房運転においては、室外熱交換器24が冷媒の放熱器として機能し、かつ、室内熱交換器31が冷媒の蒸発器として機能する状態(図1の四路切換弁23の実線で示される状態)になるように、四路切換弁23が切り換えられる。
【0061】
このような状態の冷媒回路10において、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23を通じて、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた高圧の冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン26によって供給される室外空気と熱交換を行って放熱する。室外熱交換器24において放熱した高圧の冷媒は、膨張弁25に送られて、冷凍サイクルにおける低圧まで減圧される。膨張弁25において減圧された低圧の冷媒は、液冷媒連絡管4を通じて、室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31に送られた低圧の冷媒は、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却されて室内に吹き出される。室内熱交換器31において蒸発した低圧の冷媒は、ガス冷媒連絡管5及び四路切換弁23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。このように、冷房運転においては、制御装置6によって、冷媒回路10に封入された冷媒が圧縮機21、室外熱交換器24、膨張弁25、室内熱交換器31の順に循環する動作がなされる。
【0062】
冷房運転時には、制御装置6は、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度Teが、所定の目標蒸発温度Tedsに近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。圧縮機21の容量制御はモータ22の回転数(周波数)制御により行われる。
【0063】
所定の目標蒸発温度Tedsは、例えば、室内温度センサ34で検出される室内温度Trと、居住者がリモコン60のリモコン操作部64から入力することによって設定される設定温度Trsとの温度差により決まる。
【0064】
冷媒の蒸発温度Teは、吸入圧力センサ28aで検出された吸入圧力を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる。冷媒の蒸発温度Teとは、冷房運転時において、膨張弁25の出口から室内熱交換器31を経由して圧縮機21の吸入側に至るまでの間を流れる冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を代表する圧力(冷媒回路10における冷媒の蒸発圧力)を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる温度、又は、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器31における冷媒の飽和温度を意味する。このため、室内熱交換器31に温度センサを設ける場合には、この温度センサによって検出される冷媒の温度を冷媒の蒸発温度Teとしてもよい。
【0065】
(3-3)除湿運転
除湿運転は、リモコン操作部64を介して除湿運転の指令を受け付けた制御装置6が、室外機2及び室内機3の構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、膨張弁25、室外ファン26、室内ファン32、開閉部材49等を運転制御することによって行われる。
【0066】
除湿運転においては、冷房運転と同様に、室外熱交換器24が冷媒の放熱器として機能し、かつ、室内熱交換器31が冷媒の蒸発器として機能する状態(図1の四路切換弁23の実線で示される状態)になるように、四路切換弁23が切り換えられる。
【0067】
このような状態の冷媒回路10において、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23を通じて、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた高圧の冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン26によって供給される室外空気と熱交換を行って放熱する。室外熱交換器24において放熱した高圧の冷媒は、膨張弁25に送られて、冷凍サイクルにおける低圧まで減圧される。膨張弁25において減圧された低圧の冷媒は、液冷媒連絡管4を通じて、室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31に送られた低圧の冷媒は、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は除湿されて室内に吹き出される。室内熱交換器31において蒸発した低圧の冷媒は、ガス冷媒連絡管5及び四路切換弁23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。このように、除湿運転においては、制御装置6によって、冷媒回路10に封入された冷媒が圧縮機21、室外熱交換器24、膨張弁25、室内熱交換器31の順に循環する動作がなされる。
