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特許7587481無線通信の遅延を低減する端末装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】無線通信の遅延を低減する端末装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0453 20230101AFI20241113BHJP
   H04W 72/1273 20230101ALI20241113BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20241113BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20241113BHJP
【FI】
H04W72/0453
H04W72/1273
H04W28/06 130
H04W72/0446
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021131329
(22)【出願日】2021-08-11
(65)【公開番号】P2023025895
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029323(JP,A)
【文献】特表2017-527221(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046060(WO,A1)
【文献】Samsung,XDD (cross-division duplex) for enhanced duplexing operation in 5G Advanced,3GPP TSG RAN adhoc_2021_06_RAN_Rel18_WS RWS-210180,2021年06月07日
【文献】Samsung,Email discussion summary for [RAN-R18-WS-eMBB-Samsung],3GPP TSG RAN adhoc_2021_06_RAN_Rel18_WS RWS-210541,2021年06月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠した通信を行う端末装置であって、
所定の周波数帯域の範囲を対象としたフーリエ変換を含んだ受信処理を、受信した信号に対して実行する実行手段と、
前記所定の周波数帯域の範囲において、第1の周波数リソースで基地局装置から送信された信号と第2の周波数リソースで他の端末装置から送信された信号とが含まれる場合に、前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように、前記実行手段を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、時分割複信(TDD)のタイムスロットのそれぞれを、前記第1の周波数リソースを含み前記第2の周波数リソースを含まないBandwidth Part(BWP)を設定する第1のタイムスロットと前記第1の周波数リソースと前記第2の周波数リソースとの両方を含むBWPを設定する第2のタイムスロットとのいずれかとなるように設定することにより、前記第1のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように前記実行手段を制御し、前記第2のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースおよび前記第2の周波数リソースを含む周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行するように前記実行手段を制御する、ことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1の周波数リソースおよび前記第2の周波数リソースの両方において基地局装置から信号が送信される第1のタイムスロットにおいて、前記第1の周波数リソースおよび前記第2の周波数リソースを含む周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行するように前記実行手段を制御し、
前記第1の周波数リソースで基地局装置から信号が送信されると共に前記第2の周波数リソースで前記他の端末装置から信号が送信される第2のタイムスロットにおいて、前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように前記実行手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記基地局装置から受信した前記BWPを設定するメッセージに基づいて、前記BWPの設定を行う、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の端末装置。
【請求項4】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠し、所定の周波数帯域の範囲を対象としたフーリエ変換を含んだ受信処理を、受信した信号に対して実行する端末装置によって実行される制御方法であって、
前記所定の周波数帯域の範囲において、第1の周波数リソースで基地局装置から送信された信号と第2の周波数リソースで他の端末装置から送信された信号とが含まれる場合に、前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように制御する制御工程を含み、