【0068】
除湿運転時の圧縮機21の容量制御は、目標蒸発温度Tecsを目標蒸発温度Tedsとしている点を除いて、冷房運転時の圧縮機21の容量制御と基本的には同じである。除湿運転時の目標蒸発温度Tedsは、冷房運転時の目標蒸発温度Tecs以下の値に設定される。
【0069】
(4)冷房運転及び除湿運転での蒸発温度の制御
室内制御部30は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う時に、室内熱交換器31における冷媒の蒸発温度Teを制御する。室内制御部30は、第一制御と、第二制御と、を行う。第一制御は、蒸発温度Teを室内空気の露点温度以下にする。第二制御は、蒸発温度Teを室内空気の露点温度よりも高くする。換言すると、室内機3は、冷房運転または除湿運転時に、室内熱交換器31の蒸発温度Teを室内空気の露点温度以下にする第一制御と、蒸発温度Teを露点温度よりも高くする第二制御とが、切り替え可能に構成されている。
【0070】
なお、蒸発温度Teは、上述したように、吸入圧力センサ28aで検出される吸入圧力から算出される。露点温度は、室内温度センサ34で検出される室内温度Tr及び室内湿度センサ35で検出される室内湿度Hrから算出される。
【0071】
通常、冷房運転及び除湿運転時には、室内空気の冷却及び除湿を行うため、蒸発温度Teを室内空気の露点温度以下にする第一制御が行われる。しかし、本実施形態の室内制御部30は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う時に、蒸発温度Teを室内空気の露点温度よりも高くする第二制御を許容する。第二制御は、蒸発温度Teの上限値を取り払う制御である。換言すると、第二制御では、蒸発温度Teの上限値が設けられない。ここでは、第二制御では、目標蒸発温度Tecs、Tedsの上限値が設けられない。
【0072】
なお、本実施形態の室内制御部30は、第二制御での室内ファン32の回転数を、第一制御での室内ファン32の回転数よりも小さくなるように制御する。室内制御部30は、例えば、第二制御での室内ファン32の風量を、居住者がリモコン60によって設定することができない風量LLに制御する。
【0073】
室内制御部30は、冷房運転または除湿運転の負荷に応じて、第一制御と第二制御とを切り替える。本実施形態の室内制御部30は、冷房運転または除湿運転の負荷が所定以下の低負荷運転中に、第二制御を行う。室内制御部30は、低負荷運転中には、第二制御のみを行ってもよく、第一制御及び第二制御の両方を切り替えて行ってもよい。
【0074】
ここで、「低負荷運転」は、冷房運転または除湿運転中の負荷を示す代用値が所定条件を満たしている運転である。低負荷運転は、圧縮機21を停止させて冷媒の循環を止めるサーモオフとは異なり、サーモオフとなる前に実施される。また低負荷運転は、運転を開始する圧縮機21の起動時を含まず、起動後の冷媒状態が安定した運転(所定時間続く運転)を行っている際に行われる。
【0075】
例えば、代用値は、空気調和装置1の定格能力であり、所定条件は、定格能力の45%以下である。換言すると、定格能力の45%以下になるときに低負荷運転となる。なお、定格能力は、製品カタログや取扱説明書に記載の「呼称能力」と同等の値である。
【0076】
また、例えば、冷房運転時の代用値は、設定温度と室内温度の差であり、所定条件は、この差(室内温度Tr-設定温度Trs)が0.5℃以下(負の値も含む)である。換言すると、室内温度が設定温度に近づいて、設定温度と室内温度の差が0.5℃以下になったときに、低負荷運転となる。
【0077】
また、例えば、除湿運転時の代用値は、設定湿度と室内湿度の差であり、所定条件は、この差が0%以下である。換言すると、室内湿度が設定湿度に近づいて、設定湿度と室内湿度の差が0%以下になったときに、低負荷運転となる。
【0078】
なお、室内制御部30は、低負荷運転中の室内ファン32の回転数を、低負荷運転よりも冷房運転または除湿運転の負荷の大きい通常運転中の室内ファン32の回転数よりも小さくなるように制御する。本実施形態では、低負荷運転中に、室内ファン32の風量を、居住者がリモコン60によって設定することができない風量LLに制御する。
【0079】
続いて、図5を参照して、第一制御及び第二制御を行う具体例について説明する。図5において、冷房運転時の目標蒸発温度Tecs及び除湿運転時の目標蒸発温度Tedsを、目標蒸発温度Tesと記載している。本実施形態では、定格能力の45%以下になるときに、低負荷運転となる例を挙げる。