前記制御工程において、時分割複信(TDD)のタイムスロットのそれぞれを、前記第1の周波数リソースを含み前記第2の周波数リソースを含まないBandwidth Part(BWP)を設定する第1のタイムスロットと前記第1の周波数リソースと前記第2の周波数リソースとの両方を含むBWPを設定する第2のタイムスロットとのいずれかとなるように設定することにより、前記第1のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように制御し、前記第2のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースおよび前記第2の周波数リソースを含む周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行するように制御する、ことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠し、所定の周波数帯域の範囲を対象としたフーリエ変換を含んだ受信処理を、受信した信号に対して実行する端末装置に備えられたコンピュータに、
前記所定の周波数帯域の範囲において、第1の周波数リソースで基地局装置から送信された信号と第2の周波数リソースで他の端末装置から送信された信号とが含まれる場合に、前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように制御する制御工程を実行させるためのプログラムであって、
前記制御工程では、時分割複信(TDD)のタイムスロットのそれぞれを、前記第1の周波数リソースを含み前記第2の周波数リソースを含まないBandwidth Part(BWP)を設定する第1のタイムスロットと前記第1の周波数リソースと前記第2の周波数リソースとの両方を含むBWPを設定する第2のタイムスロットとのいずれかとなるように設定することにより、前記第1のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように制御が行われ、前記第2のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースおよび前記第2の周波数リソースを含む周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行するように制御が行われる、ことを特徴とするプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ通信システムにおける無線通信の遅延低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムによる低遅延通信が要求されており、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)では、超高信頼および低遅延通信(Ultra-Reliable and Low Latency Communications、URLLC)を実現するための技術検討が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、セルラ通信システムにおける無線通信の遅延を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様による端末装置は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠した通信を行う端末装置であって、所定の周波数帯域の範囲を対象としたフーリエ変換を含んだ受信処理を、受信した信号に対して実行する実行手段と、前記所定の周波数帯域の範囲において、第1の周波数リソースで基地局装置から送信された信号と第2の周波数リソースで他の端末装置から送信された信号とが含まれる場合に、前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように、前記実行手段を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、時分割複信(TDD)のタイムスロットのそれぞれを、前記第1の周波数リソースを含み前記第2の周波数リソースを含まないBandwidth Part(BWP)を設定する第1のタイムスロットと前記第1の周波数リソースと前記第2の周波数リソースとの両方を含むBWPを設定する第2のタイムスロットとのいずれかとなるように設定することにより、前記第1のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行し、前記第2の周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行しないように前記実行手段を制御し、前記第2のタイムスロットとして設定されたタイムスロットにおいて前記第1の周波数リソースおよび前記第2の周波数リソースを含む周波数リソースに対して前記フーリエ変換を含んだ前記受信処理を実行するように前記実行手段を制御する
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、セルラ通信システムにおける無線通信の遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】リソースの上りリンク/下りリンクの通信への割り当ての例を示す図である。
図3】基地局装置および端末装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】端末装置の機能構成例を示す図である。
図5】基地局装置の機能構成例を示す図である。