【0080】
時間t1前には、室内温度Trと設定温度Trs(リモコン操作部64で設定された目標室内温度)との温度差が大きいので、空気調和装置1は、低負荷運転よりも負荷の大きい通常運転を行っている。この場合には、冷房運転または除湿運転の能力を高めるため、室内制御部30は、室内熱交換器31において、蒸発温度Teを、室内空気の露点温度以下にする第一制御を行う。
【0081】
そして、時間t1において、設定温度Trsと室内温度Trとの差が小さくなると、室内制御部30は、目標蒸発温度Tesを高くし、圧縮機21の回転数を低下させる。次いで、時間t2において、定格能力の45%となり、低負荷運転となる。低負荷運転では、要求される冷房運転または除湿運転の能力が低いので、室内制御部30は、蒸発温度を室内空気の露点温度よりも高くする第二制御を行う。第二制御を行うことにより、低負荷運転中には、冷房運転または除湿運転の能力を低くすることができる。
【0082】
その後、設定温度Trs、室内温度Tr、室外温度等に基づいて、低負荷運転から、低負荷運転よりも負荷の高い通常運転になると、室内制御部30は、第二制御から第一制御に切り替える。
【0083】
このように、本実施形態の室内制御部30は、低負荷運転中に第二制御を行い、通常運転中に第一制御を行う。
【0084】
なお、図5は、時間t2以降に、圧縮機21の回転数をさらに小さくすることを示しているが、回転数を略一定にしてもよい。また、図5は、時間t1前に、圧縮機21の回転数を一定にすることを示しているが、回転数は上昇または下降してもよい。
【0085】
(5)冷房運転及び除湿運転時の蒸発温度の制御方法
冷房運転及び除湿運転時の蒸発温度の制御については、上記(4)で触れているが、整理すると以下の各ステップを踏んでいる。
【0086】
まず、図6に示すように、圧縮機を起動して、低負荷運転時よりも負荷の大きい通常運転を実施する(ステップS1)。通常運転(ステップS1)では、室内制御部30によって、蒸発温度Teを室内空気の露点温度以下にする第一制御を行う。
【0087】
次に、冷房運転または除湿運転の負荷が所定以下になると、低負荷運転となる(ステップS2)。低負荷運転(ステップS2)では、室内制御部30によって、蒸発温度Teを室内空気の露点温度よりも高くする第二制御を行う。ここでは、図5に示すように、室内制御部30によって、時間t2で第一制御から第二制御に切り替えられる。
【0088】
(6)特徴
(6-1)
本実施形態に係る空気調和装置1の室内機3は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う空気調和装置の室内機であって、室内熱交換器31と、室内制御部30と、を備える。室内熱交換器31は、室内空気を冷媒と熱交換して、調和空気を生成する。室内制御部30は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行う時に、室内熱交換器31における冷媒の蒸発温度を制御する。室内制御部30は、第一制御と、第二制御と、を行う。第一制御は、蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする。第二制御は、蒸発温度を室内空気の露点温度よりも高くする。
【0089】
本実施形態の空気調和装置1の室内機3によれば、冷媒の蒸発温度を室内空気の露点温度以下にする第一制御と、冷媒の蒸発温度を露点温度よりも高くする第二制御とが、切り替え可能に構成される。冷房運転または除湿運転の能力を発揮するために、第一制御を行うが、要求される能力が低い場合には、第二制御を許容している。このため、冷房運転または除湿運転の高い能力が要求される場合には、第一制御を行うとともに、冷房運転または除湿運転の低い能力が要求される場合には、第二制御を行うことができる。このように、要求される能力に応じて、第一制御と第二制御とを行うことにより、効率を向上することができる。
【0090】
(6-2)
ここでは、室内制御部30は、冷房運転または除湿運転の負荷が所定以下の低負荷運転中に、第二制御を行う。
【0091】
近年、断熱性能が向上して、冷房運転及び除湿運転時に、負荷が所定以下の低負荷運転を行う場合がある。低負荷運転中は、室内温度または湿度と、設定温度または設定湿度との差が小さいため、冷房運転または除湿運転の高い能力が要求されない。このため、低負荷運転中に、少なくとも第二制御を行うことで、過剰な冷房運転または除湿運転を減らすことができる。したがって、室内機3は、効率をより向上することができる。
【0092】
(7)変形例
(7-1)変形例1
上述した実施形態では、室内制御部30は、低負荷運転中に第二制御を行い、通常運転中に第一制御を行うが、これに限定されない。本変形例では、室内制御部30は、低負荷運転中に、第二制御及び第一制御の両方を行う。
【0093】