図6】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0008】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)で規定された第5世代(5G)のセルラ無線通信規格に従う無線通信システムである。なお、これは一例であり、他の無線通信システムが用いられてもよい。無線通信システムは、例えば、基地局装置101と、端末装置102および端末装置103とを含む。基地局装置101と、端末装置102および端末装置103との間の通信は、OFDMA(直交周波数分割多元接続)等の、周波数軸上に送信対象の信号をマッピングしてフーリエ変換を行うことによって時間領域の信号を生成する手法を用いて行われうる。なお、図1は、説明を簡単にするために少数の基地局装置および端末装置のみを示しているが、当然にこれらより多数の基地局装置および端末装置が存在しうる。
【0009】
本無線通信システムでは、基地局装置と端末装置との間の通信に、時分割複信(TDD)が用いられるものとする。TDDでは、共通の周波数リソースをタイムスロットに分割して、複数のタイムスロットが、それぞれ、上りリンク(端末装置から基地局装置へ向かう方向のリンク)と下りリンク(基地局装置から端末装置へ向かう方向のリンク)とのいずれかに割り当てられる。ここで、端末装置が上りリンクでデータを送信する際には、基地局装置へスケジューリングリクエスト(SR)を送信し、基地局装置がバッファステータスレポート(BSR)を報告させるために端末装置に無線リソースを割り当て、端末装置がBSRをその無線リソースで送信し、基地局装置がそのBSRに基づいてデータ送信用の無線リソースを割り当て、端末装置がその無線リソースでデータを送信する、という手順が発生する。このとき、TDDを用いるシステムでは、上りリンクリソースで基地局装置へSRが送信された後、下りリンクリソースでBSRのための無線リソース割り当てが端末装置へ通知され、その後の上りリンクリソースでBSRが基地局装置へ送信され、その後の下りリンクリソースでデータ送信のための無線リソース割り当てが行われ、その後の上りリンクリソースでデータが送信される。このため、端末装置がSRを送信してからデータが実際に送信されるまでの期間が長期化してしまいうる。
【0010】
このため、本実施形態では、図2のように、ある周波数リソースにおいて、他の周波数リソースで下りリンク(DL)に割り当てられているタイムスロットを、上りリンク(UL)のために割り当てるようにする。なお、図2では、コンポーネントキャリア(CC)の周波数範囲の中央に、上りリンクの通信にのみ使用される周波数リソースを設けた例を示している。このように、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられているタイムスロットを、第2の周波数リソースで上りリンクに割り当てることにより、上述の期間を短縮することができる。なお、図2のようなタイムスロットの上りリンクの通信および下りリンクの通信への割り当ては一例であり、これ以外のタイムスロットの割り当てが用いられてもよい。例えば、CCの中央以外の部分における第1の周波数リソースにおける下りリンクと上りリンクとの割り当ては、より多くの下りリンク又は上りリンクのタイムスロットが用意されるような割り当てであってもよい。また、CCの中央の部分における第2の周波数リソースでは、下りリンクの通信にタイムスロットが割り当てられていないが、一部のタイムスロットが下りリンクの通信のために割り当てられてもよい。すなわち、CCの内部で、タイムスロットの下りリンク及び上りリンクへの第1の割り当てを用いる第1の周波数リソースと、第2の割り当てを用いる第2の周波数リソースが存在するように構成される範囲で、どのような割り当てが用いられてもよい。なお、上述の説明では、CCの範囲内でタイムスロットの割り当てが異なる周波数リソースが存在すると説明したが、これに限られない。上述のCCは、端末装置において高速フーリエ変換(FFT)を含んだ受信処理が一括して行われる所定の周波数帯域と読み替えられてもよい。
【0011】
すなわち、端末装置は、例えば第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられているタイムスロットにおいて送信すべきデータが発生した場合、その第1の周波数リソースにおいて上りリンクに割り当てられたタイムスロットが到来するのを待つことなく、第2の周波数リソースでSRを送信することができる。また、基地局装置は、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられている期間中にSRを受信した場合、その期間中にBSRのための無線リソースを割り当てる信号を第1の周波数リソースで送信することができる。ここで、第2の周波数リソースを用いることにより、第1の周波数リソースが下りリンクに割り当てられている期間における無線リソースがBSRのために割り当てられうる。このため、端末装置は、第1の周波数リソースが上りリンクに割り当てられたタイムスロットを待つことなく、第2の周波数リソースでBSRを報告することができる。その後、基地局装置は、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられている期間中にBSRを受信した場合、その期間中にデータのための無線リソースを割り当てる信号を第1の周波数リソースで送信することができる。端末装置は、第1の周波数リソースが上りリンクに割り当てられたタイムスロットを待つことなく、第2の周波数リソースでデータを送信することができる。
【0012】
このように、本実施形態では、タイムスロットの上りリンクの通信と下りリンクの通信とへの第1の割り当てに従う第1の周波数リソースと、その第1の割り当てと異なる第2の割り当てに従う第2の周波数リソースとを用意する。そして、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられ、第2の周波数リソースにおいて上りリンクに割り当てられたタイムスロットを用いることを可能とする。これにより、上述のように、例えばSRの送信やBSRの送信を、第1の周波数リソースにおいて上りリンクに割り当てられたタイムスロットを待つことなく、第2の周波数リソースで実行することができるようになり、上りリンクのデータが送信されるまでの期間を短縮することができるようになる。
【0013】
一方で、図2のような構成を用いる場合、上りリンクの通信と下りリンクの通信とが同じタイムスロットで行われることとなる。例えば、図1に示すように、基地局装置101から端末装置102へ、第1の周波数リソースで信号が送信される場合に、端末装置103から基地局装置101へ、第2の周波数リソースで信号が送信されうる。この場合、端末装置102は、基地局装置101からの信号と端末装置103からの信号とを並行して受信し、これらの信号に対して一括してフーリエ変換を含んだ受信処理を実行することとなる。このとき、例えば端末装置103が端末装置102の近傍に存在する場合、端末装置103が送信した信号の端末装置102における受信電力が、基地局装置101から送信された信号の端末装置102における受信電力より大幅に大きくなることがありうる。この場合、端末装置103からの信号が受信信号の全体に対して支配的な電力を有することとなりうる。この結果、基地局装置101からの信号がノイズレベルに埋没してしまい、端末装置102において、その信号の受信処理に失敗してしまいうる。また、端末装置103は、基地局装置101において複数の端末装置から受信されるOFDMシンボルのタイミングが略一致するように、送信タイミングを調整するが、その送信タイミングは端末装置102における受信タイミングが考慮されたものではない。このため、端末装置102において基地局装置101から受信された信号に基づくタイミングでフーリエ変換を行うと、端末装置103から受信された信号の直交性が崩れ、基地局装置101からの信号に対して干渉を及ぼしうる。
【0014】
本実施形態では、端末装置102が、端末装置103からの信号の影響を低減するための処理を実行する。すなわち、本実施形態の端末装置102は、例えば所定の周波数帯域の範囲(CCなど)を対象としたフーリエ変換を含んだ受信処理を実行可能に構成されており、その所定の周波数帯域の範囲において、一部の周波数リソースをフーリエ変換の対象外とする制御を行う。なお、所定の周波数帯域の範囲は、例えば、100MHz幅などの十分に大きい帯域幅である。例えば、端末装置102は、第1の周波数リソースで基地局装置101から送信された信号と第2の周波数リソースで他の端末装置103から送信された信号とが含まれる場合に、第2の周波数リソースに対してフーリエ変換を含んだ受信処理を実行しないようにする。端末装置102は、例えば、フーリエ変換を含んだ受信処理を実行すべき周波数リソースの範囲として、第1の周波数リソースを含み第2の周波数リソースを含まないBandwidth Part(BWP)を設定することにより、基地局装置101からの信号に対してフーリエ変換を含んだ復調処理を実行しながら、端末装置103からの信号に対して復調処理を実行しないようにしうる。なお、BWPの設定は、サブフレームやタイムスロット単位で行われるようにしうる。すなわち、1つのフレームの中の複数のサブフレームやタイムスロットにおいて、それぞれ異なるBWPの設定が用いられるようにしてもよい。例えば、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースとが共に基地局装置101による信号送信に使用されるサブフレーム/タイムスロットにおいては、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースの両方を含むBWPが用いられ、第1の周波数リソースが基地局装置101による信号送信に使用され、第2の周波数リソースが端末装置103による信号送信に使用されるサブフレーム/タイムスロットにおいては、第1の周波数リソースを含み第2の周波数リソースを含まないBWPが用いられるように設定が行われうる。そして、端末装置102は、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースの両方が含まれるBWPが設定された場合、第1の周波数リソース及び第2の周波数リソースを含む周波数リソースに対してフーリエ変換を含んだ受信処理を実行する。一方、端末装置102は、第1の周波数リソースを含み第2の周波数リソースを含まないBWPが設定された場合、第1の周波数リソースに対してフーリエ変換を含んだ受信処理を実行し、第2の周波数リソースに対してフーリエ変換を含んだ受信処理を実行しないようにする。
【0015】
なお、端末装置102は、フーリエ変換等を含んだ受信処理の際に、第2の周波数リソースにおいて端末装置103が信号を送信する際には、その第2の周波数リソースを阻止域とする帯域制限フィルタなどを用いて、第2の周波数リソースの信号成分を抑圧してもよい。すなわち、BWPの設定に代えて又はそれに加えて、第2の周波数リソースの信号成分を抑圧して影響を低減する処理を行い、その抑圧後の信号について第1の周波数リソースにおける信号のフーリエ変換を含んだ受信処理が行われるようにしてもよい。この処理も、第2の周波数リソースにおいて端末装置103が信号を送信するかに基づいて阻止域を設定するなど、サブフレーム/タイムスロットごとに行われうる。