具体的には、室内制御部30は、時間t2(図5参照)以降の低負荷運転中において、低負荷運転開始時(時間t2)から所定時間後に、第二制御から第一制御に切り替える。
【0094】
蒸発温度Teが露点温度を超える第二制御を行うと、室内熱交換器31に結露が生じないことに起因して、臭いが生じる場合がある。臭いを含む調和空気が吹出口46から室内に吹き出されると、居住者に不快感を与える。この不快感を減らすために、本変形例では、室内制御部30は、低負荷運転が所定時間続くと、複数の吹出口46の少なくとも1つを閉じるように複数の開閉部材49の姿勢を制御する。ここでは、開閉部材49によって、複数の辺部吹出口46aの少なくとも1つを閉じる。これにより、室内熱交換器31において冷媒と室内空気との熱交換量を減らすことができるので、蒸発温度Teを上昇させて、蒸発温度Teを室内空気の露点温度以下にする第一制御に切り替える。低負荷運転中に第一制御を行うことによって、室内熱交換器31に結露が生じて、臭いの発生を抑制できる。
【0095】
なお、本変形例では、低負荷運転中に、開閉部材49で吹出口46aを閉じることによって、第二制御から第一制御に切り替えているが、これに限定されず、他の任意の手段を採用することができる。
【0096】
(7-2)変形例2
上述した実施形態では、室内制御部30は、低負荷運転になった時間t2において、第一制御から第二制御に切り替えているが、低負荷運転になった所定時間経過後に、第一制御から第二制御に切り替えてもよい。
【0097】
本変形例では、図7に示すように、室内制御部30は、時間t2で通常運転から低負荷運転になったときには、第一制御を行う。そして、第一制御を行う低負荷運転が所定時間続いて、時間t3になったときに、第二制御に切り替える。なお、所定時間(時間t3-t2)は、例えば、1分以上である。
【0098】
具体的には、図7及び図8に示すように、時間t2で低負荷運転を開始した(ステップS2)後、第一制御が適切か否かを判定する(ステップS3)。本変形例のステップS3では、室内制御部30によって、低負荷運転が所定時間続いているか否かを判定する。ステップS3において、低負荷運転が所定時間続いていない場合には、第一制御が適切であると判定して、第一制御を続ける(ステップS4)。一方、ステップS3において、低負荷運転が所定時間続いていない場合には、第一制御が適切でないと判定して、第二制御を行う(ステップS5)。
【0099】
以上説明したように、本変形例では、室内制御部30は、低負荷運転が所定時間(時間t3-t2)続くときに、第二制御を行う。低負荷運転が所定時間続く場合は、冷房運転または除湿運転の高い能力が要求されない時間が続く状態である。本変形例のように、この状態で第二制御を行うことにより、過剰な運転を減らすことができるので、効率をより向上することができる。
【0100】
(7-3)変形例3
上述した実施形態では、室内制御部30は、低負荷運転になった時間t2において、第一制御から第二制御に切り替えているが、低負荷運転になった所定時間経過後に、第一制御から第二制御に切り替えてもよい。本変形例では、室内制御部30は、室内に人が不存在のときに、第二制御を行う。
【0101】
詳細には、図7に示すように、室内制御部30は、時間t2で低負荷運転になったときには、第一制御を行う。そして、室内制御部30は、第一制御を行う低負荷運転中に、人検知センサ36が室内に人が存在していないことを検知すると、第一制御から第二制御に切り替える。
【0102】
具体的には、図7及び図8に示すように、時間t2で低負荷運転を開始した(ステップS2)後、第一制御が適切か否かを判定する(ステップS3)。本変形例のステップS3では、室内制御部30によって、室内に人が存在しているか否かを判定する。ステップS3において、人検知センサ36が室内に人が存在していることを検知した場合には、第一制御が適切であると判定して、第一制御を続ける(ステップS4)。一方、ステップS3において、人検知センサ36が室内に人が存在していないことを検知した場合には、第一制御が適切でないと判定して、第二制御を行う(ステップS5)。
【0103】
第一制御を行っている時には、室内熱交換器31に結露が生じる。しかし、第二制御を行うと、室内熱交換器31の表面の水分が蒸発して、臭いが生じる要因となる。このため、第二制御では、臭いを含む調和空気が生成される場合がある。
【0104】
しかし、本変形例のように、人が不存在のときには、室内の快適性が求められないため、低負荷運転中に第二制御を行うことにより、過剰な運転を減らすことができるので、効率をより向上することができる。
【0105】
(7-4)変形例4
上述した実施形態では、室内制御部30は、低負荷運転になった時間t2において、第一制御から第二制御に切り替えているが、低負荷運転になった所定時間経過後に、第一制御から第二制御に切り替えてもよい。本変形例では、室内制御部30は、室内における不快指数が快適域のときに、第二制御を行う。
【0106】
詳細には、図7に示すように、室内制御部30は、時間t2で低負荷運転になったときには、第一制御を行う。