【0016】
なお、BWPが用いられる場合、基地局装置101から端末装置102へ、BWPの設定のためのメッセージが送信され、端末装置102は、そのメッセージに従ってBWPを設定しうる。なお、BWPを設定するメッセージは、例えば無線リソース制御(RRC)メッセージによって、BWPの設定が行われる。ここで、基地局装置101は、複数のBWPの設定を、サブフレーム/タイムスロットごとに指定する情報を端末装置102へ通知してもよい。また、BWPを設定するメッセージは、RRCメッセージと異なるメッセージであってもよい。例えば、複数のBWPの設定をRRCメッセージや報知信号によって通知し、下りリンク制御情報(DCI)を用いて、いずれのBWPを用いるかが指定されてもよい。
【0017】
以下では、上述のような処理を実行する基地局装置101および端末装置102の構成例と、実行される処理の流れの例について説明する。
【0018】
(装置構成)
図3を用いて、基地局装置101および端末装置102のハードウェア構成例について説明する。なお、端末装置103も、同様のハードウェア構成を有しうる。基地局装置101および端末装置102は、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、及び通信回路305を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM302は、基地局装置101および端末装置102が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路305は、例えば、LTEや5Gの無線通信用の回路によって構成される。なお、図3では、1つの通信回路305が図示されているが、基地局装置101および端末装置102は複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置101および端末装置102は、LTE用および5G用の無線通信回路と共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置101および端末装置102は、LTE用のアンテナと5G用のアンテナとを別個に有してもよい。また、基地局装置101は、例えば他の基地局装置やネットワークノードとの通信のための有線通信用の通信回路を有してもよく、端末装置102は、無線LAN等の他の無線通信システムのための通信回路を有してもよい。なお、基地局装置101および端末装置102は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路305を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路305を有してもよい。
【0019】
図4は、端末装置102の機能構成例を示す図である。端末装置102は、その機能として、例えば、受信処理部401、処理対象制御部402、処理対象設定部403を含んで構成される。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。
【0020】
受信処理部401は、受信信号について、所定の周波数帯域の範囲内の信号成分に対するFFT(高速フーリエ変換)、復調、復号などの受信処理を実行する。処理対象制御部402は、受信処理部401において処理対象とすべき、所定の周波数帯域の範囲内の周波数リソースについてのみ受信処理を実行するように受信処理部401を制御する。処理対象設定部403は、所定の周波数帯域の範囲内で、受信処理の対象とすべき周波数リソースを決定して設定する。処理対象設定部403は、例えば、BWPを設定することにより、受信処理の対象とすべき周波数リソースの設定を行う。例えば、基地局装置101が第1の周波数リソースで信号を送信し、端末装置103が第2の周波数リソースで信号を送信している場合には、処理対象設定部403は、第1の周波数リソースを含むが第2の周波数リソースを含まないBWPを設定する。また、基地局装置101が第1の周波数リソース及び第2の周波数リソースで信号を送信している場合には、処理対象設定部403は、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースの両方を含んだBWPを設定する。そして、受信処理部401は、処理対象制御部402による制御に基づいて、基地局装置101が信号を送信した第1の周波数リソースに関してはフーリエ変換を含んだ受信処理を実行しながら、端末装置103が信号を送信した第2の周波数リソースに関してはその受信処理を実行しない。また、受信処理部401は、例えば第2の周波数リソースを阻止域とする帯域制限フィルタを用いて、第2の周波数リソースの信号成分を抑圧する処理をさらに実行してもよい。また、受信処理部401は、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースとが共に基地局装置101による信号送信に使用されている場合には、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースの両方に対して、受信処理を実行する。なお、第1の周波数リソース又は第2の周波数リソースにおいて基地局装置101から送信される信号は、必ずしも端末装置102宛てのデータを含まなくてもよい。すなわち、端末装置103から信号が送信される周波数リソースを受信処理の対象から除外すれば足りる。
【0021】