【0107】
その後、第一制御を行う低負荷運転中に、室内制御部30は、室内温度Tr及び室内湿度Hrに基づいて室内における不快指数Diを算出する。詳細には、室内における不快指数Diは、下記の式1のように、室内温度Tr及び室内湿度Hrの関数の形で表される(k1~k5は係数である)。
Di=k1×Tr+k2×Hr×(k3×Tr-k4)+k5・・・(式1)
【0108】
室内制御部30は、室内温度センサ34で検出された室内温度Tr及び室内湿度センサ35で検出された室内湿度Hrを取得し、上記式1に室内温度Tr及び室内湿度Hrを入力することによって、不快指数Diを算出する。
【0109】
室内制御部30は、算出した不快指数Diが不快域であれば、第一制御を続ける。一方、室内制御部30は、算出した不快指数Diが快適域であれば、第二制御に切り替える。図7では、不快指数Diが、時間t2からt3までの間は不快域であり、時間t3で快適域になったとして、時間t3で第一制御から第二制御に切り替える。
【0110】
具体的には、図7及び図8に示すように、時間t2で低負荷運転を開始した(ステップS2)後、第一制御が適切か否かを判定する(ステップS3)。本変形例のステップS3では、室内制御部30によって、室内における不快指数が快適域の否かを判定する。ステップS3において、不快指数が快適域でない場合には、第一制御が適切であると判定して、第一制御を続ける(ステップS4)。一方、ステップS3において、不快指数が快適域である場合には、第一制御が適切でないと判定して、第二制御を行う(ステップS5)。
【0111】
不快指数が快適域のときには、快適性が少し低下しても問題がない。このため、本変形例では、室内制御部30は、室内における不快指数が快適域のときに、第二制御を行うことにより、快適性を確保するとともに、効率の低下を抑制することができる。
【0112】
(7-5)変形例5
上述した実施形態では、定格能力の45%以下になるときに、低負荷運転となる例を挙げたが、これに限定されない。上述したように、室内制御部30は、設定温度と室内温度の差等に基づいて、低負荷運転の開始を決めてもよい。
【0113】
(7-6)変形例6
上述した実施形態では、低負荷運転よりも負荷の高い通常運転時に、第一制御を行う室内制御部30を例に挙げて説明したが、これに限定されない。室内制御部30は、通常運転時に、第二制御を行ってもよい。例えば、冷房負荷または除湿負荷が高いが、室内湿度が非常に低い場合には、室内制御部30は、第一制御を行う。
【0114】
(7-7)変形例7
上記実施形態では、吹出口46のうち、辺部吹出口46aのそれぞれに開閉部材49が配置され、角部吹出口46bに開閉部材49が配置されていないが、これに限定されない。例えば、上述した実施形態では、1つの辺部吹出口46aに1つの開閉部材49が配置されているが、1つの辺部吹出口46aに2つ以上の開閉部材が配置されてもよい。また。角部吹出口46bに1つ以上の開閉部材49が配置されてもよい。
【0115】
(7-8)変形例8
上述した実施形態では、冷房運転及び除湿運転のときに、圧縮機21の容量制御における制御対象の状態量を蒸発温度Teとしているが、これに限定されない。本変形例では、容量制御における制御対象の状態量を蒸発圧力とする。この場合には、制御目標値として、目標蒸発温度Tecs、Tedsに相当する目標蒸発圧力を使用する。なお、この容量制御において蒸発圧力及び目標蒸発圧力を使用することは、蒸発温度Te及び目標蒸発温度Tecs、Tedsを使用することと同じである。
【0116】
(7-9)変形例9
上述した実施形態では、冷房運転、除湿運転及び暖房運転を行う空気調和装置1の室内機3を例に挙げて説明したが、本開示の室内機は、冷房運転及び除湿運転の少なくとも一方を行えば、これに限定されない。本変形例の室内機は、例えば、冷房専用の空気調和装置の室内機である。
【0117】
(7-10)変形例10
上述した実施形態では、天井埋込型の室内機を例に挙げて説明したが、本開示の室内機は、これに限定されない。本開示の室内機は、壁掛け型、床置き型などの任意の型式を採用することができる。
【0118】
(7-11)変形例11
上述した実施形態では、1つの室内機3を備える空気調和装置1を例に挙げて説明したが、本開示の空気調和装置は、これに限定されない。本開示の空気調和装置は、複数の室内機3を備えるマルチタイプにも適用できる。
【0119】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0120】
1 :空気調和装置
2 :室外機
3 :室内機
30 :室内制御部(制御部)
36 :人検知センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0121】
【文献】特開2013-22169号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8