図5は、基地局装置101の機能構成例を示す図である。基地局装置101は、その機能として、例えば、リソース設定部501および処理対象通知部502を含んで構成される。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。
【0022】
リソース設定部501は、各周波数リソースに対する、TDDによる上りリンクと下りリンクとのタイムスロットの割り当てを設定する。リソース設定部501は、例えば、図2のようなタイムスロットの割り当てを設定し、その設定に基づいて、配下の端末装置との通信を行う。処理対象通知部502は、タイムスロットの割り当ての設定に基づいて、端末装置102などの端末装置が受信処理を行うべき周波数リソースを指定する情報を、端末装置102へ通知する。なお、処理対象通知部502は、例えば、タイムスロット単位やサブフレーム単位など、TDDによって上りリンクと下りリンクとが切り替えられる時間長に基づく時間の単位で、受信処理を行うべき周波数リソースを指定する情報を通知しうる。処理対象通知部502は、例えば、端末装置102において設定されるべきBWPを、受信処理を行うべき周波数リソースを指定する情報として端末装置102に通知しうる。
【0023】
(処理の流れ)
続いて、無線通信システムで実行される処理の流れの例について、図6を用いて説明する。なお、以下で説明する処理の流れは、一例であり、上述のような変形が当然に可能であることに留意されたい。
【0024】
本処理では、基地局装置101が、接続中の端末装置102に対して、BWPの設定を示す情報を通知する(S601)。なお、通知される情報は、周波数リソース及びタイムスロットの組み合わせと上りリンク/下りリンクへの割り当てとが対応付けられた情報であってもよい。すなわち、端末装置102において、受信処理を行うべき周波数リソースと受信処理の対象から除かれるべき周波数リソースとの少なくともいずれかを特定可能な情報が通知される。なお、基地局装置101は、例えばシステムインフォメーションブロック(SIB)を用いて、非接続状態の端末装置に対して、端末装置において設定されるべきBWPなどの、受信処理の対象を指定する情報を通知するようにしてもよい。なお、この情報は、タイムスロットごと/サブフレームごとなどの時間単位ごとに設定されるべきBWPの情報など、周波数リソースと時間リソースとが関連付けられた情報であってもよい。端末装置102は、S601で受信したBWPの設定を示す情報に基づいてBWPを設定する(S602)。
【0025】
端末装置102は、タイムスロット/サブフレームごとなどの受信処理の対象を指定する情報が通知された場合は、その情報に基づいて、時間の経過に沿って設定を変更しうる。例えば、基地局装置101が第1の周波数リソースで端末装置102へ信号を送信し(S603)、端末装置103が基地局装置101へ第2の周波数リソースで信号を送信する(S604)場合、端末装置102は、第1の周波数リソースを受信処理の対象とし、第2の周波数リソースを受信処理の対象としないようにする。一例として、端末装置102は、第1の周波数リソースを含み第2の周波数リソースを含まないBWPの設定を行い、基地局装置101からの信号の受信処理を実行する(S605)。すなわち、端末装置102は、端末装置103から送信された信号がFFTなどの受信処理の対象とならないようにする。一例において、端末装置102は、第2の周波数リソースの少なくとも一部を阻止域とする帯域制限フィルタを用いて受信信号の第2の周波数リソースの成分を抑圧してからFFTなどの受信処理を実行するようにしうる。また、端末装置102は、FFTの対象を第1の周波数リソースのみとすることによって、第2の周波数リソースの信号成分の影響を受けないようにしうる。これにより、端末装置103からの信号が十分に大きい電力で受信される環境においても、基地局装置101からの信号の受信に失敗する確率を低減することができる。
【0026】
また、端末装置102は、例えば、第1の周波数リソース及び第2の周波数リソースの両方を用いて基地局装置101がデータを送信した(S606)場合、第1の周波数リソースのみならず、第2の周波数リソースをも受信処理の対象とする。すなわち、端末装置102は、第1の周波数リソースと第2の周波数リソースとの両方を含んだBWPを設定して(又はBWPの設定を解除してCCなどの所定の周波数帯域の全てを受信処理の対象として)、基地局装置101からの信号の受信処理を実行する(S607)。これにより、一部の周波数リソースが一部の時間区間においてのみ上りリンクに使用される場合に、その周波数リソースが下りリンクに使用される時間区間において、その周波数リソースを受信処理の対象に含めて有効活用することができる。
【0027】
なお、基地局装置101は、端末装置103に対しても同様の情報を送信し、端末装置103は、基地局装置101から信号を受信する場合には、端末装置102に関して説明した受信処理を実行しうる。
【0028】
このようにして、上りリンクの通信と下りリンクの通信とが混在するタイムスロットにおいて、端末装置が、上りリンクに割り当てられた周波数リソースを受信処理の対象から除くことにより、その上りリンクの周波数リソースにおける信号の影響を十分に低減した状態で下りリンクの信号を受信することができるようになる。また、この処理にBWPを用いることにより、従来の端末装置が実行可能な処理に基づいて上述の処理を実行することができるため、システムの大幅な改修を行う必要なく、上述の処理を適用することができる。
【0029】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6